JP2015070219A - 化合物薄膜太陽電池、および、化合物薄膜太陽電池の製造方法 - Google Patents

化合物薄膜太陽電池、および、化合物薄膜太陽電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電子と正孔との収集効率を高めることのできる化合物薄膜太陽電池、および、化合物薄膜太陽電池の製造方法を提供する。【解決手段】化合物薄膜太陽電池は、表面電極17と裏面電極11との間に位置する光吸収層13と、裏面電極11と光吸収層13とに挟まれた中間層12と、を備える。光吸収層13は、CZTS系の化合物から構成され、中間層12は、Sn(SxSe1−x)(0≰x≰1)、または、CuxInyGa1−ySezS2−z(0<x<1、0≰y≰1、0≰z≰2)から構成される。【選択図】図1

Description

本開示の技術は、CZTS系の化合物半導体を備える化合物薄膜太陽電池、および、その製造方法に関する。
CZTS系(CuZnSnS、CuZnSnSe、CuZnSn(S,Se)等)の化合物半導体層を光吸収層として備えるCZTS系化合物薄膜太陽電池は、例えば特許文献1に記載のように、裏面電極、p型CZTS系光吸収層、バッファ層、および、n型透明導電層をこの順に基板上に備えている。光吸収層において励起された電子のn型透明導電層での収集効率を高めること、および、電子の励起によって生成された正孔の裏面電極での収集効率を高めることは、こうした化合物薄膜太陽電池において光電変換効率を高める方策の一つである。特許文献1に記載の化合物薄膜太陽電池は、裏面電極において電子と正孔とが再結合することを抑えるために、ZnS系の化合物が分散した層としてZnS系分散層を光吸収層と裏面電極との間に備えている。図6は、こうしたZnS系分散層を備えるCZTS系化合物薄膜太陽電池のバンド構造を示すバンド構造図である。
図6に示されるように、ZnS系の化合物は、CZTS系の化合物よりもバンドギャップが大きく、かつ、ZnS系の化合物における伝導帯下端のエネルギー準位Ecは、CZTS系の化合物におけるエネルギー準位Ecよりも高い。光吸収層と裏面電極との間にZnS系分散層が介在する構成であれば、こうしたエネルギー準位Ecの差に基づいて、光吸収層と裏面電極との間に、電子に対する障壁が形成される。そして、光吸収層において励起された電子が、光吸収層から裏面電極に向けて移動するとき、こうした電子が裏面電極に到達する確率が抑えられて、裏面電極付近での電子と正孔との再結合の頻度が抑えられる。
特開2013−115126号公報
一方で、図6に示されるように、ZnS系の化合物における価電子帯上端のエネルギー準位Evは、CZTS系の化合物におけるエネルギー準位Evよりも低い。そのため、光吸収層と裏面電極との間にZnS系分散層が介在する構成では、光吸収層から裏面電極に向けて移動する正孔に対しても障壁が形成されてしまう。結果として、上述のように励起された電子の収集効率が高まる一方で、正孔の収集効率は低下してしまう。
こうした問題に対し、特許文献1に記載の化合物薄膜太陽電池では、ZnS系分散層に光吸収層と裏面電極とをつなぐ隙間が形成され、この隙間が正孔の伝導路として機能する。しかしながら、こうした隙間は、励起された電子の伝導路としての機能、ひいては、励起された電子と正孔との再結合を促す機能も有している。そのため、上述した構成では、励起された電子と正孔との収集効率を高める観点において、依然として改善の余地が残されている。
本開示の技術は、電子と正孔との収集効率を高めることのできる化合物薄膜太陽電池、および、化合物薄膜太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための化合物薄膜太陽電池は、表面電極と裏面電極との間に位置する光吸収層と、前記裏面電極と前記光吸収層とに挟まれた中間層とを備え、前記光吸収層は、CZTS系の化合物から構成され、前記中間層は、Sn(SSe1−x)(0≦x≦1)から構成される。
また、上記課題を解決するための化合物薄膜太陽電池は、表面電極と裏面電極との間に位置する光吸収層と、前記裏面電極と前記光吸収層とに挟まれた中間層とを備え、前記光吸収層は、CZTS系の化合物から構成され、前記中間層は、CuInGa1−ySe2−z(0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦2)から構成される。
上記課題を解決するための化合物薄膜太陽電池の製造方法は、表面電極と裏面電極との間に、中間層と光吸収層とを備える化合物薄膜太陽電池の製造方法である。そして、前記裏面電極の上面に、Sn(SSe1−x)(0≦x≦1)から構成される中間層を形成する工程と、前記中間層の上面に、CZTS系の化合物から構成される光吸収層を形成する工程とを含む。
また、上記課題を解決するための化合物薄膜太陽電池の製造方法は、表面電極と裏面電極との間に、中間層と光吸収層とを備える化合物薄膜太陽電池の製造方法であって、前記裏面電極の上面に、CuInGa1−ySe2−z(0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦2)から構成される中間層を形成する工程と、前記中間層の上面に、CZTS系の化合物から構成される光吸収層を形成する工程とを含む。
上記化合物薄膜太陽電池、あるいは、上記化合物薄膜太陽電池の製造方法によれば、伝導帯下端のエネルギー準位と、価電子帯上端のエネルギー準位との各々は、光吸収層を構成する化合物よりも中間層を構成する化合物において高い。したがって、光吸収層と裏面電極との間において、励起された電子に対する障壁が形成される一方、正孔に対する障壁の形成は抑えられる。その結果、光吸収層において励起された電子が光吸収層から裏面電極へ移動することが抑えられるため、裏面電極付近において電子と正孔の再結合が抑えられる一方で、光吸収層において生成された正孔が光吸収層から裏面電極へ移動することは促される。結果として、光吸収において励起された電子の収集効率と、その電子の励起によって生成された正孔の収集効率との双方が高められる。
上記化合物薄膜太陽電池において、前記中間層の厚さは、前記光吸収層の厚さの1/50倍以上、かつ、1/10倍以下であることが好ましい。
上記構成によれば、中間層の厚さが光吸収層の厚さの1/50倍以上であるため、電子と正孔との収集効率の向上効果が高まる。また、中間層の厚さが光吸収層の厚さの1/10倍以下であるため、中間層において光吸収による電子の励起が抑えられる結果、中間層において励起された電子が、光吸収層において生成された正孔と再結合することも抑えられる。
上記化合物薄膜太陽電池において、前記裏面電極は、モリブデンおよびステンレスの少なくとも一方を含むことが好ましい。
上記構成によれば、裏面電極と中間層とがオーミック接合を形成しやすいため、裏面電極と中間層との接触抵抗に起因した起電力の低下も抑えられる。
上記化合物薄膜太陽電池において、前記中間層は、前記裏面電極と接する第1中間層と、前記光吸収層と接する第2中間層とを備え、前記第1中間層は、CuGa(SSe1−x(0≦x≦1)から構成され、前記第2中間層は、CuIn(SSe1−x(0≦x≦1)から構成されることが好ましい。
上記構成によれば、光吸収層と裏面電極との間において、光吸収層にて励起された電子に対する障壁が二段階に形成される一方で、その電子の励起によって生成された正孔に対する障壁の形成は、依然として抑えられる。
上記化合物薄膜太陽電池において、前記第1中間層の厚さは、前記第2中間層の厚さの1/2倍以上、かつ、2倍以下であることが好ましい。
上記構成によれば、励起された電子と正孔との収集効率の向上効果が高められる。
上記化合物薄膜太陽電池において、前記中間層における伝導帯下端のエネルギー準位は、前記光吸収層における伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、かつ、前記中間層における価電子帯上端のエネルギー準位は、前記光吸収層における価電子帯上端のエネルギー準位よりも高いことが好ましい。
上記化合物薄膜太陽電池の製造方法において、前記中間層を形成する工程は、前記中間層の構成元素から構成されるナノ粒子を含むインクを前記裏面電極の上面に塗布する工程を含むことが好ましい。
上記方法によれば、化合物薄膜太陽電池の製造に必要とされるコストが抑えられ、かつ、生産効率も高められる。
上記化合物薄膜太陽電池の製造方法において、前記中間層を形成する工程で用いるインクは、5質量%以上、かつ、70質量%以下のチオ尿素を含むことが好ましい。
上記方法によれば、チオ尿素の含有量が5質量%以上であることによって、熱処理後の薄膜に空洞が形成されることが抑えられる。また、チオ尿素の含有量が70質量%以下であることによって、熱処理後の薄膜の表面粗さが大きくなることが抑えられる。
上記化合物薄膜太陽電池の製造方法において、前記光吸収層を形成する工程は、前記光吸収層の構成元素から構成されるナノ粒子を含むインクを前記中間層の上面に塗布する工程を含むことが好ましい。
上記方法によれば、化合物薄膜太陽電池の製造に必要とされるコストが抑えられ、かつ、生産効率も高められる。また、中間層と光吸収層の双方を、ナノ粒子を含むインクの塗布によって形成する場合には、連続する2つの層を同じ液相プロセスによって形成することが可能であるから、これら中間層と光吸収層の形成の効率が高められる。
上記化合物薄膜太陽電池の製造方法において、前記光吸収層を形成する工程で用いるインクは、5質量%以上、かつ、70質量%以下のチオ尿素を含むことが好ましい。
上記方法によれば、チオ尿素の含有量が5質量%以上であるため、熱処理後の薄膜に空洞が形成されることが抑えられる。また、チオ尿素の含有量が70質量%以下であるため、熱処理後の薄膜の表面粗さが大きくなることが抑えられる。
本開示の技術によれば、化合物薄膜太陽電池において、電子と正孔との収集効率を向上することができる。
本開示の技術における第1の実施形態および第2の実施形態での化合物薄膜太陽電池の全体構成を示す断面図である。 第1の実施形態での光吸収層および中間層のエネルギーバンドを示すバンド構造図である。 第2の実施形態での光吸収層および中間層のエネルギーバンドを示すバンド構造図である。 第2の実施形態の変形例での化合物薄膜太陽電池の全体構成を示す断面図である。 第2の実施形態の変形例での光吸収層および中間層のエネルギーバンドを示すバンド構造図である。 従来の化合物薄膜太陽電池におけるエネルギーバンドを示すバンド構造図である。
(第1の実施形態)
図1および図2を参照して、化合物薄膜太陽電池、および、その製造方法の第1の実施形態について説明する。
[化合物薄膜太陽電池の構成]
図1に示されるように、化合物薄膜太陽電池は、基板10を備え、基板10の上には、裏面電極11、中間層12、光吸収層13、バッファ層14、半絶縁層15、窓層16、および、表面電極17がこの順に位置している。なお、化合物薄膜太陽電池は、裏面電極11と光吸収層13との間に中間層12を有することが重要であり、バッファ層14、半絶縁層15、窓層16、および、表面電極17の少なくとも1つが省略されてもよく、また、上記各層以外の他の層を有していてもよい。例えば、窓層16の上に、反射防止膜が積層されていてもよい。反射防止膜は光の反射を抑える機能を有するため、反射防止膜を設けることによって、より多くの光を光吸収層で吸収させることができる。反射防止膜は、例えば、MgFを用いて100nm程度の厚さに形成される。
基板10としては、例えば、ガラス板、金属板、または、プラスチック等の樹脂フィルムが用いられる。
裏面電極11を形成する材料としては、例えば、Mo、Ni、Cu、Ti、Fe、Al、チタニア、ステンレス等の金属が用いられる。特に、中間層12と裏面電極11とがオーミック接合を形成しやすい観点において、Mo、および、ステンレスは好ましい。なお、裏面電極11としては、カーボンやグラフェンなどのカーボン系電極、または、ITO(酸化インジウムスズ)やZnO等の透明導電膜が用いられてもよい。
中間層12は、裏面電極11と光吸収層13とに挟まれて、裏面電極11と光吸収層13とに接している。中間層12は、p型化合物半導体であって、Sn(SSe1−x)(0≦x≦1)から構成される。中間層12の厚さは、光吸収層13の厚さの1/50倍以上、かつ、1/10倍以下であることが好ましい。中間層12の厚さが光吸収層13の厚さの1/50倍以上であることによって、電子と正孔との収集効率の向上効果が高められる。中間層12の厚さが光吸収層13の厚さの1/10倍以下であることによって、中間層12の光吸収によって電子が励起されることが抑えられ、中間層12において励起された電子と、光吸収層13において生成された正孔との再結合に起因して、光電変換効率が低下することが抑えられる。
光吸収層13は、p型化合物半導体であって、CZTS系の化合物半導体から構成される。CZTS系の化合物半導体は、Cu、Zn、Sn、S、および、Seから構成される群から選択される少なくとも1つを含む、いわゆるI−(II−IV)−VI族の化合物半導体である。CZTS系の化合物半導体としては、例えば、CuZnSnS、CuZnSnSe、CuZnSn(S,Se)等が挙げられる。光電変換効率が高められる観点において、光吸収層13の組成比は、Zn/Sn比が0.8以上、かつ、1.2以下、Cu/(Zn+Sn)比が0.7以上、かつ、0.9以下であることが好ましい。
光吸収層13の厚さは、0.3μm以上、かつ、10μm以下であることが好ましく、例えば、2μmであることが好ましい。
バッファ層14は、n型化合物半導体であって、例えば、Cd、Zn、および、Inから構成される群から選択される少なくとも1つを含む化合物から構成される。こうした化合物としては、例えば、CdS、Zn(S,O,OH)、または、Inが用いられる。
半絶縁層15は、i型化合物半導体であって、半絶縁層15としては、例えば、ZnO等の金属酸化物が用いられる。窓層16は、n型化合物半導体であって、窓層16としては、例えば、Al、Ga、または、B等が添加されたZnOが用いられる。
表面電極17は、窓層16の上面の一部に積層されている。表面電極17の材料としては、例えば、Al、Ag等の金属が用いられる。あるいは、表面電極17として、カーボンやグラフェン等のカーボン系電極、または、ITOやZnO等の透明導電膜が用いられてもよい。
[化合物薄膜太陽電池の製造方法]
化合物薄膜太陽電池は、基板10の上に、裏面電極11、中間層12、光吸収層13、バッファ層14、半絶縁層15、窓層16、表面電極17が、この順に積層されることによって形成される。
裏面電極11は、基板10の上面に、例えば、スパッタ法、蒸着法、CVD法等を用いて形成される。
中間層12は、例えば、ナノ粒子印刷法、電着法、スパッタ法、蒸着法、または、ヒドラジン溶液法等を用いて形成される。特に、化合物薄膜太陽電池の製造コストが抑えられ、かつ、生産効率が高い観点において、ナノ粒子印刷法は好ましい。ナノ粒子印刷法を用いて中間層12を形成する場合、まず、中間層12の構成元素から構成されるナノサイズの粒子の分散したインクが、裏面電極11の上面に塗布されて、ナノサイズの粒子を含む塗膜が形成される。そして、塗膜に含まれるインクの溶媒が除去されることによって塗膜が乾燥し、乾燥後の塗膜が熱処理されることによって、ナノサイズの粒子が結晶化した層として中間層12が形成される。
ナノ粒子としては、非晶質のナノ粒子を用いることが好ましい。結晶性の粒子は、エネルギー的に安定な状態にあるため、各分子が一定の位置に固定されやすいが、非晶質の粒子は、熱処理によって各組成成分が拡散しやすいため、中間層12の緻密性が向上する。
ナノ粒子を分散させる溶媒は、有機溶媒であれば、特に制限されない。有機溶媒は、例えば、アルコール、エーテル、エステル、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、または、芳香族炭化水素等から選択することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等の炭素数10未満のアルコール、ジエチールエーテル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、および、トルエンが好ましく、メタノール、ピリジン、トルエン、および、ヘキサンが特に好ましい。
インクは、バインダとして、含有量が5質量%以上、かつ、70質量%以下のチオ尿素を含むことが好ましい。特に、チオ尿素の含有量は、20質量%以上、かつ、60質量%以下であることが好ましい。チオ尿素の含有量が5質量%以上であることによって、熱処理後の薄膜に空洞が形成されることが抑えられる。チオ尿素の含有量が70質量%以下であることによって、熱処理後の薄膜の表面粗さが大きくなることが抑えられる。
なお、バインダとしては、チオ尿素に代えて、チオール類、セレノール類、または、炭素数10以上のアルコール類等が用いられてもよい。あるいは、バインダとして、Se粒子、S粒子、Se化合物、または、S化合物等が用いられてもよい。さらには、バインダとして、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム、セレン化カリウム、セレン酸ナトリウム、または、チオ硫酸塩等が用いられてもよい。
インクの塗布方法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、または、スプレー法等の塗布法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、反転オフセット印刷法、または、凸版印刷法等の印刷法が挙げられる。
熱処理は、例えば、加熱炉によるアニール処理や、ラピッドサーマルアニール(RTA)によって行われる。熱処理の雰囲気は、HSガス、HSeガス、窒素ガス、Arガス、Se蒸気、S蒸気、水素ガス、および、水素と不活性ガスの混合ガスから構成される群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
光吸収層13は、例えば、ナノ粒子印刷法、電着法、スパッタ法、蒸着法、または、ヒドラジン溶液法等を用いて形成される。光吸収層13の形成方法としては、中間層12の場合と同様の理由から、ナノ粒子印刷法が好ましい。ナノ粒子印刷法を用いて光吸収層13を形成する場合、まず、光吸収層13の構成元素から構成されるナノサイズの粒子の分散したインクが、中間層12の上面に塗布されて、ナノサイズの粒子を含む塗膜が形成される。そして、塗膜に含まれるインクの溶媒が除去されることによって塗膜が乾燥し、乾燥後の塗膜が熱処理されることによって、ナノサイズの粒子が結晶化した層として光吸収層13が形成される。
中間層12の場合と同様に、ナノ粒子としては、非晶質のナノ粒子を用いることが好ましい。ナノ粒子を分散させる溶媒は、中間層12の場合にて例示した各種の溶媒が用いられる。
光吸収層13を形成するためのインクも、中間層12の場合と同様に、バインダとして、含有量が5質量%以上、かつ、70質量%以下のチオ尿素を含むことが好ましく、特に、20%以上、かつ、60%以下のチオ尿素を含むことが好ましい。バインダとしては、チオ尿素の他に、中間層12の場合にて例示した各種の物質を用いることができる。
インクの塗布方法としては、中間層12の場合にて例示した各種の塗布法や印刷法が用いられる。また、熱処理の方法や熱処理の雰囲気も、中間層12の場合にて例示した方法および雰囲気が用いられる。なお、熱処理の温度は250℃以上が好ましい。基板10としてガラスが用いられる場合には、熱処理の温度は、ガラスが耐え得る温度、具体的には、650℃以下が好ましく、550℃以下がより好ましい。
なお、中間層12を形成するためのインクと光吸収層13を形成するためのインクとを連続して塗布した後に、二層の塗膜に対してまとめて熱処理を行ってもよい。
バッファ層14は、光吸収層13の上面に、例えば、CBD法、MOCVD法、または、ALD法等を用いて形成される。
半絶縁層15は、バッファ層14の上面に、例えば、MOCVD法やスパッタ法を用いて形成され、窓層16は、半絶縁層15の上面に、例えば、MOCVD法やスパッタ法を用いて形成される。
表面電極17は、窓層16の上面の一部に、例えば、スパッタ法、蒸着法、CVD法等を用いて形成される。
[化合物薄膜太陽電池の作用]
図2に示されるように、電子親和力とバンドギャップとを考慮すると、Sn(SSe1−x)(0≦x≦1)における伝導帯下端のエネルギー準位Ecは、CZTS系の化合物における同エネルギー準位Ecよりも高い。さらに、Sn(SSe1−x)(0≦x≦1)における価電子帯上端のエネルギー準位Evは、CZTS系の化合物における同エネルギー準位Evよりも高い。
以下、これらの化合物の一例について、具体的な電子親和力、および、バンドギャップを挙げて説明する。D.Avellaneda et al., Journal of The Electrochemical Society 157(6) D346-D352(2010),H.Katagiri et al., Thin Solid Films vol.517(2009) p2455-2460によれば、CZTS系の化合物の一例であるCuZnSnSの電子親和力は4.58eVであり、バンドギャップは1.4eV〜1.5eVである。また、M.Sugiyama et al., Thin Solid Films vol.519(2011) p7429-7431によれば、Sn(SSe1−x)(0≦x≦1)の一例であるSnSの電子親和力は4.0±0.1eVであり、バンドギャップは1.3eVである。したがって、伝導帯下端のエネルギー準位Ecは、CuZnSnSよりもSnSの方が高く、かつ、価電子帯上端のエネルギー準位Evは、CuZnSnSよりもSnSの方が高い。
なお、特定の層が有する電子親和力やバンドギャップの大きさは、その特定の層における組成比、密度、結晶構造、さらには、他の層との接合形態によって若干異なる。ただし、他のCZTS系の化合物や、他のSn(SSe1−x)(0≦x≦1)において、電子親和力の高低関係、および、バンドギャップの大小関係は、上述したCuZnSnSとSnSとが有する関係を維持する。
したがって、光吸収層13と裏面電極11との間に中間層12が介在することによって、光吸収層13と裏面電極11との間には、光吸収層13において励起された電子に対する障壁が形成される一方、正孔に対する障壁は形成されない。その結果、光吸収層13において励起された電子の裏面電極11への移動が抑えられて、裏面電極11付近での電子と正孔の再結合が抑えられるとともに、正孔については、光吸収層13から裏面電極11への移動の阻害が抑えられる。結果として、光吸収によって励起された電子の収集効率と、電子の励起によって生成した正孔の収集効率との双方が高められ、ひいては、化合物薄膜太陽電池における光電変換効率が高められる。
また、従来のように、中間層が、粒子が分散された層として形成される場合と比較して、本実施形態では、中間層12が、裏面電極11上の全体に面状に広がる層として形成される。したがって、粒子の分散状態によって光電変換効率が影響を受けることが抑えられるため、化合物薄膜太陽電池としての安定性も高められる。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)Sn(SSe1−x)(0≦x≦1)から構成される中間層12が、光吸収層13と裏面電極11との間に介在することによって、光吸収層13において励起された電子に対する障壁が形成される一方、正孔に対する障壁の形成は抑えられる。その結果、光吸収によって励起された電子の収集効率と正孔の収集効率との双方が高められる。
(2)中間層12における伝導帯下端のエネルギー準位は、光吸収層13における伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、かつ、中間層12における価電子帯上端のエネルギー準位は、光吸収層13における価電子帯上端のエネルギー準位よりも高い。化合物薄膜太陽電池がこうした構成を有することによって、上記(1)に準じた効果が得られる。
(3)中間層12の厚さが、光吸収層13の厚さの1/50倍以上、かつ、1/10倍以下であるため、励起された電子と正孔との収集効率の向上効果が高められるとともに、中間層12においては、光吸収による電子の励起が抑えられる。結果として、中間層12において励起された電子と、光吸収層13において生成された正孔とが再結合することが抑えられる。
(4)裏面電極11が、モリブデン、および、ステンレスの少なくとも一方を含むことによって、裏面電極11と中間層12とがオーミック接合を形成しやすい。それゆえに、裏面電極11と中間層12との接触抵抗に起因した起電力の低下が、化合物薄膜太陽電池において抑えられる。
(5)中間層12と光吸収層13とが、ナノ粒子を含むインクの塗布によって形成されるため、化合物薄膜太陽電池の製造にかかるコストが抑えられ、かつ、生産効率も高められる。また、連続する2つの層である中間層12と光吸収層13の双方が、共通する液相プロセス、すなわち、ナノ粒子を含むインクの塗布によって形成されるため、これら中間層12と光吸収層13との形成の効率が高められる。
(6)中間層12を形成するためのインクと、光吸収層13を形成するためのインクのそれぞれが、5質量%以上、かつ、70質量%以下のチオ尿素を含むため、熱処理後の薄膜に空洞が形成されることが抑えられるとともに、熱処理後の薄膜の表面粗さが大きくなることが抑えられる。
(第2の実施形態)
図3〜図5を参照して、化合物薄膜太陽電池、および、その製造方法の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、中間層12の組成が第1の実施形態と主に異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
[化合物薄膜太陽電池の構成]
第2の実施形態の化合物薄膜太陽電池は、先の図1に示される第1の実施形態の化合物薄膜太陽電池と同様に、基板10を備え、基板10の上には、裏面電極11、中間層12、光吸収層13、バッファ層14、半絶縁層15、窓層16、および、表面電極17が、この順に位置している。これらの層のうち、中間層12の組成のみが、第1の実施形態と異なる。なお、第1の実施形態の化合物薄膜太陽電池と同様に、化合物薄膜太陽電池は、裏面電極11と光吸収層13との間に中間層12を有することが重要であり、バッファ層14、半絶縁層15、窓層16、および、表面電極17の少なくとも1つが省略されてもよく、また、上記各層以外の他の層を有していてもよい。
第2の実施形態において、中間層12は、p型化合物半導体であって、CIGS系の化合物から構成される。CIGS系の化合物とは、CuInGa1−ySe2−z(0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦2)の組成を有する化合物である。中間層12の厚さは、光吸収層13の厚さの1/50倍以上、かつ、1/10倍以下であることが好ましい。中間層12の厚さが光吸収層13の厚さの1/50倍以上であることによって、励起された電子と正孔との収集効率の向上効果が高められる。中間層12の厚さが光吸収層13の厚さの1/10倍以下であることによって、中間層12の光吸収によって電子が励起されることが抑えられるため、中間層12において励起された電子と、光吸収層13において生成された正孔との再結合に起因して、光電変換効率が低下することが抑えられる。
[化合物薄膜太陽電池の製造方法]
第2の実施形態の中間層12は、第1の実施形態の中間層12と同様の方法で形成される。
すなわち、第2の実施形態の中間層12は、例えば、ナノ粒子印刷法、電着法、スパッタ法、蒸着法、または、ヒドラジン溶液法等を用いて形成される。特に、化合物薄膜太陽電池の製造コストが抑えられ、かつ、生産効率も高いため、ナノ粒子印刷法は好ましい。ナノ粒子印刷法を用いて中間層12を形成する場合、まず、中間層12の構成元素から構成されるナノサイズの粒子が分散されたインクが、裏面電極11の上面に塗布されて、ナノサイズの粒子を含む塗膜が形成される。そして、塗膜に含まれるインクの溶媒が除去されることによって塗膜が乾燥し、乾燥後の塗膜が熱処理されることによって、ナノサイズの粒子の結晶化した層として中間層12が形成される。
第2の実施形態においても、ナノ粒子としては、非晶質のナノ粒子を用いることが好ましい。ナノ粒子を分散させる溶媒は、第1の実施形態にて例示した各種の溶媒が用いられる。インクには、バインダとして、含有量が5質量%以上、かつ、70質量%以下のチオ尿素を含有することが好ましく、特に、20質量%以上、かつ、60質量%以下のチオ尿素を含有することが好ましい。バインダとしては、チオ尿素の他に、第1の実施形態にて例示した各種の物質を用いることができる。
インクの塗布方法としては、第1の実施形態にて例示した各種の塗布法や印刷法が用いられる。また、熱処理の方法や熱処理の雰囲気も、第1の実施形態にて例示した方法および雰囲気が用いられる。
[化合物薄膜太陽電池の作用]
図3に示されるように、電子親和力とバンドギャップとを考慮すると、CIGS系の化合物における伝導帯下端のエネルギー準位Ecは、CZTS系の化合物におけるエネルギー準位Ecよりも高い。さらに、CIGS系の化合物における価電子帯上端のエネルギー準位Evは、CZTS系の化合物におけるエネルギー準位Evよりも高い。
以下、これらの化合物の一例について、具体的な電子親和力、および、バンドギャップを挙げて説明する。第1の実施形態にて述べたように、D.Avellaneda et al., Journal of The Electrochemical Society 157(6) D346-D352(2010),H.Katagiri et al., Thin Solid Films vol.517(2009) p2455-2460によれば、CZTS系の化合物の一例であるCuZnSnSの電子親和力は4.58eVであり、バンドギャップは1.4eV〜1.5eVである。また、T.Minemoto et al., Solar Energy Materials & Solar Cells 67(2001) p83-88によれば、CIGS系の化合物の電子親和力A、および、バンドギャップEgは、下記式1、および、式2によって示される。
電子親和力A=4.35 − 0.421x − 0.244xeV…式1
(xは、CIGS系の化合物における組成比であるGa/(In+Ga)を示す)
バンドギャップEg=1.011 + 0.421x + 0.244xeV…式2
(xは、CIGS系の化合物中における組成比であるGa/(In+Ga)を示す)
したがって、伝導帯下端のエネルギー準位Ecは、CuZnSnSよりもCIGS系の化合物の方が高く、かつ、価電子帯上端のエネルギー準位Evは、CuZnSnSよりもCIGS系の化合物の方が高い。
なお、特定の層が有する電子親和力やバンドギャップの大きさは、その特定の層における組成比、密度、結晶構造、さらには、他の層との接合形態によって若干異なる。ただし、他のCZTS系の化合物や、他のCIGS系の化合物において、電子親和力の高低関係、および、バンドギャップの大小関係は、上述したCuZnSnSとCIGS系の化合物とが有する関係を維持する。
したがって、第2の実施形態においても、光吸収層13と裏面電極11との間に中間層12が介在することによって、光吸収層13と裏面電極11との間には、光吸収層13によって励起された電子に対する障壁が形成される一方、正孔に対する障壁は形成されない。その結果、光吸収層13において励起された電子の裏面電極11への移動が抑えられて、裏面電極11付近での電子と正孔の再結合が抑えられるとともに、正孔については、光吸収層13から裏面電極11への移動の阻害が抑えられる。結果として、光吸収によって励起された電子の収集効率と、電子の励起によって生成した正孔の収集効率との双方が高められ、ひいては、化合物薄膜太陽電池における光電変換効率が高められる。
なお、中間層12は、複数の層から構成されてもよい。図4は、中間層12が、第1中間層12aと第2中間層12bとの2つの層から構成される例を示している。
第1中間層12aは、中間層12を構成する2つの層のうちの下層であって、裏面電極11に接している。第1中間層12aは、p型化合物半導体であって、CuGa(SSe1−x(0≦x≦1)から構成される。
第2中間層12bは、中間層12を構成する2つの層のうちの上層であって、光吸収層13に接している。第2中間層12bは、p型化合物半導体であって、CuIn(SSe1−x(0≦x≦1)から構成される。
第1中間層12aの厚さは、第2中間層12bの厚さの1/2倍以上、かつ、2倍以下であることが好ましい。第1中間層12aと第2中間層12bとの厚さがこうした関係にあれば、電子と正孔との収集効率の向上効果が高められる。
第1の実施形態にて述べたように、D.Avellaneda et al., Journal of The Electrochemical Society 157(6) D346-D352(2010),H.Katagiri et al., Thin Solid Films vol.517(2009) p2455-2460によれば、CZTS系の化合物の一例であるCuZnSnSの電子親和力は4.58eVであり、バンドギャップは1.4eV〜1.5eVである。また、P.Liu et al., Journal of Materials Research vol.25 No.02(2010) p207-212によれば、CuIn(SSe1−x(0≦x≦1)の一例であるCuInSeの電子親和力は4.48eVであり、バンドギャップは1.04eVである。また、Th.Glatzel et al., Applied Physics Letters vol.81 No.11(2002) p2017-2019によれば、CuGa(SSe1−xの一例であるCuGaSeの電子親和力は4.1eVであり、バンドギャップは1.67eVである。 他のCZTS系の化合物や、他のCuGa(SSe1−x(0≦x≦1)、他のCuIn(SSe1−x(0≦x≦1)においても、電子親和力の高低関係、および、バンドギャップの大小関係は、上述した関係を維持する。
図5に示されるように、第1中間層12aと第2中間層12bとが設けられる構成では、光吸収層13と裏面電極11との間には、励起された電子に対する障壁が二段階に形成される一方、正孔に対する障壁は形成されない。そして、励起された電子が、光吸収層13と第2中間層12bとの境界を仮に通過するとしても、その励起された電子が中間層全体を通過するためには、第2中間層12bを移動した後に、さらに、第1中間層12aと第2中間層12bとの境界を通過する必要がある。結果として、励起された電子の光吸収層13から裏面電極11への移動の抑制が効果的であるとともに、正孔については、光吸収層13から裏面電極11への移動の阻害が、依然として抑えられる。結果として、光吸収によって励起された電子の収集効率と、電子の励起によって生成した正孔の収集効率とがより高められる。
なお、中間層12は、3層以上の層から構成されてもよい。また、第1の実施形態と第2の実施形態との組み合わせによって、中間層12は、Sn(SSe1−x)(0≦x≦1)から構成される層と、CuInGa1−ySe2−z(0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦2)から構成される層とを備えていてもよい。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(3)〜(6)の効果に加えて、以下の効果が得られる。
(7)CuInGa1−ySe2−z(0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦2)から構成される中間層12が、光吸収層13と裏面電極11との間に介在することによって、光吸収層13において励起された電子に対する障壁が形成される一方、正孔に対する障壁の形成は抑えられる。その結果、光吸収によって励起された電子の収集効率と正孔の収集効率との双方が高められる。
(8)中間層12における伝導帯下端のエネルギー準位は、光吸収層13における伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、かつ、中間層12における価電子帯上端のエネルギー準位は、光吸収層13における価電子帯上端のエネルギー準位よりも高い。化合物薄膜太陽電池がこうした構成を有することによって、上記(7)に準じた効果が得られる。
(9)中間層12が、CuGa(SSe1−x(0≦x≦1)から構成される第1中間層12aと、CuIn(SSe1−x(0≦x≦1)から構成される第2中間層12bとから構成されるため、励起された電子に対する障壁が二段階に形成される一方、正孔に対する障壁の形成は依然として抑えられる。その結果、励起された電子の光吸収層13から裏面電極11への移動の抑制が効果的であるとともに、正孔については、光吸収層13から裏面電極11への移動の阻害は依然として抑えられる。結果として、光吸収によって励起された電子の収集効率と正孔の収集効率との双方がより高められる。
(10)第1中間層12aの厚さが、第2中間層12bの厚さの1/2倍以上、かつ、2倍以下であるため、電子と正孔との収集効率の向上効果が高められる。
(実施例)
上述した化合物薄膜太陽電池、および、その製造方法について、以下に挙げる具体的な実施例を用いて説明する。
<実施例1>
(SnSインクの調整)
ピリジンに溶解したSnIと、メタノールに溶解したNaSeとを混合して、Sn:Sのモル比が1:1の混合液を得た。この混合液を不活性ガス雰囲気下、0℃で反応させてSn−Sナノ粒子を製造した。洗浄したSn−Sナノ粒子とチオ尿素とを、ナノ粒子とチオ尿素との質量比が3:2となるように混合し、この混合物にピリジンとメタノールとをさらに加えて、固形分が2質量%のSn−Sインクを調製した。
(Cu−Zn−Sn−Se−Sインクの調整)
Cu:Zn:Snのモル比が2:1.6:1.4となるように、CuI、ZnI、および、SnIをピリジンに溶解して、第1の溶液を調製した。また、Se:Sのモル比が2:2となるように、NaSeとNaSとをメタノールに溶解して、第2の溶液を調製した。
第1の溶液と第2の溶液とを混合して、Cu:Zn:Sn:Se:Sのモル比が2:1.6:1.4:2:2となる混合液を得た。この混合液を不活性ガス雰囲気下、0℃で反応させてCu−Zn−Sn−Se−Sナノ粒子を製造した。反応溶液を濾過してメタノールで洗浄した後、得られたCu−Zn−Sn−Se−Sナノ粒子とチオ尿素とを、ナノ粒子とチオ尿素との質量比が3:2となるように混合し、この混合物にピリジンとメタノールとをさらに加えて、固形分が2質量%のCu−Zn−Sn−Se−Sインクを調整した。
(裏面電極の形成)
基板としてソーダライムガラスを用い、スパッタ法によりMoから構成される裏面電極を形成した。
(中間層の形成)
裏面電極の上にスプレー法によりSn−Sインクを塗布し、250℃のオーブンで溶剤を蒸発させた後に、3.0%の水素を含む窒素雰囲気下、500℃で30分間セレン化処理を行った。これにより、膜厚が100nmのSnS薄膜から構成される中間層が得られた。
(光吸収層の形成)
中間層の上にスプレー法によりCu−Zn−Sn−S−Seインクを塗布し、250℃のオーブンで溶剤を蒸発させた後に、3.0%の水素を含む窒素雰囲気下、500℃で30分間セレン化処理を行った。これにより、膜厚が2μmのCZTS薄膜から構成される光吸収層が得られた。
(バッファ層の形成)
0.0015Mの硫酸カドミウム(CdSO)、0.0075Mのチオ尿素(NHCSNH)、および、1.5Mのアンモニア水(NHOH)を含有する混合液を67℃に加熱した。この混合液中に、上述の光吸収層が形成された構造体を浸漬することによって、光吸収層上に膜厚が100nmのCdSから構成されるバッファ層が形成された。
(半絶縁層の形成)
ジエチル亜鉛と水とを原料としたMOCVD法によって、膜厚が50nmのZnOから構成される半絶縁層をバッファ層の上に形成した。
(窓層の形成)
ジエチル亜鉛、水、および、ジボランを原料としたMOCVD法により、膜厚が1μmのZnO:Bから構成される窓層を半絶縁層の上に形成した。
(表面電極の形成)
蒸着法を用いて、膜厚が0.3μmのAlから構成される表面電極を窓層の上に形成した。これによって、実施例1の化合物薄膜太陽電池が得られた。
<実施例2>
(Cu−Ga−Seインクの調整)
ピリジンに溶解したCuI、GaIと、メタノールに溶解したNaSeとを混合して、Cu:Ga:Seのモル比が0.8:1:1.9の混合液を得た。この混合液を不活性ガス雰囲気下、0℃で反応させてCu−Ga−Seナノ粒子を製造した。洗浄したCu−In−Seナノ粒子とチオ尿素とを、ナノ粒子とチオ尿素との質量比が3:2となるように混合し、この混合物にピリジンとメタノールをさらに加えて、固形分が2質量%のCu−Ga−Seインクを調製した。
(Cu−In−Seインクの調整)
ピリジンに溶解したCuI、InIと、メタノールに溶解したNaSeとを混合して、Cu:In:Seのモル比が0.8:1:1.9の混合液を得た。この混合液を不活性ガス雰囲気下、0℃で反応させてCu−In−Seナノ粒子を製造した。洗浄したCu−In−Seナノ粒子とチオ尿素とを、ナノ粒子とチオ尿素との質量比が3:2となるように混合し、この混合物にピリジンとメタノールをさらに加えて、固形分が2質量%のCu−In−Seインクを調製した。
(Cu−Zn−Sn−Se−Sインクの調整)
Cu−Zn−Sn−Se−Sインクは、実施例1と同様の方法にて調整した。
(化合物薄膜太陽電池の製造)
実施例1と同様に形成した裏面電極の上に、スプレー法によりCu−Ga−Seインクを塗布し、250℃のオーブンで溶剤を蒸発させた後に、Cu−In−Seインクを塗布した。さらに、3.0%の水素を含む窒素雰囲気下、500℃で30分間セレン化処理を行った。これにより、CuGaSe薄膜から構成される第1中間層とCuInSe薄膜から構成される第2中間層とから構成される膜厚が100nmの中間層が得られた。
中間層を形成した後に、実施例1と同様にして、光吸収層、バッファ層、半絶縁層、窓層を形成して、実施例2の化合物薄膜太陽電池を得た。
10…基板、11…裏面電極、12…中間層、12a…第1中間層、12b…第2中間層、13…光吸収層、14…バッファ層、15…半絶縁層、16…窓層、17…表面電極。

Claims (13)

  1. 表面電極と裏面電極との間に位置する光吸収層と、
    前記裏面電極と前記光吸収層とに挟まれた中間層と、を備え、
    前記光吸収層は、CZTS系の化合物から構成され、
    前記中間層は、Sn(SSe1−x)(0≦x≦1)から構成される
    化合物薄膜太陽電池。
  2. 表面電極と裏面電極との間に位置する光吸収層と、
    前記裏面電極と前記光吸収層とに挟まれた中間層と、を備え、
    前記光吸収層は、CZTS系の化合物から構成され、
    前記中間層は、CuInGa1−ySe2−z(0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦2)から構成される
    化合物薄膜太陽電池。
  3. 前記中間層の厚さは、前記光吸収層の厚さの1/50倍以上、かつ、1/10倍以下である
    請求項1または2に記載の化合物薄膜太陽電池。
  4. 前記裏面電極は、モリブデンおよびステンレスの少なくとも一方を含む
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物薄膜太陽電池。
  5. 前記中間層は、前記裏面電極と接する第1中間層と、前記光吸収層と接する第2中間層と、を備え、
    前記第1中間層は、CuGa(SSe1−x(0≦x≦1)から構成され、
    前記第2中間層は、CuIn(SSe1−x(0≦x≦1)から構成される
    請求項2に記載の化合物薄膜太陽電池。
  6. 前記第1中間層の厚さは、前記第2中間層の厚さの1/2倍以上、かつ、2倍以下である
    請求項5に記載の化合物薄膜太陽電池。
  7. 前記中間層における伝導帯下端のエネルギー準位は、前記光吸収層における伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、かつ、
    前記中間層における価電子帯上端のエネルギー準位は、前記光吸収層における価電子帯上端のエネルギー準位よりも高い
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物薄膜太陽電池。
  8. 表面電極と裏面電極との間に、中間層と光吸収層とを備える化合物薄膜太陽電池の製造方法であって、
    前記裏面電極の上面に、Sn(SSe1−x)(0≦x≦1)から構成される前記中間層を形成する工程と、
    前記中間層の上面に、CZTS系の化合物から構成される前記光吸収層を形成する工程と、
    を含む化合物薄膜太陽電池の製造方法。
  9. 表面電極と裏面電極との間に、中間層と光吸収層とを備える化合物薄膜太陽電池の製造方法であって、
    前記裏面電極の上面に、CuInGa1−ySe2−z(0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦2)から構成される前記中間層を形成する工程と、
    前記中間層の上面に、CZTS系の化合物から構成される前記光吸収層を形成する工程と、
    を含む化合物薄膜太陽電池の製造方法。
  10. 前記中間層を形成する工程は、前記中間層の構成元素から構成されるナノ粒子を含むインクを前記裏面電極の上面に塗布する工程を含む
    請求項8または9に記載の化合物薄膜太陽電池の製造方法。
  11. 前記中間層を形成する工程で用いるインクは、5質量%以上、かつ、70質量%以下のチオ尿素を含む
    請求項10に記載の化合物薄膜太陽電池の製造方法。
  12. 前記光吸収層を形成する工程は、前記光吸収層の構成元素から構成されるナノ粒子を含むインクを前記中間層の上面に塗布する工程を含む
    請求項8〜11のいずれか一項に記載の化合物薄膜太陽電池の製造方法。
  13. 前記光吸収層を形成する工程で用いるインクは、5質量%以上、かつ、70質量%以下のチオ尿素を含む
    請求項12に記載の化合物薄膜太陽電池の製造方法。
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