JP2015066591A - プレス成形金型 - Google Patents
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【解決手段】本発明に係るプレス成形金型1は、パンチ10と、ブランクホルダ20と、ダイ30と、を備え、ブランク材の外周端部をブランクホルダ20の挟持面22及びダイ30の挟持面32で挟持し、ブランクホルダ20及びダイ30の各中央部に形成された貫通部21、31をパンチ10が移動することでブランク材をプレス成形するプレス成形金型であって、挟持面22及び挟持面32にはそれぞれ、貫通部21、31から遠ざかる方向に凹凸を繰り返す波型形状部24、34が互いに噛み合い可能に形成され、波型形状部24、34の輪郭形状はそれぞれ、半波長以上の長さを有する波形状となっている。
【選択図】 図1
Description
パウダリングの原因としては、例えば、プレス成形時に金型に設けられた絞りビードをブランク材が通過することで生ずるブランク材の曲げ曲げ戻しによるめっきの損傷が挙げられる。より詳しくは、プレス成形時にフランジしわが発生すると、まず、フランジしわの表裏面でブランク材の曲げ曲げ戻しによってパウダリングが発生する。そして、このフランジしわが絞りビードを通過すると、フランジしわは絞りビードによる曲げ曲げ戻しを受けるため、さらにパウダリングが発生する。特に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板をブランク材とした場合には、他のめっき鋼板と比較してめっきの変形能が一般に低いため、プレス成形時にパウダリングが発生しやすい。
パウダリングの発生を抑制するためには、プレス成形時におけるフランジしわの発生を抑制することが効果的である。フランジしわの発生を抑制するための技術としては、金型内へのブランク材の流入を抑制する技術が一般的である。例えば、しわ押さえ力を上げる、絞りビードの高さを高くするといった手段を用いることで、金型内へのブランク材の流入を抑制する。
フランジしわの発生を抑制しつつ金型内へのブランク材の流入量を調整する技術として、例えば特許文献1〜3に記載の技術がある。特許文献1、2には、ブランク材に折り曲げ部を設けることで金型内へのブランク材の流入量を減少させて、フランジしわの発生を抑制する技術が記載されている。また、特許文献3には、絞りビードの形状を平面視で波型形状とし絞りビード部のクリアランスを広くすることで、フランジしわの発生を抑制する技術が記載されている。
そこで、本願発明は、上記課題に鑑み、プレス成形時に発生するフランジしわに起因するパウダリングの発生を抑制することができるプレス成形金型を提供することを目的とする。
この構成であれば、ブランクホルダ側挟持面とダイ側挟持面とでブランク材の外周端部を挟持した際に、当該外周端部に上述の波型形状を付与することができる。このため、当該外周端部の面内方向の変形に対する剛性を高めることができ、プレス成形時におけるフランジしわの発生を抑制することができる。ゆえに、フランジしわに起因するパウダリングの発生を抑制することができる。
以上のように、本発明の一態様に係るプレス成形金型であれば、ブランク材をプレス成形した場合に、従来技術と比較してパウダリングの発生を抑制することができる。
(金型1)
図1は、本実施形態に係る金型1の構造を模式的に示す断面斜視図である。図1に示すように、金型1は、パンチ10と、ブランクホルダ20と、ダイ30とを備えている。なお、金型1は、図1に示した断面に対して面対称な形状をしたものである。
図2は、本実施形態に係る金型1の挟持面の形状を模式的に示す断面図である。より詳しくは、ブランクホルダ20に備わる挟持面(ブランクホルダ側挟持面)22及びダイ30に備わる挟持面(ダイ側挟持面)32の形状を模式的に示す断面図である。図2に示された「λ」はそれぞれ、ブランクホルダ20の波型形状部24及びダイ30の波型形状部34の各波型形状部の波長を示し、「A」は各波型形状部の振幅を示している。ここで、振幅とは、振動幅の半分の値を意味する。
(パンチ10)
パンチ10は、ブランク材を絞ってプレス成形品を製造するための部品であって、例えば略直方体をした金属ブロックである。このパンチ10は、プレス成形時にブランク材と接するプレス成形面11を有している。
パンチ10の形状は、図面上下方向から見た場合に、例えば略四角形をしている。もっとも、パンチ10の形状は、製造するプレス成形品の形状によって様々な形状を取り得る。なお、パンチ10の図面左右方向の幅は、図1において、「W1」で示されている。
パンチ10の図面上方向には、ブランクホルダ20が配置されている。このブランクホルダ20は、ブランク材を挟持するための部品であって、例えば略直方体をした金属ブロックである。また、ブランクホルダ20は、図面上下方向に移動可能な部品である。
ブランクホルダ20の中央部分には、ブランクホルダ20を図面上下方向に貫通する貫通部(プレス成形領域)21が設けられている。ブランク材をプレス成形する際には、この貫通部21内をパンチ10が移動し、ブランク材とパンチ10とが接する構造となっている。換言すると、貫通部21は、パンチ10が通過自在な構造をしている。
この貫通部21の形状は、図面上下方向から見た場合に、例えば略四角形をしている。より詳しくは、貫通部21の図面左右方向の幅W2は、パンチ10の幅W1よりも広くなっている。これと同様に、貫通部21の図面前後方向の幅は、パンチ10の図面前後方向の幅よりも広くなっている。もっとに、パンチ10の形状と同様に、貫通部21の形状は、プレス成形品の形状によって様々な形状を取り得る。
絞りビード23は、貫通部21の縁部21aの直線部分に沿って延びる溝であって、図面前後方向、図面左右方向の各方向における断面形状は凹状である。絞りビード23の深さ及び幅は、図2において、それぞれ「d」及び「w1」で示されている。
なお、この波型形状部24は、少なくとも、貫通部21のコーナー部分(角部)から遠ざかる方向に凹凸を繰り返すように形成されていればよい。
波型形状部24の波型形状の波長λを振幅Aで割った値は、2以上であり、より好ましくは3以上である。波長λを振幅Aで割った値が2未満の場合には、波長λに対して振幅Aが大きくなりフランジしわの発生を抑制する効果は高くなるが、一方で、例えばブランク材の金型1内への流入量を過剰に抑制してしまう、曲げ曲げ戻し量が大きくなりパウダリングの発生量が多くなってしまうといった不都合が生じ得る。
なお、図1、2に示された波型形状部24の波型形状は、三角関数によって記述された波型形状であり、2つの凹部と2つの凸部とを含んだ波型形状(つまり、2波長分の波形状)である。
ブランクホルダ20の図面上方向には、ダイ30が配置されている。このダイ30は、ブランク材を挟持するための部品であって、例えば略直方体をした金属ブロックである。また、ダイ30は、図面上下方向に移動可能な部品である。
ダイ30の中央部分には、ダイ30を図面上下方向に貫通する貫通部(プレス成形領域)31が設けられている。ブランク材をプレス成形する際には、この貫通部31内をパンチ10が移動する。換言すると、貫通部31は、パンチ10が通過自在な構造をしている。
なお、この波型形状部34は、少なくとも、図示しない貫通部31のコーナー部分(角部)から遠ざかる方向に凹凸を繰り返すように形成されていればよい。
波型形状部34の輪郭形状は、半波長以上の長さを有する波形状であることを必要とする。なお、波型形状部34の輪郭形状が1波長以上の長さを有する波形状であれば、フランジしわの発生をより効果的に抑制することができる。
なお、図1、2に示された波型形状部34の波型形状は、三角関数によって記述された波型形状であり、2つの凹部と2つの凸部とを含んだ波型形状(つまり、2波長分の波形状)である。
上述の実施形態では、貫通部21、31の周囲を取り囲むようにして設けられた波型形状部24、34について説明したが、これに限定されるものではない。波型形状部24、34はそれぞれ、少なくとも、貫通部21、31のコーナー部から遠ざかる方向に凹凸を繰り返すように形成されていればよい。
また、上述の実施形態では、絞りビード23、33を備えた金型1について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、金型に絞りビード23、33を設けなくてもよい。より詳しくは、挟持面22には波型形状部24のみを設け、挟持面32には波型形状部34のみを設けてもよい。
以下、上述の金型1を用いてブランク材40をプレス成形する方法について、図4〜8を参照しつつ説明する。図4〜7は、金型1を用いてブランク材40をプレス成形する際の各工程を模式的に示す断面斜視図である。また、図8は、フランジ部41に波型形状が付与されたブランク材40の形状を模式的に示す平面図である。なお、図8では、ブランクホルダ20とダイ30の記載を省略している。
本実施形態に係る成形方法では、まず、図4に示すように、金型1にブランク材40をセットする。より詳しくは、ブランクホルダ20とダイ30との間にブランク材40を配置する。金型1にセットするブランク材40は、例えば、一枚の平板状金属素材を打ち抜いた四角形状の部材であって、合金化溶融亜鉛めっき鋼板等のめっき鋼板である。
最後に、図7に示すように、金型1から成形パネル42を取り出す。こうして、本実施形態に係るプレス成形方法は終了する。
本実施形態では、挟持面22と挟持面32とで挟持されたブランク材40をパンチ10に向けて移動させて、ブランク材10をプレス成形する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、挟持面22と挟持面32とで挟持されたブランク材40に向けてパンチ10を移動させて、ブランク材10をプレス成形してもよい。
上述の実施形態では、貫通部31を有するダイ30を備えた金型1を用いてブランク材40をプレス成形した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、ダイ50に凹部51を設け、その凹部51に突起部55を設けてもよい。ただし、この場合には、突起部55に対応する溝部62を備えたパンチ60を用いてブランク材40をプレス成形する必要がある。これにより、突起部55の形状が付与されたプレス成形品(成形パネル47)を製造することができる。なお、図9に示された「50a」、「52」、「53」、「54」、「61」は、それぞれダイ30の外縁部30a、挟持面32、絞りビード33、波型形状部34、パンチ10に備わるプレス成形面11に対応するものである。
金型1を用いて、絞りビードの高さ、波型形状及びプレス成形時のクッション圧を独立に変化させることで、絞りビードの高さ等がフランジしわの発生や成形性にどのように影響を及ぼすかを検証した。以下、その検証結果について説明する。
本検証では、絞りビードの高さは1mm、3mm、5mmの3水準で変化させ、波型形状は波長λを40mmとして振幅Aを0mm、10mm、20mm、30mmの4水準で変化させた。また、試験ブランク材には270D材を用い、各金型条件でクッション圧を変化させて30mmの成形高さまで試験ブランク材を成形した。その後、プレス成形品に割れやフランジしわが発生していないか検査を行った。その結果を表1に示す。
表2は、クッション圧を12tとした場合の各金型条件における成形高さと、板厚減少率とを比較した結果である。
表2に示した結果から、金型に波型形状を付与することにより、絞りビードの高さを高くすることなく歩留まりを向上させることができ、且つフランジしわの発生を抑制することができることがわかる。
(1)本実施形態に係る金型1は、パンチ10と、ブランクホルダ20と、ブランクホルダ20に対向して配置されたダイ30と、を備えている。また、金型1は、ブランク材40のフランジ部41をブランクホルダ20の挟持面22及びダイ30の挟持面32で挟持し、ブランクホルダ20及びダイ30の各中央部に形成された貫通部21、31をパンチ10が移動することでブランク材40をプレス成形する金型である。また、挟持面22及び挟持面32にはそれぞれ、貫通部21、31から遠ざかる方向に凹凸を繰り返す波型形状部24、34が互いに噛み合い可能に形成されている。また、波型形状部24、34の輪郭形状はそれぞれ、半波長以上の長さを有する波形状となっている。
この構成であれば、少なくとも、プレス成形時における、プレス成形品のコーナー部分におけるフランジしわの発生を抑制することができる。ゆえに、プレス成形品のコーナー部分におけるフランジしわの発生に起因するパウダリングの発生も抑制することができる。
この構成であれば、挟持面22と挟持面32とでブランク材40のフランジ部41を挟持した際に、そのフランジ部41に上述の波型形状44を付与することができる。このため、プレス成形時にブランク材40が金型1内に流入する際の抵抗力を大きくすることができ、絞りビード23、33の高さを低くすることが可能となる。よって、従来技術に係るフランジしわの発生を抑制する手段(例えば、絞りビードの高さを高くする、しわ押さえ力を上げるといった手段)と比較して、ブランク材40が金型1内に流入する際の抵抗力を小さくすることができる。ゆえに、金型1内にブランク材40を適度に流入させることが可能となるため、プレス成形時における割れの発生を抑制することができる。
また、絞りビード23、33の高さを低くすることが可能となると、絞りビード通過時のブランク材40の曲げ曲げ戻し量を小さくすることができる。このため、パウダリングの発生をさらに抑制することができる。
この構成であれば、ブランク材40の金型1内への流入を過剰に抑制することもなく、曲げ曲げ戻し量が多くなることもない。このため、パウダリングの発生をさらに抑制するとともに、割れの発生をさらに抑制することができる。
Claims (4)
- パンチと、ブランクホルダと、前記ブランクホルダに対向して配置されたダイと、を備え、ブランク材の外周端部を前記ブランクホルダのブランクホルダ側挟持面及び前記ダイのダイ側挟持面で挟持し、前記ブランクホルダ及び前記ダイの各中央部側に形成されたプレス成形領域を前記パンチが移動することで前記ブランク材をプレス成形するプレス成形金型であって、
前記ブランクホルダ側挟持面及び前記ダイ側挟持面にはそれぞれ、前記プレス成形領域から遠ざかる方向に凹凸を繰り返す波型形状部が互いに噛み合い可能に形成され、前記各波型形状部の輪郭形状は、半波長以上の長さを有する波形状となっていることを特徴とするプレス成形金型。 - 前記各波型形状部は、少なくとも、前記プレス成形領域の角部から遠ざかる方向に凹凸を繰り返すように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形金型。
- 前記ブランクホルダ側挟持面及び前記ダイ側挟持面にはそれぞれ、前記プレス成形領域の縁部に沿って、絞りビードが互いに噛み合い可能に形成され、
前記各絞りビードの外側には、前記波型形状部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレス成形金型。 - 前記波型形状部の波長を前記波型形状部の振幅で割った値は、それぞれ2以上6以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプレス成形金型。
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