JP2015065333A - セラミック電子部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】セラミック電子部品の端子電極と基板とのはんだによる接合において、高い接合強度を有する端子電極を備えるセラミック電子部品を提供する。【解決手段】セラミック素体の表面に設けられるCuを含有する端子電極であって、前記端子電極にZnまたはAlを主に含有する第一領域と、Niを主に含有する第二領域とが、Cuを主とする領域内に島状に散在することを特徴とするセラミック電子部品。さらに、前記端子電極の断面における前記第一領域の面積割合が、前記第二領域の面積割合より多い。【選択図】図2

Description

本発明は、端子電極を備えるセラミック電子部品に関する。
近年、電子デバイスはその高性能化に伴って、より多くのセラミック電子部品が回路基板に実装されている。そのため、搭載される電子部品の電極材料として使用される貴金属の使用量は年々増大している。特に、貴金属は埋蔵量が少ない上に生産が特定少数国に偏在している一方、使用済み製品からの回収が難しいという課題があることから、電極材料に卑金属を用いた電極の開発が進められている。
例えば、バリスタおよびコンデンサ等の一般的なセラミック電子部品は、セラミック素体とその表面に設けられる端子電極とを備えている。この端子電極は、例えば銅(Cu)の金属粉末およびガラスフリット等を混合した外部電極ペーストを焼き付けて形成する。このセラミック電子部品の基板への実装には、はんだによりその端子電極を接合している。このはんだによる接合には、特に鉛フリーはんだを用いた場合はんだの溶融に伴って、セラミック電子部品の端子電極の一部がはんだ成分の錫(Sn)に溶解してしまう、いわゆるはんだ食われが生じた場合には、セラミック電子部品と基板との接合強度が低下してしまうことがあった。
このため、セラミック電子部品を回路基板等に実装する際のはんだ食われの抑制およびはんだ濡れ性の向上を目的として、端子電極の外表面にNiのめっき層と、さらにその外表面にSnのめっき層を形成する手段が、特許文献1に提案されている。
さらに、めっき液に素体の成分が溶出し特性の劣化が生じる可能性があるバリスタでは、めっきにより金属層を形成する場合には、素体の表面にガラス等を表面に塗布する等の手段が特許文献2に提案されている。
特開平8−298018号公報 特開2001−143910号公報
このように、はんだ接合によりセラミック電子部品を回路基板等に実装する場合には、セラミック電子部品の端子電極の外表面にNiの金属層を形成することが必要であり、特に、めっき液に耐性が低い素体を用いる場合には、さらに、その素体の保護も必要であり、工程を煩雑にしなければならなかった。
このため、セラミック電子部品には、端子電極の外表面にめっき等により形成された金属層がなくても、はんだ耐熱性(耐はんだ食われ性)を有し、はんだによる基板との接合の強度が高い卑金属を電極材料として用いた端子電極が求められていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、セラミック電子部品の端子電極と基板とのはんだによる接合において、めっき等により形成された金属層がなくても高い接合強度を有する端子電極を備えるセラミック電子部品を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のセラミック電子部品は、セラミック素体の表面に設けられるCuを含有する端子電極を備えるセラミック電子部品であって、前記端子電極にZnまたはAlを主に含有する第一領域と、Niを主に含有する第二領域とが、Cuを主に含有する領域内に島状に散在することを特徴とする。
さらに、セラミック電子部品の前記端子電極と前記セラミック素体との界面方向に垂直な前記端子電極の断面における前記第一領域の面積割合が、前記第二領域の面積割合より多いことが好ましい。
さらに、セラミック電子部品の前記第一領域の酸素含有量が前記第二領域より多いことが好ましい。
本発明によれば、セラミック電子部品の端子電極と基板とのはんだ接合において、めっき等により形成された金属層がなくても高い接合強度を有する端子電極を備えるセラミック電子部品を提供することができる。
本実施形態のセラミック電子部品の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。 本実施形態のセラミック電子部品の端子電極の模式的な断面図である。
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一または同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。また、特に断らない限り、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。
本発明に係る実施形態のセラミック電子部品は、特に限定されないが、コンデンサ、圧電素子、インダクタ、バリスタ、サーミスタ、抵抗、トランジスタ、ダイオード、水晶発振素子およびこれらの複合素子、その他のセラミック電子部品が例示される。
本実施形態では、図1に端子電極10を備えるバリスタ特性を持つセラミック電子部品100を例示して説明する。図1に示すように、本実施形態のセラミック電子部品100は、セラミック素体20(以下、素体20)と、素体20の主面20aの上に設けられた端子電極10とを有する。素体20は、セラミック層21、22、23がこの順で積層された積層構造を有している。各セラミック層21、22、23に設けられたスルーホールには、スルーホール電極31が形成されている。素体20の実装面となる主面20a側に配置されたセラミック層21に設けられたスルーホール電極31は、端子電極10と電気的に接触している。そして、端子電極10は、セラミック層21、22、23の間に埋設された内部電極32を介して、セラミック層21、22、23のスルーホール電極31と電気的に接続されている。
セラミック電子部品100の端子電極10は、基板のパッド等とはんだにより接合することができる。なお、接合に用いるはんだは特に限定されないが、例えば鉛系のSn−Pb(鉛)系はんだやSn−Ag(銀)系やSn−Cu(銅)系の鉛フリーはんだ等を用いることができる。鉛フリーはんだで接合する際には、その接合のための溶融温度が、鉛系のはんだに比べ高く、はんだ食われを抑制する観点で、本発明の端子電極10の効果がより得られる。
図2には、セラミック電子部品100の端子電極10の模式的な断面図を示す。この断面図は、セラミック電子部品100の素体20の主面20aの上に設けられた端子電極10を、電気的に接触しているスルーホール電極31の断面と両方観察できる位置でセラミック層21,22,23の積層面に対して垂直方向に断面を得たものである。
図2に示すように端子電極10は、Cuを含有する端子電極10cに、端子電極にZnまたはAlを主に含有する第一領域10aと、Niを主に含有する第二領域10bとが島状に散在することを特徴とする構造を有する。島状に散在とは、端子電極10において、第一領域10aと第二領域10bとがそれぞれ数μm程度の塊状の偏析相として、Cuを主に含有する10cのCu領域に複数散在している状態である。尚、第一領域10aと第二領域10bは複数個の領域に分かれて散在していれば、お互いに接している部分があっても特に問題はない。
ZnまたはAlを主に含有する第一領域10aとは、その領域に含まれる元素のうちZn元素またはAl元素の合計が他の元素に比べて一番多い領域を第一領域である。また、Niを主に含有する第二領域10bとは、その領域に含まれる元素のうちNi元素が他の元素に比べて一番多い領域を第二領域である。端子電極10において第一領域10aと第二領域10b以外の領域10cには、Cuを主成分として含有している。
主に含有する元素の確認として、EPMAによる元素のマッピング結果を基に、第一領域および第二領域とされる領域について点分析による定量を行い、含まれる全元素のうち第一領域ではZnまたはAlが、第二領域ではNiが、それ以外の領域ではCuが最も多く含まれることを確認した。
従来の端子電極を有するセラミック電子部品を基板にはんだで実装する際には、端子電極の外表面にはんだでの接合時の耐熱性を向上させる目的のNiめっき層がないと、はんだ食われが生じ、セラミック電子部品と基板との接合強度が低下してしまっていた。従来の端子電極の電極として機能する元素に一つの成分を用いているため、はんだ溶融による端子電極との反応が進みやすかった。それに対して、端子電極10の電極として機能する元素のCu、Zn、AlおよびNiのうち、Zn、AlおよびNiがはんだ成分のSn、Pb、AgおよびCuよりもイオン化傾向が大きいため、Zn、AlおよびNiがはんだへと拡散しやすく、Cuがはんだ成分のSnと反応するのを抑制する効果が得られると考えている。このため、本実施形態に係るセラミック電子部品100は、めっきによる端子電極10の表面にNi金属層がなくても、はんだ耐熱性(耐はんだ喰われ性)を有し、はんだによる基板との接合の強度が高い端子電極10を有することができる。さらに、Cu、Zn、AlおよびNiの四成分を調整することで、端子電極10の耐酸化性も有する。
Cuを主に含有する領域10cのはんだ食われが発生しても、はんだ成分のSn、Pb、AgおよびCuよりもイオン化傾向が大きな元素を有し、はんだ食われの発生しない第一領域10aと第二領域10bが島状に散在していることで、はんだ食われの進行を抑制することができ、高い接合性を得ることができる。さらに、第一領域10aおよび第二領域10bは、Cuよりもイオン化傾向の大きなZnやAl、Niを有するため、Cuよりも優先的に酸化されCuの酸化が抑制することができる。このため、端子電極10は耐酸化性も有する。
第一領域10aと第二領域10bのそれぞれの領域の判断方法には、セラミック電子部品100の素体20の主面20aの上に設けられた端子電極10を、電気的に接触しているスルーホール電極31の断面と両方観察できる位置でセラミック層21,22,23の積層面に対して垂直方向の断面を観察面として、例えばEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いて元素の分布を分析し特定することができる。分析では、ZnおよびAl元素の分布画像を抽出し、元素比が他の元素より高い領域を特定することで、第一領域10aと判断することができる。同様に、Ni元素の分布画像を抽出し、元素比が他の元素より高い領域を特定することで、第二領域10bと判断することができる。さらに、観察面における第一領域10aと第二領域10bの面積と観察面の全面積から各領域の面積割合を算出した。
端子電極における第一領域10aの面積割合が第二領域10bの面積割合より大きいと、セラミック電子部品100をはんだにより基板上のパッドとの接合したときの接合性および導電性がより良好になる観点からより好ましい。これは、第二領域10bが主に含有するNiよりも、第一領域10aが主に含有するZnまたはAlのイオン化傾向が大きいため、ZnおよびAlがはんだへと拡散しやすく、Cuがはんだ成分のSnと反応するのを抑制する効果が得られると考えている。このため、本実施形態に係るセラミック電子部品100は、めっきによる端子電極10の表面にNi金属層がなくても、溶融温度が高い鉛フリーのはんだを用いた場合において、一層高い接合性を有する端子電極10を得ることができる。
端子電極10の第一領域10aがZnを主に含有する場合は、はんだにより基板上のパッドと接合するときに、より高い接合性を有する端子電極10を形成する観点から、端子電極10に対する第一領域10aの面積割合が、15面積%以上40面積%以下であり、第二領域10bの面積割合は1面積%以上40面積%以下がより好ましい。
端子電極10の第一領域10aがAlを主に含有する場合は、はんだにより基板上のパッドと接合するときに、より高い接合性を有する端子電極10を形成する観点から、20面積%以上60面積%以下であり、第二領域10bは1面積%以上40面積%以下であることがより好ましい。
端子電極10の第一領域10aと第二領域10b以外のCuを主に含有する領域10cは、はんだにより基板上のパッドと接合した場合に、より高い接合性を有する端子電極10を形成する観点から、好ましくは20〜79面積%である。さらに、高い導電性を維持することができる観点から、50〜60面積%の範囲がより好ましい範囲である。さらに、端子電極10における第一領域10aと第二領域10bの合計面積割合は、少なくとも60面積%以下であることが導電性の観点で好ましい。
端子電極10において、第一領域10aと第二領域10bは、素体20の主面20aから離れ端子電極10の表面に向かって、第二領域10bの割合に比べ第一領域10aの割合が多くなるほど、セラミック電子部品100をはんだにより基板上のパッドとの接合したときの接合性および導電性の観点からより好ましい。
本実施形態に係るセラミック電子部品100の素体20の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常外形はほぼ直方体形状とし、寸法は縦(0.2〜5.6mm)×横(0.1〜5.0mm)×高さ(0.1〜1.9mm)程度とすることができる。
本実施形態に係る端子電極10の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、1〜50μm程度であることが好ましい。
なお、図示したセラミック電子部品100は、2つの端子電極10を同一面上に備える多端子型のものであるが、この発明は二端子型のセラミック電子部品にも適用することができる。
次に、図1に示したセラミック電子部品100の製造方法は、手順により、素体20が作製し、素体20の主面20aの上に端子電極10を形成し、実施形態のセラミック電子部品100となる。
セラミック電子部品100は、
(1) 複数のセラミックグリーンシート(セラミック層21、22、23)と、隣接するセラミックグリーンシートの間に埋設された電極層(内部電極層32)と、を有するグリーン積層体を形成、スルーホールを形成しそこに電極を注入しスルーホール電極31を形成し、焼成し、素体20を形成する第1工程と、
(2) 得られた素体20の実装面となる主面20aに端子電極10を形成する第2工程と、を有する。以下、各工程の詳細を説明する。
第1工程は、素体20の準備工程である。ここでの素体20には、特に限定されないが、バリスタ特性を得るために、例えば、酸化亜鉛を主成分として用いることができる。
次に、所望の内部電極層32となる各種電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを所定の順序で重ねる。また、電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを適宜挿入して重ねてもよい。そして、その過程で、スルーホールを形成しそこに電極を注入しスルーホール電極31を形成する。このようにして、複数のセラミックグリーンシートと、隣接するセラミックグリーンシートの間に埋設された電極層と、スルーホール電極31を有するグリーン積層体を得ることができる。このときの電極には、特に限定されず、内部電極層32とスルーホール電極31で同じものを用いてもよく、違うものでもよい。
次に得られたグリーン積層体を、180〜400℃で0.5〜24時間加熱して、脱バインダを行なう。その後、850〜1400℃で0.5〜8時間焼成することによって、素体20が得られる。
第2工程は、素体20の主面20aに端子電極10を形成する工程である。端子電極10の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法、蒸着法、および塗布電極形成法およびこれらを組み合わせても形成することができる。
このとき、例えば、スパッタリング法や蒸着法による形成を行う場合、スパッタリング装置または蒸着装置で、Cu、Ni、Zn、Alからなる各々のターゲットを用いることができる。それぞれの元素のそれぞれのターゲットを用いる場合は、ひとつのターゲットにより析出物が層(膜)にならないように不均一に形成し、途中で形成を止めて島状になるように形成することを繰り返し行なうことでそれぞれの元素が層状構造にならない端子電極10を形成することができる。このように連続して主面20aの表面に端子電極10を形成することで、Cu、Ni、ZnおよびAlの元素濃度分布が偏った状態(つまり元素分布が不均一の状態)のZnまたはAlを含有する第一領域10aと、Niを含有する第二領域10bとが島状に散在する端子電極10を形成することができる。
さらに、例えば、塗布電極焼付により端子電極10の形成を行う場合は、Cu、Ni、ZnおよびAlの各元素の金属粉末を秤量した後、混合して外部電極用ペーストを作製する。このとき各元素の金属粉末を用いる代わりに合金粉末を用いても良い。作製した外部電極用ペーストを印刷または浸漬により、素体20の主面20aに塗布し焼成し、端子電極10を形成する。
端子電極10を塗布電極形成法する際に用いる外部電極用ペーストにSiとBを含有するガラス成分を含んでもよい。さらに、ガラス成分が端子電極10と素体20の界面に存在すると、端子電極10の接着性が向上するためより好ましい。端子電極10に含まれるガラス成分の割合は、5〜10体積%の範囲が、素体と端子電極10との接着性と端子電極10のはんだで接合する表面でのガラス浮きがなく、接合の観点から望ましい範囲である。
さらに、端子電極10がガラス成分を有する構造である場合は、ガラス成分にCu、Zn、AlおよびNiが含まれていても良い。この場合、端子電極10のCuとNi、ZnまたはAlの成分とは区別されCuとNi、ZnまたはAlの成分の面積割合には含まれない。換言すると、端子電極10のCuとNi、ZnまたはAlとの元素は金属あり、ガラス成分とは区別される。ガラス成分と、端子電極10のCuとNi、ZnまたはAlの4つの成分を端子電極10において区別する方法としては、EPMAで端子電極10の断面を観察し、元素の分布を判断する方法が例示される。この場合、SiOあるいはBが共析していればガラス成分、CuとNi、ZnまたはAlの4つの成分およびそれらの混合物であれば端子電極10として判断し区別することができる。
ちなみに、ここでいう成分とは元素および酸化物であり、例えばCu成分とは、Cu元素を含む、Cu、CuO、およびCuOなどのことを示す。Zn成分とは、Zn元素を含む、ZnおよびZnOなどのことを示す。Al成分とは、Al元素を含むAlおよびAlなどのことを示す。Ni成分とは、Ni元素を含む、NiおよびNiOなどのことを示す。ガラス成分とは、SiOあるいはBを主成分とする酸化物のことを示す。
このようにして製造された本発明の実施形態1のセラミック電子部品は、はんだ等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用することができる。
以下、本発明の実施形態を実施例に基づき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
(実施例1)
バリスタ素体形成用のスラリーを次の手順で調整した。酸化亜鉛の粉末と、有機バインダ、有機溶剤、および添加剤を配合し、ボールミルを用いて24時間混合して、バリスタ素体用のスラリーを得た。
上述の通り調整したスラリーを用いて、図1に示すセラミック電子部品と同じ構造のバリスタ(セラミック電子部品)を作製した。具体的には、バリスタ素体用のスラリーを、ドクターブレード法により、ポリエチレンフタレートからなるフィルム上に塗布した後、乾燥して厚さ30μmの膜のグリーンシートを形成した。
次に、グリーンシートに、内部電極32およびスルーホール電極31に対応する電極パターンを形成した。電極パターンはパラジウム粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷法によって塗布またはスルーホールに充填し、乾燥させることにより形成した。次に、電極パターンが形成されたグリーンシートを積み重ねてシート積層体を形成した。こうして得られたシート積層体に、加熱処理を施して脱バインダを行なった後、焼成してバリスタの素体20を得た。
スルーホール電極31の端面が露出した素体20の主面20a上に、スルーホール電極31の端面を覆うようにしてスパッタリング法により端子電極10を作製した。このときのスパッタリング法として、Cu、ZnおよびNiのターゲットを用意し、素体20をチャンバに入れ、チャンバ内を高真空にしてArガスを導入し、主面20aの表面にスパッタリングにより端子電極10を形成した。スパッタリングによる形成方法は、ひとつのターゲットによる析出物が層(膜)にならないように不均一に形成している途中でターゲットへの通電を止める。別のターゲットへ通電を行い、ひとつめのターゲットから形成された不均一な析出物の上に、層(膜)にならないように不均一に析出物を形成し、再びターゲットへの通電を止める。ターゲットを変更しつつ析出物が層(膜)にならないように繰り返し行なうことで、各元素が部分的に連続せず、島状に分散して存在している端子電極10を形成した。各元素の面積割合を制御するため、各ターゲットに通電する全時間のうち、Cuターゲットに通電する時間を50%、Znターゲットに通電する時間を30%、Niターゲットに通電する時間を20%として、端子電極10を作製し実施例1の端子電極を形成したバリスタを得た。
<元素の分布と面積割合算出>
作製したセラミック電子部品のバリスタの端子電極10とスルーホール電極31と素体20とを観察できる断面を図1の模式図と同様に得られるように研磨し、その断面の任意の箇所を選びEPMAの2000倍率の画像で元素分布を観察した。そしてその金属元素の分布から、第一領域および第二領域を特定しその面積割合の算出を行なった。さらに、第一領域についてはその主となる元素を示した。さらに、Cu元素を主として含む領域についても、Cu領域としてその面積割合をあわせ示した。ガラスフリットを添加した実施例については、ガラスの主成分であるSi、およびBが共析している部分をガラスフリット相として、端子電極10の面積から差し引き、残りの面積を100%として算出した。
EPMAで端子電極10の金属元素の分布を観察し、その画像で、ZnおよびAl元素を主とする領域を第一領域10aと判断し、Ni元素を主とする領域を第二領域10bと判断し、各領域の面積%を表1に示した。
<接合強度評価>
作製したバリスタの端子電極10を、基板のパッド(電極)に鉛フリーはんだ(96.5Sn/3.0Ag/0.5Cu)で、230℃のリフローにより接合し強度評価用サンプルを作製した。得られたサンプルを150℃24hの恒温槽に静置した後はんだとの接合強度の評価をするため、このサンプルのバリスタに25Nおよび50Nのせん断力を加え、はんだでの接合部を目視で観察した。その結果接合部のはんだ部やバリスタの端子電極に割れや変形が無かったものを十分な接合強度を有するとして「A」とし、25Nのせん断力では接合部のはんだ部やバリスタの端子電極に割れや変形がなかったが、50Nのせん断力で接合部のはんだ部やバリスタの端子電極に割れや変形があったものを「B」とし、25Nのせん断力で接合部のはんだ部やバリスタの端子電極に割れや変形があったものを「C」とし、その結果を表1に示した。
<耐酸化性評価>
耐酸化性については、作製したバリスタをAir雰囲気150℃の恒温槽に24h静置し、前後の導電率端子電極の導電性評価を行い、比抵抗の変化率から耐酸化性評価を行った。バリスタの端子電極10の両端部の間の抵抗値を、デジタルマルチメーターを用いて測定し、得られた抵抗値と測定間距離から比抵抗を算出した。比抵抗の変化率が10%以内のものを耐酸化性が実用上良好で「良」とし、比抵抗の変化率が10%以上のものを耐酸化性が「不良」とし、その評価結果を表1に示した。
<端子電極の導電性評価>
端子電極の導電性が低い場合、基板に実装した際のセラミック電子部品の特性が低下してしまう可能性がある。そのため、端子電極の導電性評価を行った。端子電極の導電性評価には、バリスタの端子電極10の両端部の間の抵抗値を、デジタルマルチメーターを用いて測定し、得られた抵抗値と測定間距離から比抵抗を算出した。比抵抗が10−2Ω・cm未満のものを導電性評価では実用上良好で「良」とし、比抵抗が10−2Ω・cm以上のものを導電性が不十分で「不良」とし、評価結果を表1に示した。
<判定>
表1に示す端子電極の最終的な「判定」は、端子電極の接合強度評価で「A」または「B」、かつ端子電極の耐酸化性評価および導電性評価でいずれの評価も「良」であったサンプルは端子電極として実用上良好であり、「良」とした。また、接合強度評価が「C」または、端子電極の耐酸化性評価および導電性評価のいずれかの評価が「不良」であったサンプルは、最終的に「不良」判定とした。
(実施例2)
Znのターゲットの変わりにAlのターゲットを用意した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の端子電極を形成したバリスタを得た。
(実施例3)
端子電極を塗布電極形成法により形成した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の端子電極を形成したバリスタを得た。
塗布電極形成法では、Cuの金属粉末100g、Znの金属粉末45g、Niの金属粉末25gと、金属粉末の合計体積に対して、10体積%のガラスフリット(SiO)をビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した。このとき各元素の金属粉末を用いる代わりに合金粉末を用いても良い。そして、この外部電極用ペーストを印刷により、スルーホール電極31の端面が露出したバリスタの素体20の主面20a上に、スルーホール電極31の端面を覆うようにして塗布し、600℃にて10分間焼成し、端子電極10を形成した。<元素の分布と面積割合算出>に記載の方法で、作製した端子電極10の各元素を含む領域の面積%を算出したところ、表1に記載した値となった。
(実施例4〜12)
塗布電極形成法で作製した実施例4については、Cuの金属粉末100g、Znの変わりにAlの金属粉末20gとNiの金属粉末15gをビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した。実施例5については、Cuの金属粉末150g、Alの金属粉末45gとNiの金属粉末3gをビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した。実施例6についてはCuの金属粉末200g、Alの金属粉末15gとNiの金属粉末3gをビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した。実施例7については、Cuの金属粉末100g、Alの金属粉末50gとNiの金属粉末70gをビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した。比較例8についてはCuの金属粉末50g、Alの金属粉末30gとNiの金属粉末100gをビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した。実施例9についてはCuの金属粉末200g、Alの金属粉末1gとNiの金属粉末50gをビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した。実施例10についてはCuの金属粉末100g、Alの金属粉末15gとNiの金属粉末100gをビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した。実施例11についてはCuの金属粉末150g、Znの金属粉末20gとNiの金属粉末15gをビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した。実施例12についてはCuの金属粉末150g、Znの金属粉末80gとNiの金属粉末3gをビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した。外部電極用ペーストの作製法以外は、実施例3と同様の方法で、実施例4〜12の端子電極を形成したバリスタを得た。<元素の分布と面積割合算出>に記載の方法で、作製した端子電極10の各元素を含む領域の面積%を算出したところ、表1に記載した値となった。
(比較例1)
ZnやAlまたはNiの金属粉末を用いずに、Cuの金属粉末とビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した以外、実施例3と同様の方法で、比較例1の端子電極を形成したバリスタを得た。
(比較例2)
Niの金属粉末10gとCuの金属粉末100gとビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した以外、実施例3と同様の方法で、比較例2の端子電極を形成したバリスタを得た。
(比較例3)
Znの金属粉末60gとCuの金属粉末20gとビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した以外、実施例3と同様の方法で、比較例3の端子電極を形成したバリスタを得た。
(比較例4)
Alの金属粉末15gとCuの金属粉末100gとビヒクルと混合して外部電極用ペーストを作製した以外、実施例3と同様の方法で、比較例4の端子電極を形成したバリスタを得た。
(比較例5、6)
スパッタリング法でCu、Zn、AlおよびNiのターゲットを用意し、スルーホール電極31上にCu、Zn、AlおよびNiそれぞれを層状形成して端子電極10を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例5および6のバリスタ特性を持つセラミック電子部品100を作製した。比較例5および6の端子電極10は、素体20に近い層から端子電極10表面に向かって、第一層Cu、第二層ZnまたはAl、第三層Niとし表1にそれぞれの構成元素を含む領域とその面積%を表1に示す。
実施例1〜12において、表1の「評価」でも「良」であったものは、第一領域の面積%が第二領域の面積%よりも大きいことが確認された。接合強度の評価で「不良」であったものは、第一領域の面積%が第二領域の面積%よりも小さいことが確認された。
実施例1〜12は、いずれも第一領域10aと第二領域10bが島状に散在している様子が確認された。しかしながら、比較例1は、Cu領域のみで第一領域10aと第二領域10bは確認されなかった。比較例2は、Cu領域と第二領域10bのみで、第一領域10aは確認されなかった。比較例3、4は、いずれもCu領域と第一領域10aのみで、第二領域10bは確認されなかった。比較例5および6については、いずれもCu領域と第一領域10a、第二領域10bが確認されたものの、層状に形成されており、島状に散在していなかった。
実施例1、3、11、12では、第一領域10aがZnを含有しセラミック素体の表面から該端子電極表面に向かって、第一領域10aの割合が増加することが確認された。さらに、第二領域10bに対して第一領域10aの割合が増加することが確認された。端子電極表面にはんだと優先的に反応が進むZnが多いことで、はんだとCuの反応が抑制されるためはんだ食われが抑制され、高い接合強度を得ることができる。また、犠牲酸化されやすいZnが表面に多く存在することで、端子電極内部の耐酸化性が向上する。
実施例2、4〜10では、端子電極で第一領域10aがAlを含有し、端子電極内部に領域が均一に存在している。そして第二領域10bも端子電極内部に領域が均一に存在している。Alがはんだと反応するが、端子電極内部に均一に存在しているため、はんだとCuの反応が抑制され、高い接合強度を得ることが出来る。Alの酸化が進むが不動態を形成するため、Alの内部の酸化は緩やかに進む。Alの酸化が進まなくなると、Cuの酸化も進むが、その酸化は緩やかに進むため、耐酸化性と高い導電性を有する。
端子電極の断面に含まれる酸素の分布状態を、EPMAを用いて観察した。第一領域10aとしてZnを含む場合、第一領域10aに酸素が多く含まれていることを確認した。第一領域10aが優先的に酸化される事で、Cuの酸化を抑制し良好な導電性を確保している。第一領域10aとしてAlを含む場合、第一領域10aに酸素が多く含まれていることを確認した。第一領域10aが優先的に酸化されるが、Alの表面に不動態を形成しAlの酸化が抑制されているため良好な導電性を確保していると推察することができる。
実施例1〜12の端子電極は、ZnまたはAlを主に含有する第一領域10aと、Niを主に含有する第二領域10bとが島状に散在する構造を有しており、セラミック電子部品の端子電極と基板とのはんだによる接合において、高い接合強度を有することが確認された。
一方、比較例1〜4のCu単独もしくは、Cuと第一領域10a、Cuと第二領域10bのみからなる端子電極と、比較例5、6のスパッタリングにより各元素を層状に形成した比較例、いずれもはんだ食われが生じ基板上のパッドとの接合強度を得ることができなかった。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るセラミック電子部品として積層バリスタを例示したが、本発明に係るセラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサ、コンデンサ、圧電素子、インダクタ、サーミスタ、抵抗、トランジスタ、ダイオード、水晶発振素子およびこれらの複合素子、その他の表面実装型電子部品が例示される。
本発明は、外表面に端子電極が形成される任意のセラミック電子部品に適用が可能である。
10 端子電極、
10a 第一領域
10b 第二領域
10c Cuを主に含有する領域
20 素体(セラミック素体)
20a 主面
21,22,23 セラミック層、
31 スルーホール電極
32 内部電極
100 セラミック電子部品

Claims (3)

  1. セラミック素体の表面に設けられるCuを含有する端子電極を備えるセラミック電子部品であって、前記端子電極にZnまたはAlを主に含有する第一領域と、Niを主に含有する第二領域とが、Cuを主に含有する領域内に島状に散在することを特徴とするセラミック電子部品。
  2. 前記端子電極と前記セラミック素体との界面方向に垂直な前記端子電極の断面における前記第一領域の面積割合が、前記第二領域の面積割合より多いことを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品。
  3. 前記第一領域の酸素含有量が前記第二領域より多いことを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品。
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