以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
図1は、実施形態に係るトラクタの概略図である。図2は、図1のA矢視図(機体前部を視た図)である。図3は、図1のB矢視図(機体後部を視た図)である。図4は、図1のC矢視図(機体上部を視た図)である。図5は、実施形態に係るトラクタの変速装置の伝動機構を示す線図である。図6は、実施形態に係るトラクタの第1PTO軸の概略図である。図7は、実施形態に係るトラクタの第2PTO軸の概略図である。図8は、実施形態に係るトラクタの着脱リングの斜視図である。図9は、実施形態に係るトラクタの着脱リングの概略図である。図10は、実施形態に係るトラクタのPTO軸と着脱リングを含む部分断面図である。図11は、実施形態に係るトラクタのPTO軸と着脱リングを含む部分斜視図である。図12は、実施形態に係るトラクタのミッションケースを車幅方向左側から視た部分側面図である。図13は、実施形態に係るトラクタの収納部及びPTO変速操作レバーを機体後部側から視た図である。図14は、実施形態に係るトラクタの収納部及びPTO変速操作レバーの斜視図である。図15は、実施形態に係るトラクタの収納部及びPTO変速操作レバーを鉛直方向上側から視た図である。図16は、実施形態に係るトラクタの収納部及びPTO変速操作レバーの一部を鉛直方向下側から視た図である。図17、図18は、実施形態に係るトラクタの収納部及びPTO変速操作レバーの一部を車幅方向左側から視た図である。なお、図17は、後述する第1PTO軸を収納部に収納した状態を表しており、図18は、後述する第2PTO軸を収納部に収納した状態を表している。図19は、第2の実施形態に係るトラクタの収納部及びPTO変速操作レバーの一部の斜視図である。図20は、第2の実施形態に係るトラクタの収納部及びPTO変速操作レバーの一部の斜視図で、円筒ケースを省略した図である。図21は、第2の実施形態に係るトラクタの収納部及びPTO変速操作レバーの一部を鉛直方向下側から視た図である。図22は、第2の実施形態に係る第2変速域可変機構とカム部材の斜視図である。図23は、第2の実施形態に係るトラクタの収納部及びPTO変速操作レバーの一部を車幅方向左側から視た図である。図24は、第2の実施形態に係るトラクタの収納部を車幅方向左側から視た図である。
なお、以下の説明では、前後方向とは、トラクタ1の前後方向である。さらに言えば、前後方向とは、このトラクタ1が直進する際の進行方向であり、進行方向前方側を前後方向前側、後方側を前後方向後側という。トラクタ1の進行方向とは、トラクタ1の直進時において、トラクタ1の操縦席8からステアリングハンドル11に向かう方向であり、ステアリングハンドル11側が前側、操縦席8が後側となる。また、車幅方向とは、当該前後方向に対して水平に直交する方向である。ここでは、前後方向前側を視た状態で右側を車幅方向右側、前後方向前側を視た状態で左側を車幅方向左側という。さらに、鉛直方向とは、前後方向と車幅方向とに直交する方向である。これら前後方向、車幅方向及び鉛直方向は、互いに直交する。
図1〜図4に示す本実施形態の作業車両としてのトラクタ1は、動力源が発生する動力によって、自走しながら圃場等での作業を行う農用トラクタ等の作業車両である。トラクタ1は、前輪2と、後輪3と、動力源としてのエンジン4と、変速装置(トランスミッション)5とを備えている。このうち、前輪2は、主に操舵用の車輪、すなわち、操舵輪として設けられる。後輪3は、主に駆動用の車輪、すなわち、駆動輪として設けられる。後輪3には、機体前部1Fのボンネット6内に搭載されるエンジン4で発生した回転動力を、変速装置(トランスミッション)5で適宜減速して伝達可能になっており、後輪3は、この回転動力によって駆動力を発生する。また、この変速装置5は、エンジン4で発生した回転動力を、必要に応じて前輪2にも伝達可能になっており、この場合は、前輪2と後輪3との四輪が駆動輪となり駆動力を発生する。すなわち、変速装置5は、二輪駆動と四輪駆動との切り替えが可能になっており、エンジン4の回転動力を減速し、減速された回転動力を前輪2、後輪3に伝達可能である。また、トラクタ1は、機体後部1Rに、ロータリ等の作業機を装着可能な連結装置7が配設されている。連結装置7は、例えば、左右のロアリンク7aや中央のトップリンク等によってトラクタ1の機体後部1Rに作業機を連結する。トラクタ1は、例えば、左右のリフトアーム49を油圧で回動することで、リフトロッド49a、このリフトロッド49aと連結しているロアリンク7a等を介して作業機を昇降させることができる。トラクタ1は、機体上の操縦席8の周りはキャビン9で覆われている。トラクタ1は、キャビン9の内部において、操縦席8前側のダッシュボード10からステアリングハンドル11が立設されると共に、操縦席8の周りにクラッチペダル、ブレーキペダル、アクセルペダル等の各種操作ペダルや前後進レバー、変速レバー等の各種操作レバーが配置されている。
図5は、変速装置5のミッションケース12内の伝動機構13を示す線図である。変速装置5は、ミッションケース12(図1参照)と、このミッションケース12内に配置されエンジン4から後輪3等へ回転動力を伝達する伝動機構13とを含んで構成される。伝動機構13は、エンジン4からの回転動力を前輪2、後輪3、及び、機体に装着した作業機に伝達し、これらをエンジン4からの回転動力によって駆動するものである。
具体的には、伝動機構13は、入力軸14、前後進切替機構15、高低変速機構としてのHi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18、2WD/4WD切替機構19、PTO(Power take−off)駆動機構20等を含んで構成される。伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18を順に介して後輪3に伝達することができる。また、伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18、2WD/4WD切替機構19を順に介して前輪2に伝達することができる。さらに、伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、PTO駆動機構20を順に介して作業機に伝達することができる。
入力軸14は、エンジン4の出力軸に結合されており、エンジン4からの回転動力が伝達(入力)される。
前後進切替機構15は、エンジン4から伝達された回転動力を、前進方向回転又は後進方向回転に切り替え可能なものである。前後進切替機構15は、前進側ギヤ段15a、後進側ギヤ段15b、逆転ギヤ15c、油圧多板クラッチ(前進クラッチ)C1、油圧多板クラッチ(後進クラッチ)C2を含んで構成される。油圧多板クラッチC1、C2は、係合/解放状態を切り替えることで前後進切替機構15における動力の伝達経路を切り替え可能である。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1、C2の係合/解放状態に応じて入力軸14に伝達された回転動力を、伝達経路を変えてカウンタ軸21に伝達する。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1が係合状態、油圧多板クラッチC2が解放状態である場合に、入力軸14に伝達された回転動力を、前進側ギヤ段15a、油圧多板クラッチC1を介して前進方向回転でカウンタ軸21に伝達する。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1が解放状態、油圧多板クラッチC2が係合状態である場合に、入力軸14に伝達された回転動力を後進側ギヤ段15b、逆転ギヤ15c、油圧多板クラッチC2を介して後進方向回転で、カウンタ軸21に伝達する。これにより、前後進切替機構15は、トラクタ1の前後進を切り替えることができる。また、前後進切替機構15は、メインクラッチとしても機能し、油圧多板クラッチC1、C2を共に解放状態とすることで、ニュートラル状態となり、前輪2、後輪3側への動力伝達を遮断することができる。前後進切替機構15は、例えば、作業員によって前後進切替レバーが操作されることで油圧制御によって前進、後進、ニュートラルを切り替えることができる。また、クラッチペダルを踏み込み操作することで油圧多板クラッチC1、C2を共に解放状態にできる。
Hi−Lo変速機構16は、エンジン4から伝達された回転動力を、高速段又は低速段で変速可能なものである。Hi−Lo変速機構16は、Hi(高速)側ギヤ段16a、Lo(低速)側ギヤ段16b、油圧多板クラッチ(Hi(高速)側クラッチ)C3、油圧多板クラッチ(Lo(低速)側クラッチ)C4を含んで構成される。油圧多板クラッチC3、C4は、係合/解放状態を切り替えることでHi−Lo変速機構16における動力の伝達経路を切り替え可能である。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3、C4の係合/解放状態に応じて、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、伝達経路を変えて変速軸22に伝達する。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3が係合状態、油圧多板クラッチC4が解放状態である場合に、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC3、Hi側ギヤ段16aを介して変速して変速軸22に伝達する。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3が解放状態、油圧多板クラッチC4が係合状態である場合に、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC4、Lo側ギヤ段16bを介して変速して変速軸22に伝達する。これにより、Hi−Lo変速機構16は、エンジン4からの回転動力をHi側ギヤ段16aの変速比、あるいは、Lo(低速)側ギヤ段16bの変速比で変速して後段に伝達することができる。Hi−Lo変速機構16は、例えば、作業員によってHi−Lo切替スイッチ(高低変速操作スイッチ)がオン/オフされることで油圧制御によってHi(高速)側、Lo(低速)側を切り替えることができ、高速と低速の2段のうちのいずれかで変速することができる。また、Hi−Lo変速機構16は、上記の構成によりトラクタ1の走行中に変速可能である。
主変速機構17は、エンジン4から伝達された回転動力を、複数の変速段のいずれかで変速可能である。主変速機構17は、シンクロメッシュ式の変速機構であり、ここでは、エンジン4から前後進切替機構15、及び、Hi−Lo変速機構16を介して伝達される回転動力を変速可能である。主変速機構17は、複数の変速段として第1速ギヤ段17a、第2速ギヤ段17b、第3速ギヤ段17c、第4速ギヤ段17d、第5速ギヤ段17e、第6速ギヤ段17fを含んで構成される。主変速機構17は、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの変速軸22との結合状態に応じて、変速軸22に伝達された回転動力を、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fのいずれかを介して変速して変速軸23に伝達する。これにより、主変速機構17は、エンジン4からの回転動力を第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fのいずれかの変速比で変速して後段に伝達することができる。主変速機構17は、例えば、作業員によって主変速操作レバーが操作されることで複数の変速段のうちの1つを選択し切り替えることができ、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれかで変速することができる。また、主変速機構17は、上記の構成によりトラクタ1の走行中に変速可能である。
副変速機構18は、エンジン4から前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、及び、主変速機構17を順に介して伝達される回転動力を変速可能である。副変速機構18は、第1副変速機24、第2副変速機25等を含んで構成され、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24、第2副変速機25等を介して変速して変速軸26に伝達する。第1副変速機24は、エンジン4から伝達され主変速機構17等で変速された回転動力を高速段又は低速段で変速して駆動輪である後輪3側に伝達可能である。第2副変速機25は、エンジン4から伝達され主変速機構17等で変速された回転動力を第1副変速機24よりもさらに低速の極低速段で変速して駆動輪である後輪3側に伝達可能である。
副変速機構18の第1副変速機24は、第1ギヤ24a、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、シフタ24eを含んで構成される。第1ギヤ24aは、変速軸23と一体回転可能に結合され変速軸23からの回転動力が伝達(入力)される。第2ギヤ24bは、第1ギヤ24aと噛み合っている。第3ギヤ24cは、第2ギヤ24bと一体回転可能に結合されている。第4ギヤ24dは、第3ギヤ24cと噛み合っている。シフタ24eは、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dと変速軸26との結合状態を切り替えるものである。シフタ24eは、第1ギヤ24aと変速軸26とを一体回転可能に結合するHi(高速)側位置、第4ギヤ24dと変速軸26とを一体回転可能に結合するLo(低速)側位置、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dのいずれもが変速軸26と結合せず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。第1副変速機24は、シフタ24eの位置に応じて、変速軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を切り替えて変速軸26に伝達する。第1副変速機24は、シフタ24eがHi側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1ギヤ24aから、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介さずに、変速軸26に伝達する(変速軸23→第1ギヤ24a→変速軸26と伝達される)。第1副変速機24は、シフタ24eがLo側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1ギヤ24aから第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、シフタ24eを介して順次減速して変速軸26に伝達する。これにより、第1副変速機24は、エンジン4からの回転動力を、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介さないHi(高速)側の変速比、あるいは、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介したLo(低速)側の変速比で変速して後段に伝達することができる。また、第1副変速機24は、シフタ24eが中立位置にある場合、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dのいずれもが変速軸26に対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。第1副変速機24は、例えば、作業員によって第1副変速操作レバーが操作されることで、シフタ24eの位置が切り替えられてHi(高速)側、Lo(低速)側、ニュートラルを切り替えることができる。
副変速機構18の第2副変速機25は、第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25d、シフタ25eを含んで構成される。第1ギヤ25aは、第4ギヤ24dと一体回転可能に結合されている。第2ギヤ25bは、第1ギヤ25aと噛み合っている。第3ギヤ25cは、第2ギヤ25bと一体回転可能に結合されている。第4ギヤ25dは、第3ギヤ25cと噛み合っている。シフタ25eは、第4ギヤ25dと変速軸26との結合状態を切り替えるものである。シフタ25eは、第4ギヤ25dと変速軸26とを一体回転可能に結合する極Lo(極低速)側位置、第4ギヤ25dと変速軸26とが結合されず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。第2副変速機25は、シフタ25eの位置に応じて、変速軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を切り替えて変速軸26に伝達する。第2副変速機25は、第1副変速機24がニュートラルの状態で、シフタ25eが極Lo側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24の第1ギヤ24aから、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、第2副変速機25の第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25d、シフタ25eを介して順次減速して変速軸26に伝達する。これにより、第2副変速機25は、エンジン4からの回転動力を、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25dを介した極Lo(極低速)側の変速比で変速して後段に伝達することができる。また、第2副変速機25は、シフタ25eが中立位置にある場合、第4ギヤ25dが変速軸26に対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。第2副変速機25は、上記第1副変速機24がHi(高速)側、又は、Lo(低速)側となっている場合には、ニュートラルの状態とされる。第2副変速機25は、例えば、作業員によって第2副変速操作レバーが操作されることで、シフタ25eの位置が切り替えられて極Lo(極低速)側、ニュートラルを切り替えることができる。
したがって、副変速機構18は、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24と第2副変速機25とを組み合わせることで、高速と低速と極低速の3段のうちのいずれかで変速して変速軸26に伝達することができる。すなわち、副変速機構18は、第1副変速機24がHi(高速)側、第2副変速機25がニュートラルの状態となっている場合には、Hi(高速)段で変速することができる。副変速機構18は、第1副変速機24がLo(低速)側、第2副変速機25がニュートラルの状態となっている場合には、Lo(低速)段で変速することができる。副変速機構18は、第1副変速機24がニュートラルの状態、第2副変速機25が極Lo(極低速)側となっている場合には、極Lo(極低速)段で変速することができる。副変速機構18は、トラクタ1が停車している状態で高速、低速、極低速が切り替えられる。
そして、変速装置5の伝動機構13は、変速軸26に伝達された回転動力を、後輪デフ27、車軸(ドライブシャフト)28、遊星歯車機構29等を介して後輪3に伝達する。この結果、トラクタ1は、後輪3がエンジン4からの回転動力により駆動輪として回転駆動する。
以上の説明を要約すると、入力軸14の回転は、まず前後進切替機構15で正転又は逆転に切り替えられ、Hi−Lo変速機構16で高速と低速の2段のうちのいずれかで変速され、主変速機構17で第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれかで変速され、さらに副変速機構18で高速と低速と極低速の3段のうちのいずれかで変速されて、車軸28に伝達される。すなわち、入力軸14の回転は、変速装置5の伝動機構13によって、2×6×3=36段のいずれかで変速されて車軸28へ伝動される。
2WD/4WD切替機構19は、変速軸26に伝達された回転動力を、前輪2側に伝達するか否かを切り替えるものである。2WD/4WD切替機構19は、伝達軸19a、第1ギヤ19b、第2ギヤ19c、伝達軸19d、シフタ19e含んで構成される。伝達軸19aは、変速軸26からの回転動力が、ギヤ30、ギヤ31、伝達軸32、カップリング33等を介して伝達(入力)される。第1ギヤ19bは、伝達軸19aが挿入され、当該伝達軸19aに対して相対回転可能に組み付けられる。第2ギヤ19cは、第1ギヤ19bと噛み合っている。伝達軸19dは、第2ギヤ19cと一体回転可能に結合されている。シフタ19eは、伝達軸19aと第1ギヤ19bとの結合状態を切り替えるものである。シフタ19eは、伝達軸19aと第1ギヤ19bとを一体回転可能に結合する4WD位置、伝達軸19aと第1ギヤ19bとが結合されず、解放される2WD位置(ニュートラル位置)に移動可能である。2WD/4WD切替機構19は、シフタ19eが4WD位置にある場合、伝達軸19aに伝達された回転動力を、第1ギヤ19b、第2ギヤ19cを介して伝達軸19dに伝達する。これにより、2WD/4WD切替機構19は、エンジン4からの回転動力を前輪2側に伝達することができる。変速装置5の伝動機構13は、伝達軸19dに伝達された回転動力を、前輪デフ34、車軸(ドライブシャフト)35、垂直軸36、遊星歯車機構37等を介して前輪2に伝達する。この結果、トラクタ1は、前輪2及び後輪3がエンジン4からの回転動力により駆動輪として回転駆動し、四輪駆動で走行することができる。2WD/4WD切替機構19は、シフタ19eが2WD位置にある場合、伝達軸19aに伝達された回転動力の伝達軸19d側への動力伝達が遮断される。この結果、トラクタ1は、二輪駆動で走行することができる。2WD/4WD切替機構19は、例えば、作業員によって2WD/4WD切替レバーが操作されることで、シフタ19eの位置が切り替えられて、二輪駆動、四輪駆動を切り替えることができる。
PTO駆動機構20は、エンジン4から伝達される回転動力を変速して機体後部1R(図3参照)のPTO軸40(図3参照)から作業機に出力することで、エンジン4からの動力によって作業機を駆動するものである。PTO駆動機構20は、PTOクラッチ機構38、PTO変速機構39等で構成される。
PTOクラッチ機構38は、PTO軸40側への動力の伝達と遮断とを切り替えるものである。PTOクラッチ機構38は、ギヤ38a、油圧多板クラッチC5、伝達軸38bを含んで構成される。ギヤ38aは、入力軸14と一体回転可能に結合されたギヤ41と噛み合っている。油圧多板クラッチC5は、係合/解放状態が切り替わることで、ギヤ38aと伝達軸38bとの間の動力の伝達状態を切り替えるものである。PTOクラッチ機構38は、油圧多板クラッチC5が係合状態となることでPTO軸40側へ動力を伝達するPTO駆動状態となり、入力軸14からギヤ41を介してギヤ38aに伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC5を介して伝達軸38bに伝達する。PTOクラッチ機構38は、油圧多板クラッチC5が解放状態となることでPTO軸40側への動力の伝達が遮断されたPTO非駆動状態(ニュートラル状態)となり、ギヤ38aに伝達された回転動力の伝達軸38b側への伝達が遮断される。PTOクラッチ機構38は、例えば、作業員によってPTO切替スイッチがオン/オフされることで油圧制御によってPTO駆動状態、PTO非駆動状態を切り替えることができる。なお、このトラクタ1は、ギヤ38aと噛み合うギヤ70a、当該ギヤ70aと噛み合うギヤ70b等を介してギヤポンプ70が設けられている。ギヤポンプ70は、伝動機構13等の油圧系統に油圧を付与するものである。
PTO変速機構39は、PTO軸40側に動力を伝達する際に変速を行うものである。PTO変速機構39は、Hi(高速)側ギヤ段39a、Lo(低速)側ギヤ段39b、伝達軸39c、シフタ39dを含んで構成される。PTO変速機構39は、シフタ39dの位置に応じて、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Hi側ギヤ段39a、あるいは、Lo側ギヤ段39bを介して変速して、伝達軸39cに伝達する。シフタ39dは、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bと伝達軸39cとの結合状態を切り替えるものである。シフタ39dは、Hi側ギヤ段39aと伝達軸39cとを結合するHi(高速)側位置、Lo側ギヤ段39bと伝達軸39cとを結合するLo(低速)側位置、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bのいずれもが伝達軸39cと結合せず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。PTO変速機構39は、シフタ39dがHi側位置にある場合、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Hi側ギヤ段39aを介して伝達軸39cに伝達する。PTO変速機構39は、シフタ39dがLo側位置にある場合、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Lo側ギヤ段39bを介して伝達軸39cに伝達する。これにより、PTO変速機構39は、エンジン4からの回転動力を、Hi側ギヤ段39aの変速比、あるいは、Lo側ギヤ段39bの変速比で変速して後段に伝達することができる。また、PTO変速機構39は、シフタ39dが中立位置にある場合、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bのいずれもが伝達軸39cに対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。PTO変速機構39は、例えば、作業員によって後述のPTO変速操作レバー47が操作されることで、シフタ39dの位置が切り替えられてHi(高速)側、Lo(低速)側、ニュートラルを切り替えることができ、高速と低速の2段のうちのいずれかで変速することができる。
PTO軸40は、作業機が結合され、エンジン4からの回転動力を作業機に伝達するものである。即ち、PTO軸40のスプライン溝に嵌合する被動側スプライン孔を備えた自在継手軸(図示せず)を介して作業機側入力軸(図示せず)を駆動する構成である。なおPTO軸40は、伝達軸39cに伝達された回転動力が第1ギヤ41、第2ギヤ42等を介して伝達されることで回転駆動する。
以上の説明を要約すると、入力軸14の回転は、PTOクラッチ機構38を介してPTO変速機構39に伝達され、このPTO変速機構39で高速と低速の2段のうちのいずれかで変速されて、PTO軸40に伝達され、このPTO軸40を回転駆動する。この結果、トラクタ1は、エンジン4から伝達される回転動力を変速してPTO軸40から作業機に出力し、作業機を駆動することができる。
そして、本実施形態のPTO駆動機構20は、PTO軸40が脱着可能であり、例えば、作業機の機種等に応じて、少なくとも2種類のPTO軸40を交換して使用可能である。本実施形態の2種類のPTO軸40としては、一例として、図6に例示する第1PTO軸43と、図7に例示する第2PTO軸44とを含んでいる。つまり、本実施形態のトラクタ1は、PTO軸40として、少なくとも第1PTO軸43と第2PTO軸44とを交換して使用可能である。
第1PTO軸43は、例えば、国際標準化機構(International Organization for Standardization)ISOに規定されている角スプライン(6スプライン)43aを介して作業機と結合される。第2PTO軸44は、例えば、ISOに規定されているインボリュートスプライン(21スプライン)44aを介して作業機と結合される。第1PTO軸43、第2PTO軸44は、上述したように変速装置5の伝動機構13本体の機体後部1R側に組み付けられる(図3参照)。ここでは、第1PTO軸43、第2PTO軸44は、ともに六角スプライン43a、インボリュートスプライン44aとは反対側の取り付け端部43b、44bがスプライン等を介して伝動機構13本体に対して回転駆動可能なように組み付けられる。即ち、前記第2ギヤ42を嵌合するボス部42aの内周にスプライン孔部42cを形成し、取り付け端部43b,44b(図6、図7参照)にスプライン嵌合することにより、該ボス部42aに対して後方向きに着脱自在でかつ伝動可能な構成としている。また、第1PTO軸43、第2PTO軸44は、ともに中間部に大径部43c、44cを有している。
第1PTO軸43と第2PTO軸44とは、ほぼ同様の外形であるが、第2PTO軸44は、取り付け端部44b側に突起部44dが設けられており、軸方向に対してこの突起部44dの分だけ第1PTO軸43より長く構成されている。典型的には、第1PTO軸43は、PTO変速機構39による高速と低速の2段のうち、相対的に高速で回転駆動する場合、及び、相対的に低速で回転駆動する場合の両方で使用する。これに対して、第2PTO軸44は、相対的に高速で回転駆動する場合に使用する一方、例えば、作業機側被動部のスプライン孔部との係合部位の強度上、相対的に低速で回転駆動する場合、言い換えれば、相対的に大きなトルクを伝達する場合には使用しない。なお、以下の説明では、第1PTO軸43と第2PTO軸44とを特に区別して説明する必要・BR>ェ無い場合には単に「PTO軸40」という。
PTO軸40は、例えば、図8、図9、図10、図11に例示するような着脱リング45を介して変速装置5の伝動機構13本体の機体後部1R側に着脱可能に組み付けられる。着脱リング45は、一部に切り欠き45aを有する円環状に形成され、この切り欠き45aの縁部につまみ突起45bが設けられている。PTO軸40は、伝動機構13本体に対して回転駆動可能なように挿入された状態で、着脱リング45が嵌合溝部45cにはめ込まれることで、伝動機構13本体から脱落しないように装着される。また、PTO軸40は、作業員がつまみ突起45bをつまんで着脱リング45を撓ませた上でこの着脱リング45が嵌合溝部45cから取り外されることで、伝動機構13本体から簡単に取り外すことができる。この結果、このトラクタ1は、作業員がPTO軸40の交換を容易におこなうことができるので、作業性を向上し作業効率を向上することができる。なお、図10は、PTO軸40の不使用時にPTO軸40を保護しておくPTO軸カバー45dが設けられた状態を図示している。
そして、本実施形態のトラクタ1は、図3に示すように、2種類のPTO軸40の一方を前記のように機体後部1Rに組みつけて作業機駆動用として使用している状態で機体後部1Rから取り外された他方を収納可能である収納部46と、PTO駆動機構20の変速操作を行うPTO変速操作レバー47とが機体後部1Rに設けられる。
具体的には、収納部46は、PTO軸40を収納可能なものであり、図12、図13に示すように、機体後部1Rにおいて、固定部としてのシリンダケース48に支持される。シリンダケース48は、変速装置5のミッションケース12の鉛直方向上側に固定されており、車幅方向の左右両側に一対のリフトアーム49が回動自由に設けられる(図3、図4も参照)。リフトアーム49は、シリンダケース48の内部に設けられた油圧シリンダ内に作動油が供給されることで上昇回動し、反対に作動油が排出されることで下降するように構成される。収納部46は、このように構成されるシリンダケース48の車幅方向左側の面にブラケット50等を介して固定されて支持されている。
収納部46は、図14、図15、図16、図17、図18に示すように、円筒ケース51と蓋52とを含んで構成される。円筒ケース51は、中空状の円筒形状に形成され、内径が第1PTO軸43、あるいは、第2PTO軸44を収納可能な大きさに形成される。円筒ケース51は、円筒形状の中心軸線が水平方向に対して傾斜するようにしてシリンダケース48に支持されている(図12参照)。円筒ケース51は、前後方向前側の端部が鉛直方向下側、前後方向後側の端部が鉛直方向上側になるように傾斜している。そして、円筒ケース51は、前後方向前側の端部が閉塞していると共に、前後方向後側の端部が開口している。収納部46は、この円筒ケース51の前後方向後側の端部に蝶ナット53等によって蓋52が締結されている。収納部46は、第1PTO軸43、あるいは、第2PTO軸44を収納する際には、蝶ナット53がはずされ蓋52がはずされることで、前後方向後側の端部の開口を介して内部に第1PTO軸43、あるいは、第2PTO軸44が挿入される。
PTO変速操作レバー47は、PTO駆動機構20の変速操作を行うものであり、図12、図13に示すように、機体後部1Rにおいて、シリンダケース48に対して収納部46を介して変速操作の方向に沿って移動可能に支持される。ここでは、PTO変速操作レバー47の変速操作の方向とは、水平方向に対して傾斜を有した方向であり、典型的には円筒ケース51の中心軸線に沿った方向である。つまり、PTO変速操作レバー47の変速操作の方向とは、水平方向に対して前後方向後側から前側に向って下がるように傾斜した方向である。PTO変速操作レバー47は、この変速操作の方向に沿って前後方向前側から後側に向けてロッド部54が設けられる。ロッド部54は、シリンダケース48の車幅方向左側、さらに言えば、収納部46の車幅方向左側に配置され、前後方向後側の端部にPTO変速操作レバー47本体が設けられる。PTO変速操作レバー47は、このロッド部54が円筒ケース51に設けられたスライドガイド部55によって変速操作方向に沿ってスライド移動可能に支持される。これにより、PTO変速操作レバー47は、シリンダケース48に対してブラケット50、収納部46の円筒ケース51、スライドガイド部55等を介して、ロッド部54とともに変速操作に伴って変速操作方向に沿って移動可能に支持される。収納部46に支持されるPTO変速手段150は、PTO変速操作レバー47とロッド部54から構成される。
PTO変速操作レバー47は、図12、図14、図15に示すように、ロッド部54のPTO変速操作レバー47本体が設けられた端部とは反対側の端部に、シフタアーム56が設けられる。シフタアーム56は、PTO変速操作レバー47に対する変速操作に伴って、PTO変速機構39(図5参照)のシフタ39d(図5参照)を移動させるためのものである。PTO変速操作レバー47は、ロッド部54とともに変速操作方向に移動することで、シフタアーム56が回動し、シフタ39dをHi(高速)側位置、Lo(低速)側位置、中立位置(ニュートラル位置)のいずれかに移動させることができる。
PTO変速操作レバー47は、図17、図18に示すように、変速操作に伴ってロッド部54とともに、中立位置PNと、低速位置PLoと、高速位置PHiとに移動可能である。PTO変速操作レバー47の中立位置PNとは、シフタ39d(図5参照)を中立位置に移動させPTO変速機構39(図5参照)をニュートラルの状態にする位置である。PTO変速操作レバー47の低速位置PLoとは、シフタ39dをLo側位置に移動させPTO変速機構39を低速側の状態にし、PTO軸40を相対的に低速で回転駆動させる位置である。PTO変速操作レバー47の高速位置PHiとは、シフタ39dをHi側位置に移動させPTO変速機構39を高速側の状態にし、PTO軸40を相対的に高速で回転駆動させる位置である。PTO変速操作レバー47は、中立位置PNを基準として変速操作方向に沿って前後方向前側に押し込まれることで低速位置PLoに移動する。一方、PTO変速操作レバー47は、中立位置PNを基準として変速操作方向に沿って前後方向後側に引き出されることで高速位置PHiに移動する。この結果、作業員は、このPTO変速操作レバー47を変速操作方向に沿って変速操作することで、シフタ39dの位置を切り替えることができ、PTO変速機構39の変速状態、言い換えれば、PTO軸40の回転駆動状態を高速、低速、ニュートラルのいずれかに切り替えることができる。
そして、さらに本実施形態のトラクタ1は、図13、図14、図16、図17、図18に示すように、変速域可変機構57を備える。変速域可変機構57は、2種類のPTO軸40の一方を使用している状態で、収納部46に収納されている2種類のPTO軸40の他方に基づいて、PTO駆動機構20のPTO変速機構39の変速域を決めるものである。言い換えれば、変速域可変機構57は、2種類のPTO軸40の他方、すなわち、使用していない方のPTO軸40を収納部46に収納することで、使用しているPTO軸40に応じたPTO変速機構39の変速域を決めるものである。尚、変速域には中立位置から所定変速位置のみの変速を含むものである。
具体的には、変速域可変機構57は、固定当接部としてのストッパ板58と、可動当接部としての可動ストッパ部59と、カム機構60とを含んで構成される。
ストッパ板58は、PTO変速操作レバー47のロッド部54に設けられる。ストッパ板58は、板状に形成され、ロッド部54に対して変速操作方向と交差するようにして固定される。ストッパ板58は、ロッド部54から鉛直方向下側に向けて設けられ、鉛直方向下側縁部に切り欠き58aが形成されている。
可動ストッパ部59は、ストッパ板58と当接可能である当接位置(図17参照)と、当該当接位置から退避した非当接位置(図18参照)とに回動可能である。
カム機構60は、可動ストッパ部59を当接位置側に付勢すると共に収納部46内に突出した可動突起部61に収納部46内に収納された2種類のPTO軸40の一方の先端部が接触することで可動ストッパ部59を当接位置から非当接位置に回動させるものである。カム機構60は、カム部材62、トルク・スプリング63等を含んで構成される。カム部材62は、略コの字型のアーム状に形成され、コの字型の一端に可動ストッパ部59が一体的に形成され、コの字型の他端に可動突起部61が一体的に形成される。カム部材62は、円筒ケース51に固定された取付部材64に対して回動軸65を介して組み付けられる。カム部材62は、車幅方向に対して可動ストッパ部59と可動突起部61とが対向し、可動ストッパ部59が車幅方向左側に位置し、可動突起部61が車幅方向右側に位置するような位置関係で配置される(図16参照)。回動軸65は、車幅方向に沿って設けられている。カム部材62は、この回動軸65を回動中心として回動可能に取付部材64に支持される。トルク・スプリング63は、取付部材64等を反力受け部材として、可動ストッパ部59が当接位置側に位置するようにカム部材62を付勢する。ここでは、カム部材62は、トルク・スプリング63によって、鉛直方向上側に向って付勢されている。可動ストッパ部59は、図17に示す当接位置にて上記ストッパ板58と当接可能である。また、収納部46の円筒ケース51は、前後方向前側の端部の鉛直方向下側にカム孔66(図16参照)が形成されている。カム部材62は、可動ストッパ部59が当接位置にある状態(図17参照)で、可動突起部61がカム孔66を介して収納部46の円筒ケース51内に突出したような位置関係となっている。
したがって、上記のように構成される変速域可変機構57は、収納部46内に収納されたPTO軸40の種類に応じて可動ストッパ部59が当接位置に位置しこの可動ストッパ部59とストッパ板58とが当接することで、ロッド部54の移動を規制することができる。これにより、変速域可変機構57は、PTO変速操作レバー47による変速操作を規制しPTO駆動機構20の変速域を規制することができる。
ここでは、上述したように第1PTO軸43と第2PTO軸44とは、突起部44d(図18等参照)の分だけ軸方向に対する長さが異なるため、収納部46内に収納された状態での先端位置が異なることとなる。本実施形態の変速域可変機構57は、このことを利用してPTO変速操作レバー47による変速操作を規制しPTO駆動機構20の変速域を規制することができる。
具体的には、トラクタ1は、例えば、第2PTO軸44が使用されている場合には、図17に示すように、第1PTO軸43が収納部46内に収納されることとなる。変速域可変機構57は、第1PTO軸43が収納部46の円筒ケース51内に収納された場合に、大径部43cが円筒ケース51内の縮径部51aに当接することで位置決めされることから、この第1PTO軸43の先端部が可動突起部61に接触しない状態となる。このため、変速域可変機構57は、トルク・スプリング63によって付勢されている可動ストッパ部59が当接位置でそのまま待機する。これにより、変速域可変機構57は、当該可動ストッパ部59とストッパ板58とが当接することで、ロッド部54の低速位置PLo側への移動を規制し、PTO変速操作レバー47による低速位置PLo側への変速操作を規制することができる。この結果、変速域可変機構57は、PTO変速操作レバー47による変速操作を規制しPTO駆動機構20の変速域を規制することができる。すなわち、変速域可変機構57は、相対的に高速で回転駆動する場合に使用し、相対的に低速で回転駆動する場合には使用しない第2PTO軸44が使用されている状況下において、PTO変速機構39の変速状態、言い換えれば、PTO軸40の回転駆動状態を高速側に切り替えることができる一方、低速側には切り替えることができないようにすることができる。
一方、トラクタ1は、例えば、第1PTO軸43が使用されている場合には、図18に示すように、第2PTO軸44が収納部46内に収納されることとなる。変速域可変機構57は、第2PTO軸44が収納部46の円筒ケース51内に収納された場合に、第2PTO軸44が突起部44dの分だけ第1PTO軸43よりも長いことから、この第2PTO軸44の先端部が可動突起部61に接触する状態となる。このため、変速域可変機構57は、この第2PTO軸44がトルク・スプリング63の付勢力に打ち勝って可動突起部61を押し下げることで、これに連動して可動ストッパ部59が当接位置から非当接位置に回動する。これにより、変速域可変機構57は、ロッド部54が低速位置PLo側へ移動する際に可動ストッパ部59がストッパ板58の切り欠き58aを通過することで、ロッド部54の低速位置PLo側への移動を許容し、PTO変速操作レバー47による低速位置PLo側、及び、高速位置PHi側への変速操作を許容することができる。この結果、変速域可変機構57は、PTO変速操作レバー47による変速操作を許容しPTO駆動機構20の変速域を広げることができる。すなわち、変速域可変機構57は、相対的に高速で回転駆動する場合、及び、相対的に低速で回転駆動する場合の両方で使用する第1PTO軸43が使用されている状況下において、PTO変速機構39の変速状態、言い換えれば、PTO軸40の回転駆動状態を高速側と低速側の両方に切り替えることができるようにすることができる。
上記のように構成されるトラクタ1は、収納部46が機体後部1Rに設けられることから、使用するPTO軸40を交換した際に使用しない方のPTO軸40を機体から取り外したらすぐに収納部46に収納することができるので、使用していないPTO軸40が紛失してしまうことを抑制することができる。そしてさらに、トラクタ1は、PTO変速操作レバー47も機体後部1Rに設けられることから、使用するPTO軸40を交換した後に、操縦席8に戻って着座しなくても、その場ですぐに変速操作を行ってPTO軸40の回転を変速することができる。この結果、トラクタ1は、作業性を向上し、作業効率を向上することができる。
また、このトラクタ1は、PTO変速操作レバー47がシリンダケース48に対して収納部46を介して変速操作の方向に沿って移動可能に支持されるので、例えば、PTO変速操作レバー47を支持する支持部材を収納部46とは別個に設けなくてもよいことから、トラクタ1を構成する部品点数を抑制することができ、例えば、製造コストを抑制することができる。
さらに、このトラクタ1は、変速域可変機構57によって、2種類のPTO軸40の一方を使用している状態で、収納部46に収納されている使用していないPTO軸40に基づいて、PTO駆動機構20の変速域を決めることができる。この結果、トラクタ1は、使用していないPTO軸40を収納部46に収納するだけで、現在使用しているPTO軸40において使用可能な変速域を適正に設定することができる。
この場合、トラクタ1は、変速域可変機構57によって、収納部46内に収納されたPTO軸40の種類に応じて可動ストッパ部59が当接位置に位置しこの可動ストッパ部59とストッパ板58とが当接することで、PTO変速操作レバー47による変速操作を規制してPTO駆動機構20の変速域を規制することができる。本実施形態のトラクタ1は、変速域可変機構57によって、第1PTO軸43が使用されている状況下において、PTO軸40の回転駆動状態を高速側と低速側の両方に切り替えることができるようにすることができ、第2PTO軸44が使用されている状況下において、PTO軸40の回転駆動状態を高速側に切り替えることができる一方、低速側には切り替えることができないようにすることができる。この結果、トラクタ1は、使用しているPTO軸40の種類に応じて、使用していないPTO軸40によって適切に使用可能な変速域を設定することができるので、例えば、使用する変速域を間違えてしまうことを抑制することがき、この結果、作業性を向上することができる。
また、トラクタ1は、収納部46の円筒ケース51が水平方向に対して傾斜して設けられると共に鉛直方向下側の先端部にカム孔66(図16参照)が形成されていることから、このカム孔66を水抜き孔として機能させることができる。この結果、トラクタ1は、水抜き孔をカム孔66とは別個に設けなくても、円筒ケース51内に水が浸入した場合に、当該浸入した水を、このカム孔66を介して円筒ケース51の外に排出することができ、円筒ケース51内を適正な状態で保持することができる。
以上で説明した実施形態に係るトラクタ1によれば、エンジン4から伝達される回転動力を変速して機体後部1RのPTO軸40から作業機に出力すると共に、PTO軸40が脱着可能であり、少なくとも2種類のPTO軸40を交換して使用可能であるPTO駆動機構20と、2種類のPTO軸40の一方を使用している状態で他方を収納可能である収納部46と、PTO駆動機構20の変速操作を行うPTO変速操作レバー47とを備え、収納部46及びPTO変速操作レバー47は、機体後部1Rに設けられる。したがって、トラクタ1は、作業性を向上することができる。
次に、図19、図20、図21及び図22の実施例について説明する。図19と図20は斜視図であり、図21は鉛直方向下側から視た図である。図20は、円筒ケース51とブラケット50を点線で示しており、円筒ケース51とブラケット50で隠れている部品を実線で示している。また、図22はカム部材62、遮蔽板100、ストッパ板130などの動きを説明するための斜視図である。
この実施例の構成は、円筒ケース51の蓋52の後方に出退して、収納状態のPTO軸40の所定以上の抜け出しを規制する規制部材としての遮蔽板100を配置させる構成である。PTO変速操作レバー47で変速すると、円筒ケース51の入口部後方(蓋52の後方)でPTO軸40の引出される圏内に遮蔽板100を出動させて、PTO軸40の抜け出しをできないようにする構成である。具体的には、第2カム機構60Aのカム部材62の回動軸65に遮蔽板100を取り付けて、遮蔽板100が回動できるように構成している。遮蔽板100は、蓋52の後方に出退する遮蔽部100a、円筒ケース51の右側において前方に向かう第1並行部100b、下側に向かう下向部100c、前方に向かう第2並行部100d、円筒ケースの下方を左側に向かう左右部100e、円筒ケース51の左側を前方に向かう第3並行部100fとから一体的に構成されている。
そして、第3並行部100fは、カム部材62の内側(円筒ケース51側寄り)に配置されており、この第3並行部100fにおいて、前記回動軸65に回動可能に支持されている。第3並行部100fには凹部100faが形成されている。この遮蔽板100の第2並行部100dとブラケット50との間には引張りバネ140が設けられている。そして、後述するPTO変速レバー47が中立位置PNにあると、遮蔽板100は、回動軸65を回動支点にして矢印P1方向に付勢されている。これにより、遮蔽板100の遮蔽部100aは、収納ケース51の蓋52の後方下側に退避しているので(図23)、蓋52の着脱をして、第1PTO軸43又は第2PTO軸44の収納ケース51内への収納と取り出しができる。
図13等で説明した変速域可変機構57の別構成である第2変速域可変機構57Aについて説明する。第2変速域可変機構57Aは、固定当接部としてのストッパ板130と、第1可動当接部110としてのカム部材62に構成される凸部110aと、第2可動当接部120としてのカム部材62に構成されるピン121と、第2カム機構60Aとを含んで構成される。
固定当接部としてのストッパ板130は、前述した変速域可変機構57のストッパ板58に相当する。第1可動当接部110としてのカム部材62に構成される凸部110aは、変速域可変機構57の可動当接部である可動ストッパ部59に相当する。第2可動当接部120としてのピン121は、第2変速域可変機構57Aの構成で追加された構成である。
第2カム機構60Aは、カム部材62に構成される凸部110aを当接位置側に付勢すると共に収納部46内に突出した可動突起部61に収納部46内に収納された2種類のPTO軸40の一方の先端部が接触することで凸部110aを当接位置から非当接位置に回動させるものである。また、第2カム機構60Aは、カム部材62に構成されるピン121を非当接位置側に付勢すると共に収納部46内に突出した可動突起部61に収納部46内に収納された2種類のPTO軸40の一方の先端部が接触することでピン121を非当接位置から当接位置に回動させるものである。第2カム機構60Aは、カム部材62、トルク・スプリング63等を含んで構成される。
カム部材62は、右側プレート部62a、連結プレート部62b及び左側プレート部62cの3片部が一体的に構成されている。左側プレート部62cは、PTO変速操作レバー47のロッド部54と一体の後述するストッパ板130の下側に構成されている下向きの凹部130aの空間部を通過する構成としている。
そして、左側プレート部62cにおいて、第1可動当接部110と第2可動当接部120が構成されている。第1可動当接部110は、カム部材62と一体成形される凸部110aで形成されている。第2可動当接部120は、当該カム部材62の左側プレート部62cに溶接で一体化されており、所定方向に向け突出すべくピン121で形成されている。このピン121は、前記凸部110aの後側に溶接で固定されている。そして、ピン121は、前記溶接部分から左側方向に延出する第1左右部121a、前方向に向かう前後部121b、右側方向に向かう第2左右部121cから構成されている。このうち、第2左右部121cは、カム部材62の上下動に伴って、後述ストッパ板130の左ストッパ部130cの前方に出退できる構成である。
カム部材62は、前述したように、回動軸65を回動支点にして、トルク・スプリング(図13等参照)で矢印P3方向に付勢されている。
PTO変速レバー47のロッド部54には、ストッパ板130からなる固定当接部が溶接で一体的に構成されている。ストッパ板130の上側にロッド部54が取り付けられている。ストッパ板130の下側には、下向きの凹部130aが形成されている。また、凹部130aの右側を右ストッパ板部130bとし、凹部130aの左側を左ストッパ部130cとする。
図6と図7で説明した第1PTO軸43と第2PTO軸44について、第1PTO軸43は、インボリュートスプライン(21スプライン)43aを介して作業機と結合され、第2PTO軸44は、角スプライン(6スプライン)44aを介して作業機と結合する場合の構成について説明する。長さ関係は、第1PTO軸43よりも第2PTO軸44の方が長い。
短い方の第1PTO軸43を円筒ケース51内に収納すると、第1PTO軸43はカム部材62の可動突起部61に当接しない。図22は短い方の第1PTO軸43を円筒ケース51内に収納しており、PTO変速レバー47を中立位置PNにしているときの状態を示している。第2PTO軸44は、変速装置5の伝動機構13本体の機体後部R1側に装着している。
このときは、前記ストッパ板130の右ストッパ板部130bは、遮蔽板100の第3並行部100fの凹部100faに位置しており、しかも遮蔽板100は矢印P1方向に付勢されているため、ストッパ板130の右ストッパ板部130bの下側端部と、遮蔽板100の第3並行部100fの凹部100fa部分は当接している。そして、PTO変速レバー47のロッド部54のストッパ板130において、ストッパ板130の後側は、カム部材62の第1可動当接部110の凸部110aに当接している。このため、PTO変速レバー47を後側に変速操作できないので、高速位置PHiへの変速が牽制される(高速牽制手段)。PTO変速レバー47は前側に変速操作できるので、低速位置PLoへの変速ができる。そして、作業機と結合している第2PTO軸44は、角スプライン(6スプライン)44aを介して作業機と結合しているので、低速回転で伝達トルクが高くても許容できる。
PTO変速レバー47を前側に変速操作すると、ストッパ板130の右ストッパ板部130bの下側端部は、遮蔽板100の第3並行部100fの凹部100faから外れるようになる。即ち、右ストッパ板部130bは、第3並行部100fの凹部100faの傾斜面100fbと当接しながら前方へ移動する。すると、遮蔽板100は、回動軸65を回動支点にして矢印P2方向に回動する。従って、遮蔽板100の遮蔽部100aは、円筒ケース51の蓋52の後方に位置するようになるので、円筒ケース51内に収納している第1PTO軸43を取り出すことはできなくなり、変速装置5の伝動機構13本体の機体後部側に装着するPTO軸を間違えることはない。
第1PTO軸43は、変速装置5の伝動機構13本体の機体後部側に装着する。そして、長い方の第2PTO軸44を円筒ケース51内に収納すると、第2PTO軸44はカム部材62の可動突起部61に当接する。このときは、回動軸65を回動支点にして、カム部材62は矢印P4方向に回動する。すると、カム部材62を形成する左側プレート部62cも矢印P4方向に回動するので、第1可動当接部110の凸部110aは、ストッパ板130に形成されている下向きの凹部130aの空間部に位置するようになる。これにより、ストッパ板130と第1可動当接部110の凸部110aは当接しなくなる。
一方、カム部材62の左側プレート部62cに溶接されているピン121も矢印P4方向に回動するので、ピン121の第2左右部121cは、ストッパ板130の左ストッパ部130cの前側に位置するようになる。従って、ストッパ板130は、ピン121に当接して前側に移動できなくなる。
PTO変速レバー47が中立位置PNにあると、前記ストッパ板130の右ストッパ板部130bは、遮蔽板100の第3並行部100fの凹部100faに位置しており、しかも遮蔽板100は矢印P1方向に付勢されているため、ストッパ板130の右ストッパ板部130bの下側端部と、遮蔽板100の第3並行部100fの凹部100fa部分は当接している。そして、PTO変速レバー47のロッド部54のストッパ板130において、ストッパ板130の左ストッパ部130cの前側は、ピン121の第2左右部121cが位置している。このため、ストッパ板130の左ストッパ部130cがピン121の第2左右部121cに当接するので、PTO変速レバー47を前側に変速操作できなくなり、低速位置PLoへの変速が牽制される(低速牽制手段)。PTO変速レバー47は後側に変速操作できるので、高速位置PHiへの変速ができる。このため、伝達トルクが高くなることがなく、第1PTO軸43は、インボリュートスプライン(21スプライン)43aを介して作業機と結合しているので、伝達トルクを許容できる。
PTO変速レバー47を後側に変速操作すると、ストッパ板130の右ストッパ板部130bの下側端部は、遮蔽板100の第3並行部100fの凹部100faから外れるようになる。即ち、右ストッパ板部130bは、第3並行部100fの凹部100fa回の傾斜面100fcと当接しながら後方へ移動する。すると、遮蔽板100は、回動軸65を動支点にして矢印P2方向に回動する。従って、遮蔽板100の遮蔽部100a(図23の点線)は、円筒ケース51の入口部後方であり、蓋52の後方に位置するようになるので、円筒ケース51内に収納している第2PTO軸44を取り出すことはできなくなり、変速装置5の伝動機構13本体の機体後部側に装着するPTO軸を間違えることはない。
前述したように、短い方の第1PTO軸43を円筒ケース51内に収納すると、第1PTO軸43はカム部材62の可動突起部61に当接しない。即ち、角スプライン(6スプライン)43aとは反対側の取り付け端部43bがカム部材62の可動突起部61に当接しない。第1PTO軸43の大径部43cが円筒ケース51内の縮径部51aに当接して位置決めされるためである。この状況を図17に示している。
しかしながら、第1PTO軸43の大径部43cから前記取り付け端部43bの端部までの長さと、第1PTO軸43の大径部43cから前記角スプライン(6スプライン)43aの端部までの長さを比較すると、第1PTO軸43の大径部43cから角スプライン(6スプライン)43aの端部までの長さの方が長い。このため、角スプライン(6スプライン)43aの方を先に円筒ケース51内に収納すると、第1PTO軸43の大径部43cが円筒ケース51内の縮径部51aに当接しない状態で、角スプライン(6スプライン)43aの端部がカム部材62の可動突起部61に当接してしまうという不具合が発生する。そこで、第1PTO軸43を円筒ケース51内に収納時に、角スプライン(6スプライン)43aの方を先に円筒ケース51内に収納した場合には、蓋52が閉まらない構成とする。この状況を図24の断面図に示している。
蓋52に円筒部52aを構成し、この円筒部52aの内径をQ1とする。そして、第1PTO軸43の取り付け端部43b直径をQ2との関係を、
Q1<Q2
と設定することで、蓋52の円筒部52aが第1PTO軸43の取り付け端部43bに当接するので、蓋52が閉まらない。これにより、誤組みを防止できる。第1PTO軸43の角スプライン(6スプライン)43部分の直径や、第2PTO軸44の直径は、蓋52の円筒部52aの内径をQ1よりも小さい径にすることで、蓋52は閉まる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る作業車両は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。