JP7220699B2 - 不定形耐火物及びそれを利用した耐火物の保護方法 - Google Patents

不定形耐火物及びそれを利用した耐火物の保護方法 Download PDF

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Description

本発明は、不定形耐火物及び耐火物の保護方法に関する。
製鋼工程においては、溶融した金属を保持するために、耐火物を内張りした種々の容器(電気炉、転炉等の精錬炉、取鍋、タンディッシュ等)が使用されている。内張りされた耐火物には、溶融金属やスラグ、溶銑や鉄スクラップ等が直接接触するため、特に損傷が激しく、不定形耐火物の吹き付け、流し込み等を行なうことによって耐火物を保護することが一般的に行われている。不定形耐火物には、耐火性原料として、一般的に、マグネシア原料、ドロマイト原料、アルミナ原料などが骨材として使用されているが、いずれも、焼成や溶融を経て製造される原料であることが多く比較的高価であり、不定形耐火物のコスト上昇の一因となっている。
一方、アルミニウム精錬工程においては、アルミニウム地金やスクラップを溶解する際に、アルミドロスと呼ばれるアルミ鉱滓が発生する。アルミドロスには金属アルミニウムが多分に含まれるため、アルミドロスからは各種の方法により金属アルミニウムが回収され、回収されたアルミニウムは資源として利用される。他方で、アルミドロスから金属アルミニウムが回収された後に残る残滓はアルミ灰、またはアルミドロス残灰と称され、本発明者らの知るところによれば、日本国内において月2万トン以上ものアルミ灰が発生している。アルミ灰は、これまで製鋼用の脱酸剤、造滓剤、脱硫促進剤、昇燃剤、また電気炉プロセスでの昇燃剤、他には、セメント業界で増量剤として活用されているが、有効利用できないアルミ灰については埋め立てられているのが現状である。しかしながら、近年では、埋め立てられたアルミ灰からのハロゲン類の土壌への溶出などが問題視されており、アルミ灰を埋め立てに用いることも困難な状況となってきている。アルミ灰を有効利用する方法の開発は、アルミニウム産業の持続可能化、及び、環境保全という面から喫緊の課題である。
アルミ灰に含まれる金属アルミニウムや窒化アルミニウム等の残留アルミニウム成分は反応性に富んでおり、空気中の水蒸気と反応してアンモニアや水素等のガスを発生するため、耐火物原料、特に、定形耐火物の原料として用いた場合には、耐火物の劣化・損傷を引き起こす。したがって、アルミ灰そのままを、耐火物原料として利用するのは困難であると考えられていた。そこで、例えば、特許文献1や特許文献2には、アルミ灰を加熱処理することによりアルミ灰中の残留アルミニウムを安定な酸化物であるアルミナに変換するアルミ灰の処理方法が記載されており、得られたアルミ灰の加熱処理物は耐火物原料として用いることができるとされている。一方、特許文献3には、アークプラズマによりアルミ灰を加熱溶融することによってアルミナ含有率を90重量%以上に高める方法が記載されており、得られたアルミ灰のアークプラズマ処理物は耐火物原料として利用することができるとされている。しかしながら、加熱処理や溶融処理によってアルミ灰中の残留アルミニウムをアルミナへと変換するという方法は、エネルギーの消費量が大きく処理コストが割高であるため、本発明者らの知る限りにおいて、実用化されるには至っていない。
これに対して、アルミ灰を加熱・溶融処理をすることなく、耐火物の原料として用いようとする試みもなされている。例えば、特許文献4には、公称目開き500μmのふるい下粒度に粉砕したアルミ灰を骨材のうち1~50質量%含有する高炉出銑孔閉塞用マッド材が記載されている。当該マッド材は、反応性に富んだ窒化アルミニウムや金属アルミニウム等の残留アルミニウム成分が反応し難い耐火物系、すなわち、水を使用しない耐火物系に用途を限定することにより、耐火物原料としてアルミ灰を用いることを可能とするものである。しかしながら、用途が極めて限定的であるとともに、アルミ灰の含量は50質量%以下に限られているため、使用できるアルミ灰の量は多くない。さらに、得られるマッド材の気孔率を下げ、嵩密度を上昇させるため、アルミ灰を公称目開き500μmのふるい下粒度まで粉砕・分級する必要があり、コスト及び手間がかかる。
特開平8-197033号公報 特開2000-263013号公報 特開平10-338568号公報 特開2015-83885号公報
本発明は上記従来技術の諸課題を鑑みて為されたものであり、加熱や溶融などの前処理を必須の要件とすることなく、かつ、できるだけ多くの量のアルミ灰を耐火物の原料として利用する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決しようと鋭意研究努力を重ねる過程で、アルミ灰の主成分である金属アルミニウム、窒化アルミニウム、及び、アモルファスのアルミナ等のアルミニウム成分は、他の物質に溶けやすく、また、他の物質と反応しやすいというアルミ灰の特徴に着目し、アルミ灰と他の物質との反応を利用することにより新たな耐火物を得ることができるのではないかという着想を得るに至った。そして、本発明者らは、加熱・溶融処理が為されていないアルミ灰を骨材の主成分として含有する不定形耐火物と溶融状態にあるスラグとが接触することで新たな反応物が形成されることを見出した。そこで、本発明者らは、得られた耐火物について、更に詳細に検討した結果、意外にも、アルミ灰を骨材の主成分として含有する不定形耐火物と溶融状態にあるスラグとが反応してなる当該反応物は優れた耐スラグ侵食性を発揮することを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、骨材の主成分としてアルミ灰を含有する不定形耐火物を提供することにより上記課題を解決するものである。
また、本発明は、(1)耐火物の面上に、上記の不定形耐火物を含む層を形成する工程と、(2)前記層と溶融状態にあるスラグとの接触により、前記層及び/又は前記耐火物の表面に、前記不定形耐火物とスラグとが反応してなる反応物層を生成させる工程と、を含むことを特徴とする耐火物の保護方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
本発明によれば、アルミニウム精錬の残滓であるアルミ灰を、加熱・溶融処理を必須の要件とすることなく、且つ、比較的大量に不定形耐火物の原料として使用することが可能となる。また、本発明によれば、優れた耐スラグ侵食性を備えた不定形耐火物を安価に提供することができる。
アルミナ、シリカ、及び、カルシアから構成される組成物の組成と融点の対応関係を示した三元系状態図である。 マグネシア-カーボン煉瓦1の上面に不定形耐火物層2が形成された状態を示す模式図である。 1600~1650℃の試験温度における回転スラグ侵食試験後の試験片Aの垂直切断面を撮影した写真である。 1600~1650℃の試験温度における回転スラグ侵食試験後の試験片Bの垂直切断面を撮影した写真である。 1600~1650℃の試験温度における回転スラグ侵食試験後の試験片Cの垂直切断面を撮影した写真である。 (a)不定形耐火物を吹き付ける前の炉壁の状態、及び、(b)不定形耐火物を吹き付けた後、10チャージの操業後の炉壁の状態を撮影した写真である。
本発明の不定形耐火物は、骨材の主成分としてアルミ灰を含有する不定形耐火物である。ここで、骨材の主成分とは、骨材の総質量に対して50質量%以上含有される成分を意味する。なお、溶融状態にあるスラグとの接触によって生成する反応物の粘度を高め、形成される反応物層を、残存する不定形耐火物を含む層又は耐火物に対して付着され易くするという観点からは、骨材中におけるアルミ灰の占める割合は高い方が好ましく、骨材の総質量に対するアルミ灰含量の下限は少なくとも50質量%以上、できれば50質量%超であるのが良く、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上である。なお、骨材はその全量がアルミ灰であっても良く、骨材の総質量に対するアルミ灰含量の上限は100質量%である。
本明細書において、アルミ灰とは、アルミニウム精錬工程において発生するアルミドロスから、各種の方法により金属アルミニウムを回収した後に得られる残滓であり、金属アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ、及び、微量成分として、シリカやマグネシアなどを含有している。アルミニウム精錬条件及び金属アルミニウムの回収方法によって多少異なるものの、アルミ灰は、典型的には、アルミナを主成分として30~80質量%程度含んでおり、これに加えて、金属アルミニウムを0~30質量%程度、窒化アルミニウムを0~40質量%程度含んでいる。
本発明の不定形耐火物に用いられるアルミ灰は、アルミニウム精錬工程において残滓として得られる上記のようなアルミ灰であれば、基本的にどのようなものであっても良いが、加熱処理や溶融処理をされていないアルミ灰であることが好ましい。すなわち、斯界においては、1200℃以上の温度での加熱(特許文献1)、焼成(特許文献2)、或いはアークプラズマによる溶融(特許文献3)などの加熱・溶融処理により、アルミ灰に含まれるアルミニウム成分をアルミナへ変換することが知られているが、このような加熱・溶融処理を行うと、アルミ灰のスラグとの反応性が低下し、反応物層を得難くなるという懸念がある。一方、不定形耐火物の調製時、保管時、又は使用時に、アルミ灰が大気中の水分と反応することによるアンモニア臭の発生を低減し、作業性を高めるという観点からは、アルミ灰中の窒化アルミニウムの含量は10質量%以下、より好ましくは10質量%未満であることが好ましい。なお、焼成・溶融処理がされておらず、窒化アルミニウムを10質量%以下含有するアルミ灰としては、アサヒセイレン株式会社製の「ASR粗粒」及び「ASR細粒」が例示される。「ASR粗粒」及び「ASR細粒」は、金属アルミニウムを0~10質量%、窒化アルミニウムを0~10質量%、及び、アルミナを50質量%以上含有している。
また、本発明の不定形耐火物は、骨材として、アルミ灰以外に一般的に用いられる耐火物原料を含んでいても良い。このような耐火物原料としては、マグネシア質原料、アルミナ質原料、アルミナ・シリカ質原料、シリカ質原料、及び、粘土質原料等が例示される。特に、溶融状態にあるスラグとの反応により得られる反応物層の緻密化及び耐スラグ侵食性の向上という観点からは、マグネシア質原料を含有することが好ましく、不定形耐火物が含有する骨材の総質量に対し、マグネシア質原料を、1質量%以上乃至40質量未満%含有することが好ましく、5質量%以上30質量%以下含有することがより好ましく、10質量%以上20質量%以下含有することがさらに好ましい。骨材として、マグネシア質原料を含む場合には、アルミ灰に由来するアルミナ成分とマグネシア質原料とが反応してスピネルを生成し、溶融状態にあるスラグとの反応により得られる反応物層が緻密化され、その結果、耐スラグ侵食性が向上するものと推測される。
本発明の不定形耐火物が含有するアルミ灰を主成分とする骨材の粒径は、4mm以下であることが好ましく、粒径が4mm以下である場合には溶融状態にあるスラグとの接触時、反応し易く、反応物を形成し易いという利点が得られる。これに加えて、骨材全体に占める粒径0.25mm以下の粒子の割合は10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。このように粒径が小さな骨材が一定量含まれていることによって、スラグとの反応物によって形成される反応物層がより緻密なものとなり、反応物層の耐久性が向上するという利点が得られる。ただし、粒径0.25mm以下の骨材の含量が多すぎると、形成される反応物層の耐食性が逆に低下することが懸念されるので好ましくない。粒径0.25mm以下の骨材は、その全量がアルミ灰であっても良いし、例えばマグネシア質原料、アルミナ質原料、及び、シリカ質原料などのアルミ灰以外の耐火性原料であっても良く、さらには、アルミ灰とアルミ灰以外の耐火性原料の双方を含んでいても良い。粒径が0.25mm以下の耐火性原料としては、粒径0.25mm以下の粒子が大部分を占めるマグネシア質原料(微粉)を好適に用いることができる。
本発明の不定形耐火物は、好適な一態様において、骨材以外の成分として、結合材(バインダー)を含有しており、吹き付け材として用いることが可能である。一方で、本発明の不定形耐火物は、結合材を加えず、ドライ施工されるスタンプ材として用いることができ、さらには、施工現場で溶液状の結合材を混合して、湿式施工用或いはセミドライ施工用のスタンプ材、落とし込み材として使用することも可能である。吹き付け材として使用される場合、及び湿式施工用或いはセミドライ施工用のスタンプ材として使用される場合のいずれにおいても、用いられる結合材には特に制限はなく、通常、吹き付け材やスタンプ材に使用される結合材であれば基本的にどのような結合材でも使用できるが、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムなどの珪酸塩、硫酸マグネシウムなどの硫酸塩、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩、燐酸ナトリウム、燐酸カリウムなどの燐酸塩を用いることができる。なお、結合材の配合量は、骨材の質量を100質量部としたとき、結合材の固形分質量で1~7質量部であるのが好ましく、2~5質量部であることがより好ましい。また、本発明の不定形耐火物は、必要に応じて、作業性付与材を含有していても良く、このような作業性付与材としては、例えば、消石灰、粘土質鉱物、SiO2超微粉、又は有機合成繊維などが挙げられる。なお、作業性付与材の配合量は、骨材の質量を100質量部としたとき、作業性付与材の固形分質量で0.5~5質量部であるのが好ましく、0.5~3質量部であることがより好ましい。
一方、本発明の耐火物の保護方法は、(1)耐火物の面上に、上記の不定形耐火物を含む層を形成する工程と、(2)前記層と溶融状態にあるスラグとの接触により、前記層及び/又は前記耐火物の表面に、前記不定形耐火物とスラグとが反応してなる反応物層を形成させる工程と、を含む耐火物の保護方法である。その上に本発明に係る不定形耐火物を含む層が形成される耐火物の面とは、実操業時に耐火物が金属の溶湯や溶融スラグと接触する面であり、例えば、炉壁の内面に露出している耐火物の面や、炉底に露出している耐火物の表面が挙げられる。
本発明の不定形耐火物を含む前記層は、吹き付け、コテ塗り、流し込み等の適宜の方法で溶融状態にあるスラグが接触する耐火物の表面に形成すれば良く、その形成方法に特段の制限はない。また、不定形耐火物を含む当該層は、溶融状態にあるスラグと接触する前のいずれかの時点において耐火物上に形成されていれば良く、スラグとの接触中に耐火物上に形成される必要があるわけではない。なお、耐火物の面上に形成される当該層の厚みは、30mm以上であることが好ましく、保護対象とする部位や作業効率にも依るが、30~600mmとするのが一般的である。当該層の厚みが薄すぎると、反応物層を生成するまでに、耐火物の面上に形成された当該層が損傷し、耐火物が十分に保護されない恐れがある。
本発明の耐火物の保護方法を適用することができる耐火物の種類に特段の制限はなく、マグネシア質煉瓦、マグネシア-クロム煉瓦、マグネシア-カーボン煉瓦、スピネル質煉瓦、高アルミナ質煉瓦、アルミナ-カーボン煉瓦、アルミナ-炭化珪素-カーボン煉瓦、アルミナ-マグネシア-カーボン煉瓦等、一般的に使用される耐火物であれば基本的にどのようなものであっても良いが、マグネシア質煉瓦、マグネシア-カーボン煉瓦、スピネル質煉瓦等のマグネシアを含有する耐火物は、不定形耐火物を含む層及び反応物層の接着性が優れており、特に好適に用いられる。
本発明に係る耐火物の保護方法を適用することができる耐火物は、操業に際して、本発明に係る不定形耐火物が接触、反応して反応物層を形成することができるスラグを生成する製鋼炉に用いられる耐火物であれば基本的にどのような製鋼炉に用いられる耐火物であっても良いが、例えば、高炉、転炉、及び、電気炉等に用いられる耐火物である。一方、反応物層の生成のしやすさという観点からは、本発明に係る耐火物の保護方法が適用される耐火物は、アルミナ、シリカ、及び、カルシアを含有するスラグを生成する条件で操業される製鋼炉に用いられる耐火物であることが好ましく、アルミナ含量が、アルミナ、シリカ、及びカルシアの三成分の総質量に対して、10質量%以上60質量%以下となるスラグを生成する条件で操業される製鋼炉に用いられる耐火物であることがより好ましく、アルミナ含量が、アルミナ、シリカ、及びカルシアの三成分の総質量に対して、20質量%以上55質量%以下となるスラグを生成する条件で操業される製鋼炉に用いられる耐火物であることがさらに好ましい。また、同様に反応物層の生成しやすさという観点から、本発明に係る耐火物の保護方法が適用される耐火物は、アルミナ含量が、スラグの総質量に対して、5質量%以上45質量%以下となるスラグを生成する条件で操業される製鋼炉に用いられる耐火物であることが好ましく、アルミナ含量が、スラグの総質量に対して、10質量%以上40質量%以下となるスラグを生成する条件で操業される製鋼炉に用いられる耐火物であることがより好ましい。なお、上述したスラグの組成は、ガラスビード法を用いた蛍光X線分析法で測定することができる。
一方、溶融状態にあるスラグとは、文字通り、溶融した状態にあるスラグを意味し、その温度は、組成、操業条件にも依るが、大凡1200℃~1750℃程度である。
ちなみに、反応物層が形成されるメカニズムとしては、本発明の不定形耐火物からなる前記層と溶融状態にあるスラグとが接触すると、当該層の表面において、本発明の不定形耐火物が含有するアルミ灰とスラグとが混ざり合い、アルミナ含有率の高い混合物が局所的に形成されることがきっかけとなっているものと推測される。図1は、スラグの主要三成分であるアルミナ、シリカ、及び、カルシアから構成される組成物の、組成と融点の対応関係を示した三元系状態図であるが、図1に見られるように、組成物のアルミナ含有率が高まると、融点が高まる傾向にある。すなわち、耐火物の面上に形成された前記層の表面にアルミナ含有率が高い混合物が形成され、スラグ温度よりも融点が高い反応物が生成すると、耐火物に当該反応物が付着して反応物層を形成するものと推測される。
以下、実験例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は、これらの実験例に限定されるものでないことは言うまでもない。
<実験1 不定形耐火物による耐火物保護>
本発明の一態様である不定形耐火物による耐火物の保護効果を以下に示す実験により検証した。
<1.1 不定形耐火物の調製>
以下の表1に示す組成比で、各骨材と結合材及び作業性付与材とを混合して、被験耐火物A及び被験耐火物Bを調製した。すなわち、被験耐火物Aは、アルミ灰(粗粒)(製品名「ASR粗粒」、アサヒセイレン株式会社製)70質量部とアルミ灰(微粉)(製品名「ASR細粒」、アサヒセイレン株式会社製)30質量部とを用いて全量を100質量部とした骨材に対し、表1に記載された結合材及び作業性付与材をそれぞれ記載された質量部で加え、混合して調製した。一方、被験耐火物Bは、アルミ灰(粗粒)の量を85質量部とし、アルミ灰(微粉)に代えてマグネシア質原料(微粉)を15質量部用いた以外は、被験耐火物Aと同様にして、調製した。また、比較対照として、アルミ灰に代えて、骨材の全量を不定形耐火物として一般的に用いられており、耐スラグ侵食性に優れていることが知られているマグネシア質原料とした対照耐火物Cを、マグネシア質原料(粗粒)85質量部とマグネシア質原料(微粉)15質量部とを用いて全量を100質量部とした骨材を用いた以外は、被験耐火物A、Bと同様にして調製した。なお、本実験に用いたマグネシア質原料(粗粒)及びマグネシア質原料(微粉)は、いずれもマグネシア含量が90%以上の90%級MgOである。
Figure 0007220699000001
ちなみに、本実験に用いたアルミ灰(粗粒)及びマグネシア質原料(粗粒)とは、それぞれ、粒径4~0.25mmの粒度分布を有する粗粒成分が大部分を占めるアルミ灰及びマグネシア質原料であり、一方、アルミ灰(微粉)及びマグネシア質原料(微粉)とは、それぞれ、粒径0.25~0mmの粒度分布を有する微粉成分が大部分を占めるアルミ灰及びマグネシア質原料である。
<1.2 回転スラグ侵食試験(1)-試験温度1600~1650℃->
図2に示すように、上面が60mm×80mm、底面が60mm×100mm、厚み25mmの長手方向の垂直断面形状が台形の四角柱形状のマグネシア-カーボン煉瓦1の上面に、型枠を用いて被験耐火物A又は被験耐火物Bを流し込み、下に位置するマグネシア-カーボン煉瓦1が長手方向の垂直断面形状が台形のまま上方に延長された形状となるように成形して、マグネシア-カーボン煉瓦1の上面に厚み25mmの被験耐火物Aからなる不定形耐火物層2を有する試験片Aと、マグネシア-カーボン煉瓦1の上に厚み25mmの被験耐火物Bからなる不定形耐火物層2を有する試験片Bを得た。また、被験耐火物A又はBに代えて、対照耐火物Cを用いた以外は同様にして、試験片Cを得た。なお、試験片A及び試験片Bは8個ずつ作成し、試験片Cは16個作成した。
上記で得られた試験片A及び試験片Bの各4個を回転ドラムの内面に張り合わせ、ドラムを回転させながら、ドラム側面の開口部からドラム内をプロパンガスバーナーで試験温度とした1600~1650℃まで加熱した。試験温度になったのを確認した後、試験用スラグ(15g)及び鋼(200g)を重量比1:2でドラム内に投入した。30分毎に回転ドラムを傾けて試験用スラグ及び鋼を含む回転ドラム内の内容物を排出するとともに、最初にドラム内に投入したのと同量の試験用スラグ及び鋼を補充しながら、計2時間、ドラム内を試験温度に保持した。なお、本実験に用いた試験用スラグの組成を、ガラスビード法を用いた蛍光X線分析法で測定したところ、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)、及び、酸化鉄(Fe)の含量が、それぞれ37.4質量%、20.9質量%、14.7質量%、7.0質量%、及び、20.0質量%であった。
ドラム内を試験温度に2時間保持した後、試験用スラグ及び鋼を含む回転ドラム内の内容物を排出し、室温まで冷却した。その後、試験片を取り出し、各試験片毎に分割した後、各試験片の外観を目視にて観察した。アルミ灰を骨材の主成分として含有する被験耐火物A(骨材中のアルミ灰含量100質量%)からなる不定形耐火物層を有する試験片A、及びアルミ灰を骨材の主成分として含有する被験耐火物B(骨材中のアルミ灰含量85質量%)からなる不定形耐火物層を有する試験片Bのいずれにおいても、試験に供した各4個の試験片の全てにおいて、それぞれの被験耐火物からなる不定形耐火物層2の表面に、不定形耐火物層2とは明らかに異種のものであると目視にて識別可能な反応物層が形成されているのが確認された。
試験片Aの長手方向中央位置での垂直切断面を撮影した写真を図3に、試験片Bの長手方向中央位置での垂直切断面を撮影した写真を図4に示す。図3及び図4にみられるとおり、基礎としたマグネシア-カーボン煉瓦1の上に、やや厚みを減少させた不定形耐火物層が残存し、さらにその上に、不定形耐火物層とは見かけが全く異なる反応物層が形成されている。
続いて、各4個の試験片A及び試験片Bに代えて、8個の試験片Cを回転ドラムの内面に張り合わせた以外は同様にして、対照とした試験片Cを上記と同じ回転スラグ侵食試験に供した。試験後、試験片を取り出し、各試験片の外観を目視にて観察したところ、試験に供した8個の試験片Cのいずれにおいても、マグネシア質原料が骨材の総質量の100質量%を占める対照耐火物Cからなる不定形耐火物層の上に、反応物層の形成は認められなかった。試験片Cの長手方向中央位置での垂直切断面を撮影した写真を図5に示す。図5に示すとおり、対照耐火物Cからなる不定形耐火物層の上に、不定形耐火物層とは異なる反応物層の形成は見られない。
続いて、各被験耐火物からなる保護層の耐スラグ侵食性を比較検討するため、試験後に残存した保護層(不定形耐火物層、及び存在する場合には反応物層)の厚みを測定した。厚みの測定は、各試験片について、各試験片を長手方向に四等分する中間点3点において行った。全ての試験片(試験片A及び試験片Bは各試験温度について計4個ずつ、試験片Cは各試験温度について計8個ずつの試験片)について厚みの測定を行い、得られた全ての測定値(試験片A及び試験片Bの場合は、各試験温度について計12点、試験片Cの場合は、各試験温度について計24点の測定値)の平均を測定結果とした。結果を表2に示す。
Figure 0007220699000002
表2に示されるとおり、電気炉の一般的な操業温度に近い1600~1650℃の試験温度では、試験片Aにおいて、不定形耐火物層の厚みは18.4mmにまで減少していたが、不定形耐火物層の上に形成された反応物層の厚みは14.8mmあり、両者の合計は33.2mmであった。一方、試験片Bにおいても、不定形耐火物層の厚みは13.5mmにまで減少していたが、不定形耐火物層の上に形成された反応物層の厚みは12.2mmあり、両者の合計は、当初の厚さ25mmとほぼ変わらぬ、25.7mmであった。
このように、本発明の一実施形態に係る不定形耐火物からなる不定形耐火物層を形成した試験片A及び試験片Bにおいては、当初25mmあった不定形耐火物層の厚みは一定程度減少していたものの、その減少分を補って余りある反応物層の形成が認められた。特に、アルミ灰を骨材の100質量%とする被験耐火物Aを用いて不定形耐火物層を形成した試験片Aにおいては、不定形耐火物層と反応物層の厚みを合計すると、意外にも、不定形耐火物層の当初の厚み25mmよりも厚くなっていた。また、アルミ灰を骨材の85質量%とする被験耐火物Bを用いて不定形耐火物層を形成した試験片Bにおいても、不定形耐火物層と反応物層の厚みの合計は、不定形耐火物層の当初厚み25mmとほぼ変わらない厚みに維持されており、反応物層の形成によって、保護層全体としてみると、保護層の溶損が効果的に抑制されているという結果が得られた。
これに対して、マグネシア系原料を骨材の100質量%とする対照耐火物Cを用いて不定形耐火物層を形成した試験片Cにおいては、当初25mmあった不定形耐火物層の厚みは22.7mmにまで減少しており、明らかな溶損が認められた。また、前述したとおり反応物層の形成は確認されなかった。
以上の結果は、電気炉の一般的な操業温度に近い1600~1650℃の試験温度において、アルミ灰を骨材の主成分とする被験耐火物A(骨材の100質量%がアルミ灰)、及び被験耐火物B(骨材の85質量%がアルミ灰)から形成される不定形耐火物層は、従来から耐火物の保護機能に優れる耐火物原料として知られているマグネシア質原料を骨材の総質量の100質量%含有する対照耐火物Cを上回る優れた耐火物の保護効果を発揮することを示している。
一方、被験耐火物Aと被験耐火物Bを比較すると、アルミ灰を骨材の総質量の100質量%含有する被験耐火物Aからなる不定形耐火物層を有する試験片Aは、アルミ灰を骨材の総質量の85質量%含有する被験耐火物Bからなる不定形耐火物層を有する試験片Bと比較して、試験後に残る不定形耐火物層の厚み、及び反応物層の厚みが大きかった。この結果は、1600~1650℃の試験温度においては、骨材の総質量に対するアルミ灰の占める割合が大きいほど、反応物層が形成されやすく、また、耐火物の保護効果に優れていることを示している。
ちなみに、被験耐火物Aからなる不定形耐火物層を有する試験片Aにおいて、不定形耐火物層と反応物層の厚みの合計値は33.2mmであり、試験前の不定形耐火物層の厚みである25mmを超えていた。これは不定形耐火物層が溶融状態にある試験用スラグと反応して、換言すれば、溶融状態にある試験用スラグを一部取り込んで、反応物層を形成したためであると考えられる。
<1.3 回転スラグ侵食試験(2)-試験温度1650~1700℃->
次に、試験温度を1600~1650℃から1650~1700℃に変えた以外は回転スラグ侵食試験(1)と同様にして、試験片A及び試験片Bの各4個と、試験片Cの8個を用いて、回転スラグ侵食試験を行った。試験後、各試験片を取り出して、試験片の外観を目視にて観察したところ、被験耐火物A又は被験耐火物Bからなる不定形耐火物層を、それぞれ有する試験片A及び試験片Bにおいては、試験温度1600~1650℃のときと同様に、不定形耐火物層2の表面に、不定形耐火物層2とは明らかに異種のものであると目視にて識別可能な反応物層の形成が確認された。一方、マグネシア質原料を骨材とした対照耐火物Cからなる不定形耐火物層を形成した試験片Cにおいては、このような反応物層の形成は確認されず、試験温度1600~1650℃のときと同様の結果が得られた。
続いて、各被験耐火物からなる保護層の耐スラグ侵食性を比較検討するため、回転スラグ侵食試験(1)と同様にして、試験後に残存した保護層(不定形耐火物層、及び存在する場合には反応物層)の厚みを測定した。結果を表3に示す。
Figure 0007220699000003
表3に示されるとおり、電気炉をやや高温で操業する際に用いられる温度域である1650~1700℃の試験温度では、試験片Aにおいて、不定形耐火物層の厚みは17.8mmにまで減少していたが、不定形耐火物層の上に形成された反応物層の厚みは15.7mmあり、両者の合計は33.5mmであった。一方、試験片Bにおいても、不定形耐火物層の厚みは13.7mmにまで減少していたが、不定形耐火物層の上に形成された反応物層の厚みは10.4mmあり、両者の合計は、当初の厚さ25mmとほぼ変わらぬ、24.1mmであった。一方、対照耐火物Cからなる不定形耐火物層を有する試験片Cにおいては、不定形耐火物層の厚みは20.0mmにまで減少しており、前述したとおり反応物層の形成は確認されなかった。
以上のとおり、1650~1700℃の試験温度で実施した回転スラグ侵食試験の結果によれば、アルミ灰を骨材の総質量の100質量%含有する被験耐火物Aからなる不定形耐火物層を有する試験片A、及び、アルミ灰を骨材の総質量の85質量%含有する被験耐火物Bからなる不定形耐火物層を有する試験片Bにおいて、試験後に残った保護層の厚みの合計は、マグネシア質原料を骨材の総質量の100質量%含有する対照耐火物Cからなる不定形耐火物層を有する試験片Cに残った保護層の厚みとほぼ同等であった。この結果は、電気炉の操業において用いられる一般的な温度域のうち比較的高温の1650~1700℃という試験温度においても、アルミ灰を骨材の主成分として含有する被験耐火物A及び被験耐火物Bは、マグネシア質原料を骨材の総質量の100質量%含有する対照耐火物Cを上回る優れた耐火物の保護効果を発揮することを示している。
<1.4 回転スラグ侵食試験(3)-試験温度1700~1750℃->
次に、試験温度を1600~1650℃から1700~1750℃に変えた以外は回転スラグ侵食試験(1)と同様にして、試験片A及び試験片Bの各4個と、試験片Cの8個を用いて、回転スラグ侵食試験を行った。試験後、各試験片を取り出して、試験片の外観を目視にて観察したところ、被験耐火物A又は被験耐火物Bからなる不定形耐火物層を、それぞれ有する試験片A及び試験片Bにおいては、試験温度1600~1650℃及び試験温度1650~1700℃のときと同様に、不定形耐火物層2の表面に、不定形耐火物層2とは明らかに異種のものであると目視にて識別可能な反応物層の形成が確認された。一方、マグネシア質原料を骨材とした対照耐火物Cからなる不定形耐火物層を形成した試験片Cにおいては、このような反応物層の形成は確認されず、試験温度1600~1650℃及び試験温度1650~1700℃のときと同様の結果が得られた。
続いて、各被験耐火物からなる保護層の耐スラグ侵食性を比較検討するため、回転スラグ侵食試験(1)と同様にして、試験後に残存した保護層(不定形耐火物層、及び存在する場合には反応物層)の厚みを測定した。結果を表4に示す。
Figure 0007220699000004
表4に示されるとおり、電気炉の一般的な操業温度よりもやや高い1700~1750℃の試験温度では、被験耐火物Aからなる不定形耐火物層を有する試験片Aにおいて、不定形耐火物層の厚みは7.9mmにまで減少していたが、不定形耐火物層の上に形成された反応物層の厚みは10.2mmあり、両者の合計は18.1mmであった。また、被験耐火物Bからなる不定形耐火物層を有する試験片Bにおいて、不定形耐火物層の厚みは8.1mmまで減少していたが、不定形耐火物層の上に形成された反応物層の厚みは10.8mmあり、両者の合計は18.9mmであった。一方、対照耐火物Cからなる不定形耐火物層を有する試験片Cにおいては、不定形耐火物層の厚みは18.7mmにまで減少しており、前述したとおり反応物層の形成は確認されなかった。
以上のとおり、1700~1750℃の試験温度で実施した回転スラグ侵食試験の結果によれば、アルミ灰を骨材の総質量の100質量%含有する被験耐火物Aからなる不定形耐火物層を有する試験片A、及び、アルミ灰を骨材の総質量の85質量%含有する被験耐火物Bからなる不定形耐火物層を有する試験片Bにおいて、試験後に残った保護層の厚みの合計は、マグネシア質原料を骨材の総質量の100質量%含有する対照耐火物Cからなる不定形耐火物層を有する試験片Cに残った保護層の厚みとほぼ同等であった。この結果は、1700~1750℃という電気炉の一般的な操業温度よりもやや高い比較的高温の試験温度においても、アルミ灰を骨材の主成分として含有する被験耐火物A及び被験耐火物Bは、マグネシア質原料を骨材の総質量の100質量%含有する対照耐火物Cと同等の優れた耐火物の保護効果を発揮することを示している。
一方、被験耐火物Aと被験耐火物Bを比較すると、アルミ灰を骨材の総質量の100質量%含有する被験耐火物Aからなる不定形耐火物層を有する試験片Aと、アルミ灰を骨材の総質量の85質量%、マグネシア質原料を骨材の総質量の15質量%含有する被験耐火物Bからなる不定形耐火物層を有する試験片Bにおいて、試験後に残る不定形耐火物層の厚み及び形成される反応物層の厚みはほぼ同等であった。前述したとおり、骨材のアルミ灰含量が大きいほど反応物層が形成されやすいことを考慮すると、骨材としてアルミ灰とともにマグネシア質原料を含有することにより、特に高温のスラグに対する耐スラグ侵食性が向上するものと考えられる。
<実験2 反応物層の組成解析>
実験1において、試験温度1650~1700℃における回転スラグ侵食試験(2)の後に、被験耐火物Aからなる不定形耐火物層を有する試験片Aに形成された反応物層を採取し、その組成をガラスビード法を用いた蛍光X線分析により測定した。
その結果、実験1において、試験片Aに形成された反応物層はアルミナ(Al)、シリカ(SiO)、及びカルシア(CaO)を含有し、当該三つの成分の質量の合計を100質量%とすると、それぞれの比率はアルミナ(Al)84.4質量%、シリカ(SiO)10.4質量%、及びカルシア(CaO)5.2質量%であった。図1に示した三元系状態図に基づくと、当該組成を有する反応物層の融点は、大凡1800~1900℃程度であると推測される。この推測値は、被験耐火物Aが1700~1750℃という比較的高温の環境下でも、優れた耐火物保護機能を発揮した実験結果と矛盾しない。
実験1における被験耐火物Aと同様にして、被験耐火物Dを調製し、吹き付け材として用いて、操業中の電気炉における耐火物の保護機能を評価した。具体的には、電気炉の炉壁を構成するマグネシア-カーボン煉瓦の表面上に、厚さ100mm程度のコーティング層が形成されるように被験耐火物Dの吹き付けを行った。その後、1600~1700℃で操業を行った。10チャージの操業の後、被験耐火物Dを吹き付けた炉壁の状態を目視にて確認したところ、当初吹き付けた被験耐火物Dとは明らかに異なる反応物層の形成が確認された。被験耐火物Dを吹き付け前の炉壁の状態を撮影した写真(図4(a))と、被験耐火物Dを吹き付けた後、10チャージの操業の後の炉壁の状態を撮影した写真(図4(b))を対比する形で図4に示す。図4(a)に見られるとおり、被験耐火物Dの吹き付け前は、炉壁における煉瓦の目地の露出が顕著にみられたのに対して、図4(b)に見られるとおり、被験耐火物Dを吹き付けた後、10チャージの操業の後においても、吹き付け前に見られたような煉瓦の目地の露出や、不定形耐火物層及び反応物層の剥離は確認できず、被験耐火物Dの吹き付けにより炉壁が効果的に保護されていることが確認された。
なお、本実施例において、電気炉内に生成したスラグの組成を、ガラスビード法を用いた蛍光X線分析法により測定したところ、アルミナ(Al)28.1質量%、シリカ(SiO)15.8質量%、カルシア(CaO)11.4質量%、マグネシア(MgO)5.1質量%、及び、酸化鉄(Fe)15.0質量%であった。
実験1における被験耐火物Aと同様にして被験耐火物Eを調製し、吹き付け材として用いて、操業中の電気炉における耐火物の保護機能を評価した。具体的には、電気炉の炉壁を構成するマグネシア-カーボン煉瓦の表面上に、厚さ100mm程度のコーティング層が形成されるように被験耐火物Dの吹き付けを行った。その後、1600~1700℃で操業を行った。10チャージの操業の後、被験耐火物Dを吹き付けた炉壁の状態を目視にて確認したところ、当初吹き付けた被験耐火物Dとは明らかに異なる反応物層の形成が確認された。当該反応物層の付着は良好であり、炉壁からの剥離もなく、被験耐火物Eにより炉壁が効果的に保護されていることが確認された。
なお、本実施例において、電気炉内に生成したスラグの組成を、ガラスビード法を用いた蛍光X線分析法により測定したところ、アルミナ(Al)10.8質量%、シリカ(SiO)17.2質量%、カルシア(CaO)19.6質量%、マグネシア(MgO)6.5質量%、及び、酸化鉄(Fe)21.8質量%であった。
骨材の総質量におけるアルミ灰(粗粒)の含有量を70質量%、マグネシア系原料(微粉)の含有量を30質量%としたこと以外は、実験1で調製した被験耐火物Bと同様にして、被験耐火物Fを調製した。被験耐火物Fを吹き付け材として用いて、操業中の電気炉における耐火物の保護機能を評価した。具体的には、電気炉の炉壁を構成するマグネシア-カーボン煉瓦の表面上に、厚さ100mm程度のコーティング層が形成されるように被験耐火物Dの吹き付けを行った。その後、1600~1700℃で操業を行った。10チャージの操業の後、被験耐火物Fを吹き付けた炉壁の状態を確認したところ、当初吹き付けた被験耐火物Fとは明らかに異なる反応物層の形成が確認された。当該反応物層の付着は良好であり、炉壁からの剥離もなく、被験耐火物Fにより、炉壁が効果的に保護されていることが確認された。
なお、本実施例において、電気炉内に生成したスラグの組成を、ガラスビード法を用いた蛍光X線分析法により測定したところ、アルミナ(Al)28.1質量%、シリカ(SiO)15.8質量%、カルシア(CaO)11.4質量%、マグネシア(MgO)5.1質量%、酸化鉄(Fe)15.0質量%であった。
ちなみに、以上の例では、本発明の一実施形態である不定形耐火物を吹き付け材として使用する場合について説明したが、本発明に係る不定形耐火物の使用の形態は吹き付け材に限られず、スタンプ材や、コテ塗り材、パッチング材などとしても使用可能であることは言うまでもない。
本発明の不定形耐火物又は耐火物の保護方法によれば、アルミニウム精錬の残滓であるアルミ灰を用いて、スラグによる侵食等から耐火物を保護することが可能であり、優れた物性を備えた不定形耐火物を安価に提供することができる。また、本発明は、多くの場合、産業廃棄物として廃棄されてしまうアルミ灰を有効利用する方法を提供するものであり、その産業上の利用可能性は大きい。
1 マグネシア-カーボン煉瓦
2 不定形耐火物層

Claims (6)

  1. アルミ灰を骨材の50質量%超100質量%以下含有する不定形耐火物であって、
    ガラスビード法を用いた蛍光X線分析法で測定したときのアルミナ含量が、アルミナ、カルシア、及びシリカの三成分の総質量に対して、10質量%以上60質量%以下となるスラグを生成する条件で操業される製鋼炉の炉壁及び/又は炉底用の不定形耐火物。
  2. 骨材として、さらに、マグネシア質原料を含有することを特徴とする請求項1に記載の不定形耐火物。
  3. 前記骨材の1質量%以上40質量%未満が前記マグネシア質原料である請求項2に記載の不定形耐火物。
  4. 吹き付け材の形態にある請求項1乃至3のいずれかに記載の不定形耐火物。
  5. スタンプ材の形態にある請求項1乃至3のいずれかに記載の不定形耐火物。
  6. (1)耐火物の面上に、請求項1乃至5のいずれかに記載の不定形耐火物を含む層を形成する工程と、
    (2)前記層と溶融状態にあるスラグとの接触により、前記層及び/又は前記耐火物の表面に、前記不定形耐火物とスラグとが反応してなる反応物層を生成させる工程と
    を含むことを特徴とする耐火物の保護方法であって、
    前記耐火物が、ガラスビード法を用いた蛍光X線分析法で測定したときのアルミナ含量が、アルミナ、カルシア、及びシリカの三成分の総質量に対して、10質量%以上60質量%以下となるスラグを生成する条件で操業される製鋼炉に用いられる耐火物である方法。
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