JP2015071819A - フレーク状銅粉及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、フレーク状銀粉を配合した「銀系ペースト」は、フレーク状銅粉を配合した「銅系ペースト」と比べて、地金価格が高いため高価でマイグレーションが起こりやすい。また、「銅系ペースト」はマイグレーションが起こりにくいが酸化しやすく導電性が悪化するという欠点がある。これら欠点を克服する手法の一つとして、銅粉を扁平化処理し、銀を被覆した銀被覆フレーク状銅粉が提案されている。
前記銀被覆フレーク状銅粉に用いられる銅粉は、アトマイズ法、湿式還元法、電気分解法により製造されている。これらの中でも、価格的にも大量生産性にも有利な点から、アトマイズ法が好ましく、アトマイズ法による球状の銅粉を扁平化処理した銀被覆フレーク状銅粉が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、前記アトマイズ法による銀被覆フレーク状銅粉は、特に低フィラー含量ペーストでは導電性の点で十分満足できる性能を有しておらず、更なる改善が望まれている。
本発明のフレーク状銅粉は、X線回折法によるX線粒径が、Cu(111)面において、60nm以下である。
本発明のフレーク状銅粉の原料となる銅粉としては、電解銅粉であることが好ましい。
後述する表1〜表4に示す実施例及び比較例で作製した各種銅粉に銀被覆した後の銀被覆フレーク銅粉について、前記X線回折法によりX線粒径を測定し、X線粒径とフレーク時間との関係を図1及び図2に示す。なお、銅のX線粒径は、銀被覆後の銀被膜フレーク銅粉に対して測定した値であり、銀被膜フレーク銅粉における銅のX線粒径であるが、置換法による銅のX線粒径への影響は小さく、X線の入射深さは銀被覆を突き抜けるほどに十分深いため、銀被覆前のフレーク銅粉のX線回折によるX線粒径も略同じとみなすことができる。
図1及び図2から、本発明のフレーク状銅粉は、X線回折法によるX線粒径が、Cu(111)面において、600Å(60nm)以下であり、460Å(46nm)以下が好ましく、420Å(42nm)以下がより好ましい。また、X線粒径は、Ag(111)面において、190Å(19nm)以下が好ましい。
前記Cu(111)面におけるX線粒径が600Å(60nm)を超えると、扁平化が不十分であり、また銀被覆の均一性が劣り、銀被覆フレーク状銅粉を配合して形成した導電膜の抵抗値が低くならないことがある。
前記Cu(111)面におけるX線粒径が460Å(46nm)以下では、導電膜の抵抗値の低減効果が高く、420Å(42nm)以下では更に低減することができる。
これは、球形状のアトマイズ銅粉は、その形状によりランダムな方向から潰されやすいが、不定形状の電解銅粉を扁平化処理すると、その形状により主幹部や副幹部に対して特定の方向から潰されやすいと考えられる。また、球形状のアトマイズ銅粉は、その製造方法から結晶方位が揃っていないが、不定形状の電解銅粉はCu(111)面を平行にして次々と連なって主幹部と副幹部を形成しているため水平断面がCu(111)面となっている。これらにより、不定形状の電解銅粉は扁平化の際にCu(111)面が優先的に潰されやすく、扁平化が進むにつれて、Cu(111)面のX線粒径の値が大きく変化すると考えられる。そして、表面の結晶方位と、主幹部と副幹部の扁平化の結果である主幹部と副幹部とからなる形状(外周の凹凸から置換反応が始まり易いと考えられること)から、不定形状の電解銅粉を扁平化してCu(111)面におけるX線粒径を600Å(60nm)以下としたフレーク状銅粉は、銀置換反応が同時多発的に起きて銀被膜の厚みが均一になりやすく、銀のX線粒径の値にも違いが生じると考えられる。実際、Cu(111)面のX線粒径が小さいフレーク状銅粉に銀被覆した方が、Ag(111)面のX線粒径も小さくなっており、190Å(19nm)以下のものは得られる導電膜の導電性が良好となり、好ましい。
また、図1及び図2から、X線回折法によるX線粒径がCu(200)面においては、400Å(40nm)以下が好ましく、300Å(30nm)以下がより好ましい。
[XRD装置、条件]
・株式会社リガク製 SmartLab X−ray Diffractometer
・使用X線:CuKα(波長=1.5405Å)
・Ag(111)面:2θ=35°〜40°
・Cu(111)面:2θ=41°〜47°
・Cu(200)面:2θ=47.5°〜52.5°
・スキャンスピード=5°/minでスキャンし、Kα2成分を除去した後、各回折ピークの角度2θ、強度、半価幅を測定した。
前記X線粒径(結晶子径)は、シェラーの式=0.94×波長/半価幅/cosθから算出することができる。
前記電解銅粉は、主幹部、及び該主幹部から不定形状に分かれた副幹部とからなり、前記副幹部を有する不定形状であることが好ましい。
前記不定形状の電解銅粉を扁平化処理してなるフレーク状電解銅粉は、電子顕微鏡観察によって電解銅粉の主幹部及び該主幹部から不定形状に分かれた副幹部に由来する形状を呈しており、球形状のアトマイズ銅粉、湿式還元銅粉等を扁平化処理してなるフレーク状銅粉とは、形状に差が認められる。なお、前記フレーク状電解銅粉の形状は、電解銅粉の形状に由来する形状であるものの、扁平であって厚み方向の形状は電解銅粉とは全く異なり、水平方向も不定形であって輪郭が異なるため、電解銅粉に類似の形状とはいえない。また、扁平化する前の銅粉の不定形状の程度ともその扁平度、平滑性等の形状に差が認められる。
前記電解銅粉の長軸平均長さLと、短軸平均長さdとの比(L/d)は3以上が好ましく、3.5以上がより好ましい。扁平化処理に用いる電解銅粉の前記主幹部が短い、又は、前記副幹部及び副幹部からの枝が前記主幹部に比べて発達しすぎると、前記比(L/d)が3未満となり、扁平化処理後のフレーク状銅粉において前記比(L/d)が2.5未満となりやすく、粒子間の接触確率が減り導電膜の抵抗値が悪化することがある。そのため、扁平化処理後のフレーク状銅は、前記比(L/d)が2.5以上であることが好ましい。
前記電解銅粉は、電気分解法により製造することができる。前記電気分解法による電解銅粉の製造方法については、後述するフレーク状銅粉の製造方法で説明する。
前記比(L/d)が、2.5未満であると、粒子間の接触確率が減り導電膜の抵抗値が悪化することがある。
また、前記フレーク状銅粉の長軸平均長さLと、平均厚みtとのアスペクト比(L/t)は、8以上が好ましく、10〜300がより好ましく、10〜100が更に好ましい。
前記アスペクト比(L/t)が、8未満であると、前記フレーク状銅粉同士の接触面積が十分でなく、導電性ペーストに配合し、該導電性ペーストを用いて形成される導電膜の導電性を十分高くできないことがあり、300を超えると、前記フレーク状銅粉を製造することが困難となることがある。
前記フレーク状銅粉の各粒子について、最長の長さの直線を長軸とし、その長さを「長軸長さ」Lとして測定し、その長軸を有し矩形で近似できる部分を主幹部とする。そして、粒子の長軸に対して垂直な方向の最長長さdを「短軸長さ」として測定し、このdが主幹部の長軸に対し垂直な方向の主幹部の長さより大きい、即ち、主幹部から主幹部に対してその長軸方向に垂直な方向に突出している部分がある場合、その部分を副幹部とする。主幹部、副幹部の各々について長軸L’、短軸d’を測定する。なお、副幹部のL’、d’が定義する方向は、その長短ではなく主幹部の長軸方向及び短軸方向に準ずる(図21参照)。各粒子のL=主幹部のL’であり、また各粒子のd=「主幹部のd’+主幹部に垂直方向の片側に突出した副幹部の中で最大のd’+主幹部に垂直方向のもう片側に突出した副幹部の中で最大のd’」で定義できる。
更に、水平な面を側部として厚さとなる面が観察されており境界が明確なフレーク状銅粉10個について、個々のフレーク状銅粉の主幹部の「厚み」を測定する。
以上により、100個のフレーク状銅粉について「長軸長さ」、「短軸長さ」、及び10個の銀被覆フレーク状銅粉について「厚み」を測定し、それらの平均から「平均長軸長さL」、「短軸平均長さd」、及び「平均厚みt」を求めることができる。
前記比A/Bは、フレーク状銅粉がどのくらい矩形(直方体)から離れているか、粒子外部に空隙が存在するかという点についての簡易的な指標となり、導電膜中に同じ重量の粒子が存在した場合の粒子間の接触のしやすさ、即ち、導電性と相関があると考えられる。
前記比(A/B)が、0.8を超えると、特に低フィラー含量の導電膜中では粒子間の距離が増加し接触確率が減り、導電性が悪化することがある。
なお、各粒子の実測面積AをA=Σ(L’×d’)と定義する。各粒子を主幹部及び副幹部(副幹部は1個の粒子について複数あり)の矩形の集合体とみなし、それぞれの面積を合計したものである。また、各粒子の長軸方向の最長長さL及びそれに対する垂直方向の最大長さdに対し、仮想矩形換算面積BをB=L×dと定義する。これにより、仮想矩形換算面積と実測面積の比(A/B)を求めることができる。
前記BET比表面積は、例えば、MONOSORB(湯浅アイオニクス株式会社製)で、He:70%、N2:30%のキャリアガスを用い、試料3gをセルに入れて脱気を60℃で10分間行った後、BET1点法により測定することができる。
前記タップ密度は、例えば、タップ比重測定器(柴山科学株式会社製、カサ比重測定器SS−DA−2型)を用いて測定することができる。
前記累積50%粒子径(D50)は、例えば、マイクロトラック粒度分布測定装置(ハネウエル(Haneywell)−日機装株式会社製、9320HRA(X−100))などを用いて測定することができる。
本発明のフレーク状銅粉の製造方法は、電気分解法により得られた走査型電子顕微鏡の測定による長軸平均長さLと、短軸平均長さdとの比(L/d)が3以上の電解銅粉を、扁平化処理することにより、X線回折法によるX線粒径が、Cu(111)面において、60nm以下であるフレーク状銅粉とすることを特徴とする。
前記フレーク状銅粉の製造方法は、電解銅粉を扁平化処理する工程(扁平化工程)を含み、電解銅粉作製工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
銀被覆フレーク状銅粉を製造する場合は、扁平化処理後のフレーク状電解銅粉表面に銀を被覆する工程(銀被覆工程)を含んでもよく、目的に応じて電解銅粉に先に銀を被覆した後に、扁平化処理することも可能である。
前記電解銅粉作製工程は、電気分解法により電解銅粉を作製する工程である。
前記電気分解法としては、例えば、銅イオンを含む硫酸酸性の電解液に陽極と陰極を浸漬し、これに直流電流を流して電気分解を行い、陰極表面に粉末状に銅を析出させ、機械的又は電気的方法により掻き落として回収し、洗浄し、乾燥し、必要に応じて篩別工程などを経て電解銅粉を製造する方法などが挙げられる。
なお、必要に応じて酸化防止処理としてベンゾトリアゾール等のトリアゾール系の物質で表面処理を施してもよい。
前記扁平化工程は、走査型電子顕微鏡の測定による長軸平均長さLと、短軸平均長さdとの比(L/d)が3以上の電解銅粉を扁平化処理する工程である。
前記扁平化処理を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、転動ボールミル、アトライター、SCミル等のメディア式ミル(ボール、ビーズによる粉砕ミル)などが挙げられる。なお、前記扁平化処理を行う装置としては、市販されているものをそのまま使用可能である。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、有機溶媒などが挙げられる。
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、分子量200以下の有機溶媒が好ましく、分子量200以下のアルコールがより好ましい。前記分子量200以下のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、又はこれらの混合物、などが挙げられる。
前記扁平化処理時に添加する前記溶媒の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、扁平化処理する銅粉に対し、質量で0.1倍〜3倍が好ましい。前記添加量が、0.1倍未満であると、溶媒添加の効果が不十分であることがあり、3倍を超えると、十分なアスペクト比が得られないことがある。
前記ボール(メディア)の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス(SUS)等の金属、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスなどが挙げられる。これらの中でも、製品へのコンタミネーションを考えると、ステンレス(SUS)が特に好ましい。
前記ボール(メディア)の扁平化処理時における添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、扁平化処理する銅粉に対し、質量で1倍〜50倍が好ましい。前記添加量が、1倍未満であると、十分なアスペクト比が得られないことがあり、50倍を超えると、1回に扁平化処理できる銅粉の量が少なくなり、処理コストが高くなることがある。
なお、前記扁平化処理は、投入した全ての銅粉が扁平化される必要はなく、扁平化処理後に扁平化が進んでいない銅粉が混在していてもよい。扁平化処理の前後で、投入した銅粉に対して上記のフレーク状銅粉が一つでも形成されていれば扁平化処理されたということができる。
ただし、フレーク状銅粉の分散性が十分な場合には、フレーク化工程において分散剤を添加しないことも可能である。前記分散剤が多量に表面に存在すると、後述する銀被覆工程での銀被覆が不均一となることがあり、場合によっては銀被覆工程の前に分散剤の除去を行う必要がある。
前記銀被覆工程は、扁平化処理後のフレーク状電解銅粉表面に銀を被覆する工程である。
前記フレーク状電解銅粉表面に銀を被覆させる方法としては、例えば、還元法と置換法の2種類を挙げることができる。
前記還元法は、銅粉粒子の表面に、還元剤で還元された銀の微粒子を緻密に被覆させていく方法である(例えば、特開2000−248303号公報等参照)。
前記置換法は、銅粉粒子の界面で、銀イオンが金属の銅と電子の授受を行い、銀イオンが金属の銀に還元され、代わりに金属の銅が酸化され銅イオンになることで、銅粉粒子の表面層を銀層とする方法である(例えば、特開2006−161081号公報等参照)。
これらの中でも、銀被覆の均一性、銅表面への銀層の密着の点から、置換法が好ましい。
銀被覆反応を安定かつ安全に行うにあたり、pH緩衝剤を添加してもよい。前記pH緩衝剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア水、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
前記銀の被覆量は、例えば、銀被覆フレーク状銅粉を硝酸で溶解後に塩酸を添加し、生じた塩化銀の沈殿を乾燥し、重量を測定することにより求めることができる。
前記その他の工程としては、例えば、洗浄及び乾燥工程などが挙げられる。
−洗浄及び乾燥工程−
前記洗浄及び乾燥工程は、得られた銀被覆フレーク状銅粉を固液分離し、必要に応じて、洗浄を行い、乾燥する工程である。
前記洗浄及び乾燥としては、特に制限はなく、銅粉に対する公知の方法を適宜使用することができ、乾燥後において解砕を行ってもよい。
本発明で用いられる導電性ペーストは、本発明の前記フレーク状銅粉と、好ましくは樹脂と、溶剤とを含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記導電性ペーストとしては、例えば、樹脂硬化型ペーストなどが挙げられる。
前記導電性ペーストにおける前記フレーク状銅粉の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラデカン、テトラリン、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、テルピネオール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−エチルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤、ガラスフリット、分散剤、粘度調整剤などが挙げられる。
前記導電性ペーストの体積抵抗率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2×10−2Ω・cm以下が好ましく、5×10−4Ω・cm以下がより好ましく、3.3×10−5Ω・cm以下が更に好ましい。前記体積抵抗率が、2×10−2Ω・cm以下であると、極めて低い体積抵抗率の導電性ペーストが実現可能である。
前記体積抵抗率は、例えば、デジタルマルチメーター(ADVANTEST社製、R6551)を用いて、測定することができる。
前記銀被覆銅粉のBET比表面積、粒度分布(D10、D50、及びD90)、比(L/d)及びアスペクト比(L/t)、タップ密度、X線粒径、面積比(A/B)、並びに銀被覆量の測定方法は、以下に示す通りである。
銀被覆銅粉のBET比表面積は、MONOSORB(湯浅アイオニクス株式会社製)で、He:70%、N2:30%のキャリアガスを用い、銀被覆銅粉3gをセルに入れて脱気を60℃で10分間行った後、BET1点法により測定を行った。
銀被覆銅粉の粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、MICROTORAC HRA)を用いて、銀被覆銅粉0.3gをイソプロパノール30mLに加え、超音波分散処理を5分間行って試料を準備し、全反射モードで粒径の測定を行った。測定により得た質量累積分布により、累積10質量%粒径(D10)、累積50質量%粒径(D50)、及び累積90質量%粒径(D90)の値を求めた。
タップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学株式会社製、カサ比重測定装置SS−DA−2)を使用し、銀被覆銅粉15gを計量して、容器(20mL試験管)に入れ、落差20mmで1,000回タッピングし、タップ密度=試料重量(15g)/タッピング後の試料体積から算出した。
前記X線粒径は、以下の装置及び条件により、X線回折法による銀被覆銅粉の結晶面の回折ピークの半値幅から算出した。
[XRD装置、条件]
・株式会社リガク製 SmartLab X−ray Diffractometer
・使用X線:CuKα(波長=1.5405Å)
・Ag(111)面:2θ=35°〜40°
・Cu(111)面:2θ=41°〜47°
・Cu(200)面:2θ=47.5°〜52.5°
・スキャンスピード=5°/minでスキャンし、Kα2成分を除去した後、各ピークの角度2θ、強度、半価幅を測定した。
X線粒径(結晶子径)は、シェラーの式=0.94×波長/半価幅/cosθで計算した。
前記比(L/d)及びアスペクト比(L/t)における、「長軸平均長さL」、「短軸平均長さd」、及び「平均厚みT」は、走査型電子顕微鏡(SEM)によるSEM写真を観察することにより測定した。その際、個々の銀被覆銅粉を測定対象に入れるか否かの基準は、1個の粒子として境界が明確であることである。
銀被覆銅粉の各粒子について、最長の長さの直線を長軸とし、その長さを「長軸長さ」Lとして測定し、その長軸を有し矩形で近似できる部分を主幹部とする。そして、粒子の長軸に対して垂直な方向の最長長さdを「短軸長さ」として測定し、このdが主幹部の長軸に対し垂直な方向の主幹部の長さより大きい、即ち、主幹部から主幹部に対してその長軸方向に垂直な方向に突出している部分がある場合、その部分を副幹部とする。主幹部、副幹部の各々について長軸L’、短軸d’を測定する。なお、副幹部のL’、d’が定義する方向は、その長短ではなく主幹部の長軸方向及び短軸方向に準ずる(図21参照)。各粒子のL=主幹部のL’であり、また各粒子のd=「主幹部のd’+主幹部に垂直方向の片側に突出した副幹部の中で最大のd’+主幹部に垂直方向のもう片側に突出した副幹部の中で最大のd’」で定義できる。
100個の銀被覆銅粉について「長軸長さ」、「短軸長さ」、及び「厚み」を測定し、「平均長軸長さL」、「短軸平均長さd」、及び「平均厚みt」を求めた。
銀被覆銅粉の各粒子の実測面積AをA=Σ(L’×d’)と定義する。各粒子を主幹部及び副幹部(副幹部は1個の粒子について複数あり)の矩形の集合体とみなし、それぞれの面積を合計したものである。また、各粒子の長軸方向の最長長さL及びそれに対する垂直方向の最大長さdに対し、仮想矩形換算面積BをB=L×dと定義する。これより仮想矩形換算面積と実測面積の比(A/B)を求めた。
銀被覆量は、銀被覆銅粉末を硝酸で溶解後に塩酸を添加し、生じた塩化銀の沈殿を乾燥し、重量を測定することにより、銀被覆量の実測値を求めた。
<銀被覆フレーク状銅粉の作製>
−電解銅粉(1)−
電解銅粉(1)として、JX日鉱日石金属株式会社製 #51−R(A)を用意した。
電解銅粉(1)について、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子工業株式会社製、JSM−6100)を使用し、2,000倍にて観察を行った。得られたSEM写真を図3に示した。
電解銅粉(1)のSEM写真を観察すると、長軸平均長さは8.89μm、短軸平均長さは2.10μm、L/dは4.23、粒子平均厚みが2.10μmであり、アスペクト比は4.23であり、実測面積Aの仮想矩形換算面積Bとの比(A/B)は0.65であった。
前記電解銅粉(1)1,254gとネオエタノールP−7(大伸化学株式会社製)624gをSUSボール(直径1.6mm)10.5kgとともにアトライター(日本コークス工業株式会社製:MA−1SE−X、容量5L)に入れて、回転数360rpm、処理時間60分間の条件で扁平化処理を実施し、フレーク状銅粉スラリーを得た。フレーク状銅粉スラリーとSUSボールの分離後、濾過して得られたウェットケーキを70℃で真空乾燥を行い、実施例1のフレーク状銅粉を得た。
炭酸アンモニウム185gとエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩溶液(EDTA・4Na・4H2O、濃度50質量%)1,167gを純水741gに溶解し、液温を35℃に調整した。この溶液と銀61.8g含有の硝酸銀水溶液を混合して、銀錯塩溶液を調整した。また、炭酸アンモニウム9.1gとEDTA・4Na・4H2Oの50質量%水溶液113gを純水1,404gに溶解させた後、前記フレーク銅粉350gを加え攪拌してフレーク状銅粉分散液を準備した。このフレーク状銅粉分散液を乾燥窒素ガス雰囲気にて液温を35℃に調整し、前記銀錯塩溶液を添加し銀被覆反応を実施し、30分間攪拌しながら保持した。ステアリン酸15質量%のステアリン酸エマルジョン5.7gを添加し、5分間攪拌を継続して、銀被覆銅粉への表面処理を行った。
得られた銀被覆フレーク銅粉を濾過して、イオン交換水で洗浄し、更にイソプロパノールで洗浄し、得られたウェットケーキを70℃で真空乾燥を行い、実施例1の銀被覆フレーク状銅粉を得た。
得られた実施例1の銀被覆フレーク状銅粉の走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子工業株式会社製、JSM−6100)によるSEM写真を図4に示した。
得られた実施例1の銀被覆フレーク状銅粉の諸特性を評価した。結果を表2〜表4に示した。
−銀被覆銅粉の作製−
実施例1において、表1に示すように物量・条件を変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜11及び比較例1〜4のフレーク状銅粉及び銀被覆銅粉を作製した。
なお、銀被覆量の目標値15質量%に対し、銀被覆量の目標値を10質量%とした場合は、実施例1の銀錯塩溶液における、炭酸アンモニウム及びエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩溶液の純水へ溶解する量を175g及び735gに、また添加する硝酸銀の銀含有量を38.9gに変更している。また、ステアリン酸エマルジョンの添加量は、銀被覆する前の比表面積に応じて適宜量を調整しており、実施例2は9.0g、実施例3は9.0g、実施例4は9.0g、実施例5は5.7g、実施例6は5.7g、実施例7は5.7g、実施例8は9.0g、実施例9は11.3g、実施例10は13.6g、実施例11は9.0g、比較例2は6.8g、比較例3は6.8g、比較例4は5.7gとした。
なお、実施例3で用いた電解銅粉(2)、実施例4で用いた電解銅粉(3)、及び比較例1〜3で用いたアトマイズ銅粉は、以下に示すとおりである。また、比較例3における解砕は、メリタジャパン株式会社製セレクトグラインドMJ−518により行った。
得られた実施例2〜11の銀被覆銅粉のSEM写真を図5、7、9〜16、比較例1〜4の銀被覆銅粉のSEM写真を図17〜図20に示した。
得られた実施例2〜11及び比較例1〜4の銀被覆銅粉の諸特性を評価した。結果を表2〜表4に示した。
電解銅粉(2)として、福田金属箔工業株式会社製 FCC−TBXを用いた。
この電解銅粉(2)について、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子工業株式会社製、JSM−6100)を使用し、2,000倍にて観察を行った。得られたSEM写真を図6に示した。
前記電解銅粉(2)のSEM写真を観察すると、長軸平均長さは5.73μm、短軸平均長さは1.85μm、L/dは3.10、粒子平均厚みが1.85μmであり、アスペクト比は3.10であり、実測面積Aの仮想矩形換算面積Bとの比(A/B)は0.78であった。
電解銅粉(3)として、福田金属箔工業株式会社製 FCC−115を用いた。
この電解銅粉(3)について、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子工業株式会社製、JSM−6100)を使用し、2,000倍にて観察を行った。得られたSEM写真を図8に示した。
前記電解銅粉(3)のSEM写真を観察すると、長軸平均長さは7.81μm、短軸平均長さは2.06μm、L/dは3.80、粒子平均厚みが2.06μmであり、アスペクト比は3.80であり、実測面積Aの仮想矩形換算面積Bとの比(A/B)は0.68であった。
アトマイズ銅粉として、日本アトマイズ加工株式会社製 SF−Cu5μmを用いた。このアトマイズ銅粉について、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子工業株式会社製、JSM−6100)を使用し、2,000倍にて観察を行った。得られたSEM写真を図23に示した。
<銀被覆フレーク状銅粉の作製>
−電解銅粉(3)−
電解銅粉(3)として、福田金属箔粉工業株式会社製 FCC-115を用意した(図8参照)。
前記電解銅粉(3)30.66kgとソルミックスAP−7(日本アルコール販売株式会社製)17.77kgをSUSボール(直径1.6mm)185.8kgとともにアトライター(日本コークス工業株式会社製、MA15SE、容量100L)に入れて、回転数170rpm、処理時間240分間の条件で扁平化処理を実施し、フレーク状銅粉スラリーを得た。フレーク状銅粉スラリーとSUSボールの分離後、濾過して得られたウェットケーキを70℃で真空乾燥を行い、実施例12のフレーク状銅粉を得た。
炭酸アンモニウム35.00kgとエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(EDTA・4Na・4H2O)50質量%溶液147.00kgを純水225.68kgに溶解し、液温を35℃に調整した。この溶液と銀7.778kg含有の硝酸銀水溶液を混合して、銀錯塩溶液を調製した。また、炭酸アンモニウム1.82kgとEDTA・4Na・4H2Oの50質量%溶液22.52kgを純水288.23kgに溶解させた後、前記フレーク銅粉70.00kgを加え攪拌してフレーク状銅粉分散液を準備した。このフレーク状銅粉分散液を乾燥窒素ガス雰囲気にて液温を35℃に調整し、前記銀錯塩溶液を添加し銀被覆反応を実施し、30分間攪拌しながら保持した。ステアリン酸15質量%のステアリン酸エマルジョン2.26kgを添加し、5分間攪拌を継続して、銀被覆フレーク銅粉への表面処理を行った。
得られた銀被覆フレーク銅粉を濾過して、イオン交換水で洗浄し、得られたウェットケーキを窒素雰囲気中で、120℃で乾燥を行い、サンプルミル(不二パウダル社製、KII WR−1型)により乾燥凝集を解砕し、目開き25μmの篩を通して、実施例12の銀被覆フレーク状銅粉を得た。得られた実施例12の銀被覆銅粉のSEM写真を図22に示した。
次に、作製した実施例1〜12及び比較例1〜4の各銀被覆銅粉、ポリエステル樹脂、及び溶剤を下記の組成及び含有量で混合し、3本ロール(オットハーマン社製、EXAKT80S)を用いて、ロールギャップを100μm〜20μmまで通過させて混練処理を行い、更に適宜溶剤を追加し粘度を約8Pa・s(ブルックフィールド社製粘度計DV−III URTRAにて回転数1rpm時の値)に調整を行うことにより、実施例及び比較例の各導電性ペーストを得た。
[組成及び含有量]
・各銀被覆銅粉・・・60質量部
・ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、バイロン200)・・・12質量部
・溶剤〔ECA(酢酸ジエチレングリコールモノ−n−エチルエーテル)、和光純薬工業株式会社製〕・・・28質量部
[印刷条件]
・印刷装置:マイクロテック社製 MT−320T
・印刷条件:スキージ圧0.18MPa、膜は、幅500μm、長さ37.5mmの回路形成をした。
得られた膜を、大気循環式乾燥機を用い、130℃、30分間の条件で加熱処理し、導電膜を作製した。
得られた導電膜について、以下のようにして、平均厚み、及び体積抵抗率を測定した。結果を表5に示した。
得られた各導電膜を、表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、SE−30D)を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上で膜を印刷していない部分と導電膜の部分との段差を測定することにより、導電膜の平均厚みを測定した。
デジタルマルチメーター(ADVANTEST社製、R6551)を用いて、各導電膜の長さ(間隔)の位置の抵抗値を測定した。各導電膜のサイズ(平均厚み、幅、長さ)より、導電膜の体積を求め、該体積と測定した抵抗値から、体積抵抗率を求めた。
また、電解銅粉の扁平化時間が120分間〜150分間のBET比表面積が0.7m2/g〜0.9m2/g、比(L/d)が3.3以上の範囲において体積抵抗率が最小となる傾向を示した。
また、実施例12は、実施例3と比較して、フレーク化の装置スケール大きい点が異なるが、粉体としては若干比表面積が大きく、銀・銅ともX線粒径が小さく、アスペクト比が小さい。膜特性は体積抵抗率が大きい。設備スケールと条件により、若干扁平化度合いが小さいことが分かった。
<1> X線回折法によるX線粒径が、Cu(111)面において、60nm以下であることを特徴とするフレーク状銅粉である。
<2> X線粒径が、Cu(111)面において、46nm以下である前記<1>に記載のフレーク状銅粉である。
<3> X線粒径が、Cu(200)面において、40nm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載のフレーク状銅粉である。
<4> フレーク状銅粉が、電気分解法により得られた電解銅粉を扁平化処理したフレーク状銅粉であり、前記フレーク状銅粉の表面に銀を被覆した銀被覆フレーク銅粉に用いられる前記<1>から<3>のいずれかに記載のフレーク状銅粉である。
<5> 走査型電子顕微鏡の測定による長軸平均長さLと、短軸平均長さdとの比(L/d)が2.5以上である前記<1>から<4>のいずれかに記載のフレーク状銅粉である。
<6> 電気分解法により得られた走査型電子顕微鏡の測定による長軸平均長さLと、短軸平均長さdとの比(L/d)が3以上の電解銅粉を、扁平化処理することにより、X線回折法によるX線粒径が、Cu(111)面において、60nm以下であるフレーク状銅粉とすることを特徴とするフレーク状銅粉の製造方法である。
Claims (6)
- X線回折法によるX線粒径が、Cu(111)面において、60nm以下であることを特徴とするフレーク状銅粉。
- X線粒径が、Cu(111)面において、46nm以下である請求項1に記載のフレーク状銅粉。
- X線粒径が、Cu(200)面において、40nm以下である請求項1から2のいずれかに記載のフレーク状銅粉。
- フレーク状銅粉が、電気分解法により得られた電解銅粉を扁平化処理したフレーク状銅粉であり、前記フレーク状銅粉の表面に銀を被覆した銀被覆フレーク銅粉に用いられる請求項1から3のいずれかに記載のフレーク状銅粉。
- 走査型電子顕微鏡の測定による長軸平均長さLと、短軸平均長さdとの比(L/d)が2.5以上である請求項1から4のいずれかに記載のフレーク状銅粉。
- 電気分解法により得られた走査型電子顕微鏡の測定による長軸平均長さLと、短軸平均長さdとの比(L/d)が3以上の電解銅粉を、扁平化処理することにより、X線回折法によるX線粒径が、Cu(111)面において、60nm以下であるフレーク状銅粉とすることを特徴とするフレーク状銅粉の製造方法。
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