JP2015112861A - 液体吐出ヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】環境温度が変化しても吐出基板の配置間隔のばらつきを低減することができる、液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。【解決手段】本発明の液体吐出ヘッドは、記録素子部31と、記録素子部31を支持する支持部材2と、を有する。記録素子部31は、複数の供給口14と、各供給口14を挟んでそれぞれ配置され、液体を吐出させるエネルギーを生じさせる複数のエネルギー発生素子と、エネルギー発生素子にそれぞれ対応して設けられた複数の吐出口からなる複数の吐出口列12と、を有する。支持部材2は、各供給口14にそれぞれ液体を供給する複数の供給液室16a〜16cが設けられている。供給液室16a〜16cの配列方向に沿う断面において、支持部材2の隣接する供給液室16a〜16c同士に挟まれる部分28b、28cは、記録素子部31に接する面から該面とは反対の面に向かうにつれて大きくなる。【選択図】図3

Description

本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
従来、液体吐出装置の1つである記録装置には、各記録方式に対応した液体吐出ヘッドが搭載されている。
特にインクジェット方式では、液体吐出ヘッドから記録媒体に液体、例えばインクが直接吐出されるので、ランニングコストが比較的安く、騒音が小さい等の特徴がある。そのため、インクジェット方式は多くの記録装置に採用されている。
インクジェット方式では、多色化して色域を広げることで高精細な画像が得られる。そこで、多色化する方法の1つとして、吐出口が形成された記録素子基板を複数ならべ、記録素子基板毎に異なるインクを吐出させる方法がある。また他の方法として、特許文献1には、1つの記録素子基板にインクが供給される複数の液体供給口を設け、各液体供給口に異なるインクを供給する方法が示されている。さらに、吐出口を高密度化することでも、高精細な画像が得られる。
インクジェット方式では、インクを吐出させるためのエネルギーを生じるエネルギー発生素子が各吐出口に対応して記録素子基板の内部に設けられている。記録素子基板の中央部はエネルギー発生素子が集まっていて、冷却されにくいため、側端部に比べてエネルギー発生素子に起因する熱が集中しやすい。したがって、記録動作時(インク吐出時)における、記録素子基板の中央部と側端部との間の温度差が大きくなる。
インクの表面張力、粘度、及び密度等の物性は温度に応じて変化するので、この記録素子基板の温度分布の偏りにより、記録素子基板の中央部に位置する吐出口と側端部に位置する吐出口のそれぞれから吐出されるインクの吐出量に差異が生じる。
そこで、特許文献2では、記録素子基板を支持する支持部材に冷却液用流路を設け、その流路に冷却液を流すことで、記録素子基板内での温度分布、あるいは、記録素子基板同士の温度分布の偏りを小さくしている。
特開2002−154209号公報 特開2009−132024号公報
支持部材内には、記録素子基板の吐出口に液体を供給するための供給液室が複数設けられている。記録素子基板に設けられる吐出口を高密度化すると、吐出口に液体を供給する支持部材の供給液室も高密度化する。そのため、このような構成の場合、支持部材内に供給液室を避けて特許文献2の方法のような冷却液用流路を設けることは困難である。
また、特許文献2の方法の場合、記録素子基板の温度を調整するために冷却液の流量調整を行う必要があり、液体吐出ヘッドの冷却に手間がかかる。また、支持部材に冷却液用流路を形成する必要があるため、製造コストが増加する。
本発明の目的は、上記課題を鑑み、記録素子基板の中央部と側端部との温度差を軽減する、液体吐出ヘッドを提供することにある。
本発明の液体吐出ヘッドは、記録素子部と、記録素子部を支持する支持部材と、を有する。記録素子部は、液体を供給する複数の供給口と、各供給口を挟んでそれぞれ配置され、液体を吐出させるエネルギーを生じさせる複数のエネルギー発生素子と、エネルギー発生素子にそれぞれ対応して設けられた複数の吐出口からなる複数の吐出口列と、を有する。支持部材は、各供給口にそれぞれ液体を供給する複数の供給液室が設けられている。供給液室の配列方向に沿う断面において、支持部材の隣接する供給液室同士に挟まれる部分は、記録素子部に接する面から該面とは反対の面に向かうにつれて大きくなる。
本発明によれば、記録素子部から伝わる熱の伝熱方向と同じ方向である、記録素子部に接する面から該面とは反対の面に向かう方向に、支持部材の供給液室に挟まれる部分は大きくなっている。そのため、エネルギー発生素子で生じた熱が記録素子部とは反対側に伝わりやすくなり、支持部材を通じて外部に逃げやすくなるので、吐出口が高温になりにくい。
本発明によれば、記録素子基板の中央部と側端部との温度分布の偏りを軽減することができる。そのため、記録素子基板の中央部と側端部の各吐出口からそれぞれ吐出される液体の吐出量の差異が軽減し、画像品位が向上する。また、液体吐出ヘッドの構成が単純なため、製造コストの増加を抑制できる。
本発明の液体吐出ヘッドの一実施形態の構成を示す分解概略斜視図である。 支持部材に支持された記録素子基板の概略斜視図である。 図2におけるXZ面での概略断面図である。 従来の記録素子ユニットにおける、支持部材に支持された記録素子基板のXZ面での概略断面図である。 本発明の液体吐出ヘッドの第2の実施例の概略構成図であり、支持部材に支持された記録素子基板のXZ面での概略断面図である。 本発明の液体吐出ヘッドの第3の実施例の概略構成図であり、支持部材に支持された記録素子基板のXZ面での概略断面図である。 本発明の液体吐出ヘッドの第4の実施例の概略構成図であり、支持部材に支持された記録素子基板のXZ面での概略断面図である。
以下に、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態の詳細について説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略することがある。
図1は、本発明の液体吐出ヘッドの一実施形態の構成を示す分解概略斜視図である。液体吐出ヘッド9は、記録素子ユニット6と流路形成部材7とタンク保持部材8とを備える。記録素子ユニット6は、支持部材2と、プレート3と、記録素子基板1と、電気コネクト基板5と、電気配線部材4と、を備える。
記録素子基板1はエネルギー発生素子10(図2参照)を有しており、支持部材2に支持され接合されている。支持部材2に接合された記録素子基板1と支持部材2との高さの差(図3のZ方向の差)は、支持部材2の、記録素子基板1が接合される面内であって、記録素子基板1と接していない領域に接合されるプレート3によって緩和される。プレート3上には、記録素子基板1に電気的信号を送るための電気配線部材4が接合され、電気配線部材4は電気コネクト基板5に接合されている。記録素子ユニット6は、流路形成部材7を介して、液体が貯蔵されるタンクを保持するタンク保持部材8に固定されている。以上のようにして液体吐出ヘッド9は構成されている。
図2は、支持部材2に支持された記録素子基板1の概略斜視図である。なお、図2は、記録素子基板1の内部構造がわかるように、一部を省略して図示している。
記録素子基板1は、液体の供給口14を複数備えたベース基板41と、ベース基板41上に配置され、液体を吐出する複数の吐出口11が形成された吐出口形成部材13とからなる。
ベース基板41の吐出口形成部材13側の面には、各供給口14を挟むように複数のエネルギー発生素子10が設けられている。吐出口形成部材13の複数の吐出口11は、それぞれエネルギー発生素子10に対応して形成されている。複数の吐出口11によって、吐出口形成部材13の長手方向(図2のY方向)に沿って複数の吐出口列12が形成されている。
なお、本実施形態では供給口14が3つ設けられているため、吐出口列12は、吐出口形成部材13の長手方向に直交する方向(図2のX方向)に6列配置されている。
支持部材2にはベース基板41の各供給口14に液体を供給するための複数の供給液室16が設けられている(図3参照)。各供給液室16からベース基板41の供給口14を介して吐出口形成部材13の吐出口11に液体が供給される。
図3は、図2におけるXZ面での概略断面図である。本実施形態では、支持部材2には3つの供給液室16が設けられている。ここで、3つの供給液室16のうち、供給液室16の配列方向であるX方向の一端(図中左)に位置する供給液室16を第1の供給液室16aとする。同様に、X方向の中央に位置する供給液室16を第2の供給液室16bとし、X方向の他端に位置する供給液室16を第3の供給液室16cとする。なお、第2の供給液室16bの、記録素子基板1側の開口におけるX方向の長さをA1とし、第2の供給液室16bの、記録素子基板1とは反対側の開口におけるX方向の長さをA2とする。同様に、第1の供給液室16aの、記録素子基板1側の開口におけるX方向の長さをB1とし、第1の供給液室16aの、記録素子基板1とは反対側の開口におけるX方向の長さをB2とする。第1の供給液室16aと第3の供給液室16cは第2の供給液室16bを挟んで互いに対称な形状をしている。すなわち、第3の供給液室16cの、記録素子基板1側の開口におけるX方向の長さはB1であり、第3の供給液室16cの、記録素子基板1とは反対側の開口におけるX方向の長さはB2である。本願発明では、A1>A2、B1>B2となっている。
また、吐出口列12に、X方向の一端から順に、12a、12b、・・・12fと符号をつける。したがって、第1の供給液室16aから吐出口列12a、12bに液体が供給され、第2の供給液室16bから吐出口列12c、12dに液体が供給され、第3の供給液室16cから吐出口列12e、12fに液体が供給される。
なお、図3中の黒く細い矢印26は、液体を吐出させるためにエネルギー発生素子10を駆動させたときの熱の移動を示している。図3中の太い矢印27は液体を吐出させたときの液体の移動を示している。
さらに、支持部2の、X方向の一方の縁と第1の供給液室16aとの間の部分を第1の部分28a、第1の供給液室16aと第2の供給液室16bとの間の部分を第2の部分28bとする。第2の供給液室16bと第3の供給液室16cとの間の部分を第3の部分28c、第3の供給液室16cと支持部2の、X方向の他方の縁との間の部分を第4の部分28dとする。なお、第2の部分28bと第3の部分28cは同じ形状であり、第1の部分28aと第4の部分28dは同じ形状である。
また、本実施形態の説明では、1つの記録素子基板1のみを用いているが、1つの支持基板2に対して複数の記録素子基板1を搭載する構成も考えられる(第2の実施例、図5参照)。そのため、支持基板2に支持された記録素子基板1をまとめて記録素子部31とする。
なお、以降の説明では、主に第1の供給液室16a、第2の供給液室16b、第1の部分28a、第2の部分28b、及び吐出口列12a〜12cについて説明する。これは、記録素子ユニット6は第2の供給液室16を挟んで互いに対称になっており、対称な構成の一方と他方とで同様な効果が得られるためである。
次に、本発明の液体吐出ヘッド9の記録素子ユニット6では、中央部と側端部との間の温度差がなぜ軽減されるのかを、図3及び図4を用いて説明する。なお、以下で説明する検証結果は熱シミュレーションに基づいている。
図4は、従来の液体吐出ヘッドの記録素子ユニット106における、支持部材102に支持された記録素子基板101のXZ面での概略断面図である。なお、記録素子基板101の形状は本発明の記録素子基板1と同様であり、支持部材102の形状が本発明の支持部材2とは異なる。具体的には、第1の供給液室116a、第2の供給液室116b、第3の供給液室116cの形状は同じである。A1’=A2’=B1’=B2’となっている。
図4の従来の液体吐出ヘッドの場合、エネルギー発生素子(不図示)を駆動させることにより発生した熱の多くは、ベース基板141を介して支持部材102に伝わる。矢印126で示すように、吐出口列112aに対応して設けられたエネルギー発生素子からの熱は支持部材102の第1の部分128aに伝わる。同様に、吐出口列112bに対応して設けられたエネルギー発生素子からの熱は支持部材102の第2の部分128bに伝わる。そして、吐出口列112cに対応して設けられたエネルギー発生素子からの熱は支持部材102の第2の部分128bに伝わる。
上述したように、第1の部分128aには、吐出口列112aに対応して設けられたエネルギー発生素子からの熱が伝わる。一方、第2の部分128bには、吐出口列112bと吐出口列112cとにそれぞれ対応して設けられたエネルギー発生素子からの熱が伝わる。そのため、第2の部分128bには、第1の部分128aに比べて伝わってくる熱の熱量が大きくなり、熱が溜まりやすい。結果として、吐出口列112bや吐出口列112cの温度は、吐出口列112aの温度に比べて高くなる。上記と同様な理由で、吐出口列112dや吐出口列112eの温度は、吐出口列112fの温度に比べて高くなる。つまり、両端に位置する吐出口列112a、112fの温度に比べて、それ以外の吐出口列112b〜112eの温度は高くなる。
このような現象を防ぐために、充分に吐出口列同士の間隔を大きくする、つまり第2の部分や第3の部分を大きくすると、液体吐出ヘッドが大型化してしまい、コストアップにもつながる。
そこで本発明の液体吐出ヘッド9では、A1>A2、B1>B2となっている。つまり、隣接する第1の供給液室16aと第2の供給液室16bとに挟まれる第2の部分28bは、記録素子基板1側から記録素子基板1とは反対側にいくにつれて(−Z方向)、X方向に大きくなっている。−Z方向は、記録素子基板1からの熱が伝わる方向と同じであるため、第2の部分28bは、熱の伝わる方向にいくにつれて、X方向に大きくなっている。そのため、記録素子基板1から第2の部分28bに伝わる熱が、記録素子基板1とは反対側に伝わりやすく、つまり逃げやすいため、吐出口列12bや吐出口列12cの温度が高くなりにくい。その結果、吐出口列12b、12cと吐出口列12aとの間の温度差が軽減される。
また、第1の供給液室16aの側壁のうち、外側に位置する側壁16a1は、X方向に対して垂直であるが、内側に位置する側壁16a2は、X方向に対して垂直ではなく傾斜している。第1の供給液室16aを流れる液体の流れは、第1の供給液室16aの中心軸(図3の矢印Dと同軸)を流束の中心とするため、液体は、外側の側壁16a1側よりも内側の側壁16a2側が流れやすくなる。そのため、第2の部分28bの熱が液体に伝わりやすくなり、第2の部分28bの温度が高くなりにくい。なお、熱が伝えられた液体は、吐出口から吐出される、つまり熱は外部に放熱される。
なお、説明はしないが、第3の部分28cにおいても記録素子基板1とは反対側に熱が伝わりやすいので、吐出口列12d、12eと吐出口列12a、12fとの間の温度差が低減される。
以上のことから、本発明の液体吐出ヘッド9では、記録素子基板1の中央部に位置する吐出口列12b〜12eの温度が高温になりにくい。そのため、吐出口列12b〜12eと、記録素子基板1の側端部に位置する吐出口列12a、12fとの間の温度差が小さくなり、記録画像の品位を向上させることができる。さらに、本発明の液体吐出ヘッド9の場合、支持部材2を大型化する必要がないので、液体吐出ヘッド9が大型化することもない。また、本発明の液体吐出ヘッド9は、構成が複雑化しておらず、追加の部材も必要がないため、製造コストの増加を抑制できる。
[実施例]
以下に実施例および比較例について説明する。上述したように、XZ断面において、記録素子ユニット6は第2の供給液室16を挟んで互いに対称になっているため、支持部材2の第3、第4の部分28c、28d、第3の供給液室16c、吐出口列12d〜12fについての説明は省略する。
[実施例1]
本実施例では、図2におけるY方向にエネルギー発生素子10を600dpiで1280個配置した。そして、各エネルギー発生素子10に対応して吐出口11を形成し、それにより吐出口列12を形成した。吐出口列12aと吐出口列12bとの間隔(図1、図3おけるX方向)は、1mmとした。同様に、吐出口列12cと吐出口列12dとの間隔は1mmとし、吐出口列12eと吐出口列12fとの間隔も1mmとした。吐出口列12bと吐出口列12cとの間隔は1.5mmとし、吐出口列12dと吐出口列12eとの間隔は1.5mmとした。吐出口列12aと吐出口列12bとの同一セグメントの吐出口11は図3におけるY方向で、0.021mmずれている。吐出口列12cと吐出口列12dとの間の吐出口11の位置関係及び吐出口列12eと吐出口列12fとの間の吐出口11の位置関係も同様である。
吐出口列12aと吐出口列12bには、同一の液体が第1の供給液室16aとそれに対応する供給口14を介して供給される。吐出口列12cと吐出口列12dには、第1の供給液室16aに供給される液体とは異なる液体(例えば異なる色の液体)が、第2の供給液室16bとそれに対応する供給口14を介して供給される。吐出口列12eと吐出口列fには、第1及び第2の供給液室16a、16bに供給される液体とは異なる液体が、第3の供給液室16cとそれに対応する供給口14を介して供給される。例えば、第1〜第3の供給液室16a〜16cにはそれぞれシアン、マゼンタ、イエローのインクを供給することで、カラー画像が形成される構成とした。
吐出口形成部材13は、樹脂部材をベース基板41に積層することにより形成した。ベース基板41が接合される支持部材2は、アルミナを焼結させたセラミック部材からなり、その厚み(図1、図3におけるZ方向)は4mmとした。支持部材2の長さA1は1.5mmとし、長さA2は0.9mmとし、長さB1は1.5mmとし、長さB2は1.2mmとした。支持部材2に接合されるプレート3は、アルミナを焼結体させたセラミック部材を用いた。電気配線部材4は、ポリイミドをベースとしたものを用いた。そして、支持部材2、プレート3、記録素子基板1、電気コネクト基板5、電気配線部材4を組み合わせ、記録素子ユニット6を形成した。そして流路形成部材7を介し、記録素子ユニット6をタンク保持部材8に組み付けて、液体吐出ヘッド1を形成した。
上記のように構成された液体吐出ヘッド9を用いた記録装置で、印字duty75%、吐出周波数30kHz、印字パス数は1passでA3縦の紙に約40cmの幅でベタ印字の後に、2次色罫線パターンがある印字パターンを印刷した(印字試験)。その結果、10枚の紙まで良好な印字を得ることができた。
また、耐久試験において、本実施例の液体吐出ヘッド9は、6.0×10パルスまで良好な印字を行うことができ、吐出口形成部材13とベース基板41との間の良好な接合状態が確認された。
[比較例]
また、比較例として、図4に示した従来の液体吐出ヘッドを作成して、それを本発明の実施例と比較した。比較例の液体吐出ヘッドでは、長さA1’、長さA2’、長さB1’、長さB2’をいずれも1.5mmとした。それ以外の構成は本発明の実施例と同様である。
上記のように構成された比較例の液体吐出ヘッドを用いた記録装置で、第1の実施例と同様の印字試験を行った。その結果、1枚目から4枚目までは良好な印字を得ることができたが、5枚目で1枚目と色見が違うという現象が確認された。
以上のことから、本発明の第1の実施例の液体吐出ヘッド9では、比較例の液体吐出ヘッド109に比べて良好な印字が長期にわたって得られた。これは、第1の実施例の液体吐出ヘッド9における吐出口列12同士の間の温度差は、比較例の液体吐出ヘッドにおける吐出口列112同士の間の温度差に比べて小さくなるためであると考えられ、本発明の効果が実証されたものと考えられる。
また、比較例の液体吐出ヘッドでは、耐久試験において5.0×10パルスで、吐出口列112cに対応するエネルギー発生素子が配置されている位置において、吐出口形成部材113とベース基板141との接合で剥がれが生じる現象がみられた。これは、本発明の液体吐出ヘッド9(図3参照)では、エネルギー発生素子10で生じる熱の移動がすみやかに行われるため、吐出口列12cで液体を吐出するときにエネルギー発生素子10の周囲は加熱されても高温になりにくく、かつ冷却されやすい。そのため、吐出口形成部材13とベース基板41との接触面に生じる、線膨張係数の差による応力が軽減し、吐出口形成部材13とベース基板41との間の良好な接合が維持されたと考えられる。
なお、上述では説明していないが、支持部材2の第3の部分28cにおいても、記録素子基板1から第3の部分28cに伝わる熱が、記録素子基板1とは反対側に伝わりやすい。そのため、吐出口列12dや吐出口列12eの温度が高くなりにくくなり、結果として吐出口列12b、12cと吐出口列12aとの間の温度差が軽減される。また、吐出口列12dや吐出口列12eに対応して設けられているエネルギー発生素子10で生じる熱の移動がすみやかに行われるため、吐出口形成部材13とベース基板41との間の良好な接合を保つことができる。
[実施例2]
図5は、本発明の液体吐出ヘッド9の第2の実施例の概略構成図であり、記録素子ユニット6における、支持部材2に支持された記録素子基板1のXZ面での概略断面図である。
本実施例では、1つの支持部材2上に複数の記録素子基板1が配置されている。つまり、本実施例の液体吐出ヘッド9は、第1の実施例における記録素子基板1が複数に(本実施例では3つに)分割された構成となっている。つまり、本実施例では、記録素子部31が複数の記録素子基板1で構成されている。
第1の実施例1と同様に、支持部材2の長さA1は1.5mmとし、長さA2は0.9mmとし、長さB1は1.5mmとし、長さB2は1.2mmとした。また、吐出口列12a〜12f同士の位置関係も第1の実施例と同様にした。そして、第1の実施例と同様条件で、印字試験を行ったところ、比較例に比べて良好な印字が得られた。また、耐久試験においても、6.0×10パルスまで吐出口形成部材13とベース基板41との間の良好な接合状態が確認された。
本実施例でも、支持部材2のXZ断面において、第2の部分28bと第3の部分28cでは記録素子基板1と対向する位置から、記録素子基板1とは対向しない方向に向かって(−Z方向に向かって)、X方向に大きくなる。そのため、エネルギー発生素子10で発生した熱が支持部材2に伝わった後、支持部材2の記録素子基板1とは対向しない方向に向かって伝わりやすく、記録素子基板1や支持部材2が高温になることが防止される。
[実施例3]
図6は、本発明の液体吐出ヘッド9の第3の実施例の概略構成図であり、記録素子ユニット6における、支持部材2に支持された記録素子基板1のXZ面での概略断面図である。
本実施例では、長さB1と長さB2を同じにする、つまり、図6において、第1の供給液室16a及び第3の供給液室16cの形状は平行四辺形である。このような形状にすることで、第1の供給液室16aの内側に位置する側壁16a2に沿って液体がより流れやすくなるため、支持部材2の第2の部分28bがより冷却される。同様な理由で、第3の部分28cがより冷却される。
本実施例では、長さA1を1.5mmとし、長さA2を0.9mmとし、長さB1を1.5mmとし、長さB2を1.5mmとした。そして、各吐出口列12a〜12f同士の位置関係は第1の実施例と同様にした。
そして、第1の実施例と同様条件で、印字試験を行ったところ、15枚の紙まで良好な印字を得ることができた。なお耐久試験においては、6.0×10パルスまで良好な印字ならびに、吐出口形成部材13とベース基板41の間の良好な接合状態が確認された。
なお、図6のような断面形状の支持部材2をセラミック部材で作製する場合、金型が複雑化するため、支持部材2の製造コストの上昇が懸念される。しかしながら支持部材2を、セラミック部材ではなく、樹脂を用いて成形すれば、製造コストの上昇を抑えることができる。
[実施例4]
図7は、本発明の液体吐出ヘッド9の第4の実施例の概略構成図であり、記録素子ユニット6における、支持部材2に支持された記録素子基板1のXZ面での概略断面図である。
上述の実施例では、支持部材2のXZ断面において、第1の供給液室16a及び第3の供給液室16cの形状は、記録素子基板1側の開口の中心と記録素子基板1とは反対側の開口の中心とを通る軸を中心に対称ではなかった。一方、本実施例では、支持部材2のXZ断面において、第1の供給液室16a及び第3の供給液室16cの形状は、記録素子基板1側の開口の中心と記録素子基板1とは反対側の開口の中心とを通る軸を中心に対称となっている(つまり、対称性を有している)。なお、支持部材2のXY断面において、第2の部分28bと第3の部分28cは、記録素子基板1と接する面からその面とは反対側に向かって、X方向に大きくなる必要がある。
本実施例では、長さA1を1.5mm、長さA2を0.7mm、長さB1を1.5mm、長さB2を1.1mmとした。吐出口列12a〜12f同士の位置関係は第1の実施例と同様にした。そして、第1の実施例と同様条件で、印字試験を行ったところ、7枚の紙まで良好な印字を得ることができた。また、耐久試験においては、6.0×10パルスまで良好な印字ならびに、吐出口成形部材13とベース基板41の間の良好な接合状態が確認された。
本実施例では、支持部材2のXZ断面において、第1の供給液室16a及び第3の供給液室16cの形状は、記録素子基板1側の開口の中心と記録素子基板1とが反対側の開口の中心とを通る軸を中心に対称となっている。そのため、液体の流れが第1の実施例に比べて内壁16a2に沿うのではなく第1の供給液室16aの中央を流れやすくなる。したがって、第1の実施例に比べると液体による第2の部分28bの冷却効果が少なかったものと考えられる。また、同様な理由で、液体による第3の部分28cの冷却効果も少なかったものと考えられる。しかしながら、従来の液体吐出ヘッドに比べて、印字試験および耐久試験の結果が改善していることから、記録素子基板1や支持部材2が高温になることを抑制する効果が得られていると考えられる。
1 記録素子基板
2 支持部材
10 エネルギー発生素子
11 吐出口
12、12a〜12f 吐出口列
13 吐出口形成部材
14 供給口
16 供給液室
16a 第1の供給液室
16b 第2の供給液室
16c 第3の供給液室
28a 第1の部分
28b 第2の部分
28c 第3の部分
28d 第4の部分
31 記録素子部
41 ベース基板

Claims (6)

  1. 液体を供給する複数の供給口と、各前記供給口を挟んでそれぞれ配置され、前記液体を吐出させるためのエネルギーを生じさせる複数のエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子にそれぞれ対応して設けられ、前記供給口から前記液体が供給される複数の吐出口からなる複数の吐出口列と、を有する記録素子部と、
    前記記録素子部を支持し、各前記供給口にそれぞれ前記液体を供給する複数の供給液室が設けられた支持部材と、を有し、
    前記供給液室の配列方向に沿う断面において、前記支持部材の、隣接する前記供給液室に挟まれる部分は、前記記録素子部に接する面から該面とは反対の面に向かうにつれて大きくなっている、液体吐出ヘッド。
  2. 前記支持部材の、隣接する前記供給液室の互いに対向する面は、前記記録素子部と接する面から該面とは反対の面に向かうにつれて離れている、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  3. 前記供給液室の配列方向において両端に位置する前記供給液室では、前記供給液室の配列方向において外側に位置する面が、前記記録素子部と接する面から該面とは反対の面に向かうにつれて前記外側に傾斜している、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  4. 前記供給液室の配列方向に沿う断面において、前記供給液室の配列方向の両端に位置する前記供給液室の形状は互いに対称である、請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
  5. 前記記録素子部は1つの記録素子基板からなる、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  6. 前記記録素子部は、少なくとも1つの供給口及びエネルギー発生素子と、少なくとも2つの吐出口列と、をそれぞれ有する、複数の記録素子基板からなる、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
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