JP2015037895A - 客室の仕切り構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】客室空間の快適な利用を促進させつつ清掃などの客室内作業を効率よく行うことができる客室の仕切り構造を提供する。【解決手段】仕切り手段10は、巻き取りや折り畳み可能な柔軟な素材の薄膜状部材11と、薄膜状部材11における展開方向側の先端縁に沿って固定された棒状補強部材12と、薄膜状部材11を巻き取るか折り畳んで格納する格納部13と、を備え、薄膜状部材11は、所定の壁面W1に沿う方向に隣り合う個別空間を仕切る位置に展開されるとともに、壁面に向かう水平方向に格納可能に構成されている。従って、必要に応じて薄膜状部材11を格納部13から引き出して展開することによって、個別空間を仕切って乗客のプライバシーが確保できるとともに、必要がなければ薄膜状部材11を格納部13に格納することで客室空間Sの清掃作業を効率よく行うことができる。【選択図】図2
Description
本発明は、客室の仕切り構造に係り、詳しくは、客船やフェリー等の船舶、あるいは海上浮体構造物などにおいて、複数の利用者(乗客)を収容可能な客室空間を各利用者ごとの個別空間に仕切るための仕切り手段を備えた客室の仕切り構造に関するものである。
従来、客船やフェリー等の船舶、あるいは海上浮体構造物などにおいて、客室の床面全体にカーペット等を敷き詰めて複数の利用者(乗客)が任意に座ったり横臥したりして利用する客室空間が知られている。一般的に、このような所謂大部屋の客室では、利用者同士が各々任意にプライベートな空間を確保しようとすることから、空間利用効率が低下し、利用者が不快な思いをすることが多かった。このため、旅客空間に仕切り板を設けて利用者同士のプライバシーを確保することで客室を快適に利用することができるようにした客室配置構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された従来の客室配置構造は、図13に示すように、壁面W1に直交して客室内部側に突出するとともに、互いに所定間隔だけ離れて設けられた複数の仕切り板100と、仕切り板100間の上下方向中央部に設けられた個人用ロッカー101と、を備えて構成されている。仕切り板100の間隔寸法は、利用者一人ずつの個別空間の幅寸法とされ、仕切り板100の下部における奥行き寸法は、隣の利用者の顔が見えない程度の500〜600mmに設定されている。そして、利用者は、壁Wの側に向かって仕切り板100間に頭が位置するように横臥することで、プライバシーを確保しつつ快適に就寝できるようになっている。
しかしながら、特許文献1に記載された従来の客室配置構造のように、仕切り板100が壁面W1から突出した状態で固定されたものでは、壁Wを背にして座った状態で隣の利用者の顔が見えないことから、家族や少人数のグループで利用する場合には、仕切り板100が邪魔になってしまい、利用者同士のコミュニケーションを阻害するという不都合がある。さらに、仕切り板100が床面F1から立設されていることから、床面F1の清掃時に仕切り板100が邪魔になってしまい、限られた停泊時間内に客室を清掃する際の作業性を低下させ、船舶等の運行に支障を来すことになるという問題もある。
したがって、本発明は、客室空間の快適な利用を促進させつつ清掃などの客室内作業を効率よく行うことができる客室の仕切り構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1に記載の客室の仕切り構造は、床、壁、天井で囲まれて複数の利用者を収容可能な客室空間を各利用者ごとの個別空間に仕切るための仕切り手段を備えた客室の仕切り構造であって、前記仕切り手段は、巻き取りや折り畳み可能な柔軟な素材の薄膜状部材を備え、前記薄膜状部材は、所定の壁面に沿う方向に隣り合う前記個別空間を仕切る位置に展開されるとともに、前記壁面に向かう水平方向又は前記天井に向かう鉛直上方に格納可能に構成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の客室の仕切り構造は、請求項1に記載された客室の仕切り構造において、前記仕切り手段は、前記薄膜状部材における展開方向側の先端縁に沿って固定された棒状補強部材を有して構成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の客室の仕切り構造は、請求項1又は2に記載された客室の仕切り構造において、前記仕切り手段は、前記薄膜状部材を巻き取るか折り畳んで格納する格納部を有して構成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の客室の仕切り構造は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された客室の仕切り構造において、前記仕切り手段は、展開された前記薄膜状部材の移動を規制して展開状態を維持させる規制手段を有して構成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の客室の仕切り構造は、請求項1〜4のいずれか一項に記載された客室の仕切り構造において、前記薄膜状部材は、鉛直下方に向かって展開されるととともに鉛直上方に向かって格納されるものであって、展開された状態において、天井面近傍から床面近傍に亘って前記隣り合う個別空間を仕切るか、又は、任意高さにおいて壁面から突出して設けられたロッカーの下面から床面近傍に亘って前記隣り合う個別空間を仕切ることを特徴とする。
請求項6に記載の客室の仕切り構造は、請求項1〜4のいずれか一項に記載された客室の仕切り構造において、前記薄膜状部材は、前記壁面から離れる水平方向に展開されるととともに該壁面に向かう水平方向に格納されるものであって、展開された状態において、壁面近傍から前記個別空間の全長に亘って前記隣り合う個別空間を仕切るか、又は、壁面近傍から前記個別空間の全長よりも短い所定長さに亘って前記隣り合う個別空間を仕切ることを特徴とする。
請求項7に記載の客室の仕切り構造は、請求項6に記載された客室の仕切り構造において、前記仕切り手段は、天井面及び床面のうちの少なくとも一方に設けられて前記薄膜状部材の展開移動及び格納移動を案内する案内部材を有して構成されていることを特徴とする。
請求項8に記載の客室の仕切り構造は、請求項1〜7のいずれか一項に記載された客室の仕切り構造において、前記仕切り手段は、格納された前記薄膜状部材の移動を規制して格納状態を維持させるロック部を有して構成されていることを特徴とする。
請求項1に記載された発明によれば、仕切り手段が巻き取りや折り畳み可能な柔軟な素材の薄膜状部材を備えて構成され、この薄膜状部材が個別空間を仕切る位置に展開可能かつ水平方向又は鉛直上方に格納可能に構成されているので、必要に応じて薄膜状部材で個別空間を仕切ってプライバシーを確保することができるとともに、必要がなければ薄膜状部材を格納することで客室空間を広く利用することができる。また、家族や少人数のグループで利用する場合には、その人数分の個別空間を仕切らずに連続させるとともに、他の個別空間との間を薄膜状部材で仕切るようにもできるので、客室空間内部における個別空間の仕切り方の自由度を高めて利便性を向上させることができる。また、客室内部を清掃する際や、客室内に備品を搬入したり搬出したりする際には、薄膜状部材を格納しておくことで、薄膜状部材が邪魔になることがなく、清掃や搬出入の作業性を向上させることができる。
請求項2に記載された発明によれば、薄膜状部材における展開方向側の先端縁、即ち、水平方向に薄膜状部材が展開/格納される場合には壁面と反対側の側端縁であり、鉛直方向に薄膜状部材が展開/格納される場合には下端縁、に棒状補強部材が固定されているので、柔軟な素材からなる薄膜状部材の形態を安定させることができる。また、棒状補強部材には、薄膜状部材を展開/格納操作するためのフックや把手等の操作部が設けられていることが好ましい。
請求項3に記載された発明によれば、仕切り手段が薄膜状部材を巻き取るか折り畳んで格納する格納部を有しているので、格納部に格納した薄膜状部材を保護することができる。ここで、水平方向に薄膜状部材が展開/格納される場合には、壁面から没入させて格納部が設けられていることが好ましく、このように壁の内部に格納部を設ければ、壁面からの突出寸法を小さくすることができ、客室空間における有効利用可能な床面積を大きく確保することができる。
請求項4に記載された発明によれば、仕切り手段が規制手段を有し、展開された薄膜状部材の移動を規制して展開状態を維持させることで、個別空間同士を仕切った薄膜状部材の形態を安定させることができる。ここで、水平方向に薄膜状部材が展開/格納される場合には、展開状態の薄膜状部材における壁面と反対側の先端縁(側端縁)側が位置する床面や天井面に規制手段が設けられていることが好ましく、鉛直方向に薄膜状部材が展開/格納される場合には、展開状態の薄膜状部材の先端縁(下端縁)が近接する床面や床面近傍の壁面に規制手段が設けられていることが好ましい。また、規制手段としては、薄膜状部材の先端縁(棒状補強部材が固定された場合は、該棒状補強部材が)を係止する係止部材を有して構成されていてもよいし、薄膜状部材の先端縁や棒状補強部材を磁着させる磁石を有して構成されていてもよい。さらに、規制手段としては、床面や天井面、壁面から突没自在な規制部材で構成されていることが好ましく、薄膜状部材の格納状態においては規制部材を床面等に没入させておくことで、利用者の快適性や清掃作業の作業効率を向上させることができる。
請求項5に記載された発明によれば、薄膜状部材が鉛直下方に向かって展開されるととともに鉛直上方に向かって格納される場合において、天井面近傍から床面近傍に亘って薄膜状部材が展開されるか、又は、ロッカーの下面から床面近傍に亘って薄膜状部材が展開される。従って、薄膜状部材が格納される基端縁側を天井又はロッカーに支持させることができ、薄膜状部材を安定して展開/格納させることができる。さらに、格納部が設けられる場合には、該格納部を天井面やロッカーの下面から没入させて設けることが好ましく、このように天井内部やロッカー内部に格納部を設ければ、仕切り手段の外観を良好にすることができる。
請求項6に記載された発明によれば、薄膜状部材が壁面から離れる水平方向に展開されるととともに壁面に向かう水平方向に格納される場合において、壁面近傍から個別空間の全長に亘って薄膜状部材が展開されるか、又は、壁面近傍から個別空間の全長よりも短い所定長さに亘って薄膜状部材が展開される。従って、薄膜状部材が格納される基端縁側を壁に支持させることができ、薄膜状部材を安定して展開/格納させることができる。ここで、個別空間の全長よりも短い所定長さとしては、例えば、壁面を背にして利用者が座った状態で隣の利用者と目が合わない程度の寸法や、壁の側に頭が位置するように横臥した状態で頭部や胸部あるいは腹部に至る程度の寸法など、適宜に設定可能である。
請求項7に記載された発明によれば、仕切り手段が天井面や床面に設けられる案内部材を有し、この案内部材によって薄膜状部材の展開移動及び格納移動を案内することで、薄膜状部材の展開/格納を円滑に行うことができる。ここで、案内部材としては、天井面や床面から没入して設けられた凹溝状のレールであることが好ましく、このように床面等から突出しない凹溝状のレールを用いることで、利用者の邪魔になることがなく客室空間の床面を広く利用することができる。
請求項8に記載された発明によれば、仕切り手段がロック部を有し、格納された薄膜状部材の移動をロック部で規制して格納状態を維持させることで、格納した薄膜状部材を安全に保護することができる。即ち、利用者が児童や学生等の団体客である場合など、薄膜状部材が展開できないようにロック部によってロックしておくことで、薄膜状部材に対するいたずらを予防し、薄膜状部材の破損を防止することができる。
以下、本発明の第一実施形態に係る客室の仕切り構造を、図1〜図7に基づいて説明する。本実施形態の仕切り構造は、例えば、客船やフェリー等の船舶において、複数の乗客(利用者)を収容する客室1の客室空間Sを各乗客ごとの個別空間S1に仕切るために利用されるものである。客室1は、図1〜図3に示すように、船舶の隔壁Kで囲まれた内部に床F、壁W、天井Cが設けられ、これらの床F、壁W、天井Cによって客室空間Sが形成されている。この客室1は、廊下側(図1の下側)の壁Wの略中央に出入り口2が設けられるとともに、その反対側(図1の上側)の壁Wに2個の窓3が設けられ、これらの壁Wと直交する左右の壁WAに沿って各5つずつの個別空間S1が並んで設けられ、即ち、客室1の収容者数が10名に設定されている。また、左右の壁WAには、図4にも示すように、その高さ方向の中間位置から客室空間S内部側に突出したロッカーLが設けられ、このロッカーLは、各乗客ごとの個別ロッカーとして利用可能であるとともに、ロッカーLの上面が棚として利用できるようになっている。
個別空間S1は、左右の壁WAを背にして乗客が座ったり、壁WA側に頭を向けて横臥したりして各乗客が利用可能になっており、該壁WAからロッカーLの先端までの範囲を仕切り手段10によって仕切ることができるようになっている。仕切り手段10は、巻き取りや折り畳み可能な柔軟な素材の薄膜状部材11と、薄膜状部材11の先端縁に沿って固定された棒状補強部材12と、薄膜状部材11を巻き取るか折り畳んで格納する格納部13と、を備えて構成されている。薄膜状部材11は、不燃性又は難燃性を有することが好ましい布やフィルムから構成され、格納部13から水平方向に引き出されて個別空間S1を仕切る位置に展開されるとともに、壁面W1に向かって格納部13に引き込まれて格納可能に構成されている。棒状補強部材12は、アルミ合金やステンレス合金などの金属パイプ、あるいは樹脂成形パイプ、木製の棒などから構成され、薄膜状部材11の引き出し方向先端縁を把持して固定されている。格納部13は、壁面W1から没入して壁WAの内部に設けられるとともに、客室空間S側に開口したスリットから薄膜状部材11を引き出し又は引き込み可能に構成されており、格納部13の内部には、薄膜状部材11を巻き取ったり折り畳んだりして格納する図示しない格納機構が設けられている。
この仕切り手段10は、船舶が停泊中や昼間の航行中などの通常時においては、薄膜状部材11が格納部13に格納された格納状態となっており、客室空間Sを広い空間として利用できるようになっている。この格納状態において、棒状補強部材12を格納部13に係止して薄膜状部材11の引き出しを規制し、薄膜状部材11の格納状態を維持させるロック部を有して仕切り手段10が構成されていてもよい。一方、長時間の航行や夜間の航行中においては、棒状補強部材12を操作して薄膜状部材11を格納部13から水平方向に引き出し、薄膜状部材11によって個別空間S1を仕切る展開状態とすることで、乗客のプライバシーが確保できるようになっている。即ち、展開状態においては、個別空間S1における壁WA側の範囲が左右の薄膜状部材11と上方のロッカー下面L1とで囲まれることで、周囲の他の乗客からの視線を遮ることができ、また周囲の様子を気にすることなく読書したり就寝したりすることができる。また、家族や少人数のグループで利用する場合には、その人数に応じた個別空間S1間の薄膜状部材11を格納しておき、他の個別空間S1との間を薄膜状部材11で仕切ることで、グループ間のコミュニケーションを図りつつ航行時間を過ごすことができるようにもなっている。
また、仕切り手段10は、ロッカーLの下側に設けられてロッカーLの先端まで展開されるものに限らず、図5に示すように、天井Cに至る高さを有して構成されていてもよい。ここで、図5(A)に示す構成では、ロッカーLが個別空間S1ごとに分割され、各ロッカーL間に隙間が形成されており、この隙間に仕切り手段10の薄膜状部材11及び棒状補強部材12が挿通されて展開/格納可能に構成されている。一方、図5(B)に示す構成では、ロッカーLが省略されている。また、図5に示す仕切り手段10は、ロッカーLの先端位置よりも客室空間Sの中央側まで展開可能になっており、即ち、薄膜状部材11の長さとして、個別空間S1において壁WA側に頭を向けて横臥した乗客の腰部程度まで覆う程度に設定されている。なお、展開状態における薄膜状部材11の長さとしては、任意に設定可能であり、壁WA側に頭を向けて横臥した乗客の頭部を覆う長さでもよいし、胸部まで覆う長さでもよいし、腰部や全身(個別空間S1の全長)を覆う長さに設定されていてもよい。
次に、図6、図7も参照して仕切り手段10の支持構造を詳しく説明する。床Fと、ロッカーL又は天井Cとには、それぞれ薄膜状部材11の展開移動及び格納移動を案内する案内部材14,15が設けられている。案内部材14は、床面F1に没入して設けられた凹溝状のレール部材で構成され、案内部材15は、ロッカー下面L1又は天井面C1に没入して設けられた凹溝状のレール部材で構成されている。また、棒状補強部材12の上下には、それぞれ上下に突出した被案内部材16が設けられている。これらの被案内部材16は、棒状補強部材12に固定された軸部16Aと、この軸部16Aの先端に設けられた頭部16Bと、を有して形成されている。頭部16Bは、軸部16Aに固定された円盤状のスライダでもよいし、軸部16Aに回転自在に支持されたガイドローラであってもよく、案内部材14,15の溝内部に沿って展開方向又は格納方向にスライド案内されるようになっている。
また、案内部材14の展開方向端部近傍には、被案内部材16を係止することで薄膜状部材11の移動を規制して展開状態を維持させる規制手段17が設けられている。この規制手段17は、案内部材14の底面に設けられた孔と、好ましくはこの孔に回動自在、又は押し下げ自在に設けられた蓋材とで構成され、蓋材を回動又は押し下げて孔の内部に頭部16Bを挿入することによって被案内部材16が係止されるように構成されている。ここで、案内部材15の溝深さは、案内部材14よりも大きく形成されており、下側の被案内部材16を規制手段17に係止させた状態であっても、上側の被案内部材16の頭部16Bが案内部材15から脱落しないように構成されている。
さらに、案内部材15の展開方向端部近傍にも、被案内部材16を係止することで薄膜状部材11の移動を規制して展開状態を維持させる規制手段18が設けられている。この規制手段18は、案内部材15の側面に設けられた一対の突片などで構成され、突片間に被案内部材16の軸部16Aを挿通させるとともに、突片によって頭部16Bを係止することで、上側の被案内部材16を係止可能に構成されている。
一方、棒状補強部材12を持ち上げて下側の被案内部材16の頭部16Bを規制手段17の孔から外すとともに、上側の被案内部材16の頭部16Bを規制手段18の突片から外すことで係止が解除され、薄膜状部材11及び棒状補強部材12を格納方向に移動させることができる。この際、格納部13の格納機構に薄膜状部材11を巻き取るか又は折り畳む方向に付勢するばねが設けられていることが好ましく、このばねの付勢力によって薄膜状部材11が格納方向に引っ張られ、円滑に格納部13に格納されるようになっている。
以上の本実施形態によれば、必要に応じて薄膜状部材11を格納部13から引き出して展開することによって、個別空間S1を仕切ることができ、乗客のプライバシーが確保できるとともに、必要がなければ薄膜状部材11を格納部13に格納することで客室空間Sを広く利用することができる。さらに、薄膜状部材11を格納しておくことで、客室内部を清掃する際や、客室内に備品を搬入したり搬出したりする際に、薄膜状部材11が邪魔になることがなく、清掃や搬出入の作業性を向上させることができる。また、薄膜状部材11の展開方向の側端縁に棒状補強部材12が固定されているので、柔軟な素材からなる薄膜状部材11の形態を安定させることができ、折り畳む方向に付勢するばねが設けられている場合には薄膜状部材11が弛むことなく展開できる。さらに、薄膜状部材11を格納部13に格納することで、薄膜状部材11を保護することができるとともに、格納部13が壁WAの内部に設けられているので、壁面W1からの突出寸法を小さくすることができ、客室空間Sにおける有効利用可能な床面積を大きく確保することができる。また、案内部材14,15によって薄膜状部材11の展開移動及び格納移動を案内することで、薄膜状部材の展開及び格納を円滑に行うことができる。さらに、規制手段17によって被案内部材16を係止して薄膜状部材11の展開状態を維持させることで、個別空間S1同士を仕切った薄膜状部材11の形態を安定させることができる。
次に、本発明の第二実施形態に係る客室の仕切り構造を、図8〜図12に基づいて説明する。本実施形態の仕切り手段20は、巻き取りや折り畳み可能な柔軟な素材の薄膜状部材21と、薄膜状部材21の下端縁(先端縁)に沿って固定された棒状補強部材22と、薄膜状部材21を巻き取るか折り畳んで格納する格納部23と、を備えて構成されている。薄膜状部材21は、不燃性又は難燃性を有することが好ましい布やフィルムから構成されるとともに、ロッカーLの突出寸法と略同一の幅寸法を有して形成され、格納部23から鉛直方向下方に引き出されて個別空間S1を仕切る位置に展開されるとともに、上方に向かって格納部23に引き込まれて格納可能に構成されている。棒状補強部材22は、アルミ合金やステンレス合金などの金属パイプ、あるいは樹脂成形パイプ、木製の棒などから構成され、薄膜状部材21の引き出し方向先端縁を把持して固定されている。格納部23は、ロッカー下面L1から没入してロッカーLの内部に設けられるとともに、下方に開口したスリットから薄膜状部材21を引き出し又は引き込み可能に構成されており、格納部23の内部には、薄膜状部材21を巻き取ったり折り畳んだりして格納する図示しない格納機構が設けられている。
この仕切り手段20は、船舶が停泊中や昼間の航行中などの通常時においては、薄膜状部材21が格納部23に格納された格納状態となっており、客室空間Sを広い空間として利用できるようになっている。この格納状態において、棒状補強部材22を格納部23に係止して薄膜状部材21の引き出しを規制し、薄膜状部材21の格納状態を維持させるロック部を有して仕切り手段20が構成されていてもよい。一方、長時間の航行や夜間の航行中においては、棒状補強部材22を操作して薄膜状部材21を格納部23から下方に引き出し、薄膜状部材21によって個別空間S1を仕切る展開状態とすることで、乗客のプライバシーが確保できるようになっている。即ち、展開状態においては、個別空間S1における壁WA側の範囲が左右の薄膜状部材21と上方のロッカー下面L1とで囲まれることで、周囲の他の乗客からの視線を遮ることができ、また周囲の様子を気にすることなく読書したり就寝したりすることができる。また、家族や少人数のグループで利用する場合には、その人数に応じた個別空間S1間の薄膜状部材21を格納しておき、他の個別空間S1との間を薄膜状部材21で仕切ることで、グループ間のコミュニケーションを図りつつ航行時間を過ごすことができるようにもなっている。
また、仕切り手段20は、ロッカーLの下側に設けられてロッカーLの先端までの幅寸法を備えたものに限らず、図10に示すように、天井Cに設けられた格納部23から床面F1近傍まで引き出されるように構成されていてもよい。ここで、図10(A)に示す構成では、ロッカーLが個別空間S1ごとに分割され、各ロッカーL間に隙間が形成されており、この隙間に仕切り手段20の薄膜状部材21及び棒状補強部材22が挿通されて展開/格納可能に構成されている。一方、図10(B)に示す構成では、ロッカーLが省略されている。また、図10に示す仕切り手段20は、薄膜状部材21の幅寸法及び棒状補強部材22の長さ寸法がロッカーLの突出寸法よりも大きく形成され、客室空間Sの中央側に至る個別空間S1を仕切ることができるようになっており、即ち、薄膜状部材21の幅寸法として、個別空間S1において壁WA側に頭を向けて横臥した乗客の腰部程度まで覆う程度に設定されている。なお、薄膜状部材21の幅寸法としては、任意に設定可能であり、壁WA側に頭を向けて横臥した乗客の頭部を覆う長さでもよいし、胸部まで覆う長さでもよいし、腰部や全身(個別空間S1の全長)を覆う長さに設定されていてもよい。
次に、図11、図12も参照して仕切り手段20の係止構造を詳しく説明する。床Fには、薄膜状部材21の移動を規制して展開状態を維持させる規制手段27が設けられ、棒状補強部材22には、規制手段27に係止される被係止部材28が設けられている。この規制手段27は、床面F1から没入して設けられた規制本体部27Aと、この規制本体部27Aに回動自在に設けられたリング状の係止部材27Bとで構成され、係止部材27Bを回動させて床面F1から突出させ、この係止部材27Bに被係止部材28を引っ掛けて係止させることによって、棒状補強部材22及び薄膜状部材21の格納方向(上方)への移動が規制されるように構成されている。一方、係止部材27Bと被係止部材28との係止を解除することで、薄膜状部材21及び棒状補強部材22を格納方向に移動させることができる。この際、格納部23の格納機構に薄膜状部材21を巻き取るか又は折り畳む方向に付勢するばねが設けられていることが好ましく、このばねの付勢力によって薄膜状部材21が格納方向に引っ張られ、円滑に格納部23に格納されるようになっている。
以上の本実施形態によれば、必要に応じて薄膜状部材21を格納部23から引き出して展開することによって、個別空間S1を仕切ることができ、乗客のプライバシーが確保できるとともに、必要がなければ薄膜状部材21を格納部23に格納することで客室空間Sを広く利用することができる。さらに、薄膜状部材21を格納しておくことで、客室内部を清掃する際や、客室内に備品を搬入したり搬出したりする際に、薄膜状部材21が邪魔になることがなく、清掃や搬出入の作業性を向上させることができる。また、薄膜状部材21の下端縁に棒状補強部材22が固定されているので、柔軟な素材からなる薄膜状部材21の形態を安定させることができ、折り畳む方向に付勢するばねが設けられている場合には薄膜状部材11が弛むことなく展開できる。さらに、薄膜状部材21を格納部23に格納することで、薄膜状部材21を保護することができるとともに、格納部23がロッカーL又は天井Cの内部に設けられているので、ロッカー下面L1又は天井面C1からの突出寸法を小さくすることができ、客室空間Sを広く利用することができる。また、規制手段27の係止部材27Bによって被係止部材28を係止して薄膜状部材21の展開状態を維持させることで、個別空間S1同士を仕切った薄膜状部材21の形態を安定させることができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、以下のような変形例を含んでいてもよい。即ち、前記実施形態では、客船やフェリー等の船舶における客室1の客室空間Sを個別空間S1に仕切る仕切り手段10,20を例示したが、本発明の仕切り手段は、船舶に設けられるものに限らず、海上浮体構造物など任意の施設における客室を仕切る構造として利用可能である。また、仕切り手段10,20によって仕切る個別空間S1としては、1人分の空間に限らず、適宜に設定された所定人数分の空間であってもよい。また、前記実施形態では、仕切り手段10又は仕切り手段20が設けられていたが、これに限らず、客室空間S内部の位置に応じて仕切り手段10と仕切り手段20とを併用してもよい。さらに、仕切り手段10,20に加え、他の仕切り手段として、客室空間Sの中央側(壁WA側に頭を向けて横臥した乗客の足先側)において個別空間S1と通路部とを仕切るものを設けてもよい。
また、前記実施形態では、格納部13,23を壁Wや天井C、ロッカーLに埋め込んで仕切り手段10,20を構成したが、これに限らず、格納部を壁Wや天井C、ロッカーLから突出させてもうけてもよい。さらに、前記実施形態では、薄膜状部材21として、不燃性又は難燃性を有することが好ましい布やフィルムを採用したが、薄膜状部材21の材質は特に限定されるものではなく、例えば、可燃性の材料を用いることができる場合もある。
1 客室
10,20 仕切り手段
11,21 薄膜状部材
12,22 棒状補強部材
13,23 格納部
14,15 案内部材
17,18,27 規制手段
C 天井
C1 天井面
F 床
F1 床面
L ロッカー
L1 ロッカー下面
S 客室空間
S1 個別空間
W,WA 壁
W1 壁面
10,20 仕切り手段
11,21 薄膜状部材
12,22 棒状補強部材
13,23 格納部
14,15 案内部材
17,18,27 規制手段
C 天井
C1 天井面
F 床
F1 床面
L ロッカー
L1 ロッカー下面
S 客室空間
S1 個別空間
W,WA 壁
W1 壁面
Claims (8)
- 床、壁、天井で囲まれて複数の利用者を収容可能な客室空間を各利用者ごとの個別空間に仕切るための仕切り手段を備えた客室の仕切り構造であって、
前記仕切り手段は、巻き取りや折り畳み可能な柔軟な素材の薄膜状部材を備え、
前記薄膜状部材は、所定の壁面に沿う方向に隣り合う前記個別空間を仕切る位置に展開されるとともに、前記壁面に向かう水平方向又は前記天井に向かう鉛直上方に格納可能に構成されていることを特徴とする客室の仕切り構造。 - 前記仕切り手段は、前記薄膜状部材における展開方向側の先端縁に沿って固定された棒状補強部材を有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の客室の仕切り構造。
- 前記仕切り手段は、前記薄膜状部材を巻き取るか折り畳んで格納する格納部を有して構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の客室の仕切り構造。
- 前記仕切り手段は、展開された前記薄膜状部材の移動を規制して展開状態を維持させる規制手段を有して構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の客室の仕切り構造。
- 前記薄膜状部材は、鉛直下方に向かって展開されるととともに鉛直上方に向かって格納されるものであって、展開された状態において、天井面近傍から床面近傍に亘って前記隣り合う個別空間を仕切るか、又は、任意高さにおいて壁面から突出して設けられたロッカーの下面から床面近傍に亘って前記隣り合う個別空間を仕切ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の客室の仕切り構造。
- 前記薄膜状部材は、前記壁面から離れる水平方向に展開されるととともに該壁面に向かう水平方向に格納されるものであって、展開された状態において、壁面近傍から前記個別空間の全長に亘って前記隣り合う個別空間を仕切るか、又は、壁面近傍から前記個別空間の全長よりも短い所定長さに亘って前記隣り合う個別空間を仕切ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の客室の仕切り構造。
- 前記仕切り手段は、天井面及び床面のうちの少なくとも一方に設けられて前記薄膜状部材の展開移動及び格納移動を案内する案内部材を有して構成されていることを特徴とする請求項6に記載の客室の仕切り構造。
- 前記仕切り手段は、格納された前記薄膜状部材の移動を規制して格納状態を維持させるロック部を有して構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の客室の仕切り構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012148120A JP2015037895A (ja) | 2012-07-02 | 2012-07-02 | 客室の仕切り構造 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2015037895A true JP2015037895A (ja) | 2015-02-26 |
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ID=52631313
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2015037895A (ja) |
Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH09112051A (ja) * | 1995-10-20 | 1997-04-28 | Toto Ltd | 浴室の戸 |
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-
2012
- 2012-07-02 JP JP2012148120A patent/JP2015037895A/ja active Pending
Patent Citations (5)
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