JP2015058012A - ブレーキ機構、およびそれを用いた歩行車 - Google Patents

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篤史 安江
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Abstract

【課題】どちらのブレーキバーでも操作が可能で、操作していない方のブレーキバーも同じように動作するので、操作方法の一貫性を保ち、かつ、直感的に操作ができて取り扱い易いブレーキ機構を提供する。
【解決手段】ブレーキ機構66を構成する第1ブレーキバー72は、上支点84および下支点86を有する本体部78と、第1突出部80と、第1握り部82とを有している。第2ブレーキバー74は、支軸部96と、第2突出部98と、第2握り部100とを有している。第1突出部80および第2突出部98の一方には長孔94が形成されており、他方には長孔94に摺動可能に嵌合された摺動ピン102が形成されている。ブレーキワイヤ76は、その他端が第1ブレーキバー72に接続されており、上支点84および下支点86がそれぞれケース70内に当接するように本体部78を付勢している。
【選択図】図4

Description

本発明は、例えば、自力での歩行が困難な使用者の歩行を補助するための歩行車に適用されるブレーキ機構に関する。
従来から、病人、身体障害者、あるいは高齢者などの、足腰が弱く自力での歩行が困難なユーザーの歩行を補助するための歩行車が知られている。歩行車には車輪が取り付けられており、この車輪に制動力を付与するためのブレーキシステムが設けられた歩行車も増加している。
歩行車を使用するユーザーは、自力で起立できる人もあれば、何かに寄りかからないと起立状態を維持できない人もあるといったように様々である。このため、ハンドルと肘置きとを備え、自力で起立できる人はハンドルを把持して歩行車を押し歩くことができ、自力では起立状態を維持できない人は肘置きに肘を置いて自身の体重の一部を歩行車に掛けつつ車輪を転動させることにより起立状態を維持しつつ歩行することができるようになっている歩行車が開発されている。
このような歩行車にブレーキシステムを設ける場合、ハンドルを把持している場合あるいは肘置きに肘を置いている場合のいずれの場合であったとしても、ユーザーが直ちにブレーキシステムを操作して制動力を得られるようにする必要がある。このため、2つのブレーキバーを備える歩行車が開発されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に開示された歩行車のブレーキ機構は、前方ブレーキバーおよび後方ブレーキバーを備えており、前方ブレーキバーおよび後方ブレーキバーのいずれか一方を操作することにより、歩行車の車輪に制動力を与えることができる。
特開2005−119364号公報
ところで、歩行車には、ユーザーがブレーキバーから手を離した状態でも制動力を維持できる「駐車ブレーキ」を備えるものが存在する。しかしながら、2つのブレーキバーを有しており、かつ、一方のブレーキバーを上方向あるいは下方向に操作すると他方のブレーキバーも同じ方向に連動し、どちらのブレーキバーを使用したとしても、ブレーキおよび駐車ブレーキの操作が可能な歩行車は存在していなかった。なお、特許文献1に記載の歩行車は駐車ブレーキを備えていない。
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、上述のようにどちらのブレーキバーを使用したとしてもブレーキおよび駐車ブレーキの操作が可能で、かつ、操作していない方のブレーキバーも、あたかも同じ操作をしているかのように動作するので、操作方法の一貫性を保つことができるとともに直感的に操作ができて取り扱い易いブレーキ機構を提供することにある。
この発明のある局面に従うと、第1ブレーキバーと、第2ブレーキバーと、ブレーキワイヤと、ケースとで構成されたブレーキ機構であって、第1ブレーキバーは、それぞれがケースに当接する上支点および下支点を有する本体部と、本体部から第2ブレーキバーに向けて突設された第1突出部と、本体部から第1突出部とは反対側に突設された第1握り部とを有しており、第2ブレーキバーは、ケースに対して回動可能に軸着された支軸部と、支軸部から第1ブレーキバーに向けて突設された第2突出部と、支軸部から第2突出部とは反対側に突設された第2握り部とを有しており、第1突出部および第2突出部のいずれか一方には長孔が形成されており、第1突出部および第2突出部の他方には長孔に摺動可能に嵌合された摺動ピンが形成されており、ブレーキワイヤは、その一端の向きに常時引っ張られているとともに、その他端が第1ブレーキバーの本体部に接続されており、上支点および下支点をそれぞれケース内の上支点当接部および下支点当接部に当接させるように本体部を付勢しているブレーキ機構が提供される。
好ましくは、第1ブレーキバーは、下支点を中心に回動させた状態で第1ブレーキバーを保持するロックピンをさらに有しており、ケースには、ロックピンと係合して第1ブレーキバーの回動を規制するロックピン係止部がさらに形成されている。
好ましくは、上述したようなブレーキ機構を備える歩行車が形成される。
以上のように、本発明によれば、どちらのブレーキバーを使用したとしてもブレーキおよび駐車ブレーキの操作が可能で、かつ、操作していない方のブレーキバーも、あたかも同じ操作をしているかのように動作するので、操作方法の一貫性を保つことができるとともに直感的に操作ができて取り扱い易いブレーキ機構を提供することができる。
本実施の形態にかかる歩行車の使用時における全体構成を示す正面側からの斜視図である。 本実施の形態にかかる歩行車におけるハンドルの一方の側部を背面側から見た図である。 本実施の形態にかかるブレーキ機構を構成する部品を説明するための図である。 本実施の形態にかかるブレーキ機構のニュートラル状態を示す一部断面図である。 本実施の形態にかかる制動機構を説明するための図である。 本実施の形態にかかるブレーキ機構のブレーキ状態を示す一部断面図である。 本実施の形態にかかるブレーキ機構の駐車ブレーキ状態を示す一部断面図である。 本実施の形態にかかるブレーキ機構の駐車ブレーキ状態におけるロックピンの動きを説明するための図である。 本実施の形態にかかるブレーキ機構の駐車ブレーキ状態におけるロックピンの動きを説明するための図である。 ロックピンを使用することなく駐車ブレーキ状態を成立させた実施例の1つを示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。実施の形態では、本発明に係るブレーキ機構を歩行車に適用した場合について説明するが、当該ブレーキ機構は歩行車10だけに限られず、シルバーカーやショッピングカート等、他の製品にも適用できることは言うまでもない。
また、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、以下の説明(および図面)では、各符号に関し、各部位を上位概念で示す場合にはアルファベットの枝番をつけずアラビア数字のみで示し、各部位を区別する必要がある場合(すなわち下位概念で示す場合)にはアルファベット大文字の枝番をアラビア数字に付して区別する。
<歩行車10の全体構成>
まず、本実施の形態にかかる歩行車10の全体構成について説明する。図1は、本実施の形態にかかる歩行車10の使用時における全体構成を示す正面側からの斜視図である。
図1を参照して、本実施の形態にかかる歩行車10は、大きく分けて、下部機構12と、上部機構14と、ブレーキシステム15とで構成されている。
下部機構12は、大略、一対の前側フレーム16と、一対の後側フレーム18と、一対の連結部材20と、一対のリンク部材22と、一対の前側車輪24と、一対の後側車輪26と、バッグ取付フレーム28と、腰掛けフレーム30と、杖や傘の受け具31を備えている。
前側フレーム16の上端部は連結部材20に固定されており、後側フレーム18の上端部は、連結部材20に対して回動可能に軸着されている。これにより、歩行車10を片付ける場合には、後側フレーム18を前側フレーム16に近づけるように回動させ、歩行車10をコンパクトにすることができるようになっている。
また、前側フレーム16の下端には前側車輪24が回動自在に取り付けられており、ユーザーが行きたい方向に歩行車10を進めることができるようになっている。本実施例の歩行車10に用いられている前側車輪24は、回動規制スライド32を有しており、この回動規制スライド32の上下方向位置を変えることにより、前側フレーム16に対する前側車輪24の回動を許可したり規制したりすることができるようになっている。もちろん、回動機構を持たない前側車輪24を採用してもよい。
後側フレーム18の下端には後側車輪26が取り付けられている。また、後側フレーム18における後側車輪26の近傍には、当該後側車輪26に制動力を付与する制動機構68(後述)が取り付けられている。
リンク部材22は、その中央部で折れ曲がり自在に構成された短冊状部材であり、その一端が前側フレーム16の中央部に軸着されているとともに、他端が後側フレーム18の中央部に軸着されている。後側フレーム18を前側フレーム16から遠ざけて展開するとリンク部材22が一直線状に延びきるようになり、前側フレーム16に対する後側フレーム18の開き角度を規定できるようになっている。
バッグ取付フレーム28は、一対の前側フレーム16間に固定されている。また、腰掛けフレーム30は、バッグ取付フレーム28よりもやや上方において一対の前側フレーム16間に取り付けられている。この腰掛けフレーム30は前側フレーム16に対して回動可能に取り付けられており、腰掛けが不要な時は腰掛けフレーム30を跳ね上げた状態とし、腰掛けを使用する時は腰掛けフレーム30を倒して使用できるようになっている。なお、一対の連結部材20の間には横フレーム34が固定されており、腰掛けフレーム30を倒したとき、腰掛け面が略水平になる位置で腰掛けフレーム30が横フレーム34の上面に当接するように設計されている。
なお、上述したもの以外にも、一対の前側フレーム16間や一対の後側フレーム18間に幾つかの補強用フレーム36が固定されている。
上部機構14は、大略、一対の縦フレーム38と、ハンドル40と、一対の肘置き42とを備えている。
縦フレーム38は、鉄、アルミニウム、それらの合金、あるいは樹脂などで形成された略円筒形の棒状部材である。本実施例の各縦フレーム38は、ハンドル40の高さ調節ができるように、その内側面に複数の高さ調節用孔44が縦方向に所定の間隔で形成されている。先に説明した下部機構12を構成する連結部材20には、縦フレーム38の一部が嵌め込まれる溝46が形成されているとともに、縦フレーム38を所望の高さに調節するため、所定位置にある高さ調節用孔44に嵌合されるピンやネジ等(図示せず)が設けられている。
ハンドル40は、縦フレーム38の上端に固定された略U字状の部材であり、縦フレーム38と同様に鉄、アルミニウム、それらの合金、あるいは樹脂などで形成されている。略U字状のハンドル40は、略水平、かつ、歩行車10の進行方向に凸となるように(換言すれば、両先端が歩行車10の進行方向とは反対方向を向くように)配設されている。ハンドル40の中央部分(歩行車10の進行方向に凸となっている部分)には、ユーザーが握りやすいようにウレタンやゴム等の軟質材料で形成された前側握り部材48が取り付けられている。また、ハンドル40の両先端部には、同様の軟質材料で形成された後側握り部材50がそれぞれ取り付けられている。
肘置き42は、自力では起立状態を維持できないユーザー等が肘を置いて歩行車10に体重の一部を掛けるのに用いられる部分であり、パッド部材52と、ヒンジ部材54と、起倒レバー56とで構成されている。本実施例の肘置き42は、パッド部材52を跳ね上げた状態、あるいは、倒した状態にすることが可能になっている(なお、図1は、肘置き42を跳ね上げた状態を示している。)。ユーザーがハンドル40の両端部の後側握り部材50を握る場合はパッド部材52を跳ね上げた状態で使用し、ユーザーが肘置き42に肘を置きたい場合はパッド部材52を倒した状態で使用することになる。
パッド部材52は、上述の通りユーザーが肘を置く部材でありウレタン等の軟質材料を樹脂シート等で覆って構成されている。パッド部材52の形状は図示するようなアーモンド形状に限定されることはなく、歩行車10の外観デザインやユーザーの好みに応じた形状にすることが可能である。
ヒンジ部材54は、一端がハンドル40に固定されており、他端がパッド部材52の底面に固定された部材であり、ヒンジ部材54を動作させることにより、パッド部材52を跳ね上げた状態、あるいは、パッド部材52を倒した状態にすることができる。
起倒レバー56は、パッド部材52の底面に取り付けられた略L字状の部材であり、この起倒レバー56を操作することにより、ヒンジ部材54を動作させてパッド部材52を跳ね上げた状態あるいは倒した状態にすることができる。
起倒レバー56の形状およびその使用方法について詳述すると、図2に示すように、起倒レバー56は、略矩形短冊状の第1片58と、当該第1片58との間で略直角を成すように第1片58の一端に固定された略矩形短冊状の第2片60とで構成されている略L字状の部材である。また、第1片58と第2片60とが接合する位置には、この起倒レバー56をパッド部材52に対して回動可能に取り付けるヒンジ62が設けられている。
起倒レバー56は、後述するブレーキ機構66を構成するケース70の直上に位置決めされており、第1片58と第2片60とで構成された入り隅64にケース70の角が収まるようになっている。このような状態で、図中の第2片60を起こしていくと、第1片58の他端がケース70の天面に当接し、ヒンジ62で回動しつつ、ヒンジ部材54によってパッド部材52が跳ね上げられた状態になる。ある程度まで第2片60を起こしてしまうと、パッド部材52が跳ね上がりきってしまい、ユーザーが第2片60から手を離してもパッド部材52は元の倒れた状態には戻らなくなる。これにより、パッド部材52が跳ね上げられた状態が維持される。
逆に、パッド部材52が跳ね上げられた状態から、倒れた状態に戻すには、第2片60を元のようにケース70方向へ戻す力を付勢すればよい。
図1に戻って、ブレーキシステム15は、大略、ブレーキ機構66と、制動機構68とで構成されている。
ブレーキ機構66は、それぞれ左右一対のケース70と、第1ブレーキバー72と、第2ブレーキバー74と、ブレーキワイヤ76とで構成されている。
ケース70は、ハンドル40の両側部において当該ハンドル40から垂れ下げるように取り付けられた部材であり、その内部で第1ブレーキバー72と第2ブレーキバー74とを互いにリンクさせて保持できるようになっている。このリンクの構造については後述する。図3に示すように、ケース70の内部には、少なくとも、上支点当接部90と、下支点当接部92と、ロックピン係止部122と、第2ブレーキバー74を回動可能に枢着する軸孔134と、ブレーキワイヤ76を挿通させるワイヤ挿通孔136が形成されている。なお、図3では、ケース70における上方部分(ハンドル40を取り付ける部分)を省略して描いている。
第1ブレーキバー72は、大略、本体部78と、第1突出部80と、第1握り部82と、ロックピン120と、ロックピン付勢バネ121とで構成されている。
本体部78は、その上端部に形成された上支点84と、その下端部に形成された下支点86と、上支点84と下支点86との間に形成されたブレーキワイヤ取付部88とを有している。上支点84はケース70内に形成された上支点当接部90に当接し、下支点86はケース70内に形成された下支点当接部92に当接するようになっている。また、ロックピン120を回動可能に取り付けるためのロックピン取付凹所130、およびロックピン付勢バネ121を収容するバネ収容凹所132が形成されている。さらに、ブレーキワイヤ取付部88には、ブレーキワイヤ76の他端が接続される。
第1突出部80は、本体部78から第2ブレーキバー74に向けて突設された部分であり、その先端部には長孔94が形成されている。
第2ブレーキバー74は、支軸部96と、第2突出部98と、第2握り部100とで構成されている。
支軸部96は、ケース70の軸孔134に取り付けられたピンやネジ等により、ケース70に対して回動可能に軸着された部分である。また、第2突出部98は、支軸部96から第1ブレーキバー72に向けて突設された部分であり、その先端部には、第1突出部80に形成された長孔94に対して摺動可能に嵌合される摺動ピン102が形成されている。さらに、第2握り部100は、支軸部96から第2突出部98とは反対側に突設された棒状部材である。本実施例において、左右一対の第2握り部100は互いに繋がりあって略U字状の棒状部材として一体的に形成されており、歩行車10の進行方向に向けて凸状に形成されたハンドル40の下側に沿うような形状になっている。もちろん、左右一対の第2握り部100をそれぞれ独立して形成してもよい。
ブレーキワイヤ76はその一端が後述する制動機構68に接続されており、当該一端の向きに常時引っ張られた状態となっている。このため、図4に示すように、制動機構68が作動しておらず後側車輪26に制動力が付勢されていない状態(以下、「ニュートラル状態」という)において、第1ブレーキバー72は、その上支点84および下支点86の両方がそれぞれ上支点当接部90および下支点当接部92に当接した状態になっている。
制動機構68は、図5に示すように、大略、制動バー104と、バネ受け部材106と、バネ108とで構成されている。
制動バー104は、略U字状に形成された棒状部材であり、その両端部が軸着部138でそれぞれ後側フレーム18の下端部に軸着されて回動可能に取り付けられている。制動バー104の両端はそれぞれ外向きに折り曲げられて車輪当接部140が形成されており、この車輪当接部140が後側車輪26に当接することにより、後側車輪26に制動力を付勢することができるようになっている。また、制動バー104の軸着部138よりも中央寄りの位置(換言すれば、軸着部138を中心として車輪当接部140とは逆の位置)にブレーキワイヤ76の一端が接続されている。
バネ受け部材106は、後側フレーム18の下端部であって制動バー104が軸着された位置よりもやや上方に取り付けられた略矩形状の板材であり、その中央部にはブレーキワイヤ76を挿通する挿通孔110が形成されている。
バネ108は、その上端がバネ受け部材106の下面に当接し、下端が制動バー104の軸着部138よりも中央寄りの位置に当接するように配置されている。また、バネ108の自然長は、バネ受け部材106から制動バー104の当接位置までの距離よりも常に長くなるように設定されている。つまり、バネ108は、常時、制動バー104の当接位置を図中下方向(つまり、制動バー104による後側車輪26への制動力が解除される方向)へ回動するように付勢している。また、ブレーキワイヤ76の一端は、バネ108内を通って当該バネ108の当接位置において制動バー104に接続されている。したがって、バネ108の弾性により、ブレーキワイヤ76は、常に、その一端の向きに引っ張られていることになる。
<第1ブレーキバー72の操作によるブレーキ機構66の動作説明>
上述の通り、後側車輪26に制動力が付勢されていないニュートラル状態において、ブレーキ機構66は、図4に示すようになっている。すなわち、第1ブレーキバー72における本体部78の上支点84および下支点86の両方がそれぞれケース70の上支点当接部90および下支点当接部92に当接した状態になっている。
このニュートラル状態から、ユーザーが第1握り部82をハンドル40側へ握る(ハンドル40側へ上げる)ことにより、図6に示すように、第1握り部82が上支点84を中心として上方向へ回動する。このとき、第1ブレーキバー72におけるブレーキワイヤ取付部88の位置は、ニュートラル状態と比較して、ブレーキワイヤ76の一端に向かう方向とは反対方向に移動する。すなわち、第1ブレーキバー72は、バネ108の弾性に抗してブレーキワイヤ76をその他端方向に引っ張ることになる。すると、ブレーキワイヤ76の一端の位置が上がって制動バー104を回動させる。これにより、回動した制動バー104の両端はそれぞれ後側車輪26に当接して制動力が付与される。以下ではこの状態を「ブレーキ状態」という。
次に、「駐車ブレーキ状態」について説明する。ユーザーが第1握り部82の先端をハンドル40から離間する方向へ倒すと、図7に示すように、第1握り部82が下支点86を中心として下方向へ回動する。このときもブレーキ状態と同様に、ニュートラル状態と比較して、ブレーキワイヤ取付部88の位置がブレーキワイヤ76の一端に向かう方向とは反対方向に移動する。これにより、第1ブレーキバー72は、バネ108の弾性に抗してブレーキワイヤ76をその他端方向に引っ張り、後側車輪26に制動力を付与することになる。
そして、第1握り部82を倒していくと、図8に示すように、第1ブレーキバー72の本体部78に対して回動可能に取り付けられており、ロックピン付勢バネ121によって常に上支点84の方向に付勢され、ブレーキワイヤ76が常時引っ張る方向とほぼ同じ方向へ延びるロックピン120の先端がケース70に設けられたロックピン係止部122の係止凹所124に嵌まる。これにより、第1ブレーキバー72がニュートラル状態に戻るのをロックピン120が阻止するので、ユーザーが第1ブレーキバー72から手を離しても、駐車ブレーキ状態が維持される。
駐車ブレーキ状態を解除する場合は、第1握り部82をハンドル40の方向に回動させる力を付与する。すると、図9に示すように、第1ブレーキバー72における本体部78の下支点86がケース70における下支点当接部92から滑らかに続く下支点逃がし部142に移動する(ブレーキワイヤ76が常時引っ張る方向とは逆方向へ移動する)。この移動によりロックピン120がロックピン係止部122の係止凹所124から離間して係合状態が解除される。ロックピン120がロックピン係止部122から外れると、制動機構68がブレーキワイヤ76を引っ張る力によって第1ブレーキバー72はニュートラル状態に戻る。
ロックピン120による動作は基本的に上述の通りであるが、本実施例のブレーキ機構66では、ロックピン120を第1ブレーキバー72に対して回動可能に取り付けているとともにロックピン付勢バネ121を取り付けている。加えて、ロックピン120の上支点84側の形状(図中上側の形状)をテーパ状に形成しているので、ロックピン120とロックピン係止部122との係止/解除動作をよりスムースにすることができる。
<第1ブレーキバー72と第2ブレーキバー74との連動についての説明>
これまでは第1ブレーキバー72の動きのみを説明してきたが、本実施例のブレーキ機構66では、第1ブレーキバー72と第2ブレーキバー74とが互いに連動するようになっているので、この点について説明する。
図4に示すように、第1ブレーキバー72がニュートラル状態にあるとき、第2ブレーキバー74もニュートラル状態にある。次に、図6に示すように、第1ブレーキバー72をブレーキ状態にする、つまり、上支点84を中心にして第1握り部82がハンドル40に近づく方向に第1ブレーキバー72を回動させると、第1握り部82とは反対方向に突設された第1突出部80はハンドル40から離間する方向に回動する。すると、長孔94内を摺動するようにして摺動ピン102およびこれを含む第2ブレーキバー74の第2突出部98もハンドル40から離間する方向(図中下向き)に回動する。第2突出部98がこの方向に回動すると、支軸部96を介して、第2ブレーキバー74はハンドル40に近づく方向に回動する。このように、本実施例のブレーキ機構66によれば、第1ブレーキバー72の第1握り部82をハンドル40に近づく方向に回動させると、ブレーキ状態になるだけでなく、第2ブレーキバー74の第2握り部100も、あたかもユーザーがブレーキ操作をしているかのようにハンドル40へ近づく方向に回動する。
逆に、図7に示すように、第1ブレーキバー72を駐車ブレーキ状態にする、つまり、下支点86を中心にして第1握り部82がハンドル40から離間する方向に第1ブレーキバー72を回動させると、第1握り部82とは反対方向に突設された第1突出部80はハンドル40へ近づく方向に回動する。すると、長孔94内を摺動するようにして摺動ピン102およびこれを含む第2ブレーキバー74の第2突出部98もハンドル40へ近づく方向(図中上向き)に回動する。第2突出部98がこの方向に回動すると、支軸部96を介して、第2ブレーキバー74はハンドル40から離間する方向に回動する。このように、本実施例のブレーキ機構66によれば、第1ブレーキバー72の第1握り部82をハンドル40から離間する方向に回動させると、駐車ブレーキ状態になるだけでなく、第2ブレーキバー74の第2握り部100も、あたかもユーザーが駐車ブレーキ操作をしているかのように、ハンドル40から離間する方向に回動する。
したがって、本実施例のブレーキ機構66を、第2ブレーキバー74を用いて操作することも可能である。上述した連動機能により、ユーザーが第2ブレーキバー74の第2握り部100をハンドル40へ近づけることにより、第1ブレーキバー72の第1握り部82もハンドル40へ近づく方向へ回動してブレーキ状態になる。逆に、ユーザーが第2ブレーキバー74の第2握り部100をハンドル40から離間させると、第1ブレーキバー72の第1握り部82もハンドル40から離間する方向に回動し、駐車ブレーキ状態となる。
本実施例のブレーキ機構によれば、第1ブレーキバー72あるいは第2ブレーキバー74のいずれを操作してもニュートラル状態、ブレーキ状態、あるいは駐車ブレーキ状態を切り替えることが可能であり、かつ、操作していない方のブレーキバーも、あたかも同じ操作をしているかのように動作するので、操作方法の一貫性を保つことができるとともに直感的に操作ができて取り扱い易い歩行車10を提供することができる。
なお、上述した実施例では、ブレーキ機構66の駐車ブレーキ状態をロックピン120で実現させているが、図10に示すように、ロックピン120を使用することなく駐車ブレーキ状態を実現させることも可能である。ただし、ロックピン120を使用しない場合、第1ブレーキバー72からブレーキワイヤ76が延びる方向によっては、当該第1ブレーキバー72を大きく下方向に回動させる必要が生じることから、ブレーキ機構66をコンパクトにまとめることができる点において、ロックピン120を使用することが好適である。
また、ブレーキ機構66と併せて使用される制動機構68は上述した実施例のものに限られず、常時、ブレーキワイヤ76をその一端の方向(ブレーキ機構66から離れる方向)に引っ張るようなものであれば、どのような制動機構68を使用してもよい。また、ブレーキ機構66や制動機構68を歩行車10の左右いずれか一方にのみ取り付けてもよい。
また、肘置き42も本発明を実施するのに際して必須ではなく、また、実施例とは異なる形状の肘置き42を使用してもよい。例えば、パッド部材52の形状をより小さくして、パッド部分52を跳ね上げることなく後側握り部材50を握ることができるようにすることが考えられる。
また、上述した実施例では、第1ブレーキバー72の第1突出部80に長孔94が形成され、第2ブレーキバー74の第2突出部98に摺動ピン102が形成されているが、これとは逆に、第1突出部80に摺動ピン102を形成し、第2突出部98に長孔94を形成してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10…歩行車、12…下部機構、14…上部機構、15…ブレーキシステム、16…前側フレーム、18…後側フレーム、20…連結部材、22…リンク部材、24…前側車輪、26…後側車輪、28…バッグ取付フレーム、30…腰掛けフレーム、31…受け具、32…回動規制スライド、34…横フレーム、36…補強用フレーム、38…縦フレーム、40…ハンドル、42…肘置き、44…高さ調節用孔、46…挿通用溝、48…前側握り部材、50…後側握り部材、52…パッド部材、54…ヒンジ部材、56…起倒レバー、58…(起倒レバーの)第1片、60…(起倒レバーの)第2片、62…ヒンジ、64…入り隅、66…ブレーキ機構、68…制動機構、70…ケース、72…第1ブレーキバー、74…第2ブレーキバー、76…ブレーキワイヤ、78…本体部、80…第1突出部、82…第1握り部、84…上支点、86…下支点、88…ブレーキワイヤ取付部、90…上支点当接部、92…下支点当接部、94…長孔、96…支軸部、98…第2突出部、100…第2握り部、102…摺動ピン、104…制動バー、106…バネ受け部材、108…バネ、110…挿通孔、120…ロックピン、121…ロックピン付勢バネ、122…ロックピン係止部、124…係止凹所、130…ロックピン取付凹所、132…バネ収容凹所、134…軸孔、136…ワイヤ挿通孔、138…軸着部、140…車輪当接部、142…下支点逃がし部

Claims (3)

  1. 第1ブレーキバーと、第2ブレーキバーと、ブレーキワイヤと、ケースとで構成されたブレーキ機構であって、
    前記第1ブレーキバーは、それぞれが前記ケース内に当接する上支点および下支点を有する本体部と、前記本体部から前記第2ブレーキバーに向けて突設された第1突出部と、前記本体部から前記第1突出部とは反対側に突設された第1握り部とを有しており、
    前記第2ブレーキバーは、前記ケースに対して回動可能に軸着された支軸部と、前記支軸部から前記第1ブレーキバーに向けて突設された第2突出部と、前記支軸部から前記第2突出部とは反対側に突設された第2握り部とを有しており、
    前記第1突出部および前記第2突出部のいずれか一方には長孔が形成されており、
    前記第1突出部および前記第2突出部の他方には前記長孔に摺動可能に嵌合された摺動ピンが形成されており、
    前記ブレーキワイヤは、その一端の向きに常時引っ張られているとともに、その他端が前記第1ブレーキバーに接続されており、前記上支点および前記下支点がそれぞれ前記ケース内の上支点当接部および下支点当接部に当接するように前記本体部を付勢している
    ブレーキ機構。
  2. 前記第1ブレーキバーは、前記下支点を中心に回動させた状態で前記第1ブレーキバーを保持するロックピンをさらに有しており、
    前記ケースには、前記ロックピンと係合して前記第1ブレーキバーの回動を規制するロックピン係止部がさらに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ機構。
  3. 請求項1または2に記載のブレーキ機構を備える歩行車。

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018165082A (ja) * 2017-03-28 2018-10-25 アロン化成株式会社 歩行車のブレーキ機構
JP2019037557A (ja) * 2017-08-25 2019-03-14 株式会社丸協製作所 手押し車
JP2019141432A (ja) * 2018-02-23 2019-08-29 株式会社幸和製作所 歩行車

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