本願発明は、アウター部材を表皮材で外側から覆って成る椅子に関するものである。
椅子において、背もたれや座がクッションを有する構造である場合、背クッションは布等の表皮材(織地)で覆われている。そして、クッションを包む表皮材の取り付け構造として、表皮材の縁に取り付けた縁板(縁部材)をフレーム材等に設けた溝穴に嵌め込むことが提案されている(例えば特許文献1〜4)。このように縁板を使用した取り付け構造は、例えばタッカー止めのようなファスナを使用するものに比べて取り付け作業の能率を向上できる等の利点がある。
他方、背板(背インナーシェル)の背面を露出させた椅子において、例えば特許文献5のように、背板の背面を表皮材で覆うことも行われている。この特許文献5では表皮材を袋状に構成して、この表皮材でクッション付き背板をすっぽり覆っている。このように背板の背面を表皮材で覆うと、背板に穴等の加工を施していても外観を美麗に保持できる利点や、背板の背面を素材の地色(一般に樹脂の地色)とは異なる色使いを実現できるため、美感をより一層向上できる利点がある。
特開2008−183286号公報
特開2008−188358号公報
特開2003−47534号公報
特許第3821869号公報
特開2005−152087号公報
さて、背板はその後ろに配置された樹脂製の背アウターシェル(背アウターシェル)に取り付けられていることが多く、この背アウターシェルは一般に樹脂の素材がむきだしになっている。逆にいうと、背アウターシェルは背板を支持する強度メンバーとしての機能と椅子の背面カバーの機能とを担っており、そこで、背アウターシェルの背面は穴や突起が存在しない滑らかな面としている。
しかし、背アウターシェルの背面がむき出しのままであると、色使いが限定されてしまうためデザインの多様性を実現できない問題がある。この点、背アウターシェルをクロス等の表皮材で後ろから覆うと、多彩な色使いが可能になってデザインの多様化できる利点がある。この場合、表皮材の縁部は背アウターシェルの手前側に巻き込んだ状態に保持せねばならず、この保持手段として特許文献1〜4のような縁部材を使用すると、表皮材の取り付け作業を簡単に行えるため好適である。
更に、表皮材に縁板を固定してこれを背アウターシェルに取り付ける場合、例えば背アウターシェルの下端面に下向き開口の長溝を形成して、この長溝に縁板を差し込む構造を採用すると、表皮材の取り付けを簡単に行えると共に、表皮材はダレを生じることなくぴしっと張った状態に保持される利点がある。しかし、この方法では、背アウターシェルを製造するにおいて金型が複雑化する問題である。
すなわち、射出成形法は密着・離反自在な一対の金型(固定型と可動型、或いは現場用語で言うキャビとコア)を基本要素としており、2つの金型の合わせ面に形成された空間に樹脂を注入することで所定形状に成形するものであり、背アウターシェルを製造する場合は、その背面に重なる金型と前面に重なる金型との一対の金型を基本要素にしているが、外周面に溝穴を設けるためには、キャビとコアとは異なるスライド型を使用せねばならず、このため金型装置が著しく複雑化するのである。
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、樹脂製のアウター部材であっても、複雑な金型を使用することなく簡単に表皮材を取り付けできる状態に製造できるようにすることを主たる課題とするものである。
前記課題を解決すべく請求項1の発明は、背もたれ又は座の外観を構成する樹脂製のアウター部材を有しており、前記アウター部材の外面を表皮材で覆っている椅子において、前記アウター部材の端部に、前記表皮材で覆われたカバーを装着しており、前記表皮材の縁部に設けた縁部材を前記カバーで隠れた状態に配置している。
請求項2の発明は請求項1を具体化したもので、この発明では、前記アウター部材にカバー取付け部を段落ちした状態で形成することにより、前記アウター部材の外面とカバーの外面とを同一面状に連続させており、かつ、前記アウター部材とカバーとの間に、前記表皮材の縁部に固定された縁部材を差し込む空所が形成されている。
請求項2ではアウター部材とカバーとの間に縁部材取付け用の空所が形成されているが、請求項1の展開例としては、縁部材取付け用の空所は、アウター部材のうちカバーで覆われている面や、カバーのうちアウター部材と対向している面(内面)に形成することも可能である。
請求項3の発明は請求項2の発明を背もたれの背アウターシェルに適用している。すなわちこの発明は、前記アウター部材は背もたれを構成する背アウター部材であって、この背アウターシェルの下部に前記カバーを配置しており、前記背アウターシェルの下部とカバーとの間に、前記表皮材の下端縁に固定された端板を差し込む空所が下方に開口するように形成されている。
本願発明では、表皮材を取り付けるための加工をアウター部材に施すにおいて、縁部材がカバーで覆われているため、カバーで覆われている部分は美観を考慮することなく自由に加工できる。従って、アウター部材を樹脂の射出成形品や金属のダイキャスト品として製造(成形)するにおいて、スライド型を有する複雑な金型装置を要することなく、固定型と可動型のような単純な金型装置で表皮材保持手段を形成できるのであり、その結果、加工コストを抑制できる(カバーの製造にもコストが掛かるが、カバーの製造コストよりもスライド型を無くすことによって生じるメリットの方が大きい。)。
また、スライド型を使用した場合も加工できる形状はおのずと限度があり、例えばアウター部材の外面に凹所や突起を形成するのは事実上できないことも多いが、本願発明では制約はないため、アウター部材の外面に凹所や突起を結成することも簡単に実現できる。従って、アウター部材に様々な機能を持たせることが可能になる。更に、アウター部材が樹脂政権品の場合は、射出成形に際して樹脂をキャビティに注入するためのゲートをカバーで覆われた箇所に位置させることにより、ゲートの痕跡を完全に隠すことも可能である(アウターシェルの外面にゲートの後が僅かながら突出していると、表皮材が盛り上がってゲートの跡が見える可能性がある。)。
請求項2のようにカバーの外面をアウター部材の外面と同一面状に形成すると、違和感がなくて美感を一層向上させることができる。また、請求項2では、カバーを取り付けることによって表皮材の縁板を取り付けるための空所が形成されるため、表皮材保持部は単純な形状でよいこのため、アウター部材を成形するための金型を単純化してコスト抑制に貢献できる。
請求項3は背アウターシェルに適用したものであるが、背アウターシェルの下端面は通常は人目に触れないため、請求項3の構成にすることにより、背アウターシェルを表皮材で美麗に覆うことができる。なお、表皮材の取り付け手段は、カバーを設けている部位と他の部位とで変えてもよいし、全周にわたって同じ取り付け構造を採用してもよい。
椅子の外観図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は側面図である。
椅子の分離斜視図である。
クッションを省略した状態での背もたれの外観図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は側面図、(C)は後ろから見た斜視図である。
背もたれを後ろから見た分離斜視図である。
(A)はメインメンバーの部分背面図、(B)はメインメンバーを後ろから見た部分斜視図、(C)はクッションの端部の部分正面図、(D)はクッションの取付け態様を示す平断面図である。
(A)は背アウターシェルの部分正面図、(B)は背アウターシェルを前から見た部分斜視図、(C)はバックシートの端部の部分正面図、(D)はバックシートの取付け態様を示す平断面図である。
(A)は背もたれの下半部の側断面図、(B)は背アウターシェル11の下部の側断面図である。
(A)は背もたれの左右中央部での側断面図、(B)はトップメンバーの側端部の斜視図、(B)はトップメンバーの側端部の底面図である。
背もたれの下部の破断斜視図である。
(A)は背アウターシェルとロアカバーとの分離斜視図、(B)は背アウターシェルを下方から見た部分斜視図である。
(A)(B)とも背アウターシェルを下方から見た斜視図である。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は事務用に多用されている回転式ロッキング椅子に適用している。本願では方向を特定するため「前後」「左右」といった文言を使用するが、これは普通の姿勢で着座した人の向きを基準にしている。正面視は着座した人と対向した方向になる。
(1).椅子の概要
まず、主として図1〜4を参照して椅子の概要を説明する。図1に示すように、椅子は大きな要素として脚1と座2と背もたれ3とを備えている。脚1は放射方向に延びる枝足を有しているが図示は省略しており、ガスシリンダよりなる脚支柱4のみを表示している。脚支柱4の上端にはベース5が固定されており、ベース5の上方に座2が配置されている。
図2に示すように、座2は樹脂製の座インナーシェル(座板)6とその上面に張った座クッション7とから成っており、図2,3に示す中間支持体8に前後位置調節可能に取付けられている。中間支持体8の前部はフロントリンク9を介してベース5の前部に連結さ
れており、フロントリンク9は側面視でベース5と中間支持体8との両方に対して相対回動する。従って、フロントリンク9が回動することにより、中間支持体8及び座2は上下動しながら前後動する。
背もたれ3は、着座者の体圧がかかるシェル状の背板(背インナーシェル)10とこれが取付けられたシェル状の背板(背アウターシェル)11とを有しており、背板10の前面に背クッション12が張られている。背クッション12はクロス等の表皮材13で前から覆われている。そして、図3に明示するように、背板10は背アウターシェル11の手前に配置されたメインメンバー14と、メインメンバー14の上に重ね配置されたトップメンバー15との2つの部材(パーツ)に分離している。両メンバー14,15は樹脂の成形品である。
メインメンバー14の前面とトップメンバー15の前面は滑らかに連続している。従って、着座した人は一体構造の背もたれと同様に違和感なく凭れる掛かることができる。本実施形態のトップメンバー15は後ろに曲がって下向きにUターンした形状をしており、従って、おおよそ下向き開口U字に近い側面視形態になっている。
背板10におけるメインメンバー14の上端と背アウターシェル11の上端とは略同じ高さになっており、背板10のトップメンバー15は背アウターシェル11の上面に重なっている。そして、背板10のトップメンバー15は、背アウターシェル11の上部後方に回り込むようにオーバーハングしている。
図3に明示するように、背アウターシェル11の下端には前向きに延びる左右一対のアーム16が一体に形成されており、左右のアーム16は門形のジョイント17で連結されている。そして、左右のアーム16はその前端部を中心にして後傾するようにベース5に連結されており、かつ、左右のアーム16は金具18(図1(B)に僅かに露出している。)を介して中間支持体8の後部と連結している。このため、背もたれ3が後傾すると、中間支持体8は座2は金具18に引かれて後退しつつ上昇する。ベース5の後部にはロッキングに対して抵抗を付与する弾性体が配置されている。
背アウターシェル11の下端部はアーム16の付け根よりも下方に突出している。また、背アウターシェル11の下部の背面にはロアカバー19が装着されている。背アウターシェル11は表皮材たるバックシート20で後ろから覆われており、ロアカバー19もバックシート11で覆われている。なお、アーム16は背アウターシェル11とは別部材に構成することも可能である。図1(A)に示すように、表皮材13の上部には左右横長の後ろ向き引き込み部21を設けている。
(2).背もたれの概要
次に、背もたれ3の概要を説明する。例えば図4から理解できるように、背アウターシェル11とメインメンバー14とは上端の横幅より下端の横幅が小さく、従って、両者とも正面視で逆台形の形状を成している。例えば図3に明示するように、背アウターシェル11とメインメンバー14とは、いずれも平面視で前向き凹状に緩い曲率で湾曲しており、かつ、両者とも着座者の腰部が当たる部分が最も前に位置するように側面視で前向き凸状に湾曲している。
例えば図3に示すように、メインメンバー14の左右両側部には前向きに突出した角形のサイド突条23が形成され、メインメンバー14の下端にも前向きに突出した角形のボトム突条24が形成されている。両突条23,24は互いに連続している。両突条23,24は後ろ向きに開口してチャンネル状の形態を成しておりいる。
例えば図5(D)に示すように、背クッション12はサイド突条23及びボトム突条24の内側に配置されており、従って、サイド突条23とボトム突条24とは補強機能と背クッション12の位置決め機能とを有している。背クッション12を覆う表皮材13はメインメンバー14の後ろに巻き込まれており、表皮材13の端縁は背アウターシェル11で隠れている。
そして、表皮材13の端縁には樹脂板のような帯板状の縁板25が縫着や接着等の手段で固定されている一方、メインメンバー14の背面のうち突条23,24のやや内側に位置した部位にはキャッチ突起26を適宜間隔で数形成しており、縁板25に形成したキャッチ穴27をキャッチ突起26に嵌め込んでいる。なお、縁板25はその全体を表皮材13に重ねて縫着しており、このため、表皮材13は縫着部の箇所で折り返されている。
トップメンバー15の左右両側部にはサイド凹所28が横向きに開口している。背クッション12は、メインメンバー14から上向きに延びてトップメンバー15も覆っている。図8(B)(C)から理解できるように、表皮材13はトップメンバー15のサイド凹所28に入り込んでおり、サイド凹所28の内壁28aに設けたキャッチ突起26に縁板25を嵌め込んでいる。このため、表皮材13はサイド凹所28の外側部において張った状態に保持されている。
(3).背アウターシェル
例えば図5(D)に示すように、背アウターシェル11の左右両側縁は略前向きに突出した側壁11′になっており、また、背アウターシェル11の下部には、メインメンバー14におけるボトム突条24の後ろに位置した左右横長のロアリブ30が前向き突設されている。ロアリブ30の下面には多数の補強リブが連接されている。図5(D)に示すように、背アウターシェル11の側壁11′はメインメンバー14におけるサイド突条23の後ろに位置している。図5(D)(及び図6(D))では表皮材13と側壁11′との間に空間が空いているが、表皮材13はある程度の厚さがあるので、実際には側壁11′の先端は表皮材13に当接している。
背アウターシェル11の前面には、アーム16に連続する左右一対ずつの内側縦リブ31及び外側縦リブ32が前向きに突設されており、ロアリブ30は内側縦リブ31に接続さている。また、左右の外側縦リブ32の上端は上部水平リブ33を介して連続しており、左右の内側縦リブ31の上端は下部水平リブ34を介して連続している。また、下部水平リブ34は左右の外側縦リブ32にも連続している。
これらのリブ30〜34は補強機能を有すると共に、背板10が着座者の体圧で後ろ向きに凹むように変形したときの変形量を規制するストッパーの役割も果たしている。また、内外の縦リブ31,32は背板10を取付ける機能も果たしている(本願発明と直接の関係はないので説明は省略する。)。
既述のように背アウターシェル11はバックシート20で後ろから覆われている。図6(C)(D)に示すように、バックシート20の周縁には、縁部材の一例として樹脂板等の帯の縁板35が縫着されている一方、背アウターシェル11の前面のうち左右両側部にはキャッチ突起36が上下適宜間隔で前向きに突設されており、縁板35に空けたキャッチ穴37をキャッチ突起36に嵌め込んでいる。この場合も、背板10の表皮材13と同様に、縁板35はその全体をバックシート20に重ねて縫着しており、このため、バックシート20は縫着部の箇所で折り返されている。
背アウターシェル11の上端部の箇所には前後に開口した長穴が空いており、図8(A)に示すように、縁板35は長穴から手前に押し込まれており、かつ、縁板35は背アウ
ターシェル11の前面に突設したボス36′に嵌め込まれている。もとより、バックシート20の上端部は他の手段で背アウターシェル11に保持してもよい。
バックシート20の下端縁の固定手段としては、図7(B)に示すように、背アウターシェル11の下部とロアカバー19とで挟まれた空所39に縁板35を下方から嵌め入れている。バックシート20はUターンした状態で上向きに引っ張られているため、縁板35が外れることはない。
(4).背アウターシェルへのメインメンバーの取付け手段
本願発明との直接の関係はていので詳細は省略するが、背板10を構成するトップメンバー15はメインメンバー14に対して着脱自在であり、かつ、メインメンバー14は背アウターシェル11に対して着脱自在である。図2に示すように、メインメンバー14の上端には左右の外枠部54が形成されており、背アウターシェル11の上端には、外枠部54が嵌まる内枠部54が形成されている。
メインメンバー14の左右両側部と下部とに略角形の位置決め突起42,43を後ろ向きに突設して、上部位置決め突起42は背アウターシェル11に設けた左右一対の上部挟持体44の間に嵌め入れ、下部位置決め突起43は背アウターシェル11における内外縦リブ31,32の間に嵌め入れている。
また、メインメンバー14を前向き移動不能に保持する手段として、メインメンバー14のうち上部位置決め突起42の外側に平面視矢尻形の上部係合体45を後ろ向きに突設している一方、背アウターシェル11の前面には、上部係合爪46が引っ掛かる平面視L形の上部係合受け部47を形成している。
メインメンバー14の背面のうち下部位置決め突起43より下方の下端部には、平面視矢尻形の下部係合体48を後ろ向きに突設している一方、背アウターシェル11における内外縦リブ31,32の内面には、下部係合体48が係合する左右一対の下部係合受け部(図示せず)を設けている。メインメンバー14における外枠部55の真下部位には、メインメンバー14における内枠部54の上面に下方から当接し得るアッパー係合爪60を設けている。アッパー係合爪60は、背アウターシェル11の内枠部54に回動自在に取り付けたレバー(図示せず)により、係合解除姿勢に撓み変形させることができる。
図8に示すように、トップメンバー15とメインメンバー14とは、雄型係合部61と雌型係合部62とから成る係合手段によって離脱しない状態に保持されている。雄型係合部61には係合爪63を形成し、雌型係合部62には係合穴64を形成している。トップメンバー15は左右のトップ凸条65を有しており、左右のトップ突条65から下向きに突設したボス66をメインメンバー14におけるサイド突条23の上端に設けた筒条部67に嵌め入れている。また、トップメンバー15のサイド凹所28は、背アウターシェル11に設けたプラグ69で目隠しされている。左右突条65の終端はエンド突条70で接続されている。
バックシート20の左右両端部にはプラグ69に嵌まる袋状部が形成されており、このため、バックシート20はプラグ69で左右両端から吊り上げられた状態になっている。また、図8(A)を参照して説明したとおり、バックシート20のうち左右中間部には縁板35が固定されていて、これがボス36′に嵌まっている。このため、バックシート20の上端縁は背アウターシェル11の上端部にきっちり重なった状態に保持されている。なお、高さの低いトップメンバー15を使用する場合はプラグ69は使用せず、トップメンバー15のサイド凹所28には背アウターシェル11の耳部が嵌まり込む。
(5).ロアカバー
次に、図7に加えて図9及び図10も参照してロアカバー19を説明する。さて、背アウターシェル11はそのアーム16を除いてバックシート20で覆われている。そして、例えば図4(B)から理解できるように、背アウターシェル11の下端部はアーム11の付け根よりも下方及び左右側方にはみ出ているため、バックシート20で背アウターシェル11の下端部を覆うことができ、このため美感に優れている。この場合、当然のことながらバックシート20の下端は背アウターシェル11に着脱可能に係止(固定)せねばならない。
この係止手段としては、背アウターシェル11の下端部の前面や下端にキャッチ突起を形成したり、背アウターシェル11の下端部に下向き開口の横長スリットを形成してこのスリットに縁板35を嵌め込むといったことも考えられるが、いずれにしても金型が複雑化する問題がある。すなわち、金型を使用した射出成形法で背アウターシェルを成形するにおいて、金型はスライド型を使用した複雑な構造にせねばならず、このためコストが嵩む。
この点、図7(B)を参照して説明したように、背アウターシェル11とロアカバー19との間の空所39に縁板35を挿入する構成を採用すると、背アウターシェル11はスライド型を使用することなく、密着・離反自在な雌型と雄型とによって簡単に形成できる。そして、背アウターシェル11のうちロアカバー19で覆われている部分は美感が保持されているため、様々な形状に形成することができる。
また、例えば図10に示すように、背アウターシェル11の下端部には軽量化や樹脂使用量節約のための後ろ向きに開口して多数の凹所96を形成しているが、ロアカバー19が覆われているため、美感の問題を考慮することなく後ろ向き開口の凹所96を形成することができる。そして、ロアカバー19は背アウターシェル11の下部に重ねて上向き動させることで取付けられる。この点を説明する。
ロアカバー19は左右横長の形態であり、背アウターシェル11の下端部には、ロアカバー19が重なるように段落ちしたカバー取付け部95が形成されており、カバー取付け部95とロアカバー19との間に、縁板35を挿入可能な空所39が空いている。
ロアカバー19の左右両端に上向きのサイド突起97を形成する一方、背アウターシェル11には、サイド突起97が嵌合する下向き開口のサイド穴98が形成されている。なお、サイド穴98はいわゆる抜き違いによって成形できる。また、ロアカバー19のうち左右側部寄りの2カ所に、底面視L型の係止片99を形成している一方、背アウターシェル11には、係止片99が下方から嵌まる蟻溝(係合溝)100を形成している。穴溝100もスライド型を使用することなく抜き違いによって成形できる。
これらサイド突起97とサイド穴98との嵌め合わせ及び係止片99と蟻溝100との嵌め合わせにより、ロアカバー19は後ろ向きに離脱不能に保持されている。また、ロアカバー19のうち係止片99の内側には上下長手の縦長リブ101が形成されている一方、背アウターシェル11には縦長リブ101が下方から嵌入する縦長溝102が形成されており、これら縦長リブ101と縦長溝101との嵌まり合いにより、ロアカバー19は左右動不能に保持されている。
ロアカバー19の左右中間部には、背面視で下向きに開口したスリット103を形成することでキャッチレバー104が形成されている。キャッチレバー104の上端には前向きに突出した爪104aを形成している。他方、背アウターシェル11には、キャッチレバー104の爪104aが上から引っ掛かるキャッチ板105を設けている。
係止板105は、背アウターシェル11に後ろ向き開口の上下角穴106,107を空けることで形成されている。従って、上部角穴106はキャッチレバー104が引っ掛かる係合穴と見ることも可能である。爪104aは、下方から移動によってキャッチ板105を乗り越えるように前面が側面視湾曲している。
ロアカバー19のうちキャッチレバーの104の真下部位には窓穴108が空いており、この窓穴108の箇所に操作レバー109を配置している。操作レバー109の上端はキャッチレバー104の下端と連続しており、かつ、キャッチレバー104の下端部は左右の細幅部110を介して背アウターシェル11に繋がっている。従って、操作レバー109を押すと、キャッチレバー104は爪104aが後退するように回動する。
また、バックサポート11のうち蟻溝100と縦長溝102との間には前後に開口したサイド係合穴110が形成されている一方、ロアカバー19には、サイド係合穴110に嵌まるサイド係合爪111を形成している。係合爪111はその下端が水平状になっており、ロアカバー19をバックサポート7に装着すると、係合爪111はいったんバックサポート7から逃げ移動し、次いで係合穴110に勘合する。これにより、ロアカバー19はバックサポート7に離脱不能に保持される。
以上の説明から理解できるように、ロアカバー19は背アウターシェル11のカバー取付け部95に重ねて上向きスライドさせることで背アウターシェル11に取付けられる。その状態ではキャッチレバー104の爪104aがキャッチ板105に上から引っ掛かっているため、ロアカバー19は脱落不能に保持されている。
図11に示すように、背アウターシェル11の下端部(アーム16の付け根部)には、背アウターシェル11の左右側縁に配置された縦長の縁板35の下端か後ろから当たるストッパー112を設けている。縦長の縁板35は突起36に嵌め込まれているが、背アウターシェル11は全体として側面視前向き凸状に湾曲している一方、縦長の縁板35の下端は最下端の突起36よりも下方に位置しているため、縁板35の下端は手前に移動し勝手の傾向を呈している。
そこで、本実施形態では、縦長の縁板35の下端が前向きに移動することを突ストッパー112で阻止しており、このかため体裁がよい。そして、ストッパー112は単純な金型で形成できるが、ストッパー112はロアカバー112で後ろから覆われているため、ストッパー112を設けたことに起因して美感を損なうことはないのである。
(6).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば適用対象は回転椅子に限定されず、固定式椅子などの各種の椅子に適用できる。また、背もたれがロッキングしない椅子にも適用できることはいうでもない。実施形態では背板をメインメンバーととトップメンバーとの2つの部材で構成したが、複数の着脱式メンバーを備えた構成とすることも可能である。例えば、着脱式メンバーを、メインメンバーに上から重なるミドルメンバーとその上に重なるトップメンバーとの2つの部材で構成することも可能である。
表皮材保持部の構造は任意に設定できる。例えば茸状の突条とするこもと可能である。バックシート等の表皮材を取り付ける縁部材として、シートに変えて線材や紐を使用することも可能であり、これら取り付け手段に応じてアウター部材又はカバーの構造を設計したらよい。本願発明は、座アウターシェルのような他のアウター部材にも適用できる。縁部材としてシートを採用する場合は、接着や溶着によって表皮材に取り付けることも可能である。
上記の実施形態のように縁板35を空所39に嵌め込む場合、空所39はアウター部材に形成したりカバーに形成したりすることも可能である。また、カバーは着脱自在である必要はなく、いわゆる嵌め殺しといわれる離脱不能な構造にするとも可能である。
本願発明は椅子に適用して有用性を発揮する。従って、産業上利用できる。
3 背もたれ
10 背板
11 背アウターシェル
12 背クッション
13 背クッションの表皮材
14 背板を構成するメインメンバー
15 背板を構成するトップメンバー
19 ロアカバー
20 背アウターシェルの表皮材であるバックシート
35 バックシートの縁板
本願発明は、椅子に関するものである。
椅子において、背もたれがクッションを有する構造である場合、クッションは布等の表皮材(織地)で覆われている。そして、クッションを包む表皮材の取り付け構造として、表皮材の縁に取り付けた縁板(縁部材)をフレーム材等に設けた溝穴に嵌め込むことが提案されている(例えば特許文献1〜4)。このように縁板を使用した取り付け構造は、例えばタッカー止めのようなファスナを使用するものに比べて、取り付け作業の能率を向上できる等の利点がある。
他方、背板(背インナーシェル)の背面を露出させた椅子において、例えば特許文献5のように、背板の背面を表皮材で覆うことも行われている。この特許文献5では表皮材を袋状に構成して、この表皮材でクッション付き背板をすっぽり覆っている。このように背板の背面を表皮材で覆うと、背板に穴等の加工を施していても外観を美麗に保持できる利点や、背板の背面を素材の地色(一般に樹脂の地色)とは異なる色使いを実現できるため、美感をより一層向上できる利点がある。
特開2008−183286号公報
特開2008−188358号公報
特開2003−47534号公報
特許第3821869号公報
特開2005−152087号公報
さて、背板は、その後ろに配置された樹脂製の背アウターシェルに取り付けられていることが多く、この背アウターシェルは、一般に樹脂の素材がむきだしになっている。逆にいうと、背アウターシェルは、背板を支持する強度メンバーとしての機能と椅子の背面カバーの機能とを担っており、そこで、背アウターシェルの背面は穴や突起が存在しない滑らかな面としている。
しかし、背アウターシェルの背面がむき出しのままであると、色使いが限定されてしまうためデザインの多様性を実現できない問題がある。この点、背アウターシェルをクロス等の表皮材で後ろから覆うと、多彩な色使いが可能になってデザインを多様化できる利点がある。この場合、表皮材の縁部は、背アウターシェルの手前側に巻き込んだ状態に保持せねばならず、この保持手段として特許文献1〜4のような縁部材を使用すると、表皮材の取り付け作業を簡単に行えるため好適である。
更に、表皮材に縁板を固定してこれを背アウターシェルに取り付ける場合、例えば背アウターシェルの下端面に下向き開口の長溝を形成して、この長溝に縁板を差し込む構造を採用すると、表皮材の取り付けを簡単に行えると共に、表皮材はダレを生じることなくぴしっと張った状態に保持される利点がある。しかし、この方法では、背アウターシェルを製造するにおいて金型が複雑化する問題である。
すなわち、射出成形法は、密着・離反自在な一対の金型(固定型と可動型、或いは現場用語で言うキャビとコア)を基本要素としており、2つの金型の合わせ面に形成された空間に樹脂を注入することで所定形状に成形するものであり、背アウターシェルを製造する場合は、その背面に重なる金型と前面に重なる金型との一対の金型を基本要素にしているが、外周面に溝穴を設けるためには、キャビとコアとは異なるスライド型を使用せねばならず、このため金型装置が著しく複雑化するのである。
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、樹脂製の背アウター部材であっても、複雑な金型を使用することなく、簡単に表皮材を取り付けできる状態に製造できるようにすることを主たる課題とするものである。
前記課題を解決すべく請求項1の発明は、
背もたれの背面の一部を、後ろから表皮材で覆われた左右横長のカバーで構成し、前記表皮材のうち前記カバーを後ろから覆っている部分の下端が、前記カバーの下端から手前側に巻き込まれていて、前記巻き込まれている端部に、前記カバーの手前側に位置した縁部材が設けられている構成であって、
前記カバーの手前側に、前記カバーが後ろから重なる背アウター部材が配置されており、前記表皮材の縁部材が、前記カバーの下端部と前記背アウター部材との間に配置されている。
請求項2の発明は請求項1を具体化したもので、この発明では、前記縁部材はシート状になっている。
本願発明では、表皮材の縁部材を配置するための加工を背アウター部材に施すにおいて、縁部材がカバーで覆われているため、カバーで覆われている部分は美観を考慮することなく自由に加工できる。従って、背アウター部材を樹脂の射出成形品や金属のダイキャスト品として製造(成形)するにおいて、スライド型を有する複雑な金型装置を要することなく、固定型と可動型のような単純な金型装置で表皮材保持手段を形成できるのであり、その結果、加工コストを抑制できる(カバーの製造にもコストが掛かるが、カバーの製造コストよりも、スライド型を無くすことによるメリットの方が大きい。)。
また、スライド型を使用した場合も加工できる形状はおのずと限度があり、例えば、背アウター部材の外面に凹所や突起を形成するのは事実上できないことも多いが、本願発明では制約はないため、背アウター部材の外面に凹所や突起を結成することも簡単に実現できる。従って、背アウター部材に様々な機能を持たせることが可能になる。更に、背アウター部材が樹脂成形品の場合は、射出成形に際して樹脂をキャビティに注入するためのゲートをカバーで覆われた箇所に位置させることにより、ゲートの痕跡を完全に隠すことも可能である(背アウター部材の外面にゲートの後が僅かながら突出していると、表皮材が盛り上がってゲートの跡が見える可能性がある。)。
椅子の外観図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は側面図である。
椅子の分離斜視図である。
クッションを省略した状態での背もたれの外観図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は側面図、(C)は後ろから見た斜視図である。
背もたれを後ろから見た分離斜視図である。
(A)はメインメンバーの部分背面図、(B)はメインメンバーを後ろから見た部分斜視図、(C)は表皮材の端部の部分正面図、(D)は表皮材の取付け態様を示す平断面図である。
(A)は背アウターシェルの部分正面図、(B)は背アウターシェルを前から見た部分斜視図、(C)はバックシートの端部の部分正面図、(D)はバックシートの取付け態様を示す平断面図である。
(A)は背もたれの下半部の側断面図、(B)は背アウターシェル11の下部の側断面図である。
(A)は背もたれの左右中央部での側断面図、(B)はトップメンバーの側端部の斜視図、(B)はトップメンバーの側端部の底面図である。
背もたれの下部の破断斜視図である。
(A)は背アウターシェルとロアカバーとの分離斜視図、(B)は背アウターシェルを下方から見た部分斜視図である。
(A)(B)とも背アウターシェルを下方から見た斜視図である。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用に多用されている回転式ロッキング椅子に適用している。本願では、方向を特定するため「前後」「左右」といった文言を使用するが、これは、普通の姿勢で着座した人の向きを基準にしている。正面視は、着座した人と対向した方向になる。
(1).椅子の概要
まず、主として図1〜4を参照して椅子の概要を説明する。図1に示すように、椅子は、大きな要素として脚1と座2と背もたれ3とを備えている。脚1は放射方向に延びる枝足を有しているが図示は省略しており、ガスシリンダよりなる脚支柱4のみを表示している。脚支柱4の上端にはベース5が固定されており、ベース5の上方に座2が配置されている。
図2に示すように、座2は、樹脂製の座インナーシェル(座板)6とその上面に張った座クッション7とから成っており、図2,3に示す中間支持体8に、前後位置調節可能に取付けられている。中間支持体8の前部は、フロントリンク9を介してベース5の前部に連結されており、フロントリンク9は、側面視でベース5と中間支持体8との両方に対して相対回動する。従って、フロントリンク9が回動することにより、中間支持体8及び座2は上下動しながら前後動する。
背もたれ3は、着座者の体圧がかかるシェル状の背板(背インナーシェル)10と、これが取付けられた背アウターシェル11とを有しており、背板10の前面に背クッション12が張られている。背アウターシェル11は背アウター部材の例である。背クッション12は、クロス等の表皮材13で前から覆われている。そして、図3に明示するように、背板10は、背アウターシェル11の手前に配置されたメインメンバー14と、メインメンバー14の上に重ね配置されたトップメンバー15との2つの部材(パーツ)に分離している。両メンバー14,15は樹脂の成形品である。
メインメンバー14の前面とトップメンバー15の前面とは、滑らかに連続している。従って、着座した人は、一体構造の背もたれと同様に違和感なく凭れる掛かることができる。本実施形態のトップメンバー15は、後ろに曲がって下向きにUターンした形状をしており、従って、おおよそ下向き開口U字に近い側面視形態になっている。
背板10において、メインメンバー14の上端と背アウターシェル11の上端とは略同じ高さになっており、背板10のトップメンバー15は背アウターシェル11の上面に重なっている。そして、背板10のトップメンバー15は、背アウターシェル11の上部後方に回り込むようにオーバーハングしている。
図3に明示するように、背アウターシェル11の下端には、前向きに延びる左右一対のアーム16が一体に形成されており、左右のアーム16は、門形のジョイント17で連結されている。そして、左右のアーム16は、その前端部を中心にして後傾するようにベース5に連結されており、かつ、左右のアーム16は、金具18(図1(B)に僅かに露出している。)を介して中間支持体8の後部と連結している。このため、背もたれ3が後傾すると、中間支持体8と座2は、金具18に引かれて後退しつつ上昇する。ベース5の後部には、ロッキングに対して抵抗を付与する弾性体が配置されている。
背アウターシェル11の下端部は、アーム16の付け根よりも下方に突出している。また、背アウターシェル11の下部の背面には、請求項に記載したカバーとしてのロアカバー19が装着されている。背アウターシェル11は、表皮材たるバックシート20で後ろから覆われており、ロアカバー19もバックシート11で覆われている。なお、アーム16は、背アウターシェル11とは別部材に構成することも可能である。図1(A)に示すように、表皮材13の上部には、左右横長の後ろ向き引き込み部21を設けている。
(2).背もたれの概要
次に、背もたれ3の概要を説明する。例えば図4から理解できるように、背アウターシェル11とメインメンバー14とは、上端の横幅より下端の横幅が小さくなっており、従って、両者とも正面視で逆台形の形状を成している。例えば図3に明示するように、背アウターシェル11とメインメンバー14とは、いずれも平面視で前向き凹状に緩く湾曲しており、かつ、両者とも、着座者の腰部が当たる部分が最も前に位置するように側面視で前向き凸状に湾曲している。
例えば図3に示すように、メインメンバー14の左右両側部には前向きに突出した角形のサイド突条23が形成され、メインメンバー14の下端にも、前向きに突出した角形のボトム突条24が形成されている。両突条23,24は互いに連続している。両突条23,24は、後ろ向きに開口したチャンネル状の形態を成している。
例えば図5(D)に示すように、背クッション12は、サイド突条23及びボトム突条24の内側に配置されており、従って、サイド突条23とボトム突条24とは、補強機能と背クッション12の位置決め機能とを有している。背クッション12を覆う表皮材13はメインメンバー14の後ろに巻き込まれており、表皮材13の端縁は背アウターシェル11で隠れている。
そして、表皮材13の端縁には、樹脂板のような帯板状の縁板25が縫着や接着等の手段で固定されている一方、メインメンバー14の背面のうち突条23,24のやや内側に位置した部位には、キャッチ突起26を適宜間隔で数形成しており、縁板25に形成したキャッチ穴27をキャッチ突起26に嵌め込んでいる。なお、縁板25は、その全体を表皮材13に重ねて縫着しており、このため、表皮材13は縫着部の箇所で折り返されている。
例えば図2に示すように、トップメンバー15の左右両側部には、サイド凹所28が横向きに開口している。図8(A)に一部を示すように、背クッション12は、メインメンバー14から上向きに延びてトップメンバー15も覆っている。図8(B)(C)から理解できるように、表皮材13は、トップメンバー15のサイド凹所28に入り込んでおり、サイド凹所28の内壁28aに設けたキャッチ突起26に、縁板25を嵌め込んでいる。このため、表皮材13は、サイド凹所28の外側部において張った状態に保持されている。
(3).背アウターシェル
例えば図5(D)に示すように、背アウターシェル11の左右両側縁は略前向きに突出した側壁11′になっており、また、図2のとおり、背アウターシェル11の下部には、メインメンバー14におけるボトム突条24の後ろに位置した左右横長のロアリブ30が前向き突設されている。ロアリブ30の下面には、多数の補強リブが連接されている。図5(D)に示すように、背アウターシェル11の側壁11′は、メインメンバー14におけるサイド突条23の後ろに位置している。図5(D)(及び図6(D))では表皮材13と側壁11′との間に空間が空いているが、表皮材13はある程度の厚さがあるので、実際には側壁11′の先端は表皮材13に当接している。
図2に示すように、背アウターシェル11の前面には、アーム16に連続する左右一対ずつの内側縦リブ31及び外側縦リブ32が前向きに突設されており、ロアリブ30は内側縦リブ31に接続さている。また、左右の外側縦リブ32の上端は、上部水平リブ33を介して連続しており、左右の内側縦リブ31の上端は、下部水平リブ34を介して連続している。また、下部水平リブ34は、左右の外側縦リブ32にも連続している。
これらのリブ30〜34は、補強機能を有すると共に、背板10が着座者の体圧で後ろ向きに凹むように変形したときの変形量を規制するストッパーの役割も果たしている。また、内外の縦リブ31,32は、背板10を取付ける機能も果たしている(本願発明と直接の関係はないので、説明は省略する。)。
既述のように、背アウターシェル11は、バックシート20で後ろから覆われている。図6(C)(D)に示すように、バックシート20の周縁には、縁部材の一例として、樹脂板等の帯の縁板35が縫着されている一方、背アウターシェル11の前面のうち左右両側部には、キャッチ突起36が上下適宜間隔で前向きに突設されており、縁板35に空けたキャッチ穴37をキャッチ突起36に嵌め込んでいる。この場合も、背板10の表皮材13と同様に、縁板35はその全体をバックシート20に重ねて縫着しており、このため、バックシート20は縫着部の箇所で折り返されている。
背アウターシェル11の上端部の箇所には前後に開口した長穴が空いており、図8(A)に示すように、縁板35は長穴から手前に押し込まれており、かつ、縁板35は、背アウターシェル11の前面に突設したボス36′に嵌め込まれている。もとより、バックシート20の上端部は、他の手段で背アウターシェル11に保持してもよい。
バックシート20の下端縁の固定手段としては、図7(B)に示すように、背アウターシェル11の下部とロアカバー19とで挟まれた空所39に縁板35を下方から嵌め入れている。バックシート20は、Uターンした状態で上向きに引っ張られているため、縁板35が外れることはない。
(4).背アウターシェルへのメインメンバーの取付け手段
本願発明との直接の関係はないので詳細は省略するが、背板10を構成するトップメンバー15は、メインメンバー14に対して着脱自在であり、かつ、背板10は背アウターシェル11に対して着脱自在である。図2に示すように、メインメンバー14の上端には左右の外枠部54が形成されており、背アウターシェル11の上端には、外枠部54が嵌まる内枠部56が形成されている。
図4のとおり、メインメンバー14の左右両側部と下部とに、略角形の位置決め突起42,43を後ろ向きに突設して、上部位置決め突起42は、背アウターシェル11に設けた左右一対の上部挟持体44(図2参照)の間に嵌め入れ、下部位置決め突起43は、背アウターシェル11における内外縦リブ31,32(図2参照)の間に嵌め入れている。
また、メインメンバー14を前向き移動不能に保持する手段として、図4のとおり、メインメンバー14のうち上部位置決め突起42の外側に平面視矢尻形の上部係合爪45を後ろ向きに突設している一方、背アウターシェル11の前面には、図2のとおり、上部係合爪45が引っ掛かる平面視L形の上部係合受け部47を形成している。
図4のとおり、メインメンバー14の背面のうち下部位置決め突起43より下方の下端部には、平面視矢尻形の下部係合体48を後ろ向きに突設している一方、背アウターシェル11における内外縦リブ31,32の内面には、下部係合体48が係合する左右一対の下部係合受け部(図示せず)を設けている。図2のとおり、メインメンバー14における外枠部54の真下部位には、背アウターシェル11における内枠部56の上面に下方から当接し得るアッパー係合爪60を設けている。アッパー係合爪60は、背アウターシェル11の内枠部56に回動自在に取り付けたレバー(図示せず)により、係合解除姿勢に撓み変形させることができる。
図8に示すように、トップメンバー15とメインメンバー14とは、雄型係合部61と雌型係合部62とから成る係合手段によって、離脱しない状態に保持されている。雄型係合部61には係合爪63を形成し、雌型係合部62には係合穴64を形成している。例えば図2のとおり、トップメンバー15は左右のトップ凸条65を有しており、左右のトップ突条65から下向きに突設したボス66を、メインメンバー14におけるサイド突条23の上端に設けた筒状部67に嵌め入れている。また、トップメンバー15のサイド凹所28は、背アウターシェル11に設けたプラグ69で目隠しされている。図4のとおり、左右突条65の終端はエンド突条70で接続されている。
バックシート20の左右両端部にはプラグ69に嵌まる袋状部が形成されており、このため、バックシート20は、プラグ69で左右両端から吊り上げられた状態になっている。また、図8(A)を参照して説明したとおり、バックシート20のうち左右中間部には縁板35が固定されていて、これがボス36′に嵌まっている。このため、バックシート20の上端縁は、背アウターシェル11の上端部にきっちり重なった状態に保持されている。なお、高さの低いトップメンバー15を使用する場合はプラグ69は使用せず、トップメンバー15のサイド凹所28には、背アウターシェル11の左右両端に上向き突設した耳部が嵌まり込む。
(5).ロアカバー
次に、図7に加えて図9及び図10も参照してロアカバー19を説明する。さて、背アウターシェル11は、そのアーム16を除いてバックシート20で覆われている。そして、例えば図4(B)から理解できるように、背アウターシェル11の下端部はアーム11の付け根よりも下方及び左右側方にはみ出ているため、バックシート20で背アウターシェル11の下端部を覆うことができる。このため美感に優れている。この場合、当然のことながら、バックシート20の下端は、背アウターシェル11に着脱可能に係止(固定)せねばならない。
この係止手段としては、背アウターシェル11の下端部の前面や下端にキャッチ突起を形成したり、背アウターシェル11の下端部に下向き開口の横長スリットを形成して、このスリットに縁板35を嵌め込むといったことも考えられるが、いずれにしても、金型が複雑化する問題がある。すなわち、金型を使用した射出成形法で背アウターシェルを成形するにおいて、金型はスライド型を使用した複雑な構造にせねばならず、このためコストが嵩む。
この点、図7(B)を参照して説明したように、背アウターシェル11とロアカバー19との間に形成された空所39に縁板35を挿入する構成を採用すると、背アウターシェル11は、スライド型を使用することなく、密着・離反自在な雌型と雄型とによって簡単に形成できる。そして、背アウターシェル11のうちロアカバー19で覆われている部分は、ロアカバー19によって美感が保持されているため、様々な形状に形成することができる。
また、例えば図10に示すように、背アウターシェル11の下端部には、軽量化や樹脂使用量節約のために後ろ向きに開口した多数の凹所96を形成しているが、これらはロアカバー19が覆われているため、美感の問題を考慮することなく後ろ向き開口の凹所96を形成することができる。そして、ロアカバー19は、背アウターシェル11の下部に重ねて上向き動させることで取付けられる。この点を説明する。
ロアカバー19は左右横長の形態であり、背アウターシェル11の下端部には、ロアカバー19が重なるように段落ちしたカバー取付け部95が形成されており、カバー取付け部95とロアカバー19との間に、縁板35を挿入可能な空所39が空いている。
ロアカバー19の左右両端に上向きのサイド突起97が形成されている一方、背アウターシェル11には、サイド突起97が嵌合する下向き開口のサイド穴98を形成している。なお、サイド穴98は、いわゆる抜き違いによって成形できる。また、ロアカバー19のうち左右側部寄りの2カ所に、底面視L型の係止片99を形成している一方、背アウターシェル11には、係止片99が下方から嵌まる蟻溝(係合溝)100を形成している。穴溝100も、スライド型を使用することなく抜き違いによって成形できる。
これら、サイド突起97とサイド穴98との嵌め合わせ、及び、係止片99と蟻溝100との嵌め合わせにより、ロアカバー19は後ろ向きに離脱不能に保持されている。また、ロアカバー19のうち係止片99の内側には、上下長手の縦長リブ101が形成されている一方、背アウターシェル11には、縦長リブ101が下方から嵌入する縦長溝102を形成しており、これら縦長リブ101と縦長溝101との嵌まり合いにより、ロアカバー19は左右動不能に保持されている。
ロアカバー19の左右中間部には、背面視で下向きに開口したスリット103を形成することにより、キャッチレバー104が形成されている。キャッチレバー104の上端には、前向きに突出した爪104aを形成している。他方、背アウターシェル11には、キャッチレバー104の爪104aが上から引っ掛かるキャッチ板105を設けている。
キャッチ板105は、背アウターシェル11に後ろ向き開口の上下角穴106,107を空けることで形成されている。従って、上部角穴106は、キャッチレバー104が引っ掛かる係合穴と見ることも可能である。爪104aは、下方からの移動によってキャッチ板105を乗り越えるように、前面が側面視で湾曲している。
ロアカバー19のうちキャッチレバーの104の真下部位には窓穴108が空いており、この窓穴108の箇所に操作レバー109を配置している。操作レバー109の上端はキャッチレバー104の下端と連続しており、かつ、キャッチレバー104の下端部は、左右の細幅部110を介して背アウターシェル11に繋がっている。従って、操作レバー109を押すと、キャッチレバー104は爪104aが後退するように回動する。
また、バックサポート11のうち蟻溝100と縦長溝102との間には、前後に開口したサイド係合穴110が形成されている一方、ロアカバー19には、サイド係合穴110に嵌まるサイド係合爪111を形成している。係合爪111はその下端が水平状になっており、ロアカバー19をバックサポート7に装着すると、係合爪111はいったんバックサポート7から逃げ移動し、次いで係合穴110に嵌合する。これにより、ロアカバー19はバックサポート7に離脱不能に保持される。
以上の説明から理解できるように、ロアカバー19は、背アウターシェル11のカバー取付け部95に重ねて上向きスライドさせることにより、背アウターシェル11に取付けられる。その状態では、キャッチレバー104の爪104aがキャッチ板105に上から引っ掛かっているため、ロアカバー19は脱落不能に保持されている。
図11に示すように、背アウターシェル11の下端部(アーム16の付け根部)には、背アウターシェル11の左右側縁に配置された縦長の縁板35の下端が後ろから当たるストッパー112を設けている。縦長の縁板35は突起36に嵌め込まれているが、背アウターシェル11は全体として側面視前向き凸状に湾曲している一方、縦長の縁板35の下端は最下端の突起36よりも下方に位置しているため、縁板35の下端は手前に移動し勝手の傾向を呈している。
そこで、本実施形態では、縦長の縁板35の下端が前向きに移動することをストッパー112で阻止しており、このため体裁がよい。そして、ストッパー112は単純な金型で形成できるが、ストッパー112はロアカバー19で後ろから覆われているため、ストッパー112を設けたことに起因して美感を損なうことはないのである。
(6).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、適用対象は回転椅子に限定されず、固定式椅子などの各種の椅子に適用できる。また、背もたれがロッキングしない椅子にも適用できることはいうでもない。実施形態では、背板をメインメンバーととトップメンバーとの2つの部材で構成したが、複数の着脱式メンバーを備えた構成とすることも可能である。例えば、着脱式メンバーを、メインメンバーに上から重なるミドルメンバーと、その上に重なるトップメンバーとの2つの部材で構成することも可能である。
表皮材保持部の構造は任意に設定できる。例えば、茸状の突条とすることも可能である。バックシート等の表皮材を取り付ける縁部材として、シートに代えて線材や紐を使用することも可能であり、これら取り付け手段に応じて、背アウター部材又はカバーの構造を設計したらよい。縁部材としてシートを採用する場合は、接着や溶着によって表皮材に取り付けることも可能である。
また、カバーは着脱自在である必要はなく、いわゆる嵌め殺しといわれる離脱不能な構造にするとも可能である。
本願発明は、椅子に適用して有用性を発揮する。従って、産業上利用できる。
3 背もたれ
10 背板
11 背アウターシェル(背アウター部材)
12 背クッション
13 背クッションの表皮材
14 背板を構成するメインメンバー
15 背板を構成するトップメンバー
19 ロアカバー(カバー)
20 背アウターシェルの表皮材であるバックシート
35 バックシートの縁板(縁部材)