JP2019131455A - 酸素貯蔵材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)と十分に高い酸素放出速度を有する酸素貯蔵材料を提供する。【解決手段】セリア−ジルコニア−鉄系複合酸化物からなり、化学式(1):CexZryFezOδ(1)(化学式(1)中、x、y及びzはそれぞれ、x=0.3〜0.7、y=0.15〜0.7(但し、y=0.7は含まない。)、z=0〜0.15(但し、z=0は含まない。)、x+y+z=1の条件を満たす数であり、δは1.9〜2.0の数である。)で表される組成を有するものであり、X線回折パターンから求められる(222)面に帰属するピーク強度(I222)に対する(111)面に帰属する超格子ピークの強度(I111)の比率が以下の条件(2):1≦{(I111/I222)×100}≦5(2)を満たすものであり、かつ、セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の比表面積が5〜50m2/gである、ことを特徴とする酸素貯蔵材料。【選択図】なし

Description

本発明は、酸素貯蔵材料及びその製造方法に関する。
自動車エンジンなどの内燃機関から排出される排ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化すると同時に、窒素酸化物(NOx)を還元できる排ガス浄化触媒としていわゆる三元触媒が知られている。
そして、排ガス浄化触媒を用いて排ガスを浄化するにあたって、排ガス中の酸素濃度の変動を吸収して排ガス浄化能力を高めるために、排ガス中の酸素濃度が高いときに酸素を吸蔵でき、排ガス中の酸素濃度が低いときに酸素を放出できる酸素貯蔵能(Oxygen Storage Capacity(OSC))を有する材料を、排ガス浄化触媒の担体や助触媒として用いることが知られている。
このようなOSCを有する酸素貯蔵材料としては、従来からセリアが好適に用いられており、近年では、セリアを含有する様々な種類の複合酸化物が研究され、いわゆる共沈法、逆共沈法、水熱合成法、熔融法、固相法などによって得られる種々のセリア−ジルコニア系複合酸化物が開発されている。
例えば、特開2015−182931号公報(特許文献1)には、セリウムとジルコニウムとこれら以外の鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属元素とを含み、結晶構造としてパイロクロア相を含むセリア−ジルコニア系複合酸化物をいわゆる熔融法により製造する方法が開示されている。
また、特開2015−080736号公報(特許文献2)には、セリア−ジルコニア複合酸化物に鉄を添加してなる酸素吸放出材であって、前記セリア−ジルコニア複合酸化物がパイロクロア相、κ相又はそれらの組み合わせを有しかつ貴金属を含有せず、前記鉄が該セリア−ジルコニア複合酸化物中のセリウムサイト及び/又はジルコニウムサイトに少なくとも部分的に置換してなる酸素吸放出材をいわゆる共沈法及び還元雰囲気での高温処理(共沈法−高温還元処理)により製造する方法が開示されている。
しかしながら、近年は、排ガス浄化用触媒に対する要求特性が益々高まっており、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができると共に酸素放出速度が十分に高い酸素貯蔵材料が求められるようになっており、特許文献1や特許文献2に記載のような従来の酸素貯蔵材料では必ずしも十分なものではなかった。
特開2015−182931号公報 特開2015−080736号公報
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができると共に酸素放出速度が十分に高い酸素貯蔵材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、セリア−ジルコニア系複合酸化物に添加する元素として鉄を選択して研究したところ、いわゆる共沈法、逆共沈法、水熱合成法といった方法ではセリア−ジルコニア複合酸化物に鉄を固溶させることが困難であり、特に酸素貯蔵能(OSC)に関して十分なものではないことを見出した。一方、特許文献1に記載の高温処理を含む熔融法や特許文献2に記載の還元雰囲気での高温処理を伴う製法においては、セリア−ジルコニア複合酸化物に鉄が固溶するものの、得られる複合酸化物の比表面積の上限が現実には1m/g程度と低く、特に酸素放出速度に関して十分なものではないことを見出した。
そして、本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、セリア−ジルコニア系複合酸化物に添加する元素として鉄を選択し、かつ、いわゆる溶液燃焼合成法によりセリウム、ジルコニウム及び鉄を含む複合酸化物を製造することによって、セリア−ジルコニア複合酸化物に十分な量の鉄を固溶させることが可能となり、さらに得られる複合酸化物の比表面積が十分に大きくなることによって、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)が発揮されると共に酸素放出速度が十分に高い酸素貯蔵材料が得られるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の酸素貯蔵材料は、セリウム、ジルコニウム及び鉄を含むセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物からなる酸素貯蔵材料であって、
前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記鉄の少なくとも一部が固溶しており、
前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物が、以下の化学式(1):
CeZrFeδ (1)
(化学式(1)中、x、y及びzはそれぞれ、x=0.3〜0.7、y=0.15〜0.7(但し、y=0.7は含まない。)、z=0〜0.15(但し、z=0は含まない。)、x+y+z=1の条件を満たす数であり、δは1.9〜2.0の数である。)
で表される組成を有するものであり、
前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物が、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I111)の比率(I111/I222)が以下の条件(2):
1≦{(I111/I222)×100}≦5 (2)
を満たすものであり、かつ、
前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の比表面積が5〜50m/gであることを特徴とするものである。
また、本発明の酸素貯蔵材料の製造方法は、
セリウム塩化物、セリウム硝酸塩、セリウム硫酸塩、セリウム酢酸塩及びセリウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のセリウム化合物と、
ジルコニウム塩化物、ジルコニウム硝酸塩、ジルコニウム硫酸塩、ジルコニウム酢酸塩及びジルコニウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のジルコニウム化合物と、
鉄塩化物、鉄硝酸塩、鉄硫酸塩、鉄酢酸塩及び鉄酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の鉄化合物と、
親水性有機化合物と、
を溶媒中で混合し、得られた混合物から溶液燃焼合成によって前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物からなる本発明の酸素貯蔵材料を得ることを特徴とする方法である。
本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法においては、前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の平均結晶子径が20〜100nmであることが好ましい。
また、本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法においては、前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記鉄の30at%以上が固溶していることが好ましい。
さらに、本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法においては、前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物がカチオン秩序構造を有していることが好ましく、そのカチオン秩序構造がパイロクロア型であることがより好ましい。
なお、このような本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法によって前記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の酸素貯蔵材料の製造方法においては、セリア−ジルコニア系複合酸化物に添加する元素として鉄を選択し、かつ、いわゆる溶液燃焼合成法によりセリウム、ジルコニウム及び鉄を含む複合酸化物を製造することによって、セリア−ジルコニア複合酸化物に十分な量の鉄を含有させるとともに固溶させることが可能となり、さらに高温処理をしないため比表面積が十分に大きい複合酸化物が得られるようになる。そのため、本発明の酸素貯蔵材料を構成するセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物においては、Ceサイトと鉄が固溶しているZrサイトとの相対的なイオン半径の差によってカチオン秩序化が生じ、比較的結合力の弱い酸素サイトが形成されるようになり、さらに比表面積が十分に大きいため、本発明の酸素貯蔵材料においては十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)が発揮されると共に十分に高い酸素放出速度が達成されるようになると本発明者らは推察する。
本発明によれば、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができると共に酸素放出速度が十分に高い酸素貯蔵材料及びその製造方法を提供することが可能となる。
実施例1〜2及び比較例1〜5で得られた複合酸化物のX線回折パターンを示すグラフであり、(a)はXRDの全角パターン、(b)は2θ=32〜37°のパターンである。 実施例1〜2及び比較例1〜5で得られた複合酸化物の格子定数の解析結果を示すグラフである。 実施例1〜2及び比較例1〜2、6〜8で得られた複合酸化物の600℃における酸素吸放出量(OSC)を示すグラフである。 実施例1〜2及び比較例1〜2、6〜8で得られた複合酸化物の600℃における酸素放出速度(O放出速度)を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の酸素貯蔵材料について説明する。すなわち、本発明の酸素貯蔵材料は、セリウム、ジルコニウム及び鉄を含むセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物からなる酸素貯蔵材料であって、
前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記鉄の少なくとも一部が固溶しており、
前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物が、以下の化学式(1):
CeZrFeδ (1)
(化学式(1)中、x、y及びzはそれぞれ、x=0.3〜0.7、y=0.15〜0.7(但し、y=0.7は含まない。)、z=0〜0.15(但し、z=0は含まない。)、x+y+z=1の条件を満たす数であり、δは1.9〜2.0の数である。)
で表される組成を有するものであり、
前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物が、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I111)の比率(I111/I222)が以下の条件(2):
1≦{(I111/I222)×100}≦5 (2)
を満たすものであり、かつ、
前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の比表面積が5〜50m/gであることを特徴とするものである。
本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物は、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)及び鉄(Fe)を含む複合酸化物である。セリア−ジルコニア複合酸化物に鉄を添加しても、いわゆる固相合成法、水熱合成法といった方法ではセリア−ジルコニア複合酸化物に鉄を固溶させることが困難であるため鉄の添加は酸素貯蔵能(OSC)の向上に十分に寄与しないのに対し、本発明においては、後述するようにいわゆる溶液燃焼合成法によりセリウム、ジルコニウム及び鉄を含む複合酸化物を製造することによって、セリア−ジルコニア複合酸化物に十分な量の鉄を含有させるとともに固溶させることが可能となり、それによって得られる複合酸化物のOSCが著しく向上する。したがって、本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物においては、前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記鉄の少なくとも一部が固溶していることが必要である。なお、このように前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記鉄の少なくとも一部が固溶していることは、リートベルト解析で2相解析をすることによって確認することができる。
本発明の酸素貯蔵材料においては、前記鉄のうちの少なくとも一部が前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に固溶していればよいが、酸素貯蔵能(OSC)がより向上するという観点から、前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記鉄の30at%以上が固溶していることが好ましく、前記鉄の40at%以上が固溶していることが特に好ましい。
なお、このようにセリウムとジルコニウムとの複合酸化物への鉄の固溶率は、鉄(Fe)の仕込み量を基準として、前記複合酸化物中に固溶している鉄の量の比率(at%)であり、後述するX線回折(XRD)測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから市販の解析ソフト(例えば、リートベルト解析ソフト「Jana2006」)を用いて二相解析することで算出することができる。なお、このようなX線回折(XRD)測定としては、測定装置として理学電機社製の商品名「RINT−Ultima」を用いて、CuKα線を用い、40KV、40mA、2θ=5°/minの条件で測定する方法を採用することができる。また、回折線の「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。
このような本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の組成は、以下の化学式(1):
CeZrFeδ (1)
(化学式(1)中、x、y及びzはそれぞれ、x=0.3〜0.7、y=0.15〜0.7(但し、y=0.7は含まない。)、z=0〜0.15(但し、z=0は含まない。)、x+y+z=1の条件を満たす数であり、δは1.9〜2.0の数である。)
で表される組成を有するものである。Ceの含有量が前記下限未満では十分なOSCが得られにくくなり、他方、前記上限を超えると単相として得ることができなくなる。また、Zrの含有量が前記下限未満では十分なOSCが得られにくくなり、他方、前記上限を超えると単相として得ることができなくなる。さらに、Feの含有量が前記下限未満ではFeの添加によるOSC及び酸素放出速度の向上効果が十分に得られなくなり、他方、前記上限を超えるとFeの固溶率が低下してFeの固溶により形成されるカチオン秩序構造によるOSCの向上効果が十分に得られなくなる。また、同様の観点から、xは、より好ましくは0.4〜0.6であり、yは、より好ましくは0.25〜0.67であり、zは、より好ましくは0.03〜0.15である。
また、化学式(1)中のδは酸素原子(O)の組成であって、含まれる元素の量と価数から算出することによって1.9〜2.0の範囲内で変動するが、δは1.95〜2.0であることがより好ましい。
また、本発明においては、いわゆる溶液燃焼合成法によりセリウム、ジルコニウム及び鉄を含む複合酸化物を製造することによって、前述の通りセリア−ジルコニア複合酸化物に十分な量の鉄を含有させかつ固溶させることが可能となるとともに、比表面積が十分に大きい複合酸化物が得られるようになるため、得られる複合酸化物のOSC及び酸素放出速度が著しく向上する。したがって、本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の比表面積は5〜50m/gであることが必要である。このような比表面積が前記下限未満ではOSC及び酸素放出速度の向上効果が十分に得られなくなり、他方、前記上限を超えるとOSCを測定するための温度域(例えば600℃)において分相しやすくなる。また、同様の観点から、本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の比表面積は5〜25m/gであることがより好ましい。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができ、例えば、市販の全自動比表面積測定装置(マイクロデータ社製、マイクロソープ MODEL−4232)を用いて得ることができる。
さらに、本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物においては、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I111)の比率(I111/I222)が以下の条件(2):
1≦{(I111/I222)×100}≦5 (2)
を満たしていることが必要である。前記強度比(I111/I222)が前記下限未満では前記鉄(Fe)の固溶により形成されるカチオン秩序構造によるOSCの向上効果が十分に得られなくなり、他方、前記上限を超えるとOSCを測定するための温度域(例えば600℃)において分相しやすくなる。また、OSCの向上がより十分に得られるという観点から、前記強度比{(I111/I222)×100}が2以上であることがより好ましく、他方、OSCを測定するための温度域(例えば600℃)における分相がより十分に防止されるという観点から、前記強度比{(I111/I222)×100}が4以下であることがより好ましい。
さらに、本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の平均結晶子径は、20〜100nmであることが好ましく、20〜60nmであることがより好ましい。このような平均結晶子径が前記下限未満ではOSCを測定するための温度域(例えば600℃)において分相しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとOSC及び酸素放出速度の向上効果が十分に得られにくくなる傾向にある。なお、このような平均結晶子径は、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる2θ=29°付近の回折線の半値幅を用い、市販の解析ソフト(例えば、リートベルト解析ソフト「Jana2006」)を用いてシェラー式に基づいて算出することができる。
また、本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物としては、カチオン秩序構造を有していることが好ましい。すなわち、セリア−ジルコニア系複合酸化物は基本的に蛍石構造を有しているが、本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物においては、空間群が蛍石構造であるFm−3mからカチオン秩序構造であるP312やF−43mに変化して、カチオン秩序構造が形成されていることを示す(111)面に帰属する回折線の超格子ピークが確認されることが好ましい。このような本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物においては、Ceサイトと鉄(Fe)が固溶しているZrサイトとの相対的なイオン半径の差によってカチオン秩序化が生じ、比較的結合力の弱い酸素サイトが形成されるようになるため、酸素貯蔵能(OSC)及び酸素放出速度がより向上する傾向にある。
さらに、本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物としては、パイロクロア相を含んでいることが好ましい。本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物のカチオン秩序構造がパイロクロア型であると、酸素が抜けるために必要なエネルギーの低下により、OSC及び酸素放出速度がより向上する傾向にある。なお、パイロクロア構造の空間群は一般的にFd−3mであり、X線回折(XRD)測定においてパイロクロア構造に由来するピーク(CuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が14.0°〜16.0°に現れるピーク)の存在を認識することによって、複合酸化物がパイロクロア型のカチオン秩序構造であることを確認することができる。
また、本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物においては、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有していてもよい。このような元素を含有させることで、本発明にかかるセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物を排ガス浄化用触媒の担体として用いた場合に、より高い排ガス浄化能が発揮される傾向にある。このようなセリウム以外の希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などが挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、La、Nd、Pr、Y、Scが好ましく、La、Y、Ndがより好ましい。また、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、Mg、Ca、Baが好ましい。このような電気陰性度の低いセリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類金属元素は、貴金属との相互作用が強いため、酸化雰囲気において酸素を介して貴金属と結合し、貴金属の蒸散やシンタリングを抑制し、排ガス浄化の際の活性点である貴金属の劣化を十分に抑制することができる傾向にある。
さらに、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有する場合においては、前記元素の含有量が、セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物中に1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。このような元素の含有量が前記下限未満では、得られた複合酸化物に貴金属を担持させた場合に、貴金属との相互作用を十分に向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸素貯蔵能が低下してしまう傾向にある。
本発明の酸素貯蔵材料は、前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物からなるものであり、優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができると共に、酸素放出速度が十分に高い。そのため、本発明の酸素貯蔵材料は、排ガス浄化触媒の担体や助触媒として好適に用いられる。このような本発明の酸素貯蔵材料を用いた好適な例としては、前記本発明の酸素貯蔵材料からなる担体と、前記担体に担持された貴金属とからなる排ガス浄化用触媒が挙げられる。このような貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金、銀等が挙げられる。また、他の例としては、他の触媒担体微粒子に貴金属が担持された排ガス浄化触媒の周囲に、前記本発明の酸素貯蔵材料を配置してなるものが挙げられる。
次に、前記本発明の酸素貯蔵材料を製造するための本発明の方法について説明する。
本発明の酸素貯蔵材料の製造方法は、
セリウム塩化物、セリウム硝酸塩、セリウム硫酸塩、セリウム酢酸塩及びセリウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のセリウム化合物と、
ジルコニウム塩化物、ジルコニウム硝酸塩、ジルコニウム硫酸塩、ジルコニウム酢酸塩及びジルコニウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のジルコニウム化合物と、
鉄塩化物、鉄硝酸塩、鉄硫酸塩、鉄酢酸塩及び鉄酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の鉄化合物と、
親水性有機化合物と、
を溶媒中で混合し、得られた混合物から溶液燃焼合成によって前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物からなる本発明の酸素貯蔵材料を得ることを特徴とする方法である。
また、目的とするセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物にセリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有させる場合は、その元素の化合物(その元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種)を更に添加して混合してもよい。
本発明で採用する溶液燃焼合成法は、金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の金属化合物を酸化剤、親水性有機化合物を還元剤(溶液燃焼合成法においては「燃料」という)とする液相酸化還元反応の一種である。具体的には、原料(酸化剤及び燃料)を水などの溶媒中で混合し、得られた混合物(溶液又はゲル)を加熱すると酸化剤と燃料との間で急激な発熱反応が生じ、そのまま所定温度で燃焼させることによって用いた金属の複合酸化物の微粉体が得られる。
本発明においては、溶液燃焼合成法における酸化剤として、セリウム塩化物、セリウム硝酸塩、セリウム硫酸塩、セリウム酢酸塩及びセリウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のセリウム化合物と、ジルコニウム塩化物、ジルコニウム硝酸塩、ジルコニウム硫酸塩、ジルコニウム酢酸塩及びジルコニウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のジルコニウム化合物と、鉄塩化物、鉄硝酸塩、鉄硫酸塩、鉄酢酸塩及び鉄酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の鉄化合物とを用いる。また、本発明においては、溶液燃焼合成法における酸化剤として、セリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩と鉄硝酸塩とを用いることが好ましい。このようなセリウム硝酸塩としては、特に制限されないが、例えばCe(NH(NOが好ましい。また、ジルコニウム硝酸塩としては、特に制限されないが、例えばZrO(NO・2HOが好ましい。さらに、鉄硝酸塩としては、特に制限されないが、例えばFe(NO・9HOが好ましい。
また、溶液燃焼合成法における還元剤(燃料)として用いる親水性有機化合物としては、特に制限されないが、グリシン、グルコース、尿素、アラニン、オキサリルヒドラジンなどが好ましい。さらに、溶液燃焼合成法における溶媒としては、水が一般的に好適に用いられるが、硝酸イオンを含む水溶液(例えば、硝酸アンモニウムの水溶液)やエタノールなどの親水性有機溶媒であってもよい。
本発明の酸素貯蔵材料の製造方法においては、先ず、前記酸化剤と前記還元剤(燃料)とを前記溶媒中で混合する。その際、目的とするセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の組成(ターゲット組成)に応じて金属原子が化学量論比となるように、酸化剤として用いる前記金属化合物(セリウム化合物、ジルコニウム化合物及び鉄化合物)を混合することが好ましい。
また、溶液燃焼合成法においては、酸化剤と還元剤(燃料)の割合は重要である。一般に、酸化剤が還元されて金属又は金属酸化物になり、燃料が酸化されてCOやHOまで還元されると仮定した化学量論での酸化剤と還元剤(燃料)のモル比([酸化剤]/[還元剤])が1つの指標となる。この化学量論的モル比は用いる酸化剤や還元剤の種類によって異なる。溶液燃焼合成のために供給される原料のモル比(酸化還元反応に関与する酸化剤と還元剤(燃料)のモル比([酸化剤]/[還元剤])が化学量論的モル比に近くなるように酸化剤と還元剤とを混合することが好ましいが、還元剤(燃料)が過剰な状態で反応させて未反応物は燃焼反応の際に除去するようにしてもよい。
さらに、前記酸化剤及び前記還元剤(燃料)を混合する前記溶媒の量は、特に制限されないが、前記酸化剤と前記還元剤とを溶解させることが可能な最少量以上の量であればよく、最少量に近い(最少量の1〜2倍程度)ことが好ましい。
次に、本発明の酸素貯蔵材料の製造方法においては、前記酸化剤と前記還元剤(燃料)とを前記溶媒中で混合して得られた混合物から、沈殿処理なしで直接燃焼反応を経て合成することによって前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物からなる本発明の酸素貯蔵材料が得られる。その際、燃焼反応に用いられる混合物は、用いた前記酸化剤と前記還元剤とが溶媒に溶解した溶液であることが好ましいが、酸化還元反応の中間生成物が生成したゲルであってもよい。また、燃焼反応の温度及び時間は、特に制限されないが、200〜600℃の温度範囲で1〜5時間程度であることが好ましい。さらに、燃焼反応の際の雰囲気は、特に制限されず、大気中であってもよいが、アルゴン、窒素、ヘリウムなどの不活性雰囲気であってもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
試薬としては以下のものを用いた。
(1)セリウム硝酸塩:Ce(NH(NO(純度99.5%、和光純薬工業社製)
(2)ジルコニウム硝酸塩:ZrO(NO・2HO(純度97%、和光純薬工業社製)
(3)鉄硝酸塩:Fe(NO・9HO(純度99.9%、和光純薬工業社製)
(4)親水性有機化合物:グリシン(CNO)(純度99%、和光純薬工業社製)
(5)酸塩化ジルコニウム:ZrOCl・8HO(純度98%、第一稀元素化学工業社製)
(6)塩化鉄:FeCl(純度99.9%、和光純薬工業社製)。
(実施例1)
ターゲット組成をCe0.50Zr0.45Fe0.051.975(組成式:Ce0.5Zr0.5−xFe2−0.5x中のx=0.05)として以下のようにして溶液燃焼合成法により前記組成を有するセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物を得た。
すなわち、先ず、前記ターゲット組成となるように化学量論比のセリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩と鉄硝酸塩とを表1に示す仕込み量で表1に示す最少量の純水に常温下にて溶解し、溶液が透明になったことを確認した後、全力チオン量に対して2当量に相当する表1に示す量のグリシンを溶解して混合液(溶液)を得た。次に、得られた混合液をアルミナ坩堝に移し、脱脂炉にて400℃で2時間大気中で焼成して前記組成を有するセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物の粉末を得た。得られた粉末の平均粒子径は約10μmであった。
(実施例2)
ターゲット組成をCe0.50Zr0.40Fe0.101.95(組成式:Ce0.5Zr0.5−xFe2−0.5x中のx=0.10)とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有するセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物の粉末を得た。
(比較例1)
ターゲット組成をCe0.50Zr0.30Fe0.201.90(組成式:Ce0.5Zr0.5−xFe2−0.5x中のx=0.20)とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有するセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物の粉末を得た。
(比較例2)
ターゲット組成をCe0.50Zr0.502.00(組成式:Ce0.5Zr0.5−x2(1−x)中のx=0)とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有するセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を得た。
(比較例3)
ターゲット組成をCe0.50Zr0.451.90(組成式:Ce0.5Zr0.5−x2(1−x)中のx=0.05)とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有するセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を得た。
(比較例4)
ターゲット組成をCe0.50Zr0.401.80(組成式:Ce0.5Zr0.5−x2(1−x)中のx=0.10)とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有するセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を得た。
(比較例5)
ターゲット組成をCe0.50Zr0.301.60(組成式:Ce0.5Zr0.5−x2(1−x)中のx=0.20)とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有するセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を得た。
(比較例6)
ターゲット組成をFe0.05/Ce0.50Zr0.451.90(組成式:Fe/Ce0.5Zr0.5−x2(1−x)中のx=0.05)とし、比較例3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末に塩化鉄水溶液(濃度:20質量%)を用いて粉末に鉄化合物を担持させた後に100℃で乾燥及び400℃で5時間大気中で熱処理して前記組成を有する鉄担持セリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を得た。
(比較例7)
ターゲット組成をFe0.10/Ce0.50Zr0.401.80(組成式:Fe/Ce0.5Zr0.5−x2(1−x)中のx=0.10)とし、比較例4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を用いたこと以外は比較例6と同様にして前記組成を有する鉄担持セリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を得た。
(比較例8)
ターゲット組成をFe0.20/Ce0.50Zr0.301.60(組成式:Fe/Ce0.5Zr0.5−x2(1−x)中のx=0.20)とし、比較例5で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を用いたこと以外は比較例6と同様にして前記組成を有する鉄担持セリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を得た。
<X線回折(XRD)測定>
実施例1〜2及び比較例1〜5で得られた複合酸化物の結晶相をX線回折法により測定した。なお、X線回折装置として理学電機社製の商品名「RINT−Ultima」を用いて、CuKα線を用い、40KV、40mA、2θ=5°/minの条件でX線回折パターンを測定した。
得られたX線回折パターンを図1に示す。図1において、(a)はXRDの全角パターン、(b)は2θ=32〜37°のパターンである。
得られたX線回折パターンから(222)面に帰属する回折線のメインピーク(2θ=28〜30°)の強度(I222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピーク(2θ=14〜16°)の強度(I111)の比率{(I111/I222)×100}を求めた結果を表2に示す。なお、比較例2〜5で得られた複合酸化物においては超格子ピークは確認されず、前記強度比{(I111/I222)×100}は0%であった。
また、得られたX線回折パターンからリートベルト解析ソフト「Jana2006」を用いて格子定数(Lattice parameter)の解析と平均結晶子径(Crystal size)と鉄(Fe)の固溶率を算出し、得られた結果を表2及び図2に示す。なお、図2は空間群がFm−3mの場合の格子定数であり、表2中の格子定数の欄におけるカッコ内の数字は標準誤差である。また、比較例6、7、8で得られた鉄担持セリア−ジルコニア複合酸化物の強度比(I111/I222)、格子定数、平均結晶子径、鉄固溶率は、それぞれ比較例3、4、5で得られた鉄を担持する前のセリア−ジルコニア複合酸化物から変化していなかった。
<比表面積の測定>
実施例1〜2及び比較例1〜5で得られた複合酸化物について、全自動比表面積測定装置(マイクロデータ社製、マイクロソープ MODEL−4232)を用いてBET1点法により比表面積(SSA)を測定した。得られた結果を表2に示す。なお、比較例6、7、8で得られた鉄担持セリア−ジルコニア複合酸化物の比表面積は、それぞれ比較例3、4、5で得られた鉄を担持する前のセリア−ジルコニア複合酸化物から変化していなかった。
<酸素吸放出量(OSC)及び酸素放出速度の測定>
実施例1〜2及び比較例1〜2、6〜8で得られた複合酸化物について以下のようにして酸素吸放出量及び酸素放出速度を測定した。すなわち、先ず、実施例及び比較例で得られた複合酸化物の粉末にテトラアンミン白金水酸化物の水溶液(濃度:5質量%)を用いて粉末に白金化合物を担持させた後に100℃で乾燥及び400℃で5時間大気中で熱処理して白金(Pt)担持量が1質量%の試料粉末を得た。そして、測定装置として熱重量測定装置「TGA‐50」(島津製作所社製)を用い、試料粉末0.010gに対して600℃の条件下においてリーンガス(O(5容量%)+N(残量))とリッチガス(H(5容量%)+N(残量))とを5分毎に交互に切り替えて流し、複合酸化物の質量上昇値の3回平均から酸素吸放出量及び酸素放出速度を求めた。得られた結果を表2、図3及び図4に示す。
<複合酸化物の評価結果>
図1及び図2に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法により実施例1〜2で得られた本発明のセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物においては、カチオン秩序構造が形成されていることを示す(111)面に帰属する回折線の超格子ピークが確認され、(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する超格子ピークの強度(I111)の比率{(I111/I222)×100}が1〜5の範囲内であることが確認された。
また、本発明の製造方法により実施例1〜2で得られた本発明のセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物においては、空間群は蛍石構造であるFm−3mからカチオン秩序構造であるF−43mに変化していることが確認された。また、このような複合酸化物においては、X線回折(XRD)測定においてカチオン秩序構造に由来するピーク(CuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が14.0°〜16.0°に現れるピーク)の存在が認められたことから、パイロクロア型のカチオン秩序構造であることが確認された。
さらに、本発明の製造方法により実施例1〜2で得られた本発明のセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物においては、鉄の固溶率の測定結果から、セリア−ジルコニア複合酸化物に鉄が十分に固溶した状態となっていることが確認された。また、実施例1〜2で得られた複合酸化物の格子定数は、鉄を含有していないこと以外は組成が同一の比較例2〜3で得られた複合酸化物の格子定数よりそれぞれ小さくなっていることから、Zrよりもイオン半径が小さいFeの少なくとも一部が固溶していることが確認された。
このような本発明の製造方法により実施例1〜2で得られた本発明のセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物においては、優れた酸素貯蔵能(OSC)が発揮されており、酸素放出速度も十分に高い酸素貯蔵材料であることが確認された。
それに対して、鉄の含有率(組成式中のz)を更に増加させた比較例1で得られたセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物においては、カチオン秩序構造が形成されていることを示す(111)面に帰属する回折線の超格子ピークが意外なことにほとんど確認されない程度となっており、(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する超格子ピークの強度(I111)の比率{(I111/I222)×100}が1より小さくなってしまっていることが確認された。また、比較例1で得られた複合酸化物においては、鉄の固溶率も低くなっており、平均結晶子径も小さくなっていることが確認された。そして、このような鉄の含有率(組成式中のz)が本発明の範囲を超えているセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物においては、酸素貯蔵能及び酸素放出速度がいずれも本発明の複合酸化物に比べて劣っていることが確認された。
また、鉄を含有していない比較例2〜5で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物においては、超格子ピークは確認されなかったことから、カチオン秩序構造は形成されていないことが確認された。そしてこのような鉄を含有していない比較例2〜5で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に、それ自体も酸素貯蔵能を有する鉄(Fe)をそれぞれ担持させた比較例6〜8で得られた鉄担持セリア−ジルコニア複合酸化物においては、鉄を担持していない比較例2で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物よりは酸素貯蔵能が増加しているものの、前述の実施例1〜2で得られた本発明のセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物よりは酸素貯蔵能及び酸素放出速度がいずれも劣っていることが確認された。それに対して、比較例8で得られた鉄担持セリア−ジルコニア複合酸化物においては、鉄の含有量が同じ前述の比較例1で得られたセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物と比べて、酸素貯蔵能及び酸素放出速度はやはり劣っているものの、両者の差はかなり小さくなっていることが確認された。このような結果から、本発明のセリア−ジルコニア−酸化鉄複合酸化物においては、鉄が本来有する酸素貯蔵能のみならず、イオン半径の小さい鉄がセリア−ジルコニア複合酸化物に固溶することによってカチオン秩序構造が誘起されたことにより、酸素貯蔵能が更に増長され、酸素放出速度もより高くなったものと本発明者らは推察する。
以上説明したように、本発明によれば、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができると共に酸素放出速度が十分に高い酸素貯蔵材料及びその製造方法を提供することが可能となる。
したがって、本発明の製造方法により得られる本発明の酸素貯蔵材料は、排ガス浄化用触媒の担体や助触媒、触媒雰囲気調整材等として好適に利用されるものである。

Claims (5)

  1. セリウム、ジルコニウム及び鉄を含むセリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物からなる酸素貯蔵材料であって、
    前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記鉄の少なくとも一部が固溶しており、
    前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物が、以下の化学式(1):
    CeZrFeδ (1)
    (化学式(1)中、x、y及びzはそれぞれ、x=0.3〜0.7、y=0.15〜0.7(但し、y=0.7は含まない。)、z=0〜0.15(但し、z=0は含まない。)、x+y+z=1の条件を満たす数であり、δは1.9〜2.0の数である。)
    で表される組成を有するものであり、
    前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物が、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I111)の比率(I111/I222)が以下の条件(2):
    1≦{(I111/I222)×100}≦5 (2)
    を満たすものであり、かつ、
    前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の比表面積が5〜50m/gである、
    ことを特徴とする酸素貯蔵材料。
  2. 前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物の平均結晶子径が20〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の酸素貯蔵材料。
  3. 前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記鉄の30at%以上が固溶していることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素貯蔵材料。
  4. 前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物がカチオン秩序構造を有しており、パイロクロア相を含んでいることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の酸素貯蔵材料。
  5. セリウム塩化物、セリウム硝酸塩、セリウム硫酸塩、セリウム酢酸塩及びセリウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のセリウム化合物と、
    ジルコニウム塩化物、ジルコニウム硝酸塩、ジルコニウム硫酸塩、ジルコニウム酢酸塩及びジルコニウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のジルコニウム化合物と、
    鉄塩化物、鉄硝酸塩、鉄硫酸塩、鉄酢酸塩及び鉄酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の鉄化合物と、
    親水性有機化合物と、
    を溶媒中で混合し、得られた混合物から溶液燃焼合成によって請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の前記セリア−ジルコニア−酸化鉄系複合酸化物からなる酸素貯蔵材料を得ることを特徴とする酸素貯蔵材料の製造方法。
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