JP2015041441A - 電気接点およびコネクタ端子対 - Google Patents

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Abstract

【課題】一方の接点の表面に銀を主成分とする金属層が露出された接点部において、大気中で使用した際に、凝着摩耗が起こりにくく、かつ接触抵抗が低く抑えられた電気接点およびコネクタ端子対を提供すること。【解決手段】1対の接点部が相互に電気的に接触する電気接点において、一方の接点部においては、銀を主成分とする金属層が最表面に露出される。他方の接点部には、ニッケルを主成分とする金属層が形成され、該ニッケルを主成分とする金属層を覆って、最表面に露出して電子導電性のニッケル酸化膜が形成されている。【選択図】図2

Description

本発明は、電気接点およびコネクタ端子対に関し、さらに詳しくは電気的に接触する1対の接点部の一方の最表面に銀を主成分とする金属層を有する電気接点およびコネクタ端子に関する。
コネクタ端子が他の導電部材と接触する電気接点部においては、良好な電気的接触を達成するために、低い硬度を有し、酸化皮膜が破壊されやすいスズめっき層が最表面に形成されることが一般的である。しかしながら、スズは低い融点を有するため、スズめっき端子を高温で使用すると、スズ層の軟化が起こってしまう。そこで、高温になりやすい大電流用接続端子の接点部には、高導電率を有することで安定した電気的接触が得られ、かつ酸化しにくい銀を主成分とした層が形成される場合がある。
しかし、銀の表面は、摺動によって摩耗を受けやすい。金属間の摺動による摩耗は、凝着に起因して起こる場合が多い。凝着摩耗が起こる程度は、接点部において相互に接触する金属層の種類に依存するので、金属種の組み合わせを工夫することで、電気接点部における銀の凝着摩耗を低減する試みがなされている。例えば、特許文献1に示されるように、一方の接点部の最表面に銀を主成分とする金属層を形成し、他方の接点部の表面に銅を主成分とする金属層を形成するという方法がある。あるいは、銀に添加元素を加えることで銀層の硬度を高くし、摩耗を抑制するという方法もある。
特開2012−99398号公報 三科博司ら、「純金属間摩耗粉形成における移着成長過程の諸相」、潤滑 第24巻 第7号 466〜472頁、1979年 平塚健一ら、「異種純金属間の摩擦・摩耗における雰囲気酸素の役割」、トライボロジスト第34巻 第11号 799〜806頁、1989年 長崎久弥ら、「Fe−Cr,Fe−Ni系合金の硫酸水溶液中における陽極挙動」、日本金属学会誌 第30巻709〜713頁、1966年
上記のように、電気接点部における凝着摩耗の程度は、電気接点部の最表面に露出された金属層の種類に大きく依存する。非特許文献1等に記載されるように、例えば、銀とニッケルの組み合わせや、銀と鉄の組み合わせは、互いに溶け合わず、金属間の摺動による凝着摩耗が少ないとされている。しかし、例えば非特許文献2に記載されるように、凝着摩耗は雰囲気にも依存し、凝着摩耗が起こりにくいとされる金属の組み合わせにおいても、酸素が存在する大気中での摺動では、凝着摩耗が観察されやすくなる。
また、電気接点部において銀と接触させる金属種としてニッケルを使用することを考えた場合に、ニッケル表面には大気中で絶縁性の自然酸化膜(NiO)が容易に形成されることを考慮する必要がある。この自然酸化膜は、大きな荷重を印加しないと破壊されず、低荷重で使用する電気接点部においては、接触抵抗が高くなってしまい、良好な電気的接触が得られない。これらの理由により、電気接点部において、銀と接触させる金属種としてニッケルを使用することは困難であった。
本発明が解決しようとする課題は、一方の接点の表面に銀を主成分とする金属層が露出された接点部において、大気中で使用した際に、凝着摩耗が起こりにくく、かつ接触抵抗が低く抑えられた電気接点およびコネクタ端子対を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる電気接点は、1対の接点部が相互に電気的に接触する電気接点において、一方の接点部においては、銀を主成分とする金属層が最表面に露出され、他方の接点部には、ニッケルを主成分とする金属層が形成され、該ニッケルを主成分とする金属層を覆って、最表面に露出して電子導電性のニッケル酸化膜が形成されていることを要旨とする。
また、本発明にかかるコネクタ端子対は、相互に電気的に接触する接点部を有する1対のコネクタ端子よりなり、一方のコネクタ端子の前記接点部には、銀を主成分とする金属層が最表面に露出され、他方のコネクタ端子の前記接点部には、ニッケルを主成分とする金属層が形成され、該ニッケルを主成分とする金属層を覆って、最表面に露出して電子導電性のニッケル酸化膜が形成されていることを要旨とする。
上記発明にかかる電気接点においては、銀を主成分とする金属層に対向するニッケルを主成分とする金属層の最表面に、電子導電性のニッケル酸化膜が形成されている。このニッケル酸化膜が導電性を有し、さらに絶縁性の自然酸化膜の成長を阻止するため、電気接点を大気中で使用しても、接点部間に低い接触抵抗が得られ、高い接続信頼性が獲得される。また、高い硬度と緻密性を有する電子導電性ニッケル酸化膜の存在によって、両接点部を大気中で相互に摺動させた際にも、大気中の酸素を介した銀とニッケルの間の凝着摩耗が抑制される。
また、上記発明にかかるコネクタ端子対は、接点部に上記の電気接点の構成を有するため、大気中で使用した際に、低い接触抵抗が得られ、また凝着摩耗が低く抑えられる。
本発明にかかる電気接点における積層構造の一例を示す断面図であり、(a)はニッケル接点、(b)は銀接点を示している。 上記電気接点の構造を示す断面図である。 本発明にかかるコネクタ端子の構造の一例を示す断面図である。 平板試料と銀エンボス試料を摺動させた後の表面を観察した光学顕微鏡像である。平板試料の表面に露出されている層は、(a)ニッケル陽極酸化膜、(b)ニッケル自然酸化膜、(c)銀層であり、それぞれ上段は銀エンボス側、下段は平板側を示している。 平板試料と銀エンボス試料を摺動させた後の表面を観察した走査電子顕微鏡(SEM)像および元素分布(元素種は図中に記載)である。平板試料の表面に露出されている層は、(a)ニッケル陽極酸化膜、(b)ニッケル自然酸化膜、(c)銀層であり、それぞれ上段は銀エンボス側、下段は平板側を示している。 平板試料と銀エンボス試料の摺動による接触抵抗の変化についての測定結果であり、平板試料の表面に露出されている層は、(a)ニッケル陽極酸化膜、(b)イオンミリングを経て形成されたニッケル自然酸化膜、(c)機械研磨を経て形成されたニッケル自然酸化膜である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
[電気接点]
本発明の一実施形態にかかる電気接点30の構成を図1および図2に示す。電気接点30は、対向して相互に電気的に接触する1対の接点部であるニッケル接点10と銀接点20よりなる。
ニッケル接点10と銀接点20は、相互に表面において接触するならば、どのような形状を有してもよい。例えば、図2に示すように、銀接点20を略半球状に膨出したエンボス状接点として形成し、ニッケル接点10を略平面よりなる平板状接点として形成することが好適である。ニッケル接点10をエンボス状接点として形成し、銀接点20を平板状接点として形成してもよい。
(ニッケル接点)
ニッケル接点10は、図1(a)に示すニッケル層12とニッケル酸化膜13よりなる積層構造14を有する。つまり、母材11の表面に、ニッケルを主成分とする金属よりなるニッケル層12が形成され、さらにニッケル層12の表面に電子導電性のニッケル酸化膜13が最表面に露出して形成されている。
母材11は、ニッケル接点10の基材となるものであり、どのような金属材料より構成されてもよい。端子母材として最も一般的に用いられる銅又は銅合金よりなる場合を例示することができる。あるいは、母材11が、ニッケルまたはニッケル合金よりなってもよく、この場合は、母材11とニッケル層12の区別はなく、これらが一体のニッケル板よりなり、そのニッケル板の表面にニッケル酸化膜13が形成される。
ニッケル層12は、ニッケルを主成分とする金属層であれば、純ニッケル以外に、ニッケルに他の金属元素が添加されたニッケル合金であってもよい。このようなニッケル合金としては、ニッケルと鉄の合金、ニッケルとクロムの合金を例示することができる。後述する純ニッケル層の場合と同様に、これらの合金層を弱酸性溶液中で処理すれば、表面に不働態皮膜が形成される(例えば非特許文献3参照)。
母材11とニッケル層12の間には、他の金属種よりなる中間層が適宜形成されてもよい。中間層は、母材11とニッケル層12との間の密着性を高めたり、母材11の構成元素の拡散を抑制したりというような種々の役割を果たしうる。中間層としては、純銅層などを例示することができる。
本電気接点30を構成するニッケル接点10においては、母材11の表面に、高い硬度を有し、高温でも軟化しにくいニッケル層12が形成されている。そのため、ニッケル接点10は、高温環境に晒されても、積層構造14の軟化を起こしにくく、高い耐熱性を有する。
ニッケル層12の厚さは、電気接点30の用途に応じて適宜定めればよいが、代表的な厚さとして、0.1〜5μmを例示することができる。これよりも薄いと、高温でも高硬度を維持するというニッケル層12の特性が発揮されにくいうえ、その表面に電子導電性のニッケル酸化膜13を形成することが困難になる。一方、ニッケル層12が厚すぎると、曲げ加工でニッケル層12が剥離するなどして加工が困難になる等の事態が生じやすい。
ニッケル酸化膜13は、電子導電性を有するため、ニッケル接点10の最表面に露出されることで、相手方の銀接点20と直接接触し、低い接触抵抗で、ニッケル接点10と銀接点20との間に導通を形成する。一般に金属ニッケルが大気中室温で自然酸化を受けると、NiOなる組成を有する絶縁性の自然酸化膜が表面に形成される。しかし、後述する弱酸性水溶液中の陽極電解で形成されるNiはNiOとは異なりスピネル型の結晶構造を持つ。この構造ではニッケル原子を6個の酸素原子が囲む八面体構造が連続しており、これが電子の伝導路となって導電性を示す。
電子導電性を有するニッケル酸化膜13は、緻密な膜構造を有する不働態層であり、酸素、ニッケル等の原子の拡散を高効率で阻止するので、一旦ある厚さのニッケル酸化膜13が形成されると、ニッケル酸化膜13の酸化状態が変化して絶縁性の酸化物NiOに変換されるようなことは、ほとんど起こらない。また、ニッケル酸化膜13は、下層に存在するニッケル層12に対して大気中の酸素を遮蔽するので、更なる酸化が進行し、絶縁性のNiO層が形成されたりすることも、ほとんど起こらない。よって、ニッケル酸化膜13は、時間が経過しても、酸化状態や厚さが安定して維持され、表面において安定した接触抵抗を示す。
ニッケル酸化膜13のこのような不働態層としての性質は、高温においても維持され、ニッケル接点10が高温に晒されても、ニッケル酸化膜13の表面は、接触抵抗が小さい状態を保つ。ニッケル層12の軟化のしにくさと合わせてニッケル接点10は、高温での接触抵抗増大の抑制という意味において、高い耐熱性を有する。
電子導電性のニッケル酸化膜13は不働態膜であり、後述するように、ニッケル層12の酸化によって形成する場合には、形成できる厚さにある程度の制約がある。典型的には、ニッケル酸化膜13の厚さは数nmである。この酸化膜は半導体領域の抵抗率を有し、金属よりもその抵抗率は大きいが、ニッケル酸化膜13がこの程度に薄い場合には、端子接点部の最表面において、実用的に要求される程度に低い接触抵抗を与えることができる。
ニッケル接点10において積層構造14を形成するには、母材11の表面に、ニッケル層12を形成し、さらにその表面にニッケル酸化物膜を形成すればよい。つまり、最初に、母材11の表面に適宜中間層を形成したうえで、電気めっき法等を用いてニッケル層12を形成する。次に、希釈した硫酸等の酸水溶液中に浸漬するなどして、ニッケル層12の表面に形成された絶縁性の自然酸化膜(NiO膜)を必要に応じて除去したうえで、ニッケル層12の表層部を酸化し、電子導電性のニッケル酸化膜13を形成する。
ニッケル酸化膜13は、例えば、ニッケル層12を弱酸性水溶液中で陽極電解することによって形成することができる。弱酸性の電解液中でニッケルに正電圧を印加すると、ニッケルの溶解が始まるが、一定の電位を超えると、表面に不働態層が形成され、溶解が抑制される。金属ニッケルを弱酸性水溶液中で陽極電解すると、NiまたはNiの組成を有する数ナノメートルの厚さを有する電子導電性膜が得られる。陽極電解に用いる電解液の水素イオン濃度は、pH2.7〜5.7の範囲にあることが好適である。具体的な弱酸性水溶液としては、希硫酸、希りん酸等を挙げることができる。陽極酸化は、フラーデ電位以上かつ水の電気分解が激しく起こる電位以下で行うことが好ましい。また、陽極酸化は通常、定電流電位で行われるが、緻密な導電性ニッケル酸化膜13を安定的に得るためには、0.01〜2mA/cm(0.001〜0.2A/dm)程度の電流密度とすることが望ましい。
あるいは、弱酸性水溶液の水素イオン濃度が低い場合には、正電位を外部から印加しなくとも、ニッケルを浸漬するだけで、ニッケルの溶出の進行とともに、正電位を印加した場合と同様の導電性ニッケル酸化膜を不働態層として得ることができる。この場合も、浸漬溶液の水素イオン濃度は、pH2.7〜5.7の範囲にあることが望ましい。
(銀接点)
銀接点20においては、図1(b)に示すように、母材21の表面に、銀を主成分とする金属層よりなる銀層22が形成され、最表面に露出して形成されている。
母材21は、銀接点20の基材となるものであり、ニッケル接点10の母材11と同様に、どのような金属材料より構成されてもよく、銅又は銅合金よりなる場合を例示することができる。銀層22は、銀を主成分とする金属層であれば、純銀のみならず、通常用いられているようにアンチモンなどを1%程度添加して硬度を高めたものでもよい。
母材21と銀層22の間には、母材21と銀層22の間の密着性を高めることや母材21の構成元素の拡散を抑制することを目的として、他の金属種よりなる中間層が適宜形成されてもよい。このような中間層としては、純銅層やニッケル層を例示することができる。
銀は高い融点を有し、熱的に非常に安定であるうえ、高温でも表面に酸化皮膜が形成されにくい。また、高い導電率を有する。よって、最表面に銀層22が形成された銀接点20においては、大電流を印加して高温になっても、低い接触抵抗が維持され、高い接続信頼性を得ることができる。
銀層22の厚さは、1〜10μmの範囲にあることが好ましい。この範囲よりも銀層22が薄いと、高温でも低い接触抵抗を維持するという銀の特性が発揮されにくくなる。一方、この範囲よりも銀層22が厚いと、成膜コストがかさむ上に摩擦が大きくなってコネクタの挿入力が大きくなる。
(ニッケル接点と銀接点の摺動)
本電気接点30は、上記のようなニッケル接点10と銀接点20よりなり、ニッケル酸化膜13と銀層22が接触する。ニッケル接点10と銀接点20を接触させた状態で接触面の面内方向に相互に摺動させた際に、ニッケル酸化膜13が存在することにより、銀層22の摩耗が起こりにくくなっている。
上記のように、銀は非常に軟らかく、また金属間で凝着を起こしやすい性質を有するので、銀どうしや他の金属と接触させて摺動させた際に、凝着摩耗が起こりやすい。摺動によって銀層22が摩耗を受けると、電気接点30における電気的接触が不安定になり、接続信頼性が低下する。
金属ニッケルと金属銀の組み合わせにおいては、真空中等、酸素が少ない環境では、凝着摩耗がほとんど起こらないが、大気中で相互に摺動させると、銀表面の凝着摩耗が起こることが知られている。非特許文献2に記載されているように、銀とニッケルの組み合わせのように互いに溶け合わない金属の間では、雰囲気中の酸素を媒介として、つまり表面酸化あるいは酸素の表面吸着を介することで、凝着摩耗が進行することが知られている。大気中に金属ニッケルを放置すると、表面にNiOの組成を有する絶縁性の自然酸化膜が容易に形成されるが、この表面を銀表面と接触させ、荷重を印加しながら摺動させると、ニッケル自然酸化膜が破壊され、露出した金属ニッケルと銀との間で大気中の酸素を媒介とした銀の凝着摩耗とニッケル酸化物の堆積が起こる。
これに対し、ニッケル接点10の表面に電子導電性のニッケル酸化膜13を形成したおいた場合には、この膜は非常に硬く緻密な組織を有し、摺動によっても容易には破壊されないうえ、大気中の酸素を透過しにくく、ニッケル層12のさらなる酸化によるNiOの形成はほぼ進行しない。これらの効果により、ニッケル接点10を銀接点20と摺動させた際に、金属ニッケルと金属銀の間で、雰囲気中の酸素を媒介とした銀の凝着摩耗が抑制される。
このように、電子導電性ニッケル酸化膜13を最表面に有するニッケル接点10と銀接点20とからなる電気接点30においては、自然酸化膜がニッケル層表面に形成されている場合とは異なり、摺動時の銀の凝着摩耗の発生が抑制される。また、上記のようにニッケル接点10側の積層構造14および銀接点20側の銀層22はいずれも、低い接触抵抗を有するとともに、高い耐熱性を有するので、本電気接点30によると、高荷重を印加しなくても、高い接続信頼性が得られ、さらに、高温になる環境でも好適に使用することができる。本電気接点30は、このような特性を有するので、種々の導電部材に適用することができるが、一例として、次に述べるようなコネクタ端子対に好適に用いることができる。
[コネクタ端子対]
本発明のコネクタ端子対は、上記のようなニッケル接点10と銀接点20よりなる電気接点30を有していれば、どのような形状を有していてもかまわない。一例として、本発明の一実施形態にかかるコネクタ端子対60は、図3に示すように、メス型コネクタ端子40とオス型コネクタ端子50の組よりなる。そして、メス型コネクタ端子40とオス型コネクタ端子50が相互に電気的に接触する電気接点部に、上記のような電気接点30を有する。本コネクタ端子対60においては、メス型コネクタ端子40の接点部に、銀層22を最表面に有する銀接点20が形成され、オス型コネクタ端子50の接点部に、ニッケル層12と電子導電性ニッケル酸化膜13よりなる積層構造14を最表面に有するニッケル接点10が形成されている。
メス型コネクタ端子40およびオス型コネクタ端子50は、公知のメス型コネクタ端子およびオス型コネクタ端子と同様の形状を有する。すなわち、メス型コネクタ端子40の挟圧部43は、前方が開口した四角筒状に形成され、挟圧部43の底面の内側には、内側後方へ折り返された形状の弾性接触片41が形成されている。一方、オス型コネクタ端子50は、前方に、平板状に形成されたタブ51を有する。そして、メス型コネクタ端子40の挟圧部43内にオス型コネクタ端子50のタブ51が挿入されると、メス型コネクタ端子40の弾性接触片41は、挟圧部43内部側へ膨出したエンボス部41aにおいてオス型コネクタ端子50と接触し、オス型コネクタ端子50に上向きの力を加える。弾性接触片41と相対する挟圧部43の天井部の表面が内部対向接触面42とされ、オス型コネクタ端子50が弾性接触片41によって内部対向接触面42に押し付けられることにより、オス型コネクタ端子50が挟圧部43内において挟圧保持される。つまり、電気接点は、メス型コネクタ端子40のエンボス部41aおよび内部対向接触面42と、オス型コネクタ端子のタブ51表面との間に形成される。
ここで、メス型コネクタ端子40を形成する母材21のうち、少なくとも弾性接触片41のエンボス部41aの表面と、内部対向接触面42の挟圧部43の内側に露出される表面に、銀層22が形成されている。そして、オス型コネクタ端子50を形成する母材11の表面のうち、少なくともタブ51の上下に配される面、つまりエンボス部41aおよび内部対向接触面42と接触する面に、ニッケル層12と電子導電性ニッケル酸化膜13よりなる積層構造14が形成されている。
これにより、オス型コネクタ端子50のタブ51をメス型コネクタ端子40の挟圧部43に挿入して摺動させ、両者を嵌合させた際に、メス型コネクタ端子40のエンボス部41aおよび内部対向接触面42の表面の銀層22が凝着摩耗を起こすことが防止される。さらに、両コネクタ端子40,50の間に、高い接続信頼性と耐熱性を得ることができる。なお、銀層22および積層構造14は、各コネクタ端子40,50のさらに広い領域に形成されていてもよい。最も広い場合には、両コネクタ端子40,50を構成する母材11,21の表面全体をそれぞれ被覆していてもよい。また、上記の例とは逆に、メス型コネクタ端子40側にニッケル層12とニッケル酸化膜13よりなる積層構造14が形成され、オス型コネクタ端子50側に銀層22が形成されてもよい。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
[実施例1]
以下のようにして形成したNi陽極酸化膜平板とAgエンボスよりなる組として、実施例1にかかる電気接点を形成した。
(Ni陽極酸化膜平板)
厚さ0.2mmの銅板の両面に、それぞれ厚さ2μmのニッケル層を電解めっきによって形成した。これを40mm角に切断し、片面に樹脂テープを貼って保護して、ニッケルめっき銅板を準備した。そして、このニッケルめっき銅板を体積比20%の濃度の希硫酸に浸漬して、ニッケル層表面の自然酸化膜を除去し、純水で洗浄した。また、体積比で0.0001%に硫酸を純水で希釈して、電解液を準備した。そして、白金板を対向電極とし、電解液中で、標準水素電極換算で1.5Vの電圧を上記ニッケルめっき銅板に印加し、2分間ニッケル層の陽極酸化を行った。この際、ニッケル板の表面が黄褐色に観察されるようになり、ニッケル酸化物の不働態層の形成が確認された。その後、試料を純水でよく洗浄し、乾燥させた。
(Agエンボス)
厚さ0.2mmの清浄な銅合金板の表面に、銀に対して0.5%のアンチモンを添加した厚さ4μmの銀層を、電解めっきによって形成した。これをプレス加工することで、曲率半径1mmのエンボス(半球)状とした。
[比較例1]
イオンミリングを経て形成したNi自然酸化膜平板と、実施例1と同様に形成したAgエンボスよりなる組として、比較例1にかかる電気接点を形成した。ここで、Ni自然酸化膜平板は、実施例1のNi陽極酸化膜平板を形成するのに用いたのと同様のニッケルめっき銅板を用いて形成した。つまり、イオンミリング(Arスパッタリング)によってニッケルめっき銅板表面のニッケル酸化膜を一旦除去して新生面を露出させた後、大気中で自然酸化させた。
[比較例2]
機械研磨を経て形成したNi自然酸化膜平板と、実施例1と同様に形成したAgエンボスよりなる組として、比較例2にかかる電気接点を形成した。ここで、Ni自然酸化膜平板は、厚さ0.2mmのニッケル圧延板に対して、アルミナ研磨布を用いて表面を機械研磨してニッケルの新生面を露出させた後、大気中で自然酸化させることによって形成した。
[比較例3]
Ag平板とAgエンボスよりなる組として、比較例3にかかる電気接点を形成した。Agエンボスは、実施例1のものと同様に形成した。また、Ag平板としては、実施例1でプレス加工によってエンボスを形成する前の状態の銀めっき板を用いた。
[試験方法]
(接点間の摺動による摩耗の評価)
実施例1および比較例1〜3にかかる電気接点を構成する平板状試料をそれぞれピエゾアクチュエータ上に貼り付け、Agエンボスの頂点と接触させた。接触面と垂直に1Nの荷重を印加した状態で、振幅64μmで平板状試料を往復させ、1000往復の摺動を行った。
摺動後の平板状試料およびAgエンボス試料の表面を光学顕微鏡にて観察した。また、平板状試料とAgエンボス試料の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察するとともに、SEMを用いたエネルギー分散型X線分光(EDX)によって、元素分布を評価した。
(摺動による接触抵抗変化の評価)
実施例1および比較例2,3にかかる電気接点について、上記の摩耗評価試験の初期において、摺動中に接点間の接触抵抗を測定した。接触抵抗の測定は、四端子法を用いて行った。
[試験結果及び考察]
図4の光学顕微鏡像によると、(c)に示した比較例3にかかるAg平板とAgエンボスの摺動においては、Agエンボスの表面の銀が摩耗し、母材が露出している(中央部左側の暗く見える部分)。Ag平板の表面も摩耗している。また、(b)に示した比較例1にかかるイオンミリングを経て形成したNi自然酸化膜平板とAgエンボスの摺動においても、Agエンボスの表面に暗く見える摩耗粉が堆積している。そして、Ni自然酸化膜平板上に、ひときわ明るい多数の点状の構造が観察され、銀の移着が起こっていることが分かる。なお、写真は掲載していないが、比較例2にかかる機械研磨を経て形成したNi自然酸化膜平板とAgエンボスの組においても、同様に銀およびニッケル自然酸化物の摩耗が観察された。
これらに対し、図4(a)に示した実施例1にかかるNi陽極酸化膜平板とAgエンボスの組においては、Ni陽極酸化膜平板側に、銀の移着やニッケルの酸化摩耗粉が観察されていない。Agエンボス側においても、摩耗粉を示す暗く観察される構造が現れていない。このことは、Ni陽極酸化膜平板とAgエンボスを摺動させた際に、Agの摩耗もNi陽極酸化膜の摩耗もほとんど起こっていないことを示している。各電気接点について、図5に示したSEM像においても、図4の光学顕微鏡観察と同様の結果が観察されている。
次に、図5に示した元素分布の測定結果を考察する。各写真において、その元素が高濃度で分布している箇所ほど、明るく表示されている。まず、(c)の比較例3にかかるAg平板とAgエンボスの組においては、エンボス表面の右側および平板表面の左側で、他の部位よりも銀の分布が少なくなっており、かわりに銅が観察されているのが分かる。これは、銀層の摩耗により、下地の銅母材が露出したことに対応している。
図5(b)に示した比較例1にかかるイオンミリングを経て形成したNi自然酸化膜平板とAgエンボスの組では、Agエンボスの中央部で、銀が減少しているとともに、酸素およびニッケルが現れており、ニッケル酸化物の堆積がわかる。一方、Ni自然酸化膜平板の側でも、酸素の増加と銀の出現、つまり銀の移着とニッケルの酸化摩耗が起こっていることが分かる。これらの結果は、銀とニッケル自然酸化膜の接点において、酸化(または酸素吸着)を媒介として、相互の表面の凝着摩耗が進行したことを示している。なお、比較例2にかかる機械研磨を経て形成したNi自然酸化膜平板を用いた場合にも、同様の結果が観測された。
これらに対し、図5(a)に示した実施例1にかかるNi陽極酸化膜平板とAgエンボスの組では、Agエンボスにおいて、銀の摩滅による母材の露出も酸素の増加も観察されていない。ニッケルの移着も起こっていない。Ni陽極酸化膜平板側でも、ニッケルの摩滅や酸素の増加、銀の移着が起こっていない。これらの結果は、光学顕微鏡およびSEMでの観察結果と対応しており、銀とニッケル陽極酸化膜とが接触する接点を相互に摺動させても、酸素を媒介とした凝着摩耗が発生していないことを示している。
最後に、図6の接触抵抗の測定結果を見ると、摺動前の状態において、(a)のNi陽極酸化膜平板の場合に、(b)および(c)のニッケル自然酸化膜の場合と比較して、1桁以上小さい接触抵抗が得られており、Ni陽極酸化膜が、良好な電気伝導性を有していることが分かる。一方、(b)および(c)のニッケル自然酸化膜が平板状試料の表面に形成されている場合には、10回程度の摺動を行う間に、接触抵抗が急激に低下している。これは、絶縁性の自然酸化膜が10回程度の摺動によって破壊されていることを示している。この結果と、顕微鏡観察および元素分布測定の結果を合わせると、摺動による自然酸化膜の破壊を契機として、露出した金属ニッケルと銀の間で、酸素を媒介とした凝着摩耗が進行することを示している。これに対し、(a)のNi陽極酸化膜が形成されている場合には、摺動回数が増加しても、当初の低い接触抵抗値が安定して維持されている。このことは、ニッケル陽極酸化膜の緻密性と硬さのために、ニッケル陽極酸化膜の破壊やニッケルの酸化が起こらず、酸素を媒介とした金属ニッケルと銀の凝着摩耗が進行しないことを示している。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
10 ニッケル接点
11 母材
12 ニッケル層
13 (電子導電性)ニッケル酸化膜
14 積層構造
20 銀接点
21 母材
22 銀層
30 電気接点
40 メス型コネクタ端子
41 弾性接触片
41a エンボス部
42 内部対向接触面
43 挟圧部
50 オス型コネクタ端子
51 タブ
60 端子対

Claims (2)

  1. 1対の接点部が相互に電気的に接触する電気接点において、
    一方の接点部においては、銀を主成分とする金属層が最表面に露出され、
    他方の接点部には、ニッケルを主成分とする金属層が形成され、該ニッケルを主成分とする金属層を覆って、最表面に露出して電子導電性のニッケル酸化膜が形成されていることを特徴とする電気接点。
  2. 相互に電気的に接触する接点部を有する1対のコネクタ端子よりなり、
    一方のコネクタ端子の前記接点部には、銀を主成分とする金属層が最表面に露出され、
    他方のコネクタ端子の前記接点部には、ニッケルを主成分とする金属層が形成され、該ニッケルを主成分とする金属層を覆って、最表面に露出して電子導電性のニッケル酸化膜が形成されていることを特徴とするコネクタ端子対。
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