JP2015080736A - 酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒 - Google Patents

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【課題】酸素吸放出能及び耐久性が改善されたセリア−ジルコニア複合酸化物を含む酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒を提供する。【解決手段】セリア−ジルコニア複合酸化物に鉄を添加してなり、前記セリア−ジルコニア複合酸化物がパイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有しかつ貴金属を含有せず、前記鉄が該セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに少なくとも部分的に置換してなることを特徴とする酸素吸放出材、及びこのような酸素吸放出材を含む排ガス浄化用触媒が提供される。【選択図】図5

Description

本発明は、内燃機関等からの排ガスを浄化するための排ガス浄化用触媒において用いられる酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒に関する。
従来、自動車の排ガス浄化用触媒としては、排ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化と窒素酸化物(NOx)の還元とを同時に行う三元触媒が用いられている。このような三元触媒の作用によってCO、HC及びNOxの3成分を同時かつ効率的に浄化するためには、自動車のエンジンに供給される空気と燃料の比率(空燃比A/F)を理論空燃比(ストイキ)近傍に制御することが重要である。しかしながら、実際の空燃比は、自動車の走行条件等によってストイキを中心にリッチ(燃料過剰雰囲気)側又はリーン(燃料希薄雰囲気)側に変動するため、排ガスの雰囲気も同様にリッチ側又はリーン側に変動する。したがって、三元触媒のみでは必ずしも高い浄化性能を確保することができない。そこで、排ガス中の酸素濃度の変動を吸収して三元触媒の排ガス浄化能力を高めるために、排ガス中の酸素濃度が高いときには酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低いときには酸素を放出する、いわゆる酸素吸放出能(OSC能)を有するセリア−ジルコニア(CeO2−ZrO2)複合酸化物等の酸素吸放出材が排ガス浄化用触媒において用いられている。
特許文献1では、セリア−ジルコニア複合酸化物、及び前記セリア−ジルコニア複合酸化物中に分散して少なくとも部分的に固溶している酸化鉄を含む排ガス浄化触媒が記載されている。そして、特許文献1では、このような排ガス浄化触媒によれば、酸化鉄を触媒金属として用いることによって、貴金属を用いない場合であっても、セリア−ジルコニア複合酸化物によるOSC能を提供することができると記載されている。
また、酸素吸放出材の材料自体についても様々な検討がなされており、例えば、パイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物が、従来の蛍石型等の結晶構造を有するセリア−ジルコニア複合酸化物と比べて高いOSC能を有することから、このような材料を用いた酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒についても幾つかの提案がなされている。
特許文献2では、CeとZrとを含む複合酸化物であって、Ceの価数が3価の時、以下の組成式(Ce1-x-y,REx,AEy2(Zr1-y,My27(REはCe以外の希土類イオンの少なくとも1種類、AEはCa、Sr、Baの少なくとも1種類、MはNb、Taの少なくとも1種類,0≦x≦0.9,0≦y≦0.9,0.4≦x+y≦0.9)で表されるパイロクロア構造を有することを特徴とする複合酸化物が記載されている。そして、特許文献2では、当該特許文献に記載の発明によれば、高いOSCを有しかつ1000℃程度の高温での使用が可能な耐熱性の高いCe、Zrを含む複合酸化物を提供することができると記載されている。
特許文献3では、CeO2とZrO2との複合酸化物であって、パイロクロア相、κ相又はこれら両相の中間相のいずれか1種以上の相を有し、かつ比表面積が20m2/g以上であることを特徴とする複合酸化物が記載され、さらに当該複合酸化物にY、La、Pr、Nd等の希土類イオン、Mg、Ca、Sr、Baといったアルカリ土類金属イオン、Mn、Fe等の遷移金属イオン、Ti、Sn、Zn、Gaといった元素を添加してもよい旨が記載されている。
特許文献4では、CeO2と、ZrO2と、希土類元素、アルカリ土類元素及び遷移元素から選ばれる少なくとも一種の添加元素の酸化物とからなり、セリウムイオン及びジルコニウムイオンが規則配列した規則相をもつことを特徴とするセリア−ジルコニア系複合酸化物が記載され、ここで「規則相」とは、セリウムイオン及びジルコニウムイオンが規則配列した相であり、酸素原子が抜けた状態ではパイロクロア相に相当する旨が記載されている。
特許文献5では、ストイキ燃焼乃至リッチ燃焼により生じた排気を浄化する内燃機関の排気浄化用触媒であって、マグネシウム、カルシウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、アルミニウム、及びジルコニウムからなる群より選ばれる2以上の元素を含有し、且つ、パイロクロア構造を一部又は全部に有する金属酸化物、並びに、銅、鉄、コバルト、及びニッケルからなる群より選ばれる1又は2以上の卑金属を含有することを特徴とする内燃機関の排気浄化用触媒が記載されている。
非特許文献1では、CeサイトにPd、ZrサイトにFeを固溶させたパイロクロア相を有する酸素吸蔵材料(Ce0.49Pd0.01Zr0.40Fe0.102)が記載されている。そして、非特許文献1では、PdをCeサイトに固溶させることで耐久性が向上する旨が記載されている。
特開2008−018322号公報 特開2005−231951号公報 特開2005−170774号公報 特開2003−277059号公報 特開2012−239982号公報
小池ら,「CeO2−ZrO2固溶体の性能向上検討」,デンソーテクニカルレビュー Vol.13 No.1 2008
特許文献1に記載の発明は、触媒成分としての酸化鉄をセリア−ジルコニア複合酸化物中に分散して少なくとも部分的に固溶させることで、単独の酸化鉄(Fe34又はFe23)の析出による触媒の劣化を防ぐというものである。それゆえ、特許文献1では、酸素吸放出材に関するOSC能の向上という観点からは必ずしも十分な検討がなされていない。
特許文献2に記載のCeとZrとを含む複合酸化物では、当該複合酸化物中のCeの一部がCe以外の希土類元素、具体的にはLa等で置換されている。したがって、特許文献2に記載の複合酸化物では、このようなCeの減量に伴い、単位質量あたりのOSC能が低下するという問題がある。
特許文献3では、パイロクロア相、κ相等を有するCeO2とZrO2との複合酸化物に、希土類イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン等、種々の元素を添加してもよい旨が記載されているものの、これらの元素の添加やその効果については何ら具体的には示されていない。
特許文献4では、CeO2と、ZrO2と、少なくとも一種の添加元素の酸化物とからなるセリア−ジルコニア系複合酸化物が記載されているものの、このような添加元素としてはイットリウムしか具体的には開示されていない。それゆえ、当該特許文献4に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物では、そのOSC能に関して依然として改善の余地があった。
特許文献5に記載の排気浄化用触媒では、銅、鉄、コバルト、及びニッケルからなる群より選ばれる1又は2以上の卑金属は、触媒成分としてパイロクロア構造を一部又は全部に有する金属酸化物に担持されるものである。それゆえ、当該特許文献5では、パイロクロア構造を有する酸素吸放出材に関するOSC能の向上という観点からは必ずしも十分な検討がなされていない。
非特許文献1に記載の酸素吸蔵材料は、その耐久性を向上させるために、貴金属であるPdを必須の構成要素として含む必要があり、それゆえ当該非特許文献1に記載の酸素吸蔵材料では、製造コストの面で依然として改善の余地があった。
そこで、本発明は、セリア−ジルコニア複合酸化物を含む新規の酸素吸放出材であって、比較的安価に酸素吸放出能、さらには耐久性が改善された酸素吸放出材を提供すること、及びそれを含む排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は下記にある。
(1)セリア−ジルコニア複合酸化物に鉄を添加してなる酸素吸放出材であって、
前記セリア−ジルコニア複合酸化物がパイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有しかつ貴金属を含有せず、前記鉄が該セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに少なくとも部分的に置換してなることを特徴とする、酸素吸放出材。
(2)前記鉄が前記セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイトとジルコニウムサイトの両方に置換されたことを特徴とする、上記(1)に記載の酸素吸放出材。
(3)前記セリア−ジルコニア複合酸化物中の鉄含有量が、該セリア−ジルコニア複合酸化物中に含まれる全金属元素に対して0mol%超25mol%未満であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の酸素吸放出材。
(4)前記セリア−ジルコニア複合酸化物中の鉄含有量が、該セリア−ジルコニア複合酸化物中に含まれる全金属元素に対して5mol%以上15mol%以下であることを特徴とする、上記(3)に記載の酸素吸放出材。
(5)前記セリア−ジルコニア複合酸化物中の鉄含有量が、該セリア−ジルコニア複合酸化物中に含まれる全金属元素に対して8mol%以上12mol%以下であることを特徴とする、上記(4)に記載の酸素吸放出材。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の酸素吸放出材を含む、排ガス浄化用触媒。
本発明によれば、パイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有するセリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに鉄を少なくとも部分的に置換させ、特には鉄を当該セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイトとジルコニウムサイトの両方に置換することにより、従来のセリア−ジルコニア複合酸化物と比較して、耐熱性及びOSC能、特には低温下でのOSC能が顕著に改善された酸素吸放出材を得ることができる。また、本発明の酸素吸放出材によれば、希少金属であるセリウムの一部が安価な鉄で置換され、さらには貴金属等を使用せずに高い耐熱性と優れたOSC能を達成することができるので、製造コストや省資源化の観点からも非常に有利である。
パイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物の酸化還元状態に伴う構造変化を示す図である。 実施例1及び2並びに比較例1〜3の各酸素吸放出材に関するX線回折パターンを示す図である。 実施例1及び2並びに比較例3の各酸素吸放出材に関するX線回折パターンの拡大図である。 2−TPR測定の測定プログラムを示す図である。 実施例1及び2並びに比較例2の各酸素吸放出材に関するH2−TPR曲線であり、各酸素吸放出材1gあたりのH2消費量(μmol/g)を示す。 図5における各酸素吸放出材中のCeのモル数を2molになるように補正した場合のH2消費量(mmol/2mol−Ce)を示す。
本発明の酸素吸放出材は、セリア−ジルコニア複合酸化物に鉄を添加してなり、前記セリア−ジルコニア複合酸化物がパイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有しかつ貴金属を含有せず、前記鉄が該セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに少なくとも部分的に置換してなることを特徴としている。
先に記載したとおり、パイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物は、従来の蛍石型等の結晶構造を有するセリア−ジルコニア複合酸化物と比べて高いOSC能を有することが一般に知られている。それゆえ、パイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物を用いた酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒が検討され、幾つかの文献において提案されている。
図1は、パイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物の酸化還元状態に伴う構造変化を示す図である。ここで、CeとZrのみからなるパイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物は、化学式Ce2Zr27で表され、CeとZrが(111)方向に交互に整列した規則構造を有している。この複合酸化物は、還元状態では、Ceの価数が3+であり、酸素が1つ欠損した状態であるパイロクロア相の構造を示すのに対し、酸化状態では、Ceの価数が4+となり、酸素がすべて充填された化学式CeZrO4(Ce2Zr28)で表されるκ相の構造を示すことが一般に知られている。すなわち、この複合酸化物は、酸化還元状態に応じて、下記式(1)に示すように、κ相とパイロクロア相との間を可逆的に変化し、このような構造変化に伴って酸素が吸放出される。そして、この複合酸化物では、Ce2Zr27中のCeのほぼ100%が酸素の吸蔵に利用されるため、非常に高いOSC能を示すことが一般に知られている。
4CeZrO4(κ相) ⇔ 2Ce2Zr27(パイロクロア相)+O2 (1)
しかしながら、熱安定性の観点について言えば、パイロクロア相は、高温還元雰囲気下で安定であるものの、κ相は、高温酸化雰囲気下、例えば約600℃以上の温度、特には約1000℃付近の温度で構造が崩壊して蛍石型等の通常のセリア−ジルコニア複合酸化物に分解し、そのOSC能が低下してしまうという問題がある。より詳しく説明すると、κ相ではCeの価数が4+となってZrの価数と同じとなり、そのイオン半径(Ce4+:0.97Å)もZrのイオン半径(Zr4+:0.84Å)に近くなる。また、配位数はパイロクロア相ではCeが8配位、Zrが6配位であるが、κ相ではともに8配位となる。すなわち、κ相ではCeとZrの価数、イオン半径、配位数がほぼ同じとなり、CeとZrの置換又は再配列が起こり易くなり、それゆえ構造の規則性が崩壊してOSC能が低下するものと考えられる。
ここで、特開2005−231951号公報では、例えば、価数変化のない3価のLaでパイロクロア相中のCeの一部を置換することにより、Ceの価数が4+となるκ相構造中に酸素欠陥を生じさせ、それによって当該κ相構造中のZrサイトを7配位又は6配位としている。その結果、上記のようなCeとZrの置換又は再配列を生じにくくし(再配列抑制効果)、セリア−ジルコニア複合酸化物の耐熱性を向上させている。しかしながら、特開2005−231951号公報に記載の複合酸化物では、OSC能を有するCeの一部をLaによって置換しているため、このようなCeの減量に伴い、最終的に得られる複合酸化物の単位質量あたりのOSC能が低下してしまうという問題がある。
これに対し、本発明者らは、パイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有するセリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに鉄を少なくとも部分的に置換させ、特には鉄を当該セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイトとジルコニウムサイトの両方に置換することにより、このような添加元素を含まない従来公知のセリア−ジルコニア複合酸化物や特開2005−231951号公報において提案されるようなCeの一部をLa等で置換したセリア−ジルコニア複合酸化物と比較して、耐熱性及びOSC能、特には低温下でのOSC能が顕著に改善された酸素吸放出材を得ることができることを見出した。
鉄(Fe)は、Fe2+とFe3+との間での価数変化に起因してOSC能を有することが一般に知られている。したがって、パイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有するセリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに鉄を少なくとも部分的に置換させることで、特開2005−231951号公報の場合と同様のCeとZrの再配列抑制効果を達成することができるだけでなく、当該セリア−ジルコニア複合酸化物にFeが有するOSC能をさらに付加することもできる。それゆえ、本発明の酸素吸放出材によれば、従来公知のセリア−ジルコニア複合酸化物やCeの一部をLa等で置換したセリア−ジルコニア複合酸化物と比較して、非常に優れた耐熱性及びOSC能を達成することが可能である。また、本発明の酸素吸放出材によれば、希少金属であるCeの一部が安価なFeで置換され、さらには、小池ら,「CeO2−ZrO2固溶体の性能向上検討」,デンソーテクニカルレビュー Vol.13 No.1 2008において提案されるようなPd等の貴金属を使用せずに、高い耐熱性と優れたOSC能を達成することができるので、製造コストや省資源化の観点からも非常に有利である。
本発明によれば、鉄は、セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに少なくとも部分的に置換していればよく、特に限定されないが、好ましくは当該セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイトとジルコニウムサイトの両方に置換される。
鉄をセリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイトに置換することで、例えば、酸化状態のκ相においてセリウムサイトに3価の鉄イオンが存在することになる。この場合には、特開2005−231951号公報に記載されるのと同様のCeとZrの再配列抑制効果を達成することができるので、最終的に得られる酸素吸放出材の耐熱性を顕著に向上させることが可能である。また、鉄をセリア−ジルコニア複合酸化物中のジルコニウムサイトに置換した場合には、Zr4+イオン(0.84Å)よりもサイズの小さいFe3+(0.78Å)がジルコニウムサイトに存在することで、κ相においてセリウムサイトとジルコニウムサイトのイオンサイズに差を持たせることできる。その結果として、鉄をセリウムサイトに置換した場合と同様の再配列抑制効果を得ることができるので、κ相をさらに安定化させることができる。
さらに、鉄をセリア−ジルコニア複合酸化物中のジルコニウムサイトに置換した場合には、セリア−ジルコニア複合酸化物自体のOSC能を改善することが可能である。より詳しく説明すると、一般に、ジルコニア(ZrO2)を含まないセリア(CeO2)のみからなる酸素吸放出材では、CeO2から酸素が放出されると、CeO2中のCe4+イオン(0.97Å)がCe3+イオン(1.14Å)へと還元される。しかしながら、このようなCe4+イオンからCe3+イオンへの還元によってイオン半径は約1.2倍増大する。このようなイオン半径の増大は結晶学的には極めて大きな変化であり、それゆえCeO2の結晶格子の歪みを引き起こして格子を不安定化させる。したがって、このような反応はエネルギー的には非常に不利な反応である。これに対し、セリアとジルコニアの固溶体からなる通常のセリア−ジルコニア複合酸化物では、CeO2結晶格子中のCeイオンの一部がよりイオン半径の小さなZrイオン(Zr4+イオン:0.84Å)に置き換わるため、Ceイオンのイオン半径の増大に伴う結晶格子の歪みを緩和することが可能となり、それゆえCeイオンの還元をより容易に進行させることができる。このため、通常のセリア−ジルコニア複合酸化物は、CeO2に比べて非常に高いOSC能を有することが一般に知られている。
これに相当する変化をパイロクロア相とκ相の間で考慮した場合、パイロクロア相の格子定数は10.742Åであり、一方でκ相の格子定数は10.527Åであるため(Haruo Kishimotoら,Journal of Alloys and Compounds 312(2000)94−103のデータより算出)、Ceイオンの還元によって格子体積の増大が起こっており、それゆえCe4+からCe3+への還元によるイオン半径の増大の影響が残っていることがわかる。
本願発明の好ましい態様によれば、Zrイオンよりもさらにイオン半径の小さいFe2+(0.61Å)をジルコニウムサイトの一部と置換することで、κ相からパイロクロア相へ変化する際の格子体積の増大をより小さくすることが可能である。その結果として、従来公知のセリア−ジルコニア複合酸化物と比較して、Ceイオンのイオン半径の増大に伴う結晶格子の歪みを一層緩和することができるので、Ce4+からCe3+への還元をより容易に進行させることができる。このため、本発明の酸素吸放出材によれば、従来公知のセリア−ジルコニア複合酸化物と比較して、顕著に改善されたOSC能、特には低温下において顕著に改善されたOSC能を達成することが可能である。
本発明によれば、セリア−ジルコニア複合酸化物中の鉄含有量は、当該セリア−ジルコニア複合酸化物中に含まれる全金属元素に対して0mol%超25mol%未満であることが好ましい。
セリア−ジルコニア複合酸化物中の鉄含有量が0mol%すなわちセリア−ジルコニア複合酸化物中に鉄を全く含まない場合には、当然ながら当該鉄の添加による上記の効果、すなわちセリウムとジルコニウムの再配列抑制効果、特に鉄をジルコニウムサイトに置換したことに起因するセリア−ジルコニア複合酸化物のOSC能の向上、さらには鉄が有するOSC能の付加を達成することはできない。一方で、鉄含有量が25mol%以上である場合には、鉄の一部がセリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに置換することができない場合があり、その結果として、このような鉄が不純物、特にはCeFeO3等の不純物としてセリア−ジルコニア複合酸化物上に析出し、当該セリア−ジルコニア複合酸化物のOSC能を大きく低下させてしまう場合がある。
何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、鉄含有量が25mol%以上である場合には、例えば、ジルコニウムサイトに入りきらない鉄の一部がセリウムサイトに置換し、このような置換によって押し出されたセリウムがジルコニウムサイトにもセリウムサイトにも置換できなかった鉄と反応して、CeFeO3が不純物として生成するものと考えられる。一方で、例えば、パイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有するセリア−ジルコニア複合酸化物の化学量論組成に対してセリウムの量が十分少ない場合には、鉄が主としてセリウムサイトに置換するものと考えられるが、このような場合も、鉄含有量が25mol%以上になると、セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウム含有量が減少することにより、最終的に得られる酸素吸放出材について十分なOSC能を達成できない場合がある。
本発明によれば、セリア−ジルコニア複合酸化物中の鉄含有量を、0mol%超、特には1mol%以上、3mol%以上、5mol%以上若しくは8mol%以上とし、かつ25mol%未満、特には20mol%以下、18mol%以下、15mol%以下若しくは12mol%以下とし、例えば0mol%超25mol%未満、1mol%以上25mol%未満、5mol%以上20mol%以下、5mol%以上15mol%以下、又は8mol%以上12mol%以下とすることで、CeFeO3等の不純物の生成を抑制しつつ、セリア−ジルコニア複合酸化物に対する鉄の添加効果を十分に発揮させ、結果として耐熱性に優れさらには顕著に高いOSC能、特には低温下において顕著に高いOSC能を有する酸素吸放出材を得ることが可能となる。
なお、本発明において「セリア−ジルコニア複合酸化物中の鉄含有量」とは、本発明の酸素吸放出材を製造する際に導入されるセリウム、ジルコニウム、鉄、場合により鉄以外の追加の添加元素の各塩中に含まれる金属元素の合計モル数に対する鉄元素のモル数の割合を言うものである。
本発明におけるセリア−ジルコニア複合酸化物は、例えば、下記式(2)によって表すこともできる。
Ce2-aFexZr2-bFeyz (2)
ここで、0≦a<2、0≦x<2、0≦b<2及び0≦y<2、ただし0<x+y<2であり、
好ましくは、0<a≦0.4、0<x≦0.4、0<b≦0.4及び0<y≦0.4、ただし0<x+y≦0.4及びa−b=x−yである。
なお、zはセリア−ジルコニア複合酸化物全体の電荷がゼロになるように定まる値である。
本発明におけるセリア−ジルコニア複合酸化物は、鉄以外の追加の添加元素をさらに含んでもよい。例えば、本発明におけるセリア−ジルコニア複合酸化物は、アルカリ土類金属、及びセリウム以外の他の希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の添加元素をさらに含むことができる。このような追加の添加元素を含めることで、当該セリア−ジルコニア複合酸化物の耐熱性をさらに向上させることができる。
本発明におけるセリア−ジルコニア複合酸化物は、共沈法等の従来公知の方法を用いて調製することが可能である。例えば、当該セリア−ジルコニア複合酸化物を構成する各金属、例えば、セリウム、ジルコニウム、鉄、場合により鉄以外の追加の添加元素の塩を溶解した混合溶液に、アンモニア水等のアルカリ性物質を加えて共沈させ、得られた沈殿物を必要に応じて洗浄等した後、所定の温度で乾燥及び焼成して各金属の酸化物が固溶した複合酸化物を形成する。
次いで、得られた複合酸化物を、例えば窒素雰囲気中、所定の温度、特には1000℃又はそれよりも高い温度、例えば1300℃の温度で所定の時間にわたって還元処理することにより、鉄がのセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに少なくとも部分的に置換したパイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有するセリア−ジルコニア複合酸化物を調製することができる。なお、例えば、鉄を含まないセリウムとジルコニウムのみからなるセリア−ジルコニア複合酸化物の場合には、パイロクロア相を形成するためには、より強い還元雰囲気、例えば水素雰囲気のもとで高温処理することが必要な場合がある。しかしながら、本発明における鉄がのセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに少なくとも部分的に置換したセリア−ジルコニア複合酸化物では、窒素雰囲気等のより穏やかな還元雰囲気のもとで高温処理することで十分にパイロクロア相を形成することが可能である。
なお、本発明におけるセリア−ジルコニア複合酸化物を調製する際に導入されるセリウム、ジルコニウム及び鉄の各金属塩の仕込み比を適切に選択することにより、セリウムサイトとジルコニウムサイトの一方又は両方に鉄が置換されたパイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物を調製することが可能である。
例えば、パイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有するセリア−ジルコニア複合酸化物の化学量論組成に対してジルコニウム塩の仕込み量を十分少なくし、例えばその減少分と同等、特にはそれよりも少ない量の鉄塩を導入することによりジルコニウムサイトの一方のみに鉄が置換されたセリア−ジルコニア複合酸化物を調製することも可能である。また、セリウム、ジルコニウム及び鉄の各金属塩の仕込み比を適切に制御することにより、鉄のほとんどすべてをセリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイトとジルコニウムサイトに確実に置換させることも可能である。この場合には、上で説明したようなCeFeO3等の不純物の生成を確実に抑制することができるので、最終的に得られる酸素吸放出材において非常に高いOSC能を達成することが可能である。
本発明の酸素吸放出材は、上記のとおり、従来公知のセリア−ジルコニア複合酸化物等に比べて、顕著に改善されたOSC能を有するので、これを一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の酸化及び/又は窒素酸化物(NOx)の還元に対して触媒活性を示す触媒金属と組み合わせて使用した場合には、排ガス浄化性能が顕著に改善された排ガス浄化用触媒を得ることができる。なお、このような触媒金属としては、COやHCの酸化及び/又はNOxの還元に対して触媒活性を示す任意の触媒金属を使用することができ、好ましくは排ガス浄化用触媒の技術分野において一般的に用いられている触媒金属、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)等の白金族元素を使用することができる。
また、上記の排ガス浄化用触媒は、例えば、本発明の酸素吸放出材に上に挙げた触媒金属を、従来公知のいわゆる含浸、蒸発・乾固等において担持することによって調製することができる。あるいはまた、上記の排ガス浄化用触媒は、本発明の酸素吸放出材と、上に挙げた触媒金属を他の金属酸化物に担持してなる触媒とを粉末状態においてそれらが十分に均一になるまで単に物理的に混合することにより調製してもよい。なお、上記のようにして得られた排ガス浄化用触媒の粉末は、必要に応じて、例えば、高圧下でプレスしてペレット状に成形するか、又は所定のバインダ等を加えてスラリー化し、これをコージェライト製ハニカム基材等の触媒基材上に塗布することにより使用することができる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例では、パイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有するセリア−ジルコニア複合酸化物に鉄を添加した酸素吸放出材を調製し、その特性及びOSC能について調べた。
[実施例1]
[Ce1.7Fe0.4Zr1.6の複合酸化物の調製]
まず、セリウム塩としての硝酸二アンモニウムセリウム(IV)((NH42Ce(NO36)3.50gとジルコニウム塩としてのジクロロオキソジルコニウム(IV)(ZrOCl2・8H2O)1.94gをそれぞれ25mLの純水に溶解した。次いで、鉄塩としての塩化鉄(III)(FeCl3)0.245gを50mLの純水に溶解した。次いで、得られた各水溶液を混合し、300rpmで10分間攪拌して均一な混合溶液を得た。次いで、この混合溶液に3Mのアンモニア水を40mL添加し、さらに300rpmで攪拌して沈殿溶液を得た。
次に、この沈殿溶液を吸引濾過した後、純水で洗浄し、この濾過及び洗浄の操作を3回繰り返して沈殿物を得た。次いで、得られた沈殿物を80℃で一晩乾燥した後、空気中500℃で2時間焼成することにより酸化物固溶体を得た。最後に、得られた酸化物固溶体を窒素雰囲気中1300℃で1時間熱処理し、さらに空気中500℃で1時間熱処理することにより、Ce1.7Fe0.4Zr1.6(仕込み比)の複合酸化物からなる酸素吸放出材を得た。
[実施例2]
[Ce2Fe0.4Zr1.6の複合酸化物の調製]
各金属塩の仕込み比を変更したこと以外は実施例1と同様にして、Ce2Fe0.4Zr1.6(仕込み比)の複合酸化物からなる酸素吸放出材を得た。
[比較例1]
[Ce2Zr2の複合酸化物の調製]
鉄塩としての塩化鉄(III)(FeCl3)を導入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、セリアとジルコニアからなる酸化物固溶体を得た後、5%の水素雰囲気中1300℃で1時間熱処理し、さらに空気中500℃で1時間熱処理することにより、Ce2Zr2(仕込み比)の複合酸化物からなる酸素吸放出材を得た。
[比較例2]
[CeLaZr2の複合酸化物の調製]
塩化鉄(III)(FeCl3)の代わりに塩化ランタン七水和物(LaCl3・7H2O)を使用し、さらに各金属塩の仕込み比を変更したこと以外は実施例1と同様にして、CeLaZr2(仕込み比)の複合酸化物からなる酸素吸放出材を得た。
[比較例3]
[Ce2FeZrの複合酸化物の調製]
各金属塩の仕込み比を変更したこと以外は実施例1と同様にして、Ce2FeZr(仕込み比)の複合酸化物からなる酸素吸放出材を得た。
[X線回折による酸素吸放出材の分析]
実施例1及び2並びに比較例1〜3の各酸素吸放出材について、X線回折(XRD)による測定を行った。その結果を図2に示す。
図2は、実施例1及び2並びに比較例1〜3の各酸素吸放出材に関するX線回折パターンを示す図である。図2の結果から明らかなように、すべての酸素吸放出材においてパイロクロア(111)面に帰属される回折ピークの存在が確認され、それゆえすべての酸素吸放出材においてパイロクロア相が生成していることを確認した。また、図2において不純物(*)の回折ピークが検出された実施例1及び2並びに比較例3の酸素吸放出材に関するX線回折パターンを拡大したものを図3に示す。
図3において2θ=22.5°付近に検出される回折ピークはCeFeO3に帰属されるものである。そして、そのピーク強度は鉄の含有量が最も高い比較例3の酸素吸放出材(Ce2FeZr)で非常に大きく、実施例2の酸素吸放出材(Ce2Fe0.4Zr1.6)で大幅に減少し、実施例1の酸素吸放出材(Ce1.7Fe0.4Zr1.6)ではほとんど検出できない程度にまで減少した。
比較例3の酸素吸放出材では、鉄の含有量が非常に多いために、ジルコニウムサイトに入りきらない鉄の一部がセリウムサイトに置換し、このような置換によって押し出されたセリウムがジルコニウムサイトにもセリウムサイトにも置換しなかった鉄と反応してCeFeO3が不純物として生成したものと考えられる。また、実施例2の酸素吸放出材においても同様の反応によってCeFeO3が生成したと考えられるが、鉄の含有量が少ないためにCeFeO3の生成がわずかであったと考えられる。一方で、実施例1の酸素吸放出材では、実施例2と比較してセリウムの仕込み量が少なく、すなわちセリウムサイトに空サイトを設けた仕込み比となっているために、鉄のすべてがジルコニウムサイトとセリウムサイトに置換し、その結果としてCeFeO3等の不純物がほとんど生成しなかったと考えられる。
[OSC能の評価]
次に、実施例1及び比較例1の各酸素吸放出材についてH2−TPR(昇温還元)測定を実施し、それらのOSC能を評価した。具体的には、まず、実施例1及び比較例1の各酸素吸放出材について、図4に示す測定プログラムにより10%O2/He流中で酸素を吸蔵させた。次いで、Heガスで30分間パージした後、1%H2/He流中10℃/分で室温(R.T.)から950℃まで昇温する際に各酸素吸放出材から放出された酸素と雰囲気中の水素との反応によって消費されるH2量を測定し、その全H2消費量(μmol/g)を各酸素吸放出材のOSC能として評価した。その結果を下表1に示す。なお、具体的な測定条件は以下のとおりである。
測定装置: 日本ベル製 全自動昇温脱離スペクトル装置 TPD−1ATw
試料量: 200mg
測定条件: 図4に示す測定プログラムにおいて測定
測定範囲: 室温〜950℃
測定雰囲気: 1%H2/He 60mL/分
検出フラグメント:m/z=2
Figure 2015080736
表1の結果から明らかなように、実施例1の酸素吸放出材では、比較例1の酸素吸放出材に比べて、セリウム量が少ないにもかかわらず、酸素吸放出材1gあたり約1.55倍の全H2消費量すなわちOSC能を達成することができた。
[耐久試験後のOSC能の評価]
次に、実施例1及び2並びに比較例2の各酸素吸放出材について耐久試験を行い、当該耐久試験後における各酸素吸放出材のOSC能を評価した。具体的には、耐久試験は、各酸素吸放出材を大気中1000℃で5時間保持することにより行った。その後、上記と同様にして、各酸素吸放出材についてH2−TPR測定を実施し、それらのOSC能を評価した。その結果を下表2及び図5及び6に示す。
Figure 2015080736
ここで、表2の結果を参照すると、実施例1及び2の酸素吸放出材では、全H2消費量がそれぞれ2330μmol/g及び2010μmol/gであり、特に実施例1の酸素吸放出材では、耐久試験を行っていない表1の結果(2836μmol/g)と比較して、耐久試験後においても全H2消費量が大きく低下することなく、それゆえ高いOSC能を維持していることがわかる。これに対し、Ceの一部をLaで置換した比較例2の酸素吸放出材(特開2005−231951号公報の実施例1に対応)では、本発明の酸素吸放出材と比較して、半分以下の全H2消費量しか達成することができなかった。
また、表2の補正後H2消費量のデータを参照すると、各酸素吸放出材の間でセリウムの量が同一になるように全H2消費量を補正した場合においても、実施例1及び2の酸素吸放出材が、比較例2の酸素吸放出材に比べて、耐久試験後においてより高いH2消費量すなわちOSC能を維持していることがわかる。これらの結果は、特にFeの添加によるκ相構造中のCeとZrの再配列抑制効果で酸素吸放出材の耐熱性が向上したこと、並びにFeの添加によって実施例1及び2の酸素吸放出材にFeが有するOSC能がさらに付加されたことに起因するものと考えられる。
図5は、実施例1及び2並びに比較例2の各酸素吸放出材に関するH2−TPR曲線であり、各酸素吸放出材1gあたりのH2消費量(μmol/g)を示している。一方、図6は、図5における各酸素吸放出材中のCeのモル数を2molになるように補正した場合のH2消費量(mmol/2mol−Ce)を示している。
ここで、図5及び6を参照すると、比較例2の酸素吸放出材では、約800℃を超える高温下では高いOSC能を示したものの、約750℃以下の低温下では十分なOSC能を発揮することができなかったのに対し、実施例1及び2の酸素吸放出材では、このような低温下においても非常に高いOSC能を示すことがわかった。これらの結果は、Feの添加による上記のCeとZrの再配列抑制効果やFeが有するOSC能の付加に加え、Zrサイトの一部によりサイズの小さいFeが置換したことで結晶格子の歪みが緩和され、その結果としてCe4+からCe3+への還元がより容易になったことに起因するものと考えられる。

Claims (6)

  1. セリア−ジルコニア複合酸化物に鉄を添加してなる酸素吸放出材であって、
    前記セリア−ジルコニア複合酸化物がパイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有しかつ貴金属を含有せず、前記鉄が該セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに少なくとも部分的に置換してなることを特徴とする、酸素吸放出材。
  2. 前記鉄が前記セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイトとジルコニウムサイトの両方に置換されたことを特徴とする、請求項1に記載の酸素吸放出材。
  3. 前記セリア−ジルコニア複合酸化物中の鉄含有量が、該セリア−ジルコニア複合酸化物中に含まれる全金属元素に対して0mol%超25mol%未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の酸素吸放出材。
  4. 前記セリア−ジルコニア複合酸化物中の鉄含有量が、該セリア−ジルコニア複合酸化物中に含まれる全金属元素に対して5mol%以上15mol%以下であることを特徴とする、請求項3に記載の酸素吸放出材。
  5. 前記セリア−ジルコニア複合酸化物中の鉄含有量が、該セリア−ジルコニア複合酸化物中に含まれる全金属元素に対して8mol%以上12mol%以下であることを特徴とする、請求項4に記載の酸素吸放出材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素吸放出材を含む、排ガス浄化用触媒。
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