本発明は、帯状のトイレットペーパーを紙管に巻いたトイレットロール、及びそのトイレットロールの製造方法に関する。
従来、トイレットロールの機能向上を目的として消臭機能を付与することが提案されている。例えば、トイレットロールを構成する紙管の内面に消臭剤を付与する方法(特許文献1))等が提案されている。
一方、トイレ空間の悪臭成分に対して有効な消臭剤成分として、カテキンガレート、タンニン酸等を始めとする植物等より抽出されるなどしたポリフェノールやその誘導体、類似体類がある(以下、このポリフェノールやその誘導体、類似体類をポリフェノール等ともいう)。しかし、これらのポリフェノール等を紙管に対して付与するには以下のような問題がある。
まず、トイレットロールを構成する紙管の内面には、意匠性の向上や表面の保護、ロットナンバーの付与などのために、文字・絵柄を印刷することが行なわれており、この印刷には、主にアクリル樹脂を含む水性インキが用いられている。ポリフェノールは酸性であるため、ポリフェノール等を含むポリフェノール系消臭剤と上記水性インキとを併用すると、ポリフェノール系消臭剤と水性インキ中のアクリル樹脂とが反応して凝集が生じ、印刷の色ムラが発生したり、紙管に対して消臭剤が定着せずに剥離してしまう。
また、ポリフェノール系消臭剤は、抽出元である植物に由来する多糖類が混入しやすく、塗工表面にべたつきが発生しやすい。
このように、ポリフェノールを紙管に対して付与しようとしても、定着しなかったり、印刷ムラを誘発したり、塗布部分にべたつきが生じてしまうという、問題があった。
実開昭62−197660
特許5032398号
特開2009−203408号公報
特開2007−237672号公報
特開2001−71627号公報
特開2012−45791号公報
そこで、本発明の主たる課題は、べたつきや色ムラや消臭剤の剥離なく、消臭効果の高いポリフェノール系消臭剤を紙管内面に付与したトイレットロール及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである
〔請求項1記載の発明〕
帯状のトイレットペーパーが紙管に巻かれたトイレットロールの製造方法であって、
ポリフェノール系消臭剤と低級アルコールとポリアミド樹脂と着色剤とを含む消臭剤含有着色剤を、紙管原紙の少なくとも一方面に塗布する工程と、
前記消臭剤含有着色剤を塗布した紙管原紙を塗布面が内周面となるようにして筒状に形成する工程と、
その筒状に形成したものに対してトイレットペーパー原紙を巻き付ける工程と、
を有することを特徴とするトイレットロールの製造方法。
〔請求項2記載の発明〕
前記消臭剤含有着色剤は、ポリフェノール系消臭剤25〜67重量%、低級アルコール8〜24重量%、ポリアミド樹脂1〜10重量%を含む、請求項1記載のトイレットロールの製造方法。
〔請求項3記載の発明〕
前記紙管原紙を筒状に形成する工程においてトイレットロールの幅の複数倍幅以上の長さの筒状にし、その筒状に形成したものに対してトイレットロールの幅の複数倍幅以上の長さトイレットペーパー原紙を巻き付けて、トイレットロールの径と同径でありかつトイレットロールの幅の複数倍幅以上のログを形成したのち、このログをトイレットロールの幅に裁断する、請求項1又は2記載のトイレットロールの製造方法。
〔請求項4記載の発明〕
帯状のトイレットペーパーが紙管に巻かれているトイレットロールであって、
前記紙管内周面の一部又は全部が着色され、かつ、その着色された部分にポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体の少なくとも一種とポリアミド樹脂とを含む、ことを特徴とするトイレットロール。
以上の本発明によれば、べたつきや色ムラや消臭剤の剥離なく、消臭効果の高いポリフェノール系消臭剤が紙管内面に付与されたトイレットロール及びその製造方法が提供される。
本発明の実施形態に係るトイレットロールの斜視図である。
本発明の実施形態に係るトイレットロールの製造方法の概要を示す図である。
本発明の実施形態に係る長尺紙管の製造方法を示す図である。
本発明の実施形態を図1〜3を参照しながら以下に説明する。但し、本発明は、この実施形態に限られない。
「トイレットロールの製造方法」
本発明の実施形態に係るトイレットロール10の製造方法例を図面を参照しながら説明する。但し、本発明によるトイレットロールの製造方法は、この方法に必ずしも限定されるわけではない。
本実施形態のトイレットロールの製造方法は、図1に示すように、長尺の紙管30を製造する工程(A)と、その長尺の紙管を用いてログを製造するログ製造工程(B)と、ログを裁断して個々のトイレットロールにする裁断工程(C)と、を有している。
〔紙管製造工程(A)〕
本実施形態の紙管製造工程は、図1中(A)、図4に示すように、原反ロール31A,32Aから繰出された二枚の帯状の紙管原紙31,32のうち一方の紙管原紙31の一方面に糊付けロール51により糊を付与し、前記一方の紙管原紙31の糊付けされた面に他方の紙管原紙32を幅方向に一部重ね、前記他方の紙管原紙32の糊付け面と接しない面をマンドレルシャフト52に対向する面、すなわち紙管内面となる面にして、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に螺旋状に巻き付けて連続的に筒状部分29を形成し、その筒状部分29をトイレットロールの複数倍幅以上の幅でカッター58によりカットして長尺のスパイラル紙管30(スパイラル式紙管とも称される)を形成する。このスパイラル紙管は、一方の紙管原紙31が紙管外面側、他方の紙管原紙32が紙管内面側となる態様の二層積層構造となる。なお、本実施形態では、2枚の紙管原紙31,32をスパイラル巻きしているが、1枚又は3枚以上の紙管原紙をスパイラル巻きして長尺の紙管を形成してもよい。
紙管原紙31,32としては、米坪が120〜220g/m2、紙厚が150〜500μmであるのが望ましい。着色剤消臭剤の塗工操作がしやすく、また、トイレットロールとなった際に十分な強度の紙管とすることができる。なお、長尺紙管30の形成するにあたって、この他方の紙管原紙32と対となるもう一方の紙管原紙31は、違う原反を使用してもよく、例えば、米坪を変えたりしてもよい。
紙管原紙31に対する糊の付与量は特に限定されないが、1〜25.0g/m2程度である。また、糊は、本発明の効果を妨げない範囲で既知の紙管用のものを用いることができ、アクリル系接着剤、ホットメルト接着剤、澱粉糊、PVA(ポリビニルアルコール)等が例示できる。
図示の形態では、各紙管原紙31,32のマンドレルシャフト52への巻き付けは、一対のプーリー53,53間に巻き掛けられた平ベルト54により、マンドレルシャフト52上の所定部分に位置する筒状部分29に回転力を与え、その回転により紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52の軸心に対して所定角度で引き込んで、螺旋状に巻くようにしている。図示例では、一対のプーリー53,53を二機配置して二つの平ベルト54,54により、筒状部分29に回転力を与えているが、一機の一対のプーリーと平ベルトにより筒状部分に回転力を与えるようにしてもよい。また、図示しないが、筒状部分29に平ベルト54ではなくロールを当接させて回転力を与えるようにしても、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けることができる。
ここで、紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けてスパイラル紙管の形成するにあたっては、図示例からも理解されるように、紙管原紙31,32が連続的にマンドレルシャフト52に送り込まれることにより筒状部分29が長くなり、その筒状部分29が連続的に形成されてマンドレルシャフト52の先端方向に伸びていく。そして、その過程では、筒状部分29の内面がマンドレルシャフト52の周面に摺接しながら、マンドレルシャフト52の先端方向に向かって移動していくことになる。
本実施形態では、このように長尺の紙管30を形成する前段において、紙管原紙のマンドレルシャフト52にスパイラル巻きした際に長尺紙管30の内面側になる面を有する紙管原紙32に対して塗工機61により着色剤を含む着色剤含有消臭剤41を付与する。
図示の形態では、二枚の紙管原紙31,32のうち前記他方の紙管原紙32がマンドレルシャフト52にスパイラル巻きした際に長尺紙管30の内面側になる面を有するようになっていることから、その紙管原紙32に対して着色剤を含む消臭剤41を付与している。但し、本実施形態は、この図示の形態に限らず、二枚の紙管原紙の双方に付与してもよいし、例えば、1枚又は3枚以上の紙管原紙を用いて、長尺紙管30を形成する場合には、その筒状にした際に内面となる面を有する紙管原紙の少なくとも一つの当該面に着色剤含有消臭剤を付与すればよい。
本実施形態の着色剤含有消臭性41は、有効成分としてポリフェノール系消臭剤と低級アルコールとポリアミド樹脂と着色剤とを含む。着色剤は、公知の染料又は顔料を用いることができる。着色剤含有消臭剤は、前記ポリフェノール系消臭剤と低級アルコールとポリアミド樹脂を混合した消臭剤薬液に対して、染料又は顔料を含む着色剤を適宜の色の濃さや色に応じて混合することにより調製することができる。前記着色剤含有消臭剤の好ましい配合割合は、ポリフェノール系消臭剤25〜67重量%、低級アルコール8〜24重量%、ポリアミド樹脂1〜10重量%を含むものである。これに適宜の水性溶媒を3〜66重量%含むことができる。水性溶媒は、ポリフェノール系消臭剤、低級アルコール及びポリアミド樹脂と反応性を有さない適宜のものが選択でき、特に水が適する。着色剤の配合割合については、上記のとおり適宜の配合割合とすることができる。したがって、本実施形態の特に好ましい着色剤含有消臭剤は、ポリフェノール系消臭剤25〜67重量%、低級アルコール8〜24重量%、ポリアミド樹脂1〜10重量%を含む消臭剤薬液を調製した後、これに適宜着色剤を配合して調製することができる。
本実施形態に係るポリフェノール系消臭剤は、pH4.0〜6.9の酸性を呈するものであり、消臭効果を奏する有効成分として茶 柿、ブドウ等の植物及び植物の加工品から抽出されるなどした、ポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体の少なくとも一種(以下、ポリフェノール等ともいう)を0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは、1〜10重量%含むものである。その他の成分として、水等の溶媒や保存剤、pH調製剤等の助剤を含みうる。また、安定性、ポリフェノール等への官能基の付与、自身の反応性による消臭効果のさらなる向上の観点等のため有機酸、有機酸塩が配合されていてもよい。有機酸、有機酸塩は、トイレットロールを構成するトイレットペーパーが、人体に直接触れるものであることを考慮して、人体に対する安全性の高いものであるのが望ましく、例えば、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、グルタル酸、アミノ酸、アジピン酸、アスコルビン酸、又はこれらの無機塩もしくは有機塩が例示できる。塩を形成する無機塩基としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等が例示できる。また、有機塩基としては、窒素含有塩基、例えば一級、二級又は三級アミン、イミノ基、グアニジノ基、イミダゾリノ基、イミダゾリル基、ピリジル基等の基を有する化合物が例示できる。
上記ポリフェノール系消臭剤は、主に有効成分であるポリフェノール等のフェノール性水酸基の反応等により、トイレ空間内の悪臭成分の一つであるアンモニアに対する高い消臭機能を有する。もちろん、アンモニアに加えて、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミンに対して反応性を有して消臭機能を有するものも存在し、用いるポリフェノール系消臭剤はそのようなものであってもよい。例えば、ポリフェノール誘導体の中には、特許3919729号のように人為的に分子量の高いポリフェノールに対して適宜の官能基を持たせて、特定の成分に対する消臭機能を付加或いは高めたものが知られているが、そのようなものであってもよい。
本実施形態に係るポリフェノール等のより好ましい具体例としては、タンニン、カテキン、ルチン、アントシアニン、エラグ酸、クマリン、フラボン及びこれらの誘導体又は前駆体である。これらはトイレの悪臭成分に対して特に高い消臭効果を発揮する。したがって、ポリフェノール系消臭剤は、これらを少なくとも一種含むものが望ましい。
上記具体例のなかでも、特に好ましいものは、特にタンニン及びその誘導体である。タンニン及びタンニン誘導体は、分子量が大きくフェノール性水酸基を多く有するため消臭機能に優れる。なお、タンニンは、縮合型タンニン、加水分解型タンニンのいずれでよい。また、タンニンのなかでも、柿由来の柿タンニンは、分子量が非常に大きく、消臭効果に極めて優れるため、ポリフェノール系消臭剤としては、この柿タンニン及び柿タンニン誘導体の少なくとも一方を含むようにするのがよい。
また、ポリフェノール系消臭剤は、市販されているものを用いることができる。例えば、リリース科学工業株式会社製のPancil COS-15、Pancil COS-17、Pancil CL-10、Pancil AS-10、Pancil AS-20、Pancil BA-210-1、Pancil COS-5、Pancil FG-22、Pancil FG-25、Pancil FG-30、Pancil FG-60、Pancil FG-70、Pancil FG-99、Pancil FX10、Pancil PO -10、Pancil BA-200E-1を適宜用いることができる。
他方、本実施形態における低級アルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、プロパノール類が挙げられる。これらの混合アルコールでもよい。トイレットロールを構成する紙管原紙31,32は、トイレットペーパーのような薄葉紙とは異なり、ある程度の剛性が必要で坪量も高いものあるため、JIS P 8122(2004)に記載の方法で測定したステキヒトサイズ度が150〜250秒である。また、ポリフェノール系消臭剤は、紙へのなじみが良好ではない。したがって、そのまま塗工しても弾いたりしてムラになりやすい。しかし、ポリフェノール系消臭剤とともに低級アルコールを含有させると、ポリフェノール系消臭剤の紙管原紙へのなじみ及び乾燥性が向上し、紙管原紙にムラなく効果的に付与できるようになる。また、ポリフェノール系消臭剤は、植物由来の多糖類を排除することが難しく、これに起因するべたつきが発生しやすいが、低級アルコールを含有させることにより、べたつきが防止される。
他方、本実施形態におけるポリアミド樹脂としては、水溶液中においてアミド基を有するものであり、具体例としてはポリアクリルアミド樹脂が挙げられる。商品としては、例えば、東洋インキ社アクワNADEが使用できる。一般に、染料及び顔料を用いた水性インキ中のバインダー樹脂としてもちいられるアクリル樹脂は、カルボキシル基を有しているため、このカルボキシル基がポリフェノールの水酸基と反応し、凝集が生じて塗布ムラを生じてしまう。本実施形態では、ポリアミド樹脂を用いることにより、ポリフェノール系消臭剤と反応することなくバインダーとして機能させることができる。これにより染料及び顔料とポリフェノール系消臭剤を紙管原紙32にムラ無く定着させることが可能となる。また、ポリアミド樹脂は、紙管原紙32への付与後に乾燥して比較的強固な塗膜を形成するためマンドレルシャフトとの摺接時など紙管の加工時やトイレットロールの実使用時における消臭剤の剥離をも防止する。
紙管原紙32に着色剤含有消臭剤層41を付与するには、図示の形態では、紙管原紙32が巻かれた原反ロール32Aから当該紙管原紙32を繰出し、マンドレルシャフト52への巻き付けを行なう前に、塗工機61でその紙管原紙32の一方面の全体又は一部に塗工して行なっている。但し、この形態に限らず、原反ロールに巻き取る前の紙管原紙32,31に対して予め着色剤含有消臭剤41を塗工しておいてもよい。本実施形態では、ポリフェノール系消臭剤を付与してもべたつき等がなく、また、比較的強固な皮膜が形成されるため、原反ロール巻き取り前に着色剤含有消臭剤を付与しておいても原反ロールからスムーズに紙管原紙を繰出すことができる。
紙管原紙32に着色剤含有消臭剤層41を付与する塗工機61としては、フレキソ印刷機、グラビア印刷機等の既知の印刷機のなかから適宜選択することができる。塗工機61による着色剤含有消臭剤41の付与態様としては、ベタ印刷のほか網点状、円状、ブロック状など適宜のパターン印刷、図形などの模様印刷や文字の印刷として付与することができる。
着色剤含有消臭剤41の付与量としては、印刷による模様等に応じて適宜設計できるが、付与量が5〜80g/m2となるようにするのが望ましい。この範囲であれば、生産性よく着色剤含有消臭剤41を十分に塗工することができ、また、十分な消臭効果を奏する量の消臭剤を付与することができる。
他方、図示の形態では、紙管原紙に着色剤含有消臭剤を付与した後にヒーター(乾燥機)62により付与部分の乾燥を行なうようにしている。このように乾燥を行なうことにより塗膜が確実に形成されやすくなり、後段の加工が行ないやすくなる。
〔ログ製造工程(B)〕
他方、本実施形態では、上記の長尺紙管30の製造と平行して又はその後において、ログ製造工程(図1中(B))にて、ログ70を製造する。なお、ログ70とは、業界においての一般用語であり、最終製品であるトイレットロール10の径と同径でありかつ幅が最終製品の複数個分ある中間製品である。
このログ70の製造は、連続的に又は段階的に、長尺紙管30と実質的に同幅のトイレットペーパー原紙71,71を、ロール71A,71Aから繰り出すとともに巻き付けてログ70を形成する。この巻き付けは、既知のワインダー装置X2が利用できる。
図示の形態では、二つのロール71A,71Aから単層のトイレットペーパー原紙71,71を繰り出して、重ね合わせ部81にて2プライのトイレットペーパー原紙72とした後、ミシン目線形成装置82にてミシン目線の形成を行なった後、巻き取り装置83にて巻き取り2プライ構造となるようにしている。但し、本発明に係るトイレットペーパー原紙は、2プライに限定されず、1プライ若しくは3プライ以上であってもよい。また、複数プライ構造とする場合には、各原紙の米坪や物性等は同じである必要もない。さらに、ワインダー装置X2でプライ構造にするのではなく、予め積層されたトイレットペーパー原紙を巻き取ったロールからトイレットペーパー原紙を繰出して長尺紙管30に巻き付けてログ70を形成すようにしてもよい。
また、図示の形態では、ミシン目線形成装置82を設けてミシン目線を付与する形態を示しているが、本発明では必ずしもミシン目線形成装置及びミシン目線の付与は必須ではない。さらに、本実施形態において、図示はしないが、ミシン目線付与装置82の前段に既知のコンタクトエンボス付与装置を設けてコンタクトエンボスを付与してもよいし、重ね合わせ部81の前段で各トイレットペーパー71,71にエンボスロールでエンボスを付与するようにしてもよいし、その付与したエンボスの凸部頭頂に接着剤を付与して係る接着剤でシート同士を積層一体化するようにしてもよい。
〔裁断工程(C)〕
以上のように、ログ70を製造したならば、このログ70を既知のログアキュームレーターX3で複数本をストックしつつ後段のログカッター設備X4へと移動させる。そして、その後に図1中(C)に示すように、既知のログカッター91でログ70を製品幅に裁断し、個々のトイレットロール10,10…とする。
「トイレットロールの製造方法の他の実施形態」
上記説明の実施形態は、ログ70を仲介してトイレットロール10を形成する方法を説明したが、本発明は必ずしもログ70を形成しないてトイレットロール10を形成することもできる。
例えば、上述の長尺の紙管30を形成する工程Cにおいて、筒状部分29をトイレットロール10と同幅かやや幅広でカッター58によりカットして紙管を形成した後、これと同幅のトイレットペーパー原紙72を巻き付けることで、ログ70を介さずに直接的にトイレットロール10とすることができる。トイレットロール10よりやや幅広の紙管にトイレットロール10よりやや幅広のトイレットペーパー原紙72を巻き付けて、その両端面部分をカットすることで端面を整えることができる。着色剤含有消臭剤41やその付与形態については、上記ログ70を仲介する方法と同様に行なうことができる。
「トイレットロール」
次いで、本実施形態に係るトイレットロール10について説明する。本実施形態に係るトイレットロール10は、図3に示すとおり、紙管11に帯状の家庭用薄葉紙であるトイレットペーパー12が巻かれたものである。このトイレットロール10は、上記のトイレットロール10の製造方法により製造することができる。
本実施形態にかかるトイレットロール10の大きさ等は、幅L1が100〜115mm、直径L2が100〜120mm、巻き長さ(トイレットペーパーの全長)が18〜70m、紙管内径L3が35〜50mmであるのが望ましい。この大きさであれば一般的なトイレットロール用のペーパーホルダーが利用でき、トイレットペーパーの長さも十分である。
トイレットペーパー12は、微細な凹凸であるクレープを有する家庭用薄葉紙であるが、その具体的な組成・構成は限定されない。トイレットペーパー12は、1プライから3プライのものが望ましい。紙厚は、100〜350μmであるのが望ましい。また、1プライ当り米坪は、11.0〜25.0g/m2であるのが望ましい。この範囲であれば使用時の柔らかさや吸水性を確保できる。
なお、本発明に係る米坪とは、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法によるものであり、紙厚とは、JIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて5回測定した平均値をいう。
本実施形態に係るトイレットロール10は、特徴的に、前記紙管11の内周面11Aの一部又は全部が着色されており、その着色された部分にトイレ空間内の悪臭成分に対して消臭効果を有するポリフェノール等の少なくとも1種と、ポリアミド樹脂とを含む。すなわち、本実施形態のトイレットロール10は、紙管内面11Aに染料又は顔料がポリアミド樹脂によって定着され、これにより着色されているとともに、その定着部分にポリフェノール等が含有されている。なお、本実施形態に係る着色された部分にポリフェノール等の少なくとも1種と、ポリアミド樹脂を含む態様は、上記の製造方法により製造されるような、それらが混合された状態で付与されているような態様のものであり、ポリフェノール等とポリアミド樹脂とが別々に付与されて層構造となっているような態様のものではない。
着色部分は、より具体的には、ベタ印刷、網点状、円状、ブロック状など適宜のパターン印刷、図形などの模様印刷、文字の印刷等である。着色の色は特に限定されない。
ポリフェノール等としては、上記製造方法の欄でも説明しものと同様であり、茶 柿、ブドウ等の植物及び植物の加工品から抽出されるなどしたものである。本発明に特に好ましいものとしてタンニン、カテキン、ルチン、アントシアニン、エラグ酸、クマリン、フラボン及びこれらの誘導体又は前駆体が挙げられる。これらは、トイレ空間の悪臭成分に対する消臭効果に優れる。なかでも、特にタンニン及びその誘導体が望ましい。タンニン及びタンニン誘導体は、分子量が大きくフェノール性水酸基を多く有するため消臭機能に優れる。なお、タンニンは、縮合型タンニン、加水分解型タンニンのいずれでよい。また、タンニンのなかでも、柿由来の柿タンニンは、分子量が非常に大きく、消臭効果に極めて優れるため、ポリフェノール系消臭剤としては、この柿タンニン及び柿タンニン誘導体の少なくとも一方を含むようにするのがよい。
なお、紙管に対するポリフェノール等の付与量としては、紙管内周面の面積を基準として、0.002〜6.0g/m2であるのが望ましい。より、好ましくは0.2〜2g/m2である。この含有量であれば、ポリフェノール系消臭剤による消臭効果を十分に発揮させることができ、また、付与もしやすい。
ポリアミド樹脂は、ポリアクリルアミド樹脂であるのが望ましい。本実施形態のトイレットロールでは、バインダー成分がポリアミド樹脂であることにより、紙管内面にべたつきがなく、剥離もし難いものとなる。その結果、そこに含まれるポリフェノール等及び着色剤の剥離もし難いものとなる。
本発明の効果を確認すべく試験を行なった。試験は、坪量170g/m2、紙厚200μm、ステキヒトサイズ度200秒の紙管原紙に対して下記表1に示す異なる組成・配合割合の着色剤含有消臭剤を予め付与し、それら着色剤含有消臭剤を付与した紙管原紙をもちいて、上記〔紙管製造工程(A)〕の欄で説明した手順により長尺の紙管を形成して、その付与面及び紙管内面を観察することにより行なった。なお、着色インキは東洋インキ株式会社製LOX39藍、低級アルコールは、イソプロピルアルコールを用いた。消臭剤は、リリース科学工業株式会社製Pancil FG-25を使用した。
評価は、付与面のべたつき、印刷適性、剥がれの3項目とした。
印刷適性は、グラビア印刷機を用いてパターン印刷を行い、ムラ無く印刷できるか否かを目視にて評価した。評価基準は、色ムラありを×、色ムラ無しを○とした。
べたつきについては、紙管原紙に着色剤を付与したのち3分後も手で触ってべたつきがないか否かを確認した。評価基準は、べたつきがあるものを×、べたつきが無いものを○とした。
剥離については、長尺紙管を形成したのちその内面を観察して、着色剤含有消臭剤が剥がれている部分があるか否かを目視にて確認した。剥がれがみられるものを×、剥がれがみられないものを○と評価した。
上記表1に示されるように、本発明の実施例については、べたつき、印刷適性、剥がれの評価のいずれも良好な結果が得られた。これに対して、比較例1〜4では、べたつき、印刷適性、剥がれの項目において問題のある結果となった。
以上のことから、本発明により、べたつきや色ムラや消臭剤の剥離なく、消臭効果の高いポリフェノール系消臭剤が紙管内面に付与されたトイレットロール及びその製造方法が提供できることが確認された。
10…トイレットロール、31A,32A…原反ロール、31,32…紙管原紙、51…糊付けロール、29…筒状部分、58…カッター、30…長尺の紙管、52…マンドレルシャフト、53…プーリー、54…平ベルト、61…塗工機、62…乾燥機、41…着色剤含有消臭剤、70…ログ、71…トイレットペーパー原紙、71A…ロール、72…2プライのトイレットペーパー原紙、81…重ね合わせ部、82…ミシン目線形成装置、83…巻き取り手段、91…ログカッター、11…紙管、11A…紙管内面、12…トイレットペーパー、L1…トイレットロールの幅、L2…トイレットロールの直径、L3…紙管内径。
本発明は、帯状のトイレットペーパーを紙管に巻いたトイレットロール、及びそのトイレットロールの製造方法に関する。
従来、トイレットロールの機能向上を目的として消臭機能を付与することが提案されている。例えば、トイレットロールを構成する紙管の内面に消臭剤を付与する方法(特許文献1))等が提案されている。
一方、トイレ空間の悪臭成分に対して有効な消臭剤成分として、カテキンガレート、タンニン酸等を始めとする植物等より抽出されるなどしたポリフェノールやその誘導体、類似体類がある(以下、このポリフェノールやその誘導体、類似体類をポリフェノール等ともいう)。しかし、これらのポリフェノール等を紙管に対して付与するには以下のような問題がある。
まず、トイレットロールを構成する紙管の内面には、意匠性の向上や表面の保護、ロットナンバーの付与などのために、文字・絵柄を印刷することが行なわれており、この印刷には、主にアクリル樹脂を含む水性インキが用いられている。ポリフェノールは酸性であるため、ポリフェノール等を含むポリフェノール系消臭剤と上記水性インキとを併用すると、ポリフェノール系消臭剤と水性インキ中のアクリル樹脂とが反応して凝集が生じ、印刷の色ムラが発生したり、紙管に対して消臭剤が定着せずに剥離してしまう。
また、ポリフェノール系消臭剤は、抽出元である植物に由来する多糖類が混入しやすく、塗工表面にべたつきが発生しやすい。
このように、ポリフェノールを紙管に対して付与しようとしても、定着しなかったり、印刷ムラを誘発したり、塗布部分にべたつきが生じてしまうという、問題があった。
実開昭62−197660
特許5032398号
特開2009−203408号公報
特開2007−237672号公報
特開2001−71627号公報
特開2012−45791号公報
そこで、本発明の主たる課題は、べたつきや色ムラや消臭剤の剥離なく、消臭効果の高いポリフェノール系消臭剤を紙管内面に付与したトイレットロール及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである
〔請求項1記載の発明〕
帯状のトイレットペーパーが紙管に巻かれたトイレットロールの製造方法であって、
ポリフェノール系消臭剤と低級アルコールとポリアミド樹脂と着色剤とを含む消臭剤含有着色剤を、紙管原紙の少なくとも一方面に塗布する工程と、
前記消臭剤含有着色剤を塗布した紙管原紙を塗布面が内周面となるようにして筒状に形成する工程と、
その筒状に形成したものに対してトイレットペーパー原紙を巻き付ける工程と、
を有することを特徴とするトイレットロールの製造方法。
〔請求項2記載の発明〕
前記消臭剤含有着色剤は、ポリフェノール系消臭剤25〜67重量%、低級アルコール8〜24重量%、ポリアミド樹脂1〜10重量%を含む、請求項1記載のトイレットロールの製造方法。
〔請求項3記載の発明〕
前記紙管原紙を筒状に形成する工程においてトイレットロールの幅の複数倍幅以上の長さの筒状にし、その筒状に形成したものに対してトイレットロールの幅の複数倍幅以上の長さトイレットペーパー原紙を巻き付けて、トイレットロールの径と同径でありかつトイレットロールの幅の複数倍幅以上のログを形成したのち、このログをトイレットロールの幅に裁断する、請求項1又は2記載のトイレットロールの製造方法。
〔請求項4記載の発明〕
帯状のトイレットペーパーが紙管に巻かれているトイレットロールであって、
前記紙管内周面の一部又は全部が着色され、かつ、その着色された部分にポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体の少なくとも一種とポリアミド樹脂とを含む、ことを特徴とするトイレットロール。
以上の本発明によれば、べたつきや色ムラや消臭剤の剥離なく、消臭効果の高いポリフェノール系消臭剤が紙管内面に付与されたトイレットロール及びその製造方法が提供される。
本発明の実施形態に係るトイレットロールの斜視図である。
本発明の実施形態に係るトイレットロールの製造方法の概要を示す図である。
本発明の実施形態に係る長尺紙管の製造方法を示す図である。
本発明の実施形態を図1〜3を参照しながら以下に説明する。但し、本発明は、この実施形態に限られない。
「トイレットロールの製造方法」
本発明の実施形態に係るトイレットロール10の製造方法例を図面を参照しながら説明する。但し、本発明によるトイレットロールの製造方法は、この方法に必ずしも限定されるわけではない。
本実施形態のトイレットロールの製造方法は、図1に示すように、長尺の紙管30を製造する工程(A)と、その長尺の紙管を用いてログを製造するログ製造工程(B)と、ログを裁断して個々のトイレットロールにする裁断工程(C)と、を有している。
〔紙管製造工程(A)〕
本実施形態の紙管製造工程は、図1中(A)、図4に示すように、原反ロール31A,32Aから繰出された二枚の帯状の紙管原紙31,32のうち一方の紙管原紙31の一方面に糊付けロール51により糊を付与し、前記一方の紙管原紙31の糊付けされた面に他方の紙管原紙32を幅方向に一部重ね、前記他方の紙管原紙32の糊付け面と接しない面をマンドレルシャフト52に対向する面、すなわち紙管内面となる面にして、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に螺旋状に巻き付けて連続的に筒状部分29を形成し、その筒状部分29をトイレットロールの複数倍幅以上の幅でカッター58によりカットして長尺のスパイラル紙管30(スパイラル式紙管とも称される)を形成する。このスパイラル紙管は、一方の紙管原紙31が紙管外面側、他方の紙管原紙32が紙管内面側となる態様の二層積層構造となる。なお、本実施形態では、2枚の紙管原紙31,32をスパイラル巻きしているが、1枚又は3枚以上の紙管原紙をスパイラル巻きして長尺の紙管を形成してもよい。
紙管原紙31,32としては、米坪が120〜220g/m2、紙厚が150〜500μmであるのが望ましい。着色剤消臭剤の塗工操作がしやすく、また、トイレットロールとなった際に十分な強度の紙管とすることができる。なお、長尺紙管30の形成するにあたって、この他方の紙管原紙32と対となるもう一方の紙管原紙31は、違う原反を使用してもよく、例えば、米坪を変えたりしてもよい。
紙管原紙31に対する糊の付与量は特に限定されないが、1〜25.0g/m2程度である。また、糊は、本発明の効果を妨げない範囲で既知の紙管用のものを用いることができ、アクリル系接着剤、ホットメルト接着剤、澱粉糊、PVA(ポリビニルアルコール)等が例示できる。
図示の形態では、各紙管原紙31,32のマンドレルシャフト52への巻き付けは、一対のプーリー53,53間に巻き掛けられた平ベルト54により、マンドレルシャフト52上の所定部分に位置する筒状部分29に回転力を与え、その回転により紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52の軸心に対して所定角度で引き込んで、螺旋状に巻くようにしている。図示例では、一対のプーリー53,53を二機配置して二つの平ベルト54,54により、筒状部分29に回転力を与えているが、一機の一対のプーリーと平ベルトにより筒状部分に回転力を与えるようにしてもよい。また、図示しないが、筒状部分29に平ベルト54ではなくロールを当接させて回転力を与えるようにしても、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けることができる。
ここで、紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けてスパイラル紙管の形成するにあたっては、図示例からも理解されるように、紙管原紙31,32が連続的にマンドレルシャフト52に送り込まれることにより筒状部分29が長くなり、その筒状部分29が連続的に形成されてマンドレルシャフト52の先端方向に伸びていく。そして、その過程では、筒状部分29の内面がマンドレルシャフト52の周面に摺接しながら、マンドレルシャフト52の先端方向に向かって移動していくことになる。
本実施形態では、このように長尺の紙管30を形成する前段において、紙管原紙のマンドレルシャフト52にスパイラル巻きした際に長尺紙管30の内面側になる面を有する紙管原紙32に対して塗工機61により着色剤を含む着色剤含有消臭剤41を付与する。
図示の形態では、二枚の紙管原紙31,32のうち前記他方の紙管原紙32がマンドレルシャフト52にスパイラル巻きした際に長尺紙管30の内面側になる面を有するようになっていることから、その紙管原紙32に対して着色剤を含む消臭剤41を付与している。但し、本実施形態は、この図示の形態に限らず、二枚の紙管原紙の双方に付与してもよいし、例えば、1枚又は3枚以上の紙管原紙を用いて、長尺紙管30を形成する場合には、その筒状にした際に内面となる面を有する紙管原紙の少なくとも一つの当該面に着色剤含有消臭剤を付与すればよい。
本実施形態の着色剤含有消臭剤41は、有効成分としてポリフェノール系消臭剤と低級アルコールとポリアミド樹脂と着色剤とを含む。着色剤は、公知の染料又は顔料を用いることができる。着色剤含有消臭剤は、前記ポリフェノール系消臭剤と低級アルコールとポリアミド樹脂を混合した消臭剤薬液に対して、染料又は顔料を含む着色剤を適宜の色の濃さや色に応じて混合することにより調製することができる。前記着色剤含有消臭剤の好ましい配合割合は、ポリフェノール系消臭剤25〜67重量%、低級アルコール8〜24重量%、ポリアミド樹脂1〜10重量%を含むものである。これに適宜の水性溶媒を3〜66重量%含むことができる。水性溶媒は、ポリフェノール系消臭剤、低級アルコール及びポリアミド樹脂と反応性を有さない適宜のものが選択でき、特に水が適する。着色剤の配合割合については、上記のとおり適宜の配合割合とすることができる。したがって、本実施形態の特に好ましい着色剤含有消臭剤は、ポリフェノール系消臭剤25〜67重量%、低級アルコール8〜24重量%、ポリアミド樹脂1〜10重量%を含む消臭剤薬液を調製した後、これに適宜着色剤を配合して調製することができる。
本実施形態に係るポリフェノール系消臭剤は、pH4.0〜6.9の酸性を呈するものであり、消臭効果を奏する有効成分として茶 柿、ブドウ等の植物及び植物の加工品から抽出されるなどした、ポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体の少なくとも一種(以下、ポリフェノール等ともいう)を0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは、1〜10重量%含むものである。その他の成分として、水等の溶媒や保存剤、pH調製剤等の助剤を含みうる。また、安定性、ポリフェノール等への官能基の付与、自身の反応性による消臭効果のさらなる向上の観点等のため有機酸、有機酸塩が配合されていてもよい。有機酸、有機酸塩は、トイレットロールを構成するトイレットペーパーが、人体に直接触れるものであることを考慮して、人体に対する安全性の高いものであるのが望ましく、例えば、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、グルタル酸、アミノ酸、アジピン酸、アスコルビン酸、又はこれらの無機塩もしくは有機塩が例示できる。塩を形成する無機塩基としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等が例示できる。また、有機塩基としては、窒素含有塩基、例えば一級、二級又は三級アミン、イミノ基、グアニジノ基、イミダゾリノ基、イミダゾリル基、ピリジル基等の基を有する化合物が例示できる。
上記ポリフェノール系消臭剤は、主に有効成分であるポリフェノール等のフェノール性水酸基の反応等により、トイレ空間内の悪臭成分の一つであるアンモニアに対する高い消臭機能を有する。もちろん、アンモニアに加えて、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミンに対して反応性を有して消臭機能を有するものも存在し、用いるポリフェノール系消臭剤はそのようなものであってもよい。例えば、ポリフェノール誘導体の中には、特許3919729号のように人為的に分子量の高いポリフェノールに対して適宜の官能基を持たせて、特定の成分に対する消臭機能を付加或いは高めたものが知られているが、そのようなものであってもよい。
本実施形態に係るポリフェノール等のより好ましい具体例としては、タンニン、カテキン、ルチン、アントシアニン、エラグ酸、クマリン、フラボン及びこれらの誘導体又は前駆体である。これらはトイレの悪臭成分に対して特に高い消臭効果を発揮する。したがって、ポリフェノール系消臭剤は、これらを少なくとも一種含むものが望ましい。
上記具体例のなかでも、特に好ましいものは、特にタンニン及びその誘導体である。タンニン及びタンニン誘導体は、分子量が大きくフェノール性水酸基を多く有するため消臭機能に優れる。なお、タンニンは、縮合型タンニン、加水分解型タンニンのいずれでよい。また、タンニンのなかでも、柿由来の柿タンニンは、分子量が非常に大きく、消臭効果に極めて優れるため、ポリフェノール系消臭剤としては、この柿タンニン及び柿タンニン誘導体の少なくとも一方を含むようにするのがよい。
また、ポリフェノール系消臭剤は、市販されているものを用いることができる。例えば、リリース科学工業株式会社製のPancil COS-15、Pancil COS-17、Pancil CL-10、Pancil AS-10、Pancil AS-20、Pancil BA-210-1、Pancil COS-5、Pancil FG-22、Pancil FG-25、Pancil FG-30、Pancil FG-60、Pancil FG-70、Pancil FG-99、Pancil FX10、Pancil PO -10、Pancil BA-200E-1を適宜用いることができる。
他方、本実施形態における低級アルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、プロパノール類が挙げられる。これらの混合アルコールでもよい。トイレットロールを構成する紙管原紙31,32は、トイレットペーパーのような薄葉紙とは異なり、ある程度の剛性が必要で坪量も高いものあるため、JIS P 8122(2004)に記載の方法で測定したステキヒトサイズ度が150〜250秒である。また、ポリフェノール系消臭剤は、紙へのなじみが良好ではない。したがって、そのまま塗工しても弾いたりしてムラになりやすい。しかし、ポリフェノール系消臭剤とともに低級アルコールを含有させると、ポリフェノール系消臭剤の紙管原紙へのなじみ及び乾燥性が向上し、紙管原紙にムラなく効果的に付与できるようになる。また、ポリフェノール系消臭剤は、植物由来の多糖類を排除することが難しく、これに起因するべたつきが発生しやすいが、低級アルコールを含有させることにより、べたつきが防止される。
他方、本実施形態におけるポリアミド樹脂としては、水溶液中においてアミド基を有するものであり、具体例としてはポリアクリルアミド樹脂が挙げられる。商品としては、例えば、東洋インキ社アクワNADEが使用できる。一般に、染料及び顔料を用いた水性インキ中のバインダー樹脂としてもちいられるアクリル樹脂は、カルボキシル基を有しているため、このカルボキシル基がポリフェノールの水酸基と反応し、凝集が生じて塗布ムラを生じてしまう。本実施形態では、ポリアミド樹脂を用いることにより、ポリフェノール系消臭剤と反応することなくバインダーとして機能させることができる。これにより染料及び顔料とポリフェノール系消臭剤を紙管原紙32にムラ無く定着させることが可能となる。また、ポリアミド樹脂は、紙管原紙32への付与後に乾燥して比較的強固な塗膜を形成するためマンドレルシャフトとの摺接時など紙管の加工時やトイレットロールの実使用時における消臭剤の剥離をも防止する。
紙管原紙32に着色剤含有消臭剤層41を付与するには、図示の形態では、紙管原紙32が巻かれた原反ロール32Aから当該紙管原紙32を繰出し、マンドレルシャフト52への巻き付けを行なう前に、塗工機61でその紙管原紙32の一方面の全体又は一部に塗工して行なっている。但し、この形態に限らず、原反ロールに巻き取る前の紙管原紙32,31に対して予め着色剤含有消臭剤41を塗工しておいてもよい。本実施形態では、ポリフェノール系消臭剤を付与してもべたつき等がなく、また、比較的強固な皮膜が形成されるため、原反ロール巻き取り前に着色剤含有消臭剤を付与しておいても原反ロールからスムーズに紙管原紙を繰出すことができる。
紙管原紙32に着色剤含有消臭剤層41を付与する塗工機61としては、フレキソ印刷機、グラビア印刷機等の既知の印刷機のなかから適宜選択することができる。塗工機61による着色剤含有消臭剤41の付与態様としては、ベタ印刷のほか網点状、円状、ブロック状など適宜のパターン印刷、図形などの模様印刷や文字の印刷として付与することができる。
着色剤含有消臭剤41の付与量としては、印刷による模様等に応じて適宜設計できるが、付与量が5〜80g/m2となるようにするのが望ましい。この範囲であれば、生産性よく着色剤含有消臭剤41を十分に塗工することができ、また、十分な消臭効果を奏する量の消臭剤を付与することができる。
他方、図示の形態では、紙管原紙に着色剤含有消臭剤を付与した後にヒーター(乾燥機)62により付与部分の乾燥を行なうようにしている。このように乾燥を行なうことにより塗膜が確実に形成されやすくなり、後段の加工が行ないやすくなる。
〔ログ製造工程(B)〕
他方、本実施形態では、上記の長尺紙管30の製造と平行して又はその後において、ログ製造工程(図1中(B))にて、ログ70を製造する。なお、ログ70とは、業界においての一般用語であり、最終製品であるトイレットロール10の径と同径でありかつ幅が最終製品の複数個分ある中間製品である。
このログ70の製造は、連続的に又は段階的に、長尺紙管30と実質的に同幅のトイレットペーパー原紙71,71を、ロール71A,71Aから繰り出すとともに巻き付けてログ70を形成する。この巻き付けは、既知のワインダー装置X2が利用できる。
図示の形態では、二つのロール71A,71Aから単層のトイレットペーパー原紙71,71を繰り出して、重ね合わせ部81にて2プライのトイレットペーパー原紙72とした後、ミシン目線形成装置82にてミシン目線の形成を行なった後、巻き取り装置83にて巻き取り2プライ構造となるようにしている。但し、本発明に係るトイレットペーパー原紙は、2プライに限定されず、1プライ若しくは3プライ以上であってもよい。また、複数プライ構造とする場合には、各原紙の米坪や物性等は同じである必要もない。さらに、ワインダー装置X2でプライ構造にするのではなく、予め積層されたトイレットペーパー原紙を巻き取ったロールからトイレットペーパー原紙を繰出して長尺紙管30に巻き付けてログ70を形成すようにしてもよい。
また、図示の形態では、ミシン目線形成装置82を設けてミシン目線を付与する形態を示しているが、本発明では必ずしもミシン目線形成装置及びミシン目線の付与は必須ではない。さらに、本実施形態において、図示はしないが、ミシン目線付与装置82の前段に既知のコンタクトエンボス付与装置を設けてコンタクトエンボスを付与してもよいし、重ね合わせ部81の前段で各トイレットペーパー71,71にエンボスロールでエンボスを付与するようにしてもよいし、その付与したエンボスの凸部頭頂に接着剤を付与して係る接着剤でシート同士を積層一体化するようにしてもよい。
〔裁断工程(C)〕
以上のように、ログ70を製造したならば、このログ70を既知のログアキュームレーターX3で複数本をストックしつつ後段のログカッター設備X4へと移動させる。そして、その後に図1中(C)に示すように、既知のログカッター91でログ70を製品幅に裁断し、個々のトイレットロール10,10…とする。
「トイレットロールの製造方法の他の実施形態」
上記説明の実施形態は、ログ70を仲介してトイレットロール10を形成する方法を説明したが、本発明は必ずしもログ70を形成せずにトイレットロール10を形成することもできる。
例えば、上述の長尺の紙管30を形成する工程Aにおいて、筒状部分29をトイレットロール10と同幅かやや幅広でカッター58によりカットして紙管を形成した後、これと同幅のトイレットペーパー原紙72を巻き付けることで、ログ70を介さずに直接的にトイレットロール10とすることができる。トイレットロール10よりやや幅広の紙管にトイレットロール10よりやや幅広のトイレットペーパー原紙72を巻き付けて、その両端面部分をカットすることで端面を整えることができる。着色剤含有消臭剤41やその付与形態については、上記ログ70を仲介する方法と同様に行なうことができる。
「トイレットロール」
次いで、本実施形態に係るトイレットロール10について説明する。本実施形態に係るトイレットロール10は、図3に示すとおり、紙管11に帯状の家庭用薄葉紙であるトイレットペーパー12が巻かれたものである。このトイレットロール10は、上記のトイレットロール10の製造方法により製造することができる。
本実施形態にかかるトイレットロール10の大きさ等は、幅L1が100〜115mm、直径L2が100〜120mm、巻き長さ(トイレットペーパーの全長)が18〜70m、紙管内径L3が35〜50mmであるのが望ましい。この大きさであれば一般的なトイレットロール用のペーパーホルダーが利用でき、トイレットペーパーの長さも十分である。
トイレットペーパー12は、微細な凹凸であるクレープを有する家庭用薄葉紙であるが、その具体的な組成・構成は限定されない。トイレットペーパー12は、1プライから3プライのものが望ましい。紙厚は、100〜350μmであるのが望ましい。また、1プライ当り米坪は、11.0〜25.0g/m2であるのが望ましい。この範囲であれば使用時の柔らかさや吸水性を確保できる。
なお、本発明に係る米坪とは、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法によるものであり、紙厚とは、JIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて5回測定した平均値をいう。
本実施形態に係るトイレットロール10は、特徴的に、前記紙管11の内周面11Aの一部又は全部が着色されており、その着色された部分にトイレ空間内の悪臭成分に対して消臭効果を有するポリフェノール等の少なくとも1種と、ポリアミド樹脂とを含む。すなわち、本実施形態のトイレットロール10は、紙管内面11Aに染料又は顔料がポリアミド樹脂によって定着され、これにより着色されているとともに、その定着部分にポリフェノール等が含有されている。なお、本実施形態に係る着色された部分にポリフェノール等の少なくとも1種と、ポリアミド樹脂を含む態様は、上記の製造方法により製造されるような、それらが混合された状態で付与されているような態様のものであり、ポリフェノール等とポリアミド樹脂とが別々に付与されて層構造となっているような態様のものではない。
着色部分は、より具体的には、ベタ印刷、網点状、円状、ブロック状など適宜のパターン印刷、図形などの模様印刷、文字の印刷等である。着色の色は特に限定されない。
ポリフェノール等としては、上記製造方法の欄でも説明しものと同様であり、茶 柿、ブドウ等の植物及び植物の加工品から抽出されるなどしたものである。本発明に特に好ましいものとしてタンニン、カテキン、ルチン、アントシアニン、エラグ酸、クマリン、フラボン及びこれらの誘導体又は前駆体が挙げられる。これらは、トイレ空間の悪臭成分に対する消臭効果に優れる。なかでも、特にタンニン及びその誘導体が望ましい。タンニン及びタンニン誘導体は、分子量が大きくフェノール性水酸基を多く有するため消臭機能に優れる。なお、タンニンは、縮合型タンニン、加水分解型タンニンのいずれでよい。また、タンニンのなかでも、柿由来の柿タンニンは、分子量が非常に大きく、消臭効果に極めて優れるため、ポリフェノール系消臭剤としては、この柿タンニン及び柿タンニン誘導体の少なくとも一方を含むようにするのがよい。
なお、紙管に対するポリフェノール等の付与量としては、紙管内周面の面積を基準として、0.002〜6.0g/m2であるのが望ましい。より、好ましくは0.2〜2g/m2である。この含有量であれば、ポリフェノール系消臭剤による消臭効果を十分に発揮させることができ、また、付与もしやすい。
ポリアミド樹脂は、ポリアクリルアミド樹脂であるのが望ましい。本実施形態のトイレットロールでは、バインダー成分がポリアミド樹脂であることにより、紙管内面にべたつきがなく、剥離もし難いものとなる。その結果、そこに含まれるポリフェノール等及び着色剤の剥離もし難いものとなる。
本発明の効果を確認すべく試験を行なった。試験は、坪量170g/m2、紙厚200μm、ステキヒトサイズ度200秒の紙管原紙に対して下記表1に示す異なる組成・配合割合の着色剤含有消臭剤を予め付与し、それら着色剤含有消臭剤を付与した紙管原紙をもちいて、上記〔紙管製造工程(A)〕の欄で説明した手順により長尺の紙管を形成して、その付与面及び紙管内面を観察することにより行なった。なお、着色インキは東洋インキ株式会社製LOX39藍、低級アルコールは、イソプロピルアルコールを用いた。消臭剤は、リリース科学工業株式会社製Pancil FG-25を使用した。
評価は、付与面のべたつき、印刷適性、剥がれの3項目とした。
印刷適性は、グラビア印刷機を用いてパターン印刷を行い、ムラ無く印刷できるか否かを目視にて評価した。評価基準は、色ムラありを×、色ムラ無しを○とした。
べたつきについては、紙管原紙に着色剤を付与したのち3分後も手で触ってべたつきがないか否かを確認した。評価基準は、べたつきがあるものを×、べたつきが無いものを○とした。
剥離については、長尺紙管を形成したのちその内面を観察して、着色剤含有消臭剤が剥がれている部分があるか否かを目視にて確認した。剥がれがみられるものを×、剥がれがみられないものを○と評価した。
上記表1に示されるように、本発明の実施例については、べたつき、印刷適性、剥がれの評価のいずれも良好な結果が得られた。これに対して、比較例1〜4では、べたつき、印刷適性、剥がれの項目において問題のある結果となった。
以上のことから、本発明により、べたつきや色ムラや消臭剤の剥離なく、消臭効果の高いポリフェノール系消臭剤が紙管内面に付与されたトイレットロール及びその製造方法が提供できることが確認された。
10…トイレットロール、31A,32A…原反ロール、31,32…紙管原紙、51…糊付けロール、29…筒状部分、58…カッター、30…長尺の紙管、52…マンドレルシャフト、53…プーリー、54…平ベルト、61…塗工機、62…乾燥機、41…着色剤含有消臭剤、70…ログ、71…トイレットペーパー原紙、71A…ロール、72…2プライのトイレットペーパー原紙、81…重ね合わせ部、82…ミシン目線形成装置、83…巻き取り手段、91…ログカッター、11…紙管、11A…紙管内面、12…トイレットペーパー、L1…トイレットロールの幅、L2…トイレットロールの直径、L3…紙管内径。