JP2015051568A - 食品用ラップフィルム - Google Patents

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秀明 高橋
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Abstract

【課題】耐熱性、カット性及び透明性を全て兼ね備えた食品用ラップフィルムを提供する。【解決手段】本発明の食品用ラップフィルムは、芯層と、該芯層の両面側に形成された表面層とを備え、前記芯層は、示差走査熱量測定における融解ピークの温度が140℃以上のプロピレン系重合体74〜84質量%と、エチレン・環状オレフィン共重合体16〜26質量%とを含有し、前記表面層は、エチレン・α−オレフィン共重合体を含有し、全体を100質量%とした際のプロピレン系重合体含有率が38〜58質量%である。【選択図】なし

Description

本発明は、食品を包装する際に使用されるラップフィルムに関する。
電子レンジを用いて食品を加熱する際には、皿等の容器に置かれた食品をラップフィルムで被覆することがある。通常、ラップフィルムは、箱状の収容部及び蓋部を備えるカートンに収容され、使用時には、必要な長さに収容部から引き出された後、蓋部に取り付けられた紙製や金属製のカット刃によって切断される(例えば、特許文献1)。
ところで、食品中に含まれる糖分や油分が少ない場合には、加熱の際、食品は水の沸点である100℃程度までしか加熱されないが、糖分や油分の含有率が多い場合には、100℃を超える高温に加熱されることがある。従来、ラップフィルムとしては、ポリエチレンやポリ塩化ビニリデン等の低融点樹脂のフィルムが使用されていたが、低融点樹脂のフィルムが100℃超に加熱されると、溶融して食品に付着するおそれがあった。
そこで、ポリプロピレン等の高融点樹脂のフィルムを耐熱ラップフィルムとして使用することが検討されている(特許文献2)。ところが、高融点樹脂のフィルムは、低融点樹脂のフィルムよりも、引張強度や引き裂き強度等が強いため、従来のカット刃では切断しにくく、カット性が不充分であった。
また、耐熱性を高めるために、高融点樹脂の含有率を高くすると、ラップフィルムの透明性が低くなり、ラップフィルムとして要求される透明性が得られないことがあった。
特開2011−251721号公報 特許第4775990号公報
本発明の課題は、耐熱性、カット性及び透明性を全て兼ね備えた食品用ラップフィルムを提供することである。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]芯層と、該芯層の両面側に形成された表面層とを備え、前記芯層は、示差走査熱量測定における融解ピークの温度が140℃以上のプロピレン系重合体74〜84質量%と、エチレン・環状オレフィン共重合体16〜26質量%とを含有し、前記表面層は、エチレン・α−オレフィン共重合体を含有し、全体を100質量%とした際のプロピレン系重合体含有率が38〜58質量%である、食品用ラップフィルム。
[2]芯層と、該芯層の両面側に形成された表面層とを備え、前記芯層は、示差走査熱量測定における融解ピークの温度が140℃以上のプロピレン系重合体74〜84質量%と、エチレン・環状オレフィン共重合体16〜26質量%とを含有し、前記表面層は、エチレン・α−オレフィン共重合体を含有し、示差走査熱量測定において125〜175℃の温度領域における融解ピークの全融解熱量が34〜52mJ/mgである、食品用ラップフィルム。
[3]前記エチレン・環状オレフィン共重合体のガラス転移温度が60℃以上である、[1]または[2]に記載の食品用ラップフィルム。
[4]前記エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が890〜940kg/mである、[1]〜[3]のいずれかに記載の食品用ラップフィルム。
本発明の食品用ラップフィルムは、耐熱性、カット性及び透明性を全て兼ね備えたものである。
本発明の食品用ラップフィルム(以下、「ラップフィルム」と略す。)について説明する。
本発明のラップフィルムは、芯層と、該芯層の両面側に形成された表面層とを備える多層フィルムである。
本発明のラップフィルムは、ラップフィルム全体を100質量%とした際に、プロピレン単位を有するプロピレン系重合体の含有率が38〜58質量%であり、43〜53質量%であることが好ましい。
ラップフィルムにおけるプロピレン系重合体の含有率が38質量%未満であると、耐熱性が不充分になる。例えば、東京都消費生活条例で規定する耐熱試験法による耐熱性が不充分となり、特に、TD方向の耐熱性が150℃未満となる。ここで、TD方向とは、フィルム製造時に幅方向であった方向のことである。
一方、ラップフィルムにおけるプロピレン系重合体の含有率が58質量%を超えると、カット性が低くなる。
本発明のラップフィルムにおいては、プロピレン系重合体の含有率を前記範囲に規定する代わりに、ラップフィルムの示差走査熱量測定での125〜175℃の温度領域における融解ピークの全融解熱量を34〜52mJ/mgに規定してもよい。125〜175℃の温度領域における融解ピークの全融解熱量が34mJ/mg未満であると、耐熱性が不充分になり、52mJ/mgを超えると、カット性が低くなる。
ラップフィルムの示差走査熱量測定において125〜175℃の温度領域における融解ピークの全融解熱量は、プロピレン系重合体の融解熱量であり、ラップフィルムにおけるプロピレン系重合体の含有率に対して概ね比例関係を有する。具体的には、ラップフィルムにおける前記全融解熱量が大きくなる程、プロピレン系重合体の含有率が高くなる。したがって、125〜175℃の温度領域における融解ピークの全融解熱量とプロピレン系重合体の含有率との回帰式を作成すれば、プロピレン系重合体の含有率が未知のラップフィルムにおけるプロピレン系重合体の含有率を求めることができる。すなわち、プロピレン系重合体の含有率が未知のラップフィルムについて、125〜175℃の温度領域における融解ピークの全融解熱量を測定し、その全融解熱量を前記回帰式に代入することより、プロピレン系重合体の含有率を求めることができる。
以下に、125〜175℃の温度領域における融解ピークの全融解熱量からプロピレン系重合体の含有率を求める方法の一例について説明する。
本例は、下記の(工程1)〜(工程7)を有する。
(工程1)プロピレン系重合体及びエチレン・α−オレフィン共重合体の各々について、DSCによって融点(融解ピーク温度)及び融解熱量(融解時の総吸熱量)の概略値を把握する。
(工程2)プロピレン系重合体とエチレン・α−オレフィン共重合体との配合割合が既知の試料Aを少なくとも3点以上調製し、それらのDSCをおこなう。分析条件に特に制限はないが、エチレン・α−オレフィン共重合体の融点よりも少なくとも50℃低い温度から開始し、プロピレン系重合体の融点よりも少なくとも30℃高い温度で終了することが好ましい。プロピレン系重合体が熱分解する場合には、前記温度範囲に加えて、終了温度を、プロピレン系重合体の分解温度よりも少なくとも10℃低い温度とすることが好ましい。
(工程3)(工程2)で得たDSCの125〜175℃の温度領域におけるプロピレン系重合体の融解ピークについて、ベースラインとの間の積分値を求める。このベースラインと融解ピークとの間の積分値は、プロピレン系重合体の融解熱量に相当する。
(工程4){プロピレン系重合体/(プロピレン系重合体+エチレン・α−オレフィン共重合体)}×100の式で算出されるプロピレン系重合体の含有率(%)をXとし、(工程3)で得た融解熱量をYとし、Yに対するXの回帰式を作成する。回帰式は、1次の回帰式でもよいし、2次以上の回帰式でもよい。また、対数式でもよいし、指数式でもよい。回帰式の作成方法は特に限定されず、統計学的に知られている手法を制限なく適用することができるが、簡便である点では、最小二乗法が好ましい。
(工程5)プロピレン系重合体とエチレン・α−オレフィン共重合体との配合割合が不明の試料BについてDSCをおこなう。その際、求める組成の精度が高くなることから、分析条件を(工程2)と同一にすることが好ましい。
(工程6)(工程5)で得たDSCの125℃以上の温度領域におけるプロピレン系重合体の融解ピークについて、ベースラインとの間の積分値、すなわち、プロピレン系重合体の融解熱量を求める。
(工程7)(工程6)で求めたプロピレン系重合体の融解熱量を、(工程4)で得た回帰式に代入して、プロピレン系重合体の含有率を求める。
本発明者らが、上記の方法の(工程4)にて作成した回帰式は、Y=0.9079X−0.7627、であった。この式より、全融解熱量Yが38.5mJ/mgである場合には、ラップフィルムにおけるプロピレン系重合体の含有率Xが約43質量%となる。また、全融解熱量Yが51.4mJ/mgである場合には、プロピレン系重合体の含有率Xが約57質量%となる。
本発明のラップフィルムは、内部ヘイズが3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。ここで、内部ヘイズは、JIS K7136に準拠して測定した値である。
ラップフィルムの内部ヘイズが3%以下であれば、食品を包装した状態でも食品を視認できるため、ラップフィルムとして好適なものとなる。
本発明では、ラップフィルムの内部ヘイズを3%以下にするために、芯層を、プロピレン系重合体とエチレン・環状オレフィン共重合体とを含む層にしている。
本発明のラップフィルムを構成する芯層は、プロピレン系重合体とエチレン・環状オレフィン共重合体とを含有する層である。
本発明で使用するプロピレン系重合体は、ホモポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマーのいずれであってもよいが、示差走査熱量測定における融解ピークの温度が140℃以上、好ましくは150℃以上の重合体である。示差走査熱量測定における融解ピークの温度が140℃未満のプロピレン系重合体は耐熱性が低いため、ラップフィルムの耐熱性を向上させることが困難になる。
芯層におけるプロピレン系重合体の含有率は74〜84質量%であり、75〜82質量%であることが好ましい。芯層におけるプロピレン系重合体の含有率が前記下限値未満であると、ラップフィルムのカット性が低くなることがあり、また、耐熱性が低くなる傾向にある。一方、プロピレン系重合体の含有率が前記上限値を超えると、ラップフィルムのカット性が低下する傾向にある。
本発明で使用するエチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレンと環状オレフィンとの共重合体である。
環状オレフィンは、ノルボルネンやテトラシクロドデセンなど、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物である。具体的には、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の1環の環状オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン5,6−ジカルボン酸イミド等の2環の環状オレフィン;トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンなどの3環の環状オレフィン;テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)などの4環の環状オレフィン;8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、シクロペンタジエンの4量体などの多環の環状オレフィンが挙げられる。
なお、上に例示したモノマー以外にも、例えば特開2003−128865公報に開示されている多数の環状オレフィンが挙げられる。
これらの環状オレフィンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
エチレン・環状オレフィン共重合体における環状オレフィン単位の割合は30〜70質量%であることが好ましく、35〜60質量%であることがより好ましい。エチレン・環状オレフィン共重合体における環状オレフィン単位の割合が前記下限値以上であれば、カット性をより向上させることができる。また、エチレン・環状オレフィン共重合体における環状オレフィン単位の割合が前記範囲であれば、内部ヘイズが小さくなりやすくなる。
エチレン・環状オレフィン共重合体は、ガラス転移温度が60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、75℃以上であることがさらに好ましい。ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定によって求めることができる。
エチレン・環状オレフィン共重合体のガラス転移温度が前記下限値以上であれば、ラップフィルムのカット性を充分に向上させることができる。
一方、エチレン・環状オレフィン共重合体のガラス転移温度は、通常、160℃以下である。
芯層におけるエチレン・環状オレフィン共重合体の含有率は16〜26質量%であり、18〜25質量%であることが好ましい。芯層におけるエチレン・環状オレフィン共重合体の含有率が前記下限値未満であると、ラップフィルムのカット性が低下する傾向にあり、前記上限値を超えると、ラップフィルムの内部ヘイズが悪化する。
芯層には、必要に応じて、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、帯電防止剤、脂肪酸エステルポリグリセライド等の防曇剤、界面活性剤、ワックス、防かび剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤等の添加剤が含まれてもよい。芯層における添加剤含有率は10質量%以下であることが好ましい。
表面層は、エチレン・α−オレフィン共重合体を含有する層である。
エチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。これらα−オレフィンは2種以上であっても構わない。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、例えば、住友化学社製スミカセンCE3506(密度930kg/m)、タイタンケミカルズ社製LDC800YY(密度920kg/m)、ダウケミカル社製ATTANE4404G(904kg/m)等が挙げられる。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は890〜940kg/mであることが好ましい。前記エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が前記下限値以上であれば、ラップフィルムの粘着力が適度に抑制されてブロッキングが起こりにくくなる。一方、前記エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が前記上限値以下であれば、ラップフィルムの粘着性が高くなり、ラップフィルムが食器等の容器に付着しやすくなる。
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、適度な粘着性が容易に得られることから、900〜930kg/mであることが好ましい。
表面層には、エチレン・α−オレフィン共重合体が1種のみ含まれてもよいし、2種以上含まれてもよい。
表面層が、密度890〜940kg/mのエチレン・α−オレフィン共重合体を含む場合、密度が890kg/m未満のエチレン・α−オレフィン共重合体、密度が940kg/mを超えるエチレン・α−オレフィン共重合体を含んでも構わない。ただし、表面層における密度が890〜940kg/mのエチレン・α−オレフィン共重合体の含有割合は90質量%以上であることが好ましい。
また、表面層には、必要に応じて、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、帯電防止剤、脂肪酸エステルポリグリセライド等の防曇剤、界面活性剤、ワックス、防かび剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤等の添加剤が含まれてもよい。表面層における添加剤含有率は10質量%以下であることが好ましい。
本発明のラップフィルムは、芯層と各表面層との間に中間層を備えてもよい。中間層を備えると、ラップフィルムにおけるプロピレン系重合体の含有率を40〜55質量%の範囲に調整しやすくなる。
中間層を構成する材料としては、芯層及び表面層の両方に対して相溶性を有する樹脂、具体的には、ポリオレフィンを含むことが好ましい。中間層におけるポリオレフィンの含有率は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
また、中間層を構成する材料として、該ラップフィルムの幅方向両端をトリミングした際に生じた端切れ部、該ラップフィルムにおける規格外品等の粉砕品およびその粉砕品のリペレットの少なくとも一方を用いることもできる。
中間層にも、必要に応じて、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、帯電防止剤、脂肪酸エステルポリグリセライド等の防曇剤、界面活性剤、ワックス、防かび剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤等の添加剤が含まれてもよい。中間層における添加剤含有率は10質量%以下であることが好ましい。
本発明のラップフィルムの全体の厚さは8〜20μmであることが好ましい。ラップフィルムの厚さが前記下限値以上であれば、充分なフィルム強度が得られ、前記上限値以下であれば、カット性がより良好になる。
多層のラップフィルムを製造する方法としては特に制限はなく、例えば、インフレーション法やキャスト法において共押出して積層する方法、押出ラミネーションを利用する方法、サンドラミネーションを利用する方法、ドライラミネーションを利用する方法等が挙げられる。これらのなかでも、生産性の点から、共押出して積層する方法が好ましく、キャスト法において共押出して積層する方法がより好ましい。
通常、ラップフィルムは、カット刃が取り付けられたカートンに収容され、必要な分だけ巻き出され、カット刃によって切断される。
カット刃としては特に制限はなく、金属製の鋸刃でもよいし、樹脂製の鋸刃でもよい。
鋸刃の各刃の形状に特に制限はないが、ラップフィルムのカット性に優れることから、三角形状の基部と、基部の先端から突出した突起部とからなる刃が好ましい。さらに、前記基部が平板状であり、突起部が湾曲していることが好ましい。突起部が湾曲していると、ラップフィルムに食い込みやすくなるため、カット性がより高くなる。
カット刃を構成する金属としては特に制限されず、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等が挙げられる。
カット刃を構成する樹脂としては特に制限されず、例えば、生分解性プラスチック、ポリオレフィン等が挙げられる。
生分解性プラスチックとしては、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等が挙げられ、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン等が挙げられる。カット刃が生分解性プラスチックである場合には、カートンを土中に埋却した際に分解させることができる。生分解性プラスチックの中でも、カット性がより高くなる点では、ポリ乳酸が好ましい。
以上説明した本発明のラップフィルムは、プロピレン系重合体含有率が規定され、芯層がプロピレン系重合体とエチレン・環状オレフィン共重合体とを特定範囲で含有し、表面層が特定範囲の密度のエチレン・α−オレフィン共重合体を含有する。本発明者らが調べた結果、このようなラップフィルムは、耐熱性、カット性及び透明性を全て兼ね備えていた。
(実施例1〜7、比較例1〜8)
第1表面層/第1中間層/芯層/第2中間層/第2表面層(層比:15/25/20/25/15)からなる3種5層の積層体からなるラップフィルムを、共押出成形機を用いた共押出により作製した。その際、各表面層、中間層及び芯層は、表1,2に示す配合とした。また、各表面層を形成する押出成形機、各中間層を形成する押出成形機及び芯層を形成する押出成形機において、シリンダー先端での樹脂温度が280℃となるようにした。得られたラップフィルムは幅300mmとし、ロール状に巻き取った。得られたロール状のラップフィルムは、カートンに収容した。
各ラップフィルムにおいては、示差走査熱量測定によって、125〜175℃の温度領域における融解ピークの全融解熱量を測定した。その測定結果を表1,2に示す。
実施例及び比較例において使用した材料は下記の通りである。
ポリプロピレン(PP):プライムポリマー社製プライムポリプロF704NP(示差走査熱量測定における融解ピークの温度164℃)
エチレン・環状オレフィン共重合体(COC1):ポリプラスチック社製TOPAS8007F500(ガラス転移温度78℃)
エチレン・環状オレフィン共重合体(COC2):ポリプラスチック社製TOPAS7010X3(ガラス転移温度110℃)
エチレン・環状オレフィン共重合体(COC3):ポリプラスチック社製TOPAS5013X14(ガラス転移温度134℃)
エチレン・α−オレフィン共重合体(EAO):住友化学社製スミカセンCE3506(密度930kg/m
ポリスチレン(PS):東洋スチレン社製トーヨースチロールGP G200C
防曇剤(理研ビタミン社製IS−7P)
Figure 2015051568
Figure 2015051568
<評価>
各実施例及び各比較例のラップフィルムの耐熱性、カット性及び透明性を評価した。評価結果を表1,2に示す。
[耐熱性の評価]
まず、ラップフィルムのロール体から長さ14cm、幅3cmのフィルム片を切り出した。次いで、該フィルム片の長手方向の両端部に、ラップフィルムの幅方向と同方向の長さが3cm、ラップフィルムの長手方向と同方向の長さが2.5cmの板目紙を、粘着テープを用いて貼り付けて、試験片を得た。
次いで、該試験片の長手方向の一端を治具に固定し、治具で固定された端部を上端として試験片を鉛直方向に配置し、治具に固定されていない下端に10gの荷重を付与した。
次いで、試験片に荷重を付与した状態のまま、110℃に調整されたオーブンに入れ、1時間加熱し、加熱後の切断の有無を調べた。
加熱後に試験片が切断していなかったときには、オーブンの温度を5℃高くして、上記と同様に荷重を付与したまま加熱する試験を繰り返した。そして、試験片が切断しなかった最高温度を測定した。その最高温度を「耐熱温度(℃)」とした。
該耐熱温度が150℃以上であれば、東京都条例法で規定される耐熱性基準を満たす。
[カット性の評価]
まず、カートンの蓋部を開き、ラップフィルム収容体からラップフィルムを15〜20cm程度引き出し、引き出したラップフィルムに皺や折れ目が形成されないように蓋部を閉じて、ラップフィルムにカット刃を接触させた。
次いで、引き出したラップフィルムの先端部に、粘着テープを用いて紐(長さ45cm)の一端を固定し、他端に25gの錘を取り付けた。次いで、ラップフィルム収容体のカートンを、水平に対して30°に配置された状態で移動不能に固定した。次いで、ラップフィルムに紐を固定した位置と同じ高さから錘を落下させ、ラップフィルムを下方に引っ張って、ラップフィルムをカット刃に沿って切断した。このとき、ラップフィルムは、その幅方向の全体にわたって切断されず、一部は切断されないままとなった。そして、ラップフィルムが切断された長さ(以下、「切断長さ」という。)を測定した。切断長さはカット性の指標になり、切断長さが長い程、カット性に優れる。
なお、カット刃としては、突起部のない金属製カット刃、突起部のないポリ乳酸(PLA)製カット刃、突起部のあるPLA製カット刃を各々用いた。
上記カット性評価方法は、再現性が高く、また、評価者の違いによる評価結果の違いを低減できる。
[透明性の評価]
JIS K7136に準拠してラップフィルムの内部ヘイズを測定した。内部ヘイズが小さい程、透明性に優れる。
実施例1〜7のラップフィルムは、耐熱性、カット性及び透明性に優れていた。
プロピレン含有率が30質量%の比較例1のラップフィルムは、耐熱性が低かった。
プロピレン含有率が60質量%の比較例2のラップフィルムは、カット性が低かった。
芯層におけるエチレン・環状オレフィン共重合体の含有率が15質量%の比較例3のラップフィルムは、カット性が低かった。
芯層におけるエチレン・環状オレフィン共重合体の含有率が30質量%の比較例4のラップフィルムは、透明性およびカット性が低かった。
芯層においてエチレン・環状オレフィン共重合体の代わりにエチレン・α−オレフィン共重合体を用いた比較例5,6のラップフィルムは、カット性が低かった。
芯層においてエチレン・環状オレフィン共重合体の代わりにポリスチレンを用いた比較例7,8のラップフィルムは、透明性が低かった。

Claims (4)

  1. 芯層と、該芯層の両面側に形成された表面層とを備え、
    前記芯層は、示差走査熱量測定における融解ピークの温度が140℃以上のプロピレン系重合体74〜84質量%と、エチレン・環状オレフィン共重合体16〜26質量%とを含有し、
    前記表面層は、エチレン・α−オレフィン共重合体を含有し、
    全体を100質量%とした際のプロピレン系重合体含有率が38〜58質量%である、食品用ラップフィルム。
  2. 芯層と、該芯層の両面側に形成された表面層とを備え、
    前記芯層は、示差走査熱量測定における融解ピークの温度が140℃以上のプロピレン系重合体74〜84質量%と、エチレン・環状オレフィン共重合体16〜26質量%とを含有し、
    前記表面層は、エチレン・α−オレフィン共重合体を含有し、
    示差走査熱量測定において125〜175℃の温度領域における融解ピークの全融解熱量が34〜52mJ/mgである、食品用ラップフィルム。
  3. 前記エチレン・環状オレフィン共重合体のガラス転移温度が60℃以上である、請求項1または2に記載の食品用ラップフィルム。
  4. 前記エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が890〜940kg/mである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品用ラップフィルム。
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