JP2015089672A - 印刷用金属メッシュ織物および印刷用スクリーン版 - Google Patents

印刷用金属メッシュ織物および印刷用スクリーン版 Download PDF

Info

Publication number
JP2015089672A
JP2015089672A JP2013231468A JP2013231468A JP2015089672A JP 2015089672 A JP2015089672 A JP 2015089672A JP 2013231468 A JP2013231468 A JP 2013231468A JP 2013231468 A JP2013231468 A JP 2013231468A JP 2015089672 A JP2015089672 A JP 2015089672A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
screen
printing
tungsten
pattern
metal mesh
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013231468A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6148604B2 (ja
Inventor
浩 大高
Hiroshi Otaka
浩 大高
明彦 宮澤
Akihiko Miyazawa
明彦 宮澤
裕樹 佐野
Hiroki Sano
裕樹 佐野
秀治 岸野
Hideji Kishino
秀治 岸野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NBC Meshtec Inc
Original Assignee
NBC Meshtec Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NBC Meshtec Inc filed Critical NBC Meshtec Inc
Priority to JP2013231468A priority Critical patent/JP6148604B2/ja
Publication of JP2015089672A publication Critical patent/JP2015089672A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6148604B2 publication Critical patent/JP6148604B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Printing Plates And Materials Therefor (AREA)

Abstract

【課題】高精細のパターンを優れた寸法精度で繰り返し印刷可能とするスクリーン印刷用の金属メッシュ織物及びこの金属メッシュ織物を利用したスクリーン印刷用スクリーン版を提供する。
【解決手段】金属線材からなる縦糸及び横糸が互いに交差するように製織された構造を有する金属メッシュ織物であって、前記縦糸及び前記横糸の少なくとも一方が、タングステン又はタングステン合金であり、前記タングステン又はタングステン合金の糸の表面には、平均厚さが15nm以上120nm以下のタングステン又はタングステン合金の酸化物被膜が形成されており、かつ波長375nmの光を前記金属メッシュ織物に照射した場合の反射率であって、前記金属メッシュ織物を所定枚数以上重ねた場合にほぼ一定の値となる反射率が6%以下であることを特徴とする印刷用金属メッシュ織物。
【選択図】図1

Description

本発明は、高精細なパターンをスクリーン印刷で行う場合に用いる金属メッシュ織物およびスクリーン版に関するものである。より詳しくは、高精細のパターンを優れた寸法精度で繰り返し印刷可能とするスクリーン印刷用の金属メッシュ織物及びこの金属メッシュ織物を利用したスクリーン印刷用スクリーン版の提供に関するものである。
従来からスクリーン印刷が使用されているプリント回路、IC回路、各種ディスプレイ装置の電子部品基板の印刷、太陽電池電極印刷等をはじめとする印刷法における電子部品関係の用途は、近年ますます高精細化が望まれている。すなわち高精細なパターンを寸法精度良く印刷する技術が必要とされている。
一般に、スクリーン印刷に用いられる版は、一定の張力を付与された状態で版枠に固定されたメッシュや多孔金属板をスクリーンとし、そのスクリーン面に感光性樹脂(エマルジョン)でメッシュ開口や金属板孔部の所定部分を閉塞することでペーストの透過する領域、すなわち印刷パターンを形成している。
スクリーン印刷は、版のスクリーン面を被印刷面から一定距離(クリアランス)を隔てて平行に配置し、スキージによりペーストをスクリーンの開口部に充填しながらスクリーンを一時的に被印刷面に押し付け、スクリーンの弾性変形を利用した復元力に基づいて直ちに離隔させる(版離れ)ことによって、ペーストを被印刷面に塗布することで行われる。この版離れ性は印刷品質に大きな影響を与える重要な因子であり、適切な版離れ性を確保する目的で、スクリーンには所定の張力が付与されている。
高精細なパターンを優れた寸法精度で印刷するためには、特に良好な版離れ性が必要である。クリアランスを大きくとるほど版離れ性はよくなるが、スクリーンがスキージにより受ける変形すなわち伸びも大きくなるため、スクリーンの寿命を低下させることとなる。さらに、スクリーンの伸びが大きいと、版表面に形成したパターンの変形が大きくなったり、印刷中におけるスキージの印圧バランスやペースト物性の微妙な変動が印刷品質、特にパターンの寸法精度に悪い影響を与えることとなる。
そこで、繰り返し印刷しても高精細なパターンを優れた寸法精度で形成するためには、線径の細い繊維を高密度に織ったメッシュで版離れ性を確保した上でクリアランスを極力小さくとれるスクリーン版が必要となる。
版離れ性を確保しつつクリアランスを小さくするには版のスクリーン張力を高く、すなわち紗張り時のテンションを高くすることで達成される。スクリーン張力を高くするには、高強度で低伸度すなわち高弾性率のスクリーン用メッシュ材料が必要である。
スクリーンとしては合成繊維メッシュ、金属繊維メッシュともに用いることができるが、高精細な印刷、すなわち細い又は微細なパターンをスクリーン印刷にて形成するには、合成繊維では製造が難しい20μm以下の細い線材を、高密度で織ることのできる金属繊維を利用した金属繊維メッシュが適している。金属繊維としてはステンレスが広く利用されているが、スクリーンの伸び縮みの繰り返しにより、印刷回数の増加に伴い金属の弾性限界すなわち降伏点を越えるため、印刷精度が経時的に劣ることなどにより適切な印刷が行えなくなり耐久性に課題が残る。また、ステンレスの強度を上げるために焼入れなどの処理を行った高強度ステンレスのメッシュも用いられているが、初期の印刷精度の向上は達成されるものの、繰り返し印刷での耐久性は不十分である。
スクリーンメッシュを高弾性率化するために、ステンレスメッシュの表面に金属メッキを施したり(特許文献1、特許文献4)、DLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)膜を形成したり(特許文献2)、基材となるオーステナイト系ステンレス鋼の周縁部側に炭素を拡散浸透させた硬化層を形成する(特許文献3)などの方法が提案されている。
スクリーン印刷用の版のパターンは、一定の張力を付与された状態で版枠に固定された所定メッシュの画像形成部分に、例えば1〜100μm程度の厚さの感光性樹脂膜を形成し、この表面に所望パターンのポジ型の画像フィルムやガラスマスクを重ねて紫外線照射する(露光)ことによりネガ型パターンを硬化させ、その後硬化していない所望パターン部の樹脂膜を洗浄除去する(現像)ことで形成している。
特開平4−151666号公報 特開2008−18714号公報 特開2012−140735号公報 特開平9−123631号公報
しかし、高精細印刷に適する金属繊維は合成繊維に比べて光が乱反射しやすいことから、感光剤を感光させる際の光の乱反射により、硬化させる必要のない領域の感光剤も硬化させてしまい、いわゆるハレーションと呼ばれる現象の影響がより大きい場合がある。すなわちポジ型パターンのエッジ部が乱反射の光により硬化してしまい、洗浄により樹脂膜をパターン通りに除去することができず、線幅が不安定になったり樹脂片が残留するなどの不都合を生ずることとなる。このような版を用いて印刷を行った場合、印刷パターンのライン幅などが所定より細くなったり断線したりする現象が生ずるなどの問題があるため、特に高精細なパターン形成では、光の乱反射を抑えることは極めて重要である。
光の乱反射を抑えるために、ステンレス等の金属細線を編んで形成したスクリーンの表面を、黒色クロムメッキや黒色ニッケルメッキ等の黒色処理や電着塗装による着色処理を行う方法が、特許文献4に提案されている。また、特許文献3にはオーステナイト系ステンレス鋼を母材とする金属メッシュ織物の表面に黒色クラッド層を形成することで、通常の軟質金属メッシュ織物のスクリーン印刷用版に比べて、反射率を低く抑えることで感光樹脂の解像度を向上させることが記載されている。
基材表面に金属メッキを施す特許文献1や特許文献4の方法、およびDLC膜を形成する特許文献2や基材の周縁部側に炭素を拡散浸透させた硬化層を形成する特許文献3などの何れの方法においても、これらの加工は金属繊維のメッシュを製織した後での煩雑な処理となるために、品質の安定性の問題や生産性が劣ることによる製造コストの上昇などの課題がある。さらに金属メッキやDLC膜を形成する方法では、形成された被膜の効果によって初期的にはスクリーンメッシュの弾性率は向上するものの、継続的な使用による被膜クラックの発生や基材からの剥離等により、耐久性を十分に維持することは困難である。
また、光の乱反射を抑えるためにスクリーンメッシュを黒色に着色する特許文献3や特許文献4の方法は、黒色に着色された金属メッシュ織物は視認性が著しく劣ることにより、例えば製版工程にてメッシュに張力を掛けて枠に固定する紗張り作業などで、メッシュが見えづらい事により不用意に折り曲げてしまう等、取扱性に難点がある。さらに、黒色メッキや電着塗装による方法では印刷版として使用中のメッシュの変形に対し、メッキや塗装被膜が追随できずに剥離し印刷耐久性が劣ったり、剥離した被膜微粉が印刷ペーストに混入する等の問題がある。
本発明は、高精細のパターンを優れた寸法精度で繰り返し印刷可能とするスクリーン印刷用の金属メッシュ織物及びこの金属メッシュ織物を利用したスクリーン印刷用スクリーン版を提供するものである。
すなわち第1の発明は、金属線材からなる縦糸及び横糸が互いに交差するように製織された構造を有する金属メッシュ織物であって、前記縦糸及び前記横糸の少なくとも一方が、タングステン又はタングステン合金であり、前記タングステン又はタングステン合金の糸の表面には、平均厚さが15nm以上120nm以下のタングステン又はタングステン合金の酸化物被膜が形成されており、かつ波長375nmの光の反射率であって、前記金属メッシュ織物を所定枚数以上重ねた場合にほぼ一定の値となる前記反射率が6%以下であることを特徴とする印刷用金属メッシュ織物である。
さらに第2の発明は、前記第1の発明において、前記タングステン又はタングステン合金の糸は、線径が16μm以下であり、前記金属メッシュ織物における前記縦糸及び横糸のそれぞれの25.4mmあたりの本数が300本以上であることを特徴とする。
さらに第3の発明は、第1または第2の発明において、前記所定枚数が3枚であることを特徴とする。
さらに第4の発明は、前記第1から第3のいずれかの発明における印刷用金属メッシュ織物を用いたことを特徴とする印刷用スクリーン版である。
さらに第5の発明は、画像形成用スクリーンと、該画像形成用スクリーンを枠に支持する支持体用スクリーンとを備え、前記支持体用スクリーンが合成繊維からなる織物構造体であり、前記画像形成用スクリーンが請求項1から3のいずれか1つに記載の前記金属メッシュ織物を用いることを特徴とする印刷用スクリーン版である。
さらに第6の発明は、第5の発明において、前記画像形成用スクリーン内において印刷対象の画像に対応する印刷用のパターンが形成される画像形成部の面積が、前記画像形成用スクリーンの全体の面積に対して45%以上であることを特徴とする。
さらに第7の発明は、第4から第6のいずれかの発明において、前記印刷用スクリーン版に形成される印刷用のパターンは、最小のパターン幅または最小のパターンドット径が30μm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、高精細のパターンを優れた寸法精度で繰り返し印刷可能とするスクリーン印刷用の金属メッシュ織物及びこの金属メッシュ織物を利用したスクリーン印刷用スクリーン版を提供することができる。
本実施形態の高精細パターン印刷用金属メッシュ織物の構成の概要を示す構成図である。 メッシュ織物の応力―歪曲線のモデル図 本実施形態の低反射率スクリーンメッシュでの乳剤硬化の部分モデル図 高反射率スクリーンメッシュでの乳剤硬化の部分モデル図 酸化被膜の平均厚さが25nmのタングステン線断面の走査電子顕微鏡写真 酸化被膜の平均厚さが52nmのタングステン線断面の走査電子顕微鏡写真 通常のタングステン線断面の走査電子顕微鏡写真 代表的なコンビネーション版の模式図 ガラスマスクのポジパターン図 解像性が良好なパターンの代表的写真 解像性が不良なパターンの代表的写真 印刷結果の評価位置を表す図
以下、本発明の金属メッシュ織物の実施形態について詳述する。図1は、本実施形態の高精細パターン印刷用金属メッシュ織物(以下、単に「金属メッシュ織物」とも記載する。)1の構成を示す構成図である。図1(a)は金属メッシュ織物1の平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’矢印位置における金属メッシュ織物1の断面図である。本実施形態の金属メッシュ織物1は、スクリーン印刷用の高精細パターン印刷用金属メッシュ織物であり、織物を構成する縦糸及び横糸の少なくとも一方がタングステン又はタングステン合金からなり、その糸表面には15nm以上120nm以下のタングステンの酸化物被膜層が形成されるものであるのが好ましい。
そして、本実施形態の金属メッシュ織物1は、その反射率の特性が、本実施形態の金属メッシュ織物1を重ねていった場合に、ある枚数以上で反射率がほぼ一定の値になった際の波長375nmの光の反射率が6%以下であることが好ましい。言い換えれば、金属メッシュ織物を複数枚重ねていき、光を照射した場合の波長375nmの光の反射率がほぼ変化しない状態となる枚数以上重ねられた状態における、波長375nmの光の反射率が6%以下であるものが好ましい。なお、本実施形態の金属メッシュ織物1の場合には、波長375nmの光の反射率は、3枚以上でほぼ一定となる。反射率が変化しなくなるメッシュ織物の重畳枚数は、糸径、メッシュ数、オープニングエリア(開口率)等の条件によって変化するが、本実施形態の金属メッシュ織物の場合には、3枚以上であれば反射率はほぼ一定となり、そのほぼ一定となる反射率が上述の通り6%以下であることが好ましい。
具体的には本実施形態の金属メッシュ織物1は、縦糸2と、横糸3とを備える(図1においては、図面上下方向の糸を縦糸2として示している。)。そして縦糸2と横糸3の少なくとも一方がタングステン又はタングステン合金であり、タングステン又はタングステン合金の糸の表面には酸化物被膜4が形成される。図1では、縦糸2も横糸3もタングステン(又はタングステン合金)の糸である場合を例示しており、表面に酸化物被膜4が形成されている。金属メッシュ織物1は、縦糸2と横糸3が互いに交差するように製織される。酸化物被膜4は、平均厚さ15nm以上120nm以下の厚みのバラつきのより小さいタングステンの酸化物被膜あるいはタングステン合金の酸化物被膜である。
ここで、タングステン及びタングステン合金の性質について説明する。タングステン及びタングステン合金は金属材料中で最も高い弾性率を示す材料の1つであり、タングステンでは380〜411GPaと通常のステンレスに比べて約2倍の弾性率を有する。すなわち素材そのものが低伸度かつ高強度であるとの特性に加え、応力・ひずみ曲線における降伏応力と引張り強度(破断強度)とが比較的近いとの力学的な特徴がある。
本実施形態では、このようなタングステンの高弾性率の特性を用いることにより、印刷時に版離れの良いスクリーン印刷版の作製が可能となる。版と被印刷物とのクリアランスを狭くしても版離れが適切に行なえるため、版に形成した印刷パターンの変形が抑制され、位置精度に優れた高品質の印刷が可能となる。
一般に広く使用されているステンレスメッシュにおいては、スクリーンの伸び縮みの繰り返しにより、印刷回数の増加に伴い金属の弾性限界すなわち降伏点を越えるため、印刷精度が経時的に劣ってきて印刷パターンの再現性が難しかったり版の寿命の判定が難しいとの問題がある。特に高精細なパターン印刷において、印刷精度の経時的劣化や版寿命判定の困難さは、製品の歩留まりに直接的に影響を与える点で極めて重要な要素となる。
ここで、図2はタングステンメッシュとステンレスメッシュとについての、応力−歪曲線のモデル図である。図2では、標準的なステンレスメッシュの応力−歪曲線11と、本実施形態のタングステンメッシュの応力−歪曲線12とを示す。ステンレスメッシュの曲線では、ステンレスメッシュの降伏点13と、ステンレスメッシュの破断点15と、を示している。また、タングステンメッシュの曲線では、タングステンメッシュの降伏点14と、タングステンメッシュの破断点16と、を示している。
ステンレスメッシュでの上述のような特徴は、図2にモデル的に示すように、ステンレス素材固有の引張り強度に比べて降伏応力が小さいということに起因している。
一方、タングステンメッシュについては、図2に示すタングステンメッシュのモデル的な応力・歪曲線に示すように、ステンレスメッシュと異なり、その応力・歪曲線がほぼ全領域において直線的な関係を示す。すなわち降伏点が引張り強度の近傍にあることにより、印刷精度の経時的変化が極めて少なく再現性の良い印刷が行えるとともに、繰り返し使用による版の寿命は、メッシュを構成する糸の破断などの現象の発現により容易に判断が可能となる。また引張り強度も通常のステンレスに比べて凡そ1.5倍ほどあることから耐久性も優れ、再現性良く繰り返し多くの印刷が可能となるものである。
次に、本実施形態の金属メッシュ織物1を用いた高精細パターン印刷用スクリーン版(以下、単にスクリーン版とも記載する。)に対して所望のパターンを形成する処理について説明する。図3は、本実施形態の所望のパターンが形成されたスクリーン版を形成する過程を示すモデル図である。図3(a)は、スクリーン版を構成する金属メッシュ織物1の断面であって、メッシュの画像形成部分に感光性樹脂膜を形成し、その表面に所望のパターンのポジ型の画像フィルム(マスク)を重ねて紫外線照射を行って露光させ、ネガ型パターンを硬化させている際の紫外線の透過の仕方の概略を示している。図3(b)は、図3(a)の露光処理後に、硬化していない所望パターン部の樹脂膜を洗浄等で除去(現像)することにより得られたパターン(所定のパターンの感光性樹脂膜31)が形成された、金属メッシュ1の断面図である。
スクリーン印刷用のスクリーン版は、一定の張力を付与された金属メッシュ織物の画像形成部分に感光性乳剤の塗布・乾燥を繰り返して所定厚みの感光性樹脂膜を形成する直接法が広く用いられている。さらに、感光性樹脂膜からなるフィルムを金属メッシュ織物に転写する直間法も、その簡便性や特徴を生かして使用されている。何れの方法でも所定厚さの感光性樹脂膜を形成後、その表面に所望パターンのポジパターンの画像フィルムやガラスマスクを重ねて紫外線照射することでネガ型パターンを硬化させた後、未硬化の樹脂膜部分を洗浄除去して所望のパターンを形成する。図3(a)では、スクリーン版を構成する金属メッシュ織物1上に塗布等によって感光性樹脂40の層(膜)が形成され、さらに表面に形成するスクリーン版のパターンに対応するマスクパターンを有するマスク20が載せられている。この状態で、マスク20側から矢印で示すように紫外線24が照射されている状態を示している。
この図3(a)に示す状態では、樹脂を硬化させる部分についてはマスク20の開口部であるネガパターン部22を通過する紫外線24が樹脂内部まで透過し、感光性樹脂が硬化する。一方、樹脂を除去する部分(図3(b)において樹脂が除去されて形成されるパターンの開口部32に相当する部分)については、マスク20の紫外線を透過しないポジパターン部23によって紫外線が遮蔽され、感光性樹脂は硬化しないままとなる。
そして本実施形態の金属メッシュ織物1では、縦糸あるいは横糸である糸21が、露光用の光である紫外線の反射率が低い。紫外線の反射率が低いと、糸に当たって反射し周囲に紫外線が散乱することが抑制される。散乱した光は、図3(a)において反射光25として示している。そうすると、ポジパターン部23によって紫外線が遮蔽されている部分の感光性樹脂、つまり硬化させない範囲の感光性樹脂に近い位置でマスクを通過して入射した光が、糸によって反射して、硬化させない範囲の樹脂側に入ってしまうことが効果的に抑制される。これにより、もともとのマスクパターン通りに精度良く、金属メッシュ織物1に感光性樹脂によるパターンを形成することができ、高精細な印刷用スクリーンを提供することができる。
一方、従来のメッシュ織物によるスクリーン版では、反射率が大きく、高精細のパターンを形成することができない。図4には、従来の糸35を使用するスクリーン版(メッシュ織物30)に対して感光性樹脂40の層を形成してマスク20を重ね、紫外光24を照射して樹脂を硬化させて感光性樹脂膜31による所望のパターンを形成する過程を示す図である。図4(a)は図3(a)と同様に紫外光が照射されている状態のメッシュ織物の断面を示し、図4(b)は図3(b)と同様に硬化していない樹脂を洗浄して所望のパターンが形成されたメッシュ織物の断面を示す。
図4(a)に示すように、スクリーンメッシュの反射率が大きいと反射光25である紫外光はポジパターン部23の周縁部にまで及ぶことにより、周縁部の硬化させる必要のない感光性樹脂40も部分的に硬化してしまう。このため次工程での洗浄除去にて、本来除去されるべき範囲の樹脂が硬化して周縁部が残ることなる。そうすると、感光性樹脂が除去されて形成される、スクリーン印刷のインクペーストが透過する領域は所望のパターン幅より狭いものとなったり洗浄にて除去できないなどの不都合が生ずることとなる。特にインクを通すためのパターンの幅やドットの径がより小さいものである場合ほど、周縁部の樹脂の硬化の影響は大きくなり、印刷の精度が低下する。これに対して、本実施形態では、メッシュの糸での反射率が低いので、硬化させる必要の無い周縁部への紫外光の乱反射が少なく、余分な硬化が抑制されることで、ポジパターンに忠実なパターン形成が可能となる。
以下さらに本実施形態の金属メッシュ織物1によるスクリーン版を用いることにより、マスクのパターン通りの高精細なパターンを形成することができる理由をより詳細に説明する。
本実施形態で用いられるタングステンまたはタングステン合金の糸表面には、酸化物被膜層が形成されている。酸化物被膜は、糸がタングステンである場合にはタングステンの酸化物による膜である。タングステン合金の場合には、タングステン元素と合金を形成する他の金属元素と酸素元素とが分散して形成される酸化物の膜である。この酸化物被膜層によって、感光性樹脂膜をマスクパターンに応じて硬化させるため紫外光が吸収され、結果的に紫外光の反射率が低減され、硬化させる必要のない感光性樹脂側への乱反射を効果的に抑制できる。糸の表面に形成される酸化物被膜は、平均厚みが15nm以上120nm以下であることが好ましい。酸化物被膜層の平均厚みが15nm以上であると、紫外光を十分に吸収でき反射が抑制されるため好ましい。厚みの好ましい範囲の上限である120nmについては、平均厚みが120nmより厚くなっても反射率の低減効果が少なくなること、また厚い酸化物被膜層を形成するための加工条件が厳しくなったり、加工によるメッシュの糸の素材の強度等に影響があるなどの点から、120nm以下が好ましい。本実施形態において酸化物被膜層の平均厚みは、金属メッシュ織物1の糸の線断面をクロスセクションポリッシャー(CP)で研磨し、走査電子顕微鏡(SEM)でその線断面を撮像し、SEM画像から糸に形成されている酸化物被膜層の厚みを等間隔で10点測定し、その測定値の平均値を平均厚みとした。
ここで、本実施形態の金属メッシュ織物1の糸の実際の断面構造を示すSEM画像の一例を示す。図5および図6は、酸化物被膜層を表面に有する本実施形態の金属メッシュ織物1の一例の糸の断面のSEM画像である。図7は、参考として酸化被膜をほとんど有さない糸の断面のSEM画像である。
本実施形態の金属メッシュ織物1の縦糸2と横糸3の少なくともの一方は、図5、図6に示すような厚みのバラつきの少ない酸化物被膜層が、糸の全周に渡って形成されていることが好ましい。そして、図5の例では、酸化物被膜の厚みは18nm〜30nmであり、平均厚みは25nmである。平均厚みは、上述の通り10点の測定値の平均値である。この平均厚み25nmの糸の金属メッシュ織物1に対して波長375nmの紫外光を照射した場合の反射率は3.2%であった。なお、この反射率は、金属メッシュ織物1を3枚重ねた状態における反射率である。
図6の例では酸化物被膜の平均厚みは52nmである。この糸を用いた金属メッシュ織物における375nmの紫外光の反射率(3枚重畳時)は4.7%であった。
SEM画像は示さないが、さらに酸化物被膜を厚くした平均厚み110nmの糸を用いた金属メッシュ織物の反射率は5.5%であった。しかしながら酸化物被膜層の厚みが120nm以上になると反射率は6%より大きくなり、厚くなりすぎても反射率の抑制効果は少なくなることが明らかとなった。この原因は明確ではないが、酸化物被膜層を均一に厚く形成するためには加工条件である温度や加工時間、液相加工の場合には液のpHや温度や電流密度が強い条件となるため、形成される酸化物被膜の結晶構造が変化する等により、酸化物被膜層で吸収される紫外線量が変化するものと考えられる。
一方、図7に参考として示した酸化物被膜層がほとんど形成されていないタングステン糸を用いたメッシュ織物の場合には、紫外光が酸化物被膜層において吸収されなくなるので紫外光の反射率が大きくなる。糸の表面の凹凸部で部分的に酸化物被膜層が形成されてはいるが、図中の糸の外周面の80%ほどでは殆ど酸化物被膜層の形成は無く、酸化物被膜があっても5nm以下程度の極薄いものである。すなわち、表面の80%ほどには酸化物被膜層が形成されていないか、あっても極薄膜状であり、表面全体では斑状に被膜層が存在する状態である。このような不均一な酸化物被膜層しか形成されていないメッシュ織物の場合には、波長375nmの紫外光の反射率は11.5%(3枚重畳時)であった。このような金属メッシュ織物では、硬化させる樹脂に隣接する硬化させる必要の無い範囲の感光性樹脂にまで紫外光が乱反射(ハレーション)して、マスクパターン通りの高精細なパターンを形成することが難しいので好ましくない。
さらに、本実施形態の金属メッシュ織物1は、物性の観点からは、上述のように同じ金属メッシュ織物1をそれ以上重ねても波長375nmの光を照射した場合の反射率がほぼ変化しない状態となる枚数重ねられた状態における、375nmの光の反射率が6%以下となる金属メッシュ織物1であることが好ましい。本実施形態では反射率が3枚以上でほぼ一定となって変化しなくなるので、3枚重畳した場合に375nmの光の反射率が6%以下であるのが好ましい。これは、金属メッシュ織物を用いたスクリーン印刷において広く用いられる感光性樹脂であるジアゾ樹脂タイプの感光性樹脂が硬化するために必要な紫外光の波長である、極大吸収波長が375nmであり、金属メッシュ織物1を所定枚数(本実施形態では3枚)重ねた状態での波長375nmの紫外光の反射率が6%以下であれば、当該金属メッシュ織物1をスクリーン版50として用いた場合に、露光時の周縁部への紫外光の散乱を確実に低減することができるためである。
より具体的に説明すると、まず、メッシュを使ったスクリーン版にパターンを形成するための感光性樹脂としては、ジアゾ樹脂を架橋剤とするタイプ、スチリルピリジニウム(SBQ)を付加したポリビニルアルコール(PVA)を用いるタイプ、そしてアクリロイル基、アクリルアミド基の重合架橋反応を利用するタイプが単独または組合わせて用いられている。この内もっとも広く使用されているジアゾ樹脂タイプでは、その極大吸光波長が375nmの紫外域にあり、露光用光源としてメタルハライドランプや超高圧水銀灯が一般的に使用されている。また、SBQのタイプでは極大吸光波長が340nmにあり、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドの何れのタイプでも使用できる。
感光性樹脂の光の吸収特性は、その波長によって変化する。本実施形態では感光性樹脂が硬化するときの樹脂の吸収波長としてジアゾ樹脂タイプにおける極大吸収波長である375nm、およびSBQタイプでの極大吸収波長340nmの吸収特性ともに、それぞれに対して使用される乳剤に応じて重要である。しかしながら両波長での吸収特性はほぼ同様の傾向を示すためどちらの波長を基準として反射率を規定してもよい。本実施形態においては375nmの波長の光の反射率の値で実施形態の金属メッシュ織物1の構成を特定する。
そして上述の通り、本実施形態の金属メッシュ織物1は、金属メッシュ織物1を所定枚数(本実施形態では3枚)以上重ねた状態での波長375nmの紫外光の反射率が6%以下であることが好ましい。本実施形態におけるメッシュ織物1の反射率は上述の通り、開口部を有するメッシュ織物を複数枚重ねた場合に、それ以上の枚数をさらに重ねても反射率が変化しない枚数を重ねた場合の反射率である。本実施形態の金属メッシュ織物1の場合には、具体的には3枚以上重ねてその反射率を測定した場合の値である。本明細書における反射率は、特に記載がない限り、3枚以上重ねた状態での反射率を指す。
金属メッシュ織物1の反射率が6%より大きくなると、ネガ型画像フィルムの周縁部にまで紫外光が及ぶことにより周縁部の樹脂膜が硬化してしまい、次工程での洗浄除去にて硬化した周縁部の一部が残り、スクリーン版における正確なパターンの形成が出来なくなるので、6%以下が好ましい。
樹脂膜の周縁部の硬化に与える反射率の影響は、使用するスクリーンメッシュの糸径、メッシュ織物の縦糸又は横糸に平行な25.4mm長さあたりの横糸又は縦糸の本数(メッシュ数)、樹脂膜の厚み、積算露光量などによってもその程度は変化する。
また、紫外光の反射によって硬化する必要の無い周縁部の硬化による影響は、スクリーン印刷時における印刷パターンの高精細さの程度や、ペースト物性や印刷条件によっても変化するが、特に、印刷パターン最小の線幅またはドットの径(つまり、スクリーン版でのインクが通る部分の大きさ)が、30μm以下であるような高精細なパターンである場合には、反射率の影響が一層顕著になる。
例えば紫外線反射率が1ポイント高いことにより1μmの印刷線幅が細くなるような影響を想定すると、100μmパターン幅への影響度は1/100=0.01、すなわち1%であるが、30μmパターン幅のような細線での影響度は3.3%、20μmパターン幅では5%、15μmパターン幅では6.7%と、高細線になるほど大きくなる。従って紫外線反射率を5ポイント低下させることが出来れば20μmパターン幅では25%の細線化への悪影響が除去できると試算される。
実際の印刷パターンにおいては、線幅が一様に細くなるということではなく、メッシュの存在する部分や特にメッシュの交点部に対応する部分に於いてペーストの広がりが抑制されるため、ギザリと呼ばれるパターン端部がのこぎりの刃状となったり、かすれたり、断線したりなどの現象となる。これらの現象は、パターン幅が狭くなるほど飛躍的に顕著となる。
30μm以下の高精細なパターン形成に用いる金属線材の線径は16μm以下、また縦・横のメッシュ数はそれぞれ300以上であることが好ましく、さらに波長375nmの紫外光の反射率が6%以下が望ましく、より望ましくは5%以下、更に望ましくは4%以下である。
本実施形態では、上述の反射率を達成するために、上述の通り、金属メッシュ織物1を構成するタングステンあるいはタングステン合金の糸の表面に平均厚みが15nm以上120nm以下の均一な酸化被膜層が形成されていることにより、酸化被膜層が形成されていない、あるいはあっても殆ど形成されて無い場合や不完全な場合の反射率に比べて、4〜8ポイント程度、紫外線反射率を低減することができる。従って、高細線のパターンにおいても断線やギザリの現象がより効果的に抑制された、高細線の印刷がより安定して可能となる。
本実施形態の金属メッシュ織物1の材料は、タングステンまたはタングステン合金である。タングステン合金としてはタングステンに加えてレニウム、オスミウム、タンタル、モリブデンから選ばれる少なくとも1種以上の金属を成分に含む合金が好ましい。この中で特にレニウムとの合金はタングステンの高い弾性率、及び応力・ひずみ曲線における降伏応力と引張り強度(破断強度)とが比較的近いとの力学的な特徴を維持しつつ、強度、伸度ともに高くする効果を持つのでより好ましい素材といえる。なお、金属メッシュ織物1の材料には、タングステンあるいはタングステン合金以外に、不可避的に混入する不可避的不純物が含まれることは許容される。不可避的不純物は、原料にもともと含まれていた、もしくは製造過程での混入により含まれる成分であり、意図的に入れたものではない成分である。
タングステンまたはタングステン合金の表面に酸化物被膜層を形成する方法としては、乾式法、湿式法などを用いることが出来る。
乾式法としては、空気中または酸素濃度をコントロールした環境雰囲気中で線素材を高温にて一定時間暴露するという、熱処理により酸化物被膜層を形成する方法が挙げられる。酸素濃度、雰囲気温度および暴露時間をコントロールすることによって、形成される酸化被膜の厚みを制御することが可能である。
酸素濃度、雰囲気温度、暴露時間は適宜設定して任意の厚みの酸化物被膜層を形成することが出来る。通常の空気(酸素21%)を用いる場合では、400℃から800℃程度の雰囲気温度範囲で10秒から30分程度の暴露により均一な酸化被膜層の形成が可能である。酸素濃度を高くしたり雰囲気温度を高くすることにより曝露時間を短縮することも可能である。生産性、製造コストおよび均一な酸化被膜層の形成という製品品質を考慮してこれらの条件を選定すればよい。
湿式法としては、水溶液中での電気化学プロセスを利用して酸化物皮膜層を形成する方法が挙げられる。pH7以下の酸性溶液中にてタングステンあるいはタングステン合金の線素材を陽極として直流または交流電位を印加することにより酸化物被膜層を形成する。
pH7以下にするために用いる酸は、燐酸、蓚酸、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸などの有機酸、無機酸など特に限定されない。これらのpH7以下の酸の水溶液中にて、線素材を陽極として1〜40V程度の直流電圧を印加すればよい。電気化学反応は室温でも十分に進行するが、pHや温度および印加電圧によっても酸化物被膜の形成に要する時間は変化する。いずれにしろ、使用する酸やその濃度、溶液の温度、印加電圧、加工時間などを適宜組合わせて酸化被膜を形成すればよい。
乾式法、湿式法のいずれにおいても、タングステンあるいはタングステン合金の線素材の表面に酸化物被膜層を形成し、その後、製織してメッシュとしてもよいし、先に製織によりメッシュとした後に、メッシュ全面に酸化物被膜層を形成してもよい。好ましくは、線素材の段階で酸化物被膜層を形成するのがよい。線素材の周囲前面に厚みのバラつきの少ない酸化物被膜層を容易に形成できるためである。なお、酸化物被膜層はその平均厚さが120nm以下であれば線素材表面に強固に形成されるため、製織工程における摩擦や擦れにより酸化物被膜層が剥離したり脱落することはないので、製織後も均一な酸化物被膜層が維持される。
照射された紫外光は酸化物被膜層により吸収されることでその反射率が抑制される為、酸化物被膜層は線素材の周囲全体にわたって形成されていることが好ましい。
上述の通り酸化物被膜層の厚みとしては、平均厚みとして15nm以上120nm以下が好ましい。酸化物被膜の形成が乾式法であれ湿式法であれ加工条件によりある程度の厚みむらが生ずるため、平均厚みが15nm未満であると酸化物被膜が十分に形成されていない部分が生じてしまう場合があり、製織後のメッシュとしての反射率が安定しない場合がある。また平均厚みとして120nmより厚く形成しても反射率の抑制効果の向上は少なく、加工条件が厳しくなることによる製造工程の複雑化や品質の安定性、生産性やコストの点から120nm以下が好ましい。また過度に酸化物被膜層を厚くすることにより機械的強伸度の低下が生じたり、スクリーン版として繰り返しの使用時において、剥離した酸化物皮膜層が印刷物のペースト中に混入するなどの不都合が生じる場合があるので好ましくない。
上記した如き酸化物被膜層を形成した金属糸を用いてメッシュ織物を製造する方法については特に限定されず、縦糸又は横糸の、少なくとも一方がタングステン又はタングステン合金からなるよう、公知の方法で製織すればよい。すなわち織組織を工夫したり、糸の絡み合い部分の形態を工夫したり、太さの異なる金属糸を交織したり、或いはそれらを適宜組み合わせたりしてもよい。例えば、太さの異なる繊維を交織することにより、オープニングエリアをあまり落とさず、しかも金属糸の絡み合い部分において繊維の屈曲が大きくなるので、印刷されるインクの厚みがより厚い厚め印刷を可能なものとすることもできる。ここで、オープニングエリアとはメッシュ織物を平面視した時の、メッシュ織物を構成する縦糸及び横糸の各1ピッチ内における開口部(糸の存在しない部分)の面積占有率をいい、使用した糸の糸径とメッシュ数とから得られる計算値である。
金属メッシュ織物の構成は特に限定されないが、印刷対象の最小パターン線幅や最小のパターンドットの径が30μm以下の高精細な場合には、使用する金属線材の線径は16μm以下、メッシュ数は300以上が好ましい。ここでメッシュ数とはメッシュ織物の縦糸又は横糸に平行な25.4mm(1インチ)長さ当たりの縦糸又は横糸の本数を意味する。
現在スクリーン印刷で一般的に対応できる最小のパターン線幅やパターンドット径は80μm程度といわれており、スクリーンメッシュや乳剤の選定・設計、更には基材に対応したペースト特性を工夫すること等により50μm、40μm程度への印刷が可能となりつつある段階である。
30μm以下の高精細なパターンを印刷対象とする場合、使用する線材の径はパターン幅以下、好ましくはパターン幅の2/3倍以下、より好ましくは1/2倍以下である。しかしながら線径が細くなるほど線材の強度は弱くなることから、メッシュ織物としてスクリーン印刷を可能とする強度を有するためにはメッシュ数を多くすることが好ましい。
パターンを形成するインクペーストはメッシュ織物の開口部分を通過して基材に転写される。メッシュ織物における開口部分の面積のメッシュ織物全体の面積に対する割合はオープニングエリア(開口率)と呼ばれ、メッシュ織物の重要な特性値ひとつである。メッシュ数と糸径とから算出されるオープニングエリアはメッシュ数に反比例する関係であるため、強度を維持するためにメッシュ数を増加するとオープニングエリアが小さくなり、ペーストの透過量も少なくなることで断線やギザリなどの現象を生じ易くなるとの2律背反的な関係となる。
タングステンは380〜411GPaと通常のステンレスに比べて約2倍の弾性率を有し、さらに破断強度は約1.5倍であることから、線径を細くしてもメッシュ数の増加割合は低く抑えることが可能である。30μm以下の高精細なパターンを形成するために用いるスクリーンとしては16μm以下の細い線材を用いてメッシュ数300以上の織物とすればよい。
さらに20μm以下の一層高精細なパターンを形成する場合には、線材としては13μm以下でメッシュ数400以上、さらに15μm以下の超高精細なパターンの形成では線径11μm以下の線材を500メッシュ以上の高メッシュ数でのメッシュ織物とすることが好ましい。いずれにしろ、タングステンの高い弾性率や破断強度の特性より、再現性の高い優れた寸法精度で繰り返し印刷を可能とするスクリーン印刷用メッシュ織物とすることが出来る。
16μm以下、特に13μmや11μmの極細い径の線材を高メッシュ数で製織できる材料は極めて限定されることとなり、この点において高い弾性率や破断強度を有するタングステンやタングステン合金は極めて有用な材料といえる。本実施形態の金属メッシュ織物1は、さらにタングステンの酸化被膜層を表面に一様に形成して紫外線の反射率を抑制することで、30μm以下、さらには20μm、15μmという超高精細なパターンの形成を可能とするものである。
次に、本実施形態の金属メッシュ織物1を用いたスクリーン印刷用のコンビネーションスクリーン版について説明する。
スクリーン印刷に用いられる版は、合成繊維のメッシュや金属繊維のメッシュに張力を掛けて樹脂や金属製の枠に接着固定した、枠内部のスクリーンとなる部分が単一の素材からなる「全面張りスクリーン版」と、枠に接着される周辺部の合成繊維のメッシュと、版の中央部に形成される実際に画像形成に用いられる画像形成部となる金属メッシュ等で構成される複数の素材からなる「コンビネーションスクリーン版」とが使用されている。コンビネーションスクリーン版における合成繊維スクリーンは、一般に、支持体スクリーンと呼ばれる。代表的なコンビネーションスクリーン版100の概略図を図8に示す。
図8のコンビネーションスクリーン版100は、枠101と、画像形成用スクリーン102と、支持体用スクリーン103と、を備える。枠101は、スクリーン版を保持する保持枠である。画像形成用スクリーン102は、コンビネーションスクリーン版100の内、実際に画像を形成するパターンが形成される部分のスクリーンであり、本実施形態では金属メッシュ織物1である。支持体用スクリーン103は、枠101に固定され、画像形成用スクリーン102を支持する、画像形成用スクリーン102の周囲のスクリーンであり、上述のように合成繊維等の材料で形成されるスクリーンである。
全面張り版として金属繊維メッシュを用いることもできるが、金属繊維として広く利用されているステンレスは、スクリーンの伸び縮みの繰り返しにより、印刷回数の増加に伴い金属の弾性限界すなわち降伏点を越えるため、全面張り版として使用した場合は特に印刷精度の経時的低下が著しくなる傾向が有り、耐久性に課題が残る。
また、高精細な印刷、すなわち細い又は微細なパターンをスクリーン印刷にて形成するには、合成繊維では製造が難しい20μm以下の細い線材を、高密度で織ることのできる金属繊維メッシュが適しているが、このような金属繊維メッシュは製造コストが高く、全面張り版としての使用はコスト的にも不利となるため、画像形成に用いられる部分に金属メッシュ織物を用いたコンビネーションスクリーン版として使用されることが多い。
金属繊維としてタングステンまたはタングステン合金を用いる場合には、その応力・歪曲線がほぼ全領域において直線的な関係を示すため、印刷精度の経時的変化が極めて少なく再現性の良い印刷が可能である。また降伏点が破断強度の近傍にあるとの力学的特徴から、スクリーン版としての画像形成部分の局部的な変形が抑制され、画像形成部分におけるパターンの形成領域を広く取ることが出来、スクリーンとしての利用率が高められるとの効果も有る。さらに引張り強度も通常のステンレスに比べて凡そ1.5倍ほどあることから耐久性にも優れ、再現性良く繰り返し多くの印刷が可能となる。
タングステンまたはタングステン合金はヤング率が高いとの特性上、版の製造時とくに紗張り時に張力をかけた際の張力バランスの僅かな不均一によるメッシュ破損などが生じ易く、製品歩留まりの観点よりコンビネーションスクリーン版として使用することが好ましい。
コンビネーションスクリーン版100においては、印刷時のクリアランスによる伸びを支持体スクリーンに負担させるため、支持体用スクリーン103には、弾性の高い、すなわちヤング率の低い素材であるナイロンやポリエステルからなる織物構造体を使用し、画像形成部には画像パターンの変形が少なくなるようヤング率の高い素材として金属繊維からなる織物構造体やメタルマスク等が一般に使用されている。
(コンビネーションスクリーン版の作成方法)
次に本実施形態における高精細パターン印刷用の金属メッシュ織物を用いたコンビネーションスクリーン版100の代表的な作製方法について以下に記述する。
第1の作製方法は、接着後の張力低下分を考慮した高めの張力で支持体用スクリーンを枠101に紗張りした後、所定寸法の画像形成用スクリーン102(本実施形態では、金属メッシュ織物1)を支持体用スクリーン103の所定位置に接着し、その後画像形成用スクリーン部にある支持体用スクリーンを切断除去するものであり、従来の多くのコンビネーションスクリーン版はこの方法で作成されている。
また第2の作製方法として、あらかじめ中央部を繰り抜いた支持体用スクリーン103に画像形成用スクリーン102を接着した一体スクリーンを用い、全面張り版と呼ばれる単一の合成繊維スクリーンからなるスクリーン版と同様の方法によりコンビネーションスクリーン版100を作製することもできる。
さらに第3の作製方法として、支持体用スクリーン103を紗張り機上にて軽く張力を掛けた仮の紗張り状態(第1ステップ)とし、所定寸法の画像形成用スクリーン102を支持体用スクリーン103の所定位置に接着し、その後画像形成用スクリーン部にある支持体用スクリーンを切断除去する。さらに紗張り機に所定の張力をかけて(第2ステップ)支持体用スクリーン103を枠101に接着するとの2ステップで張力をかける方法や、第4の作製方法として、支持体スクリーン103と画像形成用スクリーン102との両方にほぼ同一の所定張力を掛けた状態で接着し、その後不要部分を切断除去するなどの方法がある。
いずれにしろ、上述した作製方法に限定されるものではなく、版を作製するのに適したいかなる冶具や設備、方法を用いてもよい。本実施形態におけるタングステンやタングステン合金のような極めて高いヤング率の素材を用いる場合、支持体用スクリーン103として従来のポリエステルやナイロンを用いることも出来るが、高弾性率・高強度の合成繊維を用いることが好ましい。より高精細・高位置精度の印刷が可能となるためである。
高弾性率・高強度の合成繊維としては、例えば、アラミド、ポリアリレート、超高分子量ポリエチレン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール(PBT)、ポリパラフェニレンベンゾビスイミダゾール(PBI)、炭素繊維、その他液晶ポリマーや、上記材質を主成分とした2種以上の素材、例えば芯鞘型複合繊維などがある。
このような高弾性率・高強度の合成繊維を支持体用スクリーン103とし、タングステンやタングステン合金の金属メッシュを画像形成用スクリーン102とした組合わせによるコンビネーションスクリーン版100の作製では、あらかじめ中央部を繰り抜いた支持体用スクリーン103に画像形成用スクリーン102を接着した一体スクリーンを用いて、全面張り版と同様の方法により作製するのが、画像形成用スクリーン102面内の張力分布が均一になり易く、高精細・高位置精度で高耐久性の版を作製するのに特に適している。
上記のように支持体用スクリーン103として高弾性率・高強度の合成繊維を用い、画像形成用スクリーン102としてタングステンやタングステン合金の金属メッシュを用いたコンビネーションスクリーン版100では、高精細・高位置精度で高耐久性の版が作製できることに加えて、画像形成用スクリーン102内における画像形成部の面積割合を多く取ることが可能となる。すなわち高価な画像形成用スクリーン102の利用率を上げられるとの効果がある。本実施形態の場合には、パターンを形成して画像を形成可能な画像形成部の範囲を45%以上にすることができる。
すなわち、従来のポリエステル製のスクリーンを支持体用スクリーン103とし、通常のステンレス製メッシュを画像形成用スクリーン102としたコンビネーションスクリーン版100の場合、画像形成用スクリーン102の全面積に対する画像形成部、すなわち印刷パターンを形成する部分の面積割合は25%から45%程度であった。
これはステンレスメッシュにおいては、スクリーンの伸び縮みの繰り返しにより、印刷回数の増加に伴い金属の弾性限界すなわち降伏点を越えるため、印刷精度が経時的に劣ってくるため、特に周縁部すなわちコンビネーションスクリーン版のうち画像形成用スクリーン版の支持体用スクリーンに近い部分においては劣化の影響が大きくなるため、画像形成用スクリーンの一辺の1/2から2/3の範囲を画像形成部としていることによる。
これに対してタングステン及びタングステン合金は金属材料中で最も高い弾性率を示す材料の1つであり、タングステンでは380〜411GPaと通常のステンレスに比べて約2倍の弾性率を有するとの特性に加え、応力・ひずみ曲線における降伏応力と引張り強度(破断強度)とが比較的近いとの力学的な特徴により、繰り返し印刷における印刷精度の経時的変化が極めて少なく再現性の良い印刷を行うことができる。このため従来では使用することが出来なかった、画像形成用スクリーン102の一辺の3/4から4/5程度の周縁部(支持体用スクリーン103に近い側)近傍まで印刷パターンを形成することが可能となる。この場合の画像形成用スクリーン102の全面積に対する画像形成部の面積割合は56%から64%となる。
(スクリーン版に感光性樹脂によってパターンを形成する方法について)
枠に張られたスクリーンメッシュに感光膜を形成する方法には、直接感光液を塗布して感光膜を形成する方法(直接法)、あらかじめプラスチックフィルム上に形成された感光膜をスクリーン上に転写する方法(直間法)、プラスチックフィルム上にコートされた感光性樹脂に、焼付け・現像作業を行い、フィルム上に形成したパターンをスクリーン上に転写する方法(間接法)がある。本実施形態ではスクリーンメッシュ上に形成された感光膜にポジのパターンを形成したガラスマスクやフィルムを密着し、紫外線照射により硬化させてパターンを形成することから、直接法や直間法が好ましい。
直接法における感光液の塗布方法は、バケット塗布、スピナー塗布、フローコーターなどの方法があるが、最も一般的にはバケット法が用いられている。バケット法では垂直に保持されたスクリーンメッシュに感光液を入れたバケットのドクター部を押し当て、バケットをスクリーンに接触させながら下部から上部へと移動させながら一定量の感光液をスクリーン上に塗布し乾燥させる。この塗布・乾燥工程を繰り返すことにより所定厚さの感光膜を形成する。
感光膜の厚さは印刷物の所要厚さにより適宜設定されるが、本実施形態のスクリーン版において目的とするような30μm以下の高精細なパターンを形成するには感光膜の厚さは30μm以下程度に薄いほうが好ましい。特にスクリーンメッシュの反射率は、感光膜の厚さが薄いほどパターン形成への影響が大きいので、本実施形態のタングステンの表面に平均厚さが15nm以上120nm以下のタングステン酸化物の被膜を均一に形成したスクリーンメッシュでは、感光膜の厚さは20μm以下、好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。そのような厚みにすることで極めて解像性に優れたパターンを形成することが出来る。ただし、感光膜の厚さが5μm未満、特に3μm未満になるとメッシュの交点部が印刷パターンの痕跡として残り、印刷パターンの厚みむらとなったり、繰り返し印刷時に感光膜に亀裂が生ずるなどの不都合が起こり易くなるので3μm以上が好ましく、より好ましくは5μm以上である。
さらに、形成された感光膜の表面平滑性も高精細な印刷を達成するために制御されていることが好ましく、感光膜表面の粗さとして算術平均粗さRaが1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらにより好ましい。特に15μm以下の極めて高精細なパターンの印刷を達成するには、感光膜表面の算術平均粗さRaは0.3μm以下とするのが好ましい。
本実施形態による、表面に平均厚さが15nm以上120nm以下のタングステン酸化物の被膜を均一に形成したタングステン又はタングステン合金のスクリーンメッシュを用いて、解像性に優れた版を作製し高精細な印刷を達成するには、前記のような感光膜を形成することも重要である。
形成した感光膜は露光機にセットされ、ポジのパターンを形成したガラスマスクやフィルムマスクを圧着法や真空法を用いて密着し、紫外線照射により硬化させ(露光)、紫外線の当たらなかった部分の感光膜を現像液で溶解除去(現像)してパターンを形成する。
感光膜の基材となる感光性樹脂にはジアゾ樹脂を架橋剤とするタイプ、スチリルピリジニウム(SBQ)を付加したポリビニルアルコール(PVA)を用いるタイプ、そしてアクリロイル基、アクリルアミド基の重合架橋反応を利用するタイプが単独または組合わせて用いられている。この内もっとも広く使用されているジアゾ樹脂タイプでは、その極大吸光波長が375nmの紫外域にあり、露光用光源としてメタルハライドランプや超高圧水銀灯が一般的に使用されている。また、SBQのタイプでは極大吸光波長が340nmにあり、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドの何れのタイプでも使用できる。
高精細なパターンを形成するには極大吸光波長の乱反射を抑制することが重要であり、露光用の光を感光膜に対して90度の角度で照射することが望ましく、またスクリーンメッシュの反射率を低減することが極めて効果的である。
以上説明した本実施形態の金属メッシュ織物1およびスクリーン版の効果を説明する。
本実施形態によれば、金属材料中で最も高い弾性率を示す材料の1つであるタングステン又はタングステン合金を用いるので、印刷時に版離れの良いスクリーン印刷版の作製が可能となる。すなわち版と被印刷物とのクリアランスを狭くすることが出来るので、版に形成した印刷パターンの変形が抑制され、位置精度の優れた高品質の印刷が可能となる。
また、応力・ひずみ曲線における降伏応力と引張り強度(破断強度)とが比較的近いとの力学的な特徴により、繰り返して印刷を行っても印刷精度の経時的変化が極めて少ない再現性の良い印刷を、従来のメッシュ等を用いたスクリーンに比べて著しく多く行うことができる。
また、印刷パターンの変形が抑制され、かつ繰り返し印刷での印刷精度の経時変化が極めて少ないことから、従来では使用することが出来なかった画像形成用スクリーン102の周縁部近傍まで印刷パターンを形成することが可能となり、高価な画像形成用スクリーン102の利用率を向上することができる。
さらに、本実施形態ではタングステンまたはタングステン合金の糸表面に平均厚さが15nm以上120nm以下のタングステンの酸化被膜層が形成され、金属メッシュ織物を所定枚数(本実施形態では3枚)以上重ねた状態において、波長375nmの光の反射率は6%以下である。本実施形態の金属メッシュ織物を用いたスクリーン版にパターンを形成するには感光性樹脂膜に紫外光を照射してマスクパターンに応じて硬化させるが、酸化被膜層の吸収効果により、ネガパターン部に入射した紫外光の反射が抑制され、マスクパターンに忠実な印刷パターンを形成することが可能となる。
本実施形態によればタングステンやタングステン合金が高強度の材料であることから細い線材でのスクリーン製織が可能となり、更に酸化被膜層による紫外光の反射抑制効果との組合わせにより30μm以下、特に20μmや15μmといった従来の材料では形成が困難であった印刷パターンを有する印刷版の作製が可能となる。これらの高精細のパターンを、繰り返し印刷しても印刷精度の経時的変化が極めて少ない再現性の良い印刷が行えるスクリーン版を提供することができる。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
以下のようにして、画像形成用スクリーンと支持体用スクリーンを有するコンビネーションスクリーン版を作製した。まず画像形成用スクリーンとして、表面に25nmの平均厚みの酸化被膜層を全面に形成した16μmの線径のタングステン線を用いて325メッシュに織り込まれたタングステンスクリーンメッシュを、縦糸方向に対して23°の角度を持って240mm×240mmの正方形に切り出した。支持体用スクリーンとしてポリアリレート製の繊維径23μmの糸を330メッシュに織り込んだV330(株式会社NBCメッシュテック製、商品名Vスクリーン)を、その一辺を縦糸方向に対して平行として500mm×500mmの正方形に切り出し、画像形成用および支持体用の2枚の正方形メッシュの対応する辺を平行として中心部を重ね、タングステンスクリーンメッシュの周縁部を、接着部幅を各10mmとして接着剤にて支持体用スクリーンに接着した。その後接着部の内側でタングステンスクリーンと重なる部分の支持体用メッシュを切り離して画像形成用スクリーンと支持体用スクリーンとが一体となったコンビネーションスクリーン版用の一体スクリーンを得た。ここで、画像形成用スクリーンの波長375nmの紫外光の反射率(3枚重ねた状態での反射率。以下の反射率も同様。)は3.2%であった。
枠部として、アルミ製枠体(外形寸法:320mm×320mm、内形寸法:290mm×290mm、厚さ20mm、肉厚1.5mmの中空構造)を用い、枠体の1辺と前記コンビネーションスクリーン版用の一体スクリーンにおける支持体用スクリーンの縦糸方向とが平行となるよう配置し、定法により紗張りした。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、テンションゲージSTG-75B(サン技研社製)を用いた測定で1.0mmであった。
コンビネーションスクリーン版用の一体スクリーンを紗張りした枠体をバケットタイプのコーティングマシンに垂直に取り付けてコンビネーションスクリーン版を得た。そしてこのコンビネーションスクリーン版にジアゾ系の感光性乳剤(株式会社NBCメッシュテック製、商品名V1乳剤)をバケット法による塗布・乾燥を10回繰り返すことにより、10μm厚さの感光性樹脂膜を形成した。
感光性樹脂膜を形成したコンビネーションスクリーン版及び図9に示すポジパターンを形成したガラスマスクを露光機(株式会社プロテック製、型式SP−1000FL)にセットし、圧着法によりコンビネーションスクリーン版の感光性樹脂膜にガラスマスクを密着した。ポジパターンの形成部分は150mm×150mmとし、この範囲を直交する2辺となるX方向、Y方向それぞれ等間隔に3×3で9分割した。そして、分割された各々の領域にパターンの線幅が10μmから50μmのポジパターンを有する図9に示すガラスマスクを配置した。このコンビネーションスクリーン版に対してメタルハライドランプを光源として7.2mW/cmのパワーにて適正露光量となる100秒の露光を行った。その後40℃の温水中にて洗浄することで、未硬化の感光膜を溶解除去しパターンを形成したコンビネーションスクリーン版とした。
なお、図9のガラスマスクのパターンは、図9の下段右のパターンが最も線幅(印刷する線の幅)の小さいパターン幅10μmであり、下段中がパターン幅15μm、下段左がパターン幅20μm、中段右のパターンがパターン幅25μm、中段中がパターン幅30μm、中段左がパターン幅35μm、上段右のパターンがパターン幅40μm、上段中がパターン幅45μm、上段左が最も線幅の大きいパターン幅50μmのパターンである。
(実施例2)
実施例1における画像形成用スクリーンに用いるタングステン線の表面の酸化被膜層の平均厚みが(a)52nm、(b)110nmとしたタングステンスクリーンを用いた以外は、実施例1と同じ仕様のコンビネーションスクリーン版を作製した。ここで、画像形成用スクリーンの波長375nmの紫外光での反射率は(a)4.7%、(b)5.5%であった。
(実施例3)
実施例1における画像形成用スクリーンとして、(a)表面に18nmの平均厚みの酸化被膜層を全面に形成した13μmの線径のタングステン線、(b)表面に15nmの平均厚みの酸化被膜層を全面に形成した11μmの線径のタングステン線を、それぞれ用いて(a)450メッシュ、(b)520メッシュに織り込まれたタングステンスクリーンメッシュを用い、画像形成用スクリーン部の中央部での張力を、テンションゲージSTG-75B(サン技研社製)を用いた測定で(a)1.1mm、(b)1.2mmとし、露光時間を(a)90秒、(b)85秒とした以外は、実施例1と同様に版を作製した。ここで、画像形成用スクリーンの波長375nmの紫外光の反射率は(a)3.7%、(b)3.9%であった。
(実施例4)
実施例1におけるガラスマスクのポジパターンの形成部分を(a)120mm×120mm、(b)180mm×180mmとした以外は、実施例1と同じ仕様の版を作製した。
(実施例5)
実施例1において、ジアゾ系の感光性乳剤(株式会社NBCメッシュテック製、商品名V1乳剤)の塗布・乾燥を20回繰り返すことにより、感光性樹脂膜の厚さを20μmとして、露光時間を220秒とした以外は実施例1と同じ仕様の版を作製した。
(実施例6)
画像形成用スクリーンとして、表面に21nmの厚みの酸化被膜層を全面に形成した16μmの線径の、レニウムを3重量%含むタングステン合金線を用いて325メッシュに織り込まれたスクリーンメッシュを用いた以外は実施例1と同じ仕様のコンビネーションスクリーン版を作製した。ここで、画像形成用スクリーンの波長375nmの紫外光の反射率は4.1%であった。
(実施例7)
画像形成用スクリーンとして、表面に25nmの厚みの酸化被膜層を全面に形成した16μmの線径のタングステン線を縦糸とし、線径16μmの通常のステンレス線を横糸として325メッシュに織り込まれたスクリーンメッシュを用いた以外は実施例1と同じ仕様のコンビネーションスクリーン版を作製した。ここで、画像形成用スクリーンの波長375nmの紫外光の反射率は5.9%であった。
(比較例1)
実施例1における画像形成用スクリーンに用いるタングステン線において、本実施形態にて説明した酸化被膜層形成の処理を行わないものであり、その表面はタングステン線の周囲全長の20%程度に断続的に厚み5〜20nmの酸化被膜が形成されているが、全体の80%程度にはほとんど酸化被膜層が形成されていない通常のタングステンメッシュ(W40−325−016、株式会社NBCメタルメッシュ製)を用いた以外は、実施例1と同じ仕様のコンビネーションスクリーン版を作製した。ここで、画像形成用スクリーンの波長375nmの紫外光の反射率は11.5%であった。
(比較例2)
画像形成用スクリーンとして、16μmの線径のステンレス線を用いて325メッシュに織り込まれたステンレスクリーンメッシュ(M10−325−16、株式会社NBCメタルメッシュ製)を用い、支持体用スクリーンとしてポリエステル製のUX230T(式会社NBCメッシュテック製)を用い、ガラスマスクのポジパターンの形成部分を(a) 150mm×150mm、(b) 120mm×120mmとし、画像形成用スクリーン部の中央部での張力を(a)、(b)ともに1.1mmとした以外は実施例1と同様な方法でコンビネーションスクリーン版を作製した。ここで、画像形成用スクリーンの波長375nmの紫外光の反射率は12.1%であった。
(比較例3)
画像形成用スクリーンとして、16μmの線径の高強度のステンレス線を用いて325メッシュに織り込まれたステンレスクリーンメッシュ(M30−325−16、株式会社NBCメタルメッシュ製)を用い、支持体用スクリーンとしてポリアリレート製のV330(株式会社NBCメッシュテック製、商品名Vスクリーン)を用い、画像形成用スクリーン部の中央部での張力を1.0mmとした以外は実施例1と同様な方法でコンビネーションスクリーン版を作製した。ここで、画像形成用スクリーンの波長375nmの紫外光の反射率は12.5%であった。
(比較例4)
実施例1における画像形成用スクリーンに用いるタングステン線の表面の酸化被膜層の厚みを138nmとしたタングステンスクリーンを用いた以外は、実施例1と同じ仕様のコンビネーションスクリーン版を作製した。ここで、画像形成用スクリーンの波長375nmの紫外光の反射率は6.5%であった。
(比較例5)
実施例1における画像形成用スクリーンに用いるタングステン線の表面の酸化被膜層の厚みを11nmとしたタングステンスクリーンを用いた以外は、実施例1と同じ仕様のコンビネーションスクリーン版を作製した。ここで、画像形成用スクリーンの波長375nmの紫外光の反射率は7.6%であった。比較例5は、本実施形態の酸化被膜層の好ましい厚みの下限値よりも小さい厚みの酸化被膜層が形成された例であり、糸の全周にわたって完全には酸化被膜が十分に形成されていない部分が生じてしまう例である。
(酸化被膜層の平均厚さ測定)
画像形成部を構成したものと同じメッシュのタングステン線の断面をクロスセクションポリッシャー(CP)で研磨し、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社、型式7500F)で撮影した。酸化被膜層の平均厚さとしては、タングステン線断面のSEM画像の外周部を、ほぼ等間隔で酸化被膜層厚さ10点を測定し、その平均値を用いた。
(反射率の測定)
反射率は分光光度計(日本分光株式会社製、型式V−670)を用いて測定した。メッシュ織物は縦糸・横糸のある実体部と、印刷時にインクが透過する空隙部とから構成されており、光束を投射しても空隙部では光が透過してしまうため、同じ材質のメッシュでも種類により反射率が異なることとなる。そこでメッシュを複数枚重ねてその反射率を測定してゆき、その値が一定値を示す時の反射率を用いた。本発明での実施例、比較例では何れの場合でも3枚以上のメッシュを重ねた状態では、反射率がほぼ一定となったので、3枚のメッシュを重ねたもので反射率を測定した。
(解像性の評価方法)
実施例1〜7及び比較例1〜5において、座標計測機PCM−1300(株式会社ソキア製)を用い、版のパターン部を拡大して目視観察により評価した。上述の図9に示した10〜50μmのパターン幅のマスクを用いてパターンを形成した場合に、乳剤(感光性樹脂)残りのないパターン幅を解像可能とし、9分割した全区分(9パターン)においての解像状態から、下記の規準により5段階の評価ランクを付与した。
評価ランクAAA=9区分全てで15μm解像可能、AA=9区分全てで20μm解像可能、A=9区分全てで30μmかつ5区分以上で20μm解像可能、B=5区分以上で30μ解像可能、C=4区分以下でのみ30μmの解像が可能。
ここで代表的な解像可能例として、図10に実施例1においてパターンの幅が20μmの場合を示し、また乳剤がパターン部に残る例として、図11に比較例1においてパターンの幅が20μmの場合を示した。図10および図11において、多数の上下に延びるラインが、感光膜によってメッシュ織物に形成されたパターンの一部である。実施例の図10に示す画像では、上下のライン状のパターン以外には、感光性樹脂が残っていないことが分かる。一方、比較例の図11に示す画像では、上下のライン状のパターンの間に、感光性樹脂が残っていることが分かる。紫外光の周囲への散乱によって、硬化させる必要の無い樹脂まで硬化してしまい、図11の画像に示すようにライン状のパターン以外にも樹脂が残っている。
実施例1〜7及び比較例1〜5における画像形成部および支持体部に用いたスクリーンの種類、画像形成部のタングステン酸化被膜層の平均厚さ、反射率の値及び画像形成部の全面積に対するパターン形成部の面積割合(利用率)とともに、解像性の評価結果を表1に示した。十分な高精細パターンといえるためには、30μm以下の線幅やドット径がパターン形成部のほぼ全面で確実に解像できることが必要であるので、評価ランクとしてAランク以上が必要である。
平均の酸化被膜厚さが15nm以上120nm以下である実施例1から5、およびレニウムとの合金である実施例6、また縦糸にタングステン、横糸にステンレスを用いた実施例7のいずれにおいても、波長375nmの光の反射率が6%以下であり、いずれも9分割した全区分(全9パターン)において30μmの解像が可能であった。特に、糸径が13μmの実施例3aや11μmである実施例3bではメッシュ数が高いことと反射率が4%未満であることにより、9分割した全区分において実施例3aでは20μm、実施例3bでは15μmの解像が可能であった。これに対してタングステン線の周囲20%程度に部分的に酸化被膜層が形成されているだけで、反射率が11.5である通常のタングステンメッシュを用いた比較例1では、9分割の区分中の3区分のみにて30μmが解像可能であるにとどまっている。また、平均の酸化被膜層厚さは11nmであるが、タングステン線の周囲のほぼ全面に酸化被膜層が形成されない可能性がある比較例5の場合、反射率は7.6%となり、9分割の区分中の7区分のみにて30μmが解像可能であるに留まった。さらに、実施例1と同じ線径、メッシュ数のステンレスメッシュである比較例2では、反射率が12.1%と高いことも有り、9分割の区分中の2区分のみにて30μmの解像が可能であった。
(印刷実験条件)
実施例および比較例で作成したコンビネーションスクリーン版の各々について、以下に示す印刷機及び印刷条件により印刷試験を行った。
印刷機:マイクロテック製MT−302Z
スキージ:ウレタンゴム製平スキージ
スキージ硬度:70°
スキージ角度:70°
スキージ幅:200mm
印刷速度:50mm/sec
総圧:200Kpa
実印圧:+30Kpa
使用ペースト:セイコーアドバンス製US200、粘度120ポイズ(25℃)
印刷対象:平板ガラス
温湿度:22℃〜23℃、50〜60%
なお、クリアランスは各版において版離れできる最小の距離とした。
(印刷精度及び耐久性の評価方法)
使用初期における印刷精度と、所定枚数印刷後の印刷精度(耐久性)と、を以下の方法で評価した。実施例、比較例のメッシュ織物を用いた版に、矩形の四隅と各辺における各辺を3等分する位置にマーク(例えば、トンボなどと呼ばれる印)を印刷するパターンを形成し、そのパターンによって印刷を行って実際に印刷されたパターンにおけるマークとマークの間の距離を測定し、その基準の距離との変化の量によって精度を評価した。
具体的には、図12に示すような矩形において、各両矢印の先端の位置にマークを印刷するパターンを版に形成した。つまり、X1の両矢印(図12における矩形の最も下方の左右方向の両矢印)の両端の位置、X2の両端の位置、X3の両端の位置、X4の両端の位置、Y2の両矢印(矩形の上下方向の両矢印)の両端の位置、Y3の両端の位置にそれぞれマークを印刷するパターンを版に形成する。なお、Y1、Y4、Z1、Z2の両端のマークは、X1やX4の両端と共通のマークである。
そして、実際に平板ガラス上に印刷された印刷パターンにおいて、各両矢印の両端のマーク間の距離を測定する。たとえば、X1であれば、X1の両矢印の先端の位置に対応するマーク間の距離であり、Z2であれば、矩形の左上のマークから右下のマークまでの距離である。X1〜Z2まで計10組のマーク間の距離を測定する。
マーク間の距離は、座標計測機PCM−1300(株式会社ソキア製)で測定した。そして、印刷された印刷パターンでの各マーク間の距離と、各マーク間の距離に対応する基準の距離との偏差の絶対値を求め、各値の偏差の算術平均値を求めて平均値により印刷精度を評価した。平均値は、以下に示す表2および表3の「平均」として示している数値である。
印刷精度の評価は、作製したコンビネーションスクリーン版の使用初期の段階における印刷精度と、耐久性を評価するために印刷に版を所定回数使用した後の段階における印刷精度とを求めて行った。初期の印刷精度としては、100枚目の平板ガラス上に印刷された印刷パターンについての各マーク間の距離(X1〜Z4)を測定した。各マーク間の距離の基準は、そのパターンの印刷に用いたスクリーン版におけるそれぞれのマーク間の距離を測定して各マーク間の距離の基準とした。そして、印刷されたパターンの各マーク間の距離と、対応するスクリーン版におけるマーク間の距離との差を求めて評価した。つまり、実際に印刷されたパターンとその印刷に用いたスクリーン版とを比較して精度を評価した。具体的には、X1の偏差が2μmとなった場合であれば、例えば、印刷されたパターンのX1に対応するマーク間の距離が20.002mmで、その印刷に用いたスクリーン版における対応するX1の距離が20.000mmの場合、偏差が2μmとなる。
また耐久性の評価としては、3000枚目の実際の印刷パターンの各マーク間の距離を測定した。各マーク間の距離の基準は、100枚目の実際の印刷パターンの各マーク間の距離を測定してそれぞれのマーク間の距離の基準とした。つまり、印刷使用初期の印刷パターン(基準)と、多数の印刷に使用した後の3000枚目の印刷パターンとを比較して精度を求め、耐久性の評価とした。具体的には、Y3の偏差が5μmとなった場合には、例えば、3000枚目の印刷されたパターンにおけるY3の両端の位置のマーク間の距離が20.026mmであり、100枚目の印刷されたパターンにおけるY3の両端の位置のマーク間の距離が20.021mmの場合、偏差が5μmとなる。
評価結果として初期の印刷精度として各測定位置での偏差の絶対値と平均値とを表2に示した。
表2に示す結果から分かるように、通常のステンレスに比べて約2倍の弾性率を示すタングステン線でのメッシュを用いた実施例1と同一の径及びメッシュ数で通常のステンレスである比較例2aとを比較すると、初期精度の平均値がタングステン(実施例1)では11.9μmとステンレス(比較例2a)の24.7μmに比べて半分以下であり、極めて精度が優れている。また画像形成部の利用率を66.9%に上げた実施例4bにおいても、比較例2より初期精度が優れており、本発明によれば、優れた初期精度を維持しつつ画像形成用スクリーンの利用率を向上することが可能であることがわかる。比較例2bでは画像形成部の利用率を、一般的なスクリーン版での利用率と同等の30%程度とすることで、比較例2a(利用率46.5%)より初期精度は向上するものの(24.7から17.1)、利用率46.5%の実施例1(11.9)より劣り、利用率が2倍以上である実施例4bとほぼ同等であることがわかる。縦糸にタングステン、横糸に通常のステンレスを用いた実施例7では、初期精度は通常のステンレスに比べ十分に優れ、高強度のステンレスと比べても同等以上の精度が得られた。
酸化被膜層がタングステン線の周囲全体には形成されてない比較例1や、周囲全体に形成されていない可能性がある比較例5、また酸化被膜層の厚みが120nmより厚い場合である比較例4では、波長375nmの光の反射率が6%より大きいことより解像性は劣るものの、印刷精度、すなわちスクリーン版と印刷物とのパターンのずれは実施例1と同等となる。これはタングステン固有の高い弾性率によるものである。
また、耐久性の評価結果を表3に示した。
100枚目の印刷パターンを基準とした場合の、3000枚目の印刷パターンの基準からの偏差によって評価した耐久性評価においては、応力・歪曲線における降伏点と破断点が近接しており、ほぼ全領域において直線関係を示すタングステンメッシュである、実施例1〜5及びタングステンとレニウムとの合金である実施例6や縦糸にタングステン、横糸に通常のステンレスを用いた実施例7のすべてに於いて、耐久性の評価となる印刷3000枚後の平均的なずれは全て10μm以内に収まっている。つまり、100枚目の印刷から3000枚目の印刷においての印刷パターンの経時変化が10μm未満であるという極めて高い耐久性を有することが分かった。これに対して通常のステンレスを用いた比較例2aでは2倍以上のズレを示しており、画像形成部の利用率を30%程度に抑えた実施例4aと、ステンレスで同等の利用率である比較例2bとの比較では2.8μm(実施例4a)と14.3μm(比較例2b)となり耐久性に著しい差異があり、やはり本発明の実施例は極めて高い耐久性も得られることがわかる。さらに利用率を66.9%とした実施例4bにおいても、耐久性は8.8μmと通常のステンレスでの利用率30%程度の比較例2b(14.3μm)より優れていることより、タングステンメッシュであれば多数回使用後も高い精度を維持しつつ、高い利用率が可能であることが明らかとなった。つまり従来よりも利用率を大幅に上げても、耐久性が維持されることが分かった。
またレニウムとの合金である実施例6でも、タングステンの高い弾性率と、降伏点と破断点とが近接しているとの力学的特徴が維持され、実施例1と同等の優れた耐久性を有している。さらに縦糸にタングステン、横糸に通常のステンレスを用いた実施例7では、耐久性においては通常のステンレスの比較例2aと比べて平均的ズレは1/2以下、高強度ステンレス(比較例3)と比べても十分に優れていることがわかる。
ここで比較例1と比較例5は、初期の印刷精度と同様タングステン固有の力学的特徴により実施例1とほぼ同等の優れた耐久性を有する。初期印刷精度が実施例1と同等の比較例4の耐久性が劣るのは、厚い酸化被膜層を形成するための処理条件が強すぎることによりメッシュ自体の強度が低下したためと考えられる。(なお、比較例はいずれも解像度の面で本発明の実施例のような優れた解像性は得られない。)
1:金属メッシュ織物
2:縦糸
3:横糸
4:酸化被膜
11:標準的なステンレスメッシュの応力―歪曲線
12:本実施形態のタングステンメッシュの応力―歪曲線
13:ステンレスメッシュの降伏点
14:タングステンメッシュの降伏点
15:ステンレスメッシュの破断点
16:タングステンメッシュの破断点
20:マスク
21:実施形態のスクリーン糸
22:ネガパターン部
23:ポジパターン部
24:紫外光
25:反射光
30:高反射率スクリーンメッシュでの版断面の部分モデル図
32:判断面モデルの開口部
100:コンビネーションスクリーン版
101:枠
102:画像形成用スクリーン
103:支持体用スクリーン
、X、X、X :X方向距離の測定位置
、Y、Y、Y :Y方向距離の測定位置
、Z :Z方向距離の測定位置

Claims (7)

  1. 金属線材からなる縦糸及び横糸が互いに交差するように製織された構造を有する金属メッシュ織物であって、前記縦糸及び前記横糸の少なくとも一方が、タングステン又はタングステン合金であり、前記タングステン又はタングステン合金の糸の表面には、平均厚さが15nm以上120nm以下のタングステン又はタングステン合金の酸化物被膜が形成されており、かつ波長375nmの光の反射率であって、前記金属メッシュ織物を所定枚数以上重ねた場合にほぼ一定の値となる前記反射率が6%以下であることを特徴とする印刷用金属メッシュ織物。
  2. 前記タングステン又はタングステン合金の糸は、線径が16μm以下であり、前記金属メッシュ織物における前記縦糸及び横糸のそれぞれの25.4mmあたりの本数が300本以上であることを特徴とする請求項1に記載の印刷用金属メッシュ織物。
  3. 前記所定枚数が3枚であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷用金属メッシュ織物。
  4. 請求項1から3のいずれか1つに記載の印刷用金属メッシュ織物を用いたことを特徴とする印刷用スクリーン版。
  5. 画像形成用スクリーンと、該画像形成用スクリーンを枠に支持する支持体用スクリーンとを備え、前記支持体用スクリーンが合成繊維からなる織物構造体であり、前記画像形成用スクリーンとして請求項1から3のいずれか1つに記載の前記金属メッシュ織物を用いることを特徴とする印刷用スクリーン版。
  6. 前記画像形成用スクリーン内において印刷対象の画像に対応する印刷用のパターンが形成される画像形成部の面積が、前記画像形成用スクリーンの全体の面積に対して45%以上であることを特徴とする請求項5に記載の印刷用スクリーン版。
  7. 前記印刷用スクリーン版に形成される印刷用のパターンは、最小のパターン幅または最小のパターンドット径が30μm以下であることを特徴とする請求項4から6のいずれか1つに記載の印刷用スクリーン版。

JP2013231468A 2013-11-07 2013-11-07 印刷用金属メッシュ織物および印刷用スクリーン版 Active JP6148604B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013231468A JP6148604B2 (ja) 2013-11-07 2013-11-07 印刷用金属メッシュ織物および印刷用スクリーン版

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013231468A JP6148604B2 (ja) 2013-11-07 2013-11-07 印刷用金属メッシュ織物および印刷用スクリーン版

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015089672A true JP2015089672A (ja) 2015-05-11
JP6148604B2 JP6148604B2 (ja) 2017-06-14

Family

ID=53193423

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013231468A Active JP6148604B2 (ja) 2013-11-07 2013-11-07 印刷用金属メッシュ織物および印刷用スクリーン版

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6148604B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017139058A (ja) * 2016-02-01 2017-08-10 タイガースポリマー株式会社 封止装置用弾性シートおよびその製造方法
JP2018001436A (ja) * 2016-06-27 2018-01-11 パナソニックIpマネジメント株式会社 金属メッシュの製造方法
JP2018083206A (ja) * 2016-11-21 2018-05-31 パナソニックIpマネジメント株式会社 タングステンメッシュ及び電池
JP2018122599A (ja) * 2018-04-02 2018-08-09 パナソニックIpマネジメント株式会社 タングステン線及びタングステン繊維
WO2019159980A1 (ja) * 2018-02-15 2019-08-22 ミタニマイクロニクス株式会社 スクリーンマスク用メッシュ、スクリーンマスク、及び印刷物の製造方法
WO2022190557A1 (ja) * 2021-03-12 2022-09-15 パナソニックIpマネジメント株式会社 金属線及び金属メッシュ
WO2023153089A1 (ja) * 2022-02-10 2023-08-17 パナソニックIpマネジメント株式会社 タングステン線及び金属メッシュ

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1177948A (ja) * 1997-09-17 1999-03-23 Reitetsuku Kk スクリーン印刷版およびその製造方法
JP2003019875A (ja) * 2001-07-10 2003-01-21 Suzutora:Kk 印刷用スクリーン紗
JP2003291555A (ja) * 2002-03-29 2003-10-15 Mitani Denshi Kogyo Kk 印刷用スクリーン
JP2006240011A (ja) * 2005-03-02 2006-09-14 Murakami:Kk スクリーン印刷用メッシュおよびこれを用いてなるスクリーン印刷用原板
JP2007092233A (ja) * 2005-09-29 2007-04-12 Toray Ind Inc スクリーン紗用モノフィラメント
JP2009279899A (ja) * 2008-05-26 2009-12-03 Nbc Meshtec Inc 高精度かつ高耐久性のコンビネーションスクリーン版
US20110283904A1 (en) * 2010-05-19 2011-11-24 Gallus Ferd. Rueesch Ag Two-dimensional screen material and screen
WO2013005726A1 (ja) * 2011-07-01 2013-01-10 太陽化学工業株式会社 プライマー組成物、該組成物から成るプライマー層を含む構造体、及び該構造体の製造方法

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1177948A (ja) * 1997-09-17 1999-03-23 Reitetsuku Kk スクリーン印刷版およびその製造方法
JP2003019875A (ja) * 2001-07-10 2003-01-21 Suzutora:Kk 印刷用スクリーン紗
JP2003291555A (ja) * 2002-03-29 2003-10-15 Mitani Denshi Kogyo Kk 印刷用スクリーン
JP2006240011A (ja) * 2005-03-02 2006-09-14 Murakami:Kk スクリーン印刷用メッシュおよびこれを用いてなるスクリーン印刷用原板
JP2007092233A (ja) * 2005-09-29 2007-04-12 Toray Ind Inc スクリーン紗用モノフィラメント
JP2009279899A (ja) * 2008-05-26 2009-12-03 Nbc Meshtec Inc 高精度かつ高耐久性のコンビネーションスクリーン版
US20110283904A1 (en) * 2010-05-19 2011-11-24 Gallus Ferd. Rueesch Ag Two-dimensional screen material and screen
WO2013005726A1 (ja) * 2011-07-01 2013-01-10 太陽化学工業株式会社 プライマー組成物、該組成物から成るプライマー層を含む構造体、及び該構造体の製造方法
US20140130687A1 (en) * 2011-07-01 2014-05-15 Taiyo Chemical Industry Co., Ltd. Primer composition, structure including primer layer composed of the composition, and method of producing the structure

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017139058A (ja) * 2016-02-01 2017-08-10 タイガースポリマー株式会社 封止装置用弾性シートおよびその製造方法
JP2018001436A (ja) * 2016-06-27 2018-01-11 パナソニックIpマネジメント株式会社 金属メッシュの製造方法
JP2018083206A (ja) * 2016-11-21 2018-05-31 パナソニックIpマネジメント株式会社 タングステンメッシュ及び電池
WO2019159980A1 (ja) * 2018-02-15 2019-08-22 ミタニマイクロニクス株式会社 スクリーンマスク用メッシュ、スクリーンマスク、及び印刷物の製造方法
JP2019137024A (ja) * 2018-02-15 2019-08-22 ミタニマイクロニクス株式会社 スクリーンマスク用メッシュ、スクリーンマスク、及び印刷物の製造方法
JP2018122599A (ja) * 2018-04-02 2018-08-09 パナソニックIpマネジメント株式会社 タングステン線及びタングステン繊維
WO2022190557A1 (ja) * 2021-03-12 2022-09-15 パナソニックIpマネジメント株式会社 金属線及び金属メッシュ
WO2023153089A1 (ja) * 2022-02-10 2023-08-17 パナソニックIpマネジメント株式会社 タングステン線及び金属メッシュ

Also Published As

Publication number Publication date
JP6148604B2 (ja) 2017-06-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6148604B2 (ja) 印刷用金属メッシュ織物および印刷用スクリーン版
TWI774711B (zh) 網版及其製造方法
JP5529395B2 (ja) 高精度かつ高耐久性のコンビネーションスクリーン版
KR101355333B1 (ko) 스크린 인쇄용 메쉬 부재
JP2013202895A (ja) スクリーン印刷版の製造方法とスクリーン印刷版
CN109795215B (zh) 具有离型层的印刷网版及其制作方法
CN106494074B (zh) 一种丝网印刷版的制备方法
KR20150131950A (ko) 플렉소 인쇄판과 그 제조 방법, 및 액정 표시 소자의 제조 방법
JP2008162197A (ja) スクリーンマスクおよびその製造法
KR20140090542A (ko) 플렉소 인쇄판과 그의 제조 방법, 및 액정 패널용 기판의 제조 방법
TWI681877B (zh) 具有離型層的印刷網版及其製作方法
JP3497844B2 (ja) スクリーン印刷用金属メッシュ織物
JP2022107073A (ja) スクリーン印刷版およびその製造方法
JP6290732B2 (ja) スクリーン印刷用金属メッシュ織物およびスクリーン印刷用スクリーン版
JP5522726B2 (ja) メタルマスク印刷版
CN211467804U (zh) 曝光型聚酰亚胺网版
JP5351404B2 (ja) メッシュ織物の製造方法
JP2018111311A (ja) スクリーン版
JP2017074757A (ja) スクリーンマスク、スクリーン印刷装置、及び印刷物の製造方法
JP6782005B2 (ja) スクリーンマスクおよびその製造方法
JP6145018B2 (ja) スクリーン印刷版および光学部材の製造方法
JP2009083120A (ja) 蛍光体ペースト充填用マスク
JP6736092B2 (ja) スクリーンマスク用メッシュ、スクリーンマスク、及び印刷物の製造方法
JP2023104351A (ja) スクリーンマスク用メッシュ、スクリーンマスク、スクリーンマスクの製造方法及び印刷物の製造方法
TW201325914A (zh) 具非等向性張力之印刷網版及其製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160824

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170509

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170516

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170519

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6148604

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250