JP2015067812A - プリプレグおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
後者の場合の複合材料は、一般にプリプレグと呼ばれる中間基材の形態から成形し最終形態とされている。この場合、プリプレグを構成するマトリックス樹脂としては、プリプレグを積層するのに必要な適度の粘着性や柔軟性を有する熱硬化性樹脂が用いられている。
また、プリプレグの製造方法は、強化材の繊維に方向性を持たせた状態でマトリックス樹脂を含浸させる方法が主として用いられている。この方法で得られる複合材料は強度に異方性があり、繊維の方向の引張りには強いが、繊維と直角方向の引張りには弱くなる。そのため、繊維方向が異なるように複数枚のプリプレグを重ね合せることが行なわれる。このような単純な積層では、層同士の接着強度の不足が問題(層間剥離、デラミネーション)となることが多い。
あるいは、特許文献2および3には、熱可塑性樹脂のフィルムを繊維強化プリプレグの表面に配して積層することで、層間強度の改善する手法が提案されている。
しかし、これらの方法では層間強度を向上しているが、熱硬化性樹脂を反応させるため、賦型に時間がかかる問題は解決できていない。
本発明は、強化繊維クロスにポリアリレート樹脂を含浸または塗布したプリプレグであって、耐熱性、電気絶縁性に優れ、短時間で成形可能なプリプレグを提供することを目的とする。
すなわち本発明の要旨は下記のとおりである。
(1)強化繊維クロスにポリアリレート樹脂を含浸または塗布してなるプリプレグであって、前記ポリアリレート樹脂のガラス転移温度が220℃以上、かつ絶縁破壊電圧が180kV以上であるプリプレグ。
(2)ポリアリレート樹脂が、下記一般式(I)で示される構造を有する(1)のプリプレグ。
(3)強化繊維クロスを構成する強化繊維が、ガラス繊維、または炭素繊維である(1)または(2)のプリプレグ。
(4)(1)〜(3)のプリプレグを積層してなる板状成形体。
(5)ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、アミド化合物、エーテル化合物、ケトン化合物およびハロゲン基を含まない芳香族炭化水素から選ばれる少なくとも1種類を溶媒とし、常温で固形分濃度10質量%以上となるようポリアリレート樹脂を溶解しワニスを得て、前記ワニスを強化繊維ワニスに含浸または塗布した後、乾燥する(1)〜(3)のプリプレグの製造方法。
R3およびR4は、各々独立に水素原子であることが好ましく、R5は無置換の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、特にメチル基であることが好ましく、Ar1は無置換の芳香族炭化水素基が好ましく、Ar2はフェニレン基であることが好ましい。
一般式(I)で示される構造に、ビスフェノール類残基を導入するためのビスフェノール成分としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−tert−ブチルフェニル)メタン等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。上記の中でも、前記耐熱性、電気絶縁性の観点から、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(BPAP)を好ましく用いることができる。
とができる。なお、ワニスとする際、所望の性能を付与するため、本発明で必要とする性
能の範囲内でポリアリレート樹脂以外の他の樹脂を溶解してもよい。他の樹脂の一例としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンやポリエーテルイミド等が挙げられる。また、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、微粒子無機フィラー等の各種添加剤を混合して用いてもよい。
(1)インヘレント粘度(ηinh)
フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=60/40の混合液を溶媒として、濃度1g/dl、温度25℃の条件で相対粘度(ηrel)を測定した。得られた相対粘度より下記式よりインヘレント粘度を算出した。
ηinh(dl/g) = Ln(ηrel)/c (c:濃度)
示差走査熱分析装置(パーキンエルマー社製Diamond DSC)を使用し、昇温速度10℃/minで30℃から400℃まで昇温し、得られた昇温曲線中のガラス転移温度に由来する不連続変化の開始温度をガラス転移温度とした。
内容量50mlのガラス製ねじ口瓶に所定濃度になるよう秤量した樹脂と有機溶剤の合計30gを密封し、23℃の室温でミックスローターを使用して70rpmでねじ口瓶を回転させた。回転を開始して24時間後に回転を停止した。その後ねじ口瓶の樹脂溶液を目視観察し、下記基準により溶解性を評価した。なお、有機溶剤として、クロロホルム、クロロベンゼン、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMP)、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサノンおよびトルエンのそれぞれを用い、10、20、30質量%の各濃度になるように樹脂溶液を作製した。
〇:完全に溶解し、透明性を有した。
△:白濁した。
×:不溶物があった。
(3)で溶解性の評価を行った各樹脂溶液について、回転を停止したねじ口瓶を23℃の室温下48時間静置した。その後ねじ口瓶の樹脂溶液を目視観察し、下記基準により溶液安定性を評価した。
〇:透明性が維持され、増粘もしなかった
△:白濁し、やや増粘した。ただし流動性は有した。
×:ゲル化した。流動性はなかった。
JIS K7052あるいはJIS K7075に準拠して測定した。
プリプレグを各温度、圧力、時間の条件下熱プレスにより積層した。得られた板状成形体に対し曲げ応力をかけて破断し、破断面を観察した。破断面に層間剥離が認められれば「×」、認められなければ「○」と判定した。
JIS C2151に準拠して測定した。100℃の雰囲気にて、直流耐電圧試験機を用い、上部電極として直径25mm、下部電極として直径25mmの円柱を使用し、1kV/秒の昇圧速度で昇圧し、絶縁破壊した時の電圧(単位:kV)とプリプレグ厚み(単位:mm)から、絶縁破壊電圧(単位:kV/mm)を算出した。
水冷用ジャケットと攪拌装置を備えた内容積100Lの反応容器中に、水酸化ナトリウム850gを30Lのイオン交換水に溶解し、ついで1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(以下BPAPと称す)6.00mol、および、p−tert−ブチルフェノール(以下PTBPと称す)0.30molを溶解した。
別の容器でテレフタル酸ジクロリド(以下TPCと称す)3.08mol、イソフタル酸ジクロリド(以下IPCと称す)3.08molをジクロロメタン18Lに溶解した。
それぞれの液を20℃になるよう調節した後、前記水溶液を攪拌した反応容器中へ、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドの50%水溶液を15g添加し、さらに前記ジクロロメタン溶液を全量投入し、6時間攪拌を続けた後、攪拌機を停止した。
静置分離後に水相を抜き出し、残ったジクロロメタン相に酢酸20gを添加した。その後、イオン交換水30Lを投入し、20分間攪拌してから再度静置して水相を抜き出した。この水洗操作を水相が中性になるまで繰り返した後、ジクロロメタン相をホモミキサーを装着した容器に入った50℃の温水中に投入して塩化メチレンを蒸発させ、粉末状ポリアリレートを得た。
BPAP、PTBP、TPCおよびIPCの配合比率を表1に記載のものにした以外は実施例1と同様の方法でポリアリレート樹脂を合成し、評価を行った。その評価結果を表1に示す。
実施例1で得たポリアリレート樹脂をクロロホルムに溶解し、樹脂濃度20質量%のワニスを作製した。得られたワニスを、厚さ150μm、坪量120g/m2の平織り炭素繊維織布(三菱レイヨン社製TR1120M)に含浸し、150℃で乾燥させ、炭素繊維含有量が37質量%である厚さ170μmのプリプレグを得た。このプリプレグについて、1枚のみ表面に離型剤を塗布したアルミ板で挟んで300℃、5MPaの圧力で1分間プレスした。アルミ板と重ね合せた状態で取り出し、水冷したプレス機でプレスし1分間冷却した。十分冷却後アルミ板を剥離し1枚の板状成形体を得た。得られた板状成形体につき炭素繊維織布の部分的な露出の懸念があったため、前記ポリアリレート樹脂のトルエンへ溶解した樹脂濃度5質量%のワニスを、前記プリプレグの表面が侵されない程度に軽くコートし風乾した。この処理は両面に対して行った。これによって、板状成形体の両表面は炭素繊維織布の露出のない完全に平滑なものとなった。得られた板状成形体に対し絶縁破壊電圧の測定を行った。
さらに、得られたプリプレグを3枚重ね合せ、表面に離型剤を塗布したアルミ板で挟んで340℃、10MPaの圧力で3分間プレスした。アルミ板と重ね合せた状態で取り出し、水冷したプレス機でプレスして1分間冷却した。十分冷却後アルミ板を剥離し1枚の板状成形体を得た。得られた板状成形体に対し曲げ応力をかけて破断させた断面を観察したところ、層間剥離に由来する剥離面は認められなかった。その評価結果を表1に示す。
実施例1と同じ装置を使用して、水酸化ナトリウム850gを30Lのイオン交換水に溶解し、ついでビスフェノールA(以下BPAと称す)6.00mol、およびPTBP0.30molを溶解した。別の容器でTPC3.08mol、IPC3.08molをジクロロメタン18Lに溶解した。それぞれの溶液を20℃になるよう調整した後、前記水溶液を攪拌した反応容器中へ、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドの50%水溶液を15g添加し、さらに前記ジクロロメタン溶液を全量投入し、6時間攪拌を続けた後、攪拌機を停止した。以降は実施例1と同様の操作によりポリアリレート樹脂を得た。
BPAPに代えて、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)とBPAを表2記載の混合比で用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアリレート樹脂を得て、各種評価を行った。その評価結果を表2に示す。
BPAPに代えて、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下BPTMC)とBPAを表2記載の混合比で用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアリレート樹脂を得て、各種評価を行った。その評価結果を表2に示す。
比較例1で用いたポリアリレート樹脂は耐熱性が不足した。また、得られたプリプレグ
からなる板状成形体は絶縁破壊電圧は基準を満たさなかった。
Claims (5)
- 強化繊維クロスにポリアリレート樹脂を含浸または塗布してなるプリプレグであって、前記ポリアリレート樹脂のガラス転移温度が220℃以上、かつ絶縁破壊電圧が180kV以上であるプリプレグ。
- ポリアリレート樹脂が、下記一般式(I)で示される構造を有する請求項1記載のプリプレグ。
- 強化繊維クロスを構成する強化繊維が、ガラス繊維、または炭素繊維である請求項1または2記載のプリプレグ。
- 請求項1〜3いずれか記載のプリプレグを積層してなる板状成形体。
- ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、アミド化合物、エーテル化合物、ケトン化合物およびハロゲン基を含まない芳香族炭化水素から選ばれる少なくとも1種類を溶媒とし、常温で固形分濃度10質量%以上となるようポリアリレート樹脂を溶解しワニスを得て、前記ワニスを強化繊維ワニスに含浸または塗布した後、乾燥する請求項1〜3記載のプリプレグの製造方法。
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