JP2016180081A - 加飾成形用ハードコート剤 - Google Patents

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雄一 川田
友美 北村
Tomomi Kitamura
友美 北村
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Abstract

【課題】伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する加飾成形用ハードコート剤、当該加飾成形用ハードコート剤からなる成形用フィルム、当該成形用フィルムを有する積層フィルム、および当該加飾成形用ハードコート剤を用いて成形された成形体を提供する。【解決手段】被膜を形成させる際に用いられる加飾成形用ハードコート剤であって、ヘテロ原子を含む1,5−ジエン構造含有単量体およびヘテロ原子を含む1,6−ジエン構造含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種のジエン構造含有単量体を含有する単量体成分を環化重合させてなるヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体の水性分散体と、硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーとを含有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、加飾成形用ハードコート剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、樹脂製品、金属製品などの成形体の表面に耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成するのに有用であり、例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、自動車用部品などの筐体の加飾フィルムなどの原料として使用することができる加飾成形用ハードコート剤に関する。
樹脂などの成形材料を用いて成形された成形体の表面には、所望の模様、表面保護層などが付与されることがある。前記模様、表面保護層などを成形体の表面に形成させる方法として、所望の模様、表面保護層などがフィルムの表面上に形成された転写フィルムを成形型の内面に配設した後、成形材料を成形型内に充填することによって成形する際に、模様、表面保護層などを成形体の表面に転写し、次いで転写フィルムからフィルムを剥離することにより、模様、表面保護層などを成形体に転写する方法、所望の模様、表面保護層などが形成されたインサート成形フィルムを成形型の内面に配設した後、成形材料を成形型内に充填し、成形することにより、インサート成形用フィルムと成形体とを一体化させる方法などが知られている。
前記所望の模様、表面保護層などが形成されたインサート成形用フィルムは、一般に、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルムの一方表面に金属蒸着膜、印刷層などが形成され、他方表面に表面保護層として紫外線化性樹脂、電子線硬化性樹脂など硬化型樹脂からなるハードコート層が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、前記ハードコート層が形成されているインサート成形用フィルムを成形型内に配設し、インサート成形を行なった場合、当該インサート成形用フィルムは、ハードコート層が形成されていることから、成形体の表面形状に追随しがたく、当該ハードコート層にクラックが発生することがある。
したがって、近年、耐擦傷性に優れるのみならず、伸長させた場合であってもクラックが生じない性質(伸長性)に優れ、さらに耐薬品性にも優れた被膜を形成する加飾成形用ハードコート剤の開発が望まれている。
特開2005−288720号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する加飾成形用ハードコート剤を提供することを課題とする。
本発明は、
(1) 被膜を形成させる際に用いられる加飾成形用ハードコート剤であって、ヘテロ原子を含む1,5−ジエン構造含有単量体およびヘテロ原子を含む1,6−ジエン構造含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種のジエン構造含有単量体を含有する単量体成分を環化重合させてなるヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体の水性分散体と、硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーとを含有することを特徴とする加飾成形用ハードコート剤、
(2) ヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体が、式(I):
Figure 2016180081
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機基、R2はメチレン基、R3は直接結合またはメチレン基、R4は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、カルボキシル基、エステル基またはシアノ基、R5は直接結合またはメチレン基、XおよびYはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子、Zは直接結合、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子を示し、X、YおよびZのうちの少なくとも1つの基はたがいに隣接しない酸素原子、イオウ原子またはイミノ基である)
で表わされる環構造含有単位を有する前記(1)に記載の加飾成形用ハードコート剤、
(3) 硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーが、ハイパーブランチ構造を有する多官能オリゴマー、デンドリマー構造を有する多官能オリゴマー、カプロラクトン変性部位を有する多官能単量体およびアルキレンオキシド変性部位を有する多官能単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種である前記(1)または(2)に記載の加飾成形用ハードコート剤、
(4) さらに重合開始剤を含有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の加飾成形用ハードコート剤、
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載の加飾成形用ハードコート剤からなる成形用フィルム、
(6) 樹脂フィルムの少なくとも一方表面に前記(5)に記載の成形用フィルムが形成されてなる積層フィルム、および
(7) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載の加飾成形用ハードコート剤を用いて成形されてなる成形体
に関する。
本発明の加飾成形用ハードコート剤は、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成するという優れた効果を奏する。本発明の成形用フィルム、積層フィルムおよび成形体は、成形材料として前記加飾成形用ハードコート剤が用いられているので、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れている。
本発明の加飾成形用ハードコート剤は、前記したように、被膜を形成させる際に用いられる加飾成形用ハードコート剤であり、ヘテロ原子を含む1,5−ジエン構造含有単量体およびヘテロ原子を含む1,6−ジエン構造含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種のジエン構造含有単量体を含有する単量体成分を環化重合させることによって得られるヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体の水性分散体と、硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーとを含有することを特徴とする。
本願明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。また、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
本発明の加飾成形用ハードコート剤は、ヘテロ原子を含む1,5−ジエン構造含有単量体およびヘテロ原子を含む1,6−ジエン構造含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種のジエン構造含有単量体を含有する単量体成分を環化重合させることによって得られるヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体の水性分散体と、2個以上の重合性二重結合を有する単量体とを混合することによって容易に得ることができる。
ヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体は、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、式(I):
Figure 2016180081
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機基、R2はメチレン基、R3は直接結合またはメチレン基、R4は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、カルボキシル基、エステル基またはシアノ基、R5は直接結合またはメチレン基、XおよびYはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子、Zは直接結合、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子を示し、X、YおよびZのうちの少なくとも1つの基はたがいに隣接しない酸素原子、イオウ原子またはイミノ基である)
で表わされる環構造含有単位を有する重合体であることが好ましく、式(Ia):
Figure 2016180081
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機基を示す)
で表わされる環構造含有単位を有する重合体であることがより好ましい。
式(I)および式(Ia)において、R1は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機基である。好適な炭素数1〜30の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基、炭素数2〜30の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素数2〜30の環状エーテル基などが挙げられる。これらの有機基の水素原子の一部または全部は、炭素数1〜30のアルコキシ基、水酸基およびハロゲン原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の置換基で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
1の具体例としては、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、カプリル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、セチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基、セリル基、メシリル基などの炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基;メトキシエチル基、メチキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、3−メトキシブチル基、エトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、フェノキシエチル基、フェノキシエトキシエチル基などの炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換されたアルコキシ基含有鎖状飽和炭化水素基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などの炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部が水酸基で置換された水酸基含有鎖状飽和炭化水素基;フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、クロロエチル基、ジクロロエチル基、ブロモエチル基、ジブロモエチル基などの炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたハロゲン原子含有鎖状飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基、メタリル基、クロチル基、プロパギル基などの炭素数2〜30の鎖状不飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子で置換された鎖状不飽和炭化水素基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタジエニル基などの炭素数3〜30の脂環式炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子で置換された脂環式炭化水素基;フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基、シンナミル基、ナフチル基、アントラニル基などの炭素数6〜30の芳香族炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子で置換された芳香族炭化水素基;グリシジル基、β−メチルグリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、3−メチル−3−オキセタニルメチル基、3−エチル−3−オキセタニルメチル基などの炭素数2〜30の環状エーテル基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子で置換された環状エーテル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。当該置換基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基などの炭素数1〜30のアルコキシ基であることが好ましい。
1のなかでは、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された環状エーテル基が好ましく、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェノキシエチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、ベンジル基およびテトラヒドロフルフリル基がさらに好ましく、メチル基およびシクロヘキシル基がより一層好ましい。
2は、メチレン基である。
3は、直接結合またはメチレン基である。
4は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、カルボキシル基、エステル基またはシアノ基である。炭素数1〜4のアルキル基のなかでは、メチル基が好ましい。エステル基としては、例えば、式:−COOR6(式中、R6は炭素数1〜30の1価の有機基を示す)で表わされる基などが挙げられる。炭素数1〜30の1価の有機基としては、前記と同様の炭素数1〜30の1価の有機基が挙げられる。炭素数1〜30の1価の有機基のなかでは、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された環状エーテル基が好ましく、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェノキシエチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、フェニル基、ベンジル基およびテトラヒドロフルフリル基がさらに好ましく、メチル基およびシクロヘキシル基がより一層好ましい。
5は、直接結合またはメチレン基である。
XおよびYは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子である。Zは、直接結合、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子である。X、YおよびZのうちの少なくとも1つの基は、たがいに隣接しない酸素原子、イオウ原子またはイミノ基である。イミノ基としては、例えば、−NR7−基(式中、R7は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機基を示す)などが挙げられる。前記「たがいに隣接しない酸素原子、イオウ原子またはイミノ基」は、例えば、−O−O−、−O−NR7−などのようにヘテロ原子が隣り合わないことを意味する。R7において、炭素数1〜30の1価の有機基としては、前記と同様の炭素数1〜30の1価の有機基が挙げられる。炭素数1〜30の1価の有機基のなかでは、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された環状エーテル基が好ましく、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェノキシエチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、フェニル基、ベンジル基およびテトラヒドロフルフリル基がさらに好ましく、メチル基およびシクロヘキシル基がより一層好ましい。
式(I)で表わされる環構造含有単位を与えるジエン構造含有単量体として、ヘテロ原子を含む1,5−ジエン構造含有単量体およびヘテロ原子を含む1,6−ジエン構造含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種のジエン構造含有単量体が用いられる。式(I)で表わされる環構造含有単位を与えるジエン構造含有単量体のなかで好適な単量体としては、式(II):
Figure 2016180081
(式中、R1、X、YおよびZは前記と同じ。R8は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、カルボキシル基、エステル基またはシアノ基を示す)
で表わされるジエン構造含有単量体が挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基のなかでは、メチル基が好ましい。エステル基としては、例えば、式:−COOR6(式中、R6は前記と同じ)で表わされる基などが挙げられる。
式(II)で表わされるジエン構造含有単量体の具体例としては、式(IIa):
Figure 2016180081
(式中、R1は前記と同じ)
表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IIb):
Figure 2016180081
(式中、R1は前記と同じ)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IIc):
Figure 2016180081
(式中、R1は前記と同じであり、各R1はそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IId):
Figure 2016180081
(式中、R1およびR7は前記と同じ)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IIe):
Figure 2016180081
(式中、R1は前記と同じ)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IIf):
Figure 2016180081
(式中、R1およびR7は前記と同じ)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IIg):
Figure 2016180081
(式中、R1は前記と同じ)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IIh):
Figure 2016180081
(式中、R1は前記と同じ)
で表わされる1,5−ジエン構造含有単量体、式(IIi):
Figure 2016180081
(式中、R1は前記と同じ)
で表わされる1,5−ジエン構造含有単量体などが挙げられる。これらのなかでは、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、式(IIa)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IIb)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体および式(IIc)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体が好ましく、式(IIa)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体がより好ましい。これらの単量体は、例えば、特開平10−226669号公報に記載の方法によって調製することができる。
式(IIa)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体としては、例えば、α−アリルオキシメチルアクリル酸、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸tert−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのアリルオキシメチルアクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでは、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジルおよびα−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルが好ましく、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルおよびα−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルがより好ましい。また、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルが特に好ましい。
式(IIb)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体としては、例えば、α−メタリルオキシメチルアクリル酸、α−メタリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸プロピル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸ブチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸tert−ブチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのメタリルオキシメチルアクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでは、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、α−メタリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、およびα−メタリルオキシメチルアクリル酸ベンジルおよびα−メタリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルが好ましく、α−メタリルオキシメチルアクリル酸メチルおよびα−メタリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルがより好ましい。
式(IIc)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体としては、例えば、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸プロピル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸イソプロピル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸tert−ブチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸フェノキシエチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸イソボルニル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸アダマンチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸ベンジル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル)エーテルなどのα−ヒドロキシメチルアクリル酸系単量体のエーテル体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでは、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸イソプロピル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸フェノキシエチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸イソボルニル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸ベンジル)エーテルおよびビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル)エーテルが好ましく、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル)エーテルおよびビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル)エーテルが好ましい。
ジエン構造含有単量体のなかでは、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルおよびα−メタリルオキシメチルアクリル酸メチルが好ましい。
単量体成分におけるジエン構造含有単量体の含有率は、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
単量体成分には、ジエン構造含有単量体以外の単量体が含まれていてもよい。ジエン構造含有単量体以外の単量体としては、例えば、カルボキシル基を有する単量体、酸性リン酸エステル系単量体、活性水素をもつ基を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基を有する単量体、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体などであって、ヘテロ原子を含む環構造を有しないものが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
酸性リン酸エステル系単量体としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸性リン酸エステル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
活性水素をもつ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチルなどのα−ヒドロキシメチルアクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの活性水素をもつ基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキル;アクリル酸シクロヘキシルメチル、メタクリル酸シクロヘキシルメチル、アクリル酸シクロヘキシルエチル、メタクリル酸シクロヘキシルエチル、アクリル酸シクロヘキシルプロピル、メタクリル酸シクロヘキシルプロピル、アクリル酸4−メチルシクロヘキシルメチル、メタクリル酸4−メチルシクロヘキシルメチルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルアルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子を有する単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド、アクリル酸N,N’−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N’−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸イミド、メタクリル酸イミド、マレイミドアクリレート、マレイミドメタクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドなどの窒素原子含有(メタ)アクリル酸、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
2個以上の重合性二重結合を有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が2〜10のアルキルジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリル酸エステル;2,2−ジメチル−3−(プロペノイルオキシ)プロパン酸2,2−ジメチル−3−(プロペノイルオキシ)プロピル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの2個以上の重合性二重結合を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの2個以上の重合性二重結合を有する単量体のなかでは、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、多官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、2官能(メタ)アクリル酸エステルおよび3官能(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ハロゲン原子を有する単量体としては、例えば、塩化ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ハロゲン原子を有する単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ビニルエステル系単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ビニルエーテル系単量体としては、例えば、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエーテル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
耐候性に優れた被膜を形成する観点から、ジエン構造含有単量体以外の単量体として、ベンゾトリアゾール系単量体、ベンゾフェノン系単量体、トリアジン系単量体などの紫外線吸収性基を有する単量体;紫外線安定性基を有する単量体;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルなどの単独重合体としたときのガラス転移温度が高い(メタ)アクリル酸エステルなどの耐候性を付与する性質を有する単量体(以下、耐候性単量体という)などを用いることができる。紫外線吸収性基を有する単量体は、例えば、大塚化学(株)製、商品名:RUVA93、大阪有機化学工業(株)製、商品名:BP−1Aなどとして商業的に容易に入手することができる。紫外線安定性基を有する単量体は、例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87などのアデカスタブシリーズなどとして商業的に容易に入手することができる。
単量体成分における耐候性単量体の含有率は、耐候性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、さらに一層好ましくは50質量%以下である。
単量体成分には、接着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルに代表される水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸イミド、モルフォリノ(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステルに代表される窒素原子含有単量体;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどの環状エーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルなどを含有させることが好ましい。カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFM1、プラクセルFM1D、プラクセルFM2D、プラクセルFM3、プラクセルFA1DM、プラクセルFA2Dなどとして商業的に容易に入手することができる。
単量体成分における水酸基含有単量体、窒素原子含有単量体、環状エーテル基含有(メ
タ)アクリル酸エステルなどの接着性を向上させる単量体の含有率は、接着性を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
単量体成分には、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸を含有させることが好ましい。ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸は、例えば、大阪ガスケミカル(株)製、商品名:オグソールEA−0200、オグソールEA−0200、オグソールEA−0500、オグソールEA−1000などとして商業的に容易に入手することができる。また、特開2002−69130号公報に記載されている(メタ)アクリル酸のシクロヘキシルアルキルエステル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリル酸、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリル酸、ジシクロペンタニル(メタ)アクリル酸、トリシクロ[5.2.1.02.6]デカ−8−イル(メタ)アクリル酸やテルペン系(メタ)アクリル酸などを使用することもできる。
単量体成分には、分子量の増加による成膜性の低下およびゲル化を抑制する観点から、必要により連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのメルカプトカルボン酸類;メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)などのメルカプトカルボン酸エステル類;エチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,2−ジメルカプトエタンなどのアルキルメルカプタン類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノールなどのメルカプトアルコール類;ベンゼンチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、2−ナフタレンチオールなどの芳香族メルカプタン類;トリス〔(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル〕イソシアヌレートなどのメルカプトイソシアヌレート類;2−ヒドロキシエチルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド類;ベンジルジエチルジチオカルバメートなどのジチオカルバメート類;α−メチルスチレンダイマーなどのダイマー類;四臭化炭素などのハロゲン化アルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの連鎖移動剤のなかでは、入手が容易であること、架橋防止性に優れていること、重合速度の低下の度合いが小さいことなどから、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類、アルキルメルカプタン類、メルカプトアルコール類、芳香族メルカプタン類、メルカプトイソシアヌレート類などのメルカプト基を有する化合物が好ましい。
連鎖移動剤の量は、単量体成分の組成、重合温度などの重合条件、目標とする重合体の分子量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得る場合には、単量体成分100質量部あたり、0.05〜15質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。
ジエン構造含有単量体を含有する単量体成分の重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記重合方法のなかでは、環境に優しい水性樹脂組成物を直接的に得ることができることから、乳化重合法および懸濁重合法が好ましく、乳化重合法がより好ましい。単量体成分を溶液重合によって重合させる場合、重合体の水性分散体を容易に得ることができることから、溶媒として水性媒体を用いることが好ましい。
本明細書において、前記水性媒体は、水または含水率が50質量%以上である水と親水性有機溶媒との混合溶媒を意味する。親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどの脂肪族有機酸アルキルエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの親水性有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。水性媒体の中では、水が好ましい。
単量体成分を塊状重合法で重合させる場合または有機溶媒を用いて溶液重合させる場合には、得られた反応混合物を水で希釈するか、あるいは有機溶媒を水と置換させることにより、重合体の水性分散体を得ることができる。
以下に、ジエン構造含有単量体を含有する単量体成分を重合させる方法の一例として、単量体成分を乳化重合法によって重合させる場合について説明する。単量体成分を乳化重合法によって重合させることによって重合体を調製する場合、ジエン構造含有単量体を含有する単量体成分を乳化重合させる。単量体成分の乳化重合は、例えば、水性媒体中に単量体成分、乳化剤および必要により重合開始剤を適宜加え、単量体成分を重合させることによって行なうことができる。また、得られる重合体の分子量を調節するために重合連鎖移動剤を単量体成分に用いてもよく、得られるエマルション粒子内で重合体を架橋させてもよい。
単量体成分を加熱、電子線照射などによって重合させる場合には、重合開始剤を特に用いなくてもよいが、重合反応を促進させる観点から、重合開始剤を用いることが好ましい。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。重合開始剤は、溶媒に溶解させた溶液として用いてもよい。
重合開始剤の量は、単量体成分100質量部あたり、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、成形体の耐水性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、エマルション粒子の重量平均分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤の量は、エマルション粒子の重量平均分子量を調整する観点から、単量体成分100質量部あたり、0.01〜10質量部であることが好ましい。
反応系内には、必要により、pH緩衝剤、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどのキレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜5質量部程度、より好ましくは0.1〜3質量部程度である。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤、反応性乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種類以上を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノ−ルRS−30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、アデカリアソープSR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
乳化剤の量は、単量体成分100質量部あたり、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、成形体の耐水性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
単量体成分を乳化重合させるとき、得られる重合体が有する酸性基の一部または全部が中和剤で中和されるようにしてもよい。中和剤は、最終段で単量体成分を添加した後に使用してもよく、重合反応の際に使用してもよく、初期の乳化重合反応の際に使用してもよい。
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸化物;アンモニア、モノメチルアミンなどの有機アミンなどのアルカリ性物質が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤のなかでは、成形体の耐水性を向上させる観点から、アンモニアなどの揮発性を有するアルカリ性物質が好ましい。
また、単量体成分を乳化重合させるとき、成形体の耐水性を向上させる観点から、シランカップリング剤を適量で用いてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などの重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合反応の効率を高める観点から、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
乳化重合の際の反応条件は、単量体成分の組成、重合開始剤の種類などに応じて適宜設定すればよい。単量体成分の重合温度は、特に限定されないが、通常、好ましくは5〜90℃、より好ましくは20〜85℃である。単量体成分の重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜8時間程度である。また、単量体成分を重合させる際には、反応系内を攪拌することが好ましい。
以上のようにして単量体成分を乳化重合させることにより、樹脂エマルションが得られる。樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、1段の乳化重合によって調製された1種類の重合体のみで構成されていてもよい。
樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成するヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体における式(I)で表わされる環構造含有単位の含有率は、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
ヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体における式(I)で表わされる環構造含有単位の含有率は、ヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体の原料として用いられる単量体成分における式(I)で表わされる環構造含有単位を与えるジエン構造含有単量体の含有率として求められる。
樹脂エマルションを調製した後には、樹脂エマルションを安定化させる観点から、得られた樹脂エマルションを中和剤で中和することが好ましい。中和剤としては、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリンなどの三級アミン;アンモニア水;水酸化ナトリウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
中和剤は、エマルション粒子が有する酸基1当量あたりの中和剤の塩基の量が好ましくは0.3〜1.4当量、より好ましくは、0.5〜1.2当量となるように用いることが好ましい。
樹脂エマルションにおける不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
本明細書において、樹脂エマルションにおける不揮発分量は、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度は、耐候性を向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、より一層好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、成形性を向上させる観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度は、その重合体の原料として用いられる単量体成分に含まれている単量体からなる単独重合体のガラス転移温度(Tg)(絶対温度:K)と単量体の質量分率から、式(I):
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・+Wn/Tgn (I)
〔式中、Tgは、求めようとしている重合体のガラス転移温度(K)、W1、W2、W3・・・・Wnは、それぞれ各単量体の質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・・Tgnは、それぞれ各単量体の質量分率に対応する単量体からなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求めることができる。なお、重合体のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定装置)、DTA(示差熱分析装置)、TMA(熱機械測定装置)によって測定することもできる。
本明細書においては、エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度は、特に断りがない限り、式(I)に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。例えば、多層構造を有するエマルション粒子を構成する重合体全体のガラス転移温度は、多段乳化重合の際に用いられたすべての単量体成分における各単量体の質量分率とこれに対応する単量体の単独重合体のガラス転移温度から求められたガラス転移温度を意味する。特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10%以下である場合、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10%を超える場合には、重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などによって求められる。
単独重合体のガラス転移温度は、例えば、北岡協三著、「塗料用合成樹脂入門」、初版、(株)高分子刊行会、昭和49年5月;高分子学会編、「高分子データハンドブック(基礎編)」、初版、(株)培風館、昭和61年1月;「機能性化学品カタログ」、共栄社化学(株)、2004年10月などに記載されている。単独重合体のガラス転移温度は、例えば、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルの単独重合体では83℃、メタクリル酸メチルの単独重合体では105℃、メタクリル酸シクロヘキシルの単独重合体では83℃、アクリル酸の単独重合体では95℃である。
このエマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度を考慮して、当該エマルション粒子を構成する重合体の原料として用いられる単量体成分の組成を決定することができる。
エマルション粒子を構成する重合体は、架橋構造を有していてもよい。エマルション粒子を構成する重合体の重量平均分子量は、重合体が架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、成形体の硬度を高める観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、成形性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
本明細書において、前記重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは70nm以上、より好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、成形体の表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは450nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは350nm以下である。
本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、樹脂エマルションを蒸留水で希釈し、得られた希釈液約10mLをガラスセルに採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器〔パーティクル サイジング システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOM P Model 380〕を用い、ウインドウズベースのソフトウェア〔Windows(登録商標) Based Software〕を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
本発明の加飾成形用ハードコート剤は、前記のようにして調製された水性分散体と、硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーとを混合することによって容易に調製することができる。
本明細書において、硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーは、硬化性官能基を有する硬化性単量体および/または硬化性官能基を有する硬化性オリゴマーを意味する。硬化性単量体および硬化性オリゴマーは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーは、官能基の数が2〜20であることが好ましい。
硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーとしては、例えば、ハイパーブランチ構造を有する多官能オリゴマー、デンドリマー構造を有する多官能オリゴマー、カプロラクトン変性部位を有する多官能単量体、アルキレンオキシド変性部位を有する多官能単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ハイパーブランチ構造を有する多官能オリゴマー、デンドリマー構造を有する多官能オリゴマー、カプロラクトン変性部位を有する多官能単量体およびアルキレンオキシド変性部位を有する多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーとして、ハイパーブランチ構造を有する多官能オリゴマー、デンドリマー構造を有する多官能オリゴマー、カプロラクトン変性部位を有する多官能単量体およびアルキレンオキシド変性部位を有する多官能単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種は、耐擦傷性、伸長性および耐候性に総合的に優れた被膜を形成する加飾成形用ハードコート剤を得る観点から好ましい。
ハイパーブランチ構造を有する多官能オリゴマーおよびデンドリマー構造を有する多官能オリゴマーとしては、例えば、特開2010−24268号公報の段落[0017]〜[0027]に記載のものが挙げられる。より具体的には、前記ハイパーブランチ構造を有する多官能オリゴマーおよびデンドリマー構造を有する多官能オリゴマーとしては、例えば、ハイパーブランチ構造またはデンドリマー構造である多分岐構造を有するものであって当該多分岐構造が規則的なもの、ハイパーブランチ構造またはデンドリマー構造である多分岐構造を有するものであって当該多分岐構造が規則的でないもの、ハイパーブランチ構造またはデンドリマー構造である多分岐構造を有するものであって樹木状分岐構造または放射状構造を有するものなどが挙げられる。ハイパーブランチ構造を有する多官能オリゴマーおよびデンドリマー構造を有する多官能オリゴマーは、公知のポリマーの合成方法、例えば、多価アルコールと多塩基酸またはその無水物とを反応させることによって得られる分子末端に官能基を有する高分岐ポリエステル、環状ラクトンを開環重合させることによって得られる分子末端に官能基を有する高分岐ポリエステルなどの高分岐ポリエステルと、アクリル酸またはメタクリル酸とを反応せる方法、3官能以上のソルビタン酸エステルなどの多官能カルボン酸エステルからなる高分岐ポリエステルと多官能性(メタ)アクリル酸エステルをディールス・アルダー反応によって合成する方法などによって得られるデンドリティック構造の多分岐構造を有する多官能基を有する活性エネルギー線重合性ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのハイパーブランチ構造を有する多官能オリゴマーおよびデンドリマー構造を有する多官能オリゴマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。ハイパーブランチ構造を有する多官能オリゴマーおよびデンドリマー構造を有する多官能オリゴマーは、商業的に容易に入手することができるものであり、例えば、サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302(平均官能基数:16)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カプロラクトン変性部位を有する多官能単量体としては、例えば、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとを反応させることによって調製することができる。多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カプロラクトン変性部位を有する多官能単量体の具体例としては、例えば、式(III):
Figure 2016180081
〔式中、R9〜R14は、それぞれ独立して、式:
Figure 2016180081
(式中、R15は水素原子またはメチル基、pは1または2を示す)
で表わされる(メタ)アクリロイルオキシペンチレン基を有する基または(メタ)アクリロイル基を示す〕
で表わされるカプロラクトン変性部位を有する多官能単量体などが挙げられる。式(III)で表わされるカプロラクトン変性部位を有する多官能単量体のなかでは、R9〜R14のうちの1〜6個が前記オキシペンチレン基を有する基であり、その残りの基が(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、R9〜R14のうちの1〜5個が前記オキシペンチレン基を有する基であり、その残りの基が(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。
前記カプロラクトン変性部位を有する多官能単量体は、商業的に容易に入手することができるものであり、例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD DPCA−20、KAYARAD DPCA−30、KAYARAD DPCA−60、KAYARAD DPCA−120などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記アルキレンオキシド変性部位を有する多官能単量体としては、例えば、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチルールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセリルトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキレンオキシド変性部位を有する多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。アルキレンオキシド変性部位を有する多官能単量体は、商業的に容易に入手することができるものであり、例えば、サートマー・ジャパン(株)製、品番:SR−454などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの分子量は、耐擦傷性、伸長性および耐候性に総合的に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは100〜2000、より好ましくは100〜1800である。
硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、硬化性単量体以外の単量体が含まれていてもよい。硬化性単量体以外の単量体としては、例えば、前記(メタ)アクリル系単量体、前記芳香族系単量体、前記カルボキシル基含有単量体、前記窒素原子含有単量体、前記エポキシ基含有単量体、前記シラン基含有単量体、前記カルボニル基含有単量体、前記紫外線安定性単量体、前記紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明の加飾成形用ハードコート剤の全不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率は、成形体の耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、成形性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
本発明の加飾成形用ハードコート剤には、さらに重合開始剤を含有させることができる。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。光重合開始剤のなかには熱重合開始剤として作用するものがあり、また、熱重合開始剤のなかには光重合開始剤として作用するものがあるので、両性質を有するものは、光照射または加熱により、加飾成形用ハードコート剤を硬化させることができる。重合開始剤のなかでは、成形体の成形時における引張り伸びを向上させる観点から、光重合開始剤が好ましい。
熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、1、1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの油溶性開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素などの水溶性過酸化物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などの水溶性アゾ化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの熱重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、オキシフェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]−エチルエステル、オキシフェニルアセチックアシッド2−[2−ヒドロキシエトキシ]−エチルエステル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルホリノプロパン−1−オン、2−モルホリノプロパン−1−オン、ヨードニウム,(4−メチルフェニル[4−(2−メチルプロピル)フェニル])−ヘキサフルオロフォスフェート、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤は、例えば、水性分散体と混合して用いてもよく、あるいは硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーと混合して用いてもよい。
本発明の加飾成形用ハードコート剤には、硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーが用いられているので、本発明の加飾成形用ハードコート剤の最低造膜温度は、当該硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーが用いられていない樹脂エマルションよりも低い。本発明の加飾成形用ハードコート剤の最低造膜温度は、通常、0〜100℃である。本発明の加飾成形用ハードコート剤の最低造膜温度は、エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度、硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの種類および量を調整することによって容易に調節することができる。
本発明の加飾成形用ハードコート剤の最低造膜温度は、適当な温度勾配を有する平板の上に帯状に本発明の加飾成形用ハードコート剤に用いられている樹脂エマルションを塗布したときの造膜した部分と造膜していない部分との境界温度を意味し、「亀裂のない均一な成形体が形成されるときの最低温度」と定義される。最低造膜温度は、例えば、JIS K6828−2(2003)に準じて測定することができる。より具体的には、本発明では、MFTテスター〔テスター産業(株)製、品番:TP−801 LT〕を用い、ステンレス鋼製の溝なし平板上に厚さが250μmである成形体をアプリケーターで形成させ、亀裂のない均一な成形体が形成されるときの最低温度(℃)を測定する。成形体の亀裂の有無は、JIS K6828−2に準じて目視で判定することができる。加飾成形用ハードコート剤の最低造膜温度が0℃以下である場合には、当該加飾成形用ハードコート剤の最低造膜温度は0℃であるとみなす。
本発明の加飾成形用ハードコート剤における不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、成形性または取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。本発明の加飾成形用ハードコート剤における不揮発分量は、分散媒(溶媒)量や添加剤量などを調整することによって容易に調節することができる。また、本発明の加飾成形用ハードコート剤における揮発性有機化合物の含有量は、環境に対する負荷を軽減する観点から、できるだけ少ないことが好ましい。
本明細書において、加飾成形用ハードコート剤における不揮発分量は、加飾成形用ハードコート剤1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔加飾成形用ハードコート剤における不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔加飾成形用ハードコート剤1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
本発明の加飾成形用ハードコート剤には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の樹脂成分が含まれていてもよい。また、本発明の加飾成形用ハードコート剤には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、紫外線吸収剤、紫外線防止剤、充填剤、レベリング剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、染料、酸化防止剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。
本発明の加飾成形用ハードコート剤は、例えば、成形用フィルムなどとして用いることができる。この成形用フィルムは、本発明の加飾成形用ハードコート剤で構成されているので、引張り伸びに優れている。成形用フィルムの厚さは、その用途などによって異なるので一概には決定することができないため、当該用途などに応じて適宜決定することが好ましいが、通常、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜50μm程度である。成形用フィルムを製造する方法としては、例えば、押し出し成形法、キャスティング法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、成形用フィルムは、例えば、アクリル樹脂フィルムなどの樹脂フィルムに対する密着性に優れているので、プライマーなどを用いなくても樹脂フィルムに密着させることができる。したがって、成形用フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも一方表面に積層することにより、積層フィルムの形態で用いることができる。
樹脂フィルムに用いられる樹脂としては、例えば、ラクトン環構造、グルタルイミド環構造、無水グルタル酸構造などの環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル系重合体、ポリメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。樹脂フィルムの厚さは、特に制限されないが、取扱い性および加工性を向上させる観点から、30〜200μm程度であることが好ましい。
樹脂フィルムには、必要により、表面処理を施してもよい。例えば、樹脂フィルムに離型性を付与する場合には、当該樹脂フィルムに離型性を有する樹脂層を形成させることができる。離型性を有する樹脂層に用いられる樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
積層フィルムは、例えば、本発明の加飾成形用ハードコート剤を樹脂フィルムに塗布した後、加飾成形用ハードコート剤に含まれている分散媒(溶媒)を揮散除去し、成形用フィルムを樹脂フィルム上に形成させることによって製造することができる。加飾成形用ハードコート剤を樹脂フィルムに塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、ローラーコート法、ハケ塗り法、コテ塗り法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、コンマコート法、グラビアコート法、キスコート法、スピンコート法、ディップコート法、カーテンコート法、ドクターブレードコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ダイコート法、マイクログラビアコート法、オフセットグラビアコート法、リップコート法などの方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。樹脂フィルムの表面上に形成される加飾成形用ハードコート剤層の厚さは、特に限定されないが、通常、好ましくは0.1〜50μm程度、より好ましくは1〜30μm程度である。
積層フィルムにおいて、樹脂フィルムの少なくとも一方表面に成形用フィルムが積層されているが、樹脂フィルムと成形用フィルムとの間には他の層が介在していてもよい。当該他の層としては、例えば、所望の情報を与えるための文字、図形、模様などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、積層フィルムに積層されている成形用フィルムの表面には、例えば、「モスアイ構造」に代表されるナノメートルレベルの微細な凹凸パターンを形成させることができる。「モスアイ構造」は、一般に、凹凸パターンの周期が可視光線の波長以下、すなわち、数十〜数百ナノメートルである構造を有する。したがって、成形用フィルムの表面に「モスアイ構造」を形成させた場合には、成形用フィルムの表面に入射する光に対する屈折率を凹凸パターンの深さに沿って連続的に変化させることができるので、当該成形用フィルムの表面における光線の反射を低減させることができる。より具体的には、例えば、成形用フィルムの表面に「モスアイ構造」を形成させることにより、波長380〜780nmの範囲における視感反射率が1%以下、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である反射防止物品を得ることができる。このように反射防止物品の視感反射率が1%以下となるように調整した場合には、外光の映り込みを抑制することができるという利点がある。
成形用フィルムの表面に「モスアイ構造」を形成させる方法としては、例えば、金型の表面に形成された凹凸パターンを成形用フィルムの表面に押しつけることにより、当該凹凸パターンの反転パターンを成形用フィルムの表面に転写させる方法、すなわち、いわゆる「ナノインプリント法」などが挙げられる。
「ナノインプリント法」としては、例えば、成形用フィルムを加熱することによって可塑化させ、金型の表面に形成された凹凸パターンを成形用フィルムの表面に押しつけることにより、当該凹凸パターンの反転パターンを成形用フィルムの表面に転写させる熱ナノインプリント法、加飾成形用ハードコート剤を樹脂フィルムに塗布し、金型の表面に形成された凹凸パターンを成形用フィルムの表面に押しつけることにより、当該凹凸パターンの反転パターンを成形用フィルムの表面に転写させた後、当該加飾成形用ハードコート剤に紫外線などの電磁波を照射し、当該加飾成形用ハードコート剤を硬化させることにより、当該凹凸パターンの反転パターンを成形用フィルムの表面で固定させる電磁波(紫外線)ナノインプリント法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の加飾成形用ハードコート剤を用いて成形体を製造する方法としては、例えば、インモールド成形、真空成形、圧空成形などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの成形方法で成形体を製造する際には、引張り伸びに優れていることから前記成形用フィルムまたは前記積層フィルムを好適に用いることができる。
例えば、成形用フィルムを用いてインモールド成形を行なった場合には、成形用フィルムと成形材料とが、直接的にまたは意匠層、印刷層、接着層などの層を介して一体化された積層フィルムを製造することができる。当該成形用フィルムは、引張り伸びに優れているので成形型の内面形状に対する追随性に優れていることから、所望の形状を有するように容易に成形することができる。また、成形用フィルムは、硬化させたとき、耐擦傷性、伸長性および耐候性に優れているので、得られる成形体のハードコート層として利用することができる。
成形用フィルムまたは積層フィルムを用いてインモールド成形によって成形体を製造する場合には、成形型内に成形用フィルムまたは積層フィルムを配設し、成形型の型締めをした後、成形型に設けられているゲートを介して加熱溶融した成形材料を成形型内に射出し、当該成形用フィルムと成形型の内面との間隙に成形材料を充填した後、成形型を冷却することにより、成形体を製造することができる。得られた成形体が有する成形用フィルムまたは積層フィルムは、引張り伸びに優れているので、成形型の内面形状に追随するという優れた効果を発現する。また、成形用フィルムおよび積層フィルムは、硬化させたとき、耐擦傷性、伸長性および耐候性に優れているので、得られる成形体のハードコート層として利用することができる。その際、成形用フィルムまたは積層フィルムにおいて、成形材料からなる成形物と接触する面に、所望の意匠からなる意匠層、文字などの情報を有する印刷層を形成させておいた場合には、当該成形用フィルムまたは積層フィルムは、これらの意匠層や印刷層の保護膜として利用することができる。
積層フィルムを用いてインモールド成形によって成形体を製造するとき、積層フィルムとして、成形用フィルムと離型性を有する樹脂フィルムとの積層フィルムを用い、当該成形用フィルムが成形材料と接触するように、成形型内に積層フィルムを配設し、成形型の型締めをした後、成形型に設けられているゲートを介して加熱溶融した成形材料を成形型内に射出し、積層フィルムと成形型の内面との間隙に成形材料を充填した後、成形型を冷却することにより、成形体を製造することができる。成形体の製造後は、型開きをすることによって成形体を取り出し、成形体から離型用樹脂フィルムを剥離させればよい。得られた成形体が有する成形用フィルムは、硬化させると優れた耐擦傷性を発現することから、ハードコート層として利用することができる。
成形用フィルムと樹脂フィルムとの積層フィルムを用いてインモールド成形によって成形体を製造するとき、積層フィルムが有する樹脂フィルムが成形材料と接触するように、成形型内に当該積層フィルムを配設し、成形型の型締めをした後、成形型に設けられているゲートを介して加熱溶融した成形材料を成形型内に射出し、積層フィルムと成形型の内面との間隙に成形材料を充填した後、成形型を冷却することにより、表面に成形用フィルムを有する成形体を製造することができる。得られた成形体は、樹脂フィルムを介して成形用フィルムと成形材料からなる成形物とが一体化されている。なお、樹脂フィルムの表面に所望の意匠からなる意匠層、文字などの情報を有する印刷層を形成させておいた場合には、成形用フィルムは、硬化させると優れた耐擦傷性を発現することから、これらの意匠層や印刷層の保護膜として利用することができる。また、樹脂フィルムとして接着性を有するものを用いた場合には、当該樹脂フィルムは、成形用フィルムと、成形材料からなる成形物とを接着させるための接着性フィルムとして利用することができる。
前記成形材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート、AS樹脂、ABS樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、前記成形材料を用いて成形された成形物の形状は、成形体の用途などに応じて適宜決定すればよい。例えば、当該成形物がフィルムである場合には、フィルムの厚さは、通常、30〜200μm程度であればよい。
本発明の加飾成形用ハードコート剤、成形用フィルムおよび積層フィルムは、紫外線、電子線などの放射線の照射、加熱などによって硬化させることができる。
例えば、本発明の加飾成形用ハードコート剤、成形用フィルムおよび積層フィルムを紫外線の照射によって硬化させる場合、紫外線を発生させる光源の種類、光源と加飾成形用ハードコート剤との距離などの条件によっても異なるが、紫外線として波長1000〜5000オングストロームの紫外線を用い、数秒間〜数十秒間程度の間、紫外線を照射することにより、硬化させることができる。
また、本発明の加飾成形用ハードコート剤、成形用フィルムおよび積層フィルムを電子線の照射によって硬化させる場合、当該硬化に適した加速電圧で吸収線が1〜20Mrad程度となるように電子線を照射することにより、硬化させることができる。電子線の照射は、大気中で行なってもよいが、窒素ガスなどの不活性ガス中で行なうことが好ましい。
本発明の被加飾成形用ハードコート剤、成形用フィルムおよび積層フィルムを加熱によって硬化させる場合、機内温度が50〜200℃、好ましくは100〜180℃の乾燥機内で0.5〜60分間程度、好ましくは5〜20分間程度加熱することにより、硬化させることができる。乾燥機としては、例えば、ジェットオーブン、熱風乾燥機などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、加飾成形用ハードコート剤、成形用フィルムおよび積層フィルムを加熱する際には、必要により、予備加熱を行なってもよい。
以上のようにして成形体を製造することができるが、本発明においては、加飾成形用ハードコート剤、成形用フィルムおよび積層フィルムを硬化させたものを用いて成形体を製造することもできる。
本発明の加飾成形用ハードコート剤は、例えば、樹脂製品、金属製品などの成形体に耐擦傷性、伸長性および耐候性に優れた被膜を形成する際に好適に使用することができる。また、本発明の成形用フィルムおよび当該成形用フィルムを有する積層フィルムは、携帯電話、パーソナルコンピュータ、自動車用部品などの筐体の加飾フィルムなどとして好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
調製例
特開平10−226669号公報の記載に準じて、触媒として1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用い、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルとアリルアルコールとを反応させることにより、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルを調製した。
製造例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水105.0gを仕込んだ。
一方、滴下ロートに乳化剤としてアニオン性乳化剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液12.0g、脱イオン水29.0gおよび調製例で得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル100gからなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち当該滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約8.5gをフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液6.0gを添加し、初期反応を開始した。
初期反応が終了した後、フラスコ内を80℃に維持した状態で、前記で得られた滴下用プレエマルションの残部を5時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で1時間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40質量%の樹脂エマルションを得た。樹脂エマルションに含まれる重合体のガラス転移温度は83℃であった。
製造例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水105.0gを仕込んだ。
一方、滴下ロートに乳化剤としてアニオン性乳化剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液12.0g、脱イオン水29.0g、調製例で得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル95gおよびアクリル酸5gからなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち当該滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約8.5gをフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液6.0gを添加し、初期反応を開始した。
初期反応が終了した後、フラスコ内を80℃に維持した状態で、前記で得られた滴下用プレエマルションの残部を5時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で1時間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40質量%の樹脂エマルションを得た。樹脂エマルションに含まれる重合体のガラス転移温度は83.6℃であった。
製造例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水105.0gを仕込んだ。
一方、滴下ロートに乳化剤としてアニオン性乳化剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液12.0g、脱イオン水29.0g、調製例で得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル70gおよびメタクリル酸シクロヘキシル30gからなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち当該滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約8.5gをフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液6.0gを添加し、初期反応を開始した。
初期反応が終了した後、フラスコ内を80℃に維持した状態で、前記で得られた滴下用プレエマルションの残部を5時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で1時間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40質量%の樹脂エマルションを得た。樹脂エマルションに含まれる重合体のガラス転移温度は83℃であった。
製造例4
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水105.0gを仕込んだ。
一方、滴下ロートに乳化剤としてアニオン性乳化剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液12.0g、脱イオン水29.0g、調製例で得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル90gおよびエチレングリコールジメタクリレート10gからなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち当該滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約8.5gをフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液6.0gを添加し、初期反応を開始した。
初期反応が終了した後、フラスコ内を80℃に維持した状態で、前記で得られた滴下用プレエマルションの残部を5時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で1時間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40質量%の樹脂エマルションを得た。樹脂エマルションに含まれる重合体のガラス転移温度は83℃であった。
製造例5
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水105.0gを仕込んだ。
一方、滴下ロートに乳化剤としてアニオン性乳化剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液12.0g、脱イオン水29.0g、調製例で得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル90gおよび2,2−ジメチル−3−(プロペノイルオキシ)プロパン酸2,2−ジメチル−3−(プロペノイルオキシ)プロピル10gからなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち当該滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約8.5gをフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液6.0gを添加し、初期反応を開始した。
初期反応が終了した後、フラスコ内を80℃に維持した状態で、前記で得られた滴下用プレエマルションの残部を5時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で1時間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40質量%の樹脂エマルションを得た。樹脂エマルションに含まれる重合体のガラス転移温度は83℃であった。
製造例6
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水105.0gを仕込んだ。
一方、滴下ロートに乳化剤としてアニオン性乳化剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液12.0g、脱イオン水29.0g、調製例で得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル90g、2,2−ジメチル−3−(プロペノイルオキシ)プロパン酸2,2−ジメチル−3−(プロペノイルオキシ)プロピル9gおよびトリメチロールプロパントリメタクリレート1gからなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち当該滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約8.5gをフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液6.0gを添加し、初期反応を開始した。
初期反応が終了した後、フラスコ内を80℃に維持した状態で、前記で得られた滴下用プレエマルションの残部を5時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で1時間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40質量%の樹脂エマルションを得た。樹脂エマルションに含まれる重合体のガラス転移温度は83℃であった。
製造例7
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水105.0gを仕込んだ。
一方、滴下ロートに乳化剤としてアニオン性乳化剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液12.0g、脱イオン水29.0g、調製例で得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル30gおよびメタクリル酸メチル70gからなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち当該滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約8.5gをフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液6.0gを添加し、初期反応を開始した。
初期反応が終了した後、フラスコ内を80℃に維持した状態で、前記で得られた滴下用プレエマルションの残部を5時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で1時間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が40質量%の樹脂エマルションを得た。樹脂エマルションに含まれる重合体のガラス転移温度は98℃であった。
実施例1
製造例1で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部および硬化性単量体としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302、平均官能基数:16〕100部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
前記で得られた加飾成形用ハードコート剤の物性として耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を以下の方法に基づいて調べ、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
(1)耐擦傷性
加飾成形用ハードコート剤をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:125μm)にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、80℃の温度で2分間乾燥させた後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、ハードコート層が形成された積層フィルムを得た。
前記で得られた積層フィルムを適当な大きさに裁断することによって試験片を作製した。染色堅ろう度試験機〔スガ試験機(株)製、品番:FR−II〕にてスチールウール〔日本スチールウール(株)製、番手:#0000〕に150g/cm2の荷重をかけて試験片の成形用フィルム面を50mmの長さで5往復擦り、試験片の表面で発生した傷の本数を数え、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
25点:傷の数が10本以下
20点:傷の数が11〜20本
15点:傷の数が21〜30本
10点:傷の数が31〜40本
5点:傷の数が41〜50本
0点:傷の数が51本以上
(2)伸長性
加飾成形用ハードコート剤をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:125μm)にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、80℃の温度で2分間乾燥させた後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、ハードコート層が形成された積層フィルムを得た。
次に、前記で得られた積層フィルムを幅10mm、長さ70mmの長方形状に切断することにより、試験片を作製した。
引張試験機〔(株)島津製作所製、商品名:オートグラフAG−X〕を用い、チャック間距離を50mmに設定し、60℃の雰囲気中で500mm/minの引張速度で試験片を伸長し、ハードコート層にクラックが生じない最大の試験片の伸びを測定し、そのときの伸び率を式:
[伸び率(%)]={[最大の伸び(mm)−50mm]÷(50mm)}×100
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
25点:伸び率が70%以上
15点:伸び率が50%以上70%未満
10点:伸び率が20%以上50%未満
5点:伸び率が10%以上20%未満
0点:伸び率が10%未満
(3)耐薬品性
加飾成形用ハードコート剤をアクリル樹脂フィルム〔住友化学(株)製、商品名:テクノロイS001G、厚さ:100μm〕にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるように塗布し、80℃の温度で2分間乾燥させた後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2となるように照射することにより、ハードコート層が形成された積層フィルムを得た。
前記で得られた積層フィルムのハードコート層上に日焼け止め剤〔コパトーン(登録商標) ultra GUARD Lotion SPF50〕を1滴滴下し、60℃の雰囲気中で12時間放置した後、付着した日焼け止め剤をガーゼで拭き取り、日焼け止め剤の塗布部の変化を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて耐薬品性を評価した。
〔評価基準〕
25点:変化が認められない。
15点:僅かに滴下跡が認められる。
10点:僅かに白化が認められる。
5点:白化が明らかに認められる。
0点:白化が著しい。
実施例2
製造例1で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)10部および硬化性単量体としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302、平均官能基数:16〕200部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が67%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例3
製造例1で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)2.5部および硬化性単量体としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302、平均官能基数:16〕50部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が33%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例4
製造例1で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)1部および硬化性単量体としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302、平均官能基数:16〕20部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が17%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例5
製造例1で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部および硬化性単量体としてε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールアクリレート〔日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPCA−60〕100部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例6
製造例1で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部、硬化性単量体としてε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールアクリレート〔日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPCA−60〕50部およびトリシクロデカンジメタノールジアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:SR−833〕50部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例7
製造例2で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部および硬化性単量体としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302、平均官能基数:16〕100部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例8
製造例3で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部および硬化性単量体としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302、平均官能基数:16〕100部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例9
製造例4で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部および硬化性単量体としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302、平均官能基数:16〕100部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例10
製造例5で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部および硬化性単量体としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302、平均官能基数:16〕100部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例11
製造例6で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部および硬化性単量体としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302、平均官能基数:16〕100部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
実施例12
製造例7で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部および硬化性単量体としてε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールアクリレート〔日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPCA−60〕50部およびトリシクロデカンジメタノールジアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:SR−833〕50部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
実施例13
製造例7で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部および硬化性単量体としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート〔サートマー・ジャパン(株)製、品番:CN−2302、平均官能基数:16〕100部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
比較例1
製造例1で得られた樹脂エマルションに含まれる不揮発分100部に対し、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)5部および硬化性単量体としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子量:578)100部を添加することにより、不揮発分における硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーの含有率が50%である加飾成形用ハードコート剤を得た。この加飾成形用ハードコート剤に水を添加することにより、不揮発分の含有率が40%に調整された加飾成形用ハードコート剤を得た。
次に、前記で得られた加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
比較例2
製造例1で得られた樹脂エマルションを加飾成形用ハードコート剤として用い、当該加飾成形用ハードコート剤を用いて耐擦傷性、伸長性および耐薬品性を実施例1と同様にして評価し、各物性の評価における点数を合計することにより、総合得点を求めた。その結果を表1に示す。
なお、各物性において、いずれの物性の評価得点が10点以上である場合には合格基準を満たし、評価得点が10点未満である物性が少なくとも1つ存在する場合には合格基準を満たしていないものと評価する。
Figure 2016180081
表1に示された結果から、各実施例で得られた成形用フィルムは、いずれも、各比較例で得られた成形用フィルムと対比して耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に総合的に優れていることがわかる。
本発明の加飾成形用ハードコート剤は、耐擦傷性、伸長性および耐候性に総合的に優れた被膜を形成することから、例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、自動車用部品などの筐体の加飾フィルムなどとして好適に使用することができる。

Claims (7)

  1. 被膜を形成させる際に用いられる加飾成形用ハードコート剤であって、ヘテロ原子を含む1,5−ジエン構造含有単量体およびヘテロ原子を含む1,6−ジエン構造含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種のジエン構造含有単量体を含有する単量体成分を環化重合させてなるヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体の水性分散体と、硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーとを含有することを特徴とする加飾成形用ハードコート剤。
  2. ヘテロ原子を含む環構造を主鎖に有する重合体が、式(I):
    Figure 2016180081
    (式中、R1は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機基、R2はメチレン基、R3は直接結合またはメチレン基、R4は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、カルボキシル基、エステル基またはシアノ基、R5は直接結合またはメチレン基、XおよびYはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子、Zは直接結合、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子を示し、X、YおよびZのうちの少なくとも1つの基はたがいに隣接しない酸素原子、イオウ原子またはイミノ基である)
    で表わされる環構造含有単位を有する請求項1に記載の加飾成形用ハードコート剤。
  3. 硬化性単量体および/または硬化性オリゴマーが、ハイパーブランチ構造を有する多官能オリゴマー、デンドリマー構造を有する多官能オリゴマー、カプロラクトン変性部位を有する多官能単量体およびアルキレンオキシド変性部位を有する多官能単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の加飾成形用ハードコート剤。
  4. さらに重合開始剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の加飾成形用ハードコート剤。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の加飾成形用ハードコート剤からなる成形用フィルム。
  6. 樹脂フィルムの少なくとも一方表面に請求項5に記載の成形用フィルムが形成されてなる積層フィルム。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の加飾成形用ハードコート剤を用いて成形されてなる成形体。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019077783A (ja) * 2017-10-24 2019-05-23 東洋インキScホールディングス株式会社 加飾シート用組成物、加飾シート、および成型加工品
CN116261508A (zh) * 2020-12-23 2023-06-13 关西涂料株式会社 涂料组合物
US11673983B2 (en) * 2020-07-31 2023-06-13 Canon Kabushiki Kaisha Photocurable resin composition and a method for producing an article

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