以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照し、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体101aの内部空間には、ヘッドユニット1、プラテン5、用紙センサ32、給紙トレイ33、搬送機構4、キャップ機構40、ヘッド昇降機構70(図5参照)、ワイパユニット80(図8参照)、及び、制御装置100等が収容されている。ヘッドユニット1は、4つのインクジェットヘッド10(以下、ヘッド10と称する)と、1つのミストヘッド20とを有する。これら4つのヘッド10及び1つのミストヘッド20は、主走査方向に長尺な略直方体形状をそれぞれ有し、副走査方向に近接して配置されている。ミストヘッド20は、4つのヘッド10よりも用紙Pの搬送方向上流に配置されている。ここで、主走査方向とは、用紙Pの搬送方向Dと直交する方向であり、副走査方向とは、水平面に平行且つ主走査方向に直交する方向である。
また、筐体101aの内部空間には、給紙トレイ33から排紙部31に向けて、図1に示す黒太矢印に沿って、用紙Pが搬送される搬送経路が形成されている。プリンタ101は、これら5つのヘッド10,20が固定された状態で記録を行う、ライン方式のものである。
筐体101a内には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインクをそれぞれ収容する4つのカートリッジ8と、水(透明な液体)を収容するカートリッジ9とが筐体101aに対して着脱可能に配置されている。4つのカートリッジ8のそれぞれは、チューブ(不図示)及びポンプ10P(図5参照)を介して対応するヘッド10に接続されている。カートリッジ9は、チューブ(不図示)及びポンプ20P(図5参照)を介してミストヘッド20に接続されている。なお、ポンプ10Pは、ヘッド10にインクを強制的に送るとき(すなわち、パージ時やインクの初期導入時)に駆動される。ポンプ20Pは、ヘッド20に水を初期導入するときに駆動される。ポンプ10P,20Pは、これら以外は停止状態にあり、ヘッド10,20へのインク及び水の供給を妨げない。
ヘッドユニット1は、ヘッドホルダ3を介して筐体101aに支持されている。各ヘッド10,20は、その下面に複数の吐出口11,21が形成された吐出面10a,20aを有する。これら吐出口11,21は、主走査方向に沿って等間隔に配置されている(図2参照)。各吐出面10aの吐出口11からは、インク滴が吐出される。吐出面(排出面)20aの吐出口(排出口)21からは、インク滴よりもサイズが小さい水滴が吐出される。すなわち、吐出口21からは、ミストが排出される。
プラテン5は、平板状の部材であり、5つのヘッド10,20と鉛直方向(主走査方向及び副走査方向と直交する方向)に対向している。プラテン5の上面5aと各吐出面10a,20との間には、記録に適した所定の間隙が形成されている。
用紙センサ32は、ミストヘッド20よりも搬送方向上流側に配置されている。用紙センサ32は、用紙Pの先端を検知し、検知信号を制御装置100に出力する。
給紙トレイ33は、上面が開口した箱であり、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ33は、複数の用紙Pを収容可能である。
搬送機構4は、給紙ローラ34、5つの送りローラ対35〜39及び4つのガイド61〜64を含む。給紙ローラ34は、制御装置100による制御の下、給紙モータ34M(図5参照)の駆動により回転し、給紙トレイ33内で最も上方にある用紙Pを送り出す。5つの送りローラ対35〜39は、搬送経路に沿って、搬送方向上流側からこの順で配置されている。各送りローラ対35〜39のうちの一方のローラは、制御装置100による制御の下、送りモータ35M〜39M(図5参照)の駆動により回転する駆動ローラである。他方のローラは、上記駆動ローラの回転に伴って回転する従動ローラである。4つのガイド61〜64は、搬送経路に沿って、搬送方向上流側からこの順で、送りローラ対35〜39と交互に配置されている。各ガイド61〜64は、対向して配置された一対の板からなる。
ヘッド昇降機構70は、ヘッドホルダ3及びキャップ機構40を昇降させることにより、ヘッドユニット1を印刷位置と退避位置との間で移動させる。印刷位置では、図1に示すように、ヘッドユニット1が移動範囲の下端に位置し、プラテン5と印刷に適した間隔で対向する。退避位置(図8(c)参照)では、ヘッドユニット1が移動範囲の上端に位置し、プラテン5から大きく離隔する。ワイピング位置(図8(b)参照)は、印刷位置と退避位置との間にある。ワイピング位置及び退避位置では、ヘッドユニット1とプラテン5との間の空間を、後述するワイパ81a,81bが移動可能である。
ワイパユニット(払拭機構)80は、図8に示すように、4つの吐出面10a及びプラテン5の上面5aを主走査方向に払拭する。そのため、ワイパユニット80は、2つのワイパ81a,81bを有し、これを支持する基部82及びワイパ移動機構83を含む。ワイパ81aは、基部82の上面側に立設され、4つの吐出面10aを払拭する。ワイパ81bは、基部82の下面側に立設され、上面5aを払拭する。ワイパ移動機構83は、一対のガイド84と駆動モータ80Mとから構成される。制御装置100の制御の下、駆動モータ80Mが駆動されると、基部82がガイド84に沿って往復移動する。図8(a)に示すように、各ヘッド10の左端部側が、基部82の待機位置である。いずれのワイピング動作でも、ワイパ81a,81bは、図中右方に移動しつつ面を払拭する。基部82の待機位置への帰還は、ヘッドユニット1が退避位置に移動するのを待って行われる。なお、変形例として、ワイパ81aは、ヘッド20の吐出面20aも払拭可能に構成されていてもよい。
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、プリンタ各部の動作を制御して、プリンタ101全体の動作を司る。制御装置100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)97から供給された記録指令(画像データなど)に基づいて、画像記録動作を制御する。記録指令を受けると、制御装置100は、給紙ローラ34用の給紙モータ34M、各送りローラ対35〜39用の送りモータ35M〜39Mを駆動する。給紙トレイ33から送り出された用紙Pは、送りローラ対35〜39に挟持されつつ、ガイド61〜64の板間を通って、搬送方向に搬送される。用紙Pがプラテン5の上面5aに支持されつつ4つのヘッド10の真下を通過する際に、制御装置100の制御により、吐出口11(図2参照)から用紙Pに向けて各色インクが吐出される。吐出口11からのインク吐出動作は、用紙センサ32から出力された検知信号に基づいて行われる。画像が形成された用紙Pは、筐体101a上部に形成された開口から排紙部31に排出される。
また、制御装置100は、メンテナンス動作によって、ヘッド10のインク吐出特性の回復・維持を行う。メンテナンス動作には、例えば、パージやフラッシング動作、吐出面10a及びプラテン5の上面5aのワイピング動作、キャッピング動作や加湿動作等が含まれる。
パージ動作では、すべてのポンプ10Pが駆動されて、各ヘッド10のすべての吐出口11からインクが強制的に排出される。このとき、アクチュエータは駆動されない。フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、すべての吐出口11からインクが吐出される。フラッシング動作は、フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づいて行われる。ワイピング動作では、4つの吐出面10aがワイパ81aによって払拭され、プラテン5の上面5aがワイパ81bによって払拭される(図8(b)参照)。ワイピング動作は、パージ動作後に行われ、吐出面10a上の残留インクや異物が取り除かれる。吐出口11の吐出特性が回復され、吐出面10aが清浄化される。なお、上面5aのワイピング動作は、フラッシング動作が行われた後も実行される。
キャッピング動作では、図4(b)に示すように、キャップ41により吐出空間(吐出面10a,20aとプラテン5との間の隙間)S1が外部空間S2から隔離される。キャッピングによりインクメニスカスの乾燥が抑制される。
加湿動作には、キャッピング動作中の休止中加湿動作と、画像記録動作中の記録中加湿動作とが含まれる。休止中加湿動作では、図4(b)に示すように、隔離された吐出空間S1に対してミスト排出動作が行われる。このとき、吐出空間S1内には、ミストが充満するので、4つのヘッド10のすべての吐出口11の乾燥がさらに抑制される。休止中加湿動作は、キャッピング動作が行われている期間のうちの、或る所定期間の間のみ行われる。記録中加湿動作では、図4(a)に示すように、外部空間S2に開放された吐出空間S1に対してミスト排出動作が行われる。このとき、ミストが4つのヘッド10のすべての吐出口11に供給されることで、吐出口11の乾燥が抑制される。ミスト排出動作では、ミストヘッド20の複数のアクチュエータが駆動されて、吐出口21からミストが排出される。
次に、図3を参照し、ヘッド10及びミストヘッド20について詳細に説明する。なお、4つのヘッド10は、互いに同じ構成であり、それぞれ、流路ユニット50、アクチュエータユニット51、及び、COF(Chip On Film)52を含む。
流路ユニット50は、略同一サイズの矩形状の金属プレート50a〜50iを互いに接着した積層体である。流路ユニット50には、各吐出口11に至る流路が形成されている。当該流路は、流路ユニット50に形成された全ての吐出口11に共通の共通流路55と、吐出口11毎に設けられた個別流路56とを含む。個別流路56は、共通流路55の出口からアパーチャ56a及び圧力室56bを介して吐出口11に至る流路である。圧力室56bは流路ユニット50の上面50a1に開口し、吐出口11は流路ユニット50の下面に開口している。この下面が、吐出面10aに相当する。また、上面50a1に形成された複数の圧力室56bは、1つの圧力室群を構成している。
アクチュエータユニット51は、圧力室群を構成する複数の圧力室56bを覆いつつ上面50a1に固定されている。アクチュエータユニット51は、圧力室56b毎に設けられた、複数のアクチュエータを含む。
COF52は、アクチュエータユニット51の上面に固定されている。COF52は、複数の配線が設けられた平型配線基板であり、ドライバIC52a(図5参照)が実装されている。COF52の複数の配線は、制御装置100とドライバIC52aの入力端子、ドライバIC52aの出力端子とアクチュエータの電極とを接続している。
制御装置100による制御の下、ドライバIC52aから各アクチュエータに所定の電位が印加されることにより、アクチュエータが選択的に駆動される。これにより、圧力室56b内のインクに吐出エネルギーが付与される。
また、ミストヘッド20は、ヘッド10とほぼ同じ構成であり、流路ユニット50、アクチュエータユニット51、及び、COF52を有するが、吐出口21の数、個別流路56の数、及び、アクチュエータの数がヘッド10よりも2つだけ多く形成されている。つまり、図2に示すように、吐出面20aに形成された複数の吐出口21は、吐出面10aに形成された複数の吐出口11よりも主走査方向の両側において、1つずつ多く形成されている。これら複数の吐出口21は、ミストが排出される吐出口部25を構成している。吐出口部(排出口部)25は、主走査方向に関して、最も外側にある2つの吐出口11の間隔以上の長さを有し、各吐出面10aのすべての吐出口11と搬送方向Dに沿って重なっている。これにより、吐出口部25からミストが排出されることで、すべての吐出口11近傍のインクの乾燥を抑制することが可能となる。また、吐出口部25は、主走査方向に分割された複数の分割領域26を有している。これら分割領域26は、1つの吐出口21に対応して構成されている。なお、ミストヘッド20において、ヘッド10よりも多く形成された個別流路56及びアクチュエータは、吐出口21に対応して形成されている。この構成において、制御装置100による制御の下、ドライバIC52aから各アクチュエータに所定の電位が印加されることにより、ミストヘッド20のアクチュエータもヘッド10と同様に選択的に駆動される。これにより、圧力室56b内の水に吐出エネルギーが付与される。
次に、アクチュエータユニット51について詳述する。図3(b)に示すように、2枚の圧電シート51b,51c、共通電極層51d及び1枚の圧電シート51aを含む。圧電シート51a上には、複数の個別電極51eが形成されている。個別電極51eの主要部分は、圧力室56bの対向領域内にあり、この領域外でランド51fに繋がる。ドライバIC52aからの信号は、ランド51fを介して、個別電極51eに与えられる。アクチュエータユニット51は、圧力室56bに対向する部分が、個別のアクチュエータとして働く。
ここで、ヘッド10の吐出口11及びミストヘッド20の吐出口21から液滴(インク滴及び水滴)を吐出させるためのアクチュエータユニット51の駆動方法について述べる。本実施の形態では、圧電シート51aのみが、厚み方向に分極されている。両電極51d,51e間に分極方向の電界を印加すると、圧電シート51aは面方向に収縮する。この時、他の圧電シート51b,51cとの間で歪差が生じる。圧電シート51aは、他の圧電シート51b,51cに対して圧力室56bと反対側にあるので、アクチュエータは圧力室56bに向かって凸状にユニモルフ変形する。液滴の吐出には、この変形が利用される。具体的には、各アクチュエータは、予め凸状の変形状態にされている。吐出要求に対応して、アクチュエータは、変形を解放し、続くタイミングで再び変形状態に戻される。変形解放時に圧力室56bへ液体が供給され、変形復帰時に1つの液滴が吐出されることになる。両タイミング間の時間間隔(パルス幅)は、AL(Acoustic Length)にほぼ等しく、各タイミングで生じる圧力波が吐出に好条件で重なる。
ミストヘッド20の吐出口21からミスト状の水滴を吐出する場合、ミスト信号が個別電極51eに供給される。ミスト信号は、インクの吐出信号に比べて低い電圧のパルス、狭いパルス幅のパルス、あるいは逆に広いパルス幅のパルスで構成されている。このとき、インクと水との粘度差を考慮した調整がなされていてもよい。いずれの場合も、水メニスカスが微振動して、非常に小さな水滴(ミスト状水滴)が放散される。本実施の形態では、狭いパルス幅が採用され、圧力波は吐出に好条件から外れた状態で重なる。本実施形態では、ミスト信号として、パルス幅がALよりも基準値を超えて狭い電圧パルスを含むものが用いられる。
次に、図4を参照し、ヘッドホルダ3及びキャップ機構40の構成について説明する。
ヘッドホルダ3は、金属等からなる剛体の枠状フレームであり、ヘッドユニット1の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ3には、キャップ機構40のキャップ41が取り付けられている。ヘッドホルダ3とヘッドユニット1との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。ヘッドホルダ3とキャップ41との当接部も、全周に亘って接着剤で固定されている。また、5つのヘッド10,20間も封止剤で封止されている。これにより、キャップ41が吐出空間S1を密閉空間とすることが可能となる。
キャップ機構40は、キャップ41、キャップ41を昇降させるキャップ昇降機構48を含む。キャップ(区画部材)41は、ヘッドユニット1とともに吐出空間S1を内包可能で、主走査方向に長い。キャップ41は、リップ部材42、及び、ダイアフラム44を含む。
リップ部材42は、ゴム等の環状弾性材料からなり、基部42x、及び、基部42xの下方にある断面三角形の突出部42aを含む。基部42xの上面には、後述の可動体43が固定されている。
ダイアフラム44も、ゴム等の環状弾性材料からなる。ダイアフラム44は、可撓性を有した薄膜部材であって、外周端(一端)がリップ部材42に接続されている。ダイアフラム44の内周端は、密着部44aである。密着部44aは、内側側面がヘッドユニット1の側面に密着し、上面がヘッドホルダ3の下面に密着している。密着部44aの上面は、全長に亘って、ヘッドホルダ3と接着剤で固定されている。
キャップ昇降機構48は、可動体43、複数のギア45、昇降モータ48M(図5参照)を有している。可動体43は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、ヘッドユニット1を取り囲んでいる。可動体43は、複数のギア45と接続されている。昇降モータ48Mが駆動されると、ギア45の回転にともない可動体43が昇降する。
リップ部材42は、可動体43の昇降に伴って、その先端(突出部42a)がプラテン5の上面5aに当接する当接位置(図4(b)に示す位置)と、上面5aから離隔した離隔位置(図4(a)に示す位置)とを選択的に取る。当接位置では、吐出空間S1が密閉された封止状態(区画状態)となる。このようにプラテン5は、キャップ機構40の一部を構成する。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放状態となる。
次に、図5を参照しつつ、制御装置100について説明する。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )94、フラッシュメモリ95等を含む。ROM92には、CPU91が実行するプログラム、各種固定データや9つの単位波形(図6参照)等が記憶されている。つまり、ROM92は、波形記憶部110を含む。RAM93には、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。つまり、RAM93は、画像データ記憶部111を含む。ASIC94は、信号生成制御回路115、搬送制御回路116及びメンテナンス制御回路117を含む。また、ASIC94は、入出力I/F(Interface)96を介して、PC(Personal Computer)等の外部装置97とデータ通信可能に接続されている。
なお、本実施形態では、1つのCPU91が各種制御に係る処理を行うが、これに限定されない。例えば、複数のCPUが各種制御に係る処理を分担する形態、ASICが各種制御に係る処理を行う形態、1又は複数のCPUと1又は複数のASICとが協働して各種制御に係る処理を行う形態、等であってもよい。
画像データ記憶部111は、外部装置97からの画像データ(記録指令)を記憶する。画像データは、各画素を形成する液量を示すドットデータの集合体であって、駆動データの形式を有している。
信号生成制御回路115は、記録制御回路121と、ミスト制御回路122とを含む。記録制御回路121は、画像データに基づいて、各ヘッド10のアクチュエータユニット51を駆動する。具体的には、駆動データは、各記録周期において各吐出口11から吐出されるインク量が、4段階(小量、中量、大量、なし)のいずれであるかを示している。ここで、「小量」は後述する吐出波形W1に対応し、「中量」は後述する吐出波形W2に対応し、「大量」は後述する吐出波形W3に対応し、「なし」は後述する非吐出波形W4(すべて図6参照)に対応する。
波形記憶部110は、9つの単位波形(吐出波形W1,W2,W3と、非吐出波形W4と、ミスト波形M1,M2,M3,M4,M5)を記憶している(図6参照)。吐出波形W1〜W3は、吐出口11からインクを吐出させるための吐出信号生成用の単位波形である。非吐出波形W4は、吐出口11からインクを吐出させない非吐出信号生成用の単位波形である。5つのミスト波形M1〜M5は、吐出口21からミストを排出させるためのミスト信号生成用の単位波形であり、ミスト波形M1からミスト波形M5になるに連れて、吐出口21から多くのミストを排出させる。これら9つの単位波形は、いずれも1記録周期分の時間的な長さを有している。なお、1記録周期とは、副走査方向の記録解像度に対応する単位距離(最小ドット間隔)だけ用紙が搬送されるのに要する時間に相当する。
吐出信号、非吐出信号及びミスト信号は、上述した9つの単位波形をドライバIC52aで増幅したもので、ローレベルがグランド電位に、ハイレベルが正の所定電位(例えば24V)となっている。係る増幅は、記録周期毎に個別電極51e毎に行われ、吐出選択信号及びミスト選択信号(後述)に基づいて、9つの単位波形から1個の増幅対象波形が選択される。
また、記録制御回路121は、記憶された駆動データに基づいて、吐出選択信号をドライバIC52aに出力する。吐出選択信号は、記録周期毎に出力される。ドライバIC52aからは、ハイレベルが正の所定電位の波形(W1〜W4)が、吐出選択信号により1つ選ばれて、吐出信号又は非吐出信号として個別電極51eに出力される。
搬送制御回路116は、画像データ(記録指令)に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙モータ34M及び送りモータ35M〜39Mを制御する。本実施形態においては、画像データ(記録指令)に基づいてモノクロ印刷が行われる際は、用紙Pが第1所定速度で搬送され、カラー印刷が行われる際は、第1所定速度よりも遅い速度である第2所定速度で用紙Pが搬送される。なお、第1及び第2所定速度は、1記録周期で搬送方向の記録解像度における単位距離だけ移動可能な速度である。
メンテナンス制御回路117は、メンテナンス動作において、昇降モータ48M、駆動モータ80M、ヘッド昇降機構70、及び、ポンプ10P,20Pを制御する。
フラッシュメモリ95は、不揮発性メモリである。画像データに基づいてインクが吐出された吐出口11、及び、インクを吐出した時刻を吐出履歴情報112としてフラッシュメモリ95に記憶される。
CPU91は、ROM92から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って、その処理結果をRAM93に記憶させながら、プリンタ101の各構成要素を制御する。また、CPU91は、吐出口11からインクを吐出してからの時間をカウントし、吐出履歴情報112に基づいて吐出口11から連続してインクが吐出されていない休止時間を算出する。このようにCPU91は、時間算出部を含む。このCPU91によって算出された各休止時間は、フラッシュメモリ95に記憶される。つまり、フラッシュメモリ95は、各吐出口11に係る休止時間を記憶する記憶部も兼ねている。さらにCPU91は、算出した各休止時間が所定時間よりも超えているか否かを判定する。
ミスト制御回路122は、記録期間中(1つの用紙Pに対する記録の開始から終了までの期間)及びメンテナンス動作中に、ミスト選択信号をドライバIC52aに出力する。記録期間中(記録中加湿動作)において、ミスト選択信号は、記録周期毎に連続的に出力される。ドライバIC52aからは、ハイレベルが正の所定電位のミスト波形(M1,M2,M3,M4,M5)が、ミスト選択信号により1つ選ばれて、ミスト信号として個別電極51eに出力される。本実施形態において、画像データに基づいてカラー印刷が行われる際は、ミスト波形M3に係るミスト信号が個別電極51eに出力されるためのミスト選択信号を、ミスト制御回路122がドライバIC52aに出力する。一方、画像データに基づいてモノクロ印刷が行われる際は、ミスト波形M4に係るミスト信号が個別電極51eに出力されるためのミスト選択信号を、ミスト制御回路122がドライバIC52aに出力する。
メンテナンス動作中(休止中加湿動作)においても、ミスト選択信号は、記録周期毎に出力され、キャッピング動作中に、例えば、数秒だけ継続される。メンテナンス動作中は、ミスト制御回路122が、メンテナンス制御回路117と協働して機能する。ドライバIC52aからは、ハイレベルが正の所定電位のミスト波形(M1,M2)が、ミスト選択信号により1つ選ばれて、ミスト信号として個別電極51eに出力される。本実施形態においては、ワイパ81aで吐出面10aを払拭する払拭方向に関して、吐出面20aの中央よりも下流側の吐出口21に係る個別電極51eにミスト波形M2に係るミスト信号が出力されるためのミスト選択信号を、ミスト制御回路122がドライバIC52aに出力する。一方、払拭方向に関して、吐出面20aの中央よりも上流側の吐出口21に係る個別電極51eにミスト波形M1に係るミスト信号が出力されるためのミスト選択信号を、ミスト制御回路122がドライバIC52aに出力する。
また、ミスト制御回路122は、所定時間を超える休止時間に係る吐出口11と搬送方向Dに沿って重なる分割領域26に係る個別電極51e(アクチュエータ)に対して、ミスト波形M5に係るミスト信号が出力されるように、ミスト選択信号をドライバIC52aに出力する。また、ミスト制御回路122は、所定時間以下の休止時間に係る吐出口11と搬送方向Dに沿って重なる分割領域26に係る個別電極51eに対して、ミスト波形M3及びミスト波形M4のいずれかに係るミスト信号が出力されるように、ミスト選択信号をドライバIC52aに出力する。これにより、インクの吐出量が少ない吐出口11(所定時間を超える休止時間に係る吐出口11)に対して、多くのミストを供給することが可能となる。このため、当該吐出口11のインク乾燥をより効果的に抑制することが可能となる。
次に、図7を参照しつつ、制御装置100が実行する画像記録動作及びメンテナンス動作の一連の流れについて、説明する。
まず、制御装置100は、外部装置97からの記録指令を待ち受け(F1:NO)、記録指令を受信すると(F1:YES)、当該記録指令(画像データ)をRAM93に記憶し、ステップF2に進む。ステップF2では、キャッピングの解除が実行される。つまり、メンテナンス制御回路117の制御により、リップ部材42が当接位置から離隔位置に移動する。
次に、ステップF3において、CPU91がモノクロ印刷及びカラー印刷のいずれであるかを判定し、モノクロ印刷の場合(F3:YES)はステップF4に進み、カラー印刷の場合(F3:NO)はステップF5に進む。
ステップF4では、モノクロ印刷及び記録中加湿動作が実行される。つまり、搬送制御回路116の制御により、用紙Pが給紙トレイ33から排紙部31へ向けて、第1所定速度で搬送される。記録制御回路121の制御により、ブラックインクを吐出するヘッド10が駆動される。こうして、用紙Pに対するモノクロ印刷が実行される。また、このとき、ミスト制御回路122の制御により、ミストヘッド20のすべての個別電極51eにミスト波形M4に係るミスト信号が出力される。これにより、ミストヘッド20の吐出口部25(吐出口21:分割領域26)からミストが排出され、記録中加湿動作が実行される。ミストは、図4(a)に示すように、白抜き矢印に沿って流れる。このミストの移動は、この方向への用紙Pの搬送に伴う気流によって行われる。より詳細には、吐出口21から排出されたミストは、用紙搬送方向Dに流れる。つまり、ミストは、当該ミストを排出した吐出口21と搬送方向Dに沿って重なる吐出口11に向かって流れる。こうして、ミストヘッド20からのミストが、搬送方向下流側にある各ヘッド10の吐出口11近傍へと供給される。このため、アンキャッピング状態でも、吐出口11の乾燥を抑制することができる。したがって、フラッシング動作などによるインクの消費量を抑制することができる。
ステップF5では、カラー印刷及び記録中加湿動作が実行される。つまり、搬送制御回路116の制御により、用紙Pが給紙トレイ33から排紙部31へ向けて、第2所定速度で搬送される。記録制御回路121の制御により、各ヘッド10が駆動される。こうして、用紙Pに対するカラー印刷が実行される。また、このとき、ミスト制御回路122の制御により、ミストヘッド20のすべての個別電極51eにミスト波形M3に係るミスト信号を出力する。これにより、ステップF4と同様に、ミストヘッド20の吐出口部25(吐出口21:分割領域26)からミストが排出され、記録中加湿動作が実行される。
また、ステップF4及びステップF5において、CPU91は、各吐出口11の休止時間を算出し、フラッシュメモリ95に記憶される。そして、CPU91は、フラッシュメモリ95に記憶された各吐出口11に係る休止時間が所定時間よりも超えているか否かを判定する。休止時間が超過した吐出口11と、主走査方向に関して重なるミストヘッド20の分割領域26に係る個別電極51eには、ミスト制御回路122の制御により、ミスト波形M5に係るミスト信号が出力される。これにより、乾燥しやすい吐出口11(休止時間が超過したもの)にミストの供給量を多くすることが可能となる。このため、インク吐出量の少ない吐出口11のインク乾燥をより効果的に抑制することが可能となる。
次に、ステップF6において、制御装置100が次の記録指令を受信すると(F6:YES)、当該記録指令(画像データ)をRAM93に記憶し、ステップF3に戻る。一方、記録指令を受信していない場合(F6:NO)は、ステップF7に進む。ステップF7では、所定時間経過するまで(F7:NO)、ステップF6に戻り、所定時間経過すると(F7:YES)、ステップF8に進む。
ステップF8では、パージ及びワイピング動作が実行される。つまり、メンテナンス制御回路117の制御により、各ポンプ10Pが駆動され、図8(a)に示すように、各ヘッド10の吐出口11からプラテン5上にインクが排出される(パージ動作)。パージ動作が終了すると、メンテナンス制御回路117の制御により、図8(b)に示すように、ヘッドユニット1がワイピング位置に移動し、基部82が図中右方に移動する。これにより、2つのワイパ81a,81bによって、4つの吐出面10a及びプラテン5の上面5aが払拭される(ワイピング動作)。この後、メンテナンス制御回路117の制御により、図8(c)に示すように、ヘッドユニット1が退避位置に移動し、基部82が図中左方に移動し、待機位置に戻る。基部82が待機位置に戻ると、メンテナンス制御回路117の制御により、ヘッドユニット1が印刷位置に移動する。
次に、ステップF9において、キャッピング及び休止中加湿動作が実行される。つまり、メンテナンス制御回路117の制御により、図4(b)に示すように、リップ部材42が離隔位置から当接位置に移動する。こうして、吐出空間S1が外部空間S2に対して隔離された区画状態とされる。キャッピングが実行された後、ミスト制御回路122の制御により、払拭方向に関して、吐出面20aの中央よりも下流側の吐出口21に係る個別電極51eにミスト波形M2に係るミスト信号が出力され、吐出面20aの中央よりも上流側の吐出口21に係る個別電極51eにミスト波形M1に係るミスト信号が出力される。これにより、ミストヘッド20の吐出口部25(吐出口21:分割領域26)からミストが排出され、休止中加湿動作が実行される。このように休止中の区画状態において、ミストが供給されると、吐出空間S1の空気中の水分量が高くなり、吐出口11の乾燥を抑制することが可能となる。さらに、ワイパ81aで吐出面10aを払拭した際に、吐出面10aの払拭方向下流側にインクが残留することがある。この残留インクが乾燥すると、当該残留インク近傍の吐出口11のインクが乾燥しやすくなる。しかしながら、払拭方向下流側の吐出口21(分割領域26)からの単位時間当たりのミストの排出量が多くなるため、吐出空間S1の払拭方向下流側部分の空気中の水分量が高くなり、残留インクの乾燥を抑制することが可能となる。このため、残留インクの乾燥による吐出口11のインクの乾燥促進を抑制することが可能となる。
以上、本実施形態によると、用紙Pへの画像記録が行われる際に、排出口部25からミストが排出され、当該ミストは用紙Pの搬送によって生じる気流によって吐出面10aと対向する吐出空間S1に流れる。このとき、用紙Pの搬送速度が速くなるほど、単位時間当たりのミストの排出量が多くなる。このため、吐出空間S1の空気中の水分量が維持され、吐出口11近傍のインク乾燥を抑制することが可能となる。この結果、乾燥を抑制するために行われるフラッシングなどによるインク排出を抑制することができる。また、複数のヘッド10を有していても、吐出口11近傍のインク乾燥を抑制することが可能となる。
ミストヘッド20は、複数のアクチュエータを有し、当該複数のアクチュエータが個別に駆動されることで、各吐出口21(分割領域26)からミストが排出される。このため、各吐出口21からのミスト排出量を比較的簡単な構成で、変更することが可能となる。
休止中加湿動作における単位時間当たりのミスト排出量は、記録中加湿動作におけるよりも少ない。このため、ミストを生成するための水の消費量を抑制することが可能となる。
変形例として、図9に示すように、ミストヘッド20がヘッド10間にもさらに設けられていてもよい。つまり、4つのミストヘッド20が、ヘッド10の搬送方向上流側において、4つのヘッド10とそれぞれ隣接して配置されている。これにより、互いに隣接するミストヘッド20の吐出口21とヘッド10の吐出口11との距離が近くなるため、吐出口21から排出されたミストが吐出口11近傍に効果的に供給される。このため、各ヘッド10の吐出口11近傍のインク乾燥を効果的に抑制することが可能となる。
別の変形例として、図10に示すように、ヘッドユニット201が、4つの単位ヘッド210と、4つの単位ミストヘッド220と、これら8つのヘッド210,220を支持するヘッドホルダ203とを有していてもよい。4つの単位ヘッド210は、互いに同じ色のインクを吐出する。また、4つの単位ヘッド210は、互いに離隔し、主走査方向に千鳥状に配列されている。各単位ヘッド210は、上述のヘッド10と同様の構成を有する。4つの単位ミストヘッド220は、単位ヘッド210の搬送方向上流側において、4つの単位ヘッド210と同様に千鳥状に配列され、単位ヘッド210とそれぞれ隣接して配置されている。各単位ミストヘッド220も、上述のミストヘッド20と同様の構成を有する。このようなヘッドユニット201においても、互いに隣接する単位ミストヘッド220の吐出口と単位ヘッド210の吐出口との距離が近くなるため、単位ミストヘッド220の吐出口から排出されたミストが、単位ヘッド210の吐出口近傍に効果的に供給される。このため、各単位ヘッド210の吐出口近傍のインク乾燥を効果的に抑制することが可能となる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、4つのヘッド10が設けられているが、1〜3又は5以上設けられていてもよい。また、上述の実施形態における用紙Pの搬送速度は、モノクロ印刷の方がカラー印刷よりも速いが、この逆であってもよい。また、用紙Pの搬送速度は、ヘッド10から用紙Pに対するインク吐出量が少なくなるほど速くしてもよい。この場合、当該用紙Pの搬送速度が速くなるに連れて、ミスト排出量を所定量よりも多くすればよい。こうすることで、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、キャップ機構40が設けられていなくてもよい。この場合、休止中加湿動作は実行しなくてもよい。また、休止中加湿動作を実行する際のミスト排出量が、記録中加湿動作以上であってもよい。また、ミストヘッド20,220は、ヘッド10,210よりも簡単な構成であってもよい。つまり、ミストヘッド20,220の吐出口の間隔が、ヘッド10,210の吐出口の間隔よりも大きくてもよい。こうすることで、ミストヘッド20,220内の流路構成やアクチュエータの数が減少し、構成が簡単になる。また、ミストヘッド20,220とヘッド10,220は、一体的に構成されていてもよい。
ワイパユニット80が設けられていなくてもよい。この場合、休止中加湿動作において、各吐出口21から同量のミストが排出されればよい。
また、吐出空間S1を封止状態(区画状態)と開放状態とに取り得るキャップ機構として、吐出面10a,20aと対向する底部及びこの底部の周縁に立設された環状部を有するキャップと、環状部の先端がヘッドユニット1全体の下面(吐出面10a,20a)の周縁部と当接する位置及びヘッドユニット1から離隔した位置にキャップを移動させる移動機構とを含んで構成されていてもよい。また、上述の実施形態及び変形例においては、ミストヘッド20,220からミスト状の水を排出していたが、透明且つ水分を含んでおれば、どのような液体を排出してもよい。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。