JP2015068724A - レーダ装置、車両制御システム、および、信号処理方法 - Google Patents

レーダ装置、車両制御システム、および、信号処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】物標が実際に存在する角度を確実に導出する技術を提供する。【解決手段】互いに送信方向が水平方向で順次異なる第1の送信アンテナ、第2の送信アンテナ、および、第3の送信アンテナの各送信アンテナから第1の送信波、第2の送信波、および、第3の送信波をそれぞれ出力する。そして、第1の送信アンテナによる受信信号の第1受信レベルと、第3の送信アンテナによる受信信号の第3受信レベルとに基づき、物標の角度が位相折返しなしの角度であるか位相が360?ずれた位相折返しありの角度であるかを判定する。さらに、第1の位相折返し判定手段の判定結果と、第2の送信アンテナによる受信信号の第2受信レベルとに基づき、物標の角度が前記位相折返しなしの角度であるか位相折返しありの角度であるかを判定する。これにより、物標が実際に存在する角度を確実に導出できる。【選択図】図2

Description

本発明は、物標の位置を導出するレーダ装置に関する。
従来、車両に備えられたレーダ装置は、移動物標および静止物標を含む物標の車両に対する位置(距離および角度)を導出する。レーダ装置は、送信アンテナから所定範囲に送信波を出力し、物標からの反射波を複数の受信アンテナで受信する。そして、レーダ装置は、複数の受信アンテナで受信した受信信号の位相差により、物標の存在する角度を導出する。
位相差で角度を推定する場合、レーダ装置が検出できる位相差は−360°〜360°の範囲内である。そのため、レーダ装置は、−360°以下、および、360°以上のいずれかの位相差を持つ角度位置に存在する物標からの受信信号に対して、絶対値で360°よりも小さい位相差を検出する。位相差360°を角度に換算すると約37degの誤差となる。そのため、実際に物標が存在する角度と、レーダ装置が推定した角度に大きなずれが生じてしまう。この現象を位相折り返しという。例えば、受信信号の位相差がA(−360°<A<360°)の場合、位相差がA1(A+360°)の場合
、および位相差がA2(A−360°)の場合、レーダ装置はいずれも位相差をA(−360°<A<360°)として角度推定を行うことになり3者間の区別がつかない。
そこで、本出願人は、位相折り返し対策として、送信方向が水平方向で異なる2本の送信アンテナを設け、位相差から推定した物標の角度と、各送信アンテナに対する受信レベルとに基づき位相折り返しの有無を判定する技術がある(例えば、特許文献1)。すなわち、物標が位相差A(−360°<A<360°)に対応する角度位置に存在する場合、位相差がA1(A+360°)に対応する角度位置に存在する場合、および、位相差A2(A−360°)に対応する角度位置に存在する場合とで、右側送信アンテナによる受信信号と左側送信アンテナによる受信信号とのレベル差が異なる。この特性を利用し、推定した角度に対して受信レベル差を算出することで、物標の角度が、位相差A(−360°<A<360°)対応する角度位置であるのか(すなわち、位相折り返しがない)、あるいはA1およびA2のいずれか(A±360°)に対応する角度位置であるのか(すなわち、位相折り返しがある)のかを判定している。
特開2012−185029号公報
しかしながら、上記先行技術においても、位相折り返しがない場合の受信レベル差と位相折り返しがある場合の受信レベル差とがほぼ同じになる推定角度範囲が存在する場合があることが判明した。これは送信アンテナのサイドローブの影響によるものである。
これについて詳述すると、左右2本の送信アンテナはそれぞれ送信方向にメインローブを有するため、受信レベルは送信方向中心が最もが高く、中心から外れていくにつれて低下する。そのため物標が位相折り返しのない角度位置(すなわち、位相差A(−360°〜360°)を持つ角度位置)に存在する場合は、2本の送信アンテナによる受信レベル差は小さく、物標が例えば+側の位相折り返し位置(すなわち、位相差A1(A+360°)を持つ角度位置)に存在する場合は、本来右側送信アンテナによる受信信号レベルの方が左側送信アンテナによる受信信号レベルより大きくなるため、受信レベル差は大きくなる。この特性を利用し、推定した角度に対する受信レベル差を算出することで、受信レベル差が小さければ位相折り返しはない(すなわち、実際の物標角度は位相差Aに対応する角度位置)と判定でき、また受信レベル差が大きければ、位相折り返しがある(すなわち、実際の物標角度は位相差A1(A+360°)に対応する角度位置)と判定できる。ところが、位相差A1(A+360°)を持つ角度位置での左側送信アンテナによる受信レベルが、左側送信アンテナのサイドローブの影響により増加すると、右側送信アンテナによる受信信号レベルとの差が小さくなり、位相折り返しがない場合と区別がつかなくなる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、物標の存在する角度を正確に導出する技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、物標からの反射波を複数の受信アンテナで受信した受信信号の位相差により前記物標の角度を導出するレーダ装置であって、互いに送信方向が水平方向で順次異なる第1の送信アンテナ、第2の送信アンテナ、および、第3の送信アンテナと、前記各送信アンテナから第1の送信波、第2の送信波、および、第3の送信波をそれぞれ出力する送信手段と、前記第1の送信アンテナによる受信信号の第1受信レベルと、前記第3の送信アンテナによる受信信号の第3受信レベルとに基づき、前記物標の角度が位相折返しなしの角度であるか位相が360°ずれた位相折返しありの角度であるかを判定する第1の位相折返し判定手段と、前記第1の位相折返し判定手段の判定結果と、前記第2の送信アンテナによる受信信号の第2受信レベルとに基づき、前記物標の角度が前記位相折返しなしの角度であるか前記位相折返しありの角度であるかを判定する第2の位相折返し判定手段と、を備えることを特徴とするレーダ装置。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のレーダ装置において、前記第1の送信アンテナの送信方向と前記第3の送信アンテナの送信方向は、前記第2の送信アンテナの送信方向を基準に対称な方向に設定されており、前記第2の送信波は、前記第1の送信波および第3の送信波よりも狭い送信範囲を有する送信波であり、前記第1の送信波、前記第2の送信波、および、前記第3の送信波の一部の送信範囲が重畳する。
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載のレーダ装置において、前記第2の位相折返し判定手段は、前記第1受信レベル、および、前記第3受信レベルの少なくともいずれかの受信レベルの値よりも前記第2受信レベルの値が所定値以下の場合は、前記物標の角度を前記位相折返しあり角度であると判定する。
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のレーダ装置において、前記位相折返しなしの角度、および、前記位相折返しありの角度における前記第1受信レベルと前記第3受信レベルとの差を各々基準値として記憶する記憶手段をさらに備え、前記第1の位相折返し判定手段は、前記物標の角度に対する前記第1受信レベルと前記第3受信レベルとの差の実測値を複数の前記基準値と比較して、前記物標の角度の位相の折返しの有無を判定する。
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のレーダ装置において、前記第2の位相折返し判定手段は、前記物標の角度が所定の角度範囲内の場合に、前記第2受信レベルと、前記第1受信レベルおよび前記第3受信レベルの少なくともいずれかの受信レベルとを比較する。
また、請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のレーダ装置と、前記レーダ装置から前記物標の情報を受信して車両を制御する車両制御装置と、を備える。
また、請求項7の発明は、物標からの反射波を複数の受信アンテナで受信した受信信号の位相差により前記物標の角度を導出する信号処理方法であって、互いに送信方向が水平方向で順次異なる第1の送信アンテナ、第2の送信アンテナ、および、第3の送信アンテナの各送信アンテナから第1の送信波、第2の送信波、および、第3の送信波をそれぞれ出力する工程と、前記第1の送信アンテナによる受信信号の第1受信レベルと、前記第3の送信アンテナによる受信信号の第3受信レベルとに基づき、前記物標の角度が位相折返しなしの角度であるか位相が360°ずれた位相折返しありの角度であるかを判定する工程と、前記第1の位相折返し判定手段の判定結果と、前記第2の送信アンテナによる受信信号の第2受信レベルとに基づき、前記物標の角度が前記位相折返しなしの角度であるか前記位相折返しありの角度であるかを判定する工程と、を備える。
請求項1ないし7の発明によれば、第1の位相折返し判定手段の判定結果と、第2受信レベルとに基づき、物標の角度が位相折返しなしの角度であるか位相折返しありの角度であるかを判定することで、レーダ装置は物標が実際に存在する正確な角度を判定できる。
また、特に請求項2の発明によれば、第1の送信波、第2の送信波、および、第3の送信波の一部の範囲が重畳することで、レーダ装置は各送信波による受信信号の受信レベルを比較できる。
また、特に請求項3の発明によれば、第2の位相折返し判定手段が、第1受信レベル、および、第3受信レベルの少なくともいずれかの受信レベルの値よりも第2受信レベルの値が所定値以下の場合は、物標の角度を位相折返しあり角度であると判定することで、レーダ装置は位相折返しありの角度が実際に物標の存在する角度か否かを正確に判定できる。
また、特に請求項4の発明によれば、第1の位相折返し判定手段は、物標の角度に対する第1受信レベルと第3受信レベルとの差の実測値を複数の基準値と比較して、物標の角度の位相の折返しの有無を判定することで、レーダ装置は位相折返しありの角度に物標が存在するか否かを確実に判定できる。
また、特に請求項5の発明によれば、第2の位相折返し判定手段は、物標の角度が所定の角度範囲内の場合に、第2受信レベルと、第1受信レベルおよび第3受信レベルとの少なくともいずれかの受信レベルとを比較することで、レーダ装置は物標が実際に存在する正確な角度を判定できる。
また、特に請求項6の発明によれば、レーダ装置と車両制御装置とを備えることで、物標が実際に存在する角度情報に基づいて、車両制御装置は複数種類の車両制御を適正に実行できる。
図1は、車両の全体図である。 図2は、車両制御システムのブロック図である。 図3は、アンテナの構成を説明する図である。 図4は、送信アンテナの路面に対する水平方向の送信範囲を示す図である。 図5は、送信アンテナの路面に対する水平方向の送信範囲を示す図である。 図6は、送信アンテナの路面に対する水平方向の送信範囲を示す図である。 図7は、位相の折り返しについて説明する図である。 図8は、送信アンテナの路面に対する垂直方向の送信範囲を示す図である。 図9は、送信アンテナの路面に対する垂直方向の送信範囲を示す図である。 図10は、各送信アンテナの送信波の出力タイミングを説明するグラフである。 図11は、送信信号と受信信号とに基づくビート信号の導出を説明する図である。 図12は、レーダ装置の認識角度に対する3つの候補角度の設計値を有するマップ情報を示す図である。 物標の水平角度に対する電力値を示すグラフである。 物標の水平角度に対する電力値を示すグラフである。 図15は、UP区間のビート信号をFFT処理した後の変換信号の周波数スペクトルを示す図である。 図16は、UP区間のビート信号をFFT処理したのちの変換信号の周波数スペクトルを示す図である。 図17は、ESPRITの処理概要を説明する図である。 図18は、信号処理部が行う物標情報の導出処理のフローチャートである。 図19は、信号処理部が行う物標情報の導出処理のフローチャートである。 図20は、折返し判定処理の処理フローチャートである。 図21は、折返し判定処理の処理フローチャートである。 図22は、折返し判定処理の処理フローチャートである。 図23は、実測値と設計値に基づく差分値の導出を説明する図である。 図24は、平均電力値の波形を追加したグラフである。 図25は、第2の実施の形態の折返し判定処理における処理フローチャートである。 図26は、第2の実施の形態の折返し判定処理における処理フローチャートである。 図27は、第2の実施の形態の折返し判定処理における処理フローチャートである。 図28は、第2の実施の形態の折返し判定処理における処理フローチャートである。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
<第1の実施の形態>
<1.車両全体図>
図1は、車両CRの全体図である。車両CRは、後述する車両制御システム1のレーダ装置10と車両制御装置20とを主に備える。車両CRは、車両CRの前方のバンパー近傍にレーダ装置10を備えている。レーダ装置10は、一回の走査で路面に対する水平方向、および、路面に対する垂直方向の所定範囲を走査する。その結果、レーダ装置10は、物標の路面に対する水平方向の位置(縦距離および横距離)と、物標の路面に対する垂直方向の高さと、車両CRに対する物標の相対速度とを含む情報(以下、「物標情報」という。)を導出する。ここで、縦距離は、物標から反射した反射波がレーダ装置10の受信アンテナに受信されるまでの距離である。また、横距離は、車両CRの進行方向に仮想的に延伸する基準軸に対して略直行する方向の車両CRに対する物標の距離である。なお、横距離は、車両CRに対する物標の水平方向の角度と縦距離とを用いた三角関数の演算により導出される。レーダ装置10による物標情報の導出処理の詳細は後述する。車両制御装置20は、車両CRの内部に設けられている。車両制御装置20は、車両CRの各装置を制御するECU(Electronic Control Unit)である。
<2.システムブロック図>
図2は、車両制御システム1のブロック図である。車両制御システム1は、車両CRの挙動を制御するシステムである。レーダ装置10と、車両制御装置20と、車速センサ21と、ステアリングセンサ22と、スロットル23と、ブレーキ24とを有している。レーダ装置10と車両制御装置20とは電気的に接続されている。車両制御装置20は、車速センサ21と、ステアリングセンサ22と、スロットル23と、ブレーキ24と電気的に接続されている。
車両制御装置20は、複数種類の車両制御の中から車両CRの走行状況等に応じて、少なくとも1つの車両制御を行う。車両制御の例としてACC(Adaptive Cruise Control)とPCS(Pre-Crash Safety System)とがある。車両制御装置20は、車両CRが走行する自車線内で前方車両に追従して走行する。具体的には、車両制御装置20は、車両CRの走行に伴いスロットル23、および、ブレーキ24の少なくとも一つの装置を制御する。そして車両制御装置20は、前方車両との間で所定の車間距離を確保した状態で車両CRを前方車両に追従して走行させる。このように車両CRが前方車両との所定の車間距離を確保した状態で、前方車両を追従走行させる制御がACCである。
また車両制御装置20は、車両CRと他車両との衝突に備え、車両CRの乗員を保護する。具体的には、車両制御装置20は、車両CRが他車両に衝突する危険性がある場合に、例えば次のように車両CRを制御する。車両制御装置20は、車両CRの乗員に対して図示しない警報器を用いて警告する。車両制御装置20は、ブレーキ24を制御して車両CRの速度を低下させる。車両制御装置20は、車室内のシートベルトにより乗員を座席に固定する。その結果、車両CRと他車両とが衝突した場合でも、車両CRの乗員への衝撃が軽減される。このように車両CRの乗員を保護する制御がPCSである。
車速センサ21は、車両CRの車軸の回転数に基づき車両CRの速度に応じた信号を車両制御装置20に出力する。車両制御装置20は、車速センサ21からの信号に基づき現時点の車両CRの速度を導出する。
ステアリングセンサ22は、車両CRのドライバーの操作によるステアリングホイールの回転角を導出する。その結果、ステアリングセンサ22は、車両CRの車体の角度の情報を車両制御装置20に出力する。車両制御装置20は、ステアリングセンサ22から取得した情報に基づき車両CRの走行する自車線のカーブ半径の値を導出する。
スロットル23は、車両CRのドライバーの操作により車両CRの速度を加速させる。またスロットル23は、車両制御装置20の制御により車両CRの速度を加速させる。例えばスロットル23は、車両CRと前方車両との縦距離を一定値に保つように車両CRの速度を加速させる。
ブレーキ24は、車両CRのドライバーの操作により車両CRの速度を減速させる。またブレーキ24は、車両制御装置20の制御により車両CRの速度を減速させる。例えばブレーキ24は、車両CRと前方車両との縦距離を一定値に保つように車両CRの速度を減速させる。
次に、レーダ装置10について説明する。レーダ装置10は、アンテナ101と、ミキサ13(13a〜13d)と、AD(Analog to Digital)変換器14(14a〜14d)と、信号生成部15と、発振器16と、スイッチSWと、記憶部17と、信号処理部18とを有する。
アンテナ101は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12とを有している。送信アンテナ11は、送信アンテナ11a、11b、11c、および、11dの4本のアンテナで構成される。送信アンテナ11は、スイッチSWのスイッチングにより所定周期で切り替えられる。その結果、4本の送信アンテナのうちの少なくともいずれか1本の送信アンテナが送信波を出力する。
受信アンテナ12は、受信アンテナ12a、12b、12c、および、12dの4本のアンテナで構成される。4本の受信アンテナは、物標からの反射波を受信する。
<2−1.アンテナ構成>
ここで、図3を用いて、アンテナ101の構成を具体的に説明する。図3は、アンテナ101の構成を説明する図である。図3では、XY座標軸を用いて方向を説明する。XY座標軸は、送信アンテナ11および受信アンテナ12の少なくとも一方のアンテナに相対的に固定される。誘電体基板102の基板面に設けられる送信アンテナ11および受信アンテナ12の短手方向(以下、「短手方向」という。)がX軸方向(水平方向)に対応する。送信アンテナ11および受信アンテナ12の長手方向(以下、「長手方向」という。)がY軸方向(鉛直方向)に対応する。
アンテナ101には、誘電体基板102の基板面に送信アンテナ11と、受信アンテナ12とが設けられている。誘電体基板102は、短手方向(X軸方向)に幅W0(例えば、約6.0cm)、長手方向(Y軸方向)に長さL0(例えば、約6.0cm)の略正方形の形状の基板である。
次に、送信アンテナ11の各送信アンテナ(11a〜11d)について説明する。各送信アンテナ(11a〜11d)は、図示しない複数の伝送線路にアンテナ素子が複数設けられた構成である。送信アンテナ11の伝送線路は、送信信号をアンテナ素子に伝達する。アンテナ素子は、送信信号に基づく送信波を出力する。
送信アンテナ11aおよび11cは、同一形状のアンテナであり、ともに短手方向(X軸方向)に幅W11(例えば、約0.6cm)、長手方向(Y軸方向)に長さL1(例えば、約1.8cm)の略長方形の形状を有する。送信アンテナ11aおよび11cの地面に対する高さ方向の位置、即ち長手方向(Y軸方向)の位置は同じであり、地面に対する水平方向の位置、即ち短手方向(X軸方向)の位置が相違する。これにより水平方向で互いの送信ビーム方向が異なるよう配置される。これら送信アンテナ11aおよび11cは背景技術の項で述べた先行技術の2本の送信アンテナに対応するもので、水平角度の位相折り返しを判定する機能を有する。なお、図ではアンテナ11aの外形のみ示しておりアンテナ11aを構成するアンテナ素子は図示を省略している。以下のアンテナも同様である。
送信アンテナ11bは、短手方向(X軸方向)に幅W12(例えば、約1.0cm)、長手方向(Y軸方向)に長さL1(例えば、約1.8cm)の略長方形の形状を持つアンテナであり、送信アンテナ11a、および、11cより送信ビームが狭角となる特性を有する。この送信アンテナ11bは、送信アンテナ11aと送信アンテナ11cとの間に設けられている。つまり、送信アンテナ11a、送信アンテナ11b、および、送信アンテナ11cの配置は、順次異なるように配置されている。そのため、送信アンテナ11aと送信アンテナ11cとの送信方向は送信アンテナ11bの送信方向を基準に対称な方向に設定されている。
また長手方向(Y軸方向)において送信アンテナ11aの一部と長さL2(例えば、約0.9cm)だけ重複するよう送信アンテナ11a、および、11cよりも上側(+Y側)の位置にずらして設けられている。なお、長さL2は、送信アンテナ11aの長さL1のうちの約半分の長さである。
送信アンテナ11dは、送信アンテナ11bと略同一の形状のアンテナであり、送信アンテナ11bと同じサイズを有し、送信アンテナ11cを中心として送信アンテナ11bと対称となる位置に配置される。
以上のように送信アンテナ11bと11dは送信アンテナ11a、11cと高さ方向にずらして配置されている。したがって、送信アンテナ11b、11c、11dからそれぞれ出力される送信波の間で長手方向(Y軸方向)のずれに対応する位相差が生じる。これにより、レーダ装置10は、物標の路面に対する垂直方向の高さを導出する送信波を出力できる。
4本の送信アンテナ(11a〜11d)は、送信アンテナ11bと11dが送信アンテナ11a、11cと高さ方向に一部重複するよう、長手方向(Y軸方向)に左側で3段、右側で2段の階段状に設けられている。言い換えると、4本の送信アンテナ(11a〜11d)は、への字を左右逆にした逆への字型に設けられている。したがって、送信アンテナ101の高さ、すなわち長手方向(Y軸方向)のサイズを小さくしてコンパクトに配置することができ、さらに面積を拡大することなく長手方向(Y軸方向)に複数の送信アンテナを設けることができる。
次に受信アンテナ12の各受信アンテナ(12a〜12d)について説明する。各受信アンテナ(12a〜12d)は、図示しない複数の伝送線路にアンテナ素子が複数設けられた構成である。受信アンテナ12のアンテナ素子は、反射波を受信して伝送線路に受信信号を伝達する。
受信アンテナ12は、誘電体基板102の基板面に設けられている。受信アンテナ12は、4本の受信アンテナ12a〜12dを含むアンテナであり、各受信アンテナ(12a〜12d)は、短手方向(X軸方向)に幅W13(例えば、約0.5cm)、長手方向(Y軸方向)に長さL1(例えば、約1.8cm)の略長方形の同一形状のアンテナである。
受信アンテナ12の各受信アンテナ(12a〜12d)は、短手方向(X軸方向)においてそれぞれが隣接する位置に等間隔で設けられ、また、長手方向(Y軸方向)においてそれぞれが同じ位置に設けられている。これにより各受信アンテナ(12a〜12d)の受信信号を基に水平方向の位相差を算出でき、水平方向の物標角度を算出することができる。
受信アンテナ12(12a〜12d)は、長手方向(Y軸方向)において送信アンテナ11bの一部と重複する位置に設けられている。すなわち、受信アンテナ12は、3本の送信アンテナ11b〜11dで構成される階段状のデッドスペースに配置されている。これにより、送信アンテナ11と受信アンテナ12とを同一の誘電体基板102の基板面の比較的少ないスペースに設けることができる。その結果、レーダ装置10のアンテナ101の面積は、拡大することなくレーダ装置10の小型化を実現できる。そして、送信アンテナ11および受信アンテナ12が設けられたアンテナ101を略正方形の形状とでき、アンテナ101を搭載するレーダ装置10自体も小型化できる。
このように短手方向(X軸方向)に等間隔で隣接し、長手方向(Y軸方向)の同じ位置に設けられた4本の受信アンテナ(12a〜12d)は、4本の送信アンテナ(11a〜11d)から出力される送信波が物標に反射した反射波を受信する。後述する信号処理部18は、複数の受信アンテナ(12a〜12d)が受信した反射波に対応する受信信号の位相差により物標が存在すると推定される水平方向の角度(以下、「認識角度」という。)を導出する。そして、信号処理部18は、後述する位相折返し判定処理(以下、「折返し判定処理」という。)により、認識角度に対して位相折返しのない角度および位相折返しのある角度の候補角度の中から実際に物標が存在する角度(以下、「実在角度」という。)を導出する。折返し判定処理の具体的な処理内容については後述する。
<2−2.送信範囲>
次に、送信アンテナ11の各送信アンテナ(11a〜11d)の送信範囲について図4〜図9を用いて説明する。図4〜図9においては、xyz座標軸を用いて方向を説明する。xyz座標軸は、車両CRに対して相対的に固定される。車両CRの車幅方向が、x軸方向に対応する。車両CRの進行方向が、y軸方向に対応する。車両CRの高さ方向(車高方向)が、z軸方向に対応する。なお、図4〜図6は、車両CRの高さ方向(z軸方向)の上方(+z側)から下方(−z側)を見た図である。図8および図9は、車両CRの車幅方向(x軸方向)の左側(−x側)から右側(+x側)を見た図である。
図4は、送信アンテナ11aの自車線RCの路面(以下、「路面」という。)に対する水平方向の送信範囲を示す図である。ここで、自車線RCの幅は約3.6mである。自車線RCの右側には、自車線RCに隣接している車線RR(以下、「右車線RR」という。)がある。自車線RCの左側には、自車線RCに隣接している車線RL(以下、「左車線RL」という。)がある。
図4示す送信範囲Tr1は、送信アンテナ11aから出力される送信波におけるメインローブの範囲を示し、送信範囲Tr1aはサイドローブの範囲を示す。
送信アンテナ11aのメインローブの水平ビーム方向、すなわち送信軸Ce1は自車両の進行方向(送信軸Ce2)に対し約7deg右側、すなわち+x方向に傾いている。送信範囲Tr1は、水平角度範囲で送信軸Ce1に対し±38degすなわち76degであり、送信距離は約80mに設定されている。サイドローブの送信範囲Tr1aを含めると、水平角度範囲は送信軸Ce1に対し全体で約±50degとなる。以下では、特に断りがない限り、「水平角度」は車両CRの進行方向の角度を±0degとする車両CRの車幅方向(x軸方向)の角度をいう。また、以下では、サイドローブと上述のメインローブとを含む送信アンテナ11aから出力される送信波を「右広角ビーム」という場合がある。
なお、メインローブの送信範囲Tr1の右側(+x側)にも本来送信範囲Tr1aと同様のサイドローブの範囲が存在する。しかし、この右側のサイドローブの範囲は、水平角度90degを超える範囲であり、レーダ装置10が物標の位置を導出できない範囲である。そのため、右側のサイドローブの範囲は、図示することなく説明を続ける。
上記メインローブの水平角度範囲約±38deg以内の範囲は、車両CRが自車線RCの略中央に位置する場合に、自車線RCの幅(約3.6m)と右車線RR(約3.6m)の幅に相当する。言い換えると、水平角度約±38deg以内は、車両CRを基準とした場合横距離約-1.8m〜約5.4mに相当する。
送信アンテナ11aは、送信範囲Tr1の範囲内に送信波を出力する。その結果、送信範囲Tr1の範囲内に存在する物標からの反射波を受信アンテナ12が受信する。例えば、受信アンテナ12は、メインローブの範囲内に存在する物標TAが反射した反射波を受信する。物標TAは、例えば44degの角度位置に存在する。
図5は、送信アンテナ11cの路面に対する水平方向の送信範囲を示す図であり、上述の送信アンテナ11aの送信方向と送信アンテナ11cの送信方向は、送信アンテナ11bの送信方向を基準に対称な方向に設定されている。そのため送信アンテナ11cについて送信アンテナ11aと重複する説明は省略する。
送信範囲Tr3は、送信アンテナ11cから出力される送信波におけるメインローブの範囲を示し、送信範囲Tr3aはその右側のサイドローブの範囲を示す。
送信アンテナ11cのメインローブの水平ビーム方向、すなわち送信軸Ce3は自車両の進行方向と同じ方向の送信軸Ce2に対し約−7deg左側、すなわち−x方向に傾いている。送信範囲Tr3は、水平角度範囲で送信軸Ce3に対し約±38degすなわち76degであり、送信距離は約80mに設定されている。サイドローブの検知範囲Tr3aを含めると、水平角度範囲は送信軸Ce3に対し全体で約±50degとなる。
以下では、サイドローブと上述のメインローブとを含む送信アンテナ11cから出力される送信波を「左広角ビーム」という場合がある。
送信アンテナ11cは、送信範囲Tr3の範囲内に送信波を出力する。その結果、送信範囲Tr3の範囲内に存在する物標からの反射波を受信アンテナ12が受信する。ここで、図4で説明した物標TAの位置は、メインローブの送信範囲Tr3の範囲外であるが、サイドローブの送信範囲Tr3aの範囲内にあるため、受信アンテナ12によりその反射波を受信する。
図6は、送信アンテナ11bおよび11dの路面に対する水平方向の送信範囲を示す図である。図6に示す送信範囲Tr2、および、送信範囲Tr4は、それぞれ送信アンテナ11b、および、11dから出力される送信波におけるメインローブの範囲を示す。送信範囲Tr2a、および、送信範囲Tr4aは、それぞれそのサイドローブの範囲を示す。なお、メインローブの送信範囲Tr2およびTr4の左側(−x側)にも送信範囲Tr2aおよびTr4aと同様のサイドローブの範囲が存在する。以下では、サイドローブと上述のメインローブとを含む送信アンテナ11b、11dから出力される送信波をそれぞれ「第1狭角ビーム」、「第2狭角ビーム」という場合がある。送信アンテナ11bと11dは同じ特性のアンテナであるため、以下の説明では送信アンテナ11bについて説明する。
送信アンテナ11bのメインローブの水平ビーム方向、すなわち送信軸Ce2は車両CRの進行方向(送信軸Ce2延伸方向)と同じであり、その送信範囲Tr2は水平角度範囲で送信軸Ce2に対し約±21degすなわち42degであり、送信距離は約150mに設定されている。サイドローブの送信範囲Tr2aを含めると、水平角度範囲は送信軸Ce2に対し全体で約±4 5degとなる。
上記メインローブの水平角度領域約±21deg以内の範囲は、車両CRが自車線RCの略中央に位置する場合に、自車線RCの幅(約3.6m)を含む範囲である。送信アンテナ11bは、送信範囲Tr2の範囲内に送信波を出力する。その結果、送信範囲Tr2の範囲内に存在する物標からの反射波を受信アンテナ12が受信する。ここで、図4、および、図5に示した物標TAは、メインローブの送信範囲Tr2の範囲外であるが、サイドローブの送信範囲Tr2aの範囲内であるため、受信アンテナ12によりその反射波を受信する。
送信アンテナ11dは送信アンテナ11bと同じ特性を有するため、図6において送信範囲Tr2をTr4に、Tr2aをTr4aに、Tr2bをTr4bに、Ce2をCe4に置き換えるだけで、他の説明は送信アンテナ11bについての説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記の内容から送信範囲Tr2およびTr4は、送信範囲Tr1およびTr3と比べて送信波の出力される距離が長く、水平角度が狭い送信範囲となる。すなわち、送信アンテナ11b、11dは送信アンテナ11a、11cより狭角のアンテナである。
ここで、右広角ビーム、左広角ビーム、第1狭角ビーム、および、第2狭角ビームの一部の送信範囲は重畳している。そして、第1狭角ビームおよび第2狭角ビームは、右広角ビームおよび左広角ビームと比べて送信範囲の角度が狭い。そのため、第1狭角ビームおよび第2狭角ビームの出力は、右広角ビームおよび左広角ビームの出力よりも比較的高い出力となる。その結果、4つのビームが重畳する送信範囲内に物標が存在する場合の受信信号の電力値は、第1狭角ビームおよび第2狭角ビームの受信信号の電力値が、右広角ビームおよび左広角ビームの受信信号の電力値よりも比較的大きい電力値となる。そして、後述する折り返し判定処理では、この広角ビームの受信信号の電力値と狭角ビームの受信信号の電力値とを比較することで、認識角度に物標が存在するか否かを判定する。
そして、車両制御装置20は、送信範囲Tr1〜Tr4の全送信範囲から導出された物標情報に基づき、車両CRに対して必要な制御を行う。制御例としては、車両CRの前方を走行する前方車両に追従走行するためにスロットル23を制御するACC制御や、車両CRと他車両との衝突を防止等するためにブレーキ24を制御するPCS制御である。
しかし、レーダ装置10は、位相折り返しがあると実際に物標が存在する角度を導出できない。すなわち、位相差360°を角度に換算すると約37degになるが、レーダ装置10が検出できる位相差Aは−360°<A<360°であるため、角度に直すと自車両進行方向(送信軸Ce2)に対して−37deg〜37degの範囲である。なお、+は物標が自車両進行方向に対して右側に位置し、−は左側に位置することを示す。そのため物標の角度が絶対値で37degを超える場合は位相が360°折り返して実際の角度は37degより小さくなる。例えば、レーダ装置10は、44degの角度に存在する物標TAの認識角度をそれより360°位相が異なる5degとして導出する。なお、位相折返しにおける角度と位相との関係は、単純な比例関係によるものではない。
レーダ装置10は、図6に示すように物標TAが実際には44degの位置に存在するのにもかかわらず、物標TAgの位置である5degの位置に存在するものとして物標TAの認識角度を導出する。このようにレーダ装置10が、物標TAの実在角度とは異なる認識角度を導出すると、物標TAの物標情報を受信した車両制御装置20は、本来制御対象ではない角度(44deg)に存在する物標TAに対して、ACCの制御およびPCSの制御の少なくともいずれかの車両制御を行う場合がある。その結果、車両制御装置20は適切な車両制御が行えないこととなる。
ここで、位相折返しについて、図7を用いて詳細に説明する。図7には、受信アンテナ12の2つの隣接する受信アンテナ12aと12bとが示されている。なお、物標の角度と位相差との対応関係は例えば次の基準により定められる。物標が受信アンテナ12aおよび12bのアンテナ間の略中央の正面位置で、受信アンテナ12aおよび12bのアンテナ面AFに対して垂直の位置に存在する場合を水平角度±0degおよび位相差±0°となり、この対応関係を基準とする。そして、この基準と受信アンテナ12の各アンテナ間隔から例えば、水平角度37degが位相差360°に対応する。また、水平角度−37degが位相差−360°に対応する。
図7上段は、物標TAが水平角度θaに存在する場合を示している。この場合、受信アンテナ12aおよび12bは、物標TAからの反射波を受信する。水平角度θaが例えば44degの場合には、受信アンテナ12bと12aとの位相差RPは430°となる。これに対して、位相が折り返す値を示す折返し値BPは360°となる。位相差RPは、位相差BPを超えるため位相差RPの位相が折り返す。その結果、レーダ装置10は、位相差EP(430°−360°=70°)を導出する。
そして、レーダ装置10は、位相差EP(70°)に基づいて物標TAの認識角度θb(5deg)を導出する。すなわち、図7下段に示すように、レーダ装置10は、物標TAgの水平角度θbに物標が存在するかのごとく認識角度を導出する。このように、物標が水平角度37deg以上、および、水平角度−37deg以下のいずれかの角度に存在する場合、位相折り返しが発生して、実在角度とは異なる認識角度が導出される。
図8は、送信アンテナ11bの路面に対する垂直方向の送信範囲Tr2を示す図である。なお、図8では送信範囲Tr2について説明するが、路面に対する垂直方向の送信範囲Tr4も送信範囲Tr2と略同一であるため、同様である。
図8では、送信アンテナ11bは送信範囲Tr2の範囲に送信波を出力する。送信範囲Tr2は、路面に対して水平方向に延伸した第2送信軸Ce2を基準として車両CRの高さ方向の上側(+z側)の角度約8.5deg、下側(−z側)の角度約−8.5degの範囲を有する。以下では、各基準軸の路面に対する角度を±0degとし、車両CRの高さ方向(z軸方向)の角度を「垂直角度」という。垂直角度は、路面に対する垂直方向の角度ともいえる。
なお、第2送信軸Ce2は、自車両の進行方向と同じであり、その送信範囲Tr2は、垂直角度範囲で約±8.5degすなわち17degであり、送信距離は約150mに設定されている。
図9は、送信アンテナ11cの路面に対する垂直方向の送信範囲Tr3を示す図である。図9では、送信アンテナ11cは送信範囲Tr3の範囲に送信波を出力する。送信範囲Tr3は、路面に対して水平方向に延伸した第3送信軸Ce3を基準として車両CRの高さ方向の上側(+z側)に角度約8.5deg、下側(−z側)に角度約−8.5degの範囲を有する。
なお、第3送信軸Ce3は、路面と略平行であり、その送信範囲Tr3は、垂直角度範囲約±8.5degすなわち17degであり、送信距離は約80mに設定されている。
上記の内容から送信範囲Tr2およびTr4は、送信範囲Tr3と比べて縦距離が長く、垂直角度が略同一の範囲となる。言い換えると、送信範囲Tr3は、送信範囲Tr2およびTr4と比べて縦距離が短く、垂直角度が略同一の範囲となる。
図2に戻り、ミキサ13は、ミキサ13a〜13dの4つのミキサを有する。ミキサ13は、各受信アンテナ(12a〜12d)に設けられている。ミキサ13は、受信アンテナ12で受信した反射波に対応する受信信号と、送信波に対応する送信信号とを混合する。ミキサ13は、受信信号と送信信号との差の信号であるビート信号をAD変換器14に出力する。
AD変換器14は、AD変換器14a〜14dの4つのAD変換器を有する。AD変換器14は、各受信アンテナ(12a〜12d)に設けられている。AD変換器14は、ミキサ13から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。具体的には、AD変換器14は、アナログ信号であるビート信号を所定周期でサンプリングする。AD変換器14は、サンプリングしたビート信号を量子化し、デジタル信号に変換する。AD変換器14は、デジタル信号を信号処理部18に出力する。
信号生成部15は、変調用の三角波信号を生成し、発振器16に出力する。発振器16は、三角波信号をミリ波帯(例えば、76.5GHz)の信号に変調し、スイッチSWに出力する。
スイッチSWは、各送信アンテナ(11a〜11d)と接続される。スイッチSWは、接続する送信アンテナを所定のタイミング(例えば、5msec)ごとに切替える。スイッチSWは、ミリ波帯の信号である送信信号を送信アンテナ11a、11b、11c、および、11dのいずれかのアンテナに出力する。
<2−3.送信波出力タイミング>
ここで、送信アンテナ11a〜11dの送信波の出力タイミングについて、図10を用いて説明する。図10は、各送信アンテナ(11a〜11d)の送信波の出力タイミングを説明するグラフである。送信波に対応する送信信号は、中心周波数を例えば、76.5GHzとして、第1の所定周波数(例えば76.6GHz)まで上昇した後に第2の所定周波数(例えば、76.4GHz)まで下降をするように200MHzの間で一定の変化を繰り返す信号である。送信信号は、縦軸を周波数[GHz]、横軸を時間[msec]とするグラフ中の送信信号TSで示される。
送信アンテナ11aは第1送信区間Tx1(時刻t0〜t1)で送信波を出力する。スイッチSWは、時刻t1で送信波を出力するアンテナを送信アンテナ11aから送信アンテナ11cに切替える。以降、スイッチSWは、所定のタイミングで送信アンテナを切り替える。
送信アンテナ11cは、第3送信区間Tx3(時刻t1〜t2)で送信波を出力する。信号処理部18は、第1処理区間Tx5で物標からの反射波に基づいて、物標の路面に対する水平方向の認識角度を導出する。また、信号処理部18は後述する折返し判定処理を行う。
上述のように送信アンテナ11a、および、送信アンテナ11cが順次、送信波を出力し、信号処理部18が各送信波による受信信号に基づき物標の認識角度の導出処理を行う区間が第1区間Tx10(時刻t0〜t3)となる。
そして、第1区間Tx10で物標の導出処理が行われた後、次の第2区間Tx11では送信アンテナ11aによる送信波の出力と、送信アンテナ11cによる送信波との出力に加えて、送信アンテナ11bによる送信波の出力と、送信アンテナ11dによる送信波の出力が行われる。
つまり、送信アンテナ11aは第1送信区間Tx1a(時刻t3〜t4)で送信波を出力し、送信アンテナ11bは第2送信区間Tx2a(時刻t4〜t5)で送信波を出力する。そして、送信アンテナ11cは第3送信区間Tx3a(時刻t5〜t6)で送信波を出力し、送信アンテナ11dは第4送信区間Tx4a(時刻t6〜t7)で送信波を出力する。その後、信号処理部18は、第2処理区間Tx5a(時刻t7〜t8)で物標からの反射波に基づいて、物標の路面に対する水平方向の認識角度、および、垂直方向の高さを導出する。また、信号処理部18は折返し判定処理を行う。
上述のように送信アンテナ11a、11b、11c、および、11dが順次、送信波を出力し、信号処理部18が各送信波による受信信号に基づき物標の水平方向の位置を導出する処理を行う区間が第2区間Tx11(時刻t3〜t8)となる。
このように物標の路面に対する水平方向の認識角度、および、垂直方向の高さの導出の両方の処理に送信アンテナ11b、11c、および、11dの複数本の送信アンテナを兼用することで、送信アンテナ11の本数を減少させられる。その結果、レーダ装置10は、比較的小型化されたアンテナ101により物標の路面に対する水平方向の位置および垂直方向の高さを導出できる。
レーダ装置10の送信波の送信周期は、第1区間Tx10および第2区間Tx11を含む周期区間Tx100(時刻t0〜t8)となる。レーダ装置10の送信周期の時間は、例えば110msecである。例えば、第1区間Tx10の時間が、50msecであり、第2区間Tx11の時間が、60msecである。また送信アンテナ11の1本の送信アンテナから送信波が出力される時間は、例えば5msecである。
また、上述のように第2区間Tx11では、4本の送信アンテナ(11a〜11d)から送信波を出力し、物標の水平方向の位置および垂直方向の高さを導出する。これに対して、第1区間Tx10では、2つの送信アンテナ(11aおよび11c)から送信波を出力して物標の水平方向の位置のみを導出するのは次の理由のためである。つまり、送信波の出力に伴いレーダ装置10の内部の回路が発熱し、レーダ装置10の破損を防止するためである。
また、水平方向の位置は、車両CRに対して急な前方割り込みを行う他車両等への対応のため比較的高い頻度の導出が要求される。しかし、垂直方向の高さは、道路標識等の上方物が車両CRに対して急な割り込みを行うことはないため、比較的低い頻度の導出でもよい。これにより、レーダ装置10の発熱を防止でき物標導出処理に悪影響を及ぼすことを防止できる。さらに、レーダ装置10は1周期の間に少なくとも物標の水平方向の位置を2回導出でき、物標の垂直方向の高さを1回導出できる。つまり、レーダ装置10は、物標の垂直方向の高さの変化に比べて、物標の水平方向の位置の変化を早期に導出できる。その結果、レーダ装置10から物標情報を受信した車両制御装置20は、ACC制御およびPCS制御の少なくともいずれかの制御において車両制御が必要な物標に対して適切な制御を行える。
そして、次の周期で送信アンテナ11aおよび送信アンテナ11cが順次送信波を出力する第1区間Tx10の処理が再度開始され、以降同様の処理が繰り返し行われる。
<2−4.ビート信号導出>
次に、第1区間Tx10を例に送信信号TSと後述する受信信号RSとに基づくビート信号BSの導出について説明する。図11は、送信信号TSと受信信号RSとに基づくビート信号BSの導出を説明する図である。
なお、図11の各記号、および、後述する数式各記号は次の内容を示すものである。f:距離周波数、f:速度周波数、f:送信波の中心周波数、△F:周波数偏移幅、f:変調波の繰り返し周波数、c:光速(電波の速度)、T:車両CRと物標との電波の往復時間、f:送信/受信周波数、R:縦距離、V:相対速度。
図11の上段の図は、送信信号TS、および、受信信号RSの信号波形を示す図である。図11の中段の図は、送信信号TSと受信信号RSとの差分により生じるビート周波数を示す図である。図11下段の図は、ビート周波数に対応するビート信号BSを示す図である。
図11上段の図では、縦軸が周波数[GHz]、横軸が時間[msec]となる。図中の送信信号TSは、周波数f(例えば、76.5GHz)を中心周波数として、所定周波数(例えば76.6GHz)まで上昇した後に所定周波数(例えば、76.4GHz)まで下降をするように200MHzの間で一定の変化を繰り返す。
送信信号TSは、所定周波数まで周波数が上昇する区間(以下、「UP区間」という。)を有する。UP区間は、区間U1(時刻t0〜t11)および区間U3(時刻t1〜t12)が該当する。送信信号TSは、所定周波数まで上昇した後に所定の周波数まで下降する区間(以下、「DOWN区間」という。)を有する。DOWN区間は、区間D11(時刻t11〜t1)および区間D13(時刻t12〜t2)が該当する。そして第1送信区間Tx1は、区間U1および区間D11を含む。第3送信区間Tx3は、区間U3および区間D13を含む。
第1送信区間Tx1において送信アンテナ11aから送信波が出力される。送信波は、物標にあたって反射波として受信アンテナ12に受信される。その結果、受信アンテナ12を介して受信信号RSがミキサ13に出力される。なお、受信信号RSについても送信信号TSと同じように所定周波数まで周波数が上昇するUP区間と、所定周波数まで周波数が下降するDOWN区間とがある。また、第3送信区間Tx3では送信アンテナ11cから送信波が出力され、反射波に基づく受信信号RSが受信アンテナ12を介してミキサ13に出力される。
なお、車両CRに対する物標の縦距離に応じて、送信信号TSに比べて受信信号RSに時間的な遅れ(時間T)が生じる。さらに、車両CRの速度と物標の速度との間に速度差がある場合は、送信信号TSに対して受信信号RSにドップラーシフト分の差が生じる。
図11中段の図では、縦軸が周波数[kHz]、横軸が時間[msec]となり、図中にはUP区間およびDOWN区間の送信信号と受信信号との差を示すビート周波数が示されている。例えば、区間U1ではビート周波数BF1が導出され、区間D11ではビート周波数BF2が導出される。このように各区間において、ビート周波数が導出される。
図11下段の図では、縦軸が振幅[V]、横軸が時間[msec]となる。図中には、ビート周波数に対応するアナログ信号のビート信号BSが示されている。ビート信号BSは、AD変換器14によりアナログ信号からデジタル信号に変換される。
なお、図11では受信アンテナ12が、物標の1つの反射点から反射波を受信した場合のビート信号BSが示されている。これに対して、受信アンテナ12が、物標の複数の反射点から複数の反射波を受信した場合、当該複数の反射波に応じたビート信号が導出される。
図2に戻り、記憶部17は、信号処理部18により実行される各種演算処理などの実行プログラムを記憶する。また、記憶部17は、信号処理部18が導出した複数の物標情報を記録する。例えば、過去処理(例えば前回処理)、および、今回処理において導出された物標情報を記憶する。さらに、記憶部17は、後述する折返し判定部18hが折返し判定処理を行う際に用いるマップ情報17aを記憶する。以下、マップ情報17aについて図12〜図14を用いて説明する。
<2−5.マップ情報>
図12は、レーダ装置10の認識角度に対する3つの候補角度の設計値を有するマップ情報17aを示す図である。設計値は、後述する実験により導出された左広角ビームの受信信号の電力値から右広角ビームの受信信号の電力値を減算した値である。図12には、認識角度[deg]、候補角度1[deg]、候補角度2[deg]、候補角度3[deg]、設計値1[dB]、設計値2[dB]、設計値3[dB]の各項目が示されている。候補角度1、2、および、3は、水平角度導出部18cが導出した認識角度に対して、実際に物標が存在する可能性のある角度である。第1候補角度は、認識角度に対応する位相差から360°を減算した「−側折返し角度」である。第2候補角度は、認識角度に対応する位相と同じ位相の「折返しなし角度」である。折返しなし角度は、認識角度と同じ角度となる。第3候補角度は、認識角度に対応する位相差に360°を加算した「+側折返し角度」である。
以下、設計値の導出方法について、図13、および、図14を用いて説明する。図13および図14は、物標の水平角度に対する電力値を示すグラフである。
図13、および、図14の電力値グラフには、横軸に水平角度[deg]および位相差[°]、縦軸に電力値[dB]が示されている。図13の右波形RBは、右広角ビームを反射した物標の認識角度における受信信号の電力値(受信レベル)を示す波形である。なお、右波形RBは水平角度7deg付近が最大の電力値となり、+側の水平角度、および、−側の水平角度に移るにしたがって、電力値が低下する傾向にある。
また、左波形LBは、左広角ビームを反射した物標の認識角度における受信信号の電力値(受信レベル)を示す波形である。なお、左波形LBは水平角度−7deg付近が最大の電力値となり、+側の水平角度、および、−側の水平角度に移るにしたがって、電力値が低下する傾向にある。
この図13の電力値グラフにおける右波形RBおよび左波形LBのデータは、例えば次のような実験により取得される。レーダ装置10を車両CRに搭載する前に地面に対して所定の高さを有し、地面に対して搭載面が平行な回転台上に車両搭載前のレーダ装置10を載せる。そして、レーダ装置10の正面(±0deg)の所定距離にリフレクタ等の反射板を設ける。次に、レーダ装置10を載せた回転台を回転させる。これにより取得される角度ごとの電力値が各波形の電力値である。すなわち右広角ビームを反射した物標の角度ごとの受信信号の電力値が右波形RBである。また、左広角ビームを反射した物標の角度ごとに取得された受信信号の電力値が左波形LBである。このようにして右波形RBおよび左波形LBのデータが実験的に取得され、マップ情報17aとして記憶部17に記憶される。なお、例えば水平角度導出部18cの認識角度が±0degの場合、候補角度1(−側折返し角度)は−37deg、候補角度2(折返しなし角度)は、±0deg、候補角度3(+側折返し角度)は37degとなる。
そして、図13の電力値グラフより、候補角度1の水平角度−37degにおける左波形LBと右波形RBとの電力差d1は、例えば、13dBとなる。そのため、マップ情報17aの認識角度±0degにおける設計値1には、13dBの値が設定される。
また、候補角度2の水平角度±0degにおける左波形LBと右波形RBとの電力差d2は、例えば−1dBとなる。そのため、マップ情報17aの認識角度±0degにおける設計値2には−1dBの値が設定される。
さらに、候補角度3の水平角度37degにおける左波形LBと右波形RBとの電力差d3は、例えば、−1 3dBとなる。そのため、マップ情報17aの認識角度±0degにおける設計値3には、−13dBの値が設定される。このように実験的に導出された左波形LBと右波形RBとに基づいて、マップ情報17aにおける各認識角度における複数の候補角度の設計値の値が設定される。
後述する折返し判定部18hは、このように作成されたマップ情報を用いて、実在角度を導出する。具体的には、車両CRに搭載されたレーダ装置10は、車両CRの走行中に右広角ビームの受信信号の電力値と左広角ビームの受信信号の電力値とを取得する。その結果、折返し判定部18hは、左広角ビームの受信信号の電力値から右広角ビームの受信信号の電力値を減算した値(以下、「実測値」という。)を導出する。そして、折返し判定部18hは、実測値と基準値となる3種類の設計値とのそれぞれの差の値を導出する。折返し判定部18hは、実測値との差が最も小さい設計値に対応する候補角度を実在角度として導出する。
しかし、このような方法で実在角度を導出できるのは、1つの認識角度に対して3種類の設計値がそれぞれ異なる値の場合である。しかし、マップ情報17aを作成する際に、1つの認識角度に対して3種類の設計値のうちの複数の設計値が同じ値となるときがある。このような例について図14の電力値グラフを用いて説明する。図14の電力値グラフでは、例えば、水平角度導出部18cの認識角度5degの場合、候補角度1(−側折返し角度)は−31deg、候補角度2(折返しなし角度)は5deg、候補角度3(+側折返し角度)は44degとなる。
そして、図14の電力値グラフ
より、候補角度1の水平角度−31degにおける左波形LBと右波形RBとの電力差d11は、例えば26dBとなる。そのため、マップ情報17aの認識角度5degにおける設計値1には、26dBの値が設定される。
また、候補角度2の水平角度5degにおける左波形LBと右波形RBとの電力差は、電力差d12は、例えば−2dBである。そのため、マップ情報17aの認識角度5degにおける設計値2には−2dBの値が設定される。
さらに、候補角度3の水平角度44degにおける左波形LBと右波形RBとの電力差d13は例えば−2dBである。そのため、マップ情報17aの認識角度5degにおける設計値3には値が設定されずに初期状態となる。
ここで、上述のように右波形RBは、約7degを最大値としての+側および−側の水平角度に移るにしたがって電力値が低下する。しかし、レーダ装置10の検知範囲内(±45deg)において、-37deg〜−45degの角度範囲D1の範囲内では電力値が増加する傾向にある。これは、右広角ビームのサイドローブTr1aの範囲にリフレクタの位置が含まれ、リフレクタからの反射波により電力値が増加したものである。
また、左波形LBは、約−7degを最大値として+側および−側の水平角度に移るにしたがって電力値が低下する。しかし、レーダ装置10の検知範囲内(±45deg)において、37deg〜45degの角度範囲D2の範囲内では電力値が増加する傾向にある。
これは、左広角ビームのサイドローブTr3aの範囲にリフレクタの位置が含まれ、リフレクタからの反射波により電力値が増加したものである。このようにサイドローブに物標の位置が含まれて反射波に対応する受信信号の電力値が増加する場合、このサイドローブの角度範囲に対応する候補角度の設計値は、他の候補角度の設計値と略同じ値となることがある、その結果、折返し判定部18hは、実測値と設計値とによりいずれの候補角度が実在角度となるのかを判定できない。
そのため、マップ情報17aにおいて、右広角ビームおよび左広角ビームのいずれかのサイドローブの角度範囲(例えば、37deg〜45deg、および、−37deg〜−45deg)に含まれる候補角度の設計値が初期状態となる。なお、折返し判定部18hがこのように初期状態の設計値を含むマップ情報17aを用いて実在角度を導出する方法については後述する。
図2に戻り信号処理部18の各構成について説明する。信号処理部18は、フーリエ変換部18aと、ピーク抽出部18bと、水平角度導出部18cと、距離・相対速度導出部18dと、垂直角度導出部18eと、連続性判定部18fと、フィルタ処理部18gと、折返し判定部18hとを有する。
フーリエ変換部18aは、AD変換器によって変換されたデジタル信号を図示しないDSP(Digital Signal Processor)回路によって周波数を分析する。具体的には、フーリエ変換部18aは、デジタル信号を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)して周波数ごとの信号に分解したFFTデータを生成する。
ピーク抽出部18bは、FFTデータにおける周波数ごとの信号のうち信号レベルが所定の閾値を超える信号をピーク信号として抽出する。
<2−6.高速フーリエ変換、ピーク抽出>
ここで、フーリエ変換部18aが導出するFFTデータと、ピーク抽出部18bが導出するピーク信号について図15および図16を用いて説明する。図15および図16は、横軸を周波数[KHz]、縦軸を電力[dB]とするグフラである。
図15は、UP区間のビート信号をFFT処理した後の変換信号FT1およびFT3の周波数スペクトルを示す図である。なお、以下ではUP区間のFFTデータの変換信号について説明を行うが、DOWN区間についても以下に説明する処理と同様の処理が行われる。フーリエ変換部18aは物標からの反射波に対応するビート信号をFFT処理して変換信号FT1、および、FT3の周波数スペクトルを導出する。なお、変換信号FT1は、右広角ビームの反射波に基づくビート信号をFFT処理した信号である。また、変換信号FT3は、左広角ビームの反射波に基づくビート信号をFFT処理した信号である。
そして、ピーク抽出部18bは、変換信号FT1およびFT3において、閾値th1の電力値P0を超える信号をピーク信号として抽出する。例えば、ピーク抽出部18bは、変換信号FT1の周波数f1における極大値P3の信号をピーク信号TP1として抽出する。また、ピーク抽出部18bは、変換信号FT3の周波数f1における極大値P1の信号をピーク信号TP3として抽出する。ここで、ピーク信号TP1の極大値P3は、右広角ビームを反射した物標の認識角度における受信信号の電力値(以下、「右広角受信レベル」という。)となる。また、ピーク信号TP3の極大値P1は、折返し判定処理で用いられる左広角ビームを反射した物標の認識角度における受信信号の電力値(以下、「左広角受信レベル」という。)となる。
なお、ピーク信号TP1は、図4で説明した送信アンテナ11aのメインローブの範囲である送信範囲Tr1からの反射波に対応するピーク信号である。また、ピーク信号TP3は、図5で説明した送信アンテナ11cのサイドローブの範囲である送信範囲Tr3aからの反射波に対応するピーク信号である。
信号処理部18は、右広角受信レベルと、左広角受信レベルとを取得する処理とを第1区間Tx10の第1処理区間Tx5と、第2区間Tx11の第2処理区間Tx5aで行う。
次に図16は、UP区間のビート信号をFFT処理したのちの変換信号FT2、および、変換信号FT4の周波数スペクトルを示す図である。図16では、第2処理区間Tx5aにおけるピーク信号TP1およびTP3の周波数、信号レベル、および、位相差の情報は、図15で説明した第1処理区間Tx5のピーク信号TP1およびTP3と同じ情報を有しているものとして説明する。そのため、この図16では、ピーク信号TP1およびTP3の周波数と信号レベルのみ示し、変換信号FT1およびFT3の波形の表示は省略する。
なお、第2処理区間Tx5aにおける第1狭角ビームおよび第2狭角ビームは、略同じ送信範囲を有する。そのため、その反射波に対応するビート信号も略同じ波形の信号となる。そして、変換信号FT2とFT4とは略同じ波形の信号となる。変換信号FT2は、フーリエ変換部18aが、第1狭角ビームの反射波に対応するビート信号をFFT処理した信号である。変換信号FT4は、フーリエ変換部18aが、第2狭角ビームの反射波に対応するそれぞれのビート信号をFFT処理した信号である。
ピーク抽出部18bは、変換信号FT2およびFT4において、閾値th1の電力値P0を超える信号をピーク信号として抽出する。例えば、ピーク抽出部18bは、変換信号FT2の周波数f1における極大値P2を有する信号をピーク信号TP2およびTP4として抽出する。なお、ピーク信号TP2およびTP4は、図6で説明した送信アンテナ11bおよび11dのサイドローブの範囲である送信範囲Tr2aおよびT4aからの反射波に対応する。
なお、ピーク抽出部18bは、ピーク信号TP2およびTP4の周波数、信号レベル、および、位相差の情報は略同じ情報である。そのため、信号処理部18は、2つのピーク信号の各情報を平均して1つのピーク信号として処理する。以下では、ピーク信号TP2およびTP4の各情報を平均したピーク信号をピーク信号TP24として説明を行う。また、ピーク信号TP24の極大値P2は、折返し判定処理における第1および第2狭角ビームを反射した物標の認識角度における受信信号の電力値(以下、「狭角受信レベル」という。)となる。
信号処理部18は、このような右広角ビーム、左広角ビーム、第1狭角ビーム、および、第2狭角ビームの反射波に基づくビート信号のFFT処理とピーク信号の抽出処理とを第2区間Tx11の第2処理区間Tx5aで行う。つまり、第1区間Tx11の区間では第1および第2狭角ビームは出力されていないため、第1処理区間Tx5では第1および第2狭角ビームの反射波に基づく処理は行われない。
図2に戻り、信号処理部18の水平角度導出部18cは、物標の路面に対する水平方向の角度を所定の角度推定方式を用いて導出する。具体的には、水平角度導出部18cは、受信アンテナ12a〜12dで受信された受信信号に基づくピーク信号から物標の路面に対する水平方向の認識角度を導出する。水平角度導出部18cは、物標の路面に対する水平方向の認識角度を距離・相対速度導出部18dに出力する。以下、水平方向の認識角度の導出処理について説明する。
<2−7.水平方向の認識角度導出>
水平角度導出部18cは、例えば、角度推定方式の例としてESPRITを用いて認識角度を導出する。レーダ装置10は、角度推定方式としてESPRITを用いた場合、4本の受信アンテナにより略同一の縦距離に位置する3つの物標のそれぞれの水平角度を導出できる。つまり、レーダ装置10は、略同一の縦距離に位置する複数の物標のうち受信アンテナ12の総アンテナ本数から1を減算した数と同じ数の物標の水平角度を導出できる。図17は、ESPRITの処理概要を説明する図である。
ESPRITは、受信アンテナ12a〜12dを位置のずれた2つのサブアレーに分け、この2つのサブアレーの位相差から到来波(反射波)の到来方向を推定する手法である。
図17に示すように、K素子リニアアレーがある。到来波数はLとし、第i到来波の角度はθ(i=1,2,・・・,L)とする。
ESPRITは、回転不変式(rotational invariance)「JAΦ=JA」に基づき、アレー全体の平行移動によって生じる各到来波の位相回転を推定する手法である。行列J、および、行列Jは、(K−1)×Kの変換行列である。Kは受信アンテナ12の本数である。Aは、それぞれθ〜θを変数とするアレー応答ベクトルからなる方向行列である。Φは、L次の対角行列である。
図17に示すように、K素子のリニアアレーにおいて、第1素子から第(K−1)素子はサブアレー#1、第2素子から第K素子はサブアレー#2となる。これにより、上記回転不変式のJAは、行列Aの1〜(K−1)行目をJAは行列の2〜K行目を抽出することを意味する。すなわち、JAは、サブアレー#1の方向行列を表す。JAは、サブアレー#2の方向行列を表す。
ここで、Aが既知であれば、Φが求められてパスの到来角が推定される。しかしAは、推定すべきものであるため、直接Φを求解することができない。そこで、K次元受信信号ベクトルのK×K共分散行列Rxxを求められる。そして、Rxxが固有値展開され、その結果得られる固有値から、熱雑音電力σよりも大きい固有値に対応する固有ベクトルを用いて信号部分空間行列Eが生成される。
生成された信号部分空間行列Eと行列Aとは、双方の間に唯一存在するL次の正則行列Tを用いてA=E−1と表せる。ここで、EはK×L行列である。TはL×Lの正則行列である。A=E−1の式が上記回転不変式に代入されると、(J)(TΦT−1)=Jが得られる。この式からTΦT−1を求めて固有値展開すれば、固有値が、Φの対角成分となる。その結果、固有値から到来波の角度が推定される。
なお、水平角度導出部18cは、上述のように略同一の縦距離に位置する複数の物標のうち受信アンテナ12の総アンテナ本数から1を減算した数と同じ数の物標の水平角度を導出できる。つまり、水平角度導出部18cは、4本の受信アンテナ12を用いて、略同じ距離に存在する3つの物標の角度を導出できる。例えば、水平角度導出部18cは、図16に示した同じ周波数f1の3つのピーク信号TP1、TP3、および、TP24に対応する物標TAの認識角度を導出できる。この場合、水平角度導出部18cは、図7に示した実際に物標TAが存在する実在角度(44deg)を、物標TAgが存在する認識角度(5deg)として導出する。このように、水平角度導出部18cが導出する認識角度は、実在角度とは異なる角度となる。
図2に戻り、距離・相対速度導出部18dは、物標の縦距離および相対速度を導出する。距離・相対速度導出部18dは、UP区間のピーク信号とDOWN区間のピーク信号とをペアリングしてペアデータを導出する。そして、距離・相対速度導出部18dは、ペアデータに対応する物標の縦距離を下記(1)式を用いて導出する。また、距離・相対速度導出部18dは、ペアデータに対応する物標の相対速度を下記(2)式を用いて導出する。なお、水平角度導出部18cにより導出された水平方向の認識角度と縦距離の情報から三角関数を用いた演算により、ペアデータに対応する物標の横距離が導出される。
Figure 2015068724
Figure 2015068724
垂直角度導出部18eは、物標の路面に対する垂直角度から物標の路面に対する垂直方向の高さを導出する。具体的には、垂直角度導出部18eは、送信アンテナ11b、11c、および、11dから出力された送信波が,物標に反射した反射波に基づいて物標の路面に対する垂直角度を導出する。ここで、物標の路面に対する垂直角度は、送信アンテナ11b、11c、および、11dの基板面に対する垂直方向の位相差に基づき、上述したESPRITの角度推定方式を用いて導出される。そして、垂直角度と縦距離の情報から三角関数を用いた演算により、物標の路面に対する垂直方向の高さが導出される。
連続性判定部18fは、今回の物標導出処理(以下、「今回処理」という。)によりペアリングされた今回ペアデータと、前回の物標導出処理(以下、「前回処理」という。)により後述するフィルタ処理後の前回ペアデータ(以下、「前回確定データ」という。)との間に時間的に連続する関係があるか否かを判定する。ここで、前回確定データと今回ペアデータとの間に時間的に連続する関係があるとは、例えば、第1区間Tx10を前回処理とし、第2区間Tx11を今回処理とした場合、前回処理の第1処理区間Tx5で物標TAが導出され、今回処理の第2処理区間Tx5aでも物標TAが導出されている場合をいう。詳細には最初に、連続性判定部18fは、前回処理で導出された物標TAの前回確定データに基づいて、今回処理の物標TAの今回ペアデータを予測した予測ペアデータを導出する。
そして、連続性判定部18fは、今回処理で実際に導出された物標TAの今回ペアデータの縦距離、横距離、および、相対速度等の物標情報と、予測ペアデータの物標情報とを比較する。連続性判定部18fは、予測ペアデータと今回ペアデータとの物標情報の差が所定範囲内の場合、両者に連続性があると判定する。なお、複数回の物標導出処理により、所定回数以上(例えば、3回以上)の連続性があるとされたペアデータは車両制御装置20への出力対象となる。
連続性判定部18fが連続性判定を行う上で用いられる今回ペアデータは2種類のデータがある。この2種類の今回ペアデータは、認識角度と同じ角度の「折返しなし角度」の物標情報を含む前今回ペアデータと、認識角度に対して「−側および+側のいずれかの折返し角度」の物標情報を含む今回ペアデータである。連続性判定部18fは、前回確定データから導出された予測ペアデータと今回ペアデータとの物標情報との差が所定範囲内の場合に、2種類のうちのいずれかの今回ペアデータと連続性があると判定する。信号処理部18が、このように2種類の今回ペアデータが導出するのは次の理由のためである。前回処理において導出された前回確定データの角度が、認識角度に対して+側および−側のいずれかの折返し角度と判定され、認識角度と異なる角度が設定された場合、設定後のいずれかの折返し角度を含む前回確定データと今回ペアデータとの連続性をとるためである。
ここで、折返し角度の導出について説明する。信号処理部18は、今回ペアデータの右広角受信レベルと左広角受信レベルとを比較する。信号処理部18は、右広角受信レベルが、左広角受信レベルよりも大きい場合(右>左)、認識角度に対して+側折返し角度の物標情報を含む今回ペアデータを導出する。つまり、異なる角度情報を含む2種類の今回ペアデータが導出されることとなる。なお、右広角受信レベルおよび左広角受信レベルいのいずれか一方の受信レベルが取得できない等、上記2つの条件のいずれも満たさない場合は、折返し角度の導出は行われず、1種類の今回ペアデータとなる。
また、信号処理部18は、今回ペアデータにおける左広角受信レベルが右広角受信レベルよりも大きい場合(左>右)、認識角度に対して−側折返し角度の物標情報を含む今回ペアデータを導出する。この場合も異なる角度情報を含む2種類の今回確定データが導出されることとなる。このように、認識角度(折返しなし角度)の物標情報を含む今回ペアデータと、−側および+側のいずれかの折返し角度の物標情報を含む今回ペアデータとの2種類の今回ペアデータが導出される。これにより、連続性判定部18fは、前回確定データが認識角度と異なる角度を有する場合でも、今回ペアデータの連続性判定を行える。
フィルタ処理部18gは、連続性判定部18fが連続性のあるペアデータと判定した場合、今回ペアデータと前回確定データとのフィルタ処理を行う。フィルタ処理部18gは、2種類の前回確定データのうち連続性を有する予測ペアデータに対応する前回確定データと、今回ペアデータとの縦距離、相対速度、横距離および信号レベル値を例えば、平均する。フィルタ処理部18gは、フィルタ処理後の今回ペアデータ(以下、「今回確定データ」という。)を導出する。
なお、レーダ装置10が今回処理で初めて導出したペアデータ(以下、「新規ペアデータ」という。)は、連続性を有する前回確定データが存在しないこととなる。その結果、フィルタ処理部18gは、新規ペアデータに対してフィルタ処理を行わず、当該新規ペアデータが今回確定データとなる。
次に、折返し判定部18hは、フィルタ処理が行われた今回確定データに対して折返し判定処理を行う(ステップS109)。折返し判定処理は、レーダ装置10が導出した物標の認識角度に基づいて実在角度を導出する。この折返し判定処理は次の処理フローチャートの説明の中で詳述する。
<3.処理フローチャート>
<3−1.全体の処理>
次に、レーダ装置10が物標情報を導出する処理について説明する。図18および図19は、信号処理部18が行う物標情報の導出処理のフローチャートである。
まず、信号処理部18は、送信波を生成する指示信号を送信制御部107に出力する(ステップS101)。そして、信号処理部18から指示信号が入力された送信制御部107により信号生成部11が制御され、送信信号TSに対応する送信波が生成される。生成された送信波は、車両外部に出力される。
そして、送信波が物標に反射することによって到来する反射波を複数の受信アンテナ12が受信し、反射波に対応する受信信号RSと送信信号TSとがミキサ13によりミキシングされ、送信信号と受信信号との差分の信号であるビート信号が生成される。そして、アナログ信号であるビート信号BSが、AD変換器14によりデジタル信号に変換され、信号処理部18に入力される。
信号処理部18のフーリエ変換部18aは、デジタル信号のビート信号に対してFFT処理を行う(ステップS102)。具体的には、信号処理部18は、UP区間及びDOWN区間の各々のビート信号に対してFFT処理を行う。これにより、フーリエ変換部18aは、UP区間及びDOWN区間の各々で、ビート信号に関する周波数ごとの信号レベル値と位相差の情報とを有するFFTデータを取得する。なお、FFTデータは、受信アンテナ12a〜12dごとに取得される。
ピーク抽出部18bは、FFTデータのうち信号レベル値が所定の閾値を超える変換信号をピーク信号として抽出する(ステップS103)。なお、この処理では、UP区間とDOWN区間との各区間のピーク信号が抽出され、ピーク信号数が確定する。
水平角度導出部18cは、UP区間およびDOWN区間のそれぞれの区間において、ピーク信号に基づいて水平方向の認識角度を導出する(ステップS104)。
距離・相対速度導出部18dは、UP区間のピーク信号とDOWN区間のピーク信号とをペアリングしてペアデータの距離・相対速度を導出する(ステップS105)。このペアリング処理は、例えば、マハラノビス距離を用いた演算により行われる。
垂直角度導出部18eは、物標の路面に対する垂直方向の角度を導出する(図19に示すステップS106)。垂直角度導出部18eは、物標の路面に対する垂直方向の角度から物標の路面に対する垂直方向の高さを導出する。
連続性判定部18fは、今回処理によりペアリングされた2種類の今回ペアデータと、前回処理により導出された前回確定データとの間に時間的に連続する関係があるか否かの連続性判定処理を行う(ステップS107)。連続性がある場合、今回処理により導出された物標と、前回処理により導出された物標とが同一物標であると判定される。なお、連続性判定部18fは、所定値以内に複数の今回ペアデータが存在する場合、最も予測ペアデータとの差の値が小さい今回ペアデータを前回確定データと時間的に連続する関係を有するものと判定する。
また、連続性判定部18fは、2種類の今回ペアデータと予測ペアデータとの縦距離、横距離及び相対速度の差の値が所定値以内ではない場合には、今回ペアデータと前回確定データとは時間的に連続する関係がない(連続性がない)と判定する。そして、このように連続性がないと判定された今回ペアデータは今回処理において初めて導出されたデータ(新規ペアデータ)となる。
フィルタ処理部18gは、2種類の今回ペアデータと前回確定データのいずれかに時間的に連続する関係がある場合は、今回ペアデータと前回確定データとの間で縦距離、相対速度、横距離、および信号レベルの値のフィルタ処理を行い、今回確定データを導出する(ステップS108)。
折返し判定部18hは、今回確定データに対して折返し判定処理を行う。以下折返し判定処理について説明する。
<3−2.折返し判定処理>
折返し判定部18hは、水平角度導出部18cが導出した物標の認識角度に基づいて、実在角度を導出する。図20〜図22は、折返し判定処理の処理フローチャートである。
折返し判定部18hは、右広角受信レベルを導出する。また、折返し判定部18hは、左広角受信レベルを導出する。そして、折返し判定部18hは、右広角受信レベルと左広角受信レベルとの差の値である実測値を導出する(ステップS201)。つまり、折返し判定部18hは、認識角度における右広角受信レベルと左広角受信レベルの大きさを比較してその比較結果である実測値を導出する。例えば、折返し判定部18hは、図12で説明した物標TAの反射波に対応するピーク信号TP1の電力値P3を導出する。この電力値P3が右広角受信レベルとなる。また、折返し判定部18hは、物標TAの反射波に対応するピーク信号TP3の電力値P1を導出する。この電力値P1が左広角受信レベルとなる。そして、折返し判定部18hは、左広角受信レベルP3から右広角受信レベルP1を減算し(P3−P1)、両者の差の値を実測値として導出する。
次に、折返し判定部18hは、実測値と物標の認識角度における3種類の設計値との各差分値を導出する(ステップS202)。差分値の導出について図23を用いて説明する。図23は、実測値と設計値に基づく差分値の導出を説明する図である。この図23では、物標TAの今回確定データに対する処理を例に説明する。折返し判定部18hは、物標TA(認識角度5deg)における左広角受信レベルと右広角受信レベルとの差の実測値が−4dBの場合、マップ情報17aの設計値1(26dB)と実測値との差の絶対値を差分値1(30dB)として導出する。また、折返し判定部18hは、設計値2(−2dB)と実測値との差の絶対値を差分値2(2dB)として導出する。さらに、折返し判定部18hは、設計値3は初期状態であるため差分値3を初期状態のままとする。なお、この差分値は、物標導出処理が行われる度に導出され、前回導出された差分値に対して今回導出された差分値が積算される。ここで、差分値1は、「−側折返し角度」に対応する値である。差分値2は「折返しなし角度」に対応する値である。差分値3は「+側折返し角度」に対応する値である。このような差分値は、各設計値に対する実測値の差を示すものであり、後述するように差が最も小さい差分値に対応する候補角度が実在角度となる。
ステップS203に戻り、折返し判定部18hは、差分値1〜3のうち最も値の小さい差分値に対応する判定値を今回確定データに設定する(ステップS203)。判定値の例としては、「1」が−側折返し、「2」が折返しなし、「3」が+側折返しとなる。折返し判定部18hは、最も小さい差分値に応じて、「1」〜「3」のうちのいずれかの判定値を今回確定データに設定する。なお、図23で示した物標TAの各差分値の中では差分値2が最も値の小さい値となる。そのため折返し判定部18hは、物標TAの今回確定データに対して「2」の判定値を設定する。なお、差分値3は初期状態であるため、判定値を決定する対象として採用されない。ここで、差分値3が初期状態となっている理由は、差分値3に対応する設計値3の値が、設計値2と略同じ値となるためである。そのため、物標TAの今回確定データに判定値「2」が設定されても、今回確定データの実在角度が、折返しなしの角度となるか、+側折返しの角度となるかは、この段階では判明しない。
次に、折返し判定部18hは、今回確定データの折返しフラグがONか否かを判定する(ステップS204)。この折返しフラグは次の場合にON状態となる。今回確定データの角度が後述する狭角受信レベルを用いた判定処理(以下、「広角判定処理」という。)により、差分値が初期状態となっている設計値に対応する候補角度が、実在角度であると判定された場合にON状態となる。折返しフラグは、例えば物標TAの今回確定データの認識角度5degに対する候補角度3(44deg)が実在角度であると判定された場合にONとなる。なお、今回確定データの折返し判定フラグは、広角判定処理が行わる前はOFF状態である。
折返し判定部18hは、今回確定データの折返しフラグがOFFの場合(ステップS204がNo)、今回確定データの判定値が、+側および−側の折り返し角度のうち設計値に値が設定されている方(初期状態ではない方)の角度に対応する値か否かを判定する(ステップS205)。つまり、折返し判定部18hは、右広角受信レベルと左広角受信レベルとに基づき、物標の角度が位相折返しなしの角度であるか位相が360°ずれた位相折返しありの角度であるかを判定する。なお、ステップS204において、折返しフラグがONの場合(ステップS204がYes)、図22に示すステップS214の処理に進む。ステップS214以降の処理については後述する。
ステップS205に戻り、折返し判定部18hは、今回確定データの判定値が、折返しなしの角度に対応する値ではない場合(ステップS205でNo)、認識角度を別の角度に変更する(ステップS206)。なお、折返しなしの角度に対応する値ではないとは、+側および−側の折返し角度に対応する設計値のうち両方に値が設定されている場合は、−側および+側のいずれかに対応する判定値である。また、+側および−側の折返し角度に対応する設計値の一方が初期状態の場合は、初期状態ではない方の判定値である。
折返し判定部18hは、例えば今回確定データの認識角度が−5degの場合、今回確定データの判定値が、設計値に値が設定されている候補角度3(31deg)に対応する判定値(「3」)か否かを判定する。折返し判定部18hは、今回確定データの判定値が「3」の場合、今回確定データの角度を−5degから31degに変更する。
そして、折返し判定部18hは、図22に示すステップS214において、今回確定データと前回確定データとの連続性の回数が3回以上か否かを判定し(ステップS214)、今回確定データの連続性が3回以上ある場合(ステップS214でYes)、今回確定データの変更後の角度(31deg)を実在角度として設定する(ステップS215)。これにより、レーダ装置10は、位相折返しありの角度に物標が存在するか否かを確実に判定できる。なお、折返し判定部18hは、今回確定データの連続性が3回未満の場合(ステップS214でNo)処理を終了し、次の物標導出処理において折返し判定処理を行う。
ステップS205に戻り、折返し判定部18hは、今回確定データの判定値が、折返しなしの角度に対応する値(「2」)の場合(ステップS205でYes)、送信アンテナ11から送信波が出力されるタイミングが第2区間Tx11のタイミングか否かを判定する(ステップS207)。
折返し判定部18hは、送信タイミングが第2区間Tx11のタイミングの場合(ステップS207でYes)、今回ペアデータの認識角度が−10deg〜10degの第1角度範囲内か否かを判定する(ステップS208)。折返し判定部18hは、今回ペアデータの認識角度が第1角度範囲内の場合(ステップS208でYes)、今回ペアデータの縦距離が1.8m〜100mの第1距離範囲内か否かを判定する(ステップS209)。折返し判定部18hは、今回ペアデータの縦距離が第1距離範囲内の場合(ステップS209でYes)、右広角受信レベルから狭角受信レベルを減算した値が所定値(例えば3dB)以上か否かを判定する(ステップS210)。また、折返し判定部18hは、左広角受信レベルから狭角受信レベルを減算した値が所定値(例えば3dB)以上か否かを判定する(ステップS210)。
折返し判定部18hは、右広角受信レベルから狭角受信レベルを減算した値、および、左広角受信レベルから狭角受信レベルを減算した値のいずれかの値が所定値以上の場合(ステップS210でYes)、物標の折返しフラグをONする(ステップS211)。
そして、上述のように物標の折返しフラグがONとなるのは次の状態を意味する。つまり、右広角受信レベルおよび左広角受信レベルのいずれかが狭角受信レベルよりも大きい値となるため、狭角受信レベルに対応する第1および第2狭角ビームのメインローブの範囲内に物標が存在せず、メインローブの範囲外に存在することを意味する。例えば、図6で説明した物標TAがサイドローブTr2a、Tr4aの範囲内に存在する場合である。
折返し判定部18hは、折返しフラグがONの場合、認識角度を+側および−側の折り返し角度のうち初期状態と設計値に対応する角度に変更する。折返し判定部18hは、例えば物標TAの認識角度(5deg)を設計値3に対応する候補角度3(44deg)に変更する。つまり、折返し判定部18hは、右広角受信レベルおよび左広角受信レベルよりも狭角受信レベルが小さい場合に折返しフラグをONする。
なお、折返し判定部18hは、右広角受信レベルから狭角受信レベルを減算した値、および、左広角受信レベルから狭角受信レベルを減算した値が所定値(例えば3dB)未満の場合(ステップS210でNo)、物標の折返しフラグをOFFする(ステップS212)。なお、折返し判定部18hが、物標の折返しフラグをOFFするのは、前回以前の物標導出処理で折返しフラグがONされ、ON状態を保持していたときである。そのため、ステップS212の処理を実行する前に折返しフラグがOFFの場合はOFFの状態を保持する。
ここで、上述のステップS210を中心とする処理は、右広角ビームの右広角受信レベル、および、左広角ビームの左広角受信レベルと共に、第1狭角ビームの受信レベル(以下、「第1狭角受信レベル」という。)と第2狭角ビームの受信レベル(以下、「第2狭角受信レベル」という。)とを平均した狭角受信レベルとを用いて、3種類の候補角度の中から実在角度を判定する処理である。この処理について図24を用いて具体的に説明する。
図24は、図14を用いて説明した電力値グラフに平均電力値の波形を追加したグラフである。具体的には、図24は、右波形RBおよび左波形LBに加えて、中央波形CBを示したグラフである。中央波形CBは、第1狭角ビームを反射した物標の認識角度における受信信号の電力値と、第2狭角ビームを反射した物標の認識角度における受信信号の電力値の平均値を示しものである。そして、中央波形CBは、実験により導出された狭角受信レベルを示す波形である。そして、中央波形CBの電力値は、水平角度−10および10degの第1角度範囲の端部では、右波形RBおよび左波形LBのいずれかと、略同じ電力値となっている。そして、中央波形CBの電力値±0degに近づくほど電力値が大きくなり、右波形RBおよび左波形LBの電力値よりも大きい電力値となっている。つまり、実験からは第1角度範囲内の判定領域内に物標が存在する場合、狭角受信レベルは、右広角受信レベル、および、左広角受信レベルよりも比較的大きい値となることが図24のグラフよりわかる。この結果から、図21に示したステップS208およびステップS210の判定処理内容が定まる。
つまり、第1角度範囲内に物標が存在する場合、狭角受信レベルは、右広角受信レベルおよび左広角受信レベルよりも大きくなる。これに対して、第1角度範囲外(−11deg以上、および、−11deg以下のいずれか)に物標が存在する場合は、右広角受信レベルおよび左広角受信レベルの少なくともいずれかが狭角受信レベルよりも大きくなる。このような実験結果を用いて、実際の物標導出処理において、認識角度に対する実在角度を導出する。つまり、折返し判定部18hは、右広角受信レベル、および、左広角受信レベルの少なくともいずれかの受信レベルの値よりも狭角受信レベルの値が所定値以下の場合は、物標の角度を位相折返しありの角度と判定する。これにより、レーダ装置10は、位相折返しありの角度が実際に物標の存在する角度か否かを正確に判定できる。
言い換えると、物標の角度が所定の角度範囲内の場合に、狭角受信レベルと右広角受信レベルおよび左広角受信レベルとの少なくともいずれかの受信レベルとを比較することで、レーダ装置10は、物標が実際に存在する正確な角度を判定できる。
このように、折返し判定部18hは、右広角受信レベルと左広角受信レベルとに基づく判定結果と、狭角受信レベルとに基づき、物標の角度が位相折返しなしの角度であるか、位相折返しありの角度であるかを判定する。これにより、レーダ装置10は物標が実際に存在する正確な角度を判定できる。
なお、物標TAの認識角度は5degであるが、実在角度は44degのため、ステップS208の第1角度範囲の条件等は満たしても、ステップS210の処理において、今回確定データの狭角受信レベルが右広角受信レベルおよび左広角受信レベルのいずれの値よりも小さくなる。言い換えると、右広角受信レベルおよび左広角受信レベルの少なくともいずれかの電力値が平均電力値と比べて3dB以上となる。そのため、ステップS211の処理で折返しフラグがONとなり、ステップS213の処理で認識角度が設計値3に対応する候補角度3(44deg)に変更される。これにより、設計値と実測値との差が略同じ複数の候補角度が存在する場合でもどちらの候補角度が実在角度であるかを確実に判定できる。
図22に戻り、折返し判定部18hは、今回確定データと前回確定データとの連続性の回数が3回以上か否かを判定し(ステップS214)、今回確定データの連続性が3回以上ある場合(ステップS214でYes)、物標TAの今回確定データの変更後の角度(44deg)を実在角度として設定する(ステップS215)。このように、少なくとも3回の連続性があることを物標の実在角度の設定条件とすることで、第1狭角ビームおよび第2狭角ビームの出力を含む第2区間Tx11の処理が少なくとも1回は実行される。これによりレーダ装置10は、物標が実際に存在する正確な角度を導出できる。その結果、車両制御装置20は、正確な物標情報に基づいて複数種類の車両制御を適正に実行できる。
なお、折返し判定部18hは、今回確定データの連続性が3回未満の場合(ステップS214でNo)処理を終了する。
また、折返し判定部18hは、上述のステップS207〜ステップS210において、各条件を満たさない場合(ステップS207〜210のいずれかでNo)、これまで説明したようにステップS214以降の処理を行う。
図19に戻り、信号処理部18は、複数の物標情報が一つの物体に対応する物標情報である場合にそれらをまとめる結合処理を行う(ステップS110)。これは、例えば、送信アンテナ11から送信波が射出され、その送信波が前方車両にて反射した場合、受信アンテナ12が受信する反射波は複数存在する。つまり、同一物体における複数の反射点からの反射波が受信アンテナ12に到来する。信号処理部18は、それぞれの反射波に基づいて物標情報を導出するため、結果として位置情報の異なる物標情報が複数導出されることになる。しかしながら、もともとは一つの車両の物標情報なので、各物標情報を一つにまとめて同一物体の物標情報として取り扱うこととしている。そのため、複数の物標情報の各相対速度が略同一で、各物標情報の縦距離および横距離が所定範囲内であれば、信号処理部18は複数の物標情報を同一物体における物標情報とみなし、当該複数の物標情報を一つの物標に対応する物標情報にまとめる結合処理を行う。
信号処理部18は、ステップS110の処理で結合処理された物標情報から車両制御装置20に出力する優先順位の高い物標情報を車両制御装置20に出力する(ステップS111)。
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態のレーダ装置10の信号処理部18は、所定の距離範囲に存在する比較的広角度域に存在する物標、言い換えると、比較的近距離に存在する物標のうちサイドローブの反射波により導出された物標に対しては以降の処理を行わないため、物標情報を削除する処理を追加したものである。
第2の実施の形態のレーダ装置10の構成および処理は、第1の実施の形態とほぼ同様であるが、折返し判定処理の処理内容が一部異なる。以下、図15〜図17を用いて相違点を中心に説明する。
<3.処理フローチャート>
図25〜図28は第2の実施の形態の折返し判定処理における処理フローチャートである。この第2の実施の形態の処理は、上述の第1の実施の形態の処理に対して、ステップS301〜ステップS306の処理を新たに追加したものである。折返し判定部18hは、ステップS301において、今回確定データの認識角度が−25deg〜25degの第2角度範囲内か否かを判定する(ステップS301)。折返し判定部18hは、認識角度が第2角度範囲内の場合(ステップS301でYes)、今回確定データの縦距離が1.8m〜10mの第2距離範囲内か否かを判定する。折り返し判定部18hは、今回ペアデータの縦距離が第2距離範囲内の場合(ステップS302でYes)、送信タイミングが第2区間Tx11のタイミングか否かを判定する(ステップS303)。なお、ステップS301の処理で今回ペアデータの認識角度が第2角度範囲外(ステップS301でNo)、および、ステップS302の処理で今回ペアデータの縦距離が第2距離範囲外(ステップS302でNo)のいずれかの場合、折返し判定部18hは、ステップS214の連続性判定が3回以上行われたか否かの判定処理を行う。
ステップS303の処理に戻り、折返し判定部18hは、送信タイミングが第2区間Tx11ではない場合、つまり、送信区間が第1区間Tx10の場合(ステップS303でYes)、右広角受信レベルおよび左広角受信レベルのいずれか電力値が小さい方の値が所定電力値(例えば、−35dB)を下回るか否かを判定する(ステップS304)。折返し判定部18hは、右広角受信レベルおよび左広角受信レベルのいずれか電力値が小さい方の値が所定電力値を下回る場合(ステップS304でYes)、今回確定データを記憶部17から削除する(ステップS305)。なお、所定電力値の一例としては、ピーク抽出処理においてピーク信号を抽出する閾値よりも例えば−3dB低い値である。
この判定処理は、右広角ビームと左広角ビームの2つのビームで反射した物標の認識角度における電力値のうち、いずれか一方の電力値が所定電力値を下回る電力値となる場合、一方の広角ビームで反射した物標の認識角度における電力値はサイドローブの反射波に対応する電力値であると判定する処理である。そして、一方の広角ビームでサイドローブの反射波となる物標は、比較的広角度域(例えば、隣接車線)に存在しており、車両制御装置20の制御対象とはならない。そのため、折返し判定部18hは、今回確定データを記憶部17から削除する。つまり、折返し判定部18hは、記憶部17に記憶している今回確定データの物標情報を削除する。
これにより、レーダ装置10が車両制御装置20に出力する必要のない物標の情報を早期に削除できる。その結果、信号処理装置が処理を行う今回確定データの数を減らすことができ、処理負荷を軽減できる。その後、折返し判定部18hは、ステップS214以降の処理を行う。
なお、ステップS304の処理において、折返し判定部18hは、右広角受信レベル、および、左広角受信レベルの電力値の小さい方が所定電力値を上回る場合(ステップS304でNo)は、今回確定データの削除処理を行うことなく、ステップS214以降の処理を行う。
ステップS303の処理に戻り、折返し判定部18hは、送信タイミングが第2区間Tx11である場合、第1狭角受信レベルおよび第2狭角受信レベルのうち、電力値が大きい方の値が所定電力値(例えば、−3 5dB)を下回るか否かを判定する(ステップS306)。折返し判定部18hは、第1狭角受信レベルおよび第2狭角受信レベルのいずれか電力値が大きい方の値が所定電力値を下回る場合(ステップS306でYes)、今回確定データを削除する(ステップS305)。その後、折返し判定部18hは、ステップS214以降の処理を行う。
なお、ステップS306の処理において、折返し判定部18hは、第1狭角受信レベル、および、第2狭角受信レベルのうち電力値の大きい方が所定電力値を上回る場合(ステップS306でNo)は、今回確定データの削除処理を行うことなく、ステップS214以降の処理を行う。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。なお、上記実施の形態で説明した形態、および、以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
上記実施の形態において、折返し判定処理において、第1狭角ビームと第2狭角ビームの2つのビームの反射波に対応する電力値(狭角受信レベル)を用いて処理を行うことを説明した。これに対して、第1狭角ビームおよび第2狭角ビームの2つのビームの反射波に対応する電力値のいずれか(第1狭角受信レベル、および、第2狭角受信レベルのいずれか)を用いて折返し判定の処理を行ってもよい。
また、上記実施の形態において、右広角受信レベル、左広角受信レベル、および、狭角受信レベルの各受信レベルは、UP区間のピーク信号のレベルを対象に説明した。これに対して、DOWN区間のピーク信号のレベルを各受信レベルとしても用いてもよい。また、両方の区間のピーク信号のレベルを各受信レベルとしてもよい。この場合、UP区間およびDOWN区間の2種類の各受信レベルが導出される。さらに、UP区間のピーク信号とDOWN区間のピーク信号とをペアリングした後のペアデータの受信レベルを各受信レベルとしてもよい。
また、上記実施の形態において、送信アンテナ11a、11b、11cおよび、11dのいずれかの送信波を反射した物標が存在する認識角度における受信信号の電力値は、周波数スペクトルにおけるピーク信号の極大値であると説明した。これに対して、送信アンテナ11a、11b、11c、および、11dのいずれかの送信波を反射した物標が存在する認識角度における受信信号の電力値を、角度スペクトルにおける極大値としてもよい。
また、上記実施の形態おいて、マップ情報17aの3つの設計値のうち折返しなし角度に対応する設計値2の値と略同じ値となる設計値の値は初期状態とすることについて説明した。これに対して、初期状態以外にも設計値2と同じ値を設定してもよい。なお、設計値の値を初期状態とするのは、設計値2と値が略同じ値となる以外に、値が一定に定まらない場合があるためである。つまり、物標がサイドローブとメインローブとの隣接位置(零点またはヌル)に存在する場合、電力値が極端に小さい値となる。そのため、マップ情報17aの一部の設定値を一定の値とせず初期状態とすることで、折返し判定部18hは、電力値が変動しても、今回確定データが広角判定処理の条件を充足し折返しフラグがONとなる場合は、その設計値に対応する候補角度が実在角度となる。
また、上記実施の形態において、右広角受信レベルおよび左広角受信レベルのいずれかの受信レベルと狭角受信レベルとの比較により位相の折返しの有無を判定することについて説明した。これに対して、狭角受信レベルに対して所定の閾値を設け、折返し判定部18hが、狭角受信レベルがこの閾値以上か否かに応じて位相の折返しの有無を判定してもよい。
また、上記実施の形態において、折返しフラグがONとなった確定ペアデータは認識角度に対する位相の一方の折返しの角度を設定することを説明した。これに対して、折返しフラグがONとなった確定ペアデータの縦距離が所定距離以下(例えば、10m以下)の場合、今回確定データを削除してもよい。
また、上記実施の形態において、送信アンテナ11および受信アンテナ12の本数を各4本として説明したが、送信アンテナ11の本数、および、受信アンテナ12の本数は4本以外の複数本であってもよい。
上記実施の形態において、アンテナ101の誘電体基板102、送信アンテナ11、および、受信アンテナ12の長さおよび幅の値は一例であり、別の値であってもよい。
また、上記実施の形態において、第1区間Tx10では、送信アンテナ11a、送信アンテナ11cの順で送信波が出力されると説明した。第2区間Tx11では、送信アンテナ11a、送信アンテナ11b、送信アンテナ11c、送信アンテナ11dの順で送信波が出力されると説明した。ここで、第1区間Tx10および第2区間Tx11の送信波の出力順は一例である。別の例として例えば、第1区間Tx10では、送信アンテナ11c、送信アンテナ11aの順で送信波が出力してもよい。第2区間Tx11では、送信アンテナ11a、送信アンテナ11d、送信アンテナ11c、送信アンテナ11bの順で送信波を出力してもよい。つまり、物標の水平方向の位置および垂直方向の高さが導出できる順序であれば、送信アンテナ11から送信波を出力する順序はどの順序であってもよい。
また、上記実施の形態において、送信範囲Tr1〜Tr4の範囲について、送信軸Ce2を±0degとする角度を具体的な値で示して説明した。ここで角度の値は一例であり、角度の値は他の値であってもよい。
また、上記実施の形態では、物標の縦距離は物標から反射した反射波がレーダ装置10の受信アンテナ12に受信されるまでの距離であると説明した。これに対して、物標の縦距離は、物標の角度が送信軸Ce2(±0deg)以外の角度位置に存在する場合に、受信アンテナ12に受信されるまでの距離と物標の角度とを用いた三角関数の演算により、物標の角度が送信軸Ce2上(±0deg)であると仮定したときの距離としてもよい。
また、上記の実施の形態において、レーダ装置10が用いる角度推定方式はESPRITを例に説明した。しかしこれ以外にもDBF(Digital Beam Forming)、PRISM(Propagator method based on an Improved Spatial-smoothing Matrix)、および、MUSIC(Multiple Signal Classification)などのうちいずれか一の角度推定方式を用いてもよい。
また、上記実施の形態において、レーダ装置10は、車両CR以外の他の機器に用いられてもよい。レーダ装置10は、例えば航空機および船舶のいずれか1つに用いられてもよい。
10・・・・レーダ装置
11・・・・送信アンテナ
12・・・・受信アンテナ
13・・・・ミキサ
14・・・・AD変換器
15・・・・信号生成部
16・・・・発振器
17・・・・記憶部
18・・・・信号処理部

Claims (7)

  1. 物標からの反射波を複数の受信アンテナで受信した受信信号の位相差により前記物標の角度を導出するレーダ装置であって、
    互いに送信方向が水平方向で順次異なる第1の送信アンテナ、第2の送信アンテナ、および、第3の送信アンテナと、
    前記各送信アンテナから第1の送信波、第2の送信波、および、第3の送信波をそれぞれ出力する送信手段と、
    前記第1の送信アンテナによる受信信号の第1受信レベルと、前記第3の送信アンテナによる受信信号の第3受信レベルとに基づき、前記物標の角度が位相折返しなしの角度であるか位相が360°ずれた位相折返しありの角度であるかを判定する第1の位相折返し判定手段と、
    前記第1の位相折返し判定手段の判定結果と、前記第2の送信アンテナによる受信信号の第2受信レベルとに基づき、前記物標の角度が前記位相折返しなしの角度であるか前記位相折返しありの角度であるかを判定する第2の位相折返し判定手段と、
    を備えることを特徴とするレーダ装置。
  2. 請求項1に記載のレーダ装置において、
    前記第1の送信アンテナの送信方向と前記第3の送信アンテナの送信方向は、前記第2の送信アンテナの送信方向を基準に対称な方向に設定されており、
    前記第2の送信波は、前記第1の送信波および第3の送信波よりも狭い送信範囲を有する送信波であり、
    前記第1の送信波、前記第2の送信波、および、前記第3の送信波の一部の送信範囲が重畳すること、
    を特徴とするレーダ装置。
  3. 請求項1または2に記載のレーダ装置において、
    前記第2の位相折返し判定手段は、前記第1受信レベル、および、前記第3受信レベルの少なくともいずれかの受信レベルの値よりも前記第2受信レベルの値が所定値以下の場合は、前記物標の角度を前記位相折返しあり角度であると判定すること、
    を特徴とするレーダ装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載のレーダ装置において、
    前記位相折返しなしの角度、および、前記位相折返しありの角度における前記第1受信レベルと前記第3受信レベルとの差を各々基準値として記憶する記憶手段をさらに備え、
    前記第1の位相折返し判定手段は、前記物標の角度に対する前記第1受信レベルと前記第3受信レベルとの差の実測値を複数の前記基準値と比較して、前記物標の角度の位相の折返しの有無を判定すること、
    を特徴とするレーダ装置。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載のレーダ装置において、
    前記第2の位相折返し判定手段は、前記物標の角度が所定の角度範囲内の場合に、前記第2受信レベルと、前記第1受信レベルおよび前記第3受信レベルの少なくともいずれかの受信レベルとを比較すること、
    を特徴とするレーダ装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載のレーダ装置と、
    前記レーダ装置から前記物標の情報を受信して車両を制御する車両制御装置と、
    を備える車両制御システム。
  7. 物標からの反射波を複数の受信アンテナで受信した受信信号の位相差により前記物標の角度を導出する信号処理方法であって、
    互いに送信方向が水平方向で順次異なる第1の送信アンテナ、第2の送信アンテナ、および、第3の送信アンテナの各送信アンテナから第1の送信波、第2の送信波、および、第3の送信波をそれぞれ出力する工程と、
    前記第1の送信アンテナによる受信信号の第1受信レベルと、前記第3の送信アンテナによる受信信号の第3受信レベルとに基づき、前記物標の角度が位相折返しなしの角度であるか位相が360°ずれた位相折返しありの角度であるかを判定する工程と、
    前記第1の位相折返し判定手段の判定結果と、前記第2の送信アンテナによる受信信号の第2受信レベルとに基づき、前記物標の角度が前記位相折返しなしの角度であるか前記位相折返しありの角度であるかを判定する工程と、
    を備える
    信号処理方法。
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