JP2015057455A - 水性インク組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】保存安定性に優れ、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性に総合的に優れた塗膜を形成する水性インク組成物を提供する。【解決手段】乳化重合によって得られた(メタ)アクリル系樹脂エマルションを必須成分として含有する水性インク組成物であって、さらに非水溶性硬化性単量体および非水溶性硬化性オリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の非水溶性硬化性化合物を含有することを特徴とする水性インク組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、保存安定性に優れ、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性に総合的に優れた塗膜を形成する水性インク組成物に関する。本発明の水性インク組成物は、例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、リソグラフ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクリボンなどに好適に使用することができる。
インク組成物は、溶媒の主成分として有機溶媒が用いられている有機溶媒系インク組成物と、溶媒の主成分として水が用いられている水性インク組成物とに大別される。
有機溶媒系インク組成物は、溶媒の主成分が有機溶媒であることから、耐水性が良好である半面、当該有機溶媒系インク組成物には、人体に対する安全性に劣るとともに、有機溶媒に基づく臭気が発生するという欠点がある。
そこで、有機溶媒系インク組成物が有する欠点を解消する水性インク組成物として、水溶性または水分散性の光重合性オリゴマーと着色剤と非水溶性光重合開始剤を含有する水性インク組成物(例えば、特許文献1参照)、顔料と水溶性有機溶媒と湿潤剤とウレタン(メタ)アクリレートとラジカル重合性基を有する化合物と光ラジカル重合開始剤と水とを含むインクジェット用インク組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかし、前記水性インク組成物は、耐水性を十分に満足するものではなく、前記インクジェット用インク組成物は、耐候性を十分に満足するものではない。
また、インクジェットに用いられる液体組成物として、2以上のエチレン性不飽和結合を有し、活性エネルギー線で硬化可能な水溶性モノマー、光重合開始剤および水性媒体を含有し、さらにポリマーエマルションを含有する液体組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、前記液体組成物は、耐水性および耐候性を十分に満足するものではない。
特開2004−27154号公報 特開2013−06924号公報 特開2011−116946号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、保存安定性に優れ、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性に総合的に優れた塗膜を形成する水性インク組成物を提供することを課題とする。
本発明は、乳化重合によって得られた(メタ)アクリル系樹脂エマルションを必須成分として含有する水性インク組成物であって、さらに非水溶性硬化性単量体および非水溶性硬化性オリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の非水溶性硬化性化合物を含有することを特徴とする水性インク組成物に関する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。また、非水溶性硬化性化合物は、25℃の水に対する溶解度が5質量%以下である硬化性化合物を意味する。
本発明によれば、保存安定性に優れ、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性に総合的に優れた塗膜を形成する水性インク組成物が提供される。また、本発明の水性インク組成物は、最低造膜温度が30℃以下である場合には、保存安定性に優れ、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性により一層総合的に優れた塗膜を形成する。
本発明の水性インク組成物は、前記したように、乳化重合によって得られた(メタ)アクリル系樹脂エマルションを必須成分として含有する水性インク組成物であり、さらに非水溶性硬化性単量体および非水溶性硬化性オリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の非水溶性硬化性化合物を含有することを特徴とする。
本発明の水性インク組成物は、(メタ)アクリル系樹脂エマルションとともに非水溶性硬化性化合物を含有するので、保存安定性に優れ、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性に総合的に優れた塗膜を形成する。
本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂エマルションは、当該(メタ)アクリル系樹脂エマルションの原料として(メタ)アクリル系単量体が必須成分として用いられているものを意味する。単量体成分における(メタ)アクリル系単量体の含有率は、保存安定性に優れた水性インク組成物を得るとともに、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。なお、(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル酸またはそのエステルを意味する。
したがって、(メタ)アクリル系樹脂エマルションは、(メタ)アクリル系単量体を必須成分として含有する単量体成分を乳化重合させることによって容易に調製することができる。より具体的には、(メタ)アクリル系樹脂エマルションは、例えば、乳化剤で水中に形成されたミセル中の(メタ)アクリル系単量体を必須成分として含有する単量体成分を重合開始剤で重合させる方法などによって容易に調製することができるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。
(メタ)アクリル系樹脂エマルションは、(メタ)アクリル系樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子が有する官能基と当該官能基に対して反応性を示す化合物とを反応させたエマルション粒子を含有する(メタ)アクリル系樹脂エマルションであってもよい。
また、他の(メタ)アクリル系樹脂エマルションとして、(メタ)アクリル系樹脂エマルションを調製しているとき、または当該(メタ)アクリル系樹脂エマルションを調製した後に、エマルション粒子が有する官能基に対して反応性を示す化合物を添加し、(メタ)アクリル系樹脂エマルションと当該エマルション粒子が有する官能基に対して反応性を示す化合物とを反応させてもよい。
単量体成分としては、例えば、芳香族系単量体、エチレン性不飽和単量体などのラジカル重合性単量体が挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレンおよびその誘導体、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
スチレンおよびその誘導体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−エトキシスチレン、m−エトキシスチレン、p−エトキシスチレン、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−アセトキシスチレン、m−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、o−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレンおよびその誘導体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。スチレンおよびその誘導体のなかでは、水性インク組成物で形成された塗膜の耐水性を高める観点から、スチレンが好ましい。
アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アジリジニル基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエチレン性不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシル基末端カプロラクトン変性(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのカルボキシル基含有単量体のなかでは、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がより好ましい。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのエステル基にフッ素原子を有するフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルメチルカルバメート、N,N−メチルビニルアセトアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル、オキソシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
シラン基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アジリジニル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和単量体のなかでは、水性インク組成物で形成された塗膜の耐水性を向上させる観点から、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル系単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、本発明においては、エマルション粒子に紫外線安定性や紫外線吸収性を付与する観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、紫外線安定性単量体、紫外線吸収性単量体などを単量体成分に含有させてもよい。
紫外線安定性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
紫外線吸収性単量体としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル]−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分を乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、撹拌下で単量体成分および重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水または水性媒体中に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる(メタ)アクリル系樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。媒体は、あらかじめ反応容器に仕込んでおいてもよく、あるいはプレエマルションとして使用してもよい。また、媒体は、必要により、単量体成分を乳化重合させ、(メタ)アクリル系樹脂エマルションを製造しているときに用いてもよい。
単量体成分を乳化重合させる際には、単量体成分、乳化剤および媒体を混合した後に乳化重合を行なってもよく、単量体成分、乳化剤および媒体を撹拌することによって乳化させ、プレエマルションを調製した後に乳化重合を行なってもよく、あるいは単量体成分、乳化剤および媒体のうちの少なくとも1種類とその残部のプレエマルションとを混合して乳化重合を行なってもよい。単量体成分、乳化剤および媒体は、それぞれ一括添加してもよく、分割添加してもよく、あるいは連続滴下してもよい。
前記で得られた(メタ)アクリル系樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子上に外層を形成させる場合には、前記(メタ)アクリル系樹脂エマルション中で前記と同様にして単量体成分を乳化重合させることにより、前記エマルション粒子上に外層を形成させることができる。また、前記外層が形成されたエマルション粒子上にさらに外層を形成させる場合には、前記と同様にして(メタ)アクリル系樹脂エマルション中で単量体成分を乳化重合させることにより、前記エマルション粒子上にさらに外層を形成させることができる。このように多段乳化重合法により、多層構造を有するエマルション粒子を含有する(メタ)アクリル系樹脂エマルションを調製することができる。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩;ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホネート塩、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩などのアリル基を有する硫酸エステルまたはその塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレンの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種以上を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、乳化剤として、水性インク組成物で形成された塗膜の耐水性を向上させる観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
単量体成分100質量部あたりの乳化剤の量は、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、水性インク組成物で形成された塗膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、水性インク組成物で形成された塗膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、エマルション粒子を構成する樹脂の重量平均分子量を調整するために、単量体成分に連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤を単量体成分に用いた場合には、連鎖移動剤を単量体成分に用いなかった場合と対比して、一般にエマルション粒子を構成する樹脂を低分子量化させることができる。
連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、β−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。単量体成分100質量部あたりの連鎖移動剤の量は、エマルション粒子を構成する樹脂の重量平均分子量を調整する観点から、0.01〜10質量部であることが好ましい。
反応系内には、必要により、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができない。通常、単量体成分100質量部あたりの添加剤の量は、好ましくは0.01〜5質量部程度、より好ましくは0.1〜3質量部程度である。
単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合反応の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは0〜100℃、より好ましくは40〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分を乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜8時間程度である。
なお、単量体成分を乳化重合させるとき、得られる重合体が有する酸性基の一部または全部が中和剤で中和されるようにしてもよい。中和剤は、最終段で単量体成分を添加した後に使用してもよく、例えば、1段目の重合反応と2段目の重合反応との間に使用してもよく、初期の乳化重合反応の終了時に使用してもよい。
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸化物;アンモニア、モノメチルアミンなどの有機アミンなどのアルカリ性物質が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤のなかでは、水性インク組成物で形成された塗膜の耐水性を向上させる観点から、アンモニアなどの揮発性を有するアルカリ性物質が好ましい。中和剤は、水溶液の状態で用いてもよい。
また、単量体成分を乳化重合させるとき、水性インク組成物で形成された塗膜の耐水性を向上させる観点から、シランカップリング剤を適量で用いてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などの重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
以上のようにして単量体成分を乳化重合させることにより、(メタ)アクリル系樹脂エマルションが得られる。(メタ)アクリル系樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、1段の乳化重合によって調製された1種類の重合体のみで構成されていてもよいが、単量体成分を多段乳化重合させることによって調製された多層構造の重合体層を有するものであってもよい。
エマルション粒子を構成している重合体のガラス転移温度は、その重合体の原料として用いられる単量体成分に含まれている単量体からなる単独重合体のガラス転移温度(Tg)(絶対温度:K)と単量体の質量分率から、式(I):
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・+Wn/Tgn (I)
〔式中、Tgは、求めようとしている重合体のガラス転移温度(K)、W1、W2、W3・・・・Wnは、それぞれ各単量体の質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・・Tgnは、それぞれ各単量体の質量分率に対応する単量体からなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求めることができる。
本明細書においては、エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度は、式(I)に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。
このエマルション粒子を構成している重合体のガラス転移温度を考慮して、当該エマルション粒子を構成している重合体の原料として用いられる単量体成分の組成を決定することができる。
単独重合体のガラス転移温度は、例えば、n−ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、n−ブチルメタクリレートの単独重合体では20℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、エチルアクリレートの単独重合体では−24℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、アクリル酸の単独重合体では95℃である。
エマルション粒子を構成している重合体のガラス転移温度は、水性インク組成物で形成された塗膜の耐擦傷性を高める観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、水性インク組成物から塗膜を容易に形成させる観点から、好ましくは120℃以下である。
エマルション粒子を構成している重合体は、架橋構造を有していてもよい。当該重合体の重量平均分子量は、架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、水性インク組成物で形成された塗膜の耐擦傷性を高める観点から、好ましくは1万以上、より好ましくは5万以上、さらに好ましくは10万以上、さらに一層好ましくは30万以上である。当該重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、水性インク組成物から容易に塗膜を形成させる観点から、500万以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8320GPC、カラム:Super Multpore HZ−Mを2本直列に使用、展開溶媒:テトラヒドロフラン〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは70nm以上、より好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、水性インク組成物で形成された塗膜の表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは450nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは350nm以下である。
本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、(メタ)アクリル系樹脂エマルションを蒸留水で希釈し、得られた希釈液約10mLをガラスセルに採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器〔パーティクル サイジング システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOM P Model 380〕を用い、ウインドウズベースのソフトウェア〔Windows(登録商標) Based Software〕を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
(メタ)アクリル系樹脂エマルションの不揮発分量は、水性インク組成物の生産性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、水性インク組成物の取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂エマルションの不揮発分量は、(メタ)アクリル系樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で20分間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔(メタ)アクリル系樹脂エマルションの不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔(メタ)アクリル系樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
本発明の水性インク組成物は、前記のようにして調製されたエマルション粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂エマルションおよび非水溶性硬化性化合物、必要により、重合開始剤などを混合することによって容易に調製することができる。
非水溶性硬化性化合物としては、非水溶性硬化性単量体および非水溶性硬化性オリゴマーが挙げられ、これらの非水溶性硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
好適な非水溶性硬化性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの非水溶性多官能(メタ)アクリレート;エチレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの非水溶性アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの非水溶性ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの非水溶性硬化性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
好適な非水溶性硬化性オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの非水溶性硬化性オリゴマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
非水溶性硬化性単量体のなかでは、水性インク組成物で形成される塗膜の耐水性および耐候性を向上させる観点から、非水溶性多官能(メタ)アクリレートおよび非水溶性アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、非水溶性多官能(メタ)アクリレート以外の非水溶性硬化性単量体および非水溶性硬化性オリゴマーとしては、例えば、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルなどが挙げられ、本発明の目的を阻害しない範囲内で用いることができる。
また、非水溶性硬化性化合物には、例えば、(メタ)アクリル系樹脂エマルションのエマルション粒子の原料である単量体成分に用いられる単量体と同じ種類の単量体、水溶性硬化性化合物などが本発明の目的を阻害しない範囲内で含まれていてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂エマルションの不揮発分と非水溶性硬化性化合物との質量比〔(メタ)アクリル系樹脂エマルションの不揮発分/非水溶性硬化性化合物〕は、水性インク組成物の保存安定性を向上させるとともに、水性インク組成物から形成される塗膜がカールし難くする観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上であり、水性インク組成物で形成された塗膜の耐水性および耐擦傷性を向上させる観点から、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下である。
前記重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。なお、光重合開始剤のなかには熱重合開始剤として作用するものがあり、また、熱重合開始剤のなかには光重合開始剤として作用するものがあるので、両性質を有するものは、光照射または加熱により、水性インク組成物を硬化させることができる。重合開始剤のなかでは、形成された塗膜および記録媒体に熱履歴を与えないことから、光重合開始剤が好ましく、非水溶性光重合開始剤がより好ましい。
従来、水溶性モノマーが用いられた水溶性紫外線硬化性インク組成物では、水溶性光重合開始剤を用いることが好ましいとされているが、当該水溶性光重合性開始剤として市場で容易に入手することができるものの種類が少ないのみならず、本発明の目的を達成させるために十分な性質を有するものが少ない。これに対して、本発明において、光重合開始剤として、従来のような水溶性光重合性開始剤ではなく非水溶性光重合開始剤を用いる場合、当該非水溶性光重合開始剤として市場に種々の種類のものが存在しているので商業的に容易に入手することができ、さらに当該非水溶性光重合開始剤を非水溶性硬化性化合物に溶解させて用いることができることから、本発明の水性インク組成物の設計の自由度を高めることができるという利点がある。なお、非水溶性光重合開始剤は、25℃の水に対する溶解度が5質量%以下である光重合開始剤を意味する。
熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、1、1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの油溶性開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素などの水溶性過酸化物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などの水溶性アゾ化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの熱重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、オキシフェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]−エチルエステル、オキシフェニルアセチックアシッド2−[2−ヒドロキシエトキシ]−エチルエステル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルホリノプロパン−1−オン、2−モルホリノプロパン−1−オン、ヨードニウム、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、(4−メチルフェニル[4−(2−メチルプロピル)フェニル])−ヘキサフルオロフォスフェート、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤は、例えば、(メタ)アクリル系樹脂エマルションに直接添加してもよく、あるいは非水溶性硬化性化合物と混合して用いてもよい。
非水溶性硬化性化合物100質量部あたりの重合開始剤の量は、非水溶性硬化性化合物の硬化を促進させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、硬化物の着色を防止し、耐候性を向上させる観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
本発明の水性インク組成物の最低造膜温度は、保存安定性に優れた水性インク組成物を得るとともに、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、好ましくは0〜30℃、より好ましくは0〜25℃である。本発明の水性インク組成物の最低造膜温度は、非水溶性硬化性化合物の種類および量を調整することによって容易に調節することができる。
最低造膜温度は、例えば、JIS K6828−2(2003)に準じて測定することができる。より具体的には、本発明では、MFTテスター〔テスター産業(株)製、品番:TP−801 LT〕を用い、MFTテスター上に置いたガラス基板の上に、水性インク組成物をアプリケーターで塗布し、MFTテスターによってガラス基板を加熱して塗膜を、10〜100℃の温度範囲で4cm間隔ごとに5℃ずつ温度勾配をつけて加熱し、良好に造膜したときの温度のうち最も低い温度が最低造膜温度である。なお、水性インク組成物の最低造膜温度が0℃以下である場合には、当該水性インク組成物の最低造膜温度は0℃であるとみなす。
以上のようにして得られる本発明の水性インク組成物は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、顔料および染料が挙げられる。これらのなかでは、耐候性に優れていることから、顔料が好ましい。顔料を用いる場合、当該顔料は、例えば、顔料分散液の形態で用いることができる。顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
有機顔料としては、例えば、ベンジジン、ハンザイエローなどのアゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノン顔料、キナクリドンレッドやキナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾール顔料、モノアリーライドイエロー、ジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、キノフタロン顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、三酸化アンチモン、亜鉛華、リトポン、鉛白、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化鉄、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黄鉛、モリブデン赤、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛などをはじめ、雲母(マイカ)、クレー、アルミニウム粉末、タルク、ケイ酸アルミニウムなどの扁平形状を有する顔料、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの体質顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水性インク組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂エマルションの不揮発分100質量部あたりの顔料の量は、水性インク組成物で形成された塗膜を十分に着色させる観点から、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、均一な塗膜を形成させる観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
本発明の水性インク組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲内で成膜助剤が含まれていてもよい。成膜助剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトールアセテート、2−エチルヘキシルジグリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの成膜助剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂エマルションに含まれている不揮発分と非水溶性硬化性化合物との合計量100質量部あたりの成膜助剤の量は、本発明の水性インク組成物から形成された塗膜の耐殺傷性を向上させるとともに環境に対する負荷を小さくする観点から、好ましくは5〜30質量部である。
また、本発明の水性インク組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、前記(メタ)アクリル系樹脂エマルションに用いられる(メタ)アクリル系樹脂以外の他の水溶性樹脂、水分散性樹脂などの樹脂が含まれていてもよい。また、本発明の水性インク組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、紫外線吸収剤、紫外線防止剤、充填剤、レベリング剤、表面調整剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、染料、酸化防止剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。
なお、本発明の水性インク組成物における揮発性有機化合物の含有率は、環境に対する負荷を軽減する観点から、1質量%以下であることが好ましい。また、本発明の水性インク組成物における不揮発分量(不揮発分含有率)は、生産性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、塗膜の形成性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。本発明の水性インク組成物における不揮発分量は、溶媒量や添加剤量などを調整することによって容易に調節することができる。
本発明においては、例えば、インクジェット記録装置などを用いて本発明の水性インク組成物を記録媒体上に所定のパターンで吐出することにより、所定のパターンを有する塗膜(画像)を形成することができる。
記録媒体としては、例えば、紙をはじめ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの樹脂フィルムが積層された紙、アルミニウム、亜鉛、銅などの金属板、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂などの樹脂フィルム、金属被膜を有する紙、金属被膜を有する樹脂フィルムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、本発明においては、例えば、インクジェット記録装置などを用いて本発明の水性インク組成物を綿などの天然繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維などの合成繊維などからなる布帛などの繊維製品に捺染することにより、所望のデザインを当該繊維製品に付与することができる。
また、本発明においては、本発明の水性インク組成物をインラインコート法で樹脂フィルム上に塗布することにより、所望の性質を樹脂フィルムに付与することができる。前記樹脂フィルムには、例えば、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムなどの樹脂フィルムを用いることができる。未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムに本発明の水性インク組成物からなる塗膜を形成させる場合には、例えば、溶融押出しすることによって得られた未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムにインラインコートし、引き続いて延伸処理および熱処理を施すインラインコート法を採用することができる。前記樹脂フィルムとして、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムを用いる場合には、本発明の水性インク組成物からなる塗膜を硬化させる時期は、未延伸フィルムを延伸させる前であってもよく、あるいは一軸延伸または二軸延伸させた後であってもよい。
次に、本発明の水性インク組成物で形成された塗膜を硬化させることにより、所定形状を有する画像を形成させることができる。塗膜を硬化させる方法としては、例えば、紫外線、電子線などを照射することにより、塗膜を硬化させる方法、塗膜を加熱することにより、塗膜を硬化させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の水性インク組成物を紫外線の照射によって硬化させる場合、紫外線を発生させる光源の種類、光源と水性インク組成物との距離などの条件によっても異なるが、波長1900〜4500オングストロームの波長領域を有する光源を用い、数秒間〜数分間程度の間、紫外線を水性インク組成物に照射することにより、水性インク組成物を硬化させることができる。
本発明の水性インク組成物を電子線の照射によって硬化させる場合、当該水性インク組成物に適した加速電圧で吸収線が1〜20Mrad程度となるように電子線を水性インク組成物に照射することにより、水性インク組成物を硬化させることができる。電子線の照射は、大気中で行なってもよいが、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で行なうことが好ましい。
本発明の水性インク組成物に紫外線または電子線を照射することによって水性インク組成物を硬化させたとき、当該水性インク組成物は、熱履歴をほとんど受けないという利点がある。なお、本発明の水性インク組成物に紫外線または電子線を照射した後には、必要に応じて本発明の目的が阻害されない範囲内で当該水性インク組成物を加熱することにより、硬化を促進させてもよい。
本発明の水性インク組成物を加熱によって硬化させる場合、機内温度が50〜200℃、好ましくは100〜180℃の乾燥機内で水性インク組成物を0.5〜60分間程度、好ましくは5〜20分間程度加熱することにより、水性インク組成物を硬化させることができる。乾燥機としては、例えば、ジェットオーブン、熱風乾燥機などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、水性インク組成物を加熱する際には、必要により、予備加熱を行なってもよい。
以上のようにして得られる本発明の水性インク組成物は、保存安定性に優れ、本発明の水性インク組成物を用いて形成された塗膜は、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性に総合的に優れている。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
製造例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040gを仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290g、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120g、n−ブチルアクリレート200g、エチルアクリレート200g、メチルメタクリレート580gおよびアクリル酸20gからなる滴下用プレエマルションを調製した。そのうち単量体成分の総量の6質量%にあたる85gをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43gをフラスコ内に添加し、重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43gおよび2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40gを240分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。滴下終了後、80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを9に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、不揮発分濃度が40質量%の(メタ)アクリル系樹脂エマルションA(樹脂の計算によるガラス転移温度:30℃)を得た。
製造例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040gを仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290g、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120g、n−ブチルアクリレート500g、2−エチルヘキシルアクリレート100g、エチルアクリレート100g、n−ブチルメタクリレート280gおよびアクリル酸20gからなる滴下用プレエマルションを調製した。そのうち単量体成分の総量の6質量%にあたる85gをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43gをフラスコ内に添加し、重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43gおよび2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40gを240分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。滴下終了後、80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを9に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、不揮発分濃度が40質量%の(メタ)アクリル系樹脂エマルションB(樹脂の計算によるガラス転移温度:−35℃)を得た。
製造例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040gを仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290g、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120g、n−ブチルアクリレート20g、エチルアクリレート20g、メチルメタクリレート800gおよびシクロヘキシルメタクリレート160gからなる滴下用プレエマルションを調製した。そのうち単量体成分の総量の6質量%にあたる85gをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43gをフラスコ内に添加し、重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43gおよび2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40gを240分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。滴下終了後、80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを9に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、不揮発分濃度が40質量%の(メタ)アクリル系樹脂エマルションC(樹脂の計算によるガラス転移温度:89℃)を得た。
製造例4
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040gを仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290g、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120g、n−ブチルアクリレート200g、エチルアクリレート200g、メチルメタクリレート580g、アクリル酸20gおよび連鎖移動剤としてβ−メルカプトプロピオン酸30gからなる滴下用プレエマルションを調製した。そのうち単量体成分の総量の6質量%にあたる85gをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43gをフラスコ内に添加し、重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43gおよび2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40gを240分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。滴下終了後、80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを9に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、(メタ)アクリル系樹脂エマルションAに含まれる樹脂よりも連鎖移動剤によって低分子量化された樹脂を含有し、不揮発分濃度が40質量%の(メタ)アクリル系樹脂エマルションD(樹脂の計算によるガラス転移温度:30℃)を得た。
調製例1
製造例1で得られた樹脂エマルションA2500gに、非水溶性硬化性化合物としてエチレングリコールジメタクリレート〔共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルEG〕500gおよびトリメチロールプロパントリアクリレート〔新中村化学工業(株)製、商品名:A−TMPT〕500gを添加し、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LucirinTPO)100gを添加し、さらに脱イオン水を添加することによって不揮発分濃度が40質量%の非水溶性硬化性化合物の分散液Aを得た。得られた非水溶性硬化性化合物の分散液Aにおいて、樹脂エマルションAの不揮発分と非水溶性硬化性化合物との質量比(樹脂エマルションAの不揮発分/非水溶性硬化性化合物)は、50/50であった。
調製例2
製造例1で得られた樹脂エマルションA2500gに、非水溶性硬化性化合物としてエチレングリコールジメタクリレート〔共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルEG〕500gおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SARTOMER社製、商品名:DPHA)500gを添加し、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LucirinTPO)100gを添加し、さらに脱イオン水を添加することによって不揮発分濃度が40質量%の非水溶性硬化性化合物の分散液Bを得た。得られた非水溶性硬化性化合物の分散液Bにおいて、樹脂エマルションAの不揮発分と非水溶性硬化性化合物との質量比(樹脂エマルションAの不揮発分/非水溶性硬化性化合物)は、50/50であった。
調製例3
製造例1で得られた樹脂エマルションA2500gに、非水溶性硬化性化合物としてエチレングリコールジメタクリレート〔共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルEG〕250gおよびトリメチロールプロパントリアクリレート〔新中村化学工業(株)製、商品名:A−TMPT〕250gを添加し、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LucirinTPO)100gを添加し、さらに脱イオン水を添加することによって不揮発分濃度が40質量%の非水溶性硬化性化合物の分散液Cを得た。得られた非水溶性硬化性化合物の分散液Cにおいて、樹脂エマルションAの不揮発分と非水溶性硬化性化合物との質量比(樹脂エマルションAの不揮発分/非水溶性硬化性化合物)は、67/33であった。
調製例4
製造例1で得られた樹脂エマルションA2500gに、非水溶性硬化性化合物としてウレタンアクリレート〔新中村化学工業(株)製、品番:U−6LPA、分子量:1200〕1000gを添加し、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LucirinTPO)100gを添加し、成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕500gを添加し、さらに脱イオン水を添加することによって不揮発分濃度が40質量%の非水溶性硬化性化合物の分散液Dを得た。得られた非水溶性硬化性化合物の分散液Dにおいて、樹脂エマルションAの不揮発分と非水溶性硬化性化合物との質量比(樹脂エマルションAの不揮発分/非水溶性硬化性化合物)は、50/50であった。
調製例5
製造例2で得られた樹脂エマルションB2500gに、非水溶性硬化性化合物としてエチレングリコールジメタクリレート〔共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルEG〕100gを添加し、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LucirinTPO)100gを添加し、さらに脱イオン水を添加することによって不揮発分濃度が40質量%の非水溶性硬化性化合物の分散液Eを得た。得られた非水溶性硬化性化合物の分散液Eにおいて、樹脂エマルションBの不揮発分と非水溶性硬化性化合物との質量比(樹脂エマルションBの不揮発分/非水溶性硬化性化合物)は、91/9であった。
調製例6
製造例3で得られた樹脂エマルションC2500gに、非水溶性硬化性化合物としてエチレングリコールジメタクリレート〔共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルEG〕1000gおよびトリメチロールプロパントリアクリレート〔新中村化学工業(株)製、商品名:A−TMPT〕2000g、水溶性硬化性化合物としてポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート〔SARTOMER社製、品番:SR252、分子量:770〕1000gを添加し、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LucirinTPO)100gを添加し、さらに脱イオン水を添加することによって不揮発分濃度が40質量%の非水溶性硬化性化合物を含有する分散液Fを得た。得られた非水溶性硬化性化合物を含有する分散液Fにおいて、樹脂エマルションCの不揮発分と非水溶性硬化性化合物との質量比(樹脂エマルションCの不揮発分/非水溶性硬化性化合物)は、40/60であった。
調製例7
製造例4で得られた樹脂エマルションD2500gに、非水溶性硬化性化合物としてエチレングリコールジメタクリレート〔共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルEG〕500gおよびトリメチロールプロパントリアクリレート〔新中村化学工業(株)製、商品名:A−TMPT〕500gを添加し、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LucirinTPO)100gを添加し、さらに脱イオン水を添加することによって不揮発分濃度が40質量%の非水溶性硬化性化合物の分散液Gを得た。得られた非水溶性硬化性化合物の分散液Gにおいて、樹脂エマルションDの不揮発分と非水溶性硬化性化合物との質量比(樹脂エマルションDの不揮発分/非水溶性硬化性化合物)は、50/50であった。
調製例8
製造例3で得られた樹脂エマルションC2500gに、非水溶性硬化性化合物としてエチレングリコールジメタクリレート〔共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルEG〕250gおよびトリメチロールプロパントリアクリレート〔新中村化学工業(株)製、商品名:A−TMPT〕250gを添加し、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LucirinTPO)100gを添加し、さらに脱イオン水を添加することによって不揮発分濃度が40質量%の非水溶性硬化性化合物の分散液Hを得た。得られた非水溶性硬化性化合物の分散液Hにおいて、樹脂エマルションCの不揮発分と非水溶性硬化性化合物との質量比(樹脂エマルションCの不揮発分/非水溶性硬化性化合物)は、67/33であった。
調製例9
脱イオン水3125gとアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕500gとの混合溶液に、撹拌下で非水溶性硬化性化合物としてウレタンアクリレート〔新中村化学工業(株)製、品番:U−6LPA、分子量:1200〕1000gおよび重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LucirinTPO)100gを添加することによって不揮発分濃度が40質量%の非水溶性硬化性化合物の分散液Iを得た。
調製例10
製造例1で得られた樹脂エマルションA2500gおよび成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕1000gの混合物を非水溶性硬化性化合物の分散液Jとして用いた。
調製例11
製造例1で得られた樹脂エマルションA2500gに水溶性硬化性化合物としてポリエチレングリコール(400)ジアクリレート〔SARTOMER社製、品番:SR344〕1000gを添加し、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LucirinTPO)100gを添加し、さらに脱イオン水を添加することによって不揮発分濃度が40質量%の水溶性硬化性化合物の分散液Kを得た。得られた水溶性硬化性化合物の分散液Kにおいて、樹脂エマルションAの不揮発分と水溶性硬化性化合物との質量比(樹脂エマルションAの不揮発分/水溶性硬化性化合物)は、50/50であった。
実施例1〜8および比較例1〜3
各調製例で得られた非水溶性硬化性化合物の分散液100質量部あたり顔料分散液〔オリヱント化学工業(株)製、商品名:BONJET BLACK CW−1、顔料の含有率:15質量%〕20質量部の割合で、各非水溶性硬化性化合物の分散液と顔料分散液とを混合することにより、それぞれ水性インク組成物を調製した。なお、各実施例および各比較例で使用した非水溶性硬化性化合物の分散液の種類(記号)は、表1に示すとおりである。
前記で得られた水性インク組成物の最低造膜温度(MFT)を以下の方法で測定した。その結果を表1の「MFT」の欄に示す。
〔最低造膜温度(MFT)の測定方法〕
MFTテスター〔テスター産業(株)製、品番:TP−801 LT〕を用い、MFTテスター上に置いたガラス基板の上に、水性インク組成物をアプリケーターで塗布し、MFTテスターによってガラス基板を加熱して塗膜を、10〜100℃の温度範囲で4cm間隔ごとに5℃ずつ温度勾配をつけて加熱し、良好に造膜したときの温度のうち最も低い温度を水性インク組成物の最低造膜温度とした。
次に、各実施例および各比較例で得られた水性インク組成物の物性として、保存安定性、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性を以下の方法に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
なお、実施例8で得られた水性インク組成物のMFTは50℃であり、室温では造膜しないことから、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性の各物性を調べる際には、各基材に水性インク組成物を塗布し、当該基材をオーブンに入れ、80℃で3分間保持することによって造膜させた後、各物性を評価した。
〔保存安定性〕
水性インク組成物を50℃の雰囲気中で静置し、当該水性インク組成物の外観の経時変化を目視によって観察し、以下の評価基準に基づいて保存安定性を評価した。
(評価基準)
5:3カ月経過しても沈降物の発生などの水性インク組成物に変化が認められない。
4:1カ月以上経過しても沈降物の発生などの水性インク組成物に変化が認められないが、3カ月経過後に沈降物の発生などの水性インク組成物に変化が認められる。
3:10日間以上経過しても沈降物の発生などの水性インク組成物に変化が認められないが、1カ月間経過後に沈降物の発生などの水性インク組成物に変化が認められる。
2:10日間経過した時点で水性インク組成物を観察したときに、沈降物が僅かに発生していることが認められる。
1:10日間経過した時点で水性インク組成物を観察したときに、沈降物が明らかに発生していることが認められる。
〔カール防止性〕
A4サイズのPPC用紙(リボンスタンダード)に、バーコータ(No.4)で水性インク組成物を塗布し、塗膜を形成させた。形成された塗膜に紫外線照射ランプ(高圧水銀ランプ、積算光量500mJ/cm2)で紫外線を照射することにより、塗膜を硬化させた。なお、比較例2では、水性インク組成物には非水溶性硬化性化合物が含まれていないので、紫外線を照射しなかった。
次に、塗膜を硬化させたPPC用紙を縦100mm、横100mmの大きさに切り出し、得られた試験片を平滑な平面を有する水平台上に静置した後、当該水平台の表面から試験片の四隅までの高さ4点を測定し、それらの値から平均値を求め、以下の評価基準に基づいてカール防止性を評価した。
(評価基準)
5:平均値が0mm以上15mm未満
4:平均値が15mm以上20mm未満
3:平均値が25mm以上30mm未満
2:平均値が30mm以上35mm未満
1:平均値が35mm以上であるか、またはカールにより前記高さの測定が不可能
0:塗膜が形成されない。
〔耐擦傷性〕
A4サイズのPPC用紙(リボンスタンダード)に、バーコータ(No.4)で水性インク組成物を塗布し、塗膜を形成させた。形成された塗膜に紫外線照射ランプ(高圧水銀ランプ、積算光量500mJ/cm2)で紫外線を照射することにより、塗膜を硬化させた。なお、比較例2では、水性インク組成物には非水溶性硬化性化合物が含まれていないので、紫外線を照射しなかった。
次に、形成された硬化塗膜の表面を乾燥したガーゼで約10cmの擦り幅で10回擦り、その表面を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて耐擦傷性を評価した。
(評価基準)
5:ガーゼにまったく色移りがなく、塗膜の劣化が認められない。
4:ガーゼに僅かに色移りが見られるが、塗膜の劣化が認められない。
3:ガーゼに僅かに色移りが見られ、塗膜の劣化が僅かに認められる。
2:ガーゼに色移りが見られ、塗膜の劣化が認められる。
1:ガーゼに色移りが見られ、塗膜の劣化により基材(PPC用紙)が見える。
0:塗膜が形成されない。
〔耐水性〕
ポリエステルフィルム〔東洋紡(株)製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ:100μm〕に、バーコータ(No.11)で水性インク組成物を塗布し、塗膜を形成させた。形成された塗膜に紫外線照射ランプ(高圧水銀ランプ、積算光量500mJ/cm2)で紫外線を照射することにより、塗膜を硬化させた。なお、比較例2では、水性インク組成物には非水溶性硬化性化合物が含まれていないので、紫外線を照射しなかった。
次に、塗膜を硬化させたポリエステルフィルム(以下、PETフィルムという)を縦100mm、横100mmの大きさに切り出し、25℃の脱イオン水中に浸漬し、1週間経過後にPETフィルムを水中から取り出し、PETフィルムの質量を測定し、式:
[吸水率(質量%)]
={[浸漬後のPETフィルムの質量−浸漬前のPETフィルムの質量]
÷[浸漬前のPETフィルムの質量]}×100
に基づいて吸水率を求め、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
(評価基準)
5:吸水率が0.5質量%未満
4:吸水率が0.5質量%以上%未満
3:吸水率が1質量%以上3質量%未満
2:吸水率が3質量%以上5質量%未満
1:吸水率が5質量%以上
0:塗膜が形成されない。
〔耐候性〕
ガラス基材〔日本テストパネル(株)製〕にバーコータ(No.11)で水性インク組成物を塗布し、塗膜を形成させた。形成された塗膜に紫外線照射ランプ(高圧水銀ランプ、積算光量500mJ/cm2)で紫外線を照射することにより、塗膜を硬化させた。なお、比較例2では、水性インク組成物には非水溶性硬化性化合物が含まれていないので、紫外線を照射しなかった。形成された硬化塗膜の表面における色差(L0、a0、b0)を色差計〔日本電色工業(株)製、商品名:分光式色差計SE−2000〕で測定した。
次に、以下の耐候性試験の試験条件で500時間耐候性試験を行ない、水性インク組成物が塗布された面における色差(L1、a1、b1)を前記色差計で測定した。
(耐候性試験の試験条件)
・試験機:メタルウェザー〔ダイプラ・ウィンテス(株)製、品番:KU−R4〕
・照射:気温55℃で相対湿度50%の雰囲気中で4時間照射(照射強度:80mW/cm2
・湿潤:気温35℃で相対湿度98%の雰囲気中で4時間放置
・シャワー:湿潤前後に各30秒間
次に、色差(L、a、b)からの色差(L、a、b)の変化値(ΔE)を式:
ΔE=[(L−L)2+(a−a)2+(b−b)21/2
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
5:ΔEが0.8未満
4:ΔEが0.8以上2.5未満
3:ΔEが2.5以上3.0未満
2:ΔEが3.0以上4.0未満
1:ΔEが4.0以上
0:塗膜が形成されない。
なお、各物性の評価のうち1つでも「0」または「1」の評価が存在するものは、「不合格」であると判断される。
Figure 2015057455
表1に示された結果から、各実施例で得られた水性インク組成物は、いずれも、保存安定性に優れ、カール防止性、耐擦傷性、耐水性および耐候性に総合的に優れた塗膜を形成する水性インク組成物であることがわかる。
本発明の水性インク組成物は、例えば、紙、樹脂シートないし樹脂フィルム、金属板、木材板、革などの材料からなる基材に対し、インクジェット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、リソグラフ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクリボンなどによって所望の文字などの情報、模様、色などを形成し、基材に意匠性、耐擦傷性、耐水性、耐候性などを付与する際の印刷インクなどの産業用インクに好適に使用することができる。

Claims (1)

  1. 乳化重合によって得られた(メタ)アクリル系樹脂エマルションを必須成分として含有する水性インク組成物であって、さらに非水溶性硬化性単量体および非水溶性硬化性オリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の非水溶性硬化性化合物を含有することを特徴とする水性インク組成物。
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