JP2015050880A - 電動モータ - Google Patents

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Abstract

【課題】ロータの外周にコンパクトな永久磁石を確実に保持しつつ、磁気特性に優れた電動モータを合理的に構成する。【解決手段】構成するロータヨーク21の外周より回転軸芯の方向に窪む磁石挿入部Saを形成し、磁石挿入部Saの開口幅方向の中央側に延出する形態でロータヨーク21に一体形成された規制体22を備えている。永久磁石30には、ロータヨーク21の外周と等しい半径となる円筒状の外壁面31と、規制体22が嵌り込む形態で当接するように外壁面31の一部を切り欠く形態で形成された被係合部Rとが形成されている。【選択図】図4

Description

本発明は、ロータの外周に永久磁石が露出状態で保持されている電動モータに関する。
上記のように構成された電動モータとして特許文献1には、ロータを構成するロータヨーク(文献では磁石バックヨーク)に形成された磁石配置溝に対して永久磁石(文献ではローター磁石)を挿入する技術が示されている。磁石配置溝は、回転軸芯側の底部幅よりも外周側の上部幅を狭くしてオーバーハング部が形成されている。永久磁石は、磁石配置溝の空間形状と略同一となる断面形状に形成されている。
この特許文献1では、永久磁石の外側面の形状がロータヨークの外周面と共通する円筒面状に形成されている。この永久磁石を磁石配置溝部に挿入した状態では外面が露出し、ロータが回転する際にはオーバーハング部が永久磁石に接触して移動が阻止される。また、永久磁石は磁石配置溝に対して接着剤で固定される。
特許文献2には、ロータヨーク(文献ではロータコア)の外周に複数の永久磁石(文献ではロータマグネット)を周方向に配置し、接着剤によりロータヨークに固定し、これらの永久磁石の外周に筒状の保護材を配置する技術が示されている。
特許文献3には、ロータの外周に永久磁石が露出状態で保持される構成ではないが、ロータを構成するロータヨーク(文献では回転子)の外周近傍において周方向に所定の間隔で形成された複数の収納孔に永久磁石を挿入配置した技術が示されている。
この特許文献3では、永久磁石の外側面と裏側面とがロータの回転軸芯を中心とする円筒面に形成され、ロータの一部に形成される極間段部を隣接する永久磁石の間に配置することにより、永久磁石の端部で閉じた磁束を発生させることがなく、磁束を固定子側に指向させ、結果として減磁耐力を向上させている。
特開2013‐21826号公報 特開2009‐44797号公報 特開2012‐257433号公報
特許文献1に記載されるように、モータの外周に保持される永久磁石の外周面を、回転軸芯を中心とするロータの外周面と等しい円筒面状に形成した構成では、永久磁石の外周面をステータの内周に接近させることができ、強い磁界の作用により強力な回転を実現する。
この特許文献1のように、永久磁石の一部をロータヨークに接触させて脱落を阻止する構成は、特許文献2に記載されるように接着剤を用いて永久磁石を固定するものと比較して、永久磁石を適正な位置に確実に保持できることになる。
しかしながら、特許文献1に記載されるように、ロータヨークのオーバーハング部に接触するために永久磁石の端面の形状を設定したものでは、周方向に隣接する永久磁石の端面が非平行となる。これは、特許文献3に示される構成とは異なり、永久磁石の端面から外方に延びる磁束が閉じ、磁気耐力が低下することになる。
また、電動モータでは、永久磁石とロータヨークとの間の間隙に樹脂を充填することも行われている。ただし、特許文献3に記載されるようにロータの外周に表皮部を形成したものでは、樹脂の充填圧により表皮部が外方に変形することも想定されている。
特に、強力な電動モータを構成するためには、永久磁石にサマリウム、ネオジムやジスプロシウム等の希土類が含まれる強力な磁石を用いることも行われている。しかしながら、希土類を含む永久磁石は高価であり、電動モータの製造コストの上昇を招いている。よって、コスト低下の観点から用いる永久磁石のコンパクト化も求められている。
本発明の目的は、ロータの外周にコンパクトな永久磁石を確実に保持しつつ、磁気特性に優れた電動モータを合理的に構成する点にある。
本発明の特徴は、界磁コイルを有する環状のステータと、外周の磁石保持部に永久磁石が露出状態で保持され、前記ステータの内部空間において回転軸芯を中心に回転自在に支持されるロータと、を備えると共に、前記磁石保持部が、前記ロータを構成するロータヨークの外周より回転軸芯方向に窪む磁石挿入部と、この磁石挿入部において前記ロータヨークの外周位置に形成される開口部に対して開口幅方向の中央側に延出する形態で前記ロータヨークに一体的に形成された一対の規制体と、で構成され、前記永久磁石が、前記ロータヨークの外周と等しい半径となる円筒状の外壁面と、この外壁面の反対側の裏壁面と、前記ロータヨークの周方向での両端部位の一対の側壁面と、前記外壁面において前記周方向での両端位置において前記規制体が嵌り込みつつ当接するように前記外壁面の一部を切り欠いて形成された一対の被係合面と、を備えている点にある。
この構成によると、磁石挿入部に永久磁石を挿入した状態で、ロータヨークに形成された規制体が永久磁石の被係合面に接触することで、永久磁石の脱落が阻止される。つまり、この構成では、永久磁石の一部をロータの外周側に露出させる。よって、永久磁石をIPM型(埋込型)と同様に支持する構成であるが、SPM型(露出型)のように、その永久磁石の外壁面をステータの内面に近接させ強力なモータとして構成できる。
ここで、特許文献3に示される構成と同様に永久磁石をロータの内部に収容し、この永久磁石の外周部分(特許文献3では表皮部)が比較的薄い寸法で永久磁石の外側に形成される比較例を想定する。この比較例に対し、請求項1では、永久磁石の外周側にロータヨークの一部が存在しないので、ロータヨークの構成が簡単で製造も容易となる。また、比較例の構成において、ロータヨークと永久磁石との間に樹脂を充填した場合には、充填圧によりロータの外周部分が外方に膨れるように変形することもある。これに対して、請求項1では、ロータヨークの外周から永久磁石の一部が露出する構成であるため、充填した樹脂の一部がロータヨークと永久磁石との隙間から外部に流れ出す現象を招くことがあってもロータヨークの変形を招くことはなく、製造効率が向上する。
特に、永久磁石の外壁面が円筒状に成形されることにより、例えば、板形状のものと比較すると、この板形状の厚さの値と、永久磁石の最大厚の値とを一致させた円筒面状の永久磁石では、周方向での外周側の厚さが薄くなる。そのため永久磁石全体の体積が小さくなる。更に、永久磁石の外壁面の一部を切り欠いて一対の被係合面を形成することにより、本発明の永久磁石の体積を一層低減できる。
従って、ロータの外周にコンパクトな永久磁石を確実に保持しつつ、磁気特性に優れた電動モータが構成された。また、永久磁石を効率的に利用することになるので電動モータの小型化も可能となる。
本発明は、前記永久磁石が、前記被係合面と前記側壁面との境界部分に回転軸芯に沿う方向視で滑らかに連なる円弧状の面取部を備えても良い。
ロータに対して、例えば、図7に示すように(a)板形状と、(b)蒲鉾状と、(c)瓦型との3種の永久磁石30をロータ単体に備えた構成と、図9に示すように前述した3種の形状の永久磁石30をステータの内部のロータに備えた構成とについて、温度上昇時における減磁率を計測した。計測に基づき耐熱温度と減磁率との関係を図8及び図9に示すグラフに示している。このグラフから理解できるように蒲鉾状の永久磁石30の保持力が他の形状のものより大きい。当然のことながら耐熱温度が高いものほど、保持力の値も大きい。
また、3種の形状の永久磁石30についてパーミアンス係数が最小となるコーナ部分(外周側の角部分)のパーミアンス係数を計測した。この計測から各形状の永久磁石30においてコーナ部分のパーミアンス係数が、蒲鉾状の値が、他の形状の値より大きい。つまり、永久磁石として蒲鉾状の耐熱温度が、他の形状の永久磁石より高くなる。これは、耐熱温度は永久磁石の外周側のコーナ部分のパーミアンス係数と比例することを推定させるものである。
また、図6に示すように蒲鉾状の永久磁石30について外周側のコーナ部分のパーミアンス係数を計測した。この計測結果から、永久磁石の外周側のコーナ部分に面取部を形成し、この面取部の半径が大きいものほど、パーミアンス係数が大きくなることが判明した。前述したように永久磁石30の外周側のコーナ部分のパーミアンス係数が耐熱温度と正比例の関係になることから、永久磁石30の外周側のコーナ部分に円弧状の面取部が形成されたものの耐熱温度が高くなることが推定される。このように、永久磁石の形状の設定により耐熱温度を高くできるのである。
本発明は、前記ロータヨークが、磁性鋼板を積層して構成され、前記磁石挿入部と前記永久磁石との隙間に樹脂が充填されても良い。
これによると、磁石挿入部に挿入された永久磁石を、磁石挿入部と永久磁石との間の隙間に樹脂を充填して固定状態で保持することも可能となる。
ウォータポンプの断面図である。 図1のII−II線断面図である。 ロータヨークと永久磁石とを示す断面図である。 ロータヨークの磁石保持部に保持された永久磁石の断面図である。 永久磁石の斜視図である。 永久磁石の形状とパーミアンス係数との関係を示す図である。 ロータ単体に備えた複数形状の永久磁石の角部分のパーミアンス係数を示す図である。 図7に示す形状の永久磁石の耐熱温度を示すグラフである。 ステータの内部空間のロータに備えた複数形状の永久磁石の角部分のパーミアンス係数を示す図である。 図9に示す形状の永久磁石の耐熱温度を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、電動モータMを収容する樹脂製のモータハウジング1と、ポンプPを収容する樹脂製のポンプハウジング2とを連結し、モータハウジング1に制御ケースCを一体形成してウォータポンプが構成されている。
回転軸芯Xと同軸芯に配置される支持シャフト4の一方の端部をモータハウジング1に支持し、他方の端部をポンプハウジング2に支持しており、この支持シャフト4に外嵌する状態で回転自在に樹脂製の回転シャフト5を支持している。この回転シャフト5の一方の端部側に前記電動モータMのロータ20を備え、回転シャフト5の他方の端部側でポンプハウジング2の内部にポンプPを構成する複数のインペラ6を一体形成している。
電動モータMは、ブラシレスDCモータとして構成され、制御ケースCに収容された制御基板7に実装される制御素子によりロータ20の回転が制御される。
本発明の電動モータMは、ウォータポンプ以外に、車両のエンジンにおいて潤滑油を供給する油圧ポンプの駆動源に使用可能であり、また、車両のウインドウの開閉や、ステアリングホイールの駆動源として使用することも可能であり、車両以外に使用しても良い。この実施形態では、電動モータMがブラシレスDCモータとして構成される例を挙げている。しかし、この構成の電動モータMは、三相モータと基本的に共通する構成であるため、三相モータとして構成しても良い。
この実施形態の電動モータMでは、ロータ20に水が触れるため、防水のための構成が必要となる。しかし、例えば、ロータ20が収容される空間が密封された構成となる電動モータMに適用しても良い。この構成では、防水のための工程が不要となる。また、ステータ10の内周側に防水構造が不要となり小型化も可能となる。
〔電動モータ〕
図1及び図2に示すように電動モータMは、回転軸芯Xを中心にした環状に構成されるステータ10と、このステータ10の内部で回転軸芯Xを中心に回転自在に支持されたロータ20とを備えている。
ステータ10は多数の電磁鋼板を積層して構成され、ステータ10に一体的に形成された9つのティース部11に対してインシュレータ12を介して界磁コイル13を巻回した9スロット型に構成されている。尚、ティース部11の数は9つに限るものではない。
〔電動モータ:ロータ〕
ロータ20は、回転シャフト5と一体回転するロータヨーク21と、ロータヨーク21の外周に一部が露出する形態で支持された複数の永久磁石30とを備えることにより全体的に円柱状に構成されている。図2には6つの永久磁石30を備えた6極型を示している。ただし、永久磁石30の数は6つに限るものでない。
図3及び図4に示すように、ロータヨーク21は、打ち抜き加工等により図3に示す形状に成形された多数の磁性鋼板を積層して構成され、このロータヨーク21の外周部位には永久磁石30を保持する複数の磁石保持部Sが形成されている。
磁石保持部Sは、ロータヨーク21の外周より回転軸芯方向に窪む磁石挿入部Saと、この磁石挿入部Saにおいてロータヨーク21の外周位置に形成される開口部に対して開口幅方向の中央側に延出する形態でロータヨーク21に一体形成された一対の規制体22とを備えて構成されている。
磁石挿入部Saには、永久磁石30の底面部が嵌り込むように永久磁石30の磁石幅Wより僅かに広い幅となる溝状部Sgが形成されると共に、この溝状部Sgより外周側において周方向に拡大する拡張部Seが形成されている。この拡張部Seが形成されることにより、規制体22の延出長(周方向での腕の長さ)を拡大している。
規制体22の延出端で前記回転軸芯Xに対向する部位には、回転軸芯Xに沿う方向視で円弧状となる規制円弧面22aが形成されている。
このロータ20では、多数の磁性鋼板を重ね合わせた状態で回転軸芯Xの方向にカシメ加工を行うことにより、多数の磁性鋼板の間にダボ状部を形成し、これにより多数の電磁鋼板の相対位置関係を維持し、夫々の分離を阻止するように構成されている。尚、磁性鋼板の表面は絶縁膜が形成されるため、この絶縁膜として絶縁性の接着剤を用いることで複数の磁性鋼板の位置関係を維持するように構成しても良い。
〔電動モータ:永久磁石〕
永久磁石30は、サマリウム、ネオジムやジスプロシウム等の希土類を含む強力なものが用いられている。この永久磁石30は、図4及び図5に示す形状に成形されるものであるが、磁石の素材を切削により成形しても良く、型を用いて成形しても良い。また、ロータ20を組み立てる工程として、永久磁石30を磁石保持部Sに挿入しても良く、磁石保持部Sに磁石の素材を挿入した後に着磁装置により素材に着磁を行い永久磁石30としても良い。尚、以下の説明では、磁石保持部Sに素材を挿入した後に着磁を行う概念を含むものであるが、磁石保持部Sに挿入する対象を永久磁石30としている。
永久磁石30は、ロータヨーク21の外周と等しい半径となる円筒状の外壁面31と、この外壁面31の反対側で平坦な裏壁面32と、周方向(幅方向)の端部の一対の側壁面33と、外壁面31において周方向の両端位置において規制体22が嵌り込むように、外壁面31の一部を切り欠いて形成された被係合部Rとを備えている。このように永久磁石30は全体的に蒲鉾状に形成されている。
被係合部Rは、規制体22の規制円弧面22aが接触する被押圧面34と、回転軸芯Xに沿う方向視で被押圧面34のうち永久磁石30の幅方向の中央に近い部位から外壁面31の方向に滑らかに立ち上がる被係合円弧面34aとが形成されている。この被係合円弧面34aの半径を規制体22の規制円弧面22aと等しくすることにより、これらの間の隙間を小さくしている。
また、被押圧面34と側壁面33との境界部位には、回転軸芯Xに沿う方向視で滑らかな円弧状に面取を行った形状となる外側円弧面35(面取部の具体例)が形成され、裏壁面32と側壁面33との境界部位には、回転軸芯Xに沿う方向視で滑らかな円弧状に面取を行った形状となる裏側円弧面36が形成されている。
この永久磁石30では、周方向(幅方向)の寸法が磁石幅Wと称し、外壁面31と裏壁面32との間の寸法で最も厚い部位が磁石厚Tと称し、外壁面31のうち規制体22に覆われることなく露出する幅方向での寸法を露出幅Eと称している。
このような構成により、磁石保持部Sの磁石挿入部Saに永久磁石30を挿入して保持した状態では、永久磁石30の裏壁面32が溝状部Sgに嵌り込むと同時に、永久磁石30の被押圧面34に規制体22が接触する位置関係となる。この状態では規制体22が僅かに弾性変形することにより、この規制体22が永久磁石30に付勢力を作用させ、この永久磁石30の姿勢を安定させることになる。
また、永久磁石30の外壁面31が露出幅Eにおいて露出することになり、この露出幅Eの領域の永久磁石30の外壁面31が、ロータヨーク21の外周と滑らかに連なる。このため、周方向に凹凸が形成されるものと比較して回転抵抗を減ずることも可能となる。
また、外壁面31とロータヨーク21の外周面とが円滑に連なる位置に配置されることになる。前述したように規制体22の腕長さを長く設定しているため規制体22を全体的に弾性変形させて必要な付勢力を得ている。
永久磁石30の側壁面33は、隣接する永久磁石30の側壁面33と略平行する姿勢で相対的に配置されるため、この側壁面33から外方に延びる磁束が隣接する永久磁石30の側壁面33から延びる磁束と連なる状態となる。これにより、磁束が閉じることにより磁気耐力が低下する不都合が解消される。
〔永久磁石の性能〕
図6は、永久磁石30の3種類の試作物(a),(b),(c)とについて、減磁が始まる温度まで加熱し、この温度におけるパーミアンス係数の分布状況をコンタープロットにより示したものである。
試作物(a)は、一対の被係合部Rの被押圧面34が形成されたものにおいて、この被押圧面34と側壁面33との間の外周側のコーナ部分が鋭く形成されている。試作物(b)は、被押圧面34と側壁面33との間に円弧状となる外側円弧面35(面取部・外周側のコーナ部分)にコーナ部分の半径が0.5mmに設定されている。試作物(c)は、被押圧面34と側壁面33との間の円弧状となる外側円弧面35の半径が1.0mmに設定されている。
同図には、3種類の試作物(a),(b),(c)を、温度上昇時に減磁が始まる温度でのパーミアンス係数を示している。このように減磁が始まる温度での各試作物の中央部分のパーミアンス係数が「1.5」で、その両側部のパーミアンス係数が「3.0」となる。また、このように減磁が開始される際に永久磁石30の外周側のコーナ部分のパーミアンス係数は最小値となる。また、試作物(a)の外周側のコーナ部分のパーミアンス係数は「1.17」であり、試作物(b)の外側円弧面35(面取部・外周側のコーナ部分)のパーミアンス係数は「1.40」であり、試作物(c)の外側円弧面35(外周側のコーナ部分)のパーミアンス係数は「1.85」である。つまり、永久磁石30の外周のコーナ部分の面取部の半径が大きいものほどパーミアンス係数が大きくなる。
図7には、単体のロータ20に対して、(a)板形状と、(b)蒲鉾状、(c)瓦型となる3種の形状の永久磁石30を備えた試験構成を示しており、図8には、図7の試験構成における保持力と耐熱温度との関係をグラフ化したものを示している。
図8に示すように耐熱温度と保持力との関係は3種の永久磁石30とも略同様の特性で変化するが、蒲鉾状の耐熱温度が高い。また、図7に示すように3種の形状の永久磁石30の外周側のコーナ部分のパーミアンス係数が最小値となるが、その値は、(a)板形状で「0.26」であり、(b)蒲鉾状で「0.52」であり、(c)瓦型で「0.31」である。
図9には、ステータ10のティース部11で取り囲まれる空間の内部に配置されたロータ20に対して、(a)板形状と、(b)蒲鉾状、(c)瓦型となる3種の形状の永久磁石30を備えた試験構成を示しており、図10には、図9の試験構成における保持力と耐熱温度との関係をグラフ化したものを示している。
図10に示すように耐熱温度と保持力との関係は3種の永久磁石30とも略決まった特性で変化するが、蒲鉾状の耐熱温度が高い。図9に示すように3種の形状の永久磁石30のコーナ部分のパーミアンス係数が最小値となり、(a)板形状では「0.75」であり、(b)蒲鉾状では「1.17」であり、(c)瓦型では「0.60」である。
このように3種の形状の永久磁石30の耐熱温度のグラフから判断して、蒲鉾状の耐熱温度が高く、この耐熱温度は、永久磁石30のコーナ部分に最小値として現れるパーミアンス係数の数値が大きい。
このような理由から、図6の試作物(c)のように蒲鉾状であって、外周側のコーナ部分の半径が最も大きいもののパーミアンス係数が大きい値となる形状の永久磁石30の耐熱温度が高いものと推定でき、この形状の永久磁石30を用いることにより電動モータMの耐熱温度を高めている。
尚、ロータ20を組み立てる場合には、前述したように磁性鋼板を積層し、カシメ加工により複数の積層鋼板の位置を決めている。そして、永久磁石30を磁石保持部Sに保持した状態で、永久磁石30とロータヨーク21との間に樹脂を加圧注入し、この樹脂の硬化により永久磁石30とロータヨーク21とを一体化し、また、防水性を現出している。
〔実施形態の作用・効果〕
このように、本発明の電動モータMでは、ロータ20の外周の磁石保持部Sに対して永久磁石30をIPM型(埋込型)と同様に支持している。また、永久磁石30の一部を外周側に露出させることによりSPM型(露出型)のように、その永久磁石30の外壁面をステータの内面に近接させ強力なモータとして構成している。
磁石保持部Sでは、永久磁石30の被係合部Rの被押圧面34に対して、ロータヨーク21の規制体22を当接させることにより永久磁石30の位置を決めており、規制体22の弾性変形を利用して適正に圧着させることにより永久磁石30を安定的保持している。
永久磁石30の側壁面33が、隣接する永久磁石30の側壁面33と略平行する姿勢で相対的に配置されるため、隣接する側壁面33から外方に延びる磁束が互いに連なる状態となり、減磁耐力を向上させている。
特に、永久磁石30の被押圧面34と側壁面33との間に形成されるコーナ部分を円弧状に成形することにより永久磁石30の耐熱温度を高めている。
また、磁石厚Tと同じ厚の板形状の永久磁石30と比較すると、周方向での両端部の厚さを薄くして、全体の体積を小さくすることが可能となる。更に、被係合部Rが一部を切り欠く形態で形成されているので体積を一層低減できるため、永久磁石30としての性能を低下させることなく永久磁石30を製造するに必要とする材料の減量を可能にして、コストの低減に繋がる。
また、この構成によると、ロータヨーク21と永久磁石30との間に樹脂を加圧注入した場合でも、樹脂の圧力が規制体22の延出端と永久磁石30との間の隙間から漏れ出すことが可能である。従って、注入圧により規制体22を外側に変形させることもない。
本発明は、ロータの外周に永久磁石を一部露出させる形態で支持した電動モータに利用することができる。
10 ステータ
13 界磁コイル
20 ロータ
21 ロータヨーク
22 規制体
22a 規制円弧面
30 永久磁石
31 外壁面
32 裏壁面
33 側壁面
34 被押圧面
34a 被係合円弧面
35 面取部
R 被係合部
Sa 磁石挿入部
X 回転軸芯

Claims (3)

  1. 界磁コイルを有する環状のステータと、
    外周の磁石保持部に永久磁石が露出状態で保持され、前記ステータの内部空間において回転軸芯を中心に回転自在に支持されるロータと、を備えると共に、
    前記磁石保持部が、前記ロータを構成するロータヨークの外周より回転軸芯方向に窪む磁石挿入部と、この磁石挿入部において前記ロータヨークの外周位置に形成される開口部に対して開口幅方向の中央側に延出する形態で前記ロータヨークに一体的に形成された一対の規制体と、で構成され、
    前記永久磁石が、前記ロータヨークの外周と等しい半径となる円筒状の外壁面と、この外壁面の反対側の裏壁面と、前記ロータヨークの周方向での両端部位の一対の側壁面と、前記外壁面において前記周方向での両端位置において前記規制体が嵌り込みつつ当接するように前記外壁面の一部を切り欠いて形成された一対の被係合面と、を備えて構成されている電動モータ。
  2. 前記永久磁石が、前記被係合面と前記側壁面との境界部分に回転軸芯に沿う方向視で滑らかに連なる円弧状の面取部を備えている請求項1記載の電動モータ。
  3. 前記ロータヨークが、磁性鋼板を積層して構成され、前記磁石挿入部と前記永久磁石との隙間に樹脂が充填されている請求項1又は2記載の電動モータ。
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