JP2015074836A - 編地の編成方法 - Google Patents

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和也 上道
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Abstract

【課題】横編機を用いてブランケットスティッチ風の装飾部を備える編地を編成する編地の編成方法を提供する。
【解決手段】複数段のベース編目列10をウエール方向に連続させて、ベース編地1を完成させるまでの間に、装飾編糸Y8を用いてベース編地1の編幅方向端部よりも外側に起点編目21を編成する工程αと、起点編目21から延びる装飾編糸Y8を、ベース編目列10の編目である折返点編目11よりも編幅方向の内側の位置で折り返し、その折り返された装飾編糸Y8で折返点編目11を表裏から挟み込んだ状態とする工程βと、起点編目21のウエール方向に続けて留め編目23を編成する工程γと、を複数回繰り返し、ベース編地1の編幅方向縁部を装飾編糸Y8で縁取る。但し、nを1以上の自然数としたとき、n+1回目の起点編目21は、n回目の起点編目21のウエール方向に続く位置に編成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、編地を構成するベース編地にブランケットスティッチ風の装飾を施すことができる編地の編成方法に関する。
横編機を用いて種々の編組織を有する編地を編成することが行なわれている。例えば、特許文献1には、編地の本体であるベース編地部(ベース編地)に、ベース編地を編成するベース編糸とは異なる編糸(装飾編糸)を編み込む編地の編成方法、およびその編成方法で編成された編地が開示されている。装飾編糸は、ベース編地における表側の面上の2点間に掛け渡され、編地の表面を装飾する。
一方、編地の装飾の一形態として、ブランケットスティッチを挙げることができる。ブランケットスティッチは、図8に示すように、ベース編地100の縁に縫製糸Y6を縫い付けることで形成される装飾部である。ベース編地100の縁としては、例えばブランケットの縁や、ニットウェアの袖口、衿ぐり、あるいはニットウェアのフードの縁などを挙げることができる。
特開2008−303489号公報
ブランケットスティッチの縫製作業は、ベース編地の編成を行なった後に、編成とは独立して行なわれる。そのため、ブランケットスティッチの形成に非常に手間がかかる。このブランケットスティッチに類する装飾を、横編機を用いた編成によってベース編地に形成することができれば、多様なデザインの編地を生産性良く消費者に提供できる。しかし、横編機を用いてブランケットスティッチ風の装飾部を備える編地を編成する技術は、上述した特許文献1を含めて現在のところ提案されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、横編機を用いてブランケットスティッチ風の装飾部を備える編地を編成する編地の編成方法を提供することにある。
本発明の編地の編成方法は、少なくとも前後一対の針床と、それらの針床の編針に編糸を給糸する複数の給糸口と、を備える横編機を用いて、ベース編地を編成すると共に、ベース編地を編成するベース編糸とは異なる装飾編糸をベース編地に編み込む編地の編成方法である。この本発明の編地の編成方法では、複数段のベース編目列をウエール方向に連続させてベース編地を完成させるまでの間に、下記工程α〜工程γを複数回繰り返し、ベース編地の編幅方向縁部を装飾編糸で縁取ることを特徴とする。
[工程α]…装飾編糸を用いてベース編地の編幅方向端部よりも外側に起点編目を編成する工程。
[工程β]…工程αよりも後に、起点編目から延びる装飾編糸を、ベース編目列の編目である折返点編目よりも編幅方向の内側の位置で折り返し、その折り返された装飾編糸で折返点編目を表裏から挟み込んだ状態とする工程。
[工程γ]…工程βよりも後に、起点編目のウエール方向に続けて留め編目を編成する工程。
但し、nを1以上の自然数としたとき、n+1回目の起点編目は、n回目の起点編目のウエール方向に続く位置に編成する。例えば、後述する実施形態1では、n回目の起点編目のウエール方向に続く留め編目にタックを行なってn+1回目の起点編目を編成することで、n+1回目の起点編目がn回目の起点編目のウエール方向に続く位置に編成されている。また、後述する実施形態2〜4では、n回目の起点編目のウエール方向に続くn回目の留め編目がn+1回目の起点編目を兼ねることで、n+1回目の起点編目がn回目の起点編目のウエール方向に続く位置に編成されている。
なお、工程α〜工程γを繰り返す際、後述する実施形態2〜4に示すように、n回目の工程γがn+1回目の工程αを兼ねていても良い場合がある。つまり、本発明の請求項1における『工程α〜工程γを複数回繰り返す』との文言には、「工程α→工程β→工程γ→工程α→工程β→工程γ…」というように『工程α〜工程γを一単位として繰り返す』ことも、「工程α→工程β→工程α(=工程γ)→工程β→工程α(工程γ)…」というように『工程αと工程βを一単位として繰り返す』ことも含まれる。
本発明の編地の編成方法として、工程α〜工程γを行なうまでの間、装飾編糸をベース編地に掛け渡す領域におけるベース編目列を編成せず、工程γの後に、上記領域におけるベース編目列の編成を行なう形態を挙げることができる。
本発明の編地の編成方法として、工程αと工程βとの間に、装飾編糸をベース編地に掛け渡す領域におけるベース編目列の編成を行なう形態を挙げることができる。
本発明の編地の編成方法として、工程βと工程γとの間に、装飾編糸をベース編地に掛け渡す領域におけるベース編目列の編成を行なう形態を挙げることができる。
本発明の編地の編成方法として、工程αと工程βとの間に、装飾編糸をベース編地に掛け渡す領域におけるベース編目列の編成を行ない、さらに工程βと工程γとの間に、上記領域におけるベース編目列の編成を行なう形態を挙げることができる。
本発明の編地の編成方法によれば、ベース編地の編幅方向の外側に、装飾編糸で編成される起点編目と留め編目がウエール方向に連なるウエール列が形成され、このウエール列がベース編地の編幅方向縁部を縁取る。また、本発明の編地の編成方法によれば、起点編目から折返点編目の位置まで延びる装飾編糸、および折返点編目の位置から留め編目に延びる装飾編糸が、ベース編地の表面に表れる(前者を往路渡り糸、後者を復路渡り糸と呼ぶ)。これらウエール列と往路渡り糸と復路渡り糸とで、ベース編地の編幅方向縁部にブランケットスティッチ風の装飾部を形成することができる。
工程γの後にベース編目列を編成することで、往路渡り糸と復路渡り糸の両方が、ベース編地の編幅方向に沿った方向に延びるブランケットスティッチ風の装飾部をベース編地に形成することができる。例えば、ベース編地の編幅方向を水平に配置したとき、両渡り糸は共に水平に延びる。
工程αと工程βとの間にベース編目列を編成することで、往路渡り糸が、ベース編地の編幅方向及びウエール方向の両方に交差する方向に延び、復路渡り糸が、ベース編地の編幅方向に沿った方向に延びるブランケットスティッチ風の装飾部をベース編地に形成することができる。例えば、ベース編地の編幅方向を水平に配置したとき、往路渡り糸は斜め上方に延び、復路渡り糸は水平に延びる。
工程βと工程γとの間にベース編目列を編成することで、往路渡り糸が、ベース編地の編幅方向に沿った方向に延び、復路渡り糸が、ベース編地の編幅方向及びウエール方向の両方に交差する方向に延びるブランケットスティッチ風の装飾部をベース編地に形成することができる。例えば、ベース編地の編幅方向を水平に配置したとき、往路渡り糸は水平に延び、復路渡り糸は斜め上方に延びる。
工程αと工程βとの間、および工程βと工程γとの間にベース編目列を編成することで、往路渡り糸と復路渡り糸の両方が、ベース編地の編幅方向及びウエール方向の両方に交差する方向に延びるブランケットスティッチ風の装飾部をベース編地に形成することができる。例えば、ベース編地の編幅方向を水平に配置したとき、両渡り糸は共に斜め上方に延びる。
実施形態1に示すブランケットスティッチ風の装飾部が形成された編地の写真を示す図である。 図1に示す編地の装飾部における編目の状態を示す編地の部分ループ図である。 実施形態1に示す編地の編成工程図である。 (A)は、実施形態1の編地における往路渡り糸と復路渡り糸の配置状態を示す模式図、(B)〜(F)は、変形例に示す編地における往路渡り糸と復路渡り糸の配置状態を示す模式図である。 実施形態2に示す編地の装飾部における編目の状態を示す編地の部分ループ図である。 実施形態3に示す編地の装飾部における編目の状態を示す編地の部分ループ図である。 (A)〜(E)は、実施形態1〜4の編地の編成方法を応用して形成された装飾部の一例を示す模式図である。 縫製によって形成されたブランケットスティッチを備える編地の概略図である。
以下、本発明の編地の編成方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
<実施形態1>
実施形態1では、図1の写真に示すブランケットスティッチ風の装飾を施した編地の編成方法を説明する。図1の編地には、編地の本体となるベース編地の編幅方向縁部を、ベース編地を構成するベース編糸とは異なる装飾編糸で縁取ることで形成されたブランケットスティッチ風の装飾部が備わっている。
上記ベース編地1に形成される装飾部2は、図2の部分ループ図に示すように、ウエール列2Wと往路渡り糸2Aと復路渡り糸2Bとで構成されている(図2ではベース編地1の編目は省略)。ウエール列2Wは、ベース編地1の編幅方向(紙面左右方向)の縁部の外側で、複数の編目(後述する起点編目21と留め編目23)がウエール方向に連なることで形成されている。一方、往路渡り糸2Aは、ウエール列2Wを構成する起点編目21からベース編地1の折返点編目(図示せず)の位置に延びる装飾編糸で形成され、ベース編地1の表側に配置されている。また、復路渡り糸2Bは、折返点編目の位置から留め編目23に延びる装飾編糸で形成され、点線で示すようにベース編地1の裏側に配置されている。
図3は、図1,2に示す編地の編成工程図である。図3の左欄の『S+数字』は編成工程の番号を示し、右欄には前針床(以下FB)と後針床(以下BB)における編目の形成状態が示されている。各編成工程で実際に編成を行なった部分は太線で示す。
S1では、給糸口7を紙面左方向に移動させ、給糸口7から給糸されるベース編糸Y7を用いて、FBの編針h,g,f,e,d,c,bにベース編地1を構成するベース編目列10を編成すると共に、FBの編針aに装飾部2を編成する始端部となる編目1sを編成した。編目1sはベース編目列10に繋がっており、編目1sのウエール方向に連続して編成される装飾部2の始端部分がベース編地1から離隔することを抑制する(図2を合わせて参照)。
S2ではまず、装飾編糸Y8をベース編地1に掛け渡す領域R1の編目であるFBの編針b〜eの編目、および領域R1よりも編幅方向内方側の編目であるFBの編針fの編目を、BBの編針b〜fに目移しした。領域R1における編幅方向内方側の端部編目(編針eに係止される編目)は、装飾編糸Y8を掛け渡す折返点編目11である。
S2ではさらに、上記目移しの後に給糸口8を右方向に移動させ、FBの編針aにタック(ニットでも可)を行なって装飾部2の起点となる起点編目21を編成した(本発明の工程αに相当)。加えて、S2では、起点編目21の編成後に、折返点編目11よりも編幅方向内方側にあるFBの編針fに掛け目(仮係止編目22)を編成した。給糸口8から給糸される装飾編糸Y8は、ベース編糸Y7とは種類の異なる編糸、代表的には異色の編糸である。
なお、仮係止編目22の編成は、往路渡り糸2Aと復路渡り糸2Bの糸長を所定の長さに調節し易くするために行なうもので、必須ではない。仮係止編目22を編成しないのであれば、FBの編針fの目移しも必要ないし、後述するS5,S6も必要ない。
S3では、S2においてBBの編針b〜eに預けておいた編目を、FBの編針b〜eに目移しする。S2,S3によって、装飾編糸Y8がベース編地1の表側を横切った状態となる。
S4では、給糸口8を左側に移動させ、FBの編針eに係止される折返点編目11よりも更に内側の位置で装飾編糸Y8が折り返され、起点編目21から延びる装飾編糸Y8に折返点編目11が表裏から挟み込まれた状態とした(本発明の工程βに相当)。S4ではさらに、FBの編針aに係止される起点編目21のウエール方向に続けて留め編目23を編成した(本発明の工程γに相当)。留め編目23を編成することで、起点編目21が針床から外れ、起点編目21が固定される。
S5では、S3において形成した仮係止編目22をFBの編針fから外し、S6では、BBの編針fに係止される編目を、FBの編針fに目移しした。
S7では、ベース編地1となる複数段のベース編目列10を編成した。ベース編目列10の段数が増加するに従い、給糸口8からFBの編針aに係止される留め編目23に装飾編糸Y8が繰り出される。その結果、留め編目23の大きさが、ベース編目列10の段数に応じた大きさに調整される(図2を合わせて参照)。
以降は、S1〜S7に示す編成を繰り返した。その繰り返しの際、n+1回目の起点編目21は、n回目の起点編目21のウエール方向に続く位置に編成した。即ち、本実施形態においては、n回目の起点編目21のウエール方向に続く留め編目23にタックを行なうことで、n+1回目の起点編目21を編成した。
以上説明した編成工程に従えば、図2の部分ループ図に示すように、起点編目21と留め編目23がウエール方向に連なるウエール列2Wと、ウエール列2Wからベース編地1の編幅方向に延びる往路渡り糸2Aおよび復路渡り糸2Bと、を備える装飾部2をベース編地1の縁に形成することができる。
なお、S7で複数段のベース編目列10を編成する際、留め編目23のウエール方向に続く挿入編目を編成しても良い。挿入編目を設けることで、ウエール列2Wにおける編目の大きさを調節することができる。この挿入編目は、装飾編糸Y8を用いて編成しても良いし、ベース編糸Y7を用いて編成しても良い。n回目の留め編目23に挿入編目を編成する場合、n+1回目の起点編目21は、挿入編目のウエール方向に続けて編成する。そうすることで、n回目の起点編目21のウエール方向に続く位置にn+1回目の起点編目21が編成される。
≪変形例≫
実施形態1では、往路渡り糸2Aをベース編地1の表側に、復路渡り糸2Bをベース編地1の裏側に配置した。これに対して、ベース編目列10を目移しするタイミングや、目移しするベース編目列10の編目の数を調節することで、両渡り糸2A,2Bの配置状態が実施形態1とは異なる編地を編成することができる。
図4(A)〜(F)は、針床上における往路渡り糸2Aと復路渡り糸2Bの配置状態を示す模式図である。これらの模式図のうち、図4(A)に示す模式図は、実施形態1の編地における渡り糸2A,2Bの配置状態を示す模式図である。
図4(B)では、往路渡り糸2Aがベース編地1の裏側(紙面上側)に、復路渡り糸2Bがベース編地1の表側(紙面下側)に配置されている。このような配置状態とするには、図3の編成工程図のS2において、ベース編目列10の目移しを行なわずに、給糸口8を右方向に移動させ、起点編目21を編成する。給糸口8は、編針eの折返点編目11よりも右側(編幅方向内方側)に停止しておく。次いで、S3の代わりに、FBの編針b〜eに係止される領域R1のベース編目列10の編目を、BBの編針b〜eに目移しした後、給糸口8を左側に移動させ、留め編目23を編成する。そして、S4の代わりに、BBの編針b〜eに預けておいたベース編目列10の編目を、FBの編針b〜eに目移しで戻す。この場合、S5,S6は行なう必要がない。
図4(B)と同様に、ベース編目列10の目移しのタイミングと、目移しする編目と、を適宜変更することで、図4(C),(D)に示すように、編針dと編針eとの間で、往路渡り糸2Aと復路渡り糸2Bとが8の字状に交差した状態とすることもできる。もちろん、両渡り糸2A,2Bの交差位置は、編針cと編針dの間や、編針bと編針cとの間でも良く、特に限定されない。
また、図4(E)に示すように、両渡り糸2A,2Bが共にベース編地1の表側に配置された状態、あるいは図4(F)に示すように、両渡り糸2A,2Bが共にベース編地1の裏側に配置された状態とすることもできる。もちろん、復路渡り糸2Bが往路渡り糸2A側に抜ける位置は、編針dと編針eの位置に限定されない。
<実施形態2>
実施形態2では、実施形態1とは異なるブランケットスティッチ風の装飾部2をベース編地1に形成する例を、図5の部分ループ図に基づいて説明する。図5に示すように、本実施形態における装飾部2の往路渡り糸2Aは、ベース編地1の編幅方向及びウエール方向の両方に交差する方向(紙面右斜め上方向)に延びており、復路渡り糸2Bは、ベース編地1の編幅方向に沿った方向(紙面水平方向)に延びている。
図5に示す装飾部2を形成するには、図3のS1に続いて、給糸口8の装飾編糸Y8を用いてFBの編針aに起点編目21を編成し、給糸口8を起点編目21よりも左側(ベース編目列10よりも外側)に停止させる(本発明の工程αに相当)。次いで、少なくとも装飾編糸Y8をベース編地1に掛け渡す領域R1にあるFBの編針b〜eにおいて複数段のベース編目列10の編成を行なう。所定数のベース編目列10を編成したら、領域R1のFBの編針b〜eの編目をBBの編針b〜eに目移しした後、給糸口8を編針eよりも右側に停止させる。そして、BBの編針b〜eの編目をFBの編針b〜eに目移しした後、給糸口8を左側に移動させ、装飾編糸Y8を折返点編目11に掛けて折り返し(本発明の工程βに相当)、さらに起点編目21のウエール方向に続けて留め編目23の編成を行なう(本発明の工程γに相当)。
以上説明した編成工程を繰り返し行なうことで、図5に示す装飾部2をベース編地1の編幅方向縁部に形成することができる。この編成工程を行なった場合、n回目の留め編目23が、n+1回目の起点編目21を兼ねている(nは1以上の自然数)。つまり、本実施形態では「工程α→工程β→工程α(=工程γ)→工程β→工程α(工程γ)…」というように工程αと工程βを繰り返している。もちろん、n回目の留め編目23のウエール方向に続けてn+1回目の起点編目21を編成しても良いし、n回目の留め編目23のウエール方向に続く一つ以上の挿入編目を編成した後、その挿入編目のウエール方向に続けてn+1回目の起点編目21を編成しても良い。挿入編目の編成には、装飾編糸Y8を用いても良いし、ベース編糸Y7を用いても良い。n回目の留め編目23がn+1回目の起点編目21を兼ねている点、留め編目23に挿入編目を設けても良い点は、後述する実施形態3,4においても同様である。
ここで、図5では、往路渡り糸2Aがベース編地1の表側、復路渡り糸2Bがベース編地1の裏側に配置されているが、往路渡り糸2Aをベース編地1の裏側、復路渡り糸2Bをベース編地1の表側に配置することもできる。この点は、後述する実施形態3,4においても同様である。
<実施形態3>
実施形態3では、実施形態1,2とは異なるブランケットスティッチ風の装飾部2をベース編地1に形成する例を、図6の部分ループ図に基づいて説明する。図6に示すように、本実施形態の往路渡り糸2Aは、ベース編地1の編幅方向に沿った方向(紙面水平方向)に延びており、復路渡り糸2Bは、ベース編地1の編幅方向及びウエール方向の両方に交差する方向(紙面左斜め上方向)に延びている。
図6に示す装飾部2を形成するには、図3のS1に続いて、装飾編糸Y8をベース編地1に掛け渡す領域R1にあるFBの編針b〜eの編目をBBの編針b〜eに目移しする。次に、FBの編針aに起点編目21を編成し、給糸口8を編針eよりも右側に停止させる(本発明の工程αに相当)。次いで、BBの編針b〜eの編目をFBの編針b〜eに目移しした後、給糸口8を左側に移動させ、装飾編糸Y8を折返点編目11に掛けて折り返す(本発明の工程βに相当)。この給糸口8の移動の際には、留め編目23の編成は行なわない。そして、少なくとも領域R1で複数段のベース編目列10を編成した後、起点編目21のウエール方向に続けて留め編目23の編成を行なう(本発明の工程γに相当)。
以上説明した編成工程を繰り返し行なうことで、図6に示す装飾部2をベース編地1の編幅方向縁部に形成することができる。
<実施形態4>
実施形態4では、往路渡り糸と復路渡り糸が共に、ベース編地の編幅方向及びウエール方向の両方に交差する方向に延びるブランケットスティッチ風の装飾部をベース編地に形成する例を説明する。
実施形態4の装飾部を形成するには、上述した実施形態2と実施形態3とを組み合わせた編成を行なえば良い。具体的には、工程αを行なった後、ベース編目列を複数段編成し、工程βを行なった後、再びベース編目列を複数段編成する。その結果、往路渡り糸および復路渡り糸が共に、斜め上方に延びた装飾部を形成することができる。
<実施形態5>
実施形態1〜4に示す編地の編成方法を応用することで、多種多様な装飾部を編成することができる。そのような装飾部の一例を、図7(A)〜(E)に例示する。
図7(A)は、実施形態1の編地の編成方法において、工程γの後に行なうベース編目列の編成数を適宜変化させることで得られた装飾部を備える編地である。また、図7(B)は、実施形態1の編地の編成方法において、渡り糸の長さを適宜変化させることで得られた装飾部を備える編地である。
図7(C)〜(E)は、装飾編糸Y8に加えて、給糸口9から給糸される装飾編糸Y9を用いて編成された装飾部を備える編地である(図中の装飾編糸Y9は太点線で示す)。図7(C)の装飾部は、両装飾編糸Y8,Y9の渡り糸を互い違いに配置することで形成されている。また、右斜め上に延びる装飾編糸Y9の渡り糸と、左斜め上に延びる装飾編糸Y8渡り糸と、を適宜組み合わせることで、図7(D)のX字状の装飾部や、図7(E)の鋸波状の装飾部を形成することもできる。特に、両渡り糸を斜めに延ばす実施形態4の編成によって図7(D),(E)の装飾部の形成を行なうと、装飾部の表裏の見た目を同じにすることができる。
その他、装飾編糸Y8を用いて装飾部を形成する際、途中までは実施形態1の手順で装飾を形成し、途中からは別の実施形態の手順で装飾部を形成することも可能である。その組合せは自由であり、特に限定されない。
<実施形態6>
実施形態1〜5では、単層のベース編地の縁に装飾部を形成した。これに対して、FBとBBの両方にベース編地を形成し、各ベース編地の縁に対して装飾部を形成しても良い。その際、編目の目移しや給糸口の前後関係を利用して、各装飾部を構成する編糸を絡めることで、FBのベース編地とBBのベース編地とを閉じ合わせることもできる。その他、FBのベース編地とBBのベース編地とを一つの装飾部で閉じ合わせることもできる。
上記実施形態1〜6で説明した装飾部は、フードの縁、袖口、衿ぐりなど、あらゆる箇所に適用することができ、編地のデザイン性を向上させることに寄与する。
FB 前針床 BB 後針床
1 ベース編地 10 ベース編目列 11 折返点編目 R1 領域
1s 装飾部を編成する始端部となる編目
2 装飾部 2W ウエール列 2A 往路渡り糸 2B 復路渡り糸
21 起点編目 22 仮係止編目 23 留め編目
7,8,9 給糸口
Y7 ベース編糸 Y8,Y9 装飾編糸
100 ベース編地 Y6 縫製糸

Claims (5)

  1. 少なくとも前後一対の針床と、それらの針床の編針に編糸を給糸する複数の給糸口と、を備える横編機を用いて、ベース編地を編成すると共に、前記ベース編地を編成するベース編糸とは異なる装飾編糸を前記ベース編地に編み込む編地の編成方法において、
    複数段のベース編目列をウエール方向に連続させて前記ベース編地を完成させるまでの間に、
    前記装飾編糸を用いて前記ベース編地の編幅方向端部よりも外側に起点編目を編成する工程αと、
    前記工程αよりも後に、前記起点編目から延びる前記装飾編糸を、前記ベース編目列の編目である折返点編目よりも編幅方向の内側の位置で折り返し、その折り返された装飾編糸で前記折返点編目を表裏から挟み込んだ状態とする工程βと、
    前記工程βよりも後に、前記起点編目のウエール方向に続けて留め編目を編成する工程γと、
    を複数回繰り返し、前記ベース編地の編幅方向縁部を前記装飾編糸で縁取ることを特徴とする編地の編成方法。
    但し、nを1以上の自然数としたとき、n+1回目の起点編目は、n回目の起点編目のウエール方向に続く位置に編成する。
  2. 前記工程α〜前記工程γを行なうまでの間、前記装飾編糸を前記ベース編地に掛け渡す領域における前記ベース編目列を編成せず、前記工程γの後に、前記領域における前記ベース編目列の編成を行なうことを特徴とする請求項1に記載の編地の編成方法。
  3. 前記工程αと前記工程βとの間に、前記装飾編糸を前記ベース編地に掛け渡す領域における前記ベース編目列の編成を行なうことを特徴とする請求項1に記載の編地の編成方法。
  4. 前記工程βと前記工程γとの間に、前記装飾編糸を前記ベース編地に掛け渡す領域における前記ベース編目列の編成を行なうことを特徴とする請求項1に記載の編地の編成方法。
  5. 前記工程αと前記工程βとの間に、前記装飾編糸を前記ベース編地に掛け渡す領域における前記ベース編目列の編成を行ない、さらに前記工程βと前記工程γとの間に、前記領域における前記ベース編目列の編成を行なうことを特徴とする請求項1に記載の編地の編成方法。
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