JP2015038209A - インク組成物、記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐擦性に優れ、特にインクジェット記録方式に好適なインク組成物を提供する。
【解決手段】金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種の色材と、ポリウレタン樹脂と、を含有するインク組成物であって、前記ポリウレタン樹脂が、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のアニオン性ポリウレタン樹脂である、インク組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、インク組成物並びにこれを用いた記録物、記録方法および記録装置に関する。
従来から、白色色材として中空ポリマー微粒子を含有させた白色インク組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。この中空ポリマー微粒子は、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性の樹脂から形成されている。この様な構造により、インク組成物中では、中空樹脂粒子の内部空洞は溶媒によって満たされて中空樹脂粒子の比重とインク組成物の比重とが実質的に同一になるため、中空樹脂粒子はインク組成物中に安定に分散することができる。そして、このインク組成物を用いて記録媒体上に画像を形成すると、乾燥時に中空樹脂粒子の内部空間が空気で置換されるため、中空樹脂粒子は、その外殻と空洞の間における光の屈折率の差により生じる光散乱によって隠蔽効果を発揮する(即ち、白色を呈する)。一般的に、中空樹脂粒子自体はアクリル等の透明樹脂により形成されている。また、一方で、白色色材として金属酸化物等を含有させた白色インク組成物も知られている。
しかしながら、上記白色インク組成物は、記録媒体上における定着性に優れず、耐擦性が不十分であった。
また、白色インク組成物あるいは着色インク組成物の噴射安定性や保存安定性の向上を図る技術が、例えば特許文献2〜4に開示されている。しかしながら、当該技術はいずれも耐擦性や印字特性に改善の余地があった。
米国特許第4,880,465号明細書 特開2000−103995号公報 特開2000−239585号公報 特開2006−56990号公報
本発明の目的は、耐擦性に優れ、特にインクジェット記録方式に好適なインク組成物を提供することにある。
本発明は、以下の通りである。
(1)金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種の色材と、ポリウレタン樹脂と、を含有するインク組成物であって、前記ポリウレタン樹脂が、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のアニオン性ポリウレタン樹脂である、インク組成物。
(2)前記色材として中空樹脂粒子を含む、上記(1)記載のインク組成物。
(3)前記ポリウレタン樹脂が溶媒中に粒子として分散している、上記(1)または(2)記載のインク組成物。
(4)前記ポリウレタン樹脂が自己乳化型のディスパージョンである、上記(1)〜(3)の何れか一項に記載のインク組成物。
(5)前記ポリウレタン樹脂の含有量が0.5〜10質量%である、上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のインク組成物。
(6)前記中空樹脂粒子の平均粒子径が0.2〜1.0μmである、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のインク組成物。
(7)前記中空樹脂粒子の含有量が5〜20質量%である、上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載のインク組成物。
(8)アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有する、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載のインク組成物。
(9)アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有する、上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載のインク組成物。
(10)インクジェット記録方式に適用される、上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載のインク組成物。
(11)上記(1)〜(10)のいずれか一項に記載のインク組成物によって画像が形成された記録物。
(12)上記(1)〜(10)のいずれか一項に記載のインク組成物を用いて画像を記録する、記録方法。
(13)上記(12)に記載の記録方法により画像を記録する、記録装置。
本発明のインク組成物は、色材として金属化合物または中空樹脂粒子を含む。特に、色材としての中空樹脂微粒子は、他の色材である金属酸化物等の金属化合物よりも粒径が大きく、且つ中空構造であることから、記録媒体上への定着性が困難で耐擦性に劣ることが知られている。これに対し、本発明ではかかる色材を定着するための樹脂として特定構造のポリウレタン樹脂を用いたことにより、耐擦性に優れた画像を形成できるインク組成物を提供できたものである。
更に、本発明のインク組成物は画像保存性にも優れる。即ち、中空樹脂粒子を含むインク組成物と保湿剤を含む他のインク組成物とを組み合わせて画像を形成する場合であって、例えば、中空樹脂粒子を含む本発明の白色インク組成物と保湿剤を含む白色以外のカラーインク組成物とを組み合わせて画像を形成する場合において、得られる記録物は、長時間保存下あるいは高湿度環境下におかれても中空樹脂粒子の透明化が生じず、長期に亘って高品位な画像を維持することが可能である。
以下、本発明のインク組成物について詳細に説明する。本発明のインク組成物は、金属化合物または中空樹脂粒子を白色色材として含む白色インク組成物に好ましく適用できるが、金属化合物や中空樹脂粒子は白色以外の色を呈していてもよく、あるいは、白色色材としての金属化合物および/または中空樹脂粒子とともに他の色材を併用することにより、インク組成物自体を白以外の色とすることも可能である。
[インク組成物]
本発明のインク組成物は、金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種の色材と、ポリウレタン樹脂と、を含有するインク組成物であって、前記ポリウレタン樹脂が、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のアニオン性ポリウレタン樹脂であることを特徴とする。
1.金属化合物、中空樹脂粒子
本発明のインク組成物は、色材として金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種を含有する。
本発明における金属化合物としては、顔料として使用可能な金属原子含有化合物であれば特に限定されることがなく、好ましくは、従来から白色顔料として用いられている金属酸化物、硫酸バリウムや炭酸カルシウムである。金属酸化物としては、特に制限されないが、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。本発明における金属化合物としては、二酸化チタン、アルミナが好ましい。
上記金属化合物の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1.0〜20.0質量%であり、より好ましくは5.0〜10.0質量%である。金属酸化物の含有量が20.0質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、1.0質量%未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。
金属化合物の平均粒子径(外径)は、好ましくは30〜600nmであり、より好ましくは200〜400nmである。外径が600nmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径30nm未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。
金属化合物の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
本発明における中空樹脂粒子としては、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されていることが好ましい。かかる構成により、中空樹脂粒子が水性インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞は水性媒質で満たされることになる。水性媒質で満たされた粒子は、外部の水性媒質とほぼ等しい比重を有するため、水性インク組成物中で沈降することなく分散安定性を保つことができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
また、本発明のインク組成物を、紙その他の記録媒体上に吐出させると、粒子の内部の水性媒質が乾燥時に抜けることにより空洞となる。粒子が内部に空気を含有することにより、粒子は屈折率の異なる樹脂層および空気層を形成し、入射光を効果的に散乱させるため、白色を呈することができる。尚、中空樹脂粒子を形成する樹脂層を光透過性を残した状態で着色することで、白色以外の色を呈することも可能である。
本発明で用いられる中空樹脂粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を好ましく用いることができる。
中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、好ましくは0.2〜1.0μmであり、より好ましくは0.4〜0.8μmである。外径が1.0μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。また、内径は、0.1〜0.8μm程度が適当である。
中空樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
上記中空樹脂粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。中空樹脂粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、5質量%未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。
上記中空樹脂粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を適用することができる。中空樹脂粒子の調製方法として、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空樹脂粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
ビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタン−ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空樹脂粒子を得ることができる。
界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
2.ポリウレタン樹脂
本発明ではポリウレタン樹脂として、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のアニオン性ポリウレタン樹脂を用いる。
かかる構造のポリウレタン樹脂の合成には公知の方法を適用することができ、例えば、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、2個以上の活性水素基を有する化合物と、を反応させて得ることができる。2個以上の活性水素基を有する化合物が、ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールである。
2個以上のイソシアネート基を有する化合物は、特に制限されないが、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の鎖状の脂肪族イソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の環状構造を有する脂肪族イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジクロロ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネートが挙げられる。これらはその1種を単独で用いてもよく、またはそれらの2種以上を組み合わせて用いても良い。
ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、或いは、エピクロロヒドリン等の環状エーテル化合物を、活性水素原子を有する化合物を触媒とする等して、単独または2種以上を混合して開環重合する等して得られる重合体が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリカーボネートポリオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、或いは、ポリテトラメチレングリコール等のようなジオール類と、ホスゲン、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、或いは、エチレンカーボネート等の環式カーボネートとの反応生成物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、ポリウレタン樹脂をアニオン性にするためには、例えば、カルボキシル基やスルホン基等を有するモノマーを導入すればよい。このようなモノマーとしては、乳酸等のモノヒドロキシカルボン酸;α,α−ジメチロール酢酸、α,α−ジメチロールプロピオン酸、α,α−ジメチロール酪酸等のジヒドロキシカルボン酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノー2−トルエンスルホン酸等のジアミノスルホン酸などが挙げられる。
一般的にポリウレタン樹脂の性質として、ポリウレタン樹脂の主鎖間が水素結合により緩やかに結合するため、柔軟で強靭な膜構造を形成させることが可能である。上記ポリウレタン樹脂を用いることにより、通常のインクジェット印刷を行う温度(10℃〜40℃)において流動性を維持した状態で、記録媒体上で広がるようにしながら、柔軟な膜構造を形成するため、耐擦性が向上する。また、一般に印刷用途に使われるメディア(例えば、インクジェット用専用記録用紙「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)は正に帯電していることが多いため、アニオン性のウレタンをインクの定着樹脂として用いることで、静電相互作用により密着性が向上する。また、ポリエーテル系またはポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ポリエステル系ポリウレタン樹脂などに比べて、柔軟性の高い膜を形成しやすいため、耐擦性が向上する。また、ポリエーテル系またはポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、水に対して劣化しにくい性質も有するため、水性インクに用いる際に好ましい。
また、上記ポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−10℃以下であることが特に好ましい。詳細な理由は明らかではないが、50℃以下のガラス転移温度をもつポリウレタン樹脂が記録媒体上で広がるようにしながら画像を形成するため、色材である金属化合物または中空樹脂粒子を記録媒体上により強固に定着させることができる。これにより、優れた耐擦性を有する画像を得ることができる。特に、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度を0℃以下とすることにより、間欠印字特性を格段に向上させ、インクジェット記録時のノズル抜け等を抑制することができる。
一方、本発明者等は、中空樹脂粒子を含むインク組成物と保湿剤を含む他のインク組成物とを組み合わせて画像を形成する場合であって、例えば、中空樹脂粒子を含む白色インク組成物と保湿剤を含む白色以外のカラーインク組成物とを組み合わせて画像を形成する場合、得られる記録物は、長時間保存下あるいは高湿度環境下におかれると、カラー色味の低下やカラー画像と白色画像との境界が透明化するなどの現象を生じることがあることを知見した。これは、記録物が長時間保存下あるいは高湿度環境下におかれると、カラーインク組成物中に残存する前記保湿剤が、空気中の水分を吸収して白色画像に滲み出したり、あるいは水分を保持したまま白色画像中に移動することで、白色画像を構成する中空樹脂粒子の空洞内に入り込むことにより生じるものと考えられる。即ち、中空樹脂粒子はその外殻と空洞の間における光の屈折率の差による光散乱により隠蔽効果を発揮しており、空洞に水分を保有する保湿剤が入り込むことによって隠蔽効果による白色を呈することができないためである。
そして、ポリウレタン樹脂としてポリカーボネート系またはポリエーテル系のアニオン性ポリウレタン樹脂を用いる本発明のインク組成物は、乾燥とともに表面で膜化が起こり、ポリエステル系などのウレタン樹脂に比べて、柔軟性の高い膜を形成することができるため、上記のカラーインク組成物中の保湿剤の白色画像への浸入をカラー画像と白色画像の境界において阻止することができ、中空樹脂粒子の透明化を抑制することが可能であることが判った。
本発明におけるポリウレタン樹脂としては、溶媒中に粒子状で分散されたエマルジョンタイプ、溶媒中に溶解した状態で存在している溶液タイプのいずれのタイプを用いてもよい。また、エマルジョンタイプは、その乳化方法によって強制乳化型と自己乳化型に分類することができ、本発明においてはいずれの型式でも用いることができるが、好ましくは自己乳化型である。自己乳化型のディスパージョンは、強制乳化型に比べ、造膜性や耐水性に優れるため、水に強い膜を表面に形成し、カラーインク画像から中空樹脂粒子が形成する白色画像への水分を含んだ保湿剤の浸入を防ぐことができる。
本発明に用いられるポリウレタン樹脂としては、例えば、「タケラック(登録商標)W−6061」(三井化学社製)などの強制乳化型ポリウレタンエマルジョン、「タケラック(登録商標)W−6021」(三井化学社製)、「WBR−016U」(大成ファインケミカル(株)製 ポリエーテル、Tg=20℃)などの自己乳化型ポリウレタンエマルジョンなどが挙げられる。
ポリウレタン樹脂として上記のエマルジョンタイプを適用した場合、ポリウレタン樹脂の平均粒子径は、好ましい50〜200nmであり、より好ましくは60〜200nmである。ポリウレタンの樹脂の平均粒子径が上記範囲にあると、インク組成物中においてポリウレタン樹脂粒子を均一に分散させることができる。
上記ポリウレタン樹脂の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。ポリウレタン樹脂の含有量が10質量%を超えると、インクの信頼性(目詰まりや吐出安定性など)を損なうことがあり、インクとしての適切な物性(粘度など)が得られないことがある。一方、0.5質量%未満であると、記録媒体上におけるインクの定着性に優れず、耐擦性に優れた画像を形成することができない。
3.浸透性有機溶剤
本発明のインク組成物は、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
4.界面活性剤
本発明のインク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
さらに、本発明のインク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
上記界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
5.多価アルコール
本発明のインク組成物は、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、本発明のインク組成物をインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
上記多価アルコールの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。
6.第三級アミン
本発明のインク組成物は、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調整剤としての機能を有し、インク組成物のpHを容易に調整することができる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
上記第三級アミンの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
7.溶剤および添加剤
本発明のインク組成物は、通常溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
本発明のインク組成物は、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
また、本発明のインク組成物には、上記金属化合物や中空樹脂粒子の他に、他の色材を含んでいても良い。他の色材としては、汎用の顔料や染料を使用することができる。
8.調整方法
本発明のインク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
本発明のインク組成物は、各種記録媒体に塗布することにより画像を形成することができる。記録媒体としては、例えば、紙、厚紙、繊維製品、シートまたはフィルム、プラスチック、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。
本発明のインク組成物は、その用途は特に限定されないが、各種インクジェット記録方式に適用することができる。インクジェット記録方式としては、例えば、サーマルジェット式インクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続インクジェット、ローラーアプリケーション、スプレーアプリケーションなどが挙げられる。
[記録物]
本発明はまた、上述したインク組成物によって、耐擦性に優れた画像が形成された、記録物を提供することができる。また、特に、色材として中空樹脂粒子を含むインク組成物によって画像が形成された本発明の記録物は、長時間保存下あるいは高湿度環境下におかれても中空樹脂粒子の透明化が生じず、長期に亘って高品位な画像を維持することが可能である。
[記録方法、記録装置]
本発明はまた、上述したインク組成物を用いて記録媒体に画像記録を行う記録方法を提供することができる。
この記録方法としては特に限定されず、凸版印刷方式、凹版印刷方式、平版印刷方式、孔版印刷方式、電子写真記録方式、熱転写記録方式、インクジェット記録方式等が挙げられ、特に好ましくはインクジェット記録方式による記録方法である。
インクジェット記録方式としては、従来公知の方式はいずれも使用でき、特に圧電素子の振動を利用して液滴を吐出させる方法(電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法)や熱エネルギーを利用する方法においては優れた画像記録を行うことが可能である。
本発明はまた、前述した本発明の記録方法により画像を記録する記録装置を提供することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
1.白色インク組成物の調製
表1に示す配合量で、金属酸化物、中空樹脂粒子、樹脂、有機溶剤、多価アルコール、第三級アミン、界面活性剤、およびイオン交換水を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、実施例1〜6、および比較例1〜6の各インク組成物を得た。なお、表1の実施例1〜6、および比較例1〜6に記載されている数値の単位は、質量%であり、金属酸化物、中空樹脂微粒子、ポリウレタン樹脂粒子についてはいずれも固形分換算である。
金属酸化物は、表1に記載の市販品「NanoTek (R) Slurry」(シーアイ化成株式会社製)を用いた。NanoTek (R) Slurryは、平均粒子径36nmの二酸化チタンを固形分として15%の割合で含むスラリーである。
中空樹脂粒子は、表1に記載の市販品「SX8782(D)」(JSR株式会社製)を用いた。SX8782(D)は、外径1.0μm・内径0.8μmの水分散タイプであり、固形分濃度が20.5%である。
定着樹脂は以下のポリウレタン樹脂を用いた。
U−1:ポリカーボネート系アニオン性ポリウレタン樹脂、Tg=−70℃、平均粒子径=130μm、自己乳化型ディスパージョン
(U−1の合成)
加熱装置、かくはん機、温度計、冷却機、滴下装置の付いた反応容器にポリカーボネート(数平均分子量2000)を1モル、1,6-ヘキサンジオール0.7モルを溶媒(DMF)に溶解させ、溶液濃度を30%に調整した。続いて、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートを1.7モル(NCO/OH=1.0)を加え、100℃で反応を行い、赤外吸収スペクトルで2270 cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が認められなくなるまで反応を行い、ポリウレタン樹脂溶液を得た。さらに公知の方法で水中に分散し、粘度20〜800(mPa・s/25 ℃)のポリウレタン水分散体U-1(固形分40%)を得た。
U−2:「レザミンD2020」(大日精化工業(株)製ポリエーテル系アニオン性ポリウレタン樹脂、Tg=−30℃、平均粒子径=100μm、自己乳化型ディスパージョン)
U−3:「WS−5000」(三井化学ポリウレタン(株)製ポリエステル系アニオン性ポリウレタン樹脂、Tg=65℃、平均粒子径=70μm)
U−4:「W−635」(三井化学ポリウレタン(株)製ポリカーボネート系ノニオン性ポリウレタン樹脂、Tg=70℃、平均粒子径=150μm)
U−5:「WBR−601U」(大成ファインケミカル(株)製ポリエステル系アニオン性ポリウレタン樹脂、Tg=−30℃)
U−6:「W−512A6」(三井化学ポリウレタン(株)製ポリエーテル系ノニオン性ポリウレタン樹脂、Tg=2℃、平均粒子径=>1000μm)
U−7:「レザミンD−4200」(大日精化(株)製ポリエーテル系アニオン性ポリウレタン樹脂、自己乳化型ディスパージョン)
U−8:「レザミンW−100」(大日精化(株)製ポリエーテル系アニオン性ポリウレタン樹脂、強制乳化型エマルジョン)
A−1:「UC−3510」(東亜合成(株)製、アニオン性アクリル樹脂、Tg=−50℃)
SA−1:「UF−5022」(東亜合成(株)製、アニオン性スチレンアクリル樹脂、Tg=75℃)
「BYK−348」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)は、ポリシロキサン系界面活性剤である。
2.評価方法2−1.耐擦性の評価
表1に記載の白色インク組成物を、インクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室にそれぞれ充填した。このようにして作製されたインクカートリッジをプリンタに装着し、印刷試験を行った。ブラック以外のインクカートリッジはそれぞれ市販のものを装着した。これは、ダミーとして用いるもので、本実施例の評価では用いないので、効果には関与しない。
次いで、出力はインクジェット用専用記録用紙(「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)に対して、720×720dpiの解像度で行った。印刷パターンは、100%dutyベタパターンとした。
本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
次いで、白色インク組成物により印刷されたOHPシートを1時間、室温において乾燥させた。乾燥後、試験担当者の「爪による擦り試験」と「不織布による擦り試験」の二通りの試験を行った。爪による擦り試験は、爪で印刷面を2,3回はじくように擦る試験方法である。また不織布による擦り試験とは、不織布(ベンコット ラボ(旭化成せんい社製))に200g相当の荷重をかけた状態で、印刷面を擦る試験方法である。評価基準は、以下の通りである。
<爪による擦り試験>
A:印刷面に変化が認められない。
B:印刷面に擦った跡が認められるが、剥がれるには至らない。
C:印刷面が剥がれる。
D:軽く触れただけで印刷面が剥がれる。
<不織布による擦り試験>
A:印刷面に変化が認められない。
B:印刷面に擦った跡が認められるが、剥がれるには至らない。
C:印刷面が剥がれる。
D:軽く触れただけで印刷面が剥がれる。
2−2.間欠印字特性の評価
インクジェットプリンタPX-20000(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて間欠印字試験をおこなった。このプリンタ用のカートリッジに実施例1〜6、および比較例1〜6の白色インク組成物をそれぞれ充填し、上記プリンタに装着し、温度32℃湿度20%の環境下で、すべてのノズルが正常に吐出していることを確認し、44インチ幅の連続印字を30分行った後、全ノズルからの吐出を行い、インク滴の飛行曲がり、ノズル抜け(ドット抜け)が生じていないかを評価した。上記の評価を30分で1セットとし、3回繰り返し評価を行った。評価基準は、以下の通りである。
AA:30分×3までノズル抜けなし、および飛行曲がりなし。
A :30分×2までノズル抜けなし、および飛行曲がりなし。
B :30分×1までノズル抜けなし、および飛行曲がりなし。
C :30分でノズル抜ける、もしくは飛行曲がりが有る。
2−3.白+カラー印刷後のカラー色味変化の評価
白の印刷には表1に記載の白色インク組成物を、インクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室にそれぞれ充填した。このようにして作製されたインクカートリッジをプリンタに装着し、印刷試験を行った。カラーの印刷には市販のインクジェットプリンタ(「PX−G5500」セイコーエプソン株式会社製)およびインクセット(EPSON IC9CL3337 フォトブラック、マットブラック、グレー、ライトグレー、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)を用いて、印刷試験を行った。
次いで、出力はインクジェット用専用記録用紙(「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)に対して、720×720dpiの解像度で行った。印刷パターンは、白、カラーともに100%dutyベタパターンとした。
印刷は、メディア上に白色以外のカラーインク組成物によるカラー画像層を形成した後、前記カラー画像層上に白色インク組成物を用いて白色画像層を形成することにより行なった。
得られた印刷物の高湿度条件下によるカラー色味変化の評価を行なった。評価基準は下記の通りである。結果を表1に示す。
尚、L*値の測定は、市販の黒が基板となっている測色機、例えばGretag Macbeth SpetroscanおよびSpectrolino(X-Rite社製)を用いた。
A:27℃35%の環境に24時間保持した後、27℃65%の環境に24時間保持したとき、白+カラー部分のカラーインクのL*値の低下が5未満。
B:27℃35%の環境に24時間保持した後、27℃65%の環境に24時間保持したとき、白+カラー部分のカラーインクのL*値の低下が5以上10未満。
C:27℃35%の環境に24時間保持した後、27℃65%の環境に24時間保持したとき、白+カラー部分のカラーインクのL*値の低下が10以上。
2−4.白+カラー印刷後の白色画像領域側の境界部分での透明化の評価
白の印刷には表1に記載の白色インク組成物を、インクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室にそれぞれ充填した。このようにして作製されたインクカートリッジをプリンタに装着し、印刷試験を行った。カラーの印刷には市販のインクジェットプリンタ(「PX−G5500」セイコーエプソン株式会社製)およびインクセット(EPSON IC9CL3337 フォトブラック、マットブラック、グレー、ライトグレー、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)を用いて、印刷試験を行った。
次いで、出力はインクジェット用専用記録用紙(「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)に対して、720×720dpiの解像度で行った。印刷パターンは、白、カラーともに100%dutyベタパターンとした。
印刷方法としては、メディア上に、白色画像領域とカラー画像領域とを、各領域境界が接するように画像を記録し、室温下での経時後による白色画像領域側の境界部分での透明化の評価を行った。評価基準は下記の通りである。結果を表1に示す。
尚、白、カラーともに印刷面積は100mm×100mm(横×縦)とした。また、透明化の測定方法は、市販の黒が基板となっている測色機、例えばGretag Macbeth SpetroscanおよびSpectrolino(X-Rite社製)を用いて、L*値を測定し、初期状態からL*値が30以上低下している箇所を透明化が起こっている箇所とした。
A:1ヶ月放置後の透明化が境界から0.5mm未満で起こっている。
B:1ヶ月放置後の透明化が境界から0.5mm以上5mm未満で起こっている。
C:1ヶ月放置後の透明化が境界から5mm以上で起こっている。
Figure 2015038209
実施例1〜4は、定着樹脂として、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のアニオン性ポリウレタン樹脂を使用したため、耐擦性がいずれもA評価であり、また、かかるウレタン樹脂のガラス転移温度は0℃以下のため、間欠印字特性にも優れている。
また、白色色材として中空樹脂粒子を含む実施例1および2の白色インク組成物と、保湿剤を含む白色以外のカラーインク組成物とを組み合わせた記録物は、長時間保存下あるいは高湿度環境下におかれても中空樹脂粒子が透明化がほぼ抑制されているため、長期に亘って高品位の画像を維持できることが判った。特に、定着樹脂であるポリウレタン樹脂が自己乳化型ディスパージョンである実施例1、2,5と、強制乳化型ディスパージョンである実施例6とを比べると、自己乳化型ディスパージョンである実施例1、2,5の方が中空樹脂粒子の透明化が抑制されることが判った。
ポリカーボネート系またはポリエーテル構造を有さないアニオン性ポリウレタン樹脂を使用した比較例1、3では、耐擦性が爪試験および布試験のいずれにおいてもB評価であった。また、比較例3では、ガラス転移温度を0℃以下としても、間欠印字特性があまり改善されない結果となった。
ポリカーボネート系またはポリエーテル構造を有するノニオン性ポリウレタン樹脂を使用した比較例2,4は、耐擦性が爪試験および布試験のいずれにおいてもC評価であり、また、間欠印字特性にも劣る結果となった。
アニオン性アクリル樹脂、アニオン性スチレンアクリル樹脂を使用した比較例5,6においては、比較例5では耐擦性がいずれもC評価であり、比較例6では耐擦性がいずれもD評価であった。また、比較例5,6では、ガラス転移温度を0℃以下としても、間欠印字特性があまり改善されない結果となった。
更に、白色色材として中空樹脂粒子を含む比較例1〜6の白色インク組成物と、保湿剤を含む白色以外のカラーインク組成物とを組み合わせた記録物は、長時間保存下あるいは高湿度環境下において、中空樹脂粒子の透明化に起因するカラー色味変化や白色画像領域側の境界部分での透明化が観測された。

Claims (13)

  1. 金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種の色材と、ポリウレタン樹脂と、を含有するインク組成物であって、
    前記ポリウレタン樹脂が、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のアニオン性ポリウレタン樹脂である、インク組成物。
  2. 前記色材として中空樹脂粒子を含む、請求項1記載のインク組成物。
  3. 前記ポリウレタン樹脂が溶媒中に粒子として分散している、請求項1または2記載のインク組成物。
  4. 前記ポリウレタン樹脂が自己乳化型のディスパージョンである、請求項1〜3の何れか一項に記載のインク組成物。
  5. 前記ポリウレタン樹脂の含有量が0.5〜10質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
  6. 前記中空樹脂粒子の平均粒子径が0.2〜1.0μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインク組成物。
  7. 前記中空樹脂粒子の含有量が5〜20質量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインク組成物。
  8. アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインク組成物。
  9. アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物。
  10. インクジェット記録方式に適用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインク組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のインク組成物によって画像が形成された記録物。
  12. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のインク組成物を用いて画像を記録する、記録方法。
  13. 請求項12に記載の記録方法により画像を記録する、記録装置。
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