JP2015083885A - 高炉出銑孔閉塞用マッド材 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルミニウムドロス残灰を耐火物原料に適用する。【解決手段】耐火性骨材100質量%の内、アルミニウムドロス残灰を1〜50質量%含有するマッド材である。上記アルミニウムドロス残灰は、公称目開き500μmのふるい下に粉砕されている。上記アルミニウムドロス残灰は、AlNを10〜40質量%、MgOを2〜25質量%および不可避不純物を含有し、残部がAl2O3とするのが好ましい。上記構成により、アルミニウムドロス残灰を、加熱・溶融することなく、本来の組成を生かして耐火物として利用しているので、コストメリットが大きくかつ、従来品に比べて溶損率の小さいマッド材を提供することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、高炉出銑孔閉塞用マッド材に関し、特に、アルミニウムドロス残灰を活用した高炉出銑孔閉塞用マッド材に関するものである。
アルミニウム工業では、金属アルミニウムの溶解時に金属アルミニウムが酸化し、アルミニウムドロスと呼ばれるアルミナと金属アルミニウムおよび窒化アルミニウム(AlN)の混合物が生成する。
上記アルミニウムドロスは、多量の金属アルミニウムが含まれることから、例えば、特許文献1のように、再加熱処理によりアルミニウムを溶解させ、アルミニウムを回収することが一般的に行われている。このアルミニウムドロスからアルミニウムを回収した後の残滓を、アルミニウムドロス残灰と称する(以下、単に「残灰」とすることがある)。
残灰は、多量の窒化アルミニウムや少量の金属アルミニウムを含んでいる。また、残灰は粒径が約10mm以下の粒子の集合体である。その粒子は、粒径数μm〜数十μm程度の一次粒子が焼結して二次粒子として大きくなっている。このため、二次粒子の気孔率は高く、嵩密度は小さい。
この残灰は、当該残灰に含まれる金属アルミニウムが脱酸、発熱能力を有することから、一部は製鋼時の造滓剤として実用に供されている。その他、セメントへの利用、耐火物原料への利用が検討されているが、以下に説明するような問題があることから、大半は管理型の埋め立て処分に回されているのが現状である。
特表平6−504320 特開平8−197033 特許第3083772号 特許第4351744号 特開2000−263013
発明者等は、この残灰を耐火物原料に利用することを種々検討すると、主として以下の3つの問題がある。
(1)残灰はアルミナを主成分とするが、一般に窒化アルミニウム(AlN)を約10〜40質量%含有するため、保管中に空気中の水蒸気あるは水と接触してアンモニアを生成する。
AlNが空気中の水蒸気と接触してアンモニアを生成し、この現象は残灰の保管中にも起こるが、通常は多少アンモニア臭がする程度であり、あまり大きな問題とはならない。
特に大きな問題となるのは、液体の水と直接触れた場合である。一般的な耐火物は、混練、成形時に水が関与する。煉瓦の成形においては、水系のバインダーを少量添加して混練成形する。不定形耐火物、例えばキャスタブル耐火物では、水を用いて耐火骨材を混練して成形する。これらの水分とAlNが反応してアンモニアを生成する。また、前記アンモニアが生成する際、更に、水酸化アルミニウムが生成し、体積膨張する。これによって、成形体の組織を緩めたり、著しい場合には亀裂を引き起こす場合もある。
(2)金属アルミニウムを約2〜10質量%含有するので、pHの高い水と接触すると、水和してH2ガスが発生する。水素ガスに引火すれば大爆発引き起こし、災害となる可能性がある。
(3)前述のように、残灰は気孔率が高く、嵩密度が小さいため耐火性骨材としてはそのままでは利用し難い。一般的には、耐火性骨材の見掛け密度が小さいと、緻密な耐火物を作り難いので、耐火性骨材としては嵩密度が高いものが使用され、嵩密度が小さい残灰は、そのままでは耐火性骨材としては利用し難い。
一方で、残灰中に含有する金属アルミニウムと窒化アルミニウムを酸化雰囲気中で再加熱して酸化させ、アルミナに変換することによって無害化すれば、耐火物等への利用が可能と考えていくつかの発明が紹介されている。
特許文献2は、残灰をロータリーキルン等で酸化焼成しアルミナにする処理方法を提供し、得られた製品は硬質耐磨耗骨材原料あるいは耐火物原料に利用できるとしている。特許文献3は、アルミニウムドロスから金属アルミニウムを回収する回転アーク炉に残灰を残し、酸化雰囲気で加熱することによってアルミナとする方法を提供し、セメントや耐火物に応用する例が開示されている。また、特許文献4では、残灰をアークプラズマによって溶解処理をしてアルミナ系耐火物を得る方法を提供している。
しかしながら、これらの特許文献2〜4等による残灰処理品は、コスト上の観点から実際には耐火物には応用されてこなかった。すなわち、引用文献4に開示するように、溶融処理を用いる場合は、溶融のために多大なエネルギーが必要となり、価格の高いものとならざるを得ない。また、引用文献2、3に開示するように、溶融を伴わない加熱処理の場合、少量の金属アルミニウムと窒化アルミニウムが残りやすく、多少でも残留した場合、一般的にはH2やNH3が発生するという状態が残ってしまう。加熱によって金属アルミニウムや窒化アルミニウムを完全に無くすことは可能だが、この場合も長時間の加熱処理が必要となり、処理コストが膨大なものとならざるを得ない。
このように残灰に加熱あるいは溶融処理を施して、耐火物用に利用することは多大なコストが必要となるため、他のアルミナ化合物、例えば、天然に産出する礬土頁岩などのアルミナ原料に比較してコスト面で割高となり、耐火物用原料としては使用されてこなかった経緯がある。
このため、特許文献2〜4等の残灰の処理技術は利用されず、残灰の多くは、管理型の埋め立て処分されているのが現状であった。もっとも、実際に耐火物に応用されている例もあり、例えば、特許文献5では残灰の熱処理品をキャスタブル耐火物へ応用した例が紹介されているが、使用量は少ない。
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、アルミニウムドロス残灰を加熱・溶融することなく耐化物に供することを目的とするものである。
本発明は、耐火性骨材100質量%の内、アルミニウムドロス残灰を1〜50質量%含有する高炉出銑孔閉塞用マッド材である。上記アルミニウムドロス残灰は、公称目開き500μmのふるい下に粉砕されている。
さらに、上記アルミニウムドロス残灰は、AlNを10〜40質量%、MgOを2〜25質量%および不可避不純物を含有し、残部がAl23とするのが好ましい。
本発明はアルミドロス残灰を、加熱・溶融することなく、本来の組成を生かして耐火物として利用しているので、コストメリットが大きくかつ、AlN等を含むことから、従来品に比して溶損率の小さい高炉出銑孔閉塞用マッド材を提供することができる。
<課題の検討>
以上のように、残灰(アルミニウムドロス残灰)は、耐火物原料として使用するには種々の欠点があり、使用するためには加熱・溶融等の無害化処理が必須とされてきた。
しかし、ながら、残灰に何らかの処理を加えるのではなく、残灰そのものを耐火物原料として利用する、あるいは、僅かな処理で利用することが可能であれば、処理費用が削減されるばかりでなく、従来からの産業廃棄物としての処理が不要となり、大きなコスト的メリットを得ることができることになる。
そこで、発明者らはまず、先に挙げた3つの問題点を再整理し、残灰をそのまま、あるいは僅かな処理を加えて耐火物原料として使用することが可能な方法を検討した。
(1)残灰は窒化アルミニウムを約10〜40質量%含有するため、水と接触するとアンモニアを生成すること。
水を使用しない耐火物系に適用するのであれば、この問題は解消されることになる。水を使用しない耐火物系としては、非水系バインダー、例えば、有機溶媒を使用した系、あるいはコールタールピッチを使用した系などが考えられる。製鉄用の耐火物を考えた場合、非水系の材料としては、高炉圧入材、出銑孔用マッド材、非水系(レジンボンド)流し込み材、転炉投げ込み補修材、転炉ボトムジョイント材等がある。
一方、特定の用途の耐火物ではAlNの添加によって特性が向上する場合があり、その用途に対して有効に利用できる可能性がある。
(2)含有する金属アルミニウムが水と反応してH2ガスが発生する。
この問題も、水と接触しなければ問題が起こらない。一方、水を使用する系においても、流し込み材などに金属アルミニウムを0.05〜0.5質量%程度添加し、少量のH2ガスを発生させて耐爆裂性を向上させる手法が一般的に取られている。従って、管理した状況下で使用すれば問題がないといえる。
さらには、金属アルミニウムを炭素含有耐火物に添加して利用する例は多数あり、条件によっては金属アルミニウムの存在は有益なものとして働く可能性もある。
(3)残灰の粒子は、気孔率が高く、嵩密度が小さい。
この問題は、粉砕によってある程度解消することができる。前述のように残灰は、粒径数μm〜数十μm程度の一次粒子が焼結して二次粒子として大きくなっている。その残灰を粉砕すると、焼結を形作る接合部(ネック部)が弱いため、ネック部から破断される。このネック部の破断によって、粒子内部にあった気孔が表面に現れることで気孔ではなくなる。つまり、粉砕によって粒子の見掛け上の気孔率は低下し、密度は上昇することになる。粉砕された残灰の粒子径が一次粒子径に近づくほど、粉砕された残灰の気孔率は小さくなっていく。一方、一次粒子径にまで粉砕しようとすると多大な費用が掛かるため、使用目的に合致する程度の適度な粒度に粉砕することが肝要となる。
以上の観点から、残灰を適度な粒度に粉砕し、非水系のバインダーを用いる高炉出銑孔閉塞用マッド材に適用することで、有効に利用することができるとの確信を持つに至った。さらには、AlN等の特定の組成を持つ残灰を使用することでマッド材の耐食性を向上させることができることも確信した。
<基本的事項>
残灰とは、アルミニウムの溶解工程において発生するアルミニウムドロスを出発原料とし、種々の方法によりアルミニウム成分が回収された後に得られる残滓のことを指す。
この残灰の高炉出銑孔閉塞用マッド材への配合量は、耐火性骨材100質量%の内の、1〜50質量%であることが望ましく、より好ましくは2.5〜40質量%であり、さらに好ましくは5〜30質量%の範囲内である。残灰の配合量が1質量%より少なければ、マッド材の耐火性骨材として利用したときに得られる経済的なメリットが小さいので好ましくなく、一方、50質量%より多ければ、マッド材の気孔率の上昇、嵩密度の低下に加え、有機バインダー量の増加が著しくなるため好ましくない。
残灰は、公称目開き500μmのふるい下粒度となるように粉砕したもの使用することが望ましい。この粒度は、より好ましくは150μmであり、さらに好ましくは75μm以下である。この場合に使用するふるいは、JIS Z 8801-1:2006によるものとする。前述のように残灰は、粒径が約10mm以下の粒子の集合体であり、その粒子は、粒径数μm〜数十μm程度の一次粒子が焼結して二次粒子として大きくなっているが、粉砕処理を施すことで残灰粒子の気孔率を下げ、密度を上昇させることができる。残灰の粒度が500μmより大きいと、マッド材へ適用した時の気孔率の上昇、嵩密度の低下および有機バインダー量の増加が著しくなるため好ましくない。
残灰の粉砕方法は特には限定されず様々な方法が採用できる。具体的には、例えば、ジョークラッシャー、コーンクラッシャー、エッジライナーミル、ローラークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ミルなどの採用が可能である。
上記のように、残灰の耐火物中の割合や嵩密度に加えて、残灰の化学組成によって、マッド材の耐食性が向上する場合がある。
表1に例示するように、残灰の主成分はAlであるが、空気中で金属アルミニウムを溶解することによって生成するAlNを含有し、また、溶解するアルミニウム合金の種類によっては含有する金属Mgが酸化して生成するMgOが含まれ、さらには不可避的に混入する極微量の不純物によって構成される。
このような残灰をマッド材に適用する場合、残灰中のAlN含有量は10〜40質量%であることが望ましく、より好ましくは、20〜37質量%である。残灰中のAlN量が多いほど、耐食性が向上する傾向にある。AlN含有量が10質量%より少なければ、この耐食性向上効果が十分でないため、好ましくない。一方、40質量%より多い場合は、残灰原料として得難いこと、また、原料保管時に大気中の水分と反応して著しい臭気を発生するため製造負荷が増してしまい好ましくない。
また、残灰中のMgO含有量は2〜25質量%であることが望ましく、より好ましくは5〜20質量%である。残灰に含有されるMgO成分は、含有するAlと化合物を作り、MgAl(スピネル)として存在する。残灰中のスピネル量の増加、換言すればMgOが増加すると、AlN同様、耐食性が向上する。このため、2質量%より少なければ、耐食性向上効果が十分でない。一方、含有量が25質量%より多ければ、耐食性は向上するものの、特殊な高Mg含有量のアルミニウム合金に溶解によってしか得られないために材料として得難いので好ましくない。
<前提事項>
本発明のマッド材に使用される耐火性骨材は、アルミナ質原料、アルミナ・シリカ質原料、粘土質原料およびシリカ質原料から選択される1種または2種以上の酸化物耐火原料、炭素質原料、炭化珪素質原料、窒化珪素質原料などから構成される。
耐火性骨材を構成するアルミナ質原料、アルミナ・シリカ質原料、粘土質原料及びシリカ質原料からなる群から選択される1種または2種以上の酸化物耐火原料は、主骨材を構成し、その配合量は、5〜75質量%、好ましくは30〜65質量%の範囲内にある。ここで、酸化物耐火原料の配合量が75質量%を超えると、耐食性が低下するために好ましくなく、また、5質量%未満では、気孔率が高くなる傾向にあるために好ましくない。なお、上記の酸化物耐火原料としては、例えば、焼結アルミナ、電融アルミナ、バン土頁岩、ボーキサイト、シャモット質原料、ロー石などが使用できる。
次に、耐火性骨材を構成する炭素質原料としては、例えば、黒鉛、土状黒鉛、石炭コークス、石油コークス及びこれらのコークスの粉末、黒鉛電極屑、カーボンブラック、石炭ピッチ、石油ピッチなどが使用可能である。炭素質原料はスラグの浸透抑制並びに過焼結抑制を目的に添加されるものであり、その配合量は、3〜20質量%、好ましくは4〜16質量%の範囲である。炭素質原料の配合量が3質量%未満であると、焼結過多となるために好ましくなく、一方、20質量%を超えると、強度が著しく低下するために好ましくない。
また、耐火性骨材を構成する炭化珪素質原料としては、例えば、アチソン法で製造した炭化珪素質原料や、シリカを還元炭化した炭化珪素原料などが使用可能である。炭化珪素質原料は、スラグに対する耐食性向上を目的として添加されるものであり、その配合量は、5〜50質量%、好ましくは15〜40質量%の範囲内である。炭化珪素質原料の配合量が5質量%未満では、耐食性向上の寄与が少ないために好ましくなく、また、50質量%を超えると、焼結後の強度が低下するために好ましくない。
更に、窒化珪素質原料も、耐食性を向上するために配合される原料であり、例えば、シリカを還元窒化して得た窒化珪素、金属珪素を直接窒化した窒化珪素、フェロシリコンを直接窒化した窒化珪素鉄などが使用可能である。その配合量は、5〜45質量%、好ましくは10〜40質量%の範囲内である。窒化珪素質原料の配合量が5質量%未満では、耐食性向上に対する十分な効果が得られないために好ましくなく、一方、45重量%を超えると、コストに見合った添加効果が得られないために好ましくない。
また、本発明のマッド材に使用する耐火性骨材には、金属アルミニウム、金属珪素および金属アルミニウム・珪素合金の1種または2種以上を添加することもできる。これら金属または合金の添加量は、10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
金属アルミニウム、金属珪素、金属アルミニウム・珪素合金等と有機バインダーを併用することにより、加熱後のマッド材の強度を著しく向上さ せることができる。これらの金属または合金の添加効果の原因は定かではないが、炭化物の生成が寄与すると考えられ、カーボンボンド形成の効果と炭化物の結合効果とが相乗的に寄与しあって、特に高強度となるものと推定される。
なお、上記耐火性骨材の粒度範囲は、1.0mm以上の粒子が5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、1.0mm未満75μm超の粒子が5〜45質量%、好ましくは10〜35質量%、75μm以下の粒子が20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%の範囲内である。
また、有機バインダーとしては、マッド材用として知られている有機バインダー、すなはち、コールタールやフェノールレジンなどが利用可能である。有機バインダーは、耐火性骨材100質量%に対して外掛け添加され、その添加量はマッド材の利用状況に応じて適宜調整することが可能である。
混練方法は、特定されず一般の混練方法が利用できる。例えば、深井式のコナーミキサー、上回りミキサーなどが利用できる。
<実施例1(本発明品1〜9及び比較品1〜4)(表2)>
残灰の粒度、配合量によるマッド材特性を評価した。
アルミナ質原料、ろう石質原料、粘土質原料、炭化珪素質原料、窒化珪素質原料及び炭素質原料から構成される耐火性骨材をベースとし、表1に例示した残灰(アルミニウムドロス残灰)(1)を配合した。残灰(1)は、未粉砕のもの、ふるい下粒度500μm以下に調整したもの、ふるい下粒度150μm以下に調整したもの及びふるい下粒度75μm以下に調整したもの、以上4種類について比較した。ベースとなる耐火性骨材(比較品1)の粒度構成は、1.0mm以上の粒子量が17質量%、1.0mm未満75μm超の粒子量が28質量%、75μm以下の粒子量が55質量%である。これら耐火性骨材に表2に記載する配合量にて有機バインダーを配合してマッド材を得た。有機バインダーには、コールタール[AD-MTOLV(JFEケミカル製)]を用いた。
Figure 2015083885
作業性は、押し出し試験によって評価した。先端形状がφ20mmで長さが200mmの形状のキャピラリーからマッド材を一定速度で押し出した際の押し出し圧力を測定し、作業性の評価値とした。押し出し圧力が大きい場合には、マッド材は変形しにくく、逆に、圧力が小さい場合は、変形しやすいマッド材であることが分かる。実機においては、マッド材が柔らか過ぎても、また、硬過ぎても好ましくなく、適度な硬さが良い。なお、比較品1の押し出し圧力は4.2kNであり、他の比較品、本発明品の押し出し圧力はこれに揃えた。
焼成後の見掛気孔率は、JIS R 2205に基づき測定した。
溶銑に対する溶損量は、高周波誘導炉を用いたサンプル内張り試験にて評価した。還元雰囲気下にて800℃で3時間加熱したマッド材サンプルを、るつぼ形状に組み合わせ、るつぼ内部に侵食剤として銑鉄を20kg投入し、1550〜1600℃で4時間保持した後のマッド材サンプルの溶損体積を測定し、比較品1の溶損体積を100とする溶損量(指数)として示す。
高炉スラグに対する溶損量は、回転ドラム侵食試験法にて評価した。還元雰囲気下にて800℃で3時間加熱したマッド材サンプルを、ドラム形状に組み合わせ、ドラム内部に侵食剤として高炉スラグを1kg投入し、1550〜1600℃で4時間保持した。侵食剤は1時間毎に入れ替えることとし、試験後のマッド材サンプルの溶損深さを測定し、比較品1の溶損深さを100とする溶損量(指数)として示す。
臭気は、残灰を配合した耐火性骨材にコールタールを添加して混練する際、コールタール以外の不快な臭気の有無を作業員が判断した。なお、○:不快な臭気がない、△:不快な臭気を感じる、×:不快な臭気が強いをそれぞれ示す。
原料コストは、比較品1の原料コストを100としたときの、相対原料コストとして示す。本発明品1〜9は、各特性において比較品より優れた性能が得られることが確認できた。
比較品2は、未粉砕の残灰を使用したため、著しいバインダー添加量の増加を引き起こし、加熱後見掛気孔率の上昇も招き好ましくない。比較品3は、残灰の添加量が少なく、未添加である比較品1との特性変化がほとんどないため好ましくない。比較品4は、残灰を60質量%と多量に添加しているため、コスト指数は低下するが、他方、見掛気孔率上昇の影響もあり、溶損指数が上昇しており好ましくない。
Figure 2015083885
<実施例2(本発明品10〜16および比較品1、5〜8)(表3)>
残灰の配合量が同一の場合、その化学成分の違いによるマッド材特性を評価した。残灰は、表1に例示した(2)〜(12)について比較した。表3に記載する配合量にて有機バインダーを配合して各マッド材を得た。
本発明品(10〜16)は、溶損量、臭気、コスト指数いずれを見ても、比較品1より優れていることが確認できる。
これに対して、比較品5は、添加した残灰(2)中のAlNが少なすぎるので、溶損量の増加が見られ好ましくない。比較品6は、添加した残灰(3)中のAlNが多すぎるので、保管時及び製造時の臭気の増加を招くこと、また、残灰中のAlNがここまで多いものは原料として得難いため好ましくない。比較品7は、添加した残灰(4)中のMgOが少なすぎるので、溶損量の増加が見られ好ましくない。比較品8は、各特性が悪化するものではないが、添加した残灰(5)中のMgOが多く、原料として得難くなるため好ましくない。
Figure 2015083885
<実施例3(本発明品17および比較品9)(表4)>
粒度構成が、1.0mm以上の粒子量が25質量%、1.0mm未満75μm超の粒子量が25質量%、75μm以下の粒子量が50質量%である耐火性骨材(表4、比較品9)をベースとし、残灰(1)を使用した際の特性を評価した。この耐火性骨材に表4に記載する配合量にて有機バインダーを配合してマッド材を得た。
比較品9に対し、本発明品17は溶損量が少なく、コスト指数が低い結果を得た。
Figure 2015083885
<実施例4 (本発明品18および比較品10)(表5)>
粒度構成が、1.0mm以上の粒子量が20質量%、1.0mm未満75μm超の粒子量が18質量%、75μm以下の粒子量が62質量%である耐火性骨材(比較品10)をベースとし残灰(1)を使用した際の特性を評価した。この耐火性骨材に表5に記載する配合量にて有機バインダーを配合してマッド材を得た。
比較品10に対し、本発明品18は溶損量が少なく、コスト指数が低い結果を得た。
Figure 2015083885
<実施例5:実機使用例>
本発明品2および比較品1を実機にて使用した。比較品1は、従来から実機使用されているマッド材である。本発明品2を使用した際のマッドガンへの充填状況、出銑中の出銑孔への充填圧力と充填時間、充填されたマッド材が他の出銑孔から出銑している間待機した後、開孔機によって開孔し出銑する、開孔作業は比較品1とほぼ同等の作業性であった。
出銑時間は比較品1が180分であったのに対し、本発明品3は191分となり、比較品1に比べて6%延長した。
以上説明したように、本発明により、残灰に僅かな処理を施すことで高炉出銑孔閉塞用マッド材に適用することが可能となる。また、耐火骨材に残灰を配合することにより、溶銑および高炉スラグに溶損し難い高炉出銑孔閉塞用マッド材を得ることができ、長時間出銑が可能となる。更に、残灰を有効活用することで産業廃棄物の低減に繋がる。従って、本願発明は鉄鋼業への利用可能性が極めて高い。

Claims (2)

  1. 耐火性骨材100質量%の内、公称目開き500μmのふるい下に粉砕されたアルミニウムドロス残灰を1〜50質量%含有することを特徴とする高炉出銑孔閉塞用マッド材。
  2. アルミニウムドロス残灰が、AlNを10〜40質量%、MgOを2〜25質量%および不可避不純物を含有し、残部がAlとする請求項1に記載の高炉出銑孔閉塞用マッド材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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