以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《記録物》
まず、本発明の記録物について説明する。
ところで、従来から、光沢感のある外観を呈する装飾品の製造方法として、金属めっきや、金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写等が用いられてきた。
しかし、これらの方法では、微細なパターンを形成することや、曲面部への適用が困難であるといった問題があった。
他方、顔料または染料を含む組成物を、インクジェット法等の方法により、記録媒体に付与する記録方法が用いられている。このような方法では、微細なパターンの形成や、曲面部への記録にも好適に適用できるという点で優れている。また、近年、耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとするため等に、紫外線を照射すると硬化する組成物(紫外線硬化型組成物)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、インクジェット法等の印刷法では、顔料や染料の代わりに、金属粉末を適用しようとした場合、当該金属が本来有している光沢感等の特性を十分に発揮させることができないという問題点があり、また、摩擦による外観の変化が大きいという問題点があった。
そこで、発明者は、上記のような問題を解決する目的で鋭意研究を行った結果、本発明に至った。すなわち、本発明の記録物は、記録媒体と、印刷層とを有するものであって、前記印刷層は、金属粉末と、フッ素含有粉末とを含むものであり、前記印刷層を平面視した際に、前記印刷層の表面に露出している前記フッ素含有粉末の構成粒子の前記印刷層の単位面積当たりの数が、0.20個/μm2以上3.0個/μm2以下であることを特徴とする。このように、潤滑性の高いフッ素含有粉末が、必要十分な数だけ印刷層の外表面に露出していることにより、記録物(印刷層)の耐擦性を優れたものとし、摩擦による外観の変化(例えば、光沢感の低下、審美性(美的外観)の低下等)を効果的に防止しつつ、金属粉末を構成する金属材料の質感を十分に発揮させ、記録物(印刷層)の光沢感を優れたものとすることができる。なお、本発明においては、印刷層が、印刷層を平面視した際に印刷層の表面に露出しているフッ素含有粉末の構成粒子の印刷層の単位面積当たりの数が0.20個/μm2以上3.0個/μm2以下である領域を少なくとも一部に有していればよく、このような条件を満足する領域とともに、このような条件を満足しない領域(印刷層の表面に露出しているフッ素含有粉末の構成粒子の印刷層の単位面積当たりの数が前記範囲から外れる領域)を有するものであってもよい。例えば、記録物のうち、視認されにくい部位に前記条件を満足しない領域を有するものや、優れた光沢感が要求されない部位に前記条件を満足しない領域を有するものであってもよい。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の記録物の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の記録物の好適な実施形態を模式的に示す断面図、図2は、本発明の記録物の好適な実施形態を模式的に示す平面図である。なお、図2中では、図を見やすくするため、印刷層2を構成する金属粉末21、フッ素含有粉末22のうち、印刷層2の外表面側に存在するもののみを示しており、印刷層2内部に分散しており、他の粒子と一部が重なり合うものについては、記録物10の外観上視認されるものであっても、図示を省略している。
図1、図2に示すように、本実施形態の記録物(印刷物)10は、記録媒体(基材)1と、印刷層(記録層)2とを有している。
<記録媒体(基材)>
基材1は、後に詳述する印刷層2を支持する機能を有するものである。
基材1は、いかなるものであってもよく、吸収性または非吸収性のいずれを用いてもよく、例えば、紙(普通紙、インクジェット用専用紙等)、プラスチック材料、金属、セラミックス、木材、貝殻、綿、ポリエステル、ウール等の天然繊維・合成繊維、不織布等を用いることができるが、少なくとも表面(印刷層2が形成される部位)が非吸液性の材料(例えば、プラスチック材料、金属、セラミックス、貝殻等)で構成されたものであるのが好ましい。
図示の構成では、基材1は、シート状をなすものであるが、基材1の形状は、特に限定されず、いかなるものであってもよい。
<印刷層>
印刷層2は、金属粉末21と、フッ素含有粉末22と、バインダー23とを含む材料で構成されている。
(金属粉末)
金属粉末21は、複数個の粒子で構成されたものであり、各構成粒子が金属材料を含む材料で構成されたものである。金属粉末21は、記録物10の外観(金属光沢を有する外観)に大きな影響を与える成分である。
金属粉末21を構成する金属材料は、各種単体金属、各種合金等を用いることができるが、Alであるのが好ましい。金属粉末21が、金属材料としてのAlを含む材料で構成されたものであると、記録物10の生産コストの上昇を抑制しつつ、記録物10の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができる。
金属粉末21の構成粒子は、例えば、実質的に金属材料のみで構成されたものであってもよいし、非金属材料で構成された基部の表面に金属材料で構成された層が被覆してなる構成のものであってもよいし、少なくとも表面付近を含む領域が金属材料で構成された母粒子が表面処理剤(非金属材料)による表面処理を受けたものであってもよい。
金属粉末21の構成粒子が、母粒子に対し表面処理剤による表面処理が施したものであると、金属粉末21の構成粒子自体の摩擦抵抗を小さくすることができるため、記録物10の耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、記録物10の製造時において、金属粉末21を印刷層2の外表面付近に好適に配列(リーフィング)させることができ、記録物10(印刷層2)の光沢感を特に優れたものとすることができる。また、記録物10の製造に用いられる組成物のゲル化等を効果的に防止することができ、当該組成物の保存安定性等を特に優れたものとすることができる。
上記表面処理に用いられる表面処理剤は、特に限定されないが、例えば、フッ素系シラン化合物、フッ素系リン酸エステル、フッ素系脂肪酸、フッ素系イソシアネート化合物、リン酸アルキルエステル、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、アルキルイソシアネート、不飽和有機酸、有機チタネート、有機アルミナート、樹脂酸、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
金属粉末21として、フッ素系シラン化合物、フッ素系リン酸エステル、フッ素系脂肪酸およびフッ素系イソシアネート化合物よりなる群から選択される1種または2種以上の表面処理剤で表面処理されたものを含むものであるのが好ましい。これにより、記録物10(印刷層2)の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、金属粉末21を含む記録物製造用の組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができる。これらの表面処理剤については、後に詳述する。
金属粉末21を構成する粒子は、球状、紡錘形状、針状等、いかなる形状のものであってもよいが、鱗片状をなすものであるのが好ましい。これにより、図1に示すように、印刷層2の外表面付近に、金属粉末21の構成粒子を好適に配列(当該粒子の主面が印刷層2の表面形状に沿うように配列)させることにより、記録物10の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができる。また、記録物10の外観上視認される当該粒子の面積に対するバインダー23との接触面積の割合を大きくすることができるため、記録物10の耐擦性、耐久性を特に優れたものとすることができる。
本発明において、鱗片状とは、平板状、湾曲板状等のように、所定の角度から観察した際(平面視した際)の面積が、当該観察方向と直交する角度から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいい、特に、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S1[μm2]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S0[μm2]に対する比率(S1/S0)が、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは8以上である。この値としては、例えば、任意の10個の粒子について観察を行い、これらの粒子についての算出される値の平均値を採用することができる。
金属粉末21を構成する粒子が鱗片状をなすものである場合、粒子の平均厚さは、10nm以上100nm以下であるのが好ましく、20nm以上80nm以下であるのがより好ましい。これにより、上述したような粒子が鱗片状であることによる効果がより顕著に発揮される。
金属粉末21の平均粒径は、500nm以上3.0μm以下であるのが好ましく、800nm以上2.5μm以下であるのがより好ましい。これにより、記録物10の光沢感、高級感をさらに優れたものとすることができる。なお、本発明において、平均粒径とは、粒子分散液をレーザー回折・散乱法を用いて測定された体積分布のメジアン径のことを指し、多数個の測定結果を大きさ(粒子径)毎の存在比率の累積として表した場合に、累積でちょうど中央値の50%を示す粒子のサイズである。
印刷層2中における金属粉末21の含有率は、0.5質量%以上29質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以上19.3質量%以下であるのがより好ましい。これにより、記録物10の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができるとともに、後に詳述するフッ素含有粉末22およびバインダー23の含有率を十分に高いものとすることができるため、記録物10の耐擦性、耐久性を特に優れたものとすることができる。なお、印刷層2は、2種以上の金属粉末21を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
(フッ素含有粉末)
フッ素含有粉末22は、複数個の粒子で構成されたものであり、各構成粒子の少なくとも表面を含む領域が、フッ素を含む材料で構成されたものであり、前述した金属粉末21以外の成分のことをいう。フッ素含有粉末22は、記録物10において、主に耐擦性の向上に寄与する成分である。
印刷層2を平面視した際に、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数は、0.20個/μm2以上3.0個/μm2以下である。これにより、潤滑性の高いフッ素含有粉末22が、必要十分な数だけ印刷層2の外表面に露出していることとなり、記録物10(印刷層2)の耐擦性を優れたものとし、摩擦による外観の変化(例えば、光沢感の低下、審美性(美的外観)の低下等)を効果的に防止しつつ、金属粉末21を構成する金属材料の質感を十分に発揮させ、記録物10(印刷層2)の光沢感を優れたものとすることができる。
これに対し、印刷層2を平面視した際に、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数が前記下限値未満であると、記録物10(印刷層2)の耐擦性を十分に優れたものとすることができない。また、印刷層2を平面視した際に、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数が前記上限値を超えると、印刷層2の表面において、金属粉末21の占める面積率が低くなり、記録物10の光沢感、美的外観を十分に優れたものとすることができない。
印刷層2を平面視した際に、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数は、いかなる方法、条件で求めてもよいが、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察で得られた画像において、所定面積の正方形の領域(図2中、破線で囲んだ領域。例えば、10μm角の正方形の領域(100μm2の領域))について、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の数を数えることにより求めることができる。このような条件で、印刷層2を平面視した際に、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数を求めることにより、容易に当該数を求めることができる。また、印刷層2を平面視した際の各部位で、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数が異なる場合であっても、このような影響を小さくすることができる。また、複数(例えば、10か所)の領域(例えば、前記のような10μm角の正方形の領域(100μm2の領域))について、前記のような測定を行い、これらの各領域について求められた値の平均値を、印刷層2を平面視した際に、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数としてもよい。これにより、印刷層2を平面視した際の各部位で、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数が異なる場合であっても、このような影響をさらに小さくすることができる。なお、前記のように、所定面積の領域に含まれる印刷層の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の数を数える際、前記領域にその一部のみが含まれるフッ素含有粉末22の構成粒子については、平面視した際の面積率に応じた個数として数えることができる。例えば、前記領域に印刷層2を平面視した際の面積のうち70%が含まれるフッ素含有粉末22の構成粒子が1個存在する場合、当該構成粒子については、0.7個として数えることができる。
前述したように、印刷層2を平面視した際に、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数は、0.20個/μm2以上3.0個/μm2以下であればよいが、0.40個/μm2以上2.5個/μm2以下であるのが好ましく、0.60個/μm2以上2.0個/μm2以下であるのがより好ましく、0.80個/μm2以上1.5個/μm2以下であるのがさらに好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
図1に示すように、印刷層2は、金属粉末21の構成粒子よりも高く突出している、フッ素含有粉末22の構成粒子を含むものであるのが好ましい。これにより、記録物10の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
フッ素含有粉末22は、バインダー23に分散した状態において、透明性を有するものであるのが好ましい。これにより、記録物10の色味に悪影響を与えることをより効果的に防止し、記録物10の美的外観を特に優れたものとすることができる。
なお、金属粉末21を含まない以外は印刷層2と同様の構成を有する厚さ100μmの層の厚さ方向の可視光の透過率(波長:600nmの光の透過率)は、85%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。これにより、前述した効果をより効果的に発揮することができる。
フッ素含有粉末22の構成粒子は、少なくとも表面を含む領域が、フッ素を含む材料で構成されたものであればよいが、フッ素系高分子で構成された粒子、フッ素系表面処理剤で処理された無機微粒子のうち少なくとも一方を含むものであるのが好ましい。これにより、記録物10の耐擦性、耐久性を特に優れたものとすることができ、例えば、より強い摩擦力が加わった場合や、より多くの回数の摩擦が加わった場合であっても、優れた美的外観を保持することができる。
特に、フッ素含有粉末22が構成粒子としてフッ素系高分子で構成された粒子を含むものである場合、比重がおよそ1.7から2.2とアルミニウム等の金属よりも軽くなるため、記録物10の製造時において、フッ素含有粉末22を印刷層2の外表面付近に効率よく偏在させることができ、前述したようなフッ素含有粉末22の効果をより顕著に発揮させることができる。また、フッ素含有粉末22が印刷層2の外表面付近に効率よく偏在することから、印刷層2全体におけるフッ素含有粉末22の含有率を比較的低いものとした場合であっても、前述したようなフッ素含有粉末22の効果が十分に発揮されるため、印刷層2中におけるフッ素含有粉末22以外の成分の含有率を高めることができる。その結果、記録物10の美的外観のさらなる向上や、記録物10の機械的強度、耐久性のさらなる向上等を図ることができる。
また、フッ素含有粉末22が構成粒子としてフッ素系表面処理剤で処理された無機微粒子を含むものである場合、以下のような効果が得られる。すなわち、無機微粒子は、特に硬度が高く、熱による延びや紫外線に対して耐久性が特に高いため、より長期にわたって耐擦性を好適に保持することができる。
フッ素含有粉末22が構成粒子としてフッ素系高分子で構成された粒子を含むものである場合、当該フッ素系高分子としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等が挙げられるが、中でも、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。これにより、フッ素含有粉末22の表面エネルギーが特に小さいものとなり、より少ない添加量で効果的に記録物10の耐擦性を向上させることができる。
フッ素含有粉末22が構成粒子としてフッ素系表面処理剤で処理された無機微粒子を含むものである場合、当該無機微粒子(母粒子)の構成材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、マイカ、カーボンブラック、ガラス、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アスベスト、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫化バリウム、硫酸カルシウム、グラファイト、ボロン等が挙げられる。
特に、無機微粒子(母粒子)は、少なくとも表面が酸化物を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、緻密にフッ素系表面処理剤が反応することができ、フッ素含有粉末22の構成粒子の表面エネルギーが非常に小さくなり、少ない添加量で印刷層2の表面に多くの粒子が存在し、固定化された粒子が十分な高さで凸形状を形成できるので耐擦性を特に優れたものとすることができる。
また、無機微粒子(母粒子)は、前述した材料の中でも、特に、シリカ、アルミナおよびチタニアよりなる群から選択される1種または2種以上で構成されたものであるのが好ましい。これにより、フッ素含有粉末22の構成粒子の硬度をより高いものとすることができるとともに、フッ素系表面処理剤で処理を行いやすく、より高い緻密度での表面処理が可能となるため、印刷層2中のフッ素含有粉末22の含有率をさらに低いものとした場合であっても、記録物10の耐擦性、耐久性を十分に優れたものとすることができる。また、フッ素含有粉末22の透明性を特に高いものとすることができるため、記録物10の美的外観をより確実に優れたものとすることができる。
特に、母粒子(無機微粒子)がシリカで構成されたものである場合、以下のような効果が得られる。すなわち、シリカは、フッ素系表面処理剤としてのフッ素系シラン化合物との反応性が高い材料であるとともに、透明度が特に高く、硬度が高い(モース硬度7)材料である。このため、製造される記録物10の耐擦性、耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、記録物10の美的外観をさらに確実に優れたものとすることができる。また、シリカは、安価で汎用性の高い材料であるため、記録物10の生産コストの低減、記録物10の安定的な供給の観点からも好ましい。
また、母粒子がアルミナで構成されたものである場合、以下のような効果が得られる。すなわち、アルミナは、フッ素系表面処理剤としてのフッ素系シラン化合物との反応性が高い材料であるとともに、透明度が特に高く、硬度が高い(モース硬度9)材料である。このため、記録物10の耐擦性、耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、記録物10の美的外観をさらに確実に優れたものとすることができる。また、アルミナは、安価で汎用性の高い材料であるため、記録物10の生産コストの低減、記録物10の安定的な供給の観点からも好ましい。
また、母粒子がチタニアで構成されたものである場合、以下のような効果が得られる。すなわち、チタニアは、透明度が特に高く、硬度が高い(モース硬度7〜7.5)材料である。このため、記録物10の耐擦性、耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、記録物10の美的外観をさらに確実に優れたものとすることができる。また、チタニアは、安価で汎用性の高い材料であるため、記録物10の生産コストの低減、記録物10の安定的な供給の観点からも好ましい。また、チタニアは、極めて安定性が高く、フッ化水素、硫化水素、SO3、塩素等の反応性ガスに対する耐性が高い。
なお、フッ素系表面処理剤としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を有する化合物で、母粒子にフッ素原子を導入することができる化合物を用いることができる。
フッ素含有粉末22が構成粒子としてフッ素系表面処理剤で処理された無機微粒子を含むものである場合、当該フッ素系表面処理剤としては、例えば、例えば、フッ素系シラン化合物、フッ素系リン酸エステル、フッ素系脂肪酸(エステル)、フッ素系イソシアネート等が挙げられるが、中でも、フッ素系シラン化合物、フッ素系リン酸エステル、フッ素系脂肪酸およびフッ素系イソシアネートよりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。これにより、記録物10の耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、記録物10の製造に用いる組成物中において、サイズの異なる様々な硬度の無機微粒子を効果的に分散させることができる。なお、これらの表面処理剤の具体例としては、後に詳述する金属粉末21の構成粒子の母粒子に対して用いられる表面処理剤として例示するもの等が挙げられる。
特に、フッ素系シラン化合物を用いた場合、シリカ、アルミナとの反応性が高いため、記録物10の製造に用いるフッ素含有粉末22を容易に調整することができる。また、フッ素系シラン化合物を用いた場合、母粒子との結合力を特に優れたものとすることができ、記録物10の耐擦性、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、記録物10の耐候性を特に優れたものとすることができる。
また、フッ素系リン酸エステルを用いた場合、酸化鉄、アルミ、アルミナ等で構成された無機微粒子により効果的に表面処理が行うことができる。また、リン酸エステルの表面処理剤は酸に強いため、酸性の環境下においても得られた記録物10が優れた耐久性、耐候性を示す。
また、フッ素系脂肪酸を用いた場合、炭酸カルシウム、チタニアとの反応性が高いため、記録物10の製造に用いるフッ素含有粉末22を容易に調整することができる。また、フッ素系脂肪酸を用いた場合、母粒子との結合力を特に優れたものとすることができるため、記録物10の耐擦性、耐久性を特に優れたものとすることができる。
また、フッ素系イソシアネートを用いた場合、母粒子(無機微粒子)と表面処理剤との結合力を特に強いものとすることができる。このため、記録物10の耐擦性、耐久性を特に優れたものとすることができる。
フッ素含有粉末22を構成する粒子は、球状、紡錘形状、針状(棒状)、鱗片状等、いかなる形状のものであってもよいが、球状をなすものであるのが好ましい。これにより、記録物10の耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、フッ素含有粉末22を構成する粒子が紡錘状、棒状である場合、フッ素含有粉末22を構成する粒子の比表面積が大きくなるため、記録物10の製造時において、記録媒体1上に付与された組成物(フッ素含有粉末22を含む組成物)中でフッ素含有粉末22が浮かび上がりやすくなり、印刷層2の外表面付近により好適に配列させることができ、比較的少ない含有率であっても、耐擦性を優れたものにすることができる。また、フッ素含有粉末22を構成する粒子が紡錘状である場合、紡錘状の長軸方向を表面と平衡にして配向し接触することで面積が高まったり、印刷層2の中に深く入り込んだ状態で硬化・固定化されるため、記録物10の耐擦性がより強まるという効果も得られる。
フッ素含有粉末22の平均粒径は、10nm以上300nm以下であるのが好ましく、50nm以上200nm以下であるのがより好ましい。フッ素含有粉末22の平均粒径が前記範囲内の値であると、記録物10の美的外観、光沢感を十分に優れたものとしつつ、印刷層2の表面において、フッ素含有粉末22が形成する凸形状の高さを、金属粉末21が形成する表面に比べて特に高いものとすることができるため、耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、記録物10の製造に用いる組成物中におけるフッ素含有粉末22の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
これに対し、フッ素含有粉末22の平均粒径が前記下限値未満であると、得られる記録物10表面において、フッ素含有粉末22が形成する凸形状の高さが、金属粉末21が形成する表面よりも十分に高いものとするのが困難となり、耐擦性を十分に優れたものとすることが困難になる可能性がある。また、耐擦性を高めるために、印刷層2中におけるフッ素含有粉末22の含有率を高めることも考えられるが、このような場合、記録物10の光沢度が低下する可能性がある。また、フッ素含有粉末22の平均粒径が前記上限値を超えると、印刷層2の外表面付近において、金属粉末21の占める面積率が低下し、記録物10の美的外観、光沢感が低下する可能性がある。また、記録物10の製造に用いる組成物中におけるフッ素含有粉末22の分散安定性、当該組成物の保存安定性が低下する。
金属粉末21の構成粒子の平均厚さをTM[μm]、フッ素含有粉末22の平均粒径をDF[μm]としたとき、1.5≦DF/TM≦30の関係を満足するのが好ましく、2≦DF/TM≦30の関係を満足するのがより好ましい。これにより、記録物10の美的外観を十分に優れたものとしつつ、記録物10の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
金属粉末21が表面処理剤で処理された粒子を含み、かつ、フッ素含有粉末22が構成粒子としてフッ素系表面処理剤で処理された無機微粒子を含むものである場合、金属粉末21の構成粒子の表面処理に用いられた表面処理剤と、前記無機微粒子の表面処理に用いられたフッ素系表面処理剤とは、同一種の表面処理剤であってもよい。これにより、金属粉末21とフッ素含有粉末22の両者の表面特性(界面エネルギー、帯電状態等)が類似することにより、より確実に印刷層2を平面視した際に金属粉末21とフッ素含有粉末22とが均等に存在するものとすることができ(印刷層2を平面視した際に金属粉末21が偏在する領域とフッ素含有粉末22が偏在する領域とに分離することをより確実に防止することができ)、安定的に、記録物10の美的外観および耐擦性を優れたものとすることができる。また、記録物10の製造に用いる組成物中における分散の安定性が特に優れたものとなり、より長期にわたって粘度や粒度の増加を効果的により抑制することができる。
印刷層2中におけるフッ素含有粉末22の含有率は、0.010質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.10質量%以上3.0質量%以下であるのがより好ましく、0.20質量%以上2.0質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、より容易かつ確実に、印刷層2を平面視した際に、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数を前述した範囲内の値とすることができる。なお、印刷層2は、2種以上のフッ素含有粉末22を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
印刷層2中における金属粉末21の含有率をXM[質量%]、印刷層2中におけるフッ素含有粉末22の含有率をXF[質量%]としたとき、0.05≦XF/XM≦1.0の関係を満足するのが好ましく、0.1≦XF/XM≦0.8の関係を満足するのがより好ましい。これにより、記録物10の光沢感と耐擦性とをより高いレベルで両立することができる。
(バインダー)
バインダー23は、金属粉末21およびフッ素含有粉末22を固定する機能、印刷層2を基材(記録媒体)1に密着させる機能を有するものである。
バインダー23としては、例えば、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の光硬化性樹脂の硬化物等が挙げられる。中でも、バインダー23は、硬化性樹脂の硬化物で構成されたものであるのが好ましく、紫外線硬化性樹脂の硬化物で構成されたものであるのがより好ましい。これにより、記録物10の耐熱性、耐久性等を特に優れたものとすることができる。また、バインダー23が紫外線硬化性樹脂の硬化物である場合、記録物10の製造(印刷層2の形成)に用いる組成物として、紫外線硬化性樹脂を用いることができるが、この場合、記録物10の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、紫外線の照射条件の調整により、容易かつ確実に、印刷層2の表面に露出しているフッ素含有粉末22の構成粒子の印刷層2の単位面積当たりの数を調整することができる。
印刷層2中におけるバインダー23の含有率は、70質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、80質量%以上98質量%以下であるのがより好ましい。これにより、記録物10の光沢感、耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。なお、印刷層2は、バインダー23として2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
(その他の成分)
印刷層2は、前述した金属粉末21、フッ素含有粉末22、バインダー23以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、後に印刷層形成用組成物の構成成分として示すもの等が挙げられる。
印刷層2の厚さは、5μm以上200μm以下であるのが好ましく、10μm以上150μm以下であるのがより好ましく、15μm以上100μm以下であるのがさらに好ましい。これにより、記録物10の光沢感、美的外観を特に優れたものとしつつ、記録物10の耐久性を特に優れたものとすることができる。
記録物10は、いかなる用途のものであってもよく、例えば、装飾品やそれ以外に適用されるものであってもよい。記録物10の具体例としては、コンソールリッド、スイッチベース、センタークラスタ、インテリアパネル、エンブレム、センターコンソール、メーター銘板等の車両用内装品、各種電子機器の操作部(キースイッチ類)、装飾性を発揮する装飾部、指標、ロゴ等の表示物等が挙げられる。
《表面処理剤》
以下、金属粉末21の構成粒子の母粒子に対する表面処理に用いられる表面処理剤としてのフッ素系シラン化合物、フッ素系リン酸エステル、フッ素系脂肪酸およびイソシアネート化合物について詳細に説明する。
まず、表面処理剤のうち、フッ素系シラン化合物について詳細に説明する。
フッ素系シラン化合物としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を有するシラン化合物を用いることができる。
特に、表面処理剤としてのフッ素系シラン化合物は、下記式(1)で表される化学構造を有するものであるのが好ましい。
R1SiX1 aR2 (3−a) (1)
(式(1)中、R1は、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、X1は、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、aは、1以上3以下の整数である。)
これにより、記録物10(印刷層2)の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、記録物10の製造に用いられる組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができる。
式(1)中のR1としては、例えば、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、さらに、分子構造に含まれる水素原子(フッ素原子で置換されていない水素原子)のうちの少なくとも一部がアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基等で置換されていてもよく、炭素鎖中に−O−、−S−、−NH−、−N=等のヘテロ原子やベンゼン等の芳香族環が挟まっていてもよい。R1の具体例としては、例えば、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたフェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ナフチル基、アンスレニル基、ピレニル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、ピリジニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクタデシル基、n−オクチル基、クロロメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、アミノエチル基、シアノ基、メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、アクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基、グリシドキシプロピル基、アセトキシ基等が挙げられる。
式(1)で表されるフッ素系シラン化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、プロピルジメチルクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラデシルトリクロロシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、p−トリルジメチルクロロシラン、p−トリルメチルジクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−トリルトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブチロキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブチロキシシラン、ジ−t−ブチルジ−t−ブチロキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリクロロシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、10−ウンデセニルジメチルクロロシラン、ウンデシルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルオクタデシルジエトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、トリアコンチルジメチルクロロシラン、トリアコンチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルイソプロポキシシラン、メチル−n−ブチロキシシラン、メチルトリ−sec−ブチロキシシラン、メチルトリ−t−ブチロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルイソプロポキシシラン、エチル−n−ブチロキシシラン、エチルトリ−sec−ブチロキシシラン、エチルトリ−t−ブチロキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、2−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、4−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1,3−(トリクロロシリルメチル)ヘプタコサン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシシラン、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、ベンゾオキサシレピンジメチルエステル、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、8−ブロモオクチルトリメトキシシラン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシラン、p−(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、シアノメチルフェネチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリエトキシシラン、3−シクロヘキセニルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルジメチルクロロシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルメチルジクロロシシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、(4−シクロオクテニル)トリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、(ジメチルクロロシリル)メチル−7,7−ジメチルノルピナン、(シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(3−シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(フルフリルオキシメチル)トリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシプロポキシ)ジフェニルケトン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、p−(メチルフェネチル)トリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)ジメチルクロロシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−メチルジエトキシシリル−2−ノルボルネン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ヨードプロピルトリメトキシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチル{2−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)エチルアミノ}−3−プロピオネート、7−オクテニルトリメトキシシラン、R−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、S−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン、フェネチルジメチルメトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェネチルメチルジエトキシシラン、フェネチルジメチルエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、(3−フェニルプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、2−(トリエトキシシリルエチル)−5−(クロロアセトキシ)ビシクロヘプタン、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル−O−メントカルバメート、3−(トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(トリエトキシシリル)プロピルサクシニック無水物、N−〔5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソ−ペンチル〕カプロラクタム、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(トリメトキシシリルエチル)ベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、フェニルビニルジエトキシシラン、3−チオシアナートプロピルトリエトキシシラン、N−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}フタルアミド酸、1−トリメトキシシリル−2−(クロロメチル)フェニルエタン、2−(トリメトキシシリル)エチルフェニルスルホニルアジド、β−トリメトキシシリルエチル−2−ピリジン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムブロマイド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビニルメチルジエトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス−t−ブトキシシラン、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリルフェニルトリクロロシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシラン、フェネチルジイソプロピルクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルジメチルクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、2−(ビシクロヘプチル)ジメチルクロロシラン、2−(ビシクロヘプチル)トリクロロシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ブロモフェニルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、t−ブチルフェニルクロロシラン、t−ブチルフェニルメトキシシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルジメチルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、1,
3−(クロロジメチルシリルメチル)ヘプタコサン、((クロロメチル)フェニルエチル)ジメチルクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)メチルジクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、2−シアノエチルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルジメチルエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン等のシラン化合物が有する水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した構造を有する化合物を挙げることができる。
また、フッ素系シラン化合物(表面処理剤)は、パーフルオロアルキル構造(CnF2n+1)を有するものであるのが好ましい。これにより、記録物10(印刷層2)の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。また、記録物10の製造に用いられる組成物の保存安定性をさらに優れたものとすることができる。
パーフルオロアルキル構造(CnF2n+1)を有するフッ素系シラン化合物としては、例えば、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
CnF2n+1(CH2)mSiX1 aR2 (3−a) (4)
(式(4)中、X1は、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、nは、1以上14以下の整数であり、mは、2以上6以下の整数であり、aは、1以上3以下の整数である。)
このような構造を有する化合物の具体例としては、CF3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)11−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(C2H5)(OC2H5)2等が挙げられる。
また、フッ素系シラン化合物としては、上述したパーフルオロアルキル構造(CnF2n+1)の代わりにパーフルオロアルキルエーテル構造(CnF2n+1O)を有するものを用いることもできる。
パーフルオロアルキルエーテル構造(CnF2n+1O)を有するフッ素系シラン化合物としては、例えば、下記式(5)で表されるものが挙げられる。
CpF2p+1O(CpF2pO)r(CH2)mSiX1 aR2 (3−a) (5)
(式(5)中、X1は、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、pは1以上4以下の整数であり、rは1以上10以下の整数であり、mは、2以上6以下の整数であり、aは、1以上3以下の整数である。)
このような構造を有する化合物の具体例としては、CF3O(CF2O)6−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3O(C3F6O)4−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C3F6O)2(CF2O)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C3F6O)8−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C4F9O)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C4F9O)5−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3O(C3F6O)4−CH2CH2−Si(C2H5)(OCH3)2等が挙げられる。
次に、表面処理剤のうち、フッ素系リン酸エステルについて詳細に説明する。
フッ素系リン酸エステルとしては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を有するリン酸エステルを用いることができる。
特に、フッ素系リン酸エステルは、下記式(2)で表される化学構造を有するものであるのが好ましい。
PORn(OH)3−n (2)
(式(2)中、Rは、CF3(CF2)m−、CF3(CF2)m(CH2)l−、CF3(CF2)m(CH2O)l−、CF3(CF2)m(CH2CH2O)l−、CF3(CF2)mO−、または、CF3(CF2)m(CH2)lO−であり、nは1以上3以下の整数であり、mは2以上18以下の整数であり、lは1以上18以下の整数である。)
これにより、記録物10(印刷層2)の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、記録物10の製造に用いられる組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができる。
式(2)中、mは、3以上14以下の整数であるのが好ましいが、4以上12以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、式(2)中、lは、1以上14以下の整数であるのが好ましいが、1以上10以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、フッ素系リン酸エステル(表面処理剤)は、パーフルオロアルキル構造(CnF2n+1)を有するものであるのが好ましい。これにより、記録物10(印刷層2)の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。また、記録物10の製造に用いられる組成物の保存安定性をさらに優れたものとすることができる。
次に、表面処理剤のうち、フッ素系脂肪酸について詳細に説明する。
フッ素系脂肪酸としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を有する脂肪酸を用いることができる。
フッ素系脂肪酸としては、例えば、CF3−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)3−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)5−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)6−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)7−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)9−CH2CH2-COOH等が挙げられるが、中でも、CF3(CF2)5−CH2CH2-COOHが好ましい。これにより、母粒子を構成する金属原子と、加熱による脱水反応により強固な結合を結び、緻密な膜を形成することができるため、粒子の表面エネルギーを効果的に下げることができる。
次に、表面処理剤のうち、イソシアネート化合物について詳細に説明する。
イソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物を用いることができる。
イソシアネート化合物としては、下記式(6)で表される化学構造を有するもの(アルキルイソシアネート)を用いることができる。
RNCO (6)
(式(6)中、Rは、CH3(CH2)m−であり、mは2以上18以下の整数である。)
これにより、記録物10の製造に用いられる組成物の保存安定性、当該組成物中における金属粉末21の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、種々の分散媒に対する分散安定性が向上するため、前記組成物中における金属粉末21の分散媒(例えば、バインダー23やその前駆物質)の選択の幅が広がる。
式(6)中、mは、3以上14以下の整数であるのが好ましく、4以上12以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、イソシアネート化合物(フッ素系イソシアネート)としては、下記式(7)で表される化学構造を有するものを用いることができる。
RfNCO (7)
(式(7)中、Rfは、CF3(CF2)m−、または、CF3(CF2)m(CH2)l−であり、mは2以上18以下の整数であり、lは1以上18以下の整数である。)
これにより、記録物10の製造時において、より好適に金属粉末21を印刷層2の外表面付近に配列(リーフィング)させることができ、記録物10の印刷層2の光沢感を特に優れたものとすることができる。また、記録物10の印刷層2の耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、記録物10の製造に用いられる組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができる。
式(7)中、mは、3以上14以下の整数であるのが好ましく、4以上12以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、式(7)中、lは、1以上14以下の整数であるのが好ましく、1以上10以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
上記のような表面処理剤は、母粒子に直接処理するものであってもよいが、前記母粒子に対して酸または塩基を処理させた後に、当該母粒子に対して表面処理剤による処理を行うのが好ましい。これにより、母粒子表面に、表面処理剤による化学的な結合による修飾をより確実に行うことができ、上述したような表面処理剤を用いることによる効果をより効果的に発揮させることができる。また、表面処理剤による表面処理を行う前に母粒子となるべき粒子の表面に酸化被膜が形成されている場合であっても、当該酸化被膜を確実に除去することができ、酸化被膜が除去された状態で、表面処理剤による表面処理を行うことができるため、製造される金属粉末21の光沢感を特に優れたものとすることができる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、炭酸、蟻酸、安息香酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、亜硫酸、次亜硫酸、亜硝酸、次亜硝酸、亜リン酸、次亜リン酸等のプロトン酸を用いることができる。中でも、塩酸、リン酸、酢酸が好適である。一方、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。
《印刷層形成用組成物》
次に、記録物10の製造(印刷層2の形成)に好適に用いることのできる組成物(印刷層形成用組成物)について、説明する。
印刷層2の形成は、記録媒体1上に、各種印刷法により、印刷層形成用組成物を付与することにより形成することができる。印刷法としては、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、タコ印刷法等が挙げられるが、インクジェット法が特に好ましい。インクジェット法は、各種印刷法の中でも、特に、微細なパターンの形成や、曲面部への記録を好適に行うことができる点で有利である。また、インクジェット法は、各種印刷法の中でも、特に、オンデマンド性に優れており、多品種製造にも好適に対応することができる。なお、液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インク(組成物)を加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができるが、印刷層形成用組成物の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。以下の説明では、印刷層形成用組成物をインクジェット法に適用する場合について中心的に説明する。
記録物10の製造(印刷層2の形成)には、例えば、金属粉末21とフッ素含有粉末22とバインダー23またはその前駆物質(例えば、高分子材料としてのバインダー23の構成するモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー、プレポリマー等)とを含む組成物を用いてもよいし、これらの3種の構成材料(金属粉末21、フッ素含有粉末22、バインダー23またはその前駆物質)のうち1種または2種を含む組成物を2種類以上組み合わせて用いてもよいが、金属粉末21とフッ素含有粉末22とバインダー23またはその前駆物質とを含む組成物を用いるのが好ましい。これにより、印刷層2の各部位での不本意な組成のばらつきの発生を効果的に防止することができるとともに、記録物10の生産性を特に優れたものとすることができる。以下、金属粉末21とフッ素含有粉末22とバインダー23の前駆物質を含む印刷層形成用組成物について説明する。
印刷層形成用組成物を構成する金属粉末21としては、前述した条件を満たすものを好適に用いることができる。
印刷層形成用組成物中における金属粉末21の含有率は、0.5質量%以上29質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以上19.3質量%以下であるのがより好ましい。これにより、印刷層形成用組成物中における金属粉末21の分散安定性、印刷層形成用組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとし、長期間にわたって安定的に記録物10の製造に用いることができる。また、製造される記録物10の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができるとともに、フッ素含有粉末22およびバインダー23の含有率を十分に高いものとすることができるため、記録物10の耐擦性、耐久性を特に優れたものとすることができる。なお、印刷層形成用組成物は、2種以上の金属粉末21を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
印刷層形成用組成物を構成するフッ素含有粉末22としては、前述した条件を満たすものを好適に用いることができる。
印刷層形成用組成物中におけるフッ素含有粉末22の含有率は、0.010質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.10質量%以上3.0質量%以下であるのがより好ましく、0.20質量%以上2.0質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、印刷層形成用組成物中におけるフッ素含有粉末22の分散安定性、印刷層形成用組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとし、長期間にわたって安定的に記録物10の製造に用いることができる。また、前述した条件を満足する記録物10を、安定的に製造することができる。なお、印刷層形成用組成物は、2種以上のフッ素含有粉末22を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
印刷層形成用組成物を構成するバインダー23の前駆物質(重合性化合物)としては、例えば、紫外線の照射により重合し、硬化する成分を用いることができる。このような成分を含むことにより、印刷層形成用組成物を用いて製造される記録物10の耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとすることができる。
重合性化合物は、液状をなすものであり、印刷層形成用組成物において、金属粉末21およびフッ素含有粉末22を分散する分散媒として機能するものであるのが好ましい。これにより、別途、記録物の製造過程において除去される(蒸発する)分散媒を用いる必要がなく、記録物の製造においても、分散媒を除去する工程を設ける必要がないため、記録物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、分散媒として一般に有機溶媒として用いられているものを使用する必要がないため、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を防止することができる。また、紫外線の照射により重合し、硬化する成分を重合性化合物として含むことにより、様々な材質の記録媒体(基材)1に対して安定した記録物を形成することができ、印刷層2の密着性を特に優れたものとすることができる。
重合性化合物としては、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)等を用いることができるが、印刷層形成用組成物は、重合性化合物として、少なくともモノマー成分を含むものであるのが好ましい。モノマーは、オリゴマー成分等に比べて、一般に、低粘度の成分であるため、印刷層形成用組成物の吐出安定性を特に優れたものとする上で有利である。
特に、印刷層形成用組成物は、重合性化合物として、脂環構造を有するモノマーを含むのが好ましい。このように、脂環構造を有するモノマーを、金属粉末21およびフッ素含有粉末22とともに含むことにより、印刷層形成用組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができるとともに、印刷層形成用組成物を用いて製造される記録物10の印刷層2の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
脂環構造を有するモノマーとしては、例えば、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、アダマンチル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレ−ト、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル (メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル (メタ)アクリレート、メバロン酸ラクトン (メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、トリ(メタ)アクリル化イソシアヌレート等が挙げられるが、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、アダマンチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ペンタメチルピペリジルアクリレ−ト、テトラメチルピペリジルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチル アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル アクリレート、シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、メバロン酸ラクトン アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アクリロイルモルホリン、および、テトラヒドロフルフリルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。これにより、印刷層形成用組成物を用いて製造される記録物10の光沢感、高級感をさらに優れたものとすることができる。また、印刷層形成用組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
中でも、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、および、N−ビニルピロリドンよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、印刷層形成用組成物中における金属粉末21およびフッ素含有粉末22の分散安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、印刷層形成用組成物を用いて製造される記録物10において、金属粉末21を印刷層2の外表面付近により好適に配列させることができ、得られる記録物10の光沢感をさらに優れたものとすることができる。
また、紫外線を照射した際の印刷層形成用組成物の硬化速度、記録物10の生産性について更なる向上を図る観点からは、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルピロリドン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、アクリロイルモルホリン、および、テトラヒドロフルフリルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましく、アクリロイルモルホリン、および/または、γ−ブチロラクトンアクリレートを含むものであるのがより好ましく、γ−ブチロラクトンアクリレートを含むものであるのがさらに好ましい。
また、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、および、ベンジルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、印刷層形成用組成物を硬化させて形成される印刷層2の可撓性をさらに優れたものとすることができる。
また、印刷層形成用組成物を硬化させて形成される印刷層2の耐擦性の更なる向上を図る観点からは、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、アダマンチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、および、アクリロイルモルホリンよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましく、γ−ブチロラクトンアクリレート、および/または、N−ビニルカプロラクタムを含むものであるのがより好ましい。
また、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、イソボルニルアクリレート、および、テトラヒドロフルフリルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、印刷層形成用組成物の硬化時における収縮率をより小さいものとし、印刷層形成用組成物を硬化させて形成される印刷層2に不本意な皺などが生じることによる光沢感の低下等をより効果的に防止することができる。
印刷層形成用組成物中における脂環構造を有するモノマーの含有率は、40質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上88質量%以下であるのがより好ましく、55質量%以上85質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、金属粉末21およびフッ素含有粉末22の分散安定性を特に優れたものとし、長期にわたって特に優れた吐出安定性が得られる。特に、印刷層形成用組成物が分散剤を含まないものであっても、上記のような優れた効果が得られる。これに対し、印刷層形成用組成物中における脂環構造を有するモノマーの含有率が前記下限値未満である場合には、金属粉末21およびフッ素含有粉末22の分散性が低下し、インクジェット法による液滴吐出の安定性が低下する可能性がある。また、この場合、印刷層形成用組成物の液滴吐出の経時的安定性も低下する可能性がある。また、印刷層形成用組成物中における脂環構造を有するモノマーの含有率が前記上限値を超える場合には、金属粉末21およびフッ素含有粉末22の分散安定性が過度に向上することで、記録媒体1に付与された印刷層形成用組成物において、金属粉末21の内部存在比率が高まり、付与された印刷層形成用組成物の外表面付近に、金属粉末21およびフッ素含有粉末22を好適に配列させることが困難となり、最終的に得られる記録物10(印刷層2)の光沢感、耐擦性を十分に優れたものとすることが困難になる可能性がある。なお、印刷層形成用組成物は、脂環構造を有するモノマーとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
脂環構造を有するモノマーは、共有結合により形成された環状構造の構成原子数が、5以上のものであるのが好ましく、6以上のものであるのがより好ましい。これにより、印刷層形成用組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができる。
印刷層形成用組成物は、脂環構造を有するモノマーとして、脂環構造中にヘテロ原子を含む単官能モノマー(芳香族性を示さない複素環を有する単官能モノマー)を含むものであるのが好ましい。これにより、金属粉末21およびフッ素含有粉末22の分散安定性を特に優れたものとし、長期にわたって特に優れた吐出安定性が得られる。特に、印刷層形成用組成物が分散剤を含まないものであっても、上記のような優れた効果が得られる。このような単官能モノマーとしては、例えば、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、メバロン酸ラクトン (メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
印刷層形成用組成物中における前記単官能モノマー(脂環構造中にヘテロ原子を含む単官能モノマー)の含有率は、10質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、15質量%以上75質量%以下であるのがより好ましい。これにより、硬化収縮を抑制し、散乱が少なく、より光沢感に優れた印刷層2を備えた記録物10の製造に好適に用いることができる。なお、印刷層形成用組成物は、脂環構造中にヘテロ原子を含む単官能モノマーとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
本発明において、印刷層形成用組成物を構成する重合性化合物は、脂環構造を有さないモノマーを含むものであってもよい。
このようなモノマー(脂環構造を有さないモノマー)としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、および、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1.9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール300ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール600ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、3−(メタ)アクリロイロキシプロピルアクリレート、w−カルボキシ(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。脂環構造を有するモノマーに加えて、このような脂環構造を有さないモノマーを含むことにより、印刷層形成用組成物の保存安定性、吐出安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の印刷層形成用組成物の反応性を特に優れたものとし、記録物10の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成される印刷層2の耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
中でも、フェノキシエチルアクリレートを含むものである場合、印刷層形成用組成物を用いて製造される記録物10において、金属粉末21を印刷層2の外表面付近により好適に配列させることができ、得られる記録物10の光沢感をさらに優れたものとすることができる。また、印刷層形成用組成物を用いて製造される記録物10において、フッ素含有粉末22を印刷層2の外表面付近により好適に配列させることができ、得られる記録物10の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
また、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むものである場合、紫外線を照射した際の印刷層形成用組成物の硬化速度、記録物の生産性をさらに優れたものとすることができる。
また、フェノキシエチルアクリレート、および/または、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレートを含むものである場合、印刷層形成用組成物を硬化させて形成される印刷層2の可撓性をさらに優れたものとすることができる。
また、印刷層形成用組成物を硬化させて形成される印刷層2の耐擦性の更なる向上を図る観点からは、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、および、トリプロピレングリコールジアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましく、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むものであるのがより好ましい。
また、フェノキシエチルアクリレートを含むものである場合、印刷層形成用組成物の硬化時における収縮率をより小さいものとし、印刷層形成用組成物を硬化させて形成される印刷層2に不本意な皺などが生じることによる光沢感の低下等をより効果的に防止することができる。
印刷層形成用組成物中における脂環構造を有するモノマー以外のモノマーの含有率は、5質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上40質量%以下であるのがより好ましい。これにより、印刷層形成用組成物の硬化速度、可撓性、硬化時における収縮率等の調整がさらに容易になる。なお、印刷層形成用組成物は、脂環構造を有さないモノマーとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
印刷層形成用組成物は、重合性化合物として、モノマー以外に、オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等を含むものであってもよい。オリゴマー、プレポリマーとしては、例えば、上述したようなモノマーを構成成分としたものを用いることができる。印刷層形成用組成物は、特に多官能のオリゴマーを含むものであるのが好ましい。これにより、印刷層形成用組成物の保存安定性を優れたものとしつつ、形成される印刷層2の耐擦性等を特に優れたものとすることができる。オリゴマーとしては、繰り返し構造がウレタンであるウレタンオリゴマー、繰り返し構造がエポキシであるエポキシオリゴマー等が好ましく用いられる。
印刷層形成用組成物中における重合性化合物の含有率は、70質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、80質量%以上98質量%以下であるのがより好ましい。これにより、印刷層形成用組成物の保存安定性、吐出安定性、硬化性をさらに優れたものとすることができるとともに、印刷層形成用組成物を用いて製造される記録物10の光沢感、耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。なお、印刷層形成用組成物は、重合性化合物として2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
また、印刷層形成用組成物は、下記式(8)で示される部分構造を有する物質Aを含むものであるのが好ましい。
印刷層形成用組成物が、このような化学構造を有する物質Aを、上記のような表面処理が施された金属粉末21およびフッ素含有粉末22とともに含むこと、さらには、脂環構造を有するモノマーとともに含むことにより、印刷層形成用組成物の保存安定性、硬化性を特に優れたものとすることができる。また、印刷層形成用組成物を用いて製造される記録物においては、金属粉末21を構成する金属材料が本来有している光沢感・高級感をより効果的に発揮させ、印刷層2の光沢感、耐擦性を特に優れたものとし、記録物10の耐久性を特に優れたものとすることができる。
式(8)中、R1は、酸素原子、水素原子、炭化水素基またはアルコキシル基(酸素原子に鎖式または脂環式の炭化水素基が結合したもの)であればよいが、特に、水素原子、メチル基、または、オクチルオキシ基であるのが好ましい。これにより、印刷層形成用組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、印刷層形成用組成物を用いて形成される印刷層2の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
また、式(8)中、R2〜R5は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基であればよいが、炭素数1以上3以下のアルキル基であるのが好ましく、メチル基であるのがより好ましい。これにより、印刷層形成用組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、印刷層形成用組成物を用いて形成される印刷層2の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
印刷層形成用組成物中における物質Aの含有率は、0.1質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下であるのがより好ましい。これにより、印刷層形成用組成物の保存安定性、吐出安定性、硬化性をさらに優れたものとすることができるとともに、印刷層形成用組成物を用いて製造される記録物10の光沢感、耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。なお、印刷層形成用組成物は、物質Aとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
物質Aの含有率をXA[質量%]、金属粉末21の含有率をXM[質量%]としたとき、0.01≦XA/XM≦0.8の関係を満足するのが好ましく、0.05≦XA/XM≦0.4の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、印刷層形成用組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、印刷層形成用組成物を用いて形成される印刷層2の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
印刷層形成用組成物は、分散剤を含むものであってもよい。これにより、印刷層形成用組成物中における金属粉末21、フッ素含有粉末22の分散安定性をさらに優れたものとすることができ、印刷層形成用組成物の保存安定性をより優れたものとすることができる。
特に、印刷層形成用組成物は、分散剤として、塩基性で重合体構造を有するもの(以下、「塩基性高分子分散剤」ともいう)を含むものであってもよい。これにより、印刷層形成用組成物の保存安定性をさらに優れたものとすることができる。
なお、塩基性高分子分散剤は、塩基性を示し、重合体構造を有するものであればよく、具体的な分子量は限定されない。
塩基性高分子分散剤を構成する重合体構造は、特に限定されないが、例えば、アクリル系の重合体構造(共重合体を含む)、メタクリル系の重合体構造(共重合体を含む)、ポリウレタン系の重合体構造、水酸基含有カルボン酸エステル構造、ポリエーテル系の重合体構造、シリコーン系の重合体構造等が挙げられる。
塩基性高分子分散剤のアミン価は、特に限定されないが、3mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であるのが好ましく、10mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であるのがより好ましい。
塩基性高分子分散剤の具体例としては、DISPERBYK−116(ビックケミー社製)、DISPERBYK−182(ビックケミー社製)、DISPERBYK−183(ビックケミー社製)、DISPERBYK−184(ビックケミー社製)、DISPERBYK−2155(ビックケミー社製)、DISPERBYK−2164(ビックケミー社製)、DISPERBYK−108(ビックケミー社製)、DISPERBYK−112(ビックケミー社製)、DISPERBYK−198(ビックケミー社製)、DISPERBYK−2150(ビックケミー社製)、PAA−1112(日東紡社製)等を挙げることができる。
印刷層形成用組成物が分散剤を含むものである場合、印刷層形成用組成物中における分散剤の含有率は、5.0質量%以下であるのが好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下であるのがより好ましい。これにより、印刷層形成用組成物を用いて製造される記録物10の光沢感を十分に優れたものとしつつ、印刷層形成用組成物の保存安定性、吐出安定性、硬化性をさらに優れたものとすることができる。なお、印刷層形成用組成物は、塩基性高分子分散剤として2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。なお、印刷層形成用組成物中における分散剤の含有率が高すぎると、金属粉末21、フッ素含有粉末22の分散安定性が過度に向上することで、記録媒体1に付与された印刷層形成用組成物において、金属粉末21およびフッ素含有粉末22の内部存在比率が高まり、付与された印刷層形成用組成物の外表面付近に、金属粉末21およびフッ素含有粉末22を好適に配列させることが困難となり、最終的に得られる記録物10(印刷層2)の光沢感、耐擦性を十分に優れたものとすることが困難になる可能性がある。
印刷層形成用組成物は、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、光重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、溶剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
光重合開始剤は、紫外線照射によってラジカルやカチオン等の活性種を発生し、上記重合性化合物の重合反応を開始させるものであれば特に制限されない。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができるが、光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤は、紫外線領域に吸収ピークを有していることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、重合性化合物への溶解性および硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物を併用することがより好ましい。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、およびビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられ、これらのうちから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
印刷層形成用組成物中における光重合開始剤の含有量は、0.5質量%以上10質量%以下であるのが好ましい。光重合開始剤の含有量が前記範囲であると、紫外線硬化速度が十分大きく、且つ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色がほとんどない。
印刷層形成用組成物がスリップ剤を含むものであると、レベリング作用により記録物10(印刷層2)の表面が平滑になり、耐擦性が向上する。
スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン、ポリアクリレート変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、ポリアクリレート、ポリエステル等の高分子系界面活性剤を用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、または、ポリアクリレート変性ジメチルシロキサンを用いることが好ましい。
なお、印刷層形成用組成物は、重合禁止剤を含むものであってもよいが、重合禁止剤を含む場合であっても、印刷層形成用組成物中における重合禁止剤の含有率は、0.6質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以下であるのがより好ましい。これにより、相対的に、印刷層形成用組成物中における重合性化合物の含有率を高いものとすることができるため、印刷層形成用組成物を用いて形成される印刷層2の耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
また、印刷層形成用組成物は、記録物の製造工程において除去される(蒸発する)有機溶剤を含まないものであるのが好ましい。これにより、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を効果的に防止することができる。
振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される、印刷層形成用組成物の室温(20℃)での粘度は、20mPa・s以下であるのが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、インクジェット法による液滴吐出を好適に行うことができる。
上述したような印刷層形成用組成物は、記録媒体1に付与された後に、紫外線の照射により硬化し、印刷層2を形成する。
紫外線源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、紫外線レーザダイオード(UV−LD)等を用いることができる。中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV−LED)および紫外線レーザダイオード(UV−LD)が好ましい。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、本発明の記録物が記録媒体(基材)と印刷層とからなるものである場合について中心的に説明したが、本発明の記録物は、記録媒体(基材)、印刷層に加え、他の構成を有するものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
[1]印刷層形成用組成物の製造
まず、表面が平滑なポリエチレンテレフタレート製のフィルム(表面粗さRaが0.02μm以下)を用意した。
次に、このフィルムの一方の面の全体にシリコーンオイルを塗布した。
次に、シリコーンオイルを塗布した面側に、蒸着法により、Alで構成された膜を形成した。
次に、Alの膜が形成されたポリエチレンテレフタレート製のフィルム(基材)を、ジエチレングリコールジエチルエーテル:99質量部にフッ素系表面処理剤としてのCF3(CF2)5(CH2)2O(P)(OH)2:1質量部を溶解してなる液体中に入れ、55℃にて27kHzの超音波振動を3時間付与した。これにより、Al製の母粒子にCF3(CF2)5(CH2)2O(P)(OH)2による表面処理が施された鱗片状の粒子からなる金属粉末の分散液が得られた。
このようにして得られた金属粉末の平均粒径は0.9μm、平均厚さは、30nmであった。
次に、金属粉末の分散液を、ポリテトラフルオロエチレンで構成され球状の粒子からなるフッ素含有粉末(平均粒径:0.3μm)、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのγ−ブチロラクトンアクリレート、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのフェノキシエチルアクリレート、下記式(9)で表される化学構造を有する物質A、塩基性高分子分散剤としてのDISPERBYK−182(ビックケミー社製)、光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(ACETO社製)、および、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)と混合することにより、印刷層形成用組成物(記録物製造用組成物)を得た。
[2]記録物の製造
上記のようにして得られた印刷層形成用組成物を用いて、以下のようにして、記録物としてのインテリアパネルを製造した。
まず、印刷層形成用組成物をインクジェット装置に投入した。
その後、ポリカーボネート(旭硝子社製、カーボグラス ポリッシュ 2mm厚)を用いて成形した曲面部を有する基材(記録媒体)上に、所定のパターンで、印刷層形成用組成物を吐出した。
その後、60℃で5分間加熱した後、365nm、380nm、395nmの波長に極大値を有するスペクトルの紫外線を、照射強度160mW/cm2を10秒間照射し、基材上の印刷層形成用組成物を硬化させ、記録物としてのインテリアパネルを得た。印刷層形成用組成物の液滴への紫外線の照射は、液滴が基材に着弾してから1.0秒後に開始した。形成された印刷層の最小厚さは、20μm、印刷層の最大厚さは、25μmであった。
(実施例2〜20)
金属粉末の構成粒子およびフッ素含有粉末の構成粒子を、表1に示すような構成にするとともに、印刷層形成用組成物の調製に用いる原料の種類・比率を変更することにより、表2、表3に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にして印刷層形成用組成物を調製し、記録媒体(基材)の構成材料を表1に示すようにし、印刷層形成用組成物の付与量を調整することにより印刷層の厚さを表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして記録物を製造した。
(比較例1)
フッ素含有粉末を含まない組成とした以外は、前記実施例1と同様にして印刷層形成用組成物を調製し、当該印刷層形成用組成物を用いた以外は、前記実施例1と同様にして記録物を製造した。
(比較例2、3)
印刷層形成用組成物の調製に用いる原料の種類・比率を変更することにより、表3に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にして印刷層形成用組成物を調製し、当該印刷層形成用組成物を用いた以外は、前記実施例1と同様にして記録物を製造した。
(比較例4〜6)
金属粉末の構成粉末の母粒子として、ガスアトマイズ法を用いて製造された球形状のAl粒子を用いた以外は、それぞれ、前記比較例1〜3と同様にして印刷層形成用組成物を調製し、当該印刷層形成用組成物を用いた以外は、前記実施例1と同様にして記録物を製造した。
前記各実施例および比較例について、記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物に含まれる金属粉末およびフッ素含有粉末の構成、記録物の製造に用いた基材の構成材料を表1にまとめて示し、印刷層形成用組成物の組成および印刷層を平面視した際に、印刷層の表面に露出しているフッ素含有粉末の構成粒子の印刷層の単位面積当たりの数N[個/μm2]を表2、表3にまとめて示した。なお、表中、ポリカーボネートを「PC」、ポリエチレンテレフタレートを「PET」、低密度ポリエチレンを「PE」、2軸延伸ポリプロピレンを「PP」、硬質塩化ビニルを「PVC」、フッ素系リン酸エステル化合物としてのCF3(CF2)5(CH2)2O(P)(OH)2を「FAP1」、フッ素系シラン化合物としての(CF3(CF2)7CH2CH2Si(OC2H5)3)を「FAS1」、フッ素系シラン化合物としての(CF3(CF2)5CH2CH2Si(OC2H5)3)を「FAS2」、フッ素系脂肪酸としてのCF3(CF2)7(CH2)2COOHを「FFA1」、フッ素系イソシアネートとしてのCF3(CF2)7(CH2)2NCOを「IS1」、ポリテトラフルオロエチレンを「PTFE」、CH3(CH2)7O−PO(OH)2を「S’1」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのγ−ブチロラクトンアクリレートを「BLA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのテトラヒドロフルフリルアクリレートを「THFA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのN−ビニルカプロラクタムを「VC」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのN−ビニルピロリドンを「VP」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのアクリロイルモルホリンを「AMO」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを「TAOEI」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートを「DCPTeOEA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのアダマンチルアクリレートを「AA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジメチロールトリシクロデカンジアクリレートを「DMTCDDA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジメチロールジシクロペンタンジアクリレートを「DMDCPTA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルアクリレートを「DCPTeA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンタニルアクリレートを「DCPTaA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのイソボルニルアクリレートを「IBA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのシクロヘキシルアクリレートを「CHA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジアクリル化イソシアヌレートを「DAI」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのトリアクリル化イソシアヌレートを「TAI」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのγ−ブチロラクトンメタクリレートを「BLM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのテトラヒドロフルフリルメタクリレートを「THFM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートを「DCPTeOEM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのアダマンチルメタクリレートを「AM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのペンタメチルピペリジルメタクリレートを「PMPM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのテトラメチルピペリジルメタクリレートを「TMPM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としての2−メチル−2−アダマンチル メタクリレートを「MAM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としての2−エチル−2−アダマンチル メタクリレートを「EAM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのメバロン酸ラクトン メタクリレートを「MLM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルメタクリレートを「DCPTeM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンタニルメタクリレートを「DCPTaM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのイソボルニルメタクリレートを「IBM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのシクロヘキシルメタクリレートを「CHM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのシクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートを「CHDOLA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としての(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートを「MEDOLA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのフェノキシエチルアクリレートを「PEA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのジプロピレングリコールジアクリレートを「DPGDA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのトリプロピレングリコールジアクリレートを「TPGDA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としての2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレートを「HPPA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としての4−ヒドロキシブチルアクリレートを「HBA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのエチルカルビトールアクリレートを「ECA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのメトキシトリエチレングリコールアクリレートを「MTEGA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのt−ブチルアクリレートを「TBA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのベンジルアクリレートを「BA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのアクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルを「VEEA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのベンジルメタクリレートを「BM」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのウレタンアクリレートを「UA」、塩基性高分子分散剤としてのDISPERBYK−182(ビックケミー社製、アミン価:13mgKOH/g)を「D2」、塩基性高分子分散剤としてのDISPERBYK−2155(ビックケミー社製、アミン価:48mgKOH/g)を「D5」、上記式(9)で表される化合物(物質A)を「A1」、下記式(10)で表される化合物(物質A)を「A2」、下記式(11)で表される化合物(物質A)を「A3」、下記式(12)で表される物質Aを「A4」、Irgacure 819(チバ・ジャパン社製)を「ic819」、Speedcure TPO(ACETO社製)を「scTPO」、Speedcure DETX(Lambson社製)を「scDETX」、UV−3500(ビックケミー社製)を「UV3500」、ヒドロキノンモノメチルエーテルを「MEHQ」、LHP−96(楠本化成社製)を「LHP」、LF−1984(楠本化成社製)を「LF」で示した。また、表中、実施例15について、母粒子の構成材料の組成は、各元素の含有率を重量比で示した。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例の記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物の20℃における粘度は、いずれも、3mPa・s以上15mPa・s以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例の記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物を構成する金属粉末に関して、それぞれ任意の10個の金属粒子について観察を行い、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S1[μm2]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S0[μm2]に対する比率(S1/S0)を求め、これらの平均値を求めたところ、S1/S0の平均値は、いずれも、19以上であった。また、D2、D5は、いずれも、塩基性で重合体構造を有するもの(塩基性高分子分散剤)である。また、金属粉末を含まない以外は前記各実施例で用いた印刷層形成用組成物と同様の組成を有する組成物を硬化させてなる厚さ100μmの硬化物の厚さ方向の可視光の透過率(波長:600nmの光の透過率)は、いずれも、90%以上であった。また、印刷層を平面視した際に、印刷層の表面に露出しているフッ素含有粉末の構成粒子の印刷層の単位面積当たりの数N[個/μm2]は、以下のようにして求めた。すなわち、印刷層について、10μm角の正方形の領域(100μm2の領域)を10か所、ランダムに決定し、これらの領域について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察で得られた画像において、印刷層の表面に露出しているフッ素含有粉末の構成粒子の数を数えることにより、印刷層の単位面積当たりにおいて、印刷層の表面に露出しているフッ素含有粉末の構成粒子の数を求め、これらの平均値(相加平均)をN[個/μm2]として求めた。なお、各実施例の記録物では、いずれも、前記10か所の領域すべてにおいて、印刷層の表面に露出しているフッ素含有粉末の構成粒子の数は、0.20個/μm2以上3.0個/μm2以下であり、前記のようにして求められた平均値から±5%の範囲に含まれる値であった。また、比較例2、5の記録物では、前記10か所の領域すべてにおいて、印刷層の表面に露出しているフッ素含有粉末の構成粒子の数は、0.18個/μm2以下であり、前記のようにして求められた平均値から±5%の範囲に含まれる値であった。比較例3、6の記録物では、前記10か所の領域すべてにおいて、印刷層の表面に露出しているフッ素含有粉末の構成粒子の数は、3.2個/μm2以上であり、前記のようにして求められた平均値から±5%の範囲に含まれる値であった。また、前記各実施例の記録物は、いずれも、印刷層が、金属粉末の構成粒子よりも高く突出しているフッ素含有粉末の構成粒子を含むものであった。
[3]記録物の評価
上記のようにして得られた各記録物について、以下のような評価を行った。
[3.1]記録物の外観評価
前記各実施例および比較例の各記録物を目視により観察し、以下の7段階の基準に従い、評価した。
A:高級感に溢れる光沢感を有し、極めて優れた外観を有している。
B:高級感に溢れる光沢感を有し、非常に優れた外観を有している。
C:高級感のある光沢感を有し、優れた外観を有している。
D:高級感のある光沢感を有し、良好な外観を有している。
E:光沢感に劣り、外観がやや不良。
F:光沢感に劣り、外観が不良。
G:光沢感に劣り、外観が極めて不良。
[3.2]光沢度
前記各実施例および比較例の各記録物の印刷層について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度が300以上。
B:光沢度が250以上300未満。
C:光沢度が150以上250未満。
D:光沢度が150未満。
[3.3]耐擦性
前記各実施例および比較例の記録物について、記録物の製造から48時間経過した時点で、JIS L0849に準じ、学振式堅牢度試験機において500gの荷重を載せて布擦りを30回行い、上記[3.2]で述べたのと同様の方法により、布擦り後の記録物についても光沢度(煽り角度60°)を測定し、布擦り前後での光沢度の低下率を求め、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度の低下率が10%未満。
B:光沢度の低下率が10%以上20%未満。
C:光沢度の低下率が20%以上30%未満。
D:光沢度の低下率が30%以上50%未満。
E:光沢度の低下率が50%以上。
[4]記録物の製造に用いた組成物についての評価
記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物について、以下のような評価を行った。
[4.1]液滴吐出の安定性評価(吐出安定性評価)
前記各実施例および比較例の記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物について、下記に示すような試験による評価を行った。
まず、チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した液滴吐出装置および前記各実施例および比較例の記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物を用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、50%RHの環境下で、各印刷層形成用組成物について、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、2000000発(2000000滴)の液滴の連続吐出を行った。その後、液滴吐出装置の運転を停止し、液滴吐出装置の流路に各印刷層形成用組成物が充填された状態で、25℃、50%RHの環境下に、360時間放置した。
その後、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、25℃、50%RHの環境下で、4000000発(4000000滴)の液滴の連続吐出を行った。上記360時間放置した後の、液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された4000000発の液滴について、ノズル面から500μm離れた基材(記録媒体)に着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されていると言える。
A:ズレ量dの平均値が0.07μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.07μm以上0.14μm未満。
C:ズレ量dの平均値が0.14μm以上0.17μm未満。
D:ズレ量dの平均値が0.17μm以上0.21μm未満。
E:ズレ量dの平均値が0.21μm以上。
[4.2]印刷層形成用組成物の周波数特性
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した液滴吐出装置および前記各実施例および比較例の記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物を用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、50%RHの環境下で、各印刷層形成用組成物について、液滴吐出ヘッドの全ノズルから、ピエゾ素子の振動数(周波数)を変化させつつ、液滴吐出を行った。各周波数での液滴吐出時間は20分間とした。20分間の吐出後時点で未吐出のノズル数が全ノズル数の1%未満の周波数までを実使用可能な最高周波数として、実使用可能な周波数範囲を以下の4段階の基準に従い、評価した。この値が大きいほど周波数特性に優れていると言える。
A:15kHz以上。
B:11kHz以上15kHz未満。
C:5kHz以上11kHz未満。
D:5kHz未満。
[4.3]印刷層形成用組成物の保存安定性評価(長期安定性評価)
[4.3.1]沈降性(分散の安定性)
前記各実施例および比較例の記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物について、40℃の環境下に、60日間放置した後、ろ過精度3μmのカプセルフィルタ(ヤマシンフィルタ社製)にて1L通液した際の通液前後の濃度を測定し、分散不足による粗大粒子をフィルタろ過することによるロスを濃度の減少率で求め、以下の基準に従い、評価した。
A:インク濃度減少率が5%未満。
B:インク濃度減少率が5%以上10%未満。
C:インク濃度減少率が10%以上20%未満。
D:インク濃度減少率が20%以上40%未満。
[4.3.2]粘度の上昇率
前記各実施例および比較例の記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物について、60℃の環境下に、20日間放置した後、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された各印刷層形成用組成物の20℃における粘度を測定し、製造直後からの粘度の上昇率を求め、以下の基準に従い、評価した。
A:粘度の上昇率が5%未満。
B:粘度の上昇率が5%以上10%未満。
C:粘度の上昇率が10%以上18%未満。
D:粘度の上昇率が18%以上23%未満。
E:粘度の上昇率が23%以上、または、異物の発生が認められる。
[4.4]硬化性
前記各実施例および比較例の記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物について、エプソン製インクジェットプリンター;PM800Cへ導入し、記録媒体として三菱樹脂(株)製、ダイアホイル G440E(厚さ38μm)を用いて、インク量wet 9g/m2にて、ベタ印刷を行い、印刷後、ただちにLED−UVランプ;フォセオン社製 RX firefly(ギャップ6mm ピーク波長395nm 1000mW/cm2)を用いて紫外線の照射を行い、印刷層形成用組成物が硬化したか否かを確認し、以下の5段階の基準に従い、評価した。硬化したか否かは、綿棒にて表面をこすって、未硬化の印刷層形成用組成物が付着しないか否かで判断した。なお、下記A〜Eの照射量に該当するかどうかは、ランプを何秒照射したかによって算出できる。
A:200mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
B:200mJ/cm2以上350mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
C:350mJ/cm2以上500mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
D:500mJ/cm2以上1000mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
E:1000mJ/cm2以上の紫外線照射量にて硬化する。もしくはまったく硬化
しない。
これらの結果を表4、表5に示す。
表4から明らかなように、本発明の記録物は、優れた光沢感、外観を有しており、印刷層の耐擦性にも優れていた。また、表5から明らかなように、本発明の記録物の製造に用いた印刷層形成用組成物は、液滴の吐出安定性、保存安定性、硬化性等に優れていた。これに対して、比較例では、満足な結果が得られなかった。