JP2015081297A - 潜熱蓄熱材組成物、及び潜熱蓄熱体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、凝固と融解による相変化を繰返しても、有機潜熱蓄熱材の滲み出しや相分離がなく、ゲル安定性に優れる潜熱蓄熱体が得られる潜熱蓄熱材組成物を提供することである。【解決手段】有機潜熱蓄熱材(A)、及びポリイソシアネート(B)と水添ポリブタジエン系ポリオール(C)とを仕込み、反応させた熱硬化性ポリウレタン樹脂を含有する潜熱蓄熱材組成物であって、水添ポリブタジエン系ポリオール(C)が、水添ポリブタジエンポリオール、又は水添ポリブタジエンポリオールと多価カルボン酸を反応させ得られた水添ポリブタジエン系ポリオールであって、水酸基価が6〜75mgKOH/gの範囲のポリオールである潜熱蓄熱材組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、潜熱蓄熱材組成物、及びそれを用いて得られる潜熱蓄熱体に関する。
世界的な規模で石油を中心とした化石エネルギー資源の枯渇が懸念されてから久しい。そのため、熱エネルギーを蓄える技術、即ち、蓄熱技術が、昨今のエネルギー問題を解決する新しい技術として注目されている。このような蓄熱技術に用いられる蓄熱材として、物質の相変化(凝固と融解の相変化)による潜熱を利用した潜熱蓄熱材を使用した潜熱蓄熱体が多くの分野で既に利用されつつある。
特許文献1、2には、ノルマルパラフィンと界面活性剤を用いたエマルション型の潜熱蓄熱剤組成物が開示されている。エマルション化する方法では、炭化水素化合物の分散相と水の連続相が直接接触しているため熱伝導効率がよいものの、長期間の使用において分散相が凝集し、相分離を起こすという問題がある。
特許文献3には、有機潜熱蓄熱材、有機処理された層状粘土鉱物、ポリオール、及びイソシアネート化合物を混合し、ポリオールとイソシアネート化合物を反応させてゲル化した潜熱蓄熱体が開示されている。このような潜熱蓄熱体では、有機潜熱蓄熱材によっては(1)有機潜熱蓄熱材を高濃度で含有させた際に、ゲル安定性に劣る、(2)有機潜熱蓄熱材と固定化(ゲル化)材料が相溶性に乏しく、滲み出しや相分離などの不具合を起こすという問題がある。
特開2006−241285号公報 特開2006−45391号公報 特開2011−208121号公報
本発明の目的は、有機潜熱蓄熱材が凝固と融解の相変化を幾度繰返しても、相溶性(有機潜熱蓄熱材の滲み出しや相分離がないこと)や、ゲル安定性(有機潜熱蓄熱材を高濃度で混合しても安定なゲル状態を維持できること)などの優れた性能を発現する潜熱蓄熱材組成物、及びそれを用いて得られる潜熱蓄熱体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を進めた結果、有機潜熱蓄熱材、及びポリイソシアネートと特定のポリオールとを反応させた熱硬化性ポリウレタン樹脂を含有する潜熱蓄熱材組成物により、凝固と融解の相変化が可能であり、且つ、相溶性やゲル安定性などの優れた性能を有する潜熱蓄熱材組成物、及び潜熱蓄熱体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、有機潜熱蓄熱材(A)、及びポリイソシアネート(B)と水添ポリブタジエン系ポリオール(C)とを仕込み、反応させた熱硬化性ポリウレタン樹脂を含有する潜熱蓄熱材組成物であって、前記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)が、水添ポリブタジエンポリオール、又は水添ポリブタジエンポリオールと多価カルボン酸を反応させ得られた水添ポリブタジエン系ポリオールであって、水酸基価が6〜75mgKOH/gの範囲のポリオールである潜熱蓄熱材組成物を提供する。
上記有機潜熱蓄熱材(A)は、好ましくはノルマルパラフィンである。
また、上記ポリイソシアネート(B)は、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、あるいはその変性体である。
さらに、好ましくは、上記有機潜熱蓄熱材(A)と、上記ポリイソシアネート(B)と上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)の仕込み量の合計量に対して、上記有機潜熱蓄熱材(A)を30〜90質量%の範囲で含有する。
また、本発明は、上記潜熱蓄熱材組成物を用いて得られた潜熱蓄熱体を提供する。
本発明の潜熱蓄熱材組成物は、上記構成を有することにより、凝固と融解の相変化が可能であり、上記有機潜熱蓄熱材(A)と上記熱硬化性ポリウレタン樹脂が相溶性に優れ、硬化した場合のゲル安定性などの優れた性能を発現できる。
また、本発明の潜熱蓄熱体は、上記潜熱蓄熱材組成物を用いて得られ、上記有機潜熱蓄熱材(A)と上記熱硬化性ポリウレタン樹脂が相溶性に優れ、且つ、有機潜熱蓄熱材を高濃度で混合しても安定なゲル形成を持続し得るので、上記有機潜熱蓄熱材(A)が凝固と融解の相変化を幾度繰返しても滲み出しや相分離などの不具合を生じない。このため、例えば、蓄熱式床暖房、空調システムのほか、施設、電気電子、産業、住宅、交通など多岐の分野など広範囲の用途に有用である。
1.潜熱蓄熱材組成物
本発明の潜熱蓄熱材組成物は、有機潜熱蓄熱材(A)、及びポリイソシアネート(B)と水添ポリブタジエン系ポリオール(C)とを反応させた熱硬化性ポリウレタン樹脂を含有する。以下に個々の構成について詳述する。
1−1 有機潜熱蓄熱材(A)
本発明の潜熱蓄熱材組成物における上記有機潜熱蓄熱材(A)としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、脂肪酸トリグリセリドなどが挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素原子数8〜36の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、n−デカン(融点−30℃)、n−ウンデカン(融点−25℃)、n−ドデカン(融点−8℃)、n−トリデカン(融点−5℃)、ペンタデカン(融点6℃)、n−テトラデカン(融点10℃)、n−ヘキサデカン(融点17℃)、n−ヘプタデカン(融点22℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−ノナデカン(融点32℃)、エイコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、及びこれらの混合物で構成されるノルマルパラフィンやパラフィンワックス等が挙げられる。
長鎖アルコールとしては、例えば、炭素原子数8〜36の長鎖アルコールを用いることができ、具体的には、カプリルアルコール(融点7℃)、ラウリルアルコール(融点24℃)、ミリスチルアルコール(融点38℃)、ステアリルアルコール(融点58℃)等が挙げられる。
長鎖脂肪酸としては、例えば、炭素原子数8〜36の長鎖脂肪酸を用いることができ、具体的には、オクタン酸(融点17℃)、デカン酸(融点32℃)、ドデカン酸(融点44℃)、テトラデカン酸(融点50℃)、ヘキサデカン酸(融点63℃)、オクタデカン酸(融点70℃)等の脂肪酸等が挙げられる。
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素原子数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点5℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、パルミチン酸メチル(融点30℃)、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)、アラキジン酸メチル(融点45℃)等が挙げられる。
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
上記有機潜熱蓄熱材(A)の中でも、好ましくは炭素原子数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素原子数8〜36の長鎖アルコール、炭素原子数8〜36の長鎖脂肪酸、炭素原子数8〜36の長鎖脂肪酸エステルであり、より好ましくは炭素原子数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素原子数8〜36の長鎖脂肪酸エステルであり、更に好ましくは炭素原子数8〜36の脂肪族炭化水素である。
上記有機潜熱蓄熱材(A)の中でも炭素原子数8〜36の脂肪族炭化水素は、潜熱量が大きく、実用的な温度範囲で凝固と融解の相変化をするため、様々な用途に使用しやすく、特に炭素原子数8〜36、好ましくは炭素原子数15〜36の直鎖飽和脂肪族炭化水素であるノルマルパラフィンが潜熱蓄熱材として好適に使用できる。
上記有機潜熱蓄熱材(A)の相変化温度は、用途に応じて設定可能であるが、通常、好ましくは−60〜150℃の範囲であり、より好ましくは−10〜60℃の範囲であり、更に好ましくは25〜55℃の範囲である。上記相変化温度がかかる範囲にあれば、広範囲の用途に適用でき、且つ、相溶性やゲル安定性などの優れた性能を発現できる。
また、上記有機潜熱蓄熱材(A)の相変化温度は、有機潜熱蓄熱材の種類により上記のように異なるので、目的に応じて適切な有機潜熱蓄熱材を選択したり、あるいは複数の有機潜熱蓄熱材を配合して、融点や相溶性、ゲル安定性などの諸性能を調整すればよい。
有機潜熱蓄熱材(A)の含有量は、上記有機潜熱蓄熱材(A)、及び上記ポリイソシアネート(B)と上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)の仕込み量の合計量に対して、好ましくは30〜90質量%の範囲であり、より好ましくは50〜90質量%の範囲であり、更に好ましくは70〜90質量%の範囲である。上記(A)の含有量がかかる範囲であるならば、熱容量を最大限に活かした潜熱蓄熱材組成物を得ることができる。
本発明の潜熱蓄熱材組成物では、後述のように、上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)に加えて、それ以外の多価アルコールを使用しても良い。この場合には、有機潜熱蓄熱材(A)の含有量は、上記有機潜熱蓄熱材(A)、及び上記ポリイソシアネート(B)と上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)ならびに水添ポリブタジエン系ポリオール(C)以外の多価アルコールの仕込み量の合計量に対して、好ましくは30〜90質量%の範囲であり、より好ましくは50〜90質量%の範囲であり、更に好ましくは70〜90質量%の範囲である。上記(A)の含有量がかかる範囲であるならば、熱容量を最大限に活かした潜熱蓄熱材組成物を得ることができる。
1−2 熱硬化性ポリウレタン樹脂
本発明の潜熱蓄熱材組成物に含有される熱硬化性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート(B)と水添ポリブタジエン系ポリオール(C)とを仕込み、反応させて得られる。尚、本発明でいう「ポリイソシアネート」とは、分子中に2個以上のイソシアネート基(以下、「NCO基」ともいう)を有する反応性を有する化合物である。
本発明の潜熱蓄熱材組成物では、上記ポリイソシアネート(B)と上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)がウレタン化反応して熱硬化性ポリウレタン樹脂を形成する。潜熱蓄熱材組成物中の熱硬化性ポリウレタン樹脂が更に高分子量化し、架橋することで三次元的な網目構造を形成し、その内部に上記有機潜熱蓄熱材(A)を取り込むことで安定化した構造を有するゲルとなる。
1−2−1 ポリイソシアネート(B)
上記ポリイソシアネート(B)としては、公知のポリイソシアネートがいずれも使用でき、例えば芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、あるいはそれらの変性体などが挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
また、脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’−、2,4’−または2,2’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのtrans,trans−体、trans,cis−体、cis,cis−体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(H6XDI)などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
本発明では、上記ポリイソシアネート(B)として、上記ポリイソシアネート以外にも、変性体として、ポリイソシアネート誘導体、イソシアネート基末端プレポリマーなども使用できる。
上記ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応により生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
上記イソシアネート基末端プレポリマーとは、少なくとも2つのイソシアネート基を分子末端に有するウレタンプレポリマーであって、ポリイソシアネート(ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体、及びイソシアネート基末端プレポリマーから選択されるポリイソシアネート、好ましくはポリイソシアネート単量体及びポリイソシアネート誘導体から選択されるポリイソシアネート)と、後述するポリエステルポリオール(および必要により低分子量ポリオール)(以下、ポリオール成分)とを、ポリオール成分の水酸基に対するポリイソシアネートの当量比(NCO/OH)が、1より大きくなる割合、好ましくは、1.5〜50の割合でウレタン化反応させることにより、得ることができる。
前記ポリイソシアネート(B)に関し、上記有機潜熱蓄熱材(A)の多くは疎水性であるので、極性の高い芳香族系ポリイソシアネートを使用した場合には、相溶性やゲル安定性を低下させる恐れがある。このため、上記ポリイソシアネート(B)としては、良好な相溶性やゲル安定性を発現させる観点から、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、あるいはその変性体を用いることが好ましい。
これらポリイソシアネート誘導体は、単独使用又は2種類以上併用することができる。
1−2−2 水添ポリブタジエン系ポリオール(C)
本発明で用いる水添ポリブタジエン系ポリオール(C)としては、水添ポリブタジエンポリオール、又は水添ポリブタジエンポリオールと多価カルボン酸とを反応させ得られた水添ポリブタジエン系ポリオールが使用される。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)の水酸基価は、6〜75mgKOH/gの範囲である。水添ポリブタジエン系ポリオール(C)の水酸基価をこのような範囲とすることにより、上記潜熱蓄熱材組成物が硬化した場合に、凝固と融解の相変化が可能であり、且つ、相溶性やゲル安定性などの優れた性能を発現できる。
1−2−2−1 水添ポリブタジエンポリオール
水添ポリブタジエンポリオールとしては、例えば、ブタジエンをアニオン重合触媒(金属リチウム、金属カリウム、金属ナトリウム等)の存在下で重合させた後、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等)を付加重合して得られるポリオールを更に水素添加したものや、ブタジエンを水酸基を有するラジカル重合開始剤(過酸化水素等)を用いてラジカル重合させて得られるポリオールを更に水素添加したもの、1−ブテンを水酸基を有するラジカル重合開始剤(過酸化水素等)を用いてラジカル重合させた水添ポリブタジエンポリオールであって、水酸基価が6〜75mgKOH/gの範囲である水添ポリブタジエンポリオールを用いることができる。水添ポリブタジエンポリオールの分子量は、1500〜18000の範囲であることが好ましい。
水添ポリブタジエンポリオールの市販品としては、CRAY VALLEY社製のHLBH−P3000、日本曹達社製のGI−1000等が入手できる。
1−2−2−2 水添ポリブタジエン系ポリオール
水添ポリブタジエン系ポリオールは、本明細書において、水添ポリブタジエンポリオールと多価カルボン酸とを反応させ得られたポリオールを指す。この反応に用いられる水添ポリブタジエンポリオールとしては、上記と同様のものが挙げられる。本発明では、水酸基価が6〜75mgKOH/gの範囲である水添ポリブタジエン系ポリオールを、水添ポリブタジエン系ポリオール(C)として使用できる。
1−2−2−2−1 多価カルボン酸
上記反応に用いられる多価カルボン酸としては、芳香族骨格を有しても有さなくてもよい。芳香族骨格を有さない多価カルボン酸としては、脂肪族多価カルボン酸、脂環族多価カルボン酸が使用できる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族多価カルボン酸;あるいは1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族多価カルボン酸;あるいはオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの芳香族多価カルボン酸が挙げられる。
上記多価カルボン酸としては、芳香族骨格を有さない多価カルボン酸(脂肪族多価カルボン酸、脂環族多価カルボン酸)の方が、相溶性の向上、滲み出しや相分離の防止、などの点から、より好ましい。
また、本発明の目的を阻害しない範囲で、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などのポリカルボン酸も多価カルボン酸として使用できる。
尚、本発明では、上記多価カルボン酸以外にも、それらの酸無水物、低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステルなど)、酸ハロゲン化物などの反応性を有する酸誘導体も使用できる。
上記水添ポリブタジエン系ポリオールの合成には、必要に応じて触媒や重合禁止剤などを用いることができる。
1−2−3 水添ポリブタジエン系ポリオール(C)以外の多価アルコール
本発明の潜熱蓄熱材組成物には、上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)に加えて、それ以外の多価アルコールが使用されていてもよい。多価アルコールとしては、芳香族骨格を有しても有さなくてもよく、芳香族骨格を有さない多価アルコール(脂肪族多価アルコール、脂環族多価アルコール)も使用できる。水添ポリブタジエン系ポリオール(C)以外の多価アルコールの使用量は、ポリオールの合計量[水添ポリブタジエン系ポリオール(C)とそれ以外の多価アルコールの使用量の合計]に対して、例えば0〜15質量%の範囲であり、好ましくは0〜10質量%の範囲である。水添ポリブタジエン系ポリオール(C)以外の多価アルコールの使用量がかかる範囲であれば、より良好なゲル安定性を発現できる。
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどの脂肪族ジオール;あるいは1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環族ジオール;あるいはビスフェノールA、ビスフェノールS、フッ素化ビスフェノールA、塩素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールA、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール;トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの水酸基を3つ以上有する多官能化合物;ラクトン(例えば、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトンなど)が開環付加重合したポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油系ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、低分子量ポリオール等が挙げられる。これらは、単独使用でも2種以上を併用してもよい。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレンプロピレングリコール(PEPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の少なくとも3個以上の水酸基を有する化合物を出発原料にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合して得られるポリ(オキシアルキレン)グリコール等が挙げられる。これらの中でも、ポリテトラメチレングリコール(PTMG、Mn=650〜2000のもの)が好ましい。上記ポリエーテルポリオールは、直鎖、分岐、環状の何れの構造を有していてもよい。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸と脂肪族ポリオールをエステル化反応して得られるポリオールなども使用することができる。具体的には、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のジオールと、ジメチルカーボネートやホスゲン等との反応生成物などが挙げられる。
また、上記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール;あるいは1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオールなどが挙げられる。上記低分子量ポリオールは、直鎖、分岐、環状の何れの構造を有していてもよい。
上記低分子量ポリオールの分子量は、好ましくは62〜300の範囲であり、より好ましくは62〜200の範囲である。上記低分子量ポリオールの分子量がかかる範囲であるならば、水添ポリブタジエン系ポリオール(C)と併用した場合に、反応性の制御がより容易にできるので好ましい。
上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)以外の多価アルコールとしては、芳香族骨格を有さない多価アルコール(脂肪族多価アルコール、脂環族多価アルコール)の方が、有機潜熱蓄熱材(A)との相溶性の向上、及び滲み出しや相分離の防止、などの点から、好ましい。
水添ポリブタジエン系ポリオール(C)とそれ以外の多価アルコールとの混合物[以下、水添ポリブタジエン系ポリオール(C)等と記載する場合がある]の水酸基価は、6〜75mgKOH/gの範囲であることが好ましい。これにより、上記潜熱蓄熱材組成物が硬化した場合に、凝固と融解の相変化がより容易であり、且つ、相溶性やゲル安定性などのより優れた性能を発現できる。水添ポリブタジエン系ポリオール(C)以外の多価アルコールは使用しなくてもよい。
本発明では、上記ポリイソシアネート(B)を上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)等に対して、通常は、モル比(以下[NCO/OH]という)で過剰となる条件で仕込み、混合して反応させることが、好ましい。
上記[NCO/OH]は、目標とする物性、製品品質、反応挙動などを考慮して設定すればよく、特に限定しないが、好ましくは1/1〜2/1モル比の範囲であり、より好ましくは1.0/1.0〜1.3/1.0の範囲である。
2.潜熱蓄熱材組成物の製造方法
本発明の潜熱蓄熱材組成物の製造方法としては、例えば、〔方法1〕、〔方法2〕などが挙げられる。尚、本発明は、これら方法に限定されるものではない。
〔方法1〕
反応容器中に、不活性雰囲気下、水分を除去した有機潜熱蓄熱材(A)(例えば、ノルマルパラフィン)と水添ポリブタジエン系ポリオール(C)等を仕込み、撹拌混合を開始し、内温調整を行いながら、ポリイソシアネート(B)を滴下、分割、一括などの適切な方法にて異常反応(急激な発熱、突沸など)に充分注意しながら仕込み、上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)等の有する水酸基が実質的に無くなるまで反応を継続する方法。
〔方法2〕
反応容器中に、不活性雰囲気下、水分を除去した有機潜熱蓄熱材(A)(例えば、ノルマルパラフィン)の一部と水添ポリブタジエン系ポリオール(C)等を仕込み、撹拌混合を開始し、内温調整を行いながら、有機潜熱蓄熱材(A)(例えば、ノルマルパラフィン)の一部とポリイソシアネート(B)の混合物を滴下、分割、一括などの適切な方法にて異常反応(急激な発熱、突沸など)に充分注意しながら仕込み、上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)等の有する水酸基が実質的に無くなるまで反応を継続する方法。
本発明の潜熱蓄熱材組成物は、通常、無溶剤にて反応させ製造するが、溶剤中で反応させてよい。溶剤中で反応させる場合には、反応を阻害しない溶剤を使用すればよく、その種類は特に限定しない。反応に使用した溶剤は、反応途中又は反応終了後に、減圧バッチ法や薄膜留去法等の適切な方法により、除去することが望ましい。
本発明において、上記有機潜熱蓄熱材(A)(例えば、ノルマルパラフィン)存在下、ポリイソシアネート(B)と水添ポリブタジエン系ポリオール(C)等との反応条件(温度、時間、圧力など)は、安全性、反応挙動、製品品質などを考慮して正常に制御できる範囲で設定すればよく、特に限定しないが、好ましくは、反応温度は20〜100℃の範囲であり、反応時間は4〜60時間の範囲である。圧力は、常圧、加圧、減圧のいずれでもよい。この反応により、熱硬化性ポリウレタン樹脂が架橋され、この架橋体中に有機潜熱蓄熱材(A)が担持されたゲル状体(例えば、パラフィンゲル)が得られる。
反応方式は、例えば、バッチ、半連続、連続など、公知の反応方式を採用でき、特に限定しない。
また、必要に応じて、公知のウレタン化触媒を使用することができる。上記触媒は、原料仕込工程、反応工程などの任意の段階で適宜加えることができる。また、触媒の添加方法は、一括、分割、連続など特に限定しない。
反応は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、乾燥空気雰囲気下又は密閉条件下などの水分が混入しない条件下で行ってもよい。
本発明の潜熱蓄熱材組成物には、公知の各種添加剤を本発明の目的を逸脱しない範囲内で、製造工程の何れの段階においても用いることができる。かかる添加剤としては、例えば、整泡剤、酸化防止剤、脱泡剤、砥粒、充填剤、顔料、染料、着色剤、増粘剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、粘着付与剤、硬化触媒、安定剤、シランカップリング剤、ワックス等の公知のものが使用できる。尚、上記添加剤はほんの一例であって、本発明の目的を阻害しない限り、特にその種類及び使用量を限定するものではない。
3.潜熱蓄熱体
本発明の潜熱蓄熱体は、上記潜熱蓄熱材組成物を用いて得られ、上記有機潜熱蓄熱材(A)が凝固と融解の相変化を幾度繰返しても、相溶性(有機潜熱蓄熱材の滲み出しや相分離がないこと)や、ゲル安定性(有機潜熱蓄熱材を高濃度で混合しても安定なゲル状態を維持できること)などの優れた性能を発現できる。上記有機潜熱蓄熱材(A)(特にノルマルパラフィン)を、上記ポリイソシアネート(B)と上記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)等とを反応させた熱硬化性ポリウレタン樹脂で固定化(ゲル化)して得ることができる。
本発明の潜熱蓄熱体の形状は、例えば、シート状、棒状(スティック状)、針状、球状、角状(キューブ状)、カプセル状、ビーズ状、粉末状など、使用目的に応じて多種多様であり、特に限定はしない。本発明の潜熱蓄熱体は、熱硬化性ポリウレタン樹脂が架橋され、この架橋体中に有機潜熱蓄熱材(A)が担持された上記ゲル状体を、上記形状にしたものである。
本発明において、シート状の潜熱蓄熱体を代表例に挙げるならば、柔軟性に優れるため湾曲させたとしても潜熱蓄熱体が破断することなく、万一、切断したとしても切断面から有機潜熱蓄熱材(A)が漏れ出すこともなく、外部への汚染や漏洩の心配がなく、安全に使用できるので、好ましい。
また、シート状の潜熱蓄熱体は、上記シート状の潜熱蓄熱体の片面又は両面に各種基材を、使用目的に合わせて積層することもできる。
また、シート状の潜熱蓄熱体の厚さは、特に限定せず、用途目的に応じて適宜設定すればよいが、通常、好ましくは1〜100mmの範囲である。
本発明の潜熱蓄熱体は、例えば、住宅やビル等の建築物の壁材、天井材、床材等の内・外装材料、床暖房システム、車輌等の内装材、機械・機器等の工業製品、熱電変換システム、熱搬送媒体、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス、保温シート、結露防止シート、電気製品、OA機器、プラント、タンク、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具、日用雑貨等に用いる材料としても利用可能である。
本発明の潜熱蓄熱体は、用途目的に合わせて、潜熱蓄熱材(A)の相変化温度を設定すればよい。例えば、建築物の内・外装材として使用する場合は、潜熱蓄熱材(A)の融点が15℃〜30℃のものを選択し使用すればよい。また、床暖房に用いる場合は、潜熱蓄熱材(A)の融点が25℃〜40℃のものを選択し、衣類や寝具として用いる場合には融点が25℃〜35℃のもの、車輌等の内装材として用いる場合には融点が15℃〜30℃のもの、冷蔵庫に用いる場合には融点が−10℃〜5℃のもの、冷凍庫に用いる場合には融点が−30℃〜−10℃のものを、それぞれ選択して、上記ポリイソシアネート(B)と水添ポリブタジエン系ポリオール(C)等を反応させた熱硬化性ポリウレタン樹脂を反応硬化させた樹脂に含有させて使用すればよい。
また、本発明の潜熱蓄熱体は、断熱体を積層することにより、優れた蓄熱性・断熱性を発揮するため、例えば、建築物の壁材、天井材、床材等、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス等に適用することにより、外部環境温度の変化に対し、空間内温度を最適な温度に保つことができ、省エネ化を図ることができる。このような断熱体としては、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、発泡ゴム、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック等、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。
また、本発明の潜熱蓄熱体には、熱伝導体を積層することもでき、熱伝導体として、例えば、ガラス板、アクリル樹脂、ビニル樹脂等の樹脂ボードや樹脂シート、銅、アルミニウム、鉄、真鍮、亜鉛、マグネシウム、ニッケル等の金属板等、あるいは金属材料を含む樹脂ボードまたは樹脂シート等、スレート板、石膏ボード、ALC板、木毛セメント板、合板等が挙げられる。このような熱伝導体は、夜間や冬季においては、結露等を起こすおそれがあるが、本発明の潜熱蓄熱体を積層することにより、熱伝導体の温度変化を緩和し、結露を防止することができる。
また、本発明の潜熱蓄熱体と、難燃材、準不燃材及び不燃材等の防火材とを積層することにより、優れた潜熱蓄熱性に加え、防火性を付与することができ、防火性を必要とする部位(例えば、建築物の内装材等)にも適用することができる。このような防火材としては、例えば、コンクリート板、ガラス板、金属板、木毛セメント板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等の平板、金属フィルム、グラスファイバー等のフィルム成形体、発泡性防火材料、難燃材含有材料等が挙げられる。
また、本発明の潜熱蓄熱体と発熱体を積層することにより、例えば、床暖房システムや、融雪・滑氷屋根材など、浴槽・浴室、保温シート等に適用することができる。床暖房システムとして適用する場合、発熱体として、例えば、面状発熱体や、温水を利用した配管等を利用することができ、これらの発熱体と本発明の潜熱蓄熱体、床材を組み合わせることができる。このような床暖房システムは、公知の方法で、積層・設置することができるが、例えば、発熱体、面状発熱体、床材を積層した床暖房システムは、厚みを抑えることができ、且つ、厚みを抑えたとしても、優れた床暖房効果と省エネ効果を発揮することができ、特にリフォーム等に好適に用いることができる。
また、本発明の蓄熱体は、最適な温度を維持しつづけることができるため、例えば、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具等に用いられる素材と組み合わせることにより、快適な環境を得ることができる。更に、極寒地域や、火事場等の高温環境下においても、外部温度の影響を抑えることができるため、防寒服や消防服等にも有効である。
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
尚、本発明で用いた測定方法及び評価方法は、以下の通りである。
〔有機潜熱蓄熱材(A)と水添ポリブタジエン系ポリオール(C)との相溶性の評価と判定基準〕
ガラス容器中で、有機潜熱蓄熱材(A)として炭素原子数15のノルマルペンタデカン(商標:TSパラフィン TS8、JX日鉱日石エネルギー株式会社製、融点29℃、融解熱量(測定値)221J/g)、及び水添ポリブタジエン系ポリオール(C)として水添ポリブタジエンポリオールC1、C2ならびに合成例1〜5で得た水添ポリブタジエン系ポリオールC3〜C5、c6、c7を、50/50質量比で混合し溶解させ、次いで、室温で24時間放置後に外観を目視観察して、下記の基準に従い相溶性を判定した。
相溶性の判定基準。
○:均一透明であり、濁りなし。
△:濁りがある。
×:分離している。
〔潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)のゲル硬化試験、ゲル安定性試験〕
実施例及び比較例で作製した潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)の試験サンプルを用いて、評価(1)ゲル硬化性の判定と、評価(2)ゲル安定性の判定を行った。
評価(1)ゲル硬化性の判定
(1−1)外観・指触
上記で得られた潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)の試験サンプルの外観を目視観察と指触時の付着物の有無により、下記の基準に従い判定した。
ゲル硬化性の判定基準
○:滲みも分離もなく、且つ指触時に付着物なし。
△:滲みがある、若しくは指触時に付着物あり。
×:分離している。
××:ゲル化せず、流動性がある。
(1−2)パラフィン流出率(α)の測定
潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)の試験サンプルの初期質量(W0)を予め計量した。次いで、上記で得られた潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)の試験サンプルを脱脂綿で拭いて、試験サンプルから分離・流出したパラフィンを採取して分離・流出したパラフィンの質量(W1)を計量した。下記式より初期質量(W0)に対するパラフィン流出率α(%)を算出した。
パラフィン流出率α(%) = W1 / W0 × 100
α :パラフィン流出率(質量%)
0:潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)の初期質量
1:分離・流出したパラフィンの質量
評価(2)ゲル安定性の判定
実施例及び比較例で得られた潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)の試験サンプルを50℃で2時間放置後、5℃条件下で2時間静置し、これを1サイクルとして20サイクルのゲル安定性試験を行った。
(2−1)外観・指触
上記ゲル安定性試験後の外観を目視観察と指触時の付着物の有無により、下記の基準に従い、判定した。
ゲル安定性の判定基準
◎:滲みも分離もなく、且つ指触時に付着物なし。
○:指触時にわずかな付着物あり。
×:分離している。
(2−2)パラフィン流出率(β)の測定
実施例及び比較例で得られた潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)の試験サンプルの初期質量(W0)を予め計量した。次いで、これらの試験サンプルについて上記ゲル安定性試験を行った後の試験サンプルを脱脂綿で拭いて、分離・流出したパラフィンを採取して分離・流出したパラフィンの質量(W2)を計量した。下記式より初期質量(W0)に対するパラフィン流出率β(%)を算出した。
パラフィン流出率β(%) = W2 / W0 × 100
β :パラフィン流出率(質量%)
0:潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)の初期質量
2:分離・流出したパラフィンの質量
〔融解熱量の測定方法〕
示差走査熱量測定器(Differential Scanning Calorimeter、略称:DSC)により、検出される融解ピークの熱量(単位:J/g、ジュール毎グラム)を測定した。
測定機器:機種:DSC Q−100、メーカー:TA Instruments社
測定雰囲気:窒素
測定温度範囲:0℃〜50℃
昇温速度:10℃/分
〔合成例1〕水添ポリブタジエン系ポリオールC3の合成
水添ポリブタジエンポリオールC1[HLBH−P3000:CRAY VALLEY社製、水酸基価32mgKOH/g]97.5質量部と、セバシン酸2.5質量部とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに仕込んだ。ここへ、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.005質量%添加し、220℃で20時間反応させ、水添ポリブタジエン系ポリオールC3を得た。水添ポリブタジエン系ポリオールC3の水酸基価は12mgKOH/gであった。
〔合成例2〕水添ポリブタジエン系ポリオールC4の合成
水添ポリブタジエンポリオールC1[同上]98.0質量部と、ヘキサヒドロフタル酸無水物2.0質量部とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに仕込んだ。ここへ、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.005質量%添加し、220℃で20時間反応させ、水添ポリブタジエン系ポリオールC4を得た。水添ポリブタジエン系ポリオールC4の水酸基価は13mgKOH/gであった。
〔合成例3〕水添ポリブタジエン系ポリオールC5の合成
水添ポリブタジエンポリオールC1[同上]97.0質量部、セバシン酸3.0質量部とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに仕込んだ。ここへ、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.005質量%添加し、220℃で20時間反応させ、水添ポリブタジエン系ポリオールC5を得た。水添ポリブタジエン系ポリオールC5の水酸基価は6mgKOH/gであった。
〔合成例4〕水添ポリブタジエン系ポリオールc6の合成
水添ポリブタジエンポリオールC1[同上]96.5質量部と、セバシン酸3.5質量部とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに仕込んだ。ここへ、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.005質量%添加し、220℃で20時間反応させ、水添ポリブタジエン系ポリオールc6を得た。水添ポリブタジエン系ポリオールc6の水酸基価は4mgKOH/gであった。
〔合成例5〕水添ポリブタジエン系ポリオールc7の合成
水添ポリブタジエンポリオールC1[同上]97.0質量部と、ヘキサヒドロフタル酸無水物3.0質量部とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに仕込んだ。ここへ、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.005質量%添加し、220℃で20時間反応させ、水添ポリブタジエン系ポリオールc7を得た。水添ポリブタジエン系ポリオールc7の水酸基価は5mgKOH/gであった。
〔実施例1〕
水添ポリブタジエンポリオールC1[同上]とポリイソシアネート(B)としてイソホロンジイソシアネート変性体を、[NCO/OH]=1.00モル比で配合し、パラフィンTS8[JX日鉱日石エネルギー製、ノルマルパラフィン]中で混合溶解した。この混合液をガラス瓶に注入した。これを50℃で48時間硬化させ、潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)G1を作製した。
上記潜熱蓄熱体G1の評価結果を第1表に示した。
潜熱蓄熱体G1は、ゲル硬化試験後の外観、滲み出しに優れ、ゲル安定性試験後の外観、滲み出しも無く安定性に優れていた。
〔実施例2〜5〕
水添ポリブタジエンポリオールC1の代わりに、水添ポリブタジエンポリオールC2[GI−1000:日本曹達社製、水酸基価69mgKOH/g]、合成例1〜3で得た水添ポリブタジエン系ポリオールC3〜C5をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、潜熱蓄熱体(パラフィンゲル)G2〜G5を作製した。
上記潜熱蓄熱体G2〜G5の評価結果を第1表に示した。
潜熱蓄熱体G2〜G5においても、ゲル硬化試験後の外観、滲み出しに優れ、ゲル安定性試験後の外観、滲み出しも無く安定性に優れた結果が得られた。
〔比較例1、2〕
水添ポリブタジエンポリオールC1の代わりに、合成例4、5で得た水添ポリブタジエン系ポリオールc6、c7をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、パラフィンゲルCG6、CG7を作製した。
上記パラフィンゲルCG1、CG2の評価結果を第1表に示した。
パラフィンゲルCG1、CG2では、相溶性は良好であったが、ゲル硬化試験で分離が発生し、パラフィンの流出があり実使用に耐えがたい結果であった。
〔比較例3、4〕
水添ポリブタジエンポリオールC1の代わりに、ポリブタジエンポリオール[LBH−P3000:CRAY VALLEY社製、水酸基価34mgOH/g]、PPG3000[EXCENOL3020:旭硝子社製、水酸基価37mgOH/g]をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、パラフィンゲルCG3、CG4を作製した。
上記パラフィンゲルCG3、CG4の評価結果を第1表に示した。
パラフィンゲルCG3においても、相溶性は良好であったが、ゲル硬化試験で分離が発生し、パラフィンの流出があり実使用に耐えがたい結果であった。パラフィンゲルCG4では、相溶性も悪かった。
Figure 2015081297
本発明の潜熱蓄熱材組成物によれば、凝固と融解の相変化を幾度繰返しても滲み出しや相分離などの不具合を生じない、相溶性やゲル安定性などの優れた性能を有する潜熱蓄熱体を得ることができる。本発明の潜熱蓄熱体は、例えば、蓄熱式床暖房、空調システムのほか、施設、電気電子、産業、住宅、交通など多岐の分野など広範囲の用途に有用である。

Claims (5)

  1. 有機潜熱蓄熱材(A)、及び
    ポリイソシアネート(B)と水添ポリブタジエン系ポリオール(C)とを仕込み、反応させた熱硬化性ポリウレタン樹脂を含有する潜熱蓄熱材組成物であって、
    前記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)が、水添ポリブタジエンポリオール、又は水添ポリブタジエンポリオールと多価カルボン酸を反応させ得られた水添ポリブタジエン系ポリオールであって、水酸基価が6〜75mgKOH/gの範囲のポリオールであることを特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  2. 前記有機潜熱蓄熱材(A)が、ノルマルパラフィンである請求項1に記載の潜熱蓄熱材組成物。
  3. 前記ポリイソシアネート(B)が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、あるいはその変性体である請求項1に記載の潜熱蓄熱材組成物。
  4. 前記有機潜熱蓄熱材(A)と、前記ポリイソシアネート(B)と前記水添ポリブタジエン系ポリオール(C)の仕込み量の合計量に対して、前記有機潜熱蓄熱材(A)を30〜90質量%の範囲で含有する請求項1に記載の潜熱蓄熱材組成物。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の潜熱蓄熱材組成物を用いて得られることを特徴とする潜熱蓄熱体。
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