JP2015083924A - 定電位電解式ガスセンサ - Google Patents
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Abstract
Description
このような定電位電解式ガスセンサにおいて、参照極としては、例えば白金(Pt)、金(Au)などの電解液に対して不溶性の貴金属の微粒子、またはこれらの貴金属の微粒子の混合物や合金の微粒子などがバインダと共に焼成されてなるものが用いられている。
前記参照極が、イリジウム、酸化イリジウム、ルテニウム、酸化ルテニウムおよび酸化白金から選ばれる物質により形成されたものであることを特徴とする。
従って、本発明の定電位電解式ガスセンサによれば、検査対象ガスの組成によらずに高い信頼性でガス検知を行うことができる。
図1は、本発明の定電位電解式ガスセンサの構成の一例を示す説明図である。
この定電位電解式ガスセンサ10は、一端(図1における左端)に、検査対象ガスを導入するためのガス導入用貫通孔12を有すると共に、他端(図1における右端)に、ガス排出用貫通孔13を有する筒状のケーシング11を備えている。このケーシング11には、一端側内面に、ガス導入用貫通孔12を内面側から塞ぐように一端側ガス透過性疎水隔膜15が張設されており、また他端側内面には、ガス排出用貫通孔13を内面側から塞ぐように他端側ガス透過性疎水隔膜16が張設されており、これにより、ケーシング11内に、例えば硫酸よりなる電解液Lが収容される電解液室が液密に形成されている。
また、ケーシング11内には、電解液Lが収容されていると共に、作用極21、対極22および参照極23が、電解液Lに浸漬されて電解液Lと接触した状態とされており、それぞれの電極間に電解液Lが介在した状態で配設されている。具体的には、作用極21は、一端側ガス透過性疎水隔膜15の接液側の内面に設けられており、対極22は、他端側ガス透過性疎水隔膜16の接液側の内面に設けられている。また、参照極23は、作用極21および対極22の各々と離間した位置において、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂よりなるガス透過性多孔質膜17の一面に設けられている。
この図の例において、参照極23は、対極22とは電解液Lを介して対向し、また作用21とは、電解液Lおよび参照極23に係るガス透過性多孔質膜を介して対向している。
この制御手段30は、作用極21と参照極23との間に一定の電位差が生じると共に作用極21の電位が酸化還元反応が起こる電位となるよう、作用極21に所定の大きさの電圧を印加するものである。
一端側ガス透過性疎水隔膜15および他端側ガス透過性疎水隔膜16としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂よりなる多孔質膜を用いることができる。
具体的に、一端側ガス透過性疎水隔膜15および他端側ガス透過性疎水隔膜16を構成する多孔質膜としては、空隙率が10〜70%であって厚みが0.01〜1mmであるものが好ましい。
ここに、参照極23を構成する酸化白金としては、酸化白金(IV)(PtO2 )および酸化白金(II)(PtO)が挙げられる。
この参照極23は、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrO2 )、ルテニウム(Ru)、酸化ルテニウム(RuO2 )、酸化白金(IV)(PtO2 )および酸化白金(II)(PtO)のうちの1種類の物質によって形成されたものであってもよく、また2種類以上の物質が組み合わされて形成されたものであってもよい。
特定導電性非金属の具体例としては、例えばチャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。
特定導電性非金属として用いられるカーボンブラックの粒径は、100μm以下であることが好ましい。
また、特定導電性非金属としては、カーボンブラックの他、例えばグラファイト(黒鉛)、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンなどを用いることもできる。
この参照極23を構成する電極触媒体は、特定物質の微粒子、または特定物質の微粒子と特定導電性非金属の微粒子との混合物を、バインダと共に焼成する工程を経ることによって形成される。
参照極23を構成する電極触媒体の製造過程において用いられる特定物質の微粒子は、粒径が75μm(200メッシュ)以下であることが好ましく、比表面積が2〜200m2 /gであることが好ましい。
参照極23を構成する電極触媒体が、ガス透過性多孔質膜17の一面上に形成された電極触媒層を構成するものである場合において、厚みは、例えば10〜500μmとされる。また、ガス透過性多孔質膜の一面における形成面積は、例えば3〜500mm2 とされる。
この作用極21を構成する電極触媒層は、例えば白金(Pt)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)などの電解液Lに対して不溶性の金属の微粒子、これらの金属の酸化物の微粒子、これらの金属の合金の微粒子、またはこれらの微粒子の混合物などを、バインダと共に焼成する工程を経ることによって形成される。
この対極22を構成する電極触媒層としては、作用極21と同様の構成のものが用いられる。すなわち、例えば白金(Pt)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)などの電解液Lに対して不溶性の金属の微粒子、これらの金属の酸化物の微粒子、これらの金属の合金の微粒子、またはこれらの微粒子の混合物などを、バインダと共に焼成する工程を経ることによって形成されたものが用いられる。
ここに、参照極用リード部材31cが特定金属により形成されたものである場合において、当該参照極用リード部材31cは、タンタル、金、タングステンおよびニオブのうちの1種の金属により形成されたものであってもよく、2種以上の金属により形成されたものであってもよい。
具体的に説明すると、特定金属よりなる参照極用リード部材31cは、後述の実験例からも明らかなように、検査対象ガス中に雑ガスとして含まれるような種々のガスに対して不活性あるいは活性が小さいものである。そのため、参照極用リード部材31cにおけるケーシング11内に位置するケーシング内部部分に、検査対象ガス中の雑ガスが接触した場合において、そのケーシング内部分において当該参照極用リード部材31cと電解液Lとの界面の状態に変化が生じることが防止あるいは抑制される。従って、参照極用リード部材31cと電解液Lとの界面の状態が変化することに起因して参照極23の電極電位が変動することが防止あるいは抑制され、よって作用極21に印加することが必要とされる電圧が、検査対象ガスの組成によらず略一定となる。その結果、定電位電解式ガスセンサ10に指示誤差が生じることがより一層抑制されるため、ガス検知により高い信頼性が得られる。
従って、定電位電解式ガスセンサ10によれば、検査対象ガスの組成によらずに高い信頼性でガス検知を行うことができる。
具体的には、作用極21において還元反応を生じさせ、対極22において酸化反応を生じさせることのできるガスとしては、例えば酸素ガス、二酸化窒素ガス、三フッ化窒素ガス、塩素ガス、フッ素ガス、ヨウ素ガス、三フッ化塩素ガス、オゾンガス、過酸化水素ガス、フッ化水素ガス、塩化水素ガス(塩酸ガス)、酢酸ガスおよび硝酸ガスなどが挙げられる。これらのガスを検知対象ガスとした場合には、対極22において酸化反応が生じることによって酸素ガスが生成される。
また、作用極21において酸化反応を生じさせ、対極22において還元反応を生じさせることのできるガスとしては、例えば一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化硫黄ガス、シランガス、ジシランガス、ホスフィンガス、ゲルマンガスなどが挙げられる。
対極22を酸化イリジウムにより形成されたものとすることにより、対極22における酸素発生の過電圧を低くすることができ、しかも長期間にわたって略一定とすることができる。従って、所期のガス検知を低い電圧で長期間にわたって安定に行うことができる。しかも、対極22を構成する電極触媒層の他端側ガス透過性疎水隔膜16の一面における形成面積を小さくすることができることから、定電位電解式ガスセンサ10の小型化を図ることができる。
また、定電位電解式ガスセンサ10において、対極22にて還元反応を生じさせるガスを検知対象ガスとする場合には、対極22が白金黒(黒色白金微粒子)により形成されたものであることが好ましい。
対極22を白金黒により形成されたものとすることにより、白金黒が対極22において生じる酸素還元に対して活性の大きいものであるため、水素発生を抑制できる。
この定電位電解式センサ40は、酸素ガスを検知対象ガスとするものであり、電解液が収容される電解液室Sを有する、全体が略箱型形状のケーシング41を備えている。
ケーシング41には、電解液室Sと並んだ位置において、電解液室Sの内部空間と連通孔43を介して連通する上下方向に伸びる略円柱状の貫通孔よりなる感応部形成用空間45が形成されている。この感応部形成用空間45内には、厚み方向に貫通する複数の通孔50Aよりなる流体流通路が形成された上面側保護板50が配置されており、この上面側保護板50の上面側には、例えば濾紙よりなる電解液保持層(図示省略)、作用極55および被検査ガスを導入するピンホール61が貫通して形成された、例えば液晶ポリマーよりなる板状蓋部材(ガス供給制限部材)60が順次に収容されて配置されている。一方、上面側保護板50の下面側においては、その中央位置に、参照極57が、例えば濾紙よりなる電解液保持層(図示省略)が介在された状態で設けられている。
また、感応部形成用空間45内における上面側保護板50の下方位置には、厚み方向に貫通する複数の通孔65Aよりなる流体流通路が形成された下面側保護板65が配置されている。この下面側保護板65の下面側には、例えば濾紙よりなる電解液保持層(図示せず)、対極56および被検査ガスを排出するガス排出用貫通孔70Aが形成されたキャップ部材70が順次に収容されて配置されている。
また、定電位電解式ガスセンサ40においては、作用極55、対極56および参照極57は、各々、作用極用リード部材(図示省略)、対極用リード部材(図示省略)および参照極用リード部材(図示省略)によって、例えばポテンショスタットよりなる制御手段に接続されている。そして、作用極用リード部材、対極用リード部材および参照極用リード部材は、各々、一端部がケーシング41における電解液室Sの液密状態を維持するようにして外部に導出されている。また、作用極用リード部材、対極用リード部材および参照極用リード部材の他端部は、各々、電極と電解液保持層を構成する濾紙とにより挟みこまれた状態で当該電極に電気的に接続されている。
この図の例において、42は、例えばフッ素系樹脂よりなるガス透過性疎水圧力調整膜である。
作用極55は、ガス透過性疎水隔膜(図示省略)の一面上の中央位置に形成された電極触媒層よりなるものである。この作用極55に係る電極触媒層は、図1に係る定電位電解式ガスセンサ10における作用極21と同様の構成を有するものである。
また、対極56は、ガス透過性疎水隔膜(図示省略)の一面上の中央位置に形成された電極触媒層よりなるものである。この対極55に係る電極触媒層は、図1に係る定電位電解式ガスセンサ10における対極22と同様の構成を有するものである。
また、作用極用リード部材、対極用リード部材および参照極用リード部材は、各々、図1に係る定電位電解式ガスセンサ10における作用極用リード部材31a、対極用リード部材31bおよび参照極用リード部材31cと同様の構成を有するものである。
例えば、定電位電解式ガスセンサは、図1に係る定電位電解式ガスセンサ10において、参照極が、他端側ガス透過性疎水隔膜の接液側の内面における対極と離間して並んだ位置に設けられた構成のものであってもよい。
このような構成の定電位電解式ガスセンサにおいては、参照極が検査対象ガスに直接接触する位置に配設されているが、この参照極が特定物質により形成されており優れた電位安定性を有するものであることから、検知対象ガスに含まれる雑ガスが参照極に直接接触した場合であっても、作用極に印加することが必要とされる電圧が、検査対象ガスの組成によらずに略一定となるため、正確なガス感度、すなわち高い指示精度が得られる。
また、対極と参照極とを他端側ガス透過性疎水隔膜に形成すればよく、よって対極および参照極を形成するために個別の多孔質膜が必要とされないことから、構成部材の品数が低減され、製造コストが安価になると共にセンサの製造が容易となる。また、ケーシング内において一端側ガス透過性疎水隔膜と他端側ガス透過性疎水隔膜との間に参照極の配置位置を確保する必要がないことから、より一層の小型化を図ることができる。特に対極および参照極の電極材料として酸化イリジウムを用いる場合には、対極および参照極を形成するために個別の電極触媒が必要とされることがなく、しかも対極と参照極とを同時に形成することができるため、更に製造コストが安価になると共にセンサの製造が容易となる。しかも、対極の電極サイズを小さくすることができるため、更により一層の小型化を図ることができる。
図3に示すように、作用極83と対極84とを有する2極式の実験用装置(以下、「実験用装置(1)」ともいう。)を作製した。
この実験用装置(1)は、電解液Lを収容するケーシング80を備えており、このケーシング80に形成されたガス導入用貫通孔81よりなるガス供給制御手段を内面側から塞ぐようにガス透過性疎水隔膜82が張設され、このガス透過性疎水隔膜82における電解液L側には、5個の作用極83が設けられている。また、ケーシング80内部には、5個の作用極83と共に、これらの5個の作用極83から離間した位置に、対極84として硫酸水銀電極が設けられている。この硫酸水銀電極の内部液としては、濃度0.35mol/Lの硫酸カリウム(K2 SO4 )溶液を用いた。
この実験用装置(1)において、ガス透過性疎水隔膜82としては、空隙率が30%、厚みが0.2mm、外径が4mmであってガーレー数が300秒である、ポリテトラフルオロエチレン製の円形状の多孔質膜を用いた。ガス透過性疎水隔膜82に設けられた5個の作用極83は、互いに離間した状態とされており、各々、直径が4mmの円板状の電極触媒層よりなるものである。これらの5個の作用極83は、白金黒により形成された白金黒電極、酸化イリジウム(IrO2 )により形成された酸化イリジウム電極2個および酸化ルテニウム(RuO2 )により形成された酸化ルテニウム電極2個である。具体的に、白金黒電極は、白金黒がFEPよりなるバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなる、厚み0.3mmのものである。2個の酸化イリジウム電極は、各々、粒径75μm以下、比表面積15.0±5.0m2 /gの酸化イリジウム微粒子がFEPよりなるバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなる、厚み0.3mmのものである。また、2個の酸化ルテニウム電極は、各々、比表面積125±25m2 /gの酸化イリジウム微粒子がFEPよりなるバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなる、厚み0.3mmのものである。
また、実験用装置(1)において、5個の作用極83および対極84は、各々、タンタル製のリード部材88によって実験用制御手段89に接続されている。また、電解液としては濃度9mol/Lの硫酸を用いた。
この図3においては、5個の作用極83のうちの1個の作用極83のみが示されている。
そして、5個の作用極83に対して一斉に流量0.5L/minの条件で押し込み方式によって30秒間にわたって空気を供給した後、60秒間にわたって試料ガスを供給し、その後、更に30秒間にわたって再び空気を供給し、このように空気、試料ガスおよび空気を供給する間の対極84に対する各作用極83の電位を測定した。試料ガスとしては、水素ガス(窒素ガスで希釈した濃度2.01%のもの)、エタノールガス(空気で希釈した濃度2%のもの)、一酸化炭素ガス(窒素ガスで希釈した濃度3060ppmのもの)、硫化水素ガス(窒素ガスで希釈した濃度28.8ppmのもの)を用いた。結果を図4〜図6および表1に示す。
ここに、図4は、白金黒電極の電位の測定結果を示し、図5は、2つの酸化イリジウム電極のうちの一方の電位の測定結果を示し、また図6は、2つの酸化ルテニウム電極のうちの一方の電位の測定結果を示す。また、図4〜図6において、(a)は、試料ガスとして水素ガスを用いた場合の測定結果を示し、(b)は、試料ガスとしてエタノールガスを用いた場合の測定結果を示し、(c)は、試料ガスとして一酸化炭素ガスを用いた場合の測定結果を示し、また(d)は、試料ガスとして硫化水素ガスを用いた場合の測定結果を示す。
実験例1に係る実験用装置(1)において、下記の4個の作用極が設けられていること以外は当該実験用装置(1)と同様の構成を有する実験用装置(以下、「実験用装置(2)」ともいう。)を作製した。
この実験用装置(2)を構成する4個の作用極は、各々、ガス透過性疎水隔膜82に設けられた、直径が4mmの円板状の電極触媒層よりなるものであって、白金黒により形成された白金黒電極、酸化白金(II)(PtO)により形成された一酸化白金電極、ルテニウム(Ru)により形成されたルテニウム電極およびイリジウム(Ir)により形成されたイリジウム電極である。具体的に、白金黒電極は、白金黒がバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなるものである。一酸化白金電極は、酸化白金(IV)がバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなるものである。ルテニウム電極は、ルテニウムがバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなるものである。イリジウム電極は、白金黒がバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなるものである。
ここに、図7は、白金黒電極の電位の測定結果を示し、図8は、一酸化白金電極の電位の測定結果を示し、図9は、ルテニウム電極の電位の測定結果を示し、また図10は、イリジウム電極の電位の測定結果を示す。また、図7〜図10において、(a)は、試料ガスとして水素ガスを用いた場合の測定結果を示し、(b)は、試料ガスとしてエタノールガスを用いた場合の測定結果を示し、(c)は、試料ガスとして一酸化炭素ガスを用いた場合の測定結果を示し、また(d)は、試料ガスとして硫化水素ガスを用いた場合の測定結果を示す。
白金黒電極は、水素ガス、エタノールガス、一酸化炭素ガスおよび硫化水素ガスのいずれか供給された場合においても、硫酸水銀電極に対する電位が大きく変化することが確認された。
図11に示すような構成の実験用装置(以下、「実験用装置(3)」ともいう。)を作製した。
この実験用装置(3)は、側面部92にガス導入用貫通孔およびガス排出用貫通孔が形成された、有底円筒状の容器91を備えてなるものである。この容器91には、開口を閉塞するように、円形状の多孔質PTFE膜(商品名:「FX−030」(住友電工ファインポリマー社製))94が両面テープで貼り付けられている。また、多孔質PTFE膜94の上面(図11における上面)には、一端部が容器91の開口の上方に位置するように5種類の金属線材101a〜101eが配置され、また18Nの硫酸を含浸した、円形状の濾紙95が配設されている。すなわち、5種類の金属線材101a〜101eは、一端部が、多孔質PTFE膜94と濾紙95とに挟まれた状態とされている。また、濾紙95の上面(図11における上面)上には、硫酸水銀電極97が設けられている。そして、5種類の金属線材101a〜101eがエレクトロメーターに接続されており、これらの5種類の金属線材101a〜101eにおける自然電位を同時測定することのできる構成とされている。
この実験用装置(3)において、5種類の金属線材101a〜101eとしては、白金線材、金線材、タングステン線材、タンタル線材およびニオブ線材を用いた。これらの5種類の金属線材101a〜101eは、各々、直径が0.1mmであって長さが5mm程度のものである。
また、容器91におけるガス導入用貫通孔にはガス流路部材が接続されており、このガス流路部材によって形成されるガス流路98に設けられたポンプ99によってガス供給源103から供給されるガス(具体的には空気または後述の試料ガス)が容器91内に供給される。
試料ガスとしては、窒素ガス(濃度99.9%)、低濃度水素ガス(窒素ガスで希釈した濃度2.06%のもの)、高濃度水素ガス(濃度99.9%)、一酸化窒素ガス(窒素ガスで希釈した濃度101ppmのもの)、硫化水素ガス(窒素ガスで希釈した濃度29.7ppmのもの)、一酸化炭素ガス(窒素ガスで希釈した濃度3010ppmのもの)およびエタノールガス(空気で希釈した濃度1%のもの)を用いた。結果を表3に示すと共に、白金線材において自然電位が比較的大きく変化した試料ガスにおける自然電位変化の測定結果を図12〜図16に示す。ここに、図12は、白金線材の自然電位の測定結果を示し、図13は、金線材の自然電位の測定結果を示し、図14は、タングステン線材の自然電位の測定結果を示し、図15は、タンタル線材の自然電位の測定結果を示し、また図16は、ニオブ線材の自然電位の測定結果を示す。また、図12〜図16において、(a)は、試料ガスとして高濃度水素ガスを用いた場合の測定結果を示し、(b)は、試料ガスとして低濃度水素ガスを用いた場合の測定結果を示し、(c)は、試料ガスとして硫化水素ガスを用いた場合の測定結果を示し、また(d)は、試料ガスとして一酸化炭素ガスを用いた場合の測定結果を示す。
また、タングステン線材およびタンタル線材は、高濃度水素ガスが供給された場合においては自然電位が変化するものの、その変化量は小さく、また窒素ガス、低濃度水素ガス、一酸化窒素ガス、硫化水素ガス、一酸化炭素ガスおよびエタノールガスが供給された場合には自然電位が変化しない、あるいは自然変位の変化が極めて小さいことが明らかとなった。従って、タングステン線材およびタンタル線材は、白金線材に比して高濃度水素ガスに対する活性が小さく、また低濃度水素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガスなどの窒素酸化物ガス、硫化水素ガスなどの硫黄化合物ガス、一酸化炭素ガスおよびエタノールガスなどのアルコールガスに対して不活性なものであることが確認された。
また、金線材は、低濃度水素ガス、高濃度窒素ガスおよび硫化水素ガスが供給された場合には自然電位が変化するものの、その変化量は白金線材に比して小さく、また、窒素ガス、一酸化窒素ガス、一酸化炭素ガスおよびエタノールガスが供給された場合には自然電位が変化しない、あるいは自然変位の変化が極めて小さいことが明らかとなった。従って、金線材およびタンタル線材は、白金線材に比して低濃度水素ガス、高濃度水素ガスおよび硫化水素ガスに対する活性が小さく、また窒素ガス、一酸化窒素ガスなどの窒素酸化物ガス、一酸化炭素ガスおよびエタノールガスなどのアルコールガスに対して不活性なものであることが確認された。
一方、白金線材は、窒素ガスおよびエタノールガスが供給された場合には自然電位が変化しない、あるいは自然変位の変化が極めて小さいが、低濃度水素ガス、高濃度水素ガス、一酸化炭素ガスおよび硫化水素ガスが供給された場合において、自然電位が大きく変化することが明らかとなった。
11 ケーシング
12 ガス導入用貫通孔
13 ガス排出用貫通孔
15 一端側ガス透過性疎水隔膜
16 他端側ガス透過性疎水隔膜
17 ガス透過性多孔質膜
21 作用極
22 対極
23 参照極
30 制御手段
31a 作用極用リード部材
31b 対極用リード部材
31c 参照極用リード部材
40 定電位電解式ガスセンサ
41 ケーシング
42 ガス透過性疎水圧力調製膜
43 連通孔
45 感応部形成用空間
50 上面側保護板
50A 通孔
55 作用極
56 対極
57 参照極
60 板状蓋部材
61 ピンホール
65 下面側保護板
65A 通孔
70 キャップ部材
70A ガス排出用通孔
80 ケーシング
81 ガス導入用貫通孔
82 ガス透過性疎水隔膜
83 作用極
84 対極
88 リード部材
89 実験用制御手段
91 容器
92 側面部
94 多孔質PTFE膜
95 濾紙
97 硫酸水銀電極
98 ガス流路
99 ポンプ
101a,101b,101c,101d,101e 金属線材
103 ガス供給源
L 電解液
S 電解液室
Claims (2)
- ケーシング内において、作用極と対極と参照極とがそれぞれの電極間に電解液が介在した状態で設けられてなる定電位電解式ガスセンサにおいて、
前記参照極が、イリジウム、酸化イリジウム、ルテニウム、酸化ルテニウムおよび酸化白金から選ばれる物質により形成されたものであることを特徴とする定電位電解式ガスセンサ。 - 前記参照極には、一端部が前記ケーシングの外部に導出された参照極用リード部材の他端部が電気的に接続されており、当該参照極用リードが、タンタル、金、タングステンおよびニオブから選ばれる金属よりなることを特徴とする請求項1に記載の定電位電解式ガスセンサ。
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