本発明の被膜形成用材料は、前記したように、被膜を形成させる際に用いられる被膜形成用材料であり、(メタ)アクリル系樹脂エマルションおよび硬化性単量体成分を含有することを特徴とする。
(メタ)アクリル系樹脂エマルションは、当該(メタ)アクリル系樹脂エマルションの原料である単量体成分に(メタ)アクリル系単量体が必須成分として含有されているものを意味する。
なお、本願明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。また、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸またはその塩、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、窒素原子含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド化合物、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アラルキル(メタ)アクリレート、オキソ基含有(メタ)アクリレート、フッ素原子含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、カルボニル基含有(メタ)アクリレート、シラン基含有(メタ)アクリル系単量体、アジリジニル基含有(メタ)アクリル系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸は、具体的には、アクリル酸またはメタクリル酸を意味するが、アクリル酸およびメタクリル酸は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸ナトリウム塩、(メタ)アクリル酸カリウム塩などの(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸塩は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
カルボキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシル基末端カプロラクトン変性(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
オキソ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのエステル基にフッ素原子を有するフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル、オキソシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボニル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
シラン基含有(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アジリジニル基含有(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系単量体のなかでは、引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を向上させる観点から、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル系単量体が好ましく、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸がより好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
単量体成分には、前記(メタ)アクリル系単量体以外に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の単量体が含まれていてもよい。
(メタ)アクリル系単量体以外の他の単量体としては、例えば、芳香族系単量体、(メタ)アクリル系単量体以外のカルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル系単量体以外の窒素原子含有単量体、(メタ)アクリル系単量体以外のエポキシ基含有単量体、(メタ)アクリル系単量体以外のシラン基含有単量体、(メタ)アクリル系単量体以外のカルボニル基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレンおよびその誘導体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレンおよびその誘導体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−エトキシスチレン、m−エトキシスチレン、p−エトキシスチレン、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−アセトキシスチレン、m−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、o−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、o−tert−メチルスチレン、m−tert−メチルスチレン、p−tert−メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレンおよびその誘導体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。
(メタ)アクリル系単量体以外のカルボキシル基含有単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、ビニル安息香酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系単量体以外の窒素原子含有単量体としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルメチルカルバメート、N,N−メチルビニルアセトアミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系単量体以外のエポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジルアリルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
(メタ)アクリル系単量体以外のシラン基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系単量体以外のカルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、本発明においては、エマルション粒子に紫外線安定性や紫外線吸収性を付与する観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、紫外線安定性単量体、紫外線吸収性単量体などを単量体成分に含有させてもよい。
紫外線安定性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
紫外線吸収性単量体としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル]−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
樹脂エマルションは、例えば、単量体成分を乳化重合させる方法によって製造することができるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。単量体成分を乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、撹拌下で単量体成分および重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水または水性媒体中に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。媒体は、あらかじめ反応容器に仕込んでおいてもよく、あるいはプレエマルションとして使用してもよい。また、媒体は、必要により、単量体成分を乳化重合させ、樹脂エマルションを製造しているときに用いてもよい。
単量体成分を乳化重合させる際には、単量体成分、乳化剤および媒体を混合した後に乳化重合を行なってもよく、単量体成分、乳化剤および媒体を撹拌することによって乳化させ、プレエマルションを調製した後に乳化重合を行なってもよく、あるいは単量体成分、乳化剤および媒体のうちの少なくとも1種類とその残部のプレエマルションとを混合して乳化重合を行なってもよい。単量体成分、乳化剤および媒体は、それぞれ一括添加してもよく、分割添加してもよく、あるいは連続滴下してもよい。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子上に外層を形成させる場合には、前記樹脂エマルション中で前記と同様にして単量体成分を乳化重合させることにより、前記エマルション粒子上に外層を形成させることができる。また、前記外層が形成されたエマルション粒子上にさらに外層を形成させる場合には、前記と同様にして樹脂エマルション中で単量体成分を乳化重合させることにより、前記エマルション粒子上にさらに外層を形成させることができる。このように多段乳化重合法により、多層構造を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションを調製することができる。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩;ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホネート塩、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩などのアリル基を有する硫酸エステルまたはその塩;アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレンの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合物、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種以上を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、乳化剤として、成形体の耐水性を向上させる観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
乳化剤の量は、単量体成分100質量部あたり、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、成形体の耐水性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。重合開始剤は、溶媒に溶解させた溶液として用いてもよい。
重合開始剤の量は、単量体成分100質量部あたり、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、成形体の耐水性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、エマルション粒子の重量平均分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤の量は、エマルション粒子の重量平均分子量を調整する観点から、単量体成分100質量部あたり、0.01〜10質量部であることが好ましい。
反応系内には、必要により、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜5質量部程度、より好ましくは0.1〜3質量部程度である。
単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合反応の効率を高める観点から、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは0〜100℃、より好ましくは40〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分を乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜8時間程度である。
なお、単量体成分を乳化重合させるとき、得られる重合体が有する酸性基の一部または全部が中和剤で中和されるようにしてもよい。中和剤は、最終段で単量体成分を添加した後に使用してもよく、例えば、1段目の重合反応と2段目の重合反応との間に使用してもよく、初期の乳化重合反応の終了時に使用してもよい。
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸化物;アンモニア、モノメチルアミンなどの有機アミンなどのアルカリ性物質が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤のなかでは、成形体の耐水性を向上させる観点から、アンモニアなどの揮発性を有するアルカリ性物質が好ましい。
また、単量体成分を乳化重合させるとき、成形体の耐水性を向上させる観点から、シランカップリング剤を適量で用いてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などの重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
以上のようにして単量体成分を乳化重合させることにより、樹脂エマルションが得られる。樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、1段の乳化重合によって調製された1種類の重合体のみで構成されていてもよい。
エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度は、耐候性を向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、より一層好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、成形性を向上させる観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
なお、エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度は、その重合体の原料として用いられる単量体成分に含まれている単量体からなる単独重合体のガラス転移温度(Tg)(絶対温度:K)と単量体の質量分率から、式(I):
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・+Wn/Tgn (I)
〔式中、Tgは、求めようとしている重合体のガラス転移温度(K)、W1、W2、W3・・・・Wnは、それぞれ各単量体の質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・・Tgnは、それぞれ各単量体の質量分率に対応する単量体からなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求めることができる。なお、重合体のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定装置)、DTA(示差熱分析装置)、TMA(熱機械測定装置)によって測定することもできる。
本明細書においては、エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度は、特に断りがない限り、式(I)に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。例えば、多層構造を有するエマルション粒子を構成する重合体全体のガラス転移温度は、多段乳化重合の際に用いられたすべての単量体成分における各単量体の質量分率とこれに対応する単量体の単独重合体のガラス転移温度から求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10%以下である場合、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10%を超える場合には、重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などによって求められる。
このエマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度を考慮して、当該エマルション粒子を構成する重合体の原料として用いられる単量体成分の組成を決定することができる。
単独重合体のガラス転移温度は、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、イソボルニルメタクリレートの単独重合体では180℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、n−ブチルメタクリレートの単独重合体では20℃、n−ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、アクリル酸の単独重合体では95℃である。
エマルション粒子を構成する重合体は、架橋構造を有していてもよい。エマルション粒子を構成する重合体の重量平均分子量は、重合体が架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、成形体の硬度を高める観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、成形性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、前記重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは70nm以上、より好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、成形体の表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは450nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは350nm以下である。
本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、樹脂エマルションを蒸留水で希釈し、得られた希釈液約10mLをガラスセルに採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器〔パーティクル サイジング システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOM P Model 380〕を用い、ウインドウズベースのソフトウェア〔Windows(登録商標) Based Software〕を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
本発明の被膜形成用材料は、前記のようにして調製された(メタ)アクリル系樹脂エマルションおよび硬化性単量体成分を混合することによって容易に調製することができる。
なお、本明細書において、硬化性単量体成分は、硬化性官能基を有する硬化性単量体を含有する単量体成分を意味する。硬化性単量体成分は、官能基の数が2〜15である多官能の硬化性単量体を含有することが好ましい。
硬化性単量体としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が3〜8のアルキルジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの硬化性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。硬化性単量体は、それらのなかから成形体の硬度、成形性などの所望の性質の向上に適するものを適宜選択して用いることが好ましい。
硬化性単量体成分は、成形体の耐擦傷性を向上させる観点から、分子量が好ましくは100〜2000、より好ましくは100〜1800である特定分子量を有する硬化性単量体を含有することが好ましい。硬化性単量体成分における前記特定分子量を有する硬化性単量体の含有率は、成形体の耐擦傷性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、その上限値は100質量%であればよい。
なお、硬化性単量体成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、硬化性単量体以外の単量体が含まれていてもよい。硬化性単量体以外の単量体としては、例えば、前記(メタ)アクリル系単量体、前記芳香族系単量体、前記カルボキシル基含有単量体、前記窒素原子含有単量体、前記エポキシ基含有単量体、前記シラン基含有単量体、前記カルボニル基含有単量体、前記紫外線安定性単量体、前記紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明の被膜形成用材料の全不揮発分における硬化性単量体成分の含有率は、成形体の耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、成形性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
本発明の被膜形成用材料には、さらに重合開始剤を含有させることができる。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。なお、光重合開始剤のなかには熱重合開始剤として作用するものがあり、また、熱重合開始剤のなかには光重合開始剤として作用するものがあるので、両性質を有するものは、光照射または加熱により、被膜形成用材料を硬化させることができる。重合開始剤のなかでは、成形体の成形時における引張り伸びを向上させる観点から、光重合開始剤が好ましい。
熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、1、1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの油溶性開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素などの水溶性過酸化物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などの水溶性アゾ化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの熱重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、オキシフェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシフェニルアセチックアシッド2−[2−ヒドロキシエトキシ]−エチルエステル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルホリノプロパン−1−オン、2−モルホリノプロパン−1−オン、ヨードニウム,(4−メチルフェニル[4−(2−メチルプロピル)フェニル])−ヘキサフルオロフォスフェート、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤は、例えば、(メタ)アクリル系樹脂エマルションと混合して用いてもよく、あるいは硬化性単量体成分と混合して用いてもよい。
本発明の被膜形成用材料には硬化性単量体成分が用いられているので、本発明の被膜形成用材料の最低造膜温度は、当該硬化性単量体成分が用いられていない被膜形成用材料よりも低い。本発明の被膜形成用材料の最低造膜温度は、通常、0〜60℃であるので、成形性に優れている。本発明の被膜形成用材料の最低造膜温度は、エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度、硬化性単量体成分の種類および量を調整することによって容易に調節することができる。
本発明の被膜形成用材料の最低造膜温度は、適当な温度勾配を有する平板の上に帯状に本発明の被膜形成用材料に用いられている樹脂エマルションを塗布したときの造膜した部分と造膜していない部分との境界温度を意味し、「亀裂のない均一な成形体が形成されるときの最低温度」と定義される。最低造膜温度は、例えば、JIS K6828−2(2003)に準じて測定することができる。より具体的には、本発明では、MFTテスター〔テスター産業(株)製、品番:TP−801 LT〕を用い、ステンレス鋼製の溝なし平板上に厚さが250μmである成形体をアプリケーターで形成させ、亀裂のない均一な成形体が形成されるときの最低温度(℃)を測定する。成形体の亀裂の有無は、JIS K6828−2に準じて目視で判定することができる。なお、被膜形成用材料の最低造膜温度が0℃以下である場合には、当該被膜形成用材料の最低造膜温度は0℃であるとみなす。
本発明の被膜形成用材料における不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、成形性または取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。本発明の被膜形成用材料における不揮発分量は、分散媒(溶媒)量や添加剤量などを調整することによって容易に調節することができる。また、本発明の被膜形成用材料における揮発性有機化合物の含有量は、環境に対する負荷を軽減する観点から、できるだけ少ないことが好ましい。
なお、本明細書において、被膜形成用材料における不揮発分量は、被膜形成用材料1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔被膜形成用材料における不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔被膜形成用材料1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
本発明の被膜形成用材料には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、前記樹脂エマルション以外の他の樹脂エマルションが含まれていてもよい。また、本発明の被膜形成用材料には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、紫外線吸収剤、紫外線防止剤、充填剤、レベリング剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、染料、酸化防止剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。
本発明の被膜形成用材料は、例えば、成形用フィルムなどとして用いることができる。この成形用フィルムは、本発明の被膜形成用材料で構成されているので、引張り伸びに優れている。成形用フィルムの厚さは、その用途などによって異なるので一概には決定することができないため、当該用途などに応じて適宜決定することが好ましいが、通常、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜50μm程度である。成形用フィルムを製造する方法としては、例えば、押し出し成形法、キャスティング法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、成形用フィルムは、例えば、アクリル樹脂フィルムなどの樹脂フィルムに対する密着性に優れているので、プライマーなどを用いなくても樹脂フィルムに密着させることができる。したがって、成形用フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも一方表面に積層することにより、積層フィルムの形態で用いることができる。
樹脂フィルムに用いられる樹脂としては、例えば、ラクトン環構造、グルタルイミド環構造、無水グルタル酸構造などの環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル系重合体、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。樹脂フィルムの厚さは、特に制限されないが、取扱い性および加工性を向上させる観点から、30〜200μm程度であることが好ましい。
樹脂フィルムには、必要により、表面処理を施してもよい。例えば、樹脂フィルムに離型性を付与する場合には、当該樹脂フィルムに離型性を有する樹脂層を形成させることができる。離型性を有する樹脂層に用いられる樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
積層フィルムは、例えば、本発明の被膜形成用材料を樹脂フィルムに塗布した後、被膜形成用材料に含まれている分散媒(溶媒)を揮散除去し、成形用フィルムを樹脂フィルム上に形成させることによって製造することができる。被膜形成用材料を樹脂フィルムに塗布する方法としては、例えば、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、コンマコート法、グラビアコート法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。樹脂フィルムの表面上に形成される被膜形成用材料層の厚さは、特に限定されないが、通常、好ましくは0.1〜50μm程度、より好ましくは1〜30μm程度である。
なお、積層フィルムにおいて、樹脂フィルムの少なくとも一方表面に成形用フィルムが積層されているが、樹脂フィルムと成形用フィルムとの間には他の層が介在していてもよい。当該他の層としては、例えば、所望の情報を与えるための文字、図形、模様などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、積層フィルムに積層されている成形用フィルムの表面には、例えば、「モスアイ構造」に代表されるナノメートルレベルの微細な凹凸パターンを形成させることができる。「モスアイ構造」は、一般に、凹凸パターンの周期が可視光線の波長以下、すなわち、数十〜数百ナノメートルである構造を有する。したがって、成形用フィルムの表面に「モスアイ構造」を形成させた場合には、成形用フィルムの表面に入射する光に対する屈折率を凹凸パターンの深さに沿って連続的に変化させることができるので、当該成形用フィルムの表面における光線の反射を低減させることができる。より具体的には、例えば、成形用フィルムの表面に「モスアイ構造」を形成させることにより、波長380〜780nmの範囲における視感反射率が1%以下、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である反射防止物品を得ることができる。このように反射防止物品の視感反射率が1%以下となるように調整した場合には、外光の映り込みを抑制することができるという利点がある。なお、視感反射率は、例えば、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
成形用フィルムの表面に「モスアイ構造」を形成させる方法としては、例えば、金型の表面に形成された凹凸パターンを成形用フィルムの表面に押しつけることにより、当該凹凸パターンの反転パターンを成形用フィルムの表面に転写させる方法、すなわち、いわゆる「ナノインプリント法」などが挙げられる。
「ナノインプリント法」としては、例えば、成形用フィルムを加熱することによって可塑化させ、金型の表面に形成された凹凸パターンを成形用フィルムの表面に押しつけることにより、当該凹凸パターンの反転パターンを成形用フィルムの表面に転写させる熱ナノインプリント法、被膜形成用材料を樹脂フィルムに塗布し、金型の表面に形成された凹凸パターンを成形用フィルムの表面に押しつけることにより、当該凹凸パターンの反転パターンを成形用フィルムの表面に転写させた後、当該被膜形成用材料に紫外線などの電磁波を照射し、当該被膜形成用材料を硬化させることにより、当該凹凸パターンの反転パターンを成形用フィルムの表面で固定させる電磁波(紫外線)ナノインプリント法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の被膜形成用材料を用いて成形体を製造する方法としては、例えば、インモールド成形、真空成形、圧空成形などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの成形方法で成形体を製造する際には、引張り伸びに優れていることから前記成形用フィルムまたは前記積層フィルムを好適に用いることができる。
例えば、成形用フィルムを用いてインモールド成形を行なった場合には、成形用フィルムと成形材料とが、直接的にまたは意匠層、印刷層、接着層などの層を介して一体化された積層フィルムを製造することができる。当該成形用フィルムは、引張り伸びに優れているので成形型の内面形状に対する追随性に優れていることから、所望の形状を有するように容易に成形することができる。また、成形用フィルムは、硬化させたとき、耐擦傷性および耐候性に優れているので、得られる成形体のハードコート層として利用することができる。
成形用フィルムまたは積層フィルムを用いてインモールド成形によって成形体を製造する場合には、成形型内に成形用フィルムまたは積層フィルムを配設し、成形型の型締めをした後、成形型に設けられているゲートを介して加熱溶融した成形材料を成形型内に射出し、当該成形用フィルムと成形型の内面との間隙に成形材料を充填した後、成形型を冷却することにより、成形体を製造することができる。得られた成形体が有する成形用フィルムまたは積層フィルムは、引張り伸びに優れているので、成形型の内面形状に追随するという優れた効果を発現する。また、成形用フィルムおよび積層フィルムは、硬化させたとき、耐擦傷性および耐候性に優れているので、得られる成形体のハードコート層として利用することができる。その際、成形用フィルムまたは積層フィルムにおいて、成形材料からなる成形物と接触する面に、所望の意匠からなる意匠層、文字などの情報を有する印刷層を形成させておいた場合には、当該成形用フィルムまたは積層フィルムは、これらの意匠層や印刷層の保護膜として利用することができる。
積層フィルムを用いてインモールド成形によって成形体を製造するとき、積層フィルムとして、成形用フィルムと離型性を有する樹脂フィルムとの積層フィルムを用い、当該成形用フィルムが成形材料と接触するように、成形型内に積層フィルムを配設し、成形型の型締めをした後、成形型に設けられているゲートを介して加熱溶融した成形材料を成形型内に射出し、積層フィルムと成形型の内面との間隙に成形材料を充填した後、成形型を冷却することにより、成形体を製造することができる。成形体の製造後は、型開きをすることによって成形体を取り出し、成形体から離型用樹脂フィルムを剥離させればよい。得られた成形体が有する成形用フィルムは、硬化させると優れた耐擦傷性を発現することから、ハードコート層として利用することができる。
成形用フィルムと樹脂フィルムとの積層フィルムを用いてインモールド成形によって成形体を製造するとき、積層フィルムが有する樹脂フィルムが成形材料と接触するように、成形型内に当該積層フィルムを配設し、成形型の型締めをした後、成形型に設けられているゲートを介して加熱溶融した成形材料を成形型内に射出し、積層フィルムと成形型の内面との間隙に成形材料を充填した後、成形型を冷却することにより、表面に成形用フィルムを有する成形体を製造することができる。得られた成形体は、樹脂フィルムを介して成形用フィルムと成形材料からなる成形物とが一体化されている。なお、樹脂フィルムの表面に所望の意匠からなる意匠層、文字などの情報を有する印刷層を形成させておいた場合には、成形用フィルムは、硬化させると優れた耐擦傷性を発現することから、これらの意匠層や印刷層の保護膜として利用することができる。また、樹脂フィルムとして接着性を有するものを用いた場合には、当該樹脂フィルムは、成形用フィルムと、成形材料からなる成形物とを接着させるための接着性フィルムとして利用することができる。
前記成形材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート、AS樹脂、ABS樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、前記成形材料を用いて成形された成形物の形状は、成形体の用途などに応じて適宜決定すればよい。例えば、当該成形物がフィルムである場合には、フィルムの厚さは、通常、30〜200μm程度であればよい。
本発明の被膜形成用材料、成形用フィルムおよび積層フィルムは、紫外線、電子線などの放射線の照射、加熱などによって硬化させることができる。
例えば、本発明の被膜形成用材料、成形用フィルムおよび積層フィルムを紫外線の照射によって硬化させる場合、紫外線を発生させる光源の種類、光源と被膜形成用材料との距離などの条件によっても異なるが、紫外線として波長1000〜5000オングストロームの紫外線を用い、数秒間〜数十秒間程度の間、紫外線を照射することにより、硬化させることができる。
また、本発明の被膜形成用材料、成形用フィルムおよび積層フィルムを電子線の照射によって硬化させる場合、当該硬化に適した加速電圧で吸収線が1〜20Mrad程度となるように電子線を照射することにより、硬化させることができる。電子線の照射は、大気中で行なってもよいが、窒素ガスなどの不活性ガス中で行なうことが好ましい。
本発明の被被膜形成用材料、成形用フィルムおよび積層フィルムを加熱によって硬化させる場合、機内温度が50〜200℃、好ましくは100〜180℃の乾燥機内で0.5〜60分間程度、好ましくは5〜20分間程度加熱することにより、硬化させることができる。乾燥機としては、例えば、ジェットオーブン、熱風乾燥機などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、被膜形成用材料、成形用フィルムおよび積層フィルムを加熱する際には、必要により、予備加熱を行なってもよい。
以上のようにして被膜形成用材料、成形用フィルムおよび積層フィルムを硬化させることによって成形体を製造することができるが、本発明においては、被膜形成用材料、成形用フィルムおよび積層フィルムを硬化させたものを用いて成形体を製造することもできる。
本発明の被膜形成用材料は、優れた引張り伸びを有するので、例えば、樹脂製品、金属製品などの成形体に耐擦傷性および耐候性に優れた被膜を形成する際に好適に使用することができる。また、本発明の成形用フィルムおよび当該成形用フィルムを有する積層フィルムは、携帯電話、パーソナルコンピュータ、自動車用部品などの筐体の加飾フィルムなどとして好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
製造例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部(質量部、以下同じ)を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%(質量%、以下同じ)水溶液120部、メチルメタクリレート800部、2−エチルヘキシルアクリレート90部、n−ブチルメタクリレート90部、メタクリル酸10部およびアクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の6質量%にあたる85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。その終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40%の重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれている重合体のガラス転移温度は70℃であった。
製造例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート900部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、n−ブチルメタクリレート70部、メタクリル酸10部およびアクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の6質量%にあたる85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水を添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40%の重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれている重合体のガラス転移温度は、94℃であった。
製造例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート380部、シクロヘキシルメタクリレート450部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、n−ブチルメタクリレート100部、メタクリル酸10部およびアクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の6質量%にあたる85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水を添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40%の重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれている重合体のガラス転移温度は、70℃であった。
製造例4
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート300部、イソボルニルメタクリレート640部、n−ブチルアクリレート40部、メタクリル酸10部およびアクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の6質量%にあたる85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水を添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40%の重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれている重合体のガラス転移温度は、136℃であった。
製造例5
撹拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた反応釜に、メチルメタクリレート40部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル10部、トルエン50部および酸化防止剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブ2112〕0.025部を仕込み、これに窒素ガスを通じながら105℃まで昇温させ、還流したところで、重合開始剤としてtert−アミルパーオキシイソノナノエート〔アトフィナ吉富(株)製、商品名:ルパゾール570〕0.05部を添加するとともに、tert−アミルパーオキシイソノナノエート0.10部を2時間かけて滴下しながら、還流下(温度:約105〜110℃)で溶液重合を行ない、さらに4時間かけて熟成を行なうことにより、重合体溶液を得た。
前記で得られた重合体溶液に、リン酸ステアリル〔堺化学工業(株)製、商品名:Phoslex A-18〕0.05部を添加し、還流下(温度:約90〜110℃)で2時間環化縮合反応を進行させた。
次に、240℃に加熱した多管式熱交換器に前記で環化縮合反応させることによって得られた重合体溶液を通すことにより、当該重合体溶液の環化縮合反応を完結させた後、この重合体溶液をバレル温度240℃、回転数120rpm、減圧度13.3〜400hPa、リアベント数1個、フォアベント数4個(上流から順に第1ベント、第2ベント、第3ベント、第4ベントと称し、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーを有する)のベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に樹脂量換算で20部/時間の処理速度で導入することにより、脱揮を行なった。そのとき、酸化防止剤〔BASF社製、商品名:Irganox1010〕50部、酸化防止剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-412s〕50部、硬化促進剤としてオクチル酸亜鉛〔日本化学産業(株)製、商品名:ニッカオクチクス亜鉛、有効成分含有率:3.6%〕40部をトルエン160部に溶解させることによって得られた溶液を、第2ベントの後から高圧ポンプを用いて0.3部/時間の投入速度でベントタイプスクリュー二軸押出機内に注入した。また、第1ベントの後およびサイドフィーダーの後から高圧ポンプを用いてイオン交換水をそれぞれ0.33部/時間の投入速度でベントタイプスクリュー二軸押出機内に注入した。また、サイドフィーダーからAS樹脂〔旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:スタイラックAS783L〕を2.12部/時間の供給速度でベントタイプスクリュー二軸押出機内に添加した。
ベントタイプスクリュー二軸押出機から押出された溶融混練物をリーフディスク型のポリマーフィルター〔長瀬産業(株)製、濾過精度:5μm〕で濾過した。この濾過された溶融混練物を脱揮することにより、熱可塑性アクリル系樹脂組成物のペレットを得た。前記で得られたペレットに含まれている熱可塑性アクリル系樹脂の重量平均分子量およびガラス転移温度を以下の方法に基づいて測定したところ、ガラス転移温度は125℃であり、重量平均分子量は132000であった。
〔ガラス転移温度〕
熱可塑性アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して求めた。より具体的には、示差走査熱量計〔(株)リガク製、品番:DSC−8230〕を用い、窒素ガス雰囲気中でサンプル約10mgを室温から200℃まで昇温速度20℃/分で昇温させ、得られたDSC曲線から始点法により算出した。なお、参照にはα−アルミナを用いた。
〔重量平均分子量〕
熱可塑性アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件で求めた。
・システム:東ソー(株)製、GPCシステムHLC-8220
・展開溶媒:クロロホルム〔和光純薬工業(株)製、特級〕、流量:0.6mL/分
・標準試料:TSK標準ポリスチレン〔東ソー(株)製、商品名:PS-オリゴマーキット〕
・測定側カラム構成:ガードカラム〔東ソー(株)製、商品名:TSKguardcolumn SuperHZ-L〕、分離カラム〔東ソー(株)製、商品名:TSKgel
SuperHZM-M〕2本直列接続
・リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム〔東ソー(株)製、商品名:TSKgel SuperH-RC〕
・カラム温度:40℃
・検出器:示差屈折計
前記で得られたペレットをリーフディスク型のポリマーフィルター〔長瀬産業(株)製、濾過精度:5μm〕を備えた単軸押出機を用いて280℃でTダイから溶融押出を行ない、110℃の冷却ロール上に吐出することにより、未延伸フィルムを得た。
前記で得られた未延伸フィルムを縦横ともに延伸倍率が2.0倍となるように逐次2軸延伸することにより、樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター〔(株)ミツトヨ製〕を用いて測定したところ50μmであり、ガラス転移温度は、前記熱可塑性アクリル系樹脂の重量平均分子量と同様にして測定したところ125℃であった。また、この樹脂フィルムの全光線透過率、面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthを以下の方法に基づいて測定したところ、全光線透過率は92.3%、面内位相差Reは1nm、厚さ方向の位相差Rthは2nmであった。
〔全光線透過率〕
樹脂フィルムの全光線透過率は、濁度計〔日本電色工業(株)製、品番:NDH-5000〕を用い、JIS K7361−1に準拠して測定した。
〔面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rth〕
波長400nm、589nmまたは750nmにおける樹脂フィルムの面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthは、大塚電子(株)製、品番:RETS-100を用いて測定した。
また、厚さ方向の方向位相差Rthは、アッベ屈折率計で測定した樹脂フィルムの平均屈折率、樹脂フィルムの厚さd、40°傾斜させて測定した樹脂フィルムの位相差[Re(40°)]、三次元屈折率として、樹脂フィルムの面内における遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率nyおよび樹脂フィルムの厚さ方向の屈折率nzの各値を得た後、式:
[厚さ方向位相差Rth(nm)]=[(nx+ny)/2−nz]×d
に基づいて求めた。
実施例1
製造例1で得られた重合体分散液2500部に、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン〔BASF社製、商品名:Irgacure
184〕25部および硬化性単量体として1,4−ブタンジオールジアクリレート(分子量:198)500部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体成分の含有率が33%である被膜形成用材料を得た。この被膜形成用材料に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された被膜形成用材料を得た。
前記で得られた被膜形成用材料をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:188μm)にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、室温で1時間放置した後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、成形用フィルムを形成させ、成形用フィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムとが積層された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた被膜形成用材料または積層フィルムを用いて、引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を以下の方法に基づいて評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
(1)引張り伸び
被膜形成用材料を離型処理が施された金型内に流し込み、室温で3日間乾燥させることにより、厚さが300μmの成形用フィルムを得た。次に、JIS K7127に準拠して前記成形用フィルムの引張り試験を行ない、破断時の伸びを求めて以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
5:破断時の伸びが300%以上
4:破断時の伸びが200%以上300%未満
3:破断時の伸びが100%以上200%未満
2:破断時の伸びが50%以上100%未満
1:破断時の伸びが50%未満
(2)耐擦傷性
積層フィルムを適当な大きさに裁断することによって試験片を作製した。染色堅ろう度試験機〔スガ試験機(株)製、品番:FR−II〕にてスチールウール〔日本スチールウール(株)製、番手:#0000〕に150g/cm2の荷重をかけて試験片の成形用フィルム面を20往復擦り、試験片の表面で発生した傷の本数を数え、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
5:傷なし
4:傷の数が1〜5本
3:傷の数が6〜10本
2:傷の数が11〜15本
1:傷の数が16本以上
(3)耐候性
積層フィルムを製造する際に、当該積層フィルムに形成されているポリエチレンテレフタレートフィルムを白アクリル樹脂板〔日本テストパネル(株)製、厚さ:3mm〕に変更し、乾燥後の塗膜の厚さが20μmとなるように被膜形成用材料を塗布することにより、試験片を作製した。試験片の成形用材料が塗布された面における色差(L0、a0、b0)を色差計〔日本電色工業(株)製、商品名:分光式色差計SE−2000〕で測定した。さらに、以下の耐候性試験の試験条件で600時間耐候性試験を行ない、成形用材料が塗布された面における色差(L1、a1、b1)を前記色差計で測定した。
(耐候性試験の試験条件)
・試験機:メタルウェザー〔ダイプラ・ウィンテス(株)製、品番:KU−R4〕
・照射:気温55℃で相対湿度50%の雰囲気中で4時間照射(照射強度:80mW/cm2)
・湿潤:気温35℃で相対湿度98%の雰囲気中で4時間放置
・シャワー:湿潤前後に各30秒間
次に、色差(L0、a0、b0)からの色差(L1、a1、b1)の変化値(ΔE)を式:
ΔE=[(L1−L0)2+(a1−a0)2+(b1−b0)2]1/2
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
5:ΔEが0.8未満
4:ΔEが0.8以上2.5未満
3:ΔEが2.5以上3.0未満
2:ΔEが3.0以上4.0未満
1:ΔEが4.0以上
実施例2
製造例1で得られた重合体分散液2500部に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔BASF社製、商品名:Irgacure 184〕25部、硬化性単量体として1,4−ブタンジオールジアクリレート(分子量:198)50部および成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕500部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体成分の含有率が5%である被膜形成用材料を得た。この被膜形成用材料に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された被膜形成用材料を得た。
前記で得られた被膜形成用材料をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:188μm)にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、室温で1時間放置した後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、成形用フィルムを形成させ、成形用フィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムとが積層された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた被膜形成用材料または積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例3
製造例1で得られた重合体分散液2500部に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔BASF社製、商品名:Irgacure 184〕25部、硬化性単量体として1,4−ブタンジオールジアクリレート(分子量:198)1000部およびエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート〔新中村化学(株)製、品番:BPE−1300N、分子量:1684〕500部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体成分の含有率が60%である被膜形成用材料を得た。この被膜形成用材料に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された被膜形成用材料を得た。
前記で得られた被膜形成用材料をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:188μm)にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、室温で1時間放置した後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、成形用フィルムを形成させ、成形用フィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムとが積層された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた被膜形成用材料または積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例4
製造例1で得られた重合体分散液2500部に、熱重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)〔(株)日本ファインケム製、品番:ABN−E〕25部および硬化性単量体成分として1,4−ブタンジオールジアクリレート(分子量:198)500部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体成分の含有率が33%である被膜形成用材料を得た。この被膜形成用材料に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された被膜形成用材料を得た。
前記で得られた被膜形成用材料をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:188μm)にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、室温で1時間放置した後、100℃の温風乾燥機で1時間加熱することにより、成形用フィルムを形成させ、成形用フィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムとが積層された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた被膜形成用材料または積層フィルムを用いて、引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例5
製造例2で得られた重合体分散液2500部に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔BASF社製、商品名:Irgacure 184〕25部および硬化性単量体成分として1,4−ブタンジオールジアクリレート(分子量:198)500部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子量:578)500部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体成分の含有率が50%である被膜形成用材料を得た。この被膜形成用材料に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された被膜形成用材料を得た。
前記で得られた被膜形成用材料をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:188μm)にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、室温で1時間放置した後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、成形用フィルムを形成させ、成形用フィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムとが積層された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた被膜形成用材料または積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例6
製造例3で得られた重合体分散液2500部に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔BASF社製、商品名:Irgacure 184〕25部および硬化性単量体成分として1,4−ブタンジオールジアクリレート(分子量:198)500部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体成分の含有率が33%である被膜形成用材料を得た。この被膜形成用材料に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された被膜形成用材料を得た。
前記で得られた被膜形成用材料をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:188μm)にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、室温で1時間放置した後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、成形用フィルムを形成させ、成形用フィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムとが積層された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた被膜形成用材料または積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例7
製造例4で得られた重合体分散液2500部に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔BASF社製、商品名:Irgacure 184〕25部および硬化性単量体成分として1,4−ブタンジオールジアクリレート(分子量:198)500部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体成分の含有率が33%である被膜形成用材料を得た。この被膜形成用材料に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された被膜形成用材料を得た。
前記で得られた被膜形成用材料をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:188μm)にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、室温で1時間放置した後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、成形用フィルムを形成させ、成形用フィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムとが積層された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた被膜形成用材料または積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例8
製造例1で得られた重合体分散液2500部に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔BASF社製、商品名:Irgacure 184〕25部および硬化性単量体として1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(分子量:226)500部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体成分の含有率が33%である被膜形成用材料を得た。この被膜形成用材料に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された被膜形成用材料を得た。
前記で得られた被膜形成用材料を製造例5で得られた樹脂フィルムにバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、室温で1時間放置した後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、成形用フィルムを形成させ、成形用フィルムと製造例5で得られた樹脂フィルムとが積層された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた被膜形成用材料または積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例9
実施例1で得られた被膜形成用材料をシクロオレフィンポリマーフィルム〔日本ゼオン(株)製、商品名:ゼオノアフィルム、厚さ:100μm〕にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、室温で1時間放置した後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、成形用フィルムを形成させ、成形用フィルムとシクロオレフィンポリマーフィルムとが積層された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた被膜形成用材料または積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
比較例1
製造例1で得られた重合体分散液2500部に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔BASF社製、商品名:Irgacure 184〕25部および成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕250部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体成分の含有率が0%である被膜形成用材料を得た。この被膜形成用材料に水を添加することにより、不揮発分の含有率を40%に調整した。
得られた被膜形成用材料をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:188μm)にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、室温で1時間放置した後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、成形用フィルムを形成させ、成形用フィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムとが積層された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた被膜形成用材料または積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして引張り伸び、耐擦傷性および耐候性を評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
表1に示された結果から、各実施例で得られた成形用フィルムは、いずれも、比較例1で得られた成形用フィルムと対比して引張り伸びに優れており、また、各実施例で得られた成形用フィルムが用いられた積層フィルムは、いずれも、比較例1で得られた成形用フィルムが用いられた積層フィルムと対比して、耐擦傷性および耐候性のいずれにも総合的に優れていることがわかる。
実施例10
実施例5で得られた被膜形成用材料を製造例5で得られた樹脂フィルム〔以下の「(5)フィルムの視感反射率」に基づいて測定された視感反射率:3.91%〕上に乾燥後の膜厚が約1μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、60℃で10分間乾燥させることにより、樹脂フィルムの一方表面に被膜形成用材料からなる成形用フィルムが形成された積層フィルムを得た。この積層フィルムの成形用フィルムが形成されている面の視感反射率を以下の方法に基づいて求めたところ、3.96%であった。
次に、前記で得られた積層フィルムの成形用フィルムが形成された面とは反対側の面がガラス基板と接触するように、この積層フィルムをガラス基板に密着させた後、温度が80℃に調整された、直径20nm、深さ400nmの円錐形の凹部が220nmの周期で配列された石英製の成形型を当該成形型の凹凸パターンが形成されている面が積層フィルムの成形用フィルムの表面に接触するように押し当て、5kNの圧力が基板全体に均等に加わるように加圧した。
次に、高圧水銀ランプ(ランプ出力:120W/cm)を用いて成形型側から積算光量500mJ/cm2の紫外線を照射することによって硬化させた後、ガラス基板および積層フィルムを成形型から離脱させ、さらに積層フィルムをガラス基板から剥離することにより、表面に微細な凹凸形状を有する積層フィルムを得た。
前記で得られた積層フィルムの表面を原子間力顕微鏡(AFM)にて観察したところ、平均高さが400nmの円錐形状の突起が平均周期220nmで配列した微細な凹凸形状が表面に形成されており、転写不良がないことが確認された。さらに、実施例1と同様にして耐擦傷性を調べたところ、耐擦傷性の評価は「4」であり、以下の方法に基づいて密着性および視感反射率を調べたところ、密着性の評価は「5」であり、視感反射率は0.15%であった。
(4)密着性
JIS K5600−5−6に準拠して、カットの間隔1mmにて積層フィルムにおける被膜形成用材料からなる層と樹脂フィルムとの密着性を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
5:カットの縁が滑らかで、いずれの格子の目にも剥離がない。
4:剥離面積がカットした格子部分の面積の5%未満
3:剥離面積がカットした格子部分の面積の5%以上15%未満
2:剥離面積がカットした格子部分の面積の15%以上35%未満
1:剥離面積がカットした格子部分の面積の35%以上65%未満
0:剥離面積がカットした格子部分の面積の65%以上
(5)フィルムの視感反射率
フィルムの視感反射率は、積層フィルムの微細な凹凸形状を有する面とは反対側の面に黒色テープを貼り付け、分光光度計〔(株)島津製作所製、品番:UV3700〕を用い、入射角5°、波長380〜780nmの範囲で積層フィルムの微細な凹凸形状を有する面の分光反射率を測定し、分光反射率の測定結果からJIS R3106に準拠して視感反射率を求めた。
実施例11
実施例5で得られた被膜形成用材料を製造例5で得られた樹脂フィルム上に乾燥後の膜厚が約1μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、60℃で10分間乾燥させることにより、樹脂フィルムの一方表面に被膜形成用材料からなる成形用フィルムが形成された積層フィルムを得た。この積層フィルムの成形用フィルムが形成されている面の視感反射率を前記方法に基づいて求めたところ、3.96%であった。
次に、直径270nm、深さ350nmの円錐形の凹部が三方向に配列された石英製の成形型を用い、当該成形型の凹凸パターンが形成されている面が積層フィルムの成形用フィルムの表面に接触するように、当該成形型を積層フィルムの成形用フィルムの表面に押し当て、インプリント装置〔東芝機械(株)製、品番:ST−02〕を用いて80℃に加熱しながら5kNの圧力が基板全体に均等に加わるように10分間加圧した後、30℃まで冷却し、積層フィルムを成形型から離型した。
次に、高圧水銀ランプ(ランプ出力:120W/cm)を用いて積算光量1J/cm2の紫外線を積層フィルムの微細な凹凸形状が形成されている面に照射することによって硬化させ、表面に微細な凹凸形状を有する積層フィルムを得た。
前記で得られた積層フィルムの表面を原子間力顕微鏡(AFM)にて観察したところ、直径が270nm、平均高さが350nmの円錐形状の突起が三方向に配列された微細な凹凸形状が表面に形成されており、転写不良がないことが確認された。さらに、実施例1と同様にして耐擦傷性を調べたところ、耐擦傷性の評価は「5」であり、実施例10と同様にして密着性および視感反射率を調べたところ、密着性の評価は「5」であり、視感反射率は0.12%であった。
実施例12
実施例10において、製造例5で得られた樹脂フィルムの代わりに透明ポリエチレンテレフタレートフィルム〔東レ(株)製、商品名:ルミラーT60、視感反射率:5.23%〕を用いたこと以外は、実施例11と同様の操作を行なうことにより、表面に微細な凹凸形状を有する積層フィルムを製造した。前記で得られた積層フィルムの表面を原子間力顕微鏡(AFM)にて観察したところ、平均高さが400nmの円錐形状の突起が平均周期220nmで配列した微細な凹凸形状が表面に形成されており、転写不良がないことが確認された。さらに、実施例1と同様にして耐擦傷性を調べたところ、耐擦傷性の評価は「4」であり、実施例10と同様にして密着性および視感反射率を調べたところ、密着性の評価は「4」であり、視感反射率は0.34%であった。
実施例13
実施例11において、製造例5で得られた樹脂フィルムの代わりに透明ポリエチレンテレフタレートフィルム〔東レ(株)製、商品名:ルミラーT60、視感反射率:5.23%〕を用いたこと以外は、実施例11と同様の操作を行なうことにより、表面に微細な凹凸形状を有する積層フィルムを製造した。前記で得られた積層フィルムの表面を原子間力顕微鏡(AFM)にて観察したところ、直径が270nm、平均高さが350nmの円錐形状の突起が三方向に配列された微細な凹凸形状が表面に形成されており、転写不良がないことが確認された。さらに、実施例1と同様にして耐擦傷性を調べたところ、耐擦傷性の評価は「5」であり、実施例10と同様にして密着性および視感反射率を調べたところ、密着性の評価は「4」であり、視感反射率は0.32%であった。
実施例10〜13の結果から、本発明の被膜形成用材料からなる成形用フィルムが積層された積層フィルムの当該成形用フィルムの表面に「モスアイ構造」と称されているナノメートルレベルの微細な凹凸パターンを形成させることができるので、当該成形用フィルムの表面における光線の反射を低減させることができることがわかる。