JP2015036386A - プロピレン重合体、該重合体からなるプロピレン樹脂組成物および成形体 - Google Patents

プロピレン重合体、該重合体からなるプロピレン樹脂組成物および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐衝撃性を有し、剛性に優れた成形体を得ることができ、成形性に優れるプロピレン重合体および該重合体からなるプロピレン樹脂組成物および成形体を提供すること。
【解決手段】以下の条件a〜dの全てを満足するプロピレン重合体。
(条件a):アイソタクチックペンタッド分率が0.97以上であること。
(条件b):数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が4.0以下であること。
(条件c):重量平均分子量が14,000以下である成分の重量割合が1.8重量%以上であること(ただし、プロピレン重合体の全体の重量を100重量%とする)。
(条件d):オルトジクロロベンゼンによる昇温溶出分別において、90℃以下で溶出する成分の重量割合が0.21重量%以下であること(ただし、プロピレン重合体の全体の重量を100重量%とする)。
【選択図】なし

Description

本発明は、プロピレン重合体、該重合体からなるプロピレン樹脂組成物および成形体に関する。詳しくは、耐衝撃性を有し、剛性に優れた成形体を得ることができ、成形性に優れるプロピレン重合体に関し、また、該重合体からなるプロピレン樹脂組成物および成形体に関する。
従来から、ポリプロピレンやポリプロピレン組成物は、その機械的性質を利用して各種の成形体に用いられている。例えば、特許文献1には、剛性−耐衝撃性のバランスや、耐熱性と靭性の改良を目的として、立体規則性ポリプロピレンおよびα−オレフィン共重合体を含有するポリプロピレン組成物が記載されている。
また、特許文献2には、剛性、耐熱性の改良を目的として分子量分布の狭い高立体規則性ポリプロピレンが記載されている。
特開平10−219047号公報 特開平11−100412号公報
上記の特許文献等に記載のポリプロピレンやポリプロピレン組成物からなり、耐衝撃性を有する成形体については、その剛性の更なる改善が求められている。そして、ポリプロピレンやポリプロピレン組成物の成形性の改善も求められている。
かかる状況の下、本発明の目的は、耐衝撃性を有し、剛性に優れた成形体を得ることができ、成形性に優れるプロピレン重合体および該重合体からなるプロピレン樹脂組成物および成形体を提供することにある。
本発明の一は、
以下の(条件a)と(条件b)と(条件c)と(条件d)の全てを満足するプロピレン重合体に係るものである。
(条件a):アイソタクチックペンタッド分率が0.97以上であること。
(条件b):数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が4.0以下であること。
(条件c):重量平均分子量が14,000以下である成分の重量割合が1.8重量%以上であること(ただし、プロピレン重合体の全体の重量を100重量%とする)。
(条件d):オルトジクロロベンゼンによる昇温溶出分別において、90℃以下で溶出する成分の重量割合が0.21重量%以下であること(ただし、プロピレン重合体の全体の重量を100重量%とする)。
また、本発明の一は、
前記のプロピレン重合体であって、さらに、以下の(条件e)を満足する請求項1に記載のプロピレン重合体に係るものである。
(条件e):プロピレンの1,3挿入反応に起因する異種結合が13C−NMRによって検出されないこと。
そして、本発明の一は、
前記のプロピレン重合体とエチレン重合体を含有するプロピレン樹脂組成物に係るものであり、さらに、前記のプロピレン重合体または前記のプロピレン樹脂組成物からなる成形体に係るものである。
本発明によれば、耐衝撃性を有し、剛性に優れた成形体を得ることができ、成形性に優れるプロピレン重合体および該重合体からなるプロピレン樹脂組成物および成形体を得ることができる。
本発明のプロピレン重合体は、(1)プロピレン単独重合体、(2)プロピレンランダム共重合体、(3)プロピレンブロック共重合体、または(4)プロピレン多段重合材料である。これらを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のプロピレン重合体の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]、単位:dl/g)は、成形体の剛性と耐衝撃性を改良する観点や、プロピレン樹脂組成物の成形性を改良する観点から、0.6〜5.0dl/gであることが好ましく、0.9〜2.5dl/gであることがより好ましく、1.0〜2.5dl/gであることが更に好ましく、1.1〜1.8dl/gであることが更に一層好ましい。
<プロピレン重合体の製造方法>
本発明のプロピレン重合体の製造方法は、重合触媒を用いてプロピレンを単独重合する方法や、重合触媒を用いてプロピレンと他のオレフィンとを共重合する方法である。
<重合触媒>
重合触媒としては、例えば、
(1)(1−i)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と(1−ii)有機アルミニウム化合物と(1−iii)電子供与体成分とからなる触媒系、
(2)(2−i)シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物と(2−ii)アルキルアルミノキサンとからなる触媒系、
(3)(3−i)シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物と(3−ii)それと反応してイオン性の錯体を形成する化合物と(3−iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒系、
(4)(4−i)シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物と(4−ii)イオン性の錯体を形成する化合物と(4−iii)有機アルミニウム化合物等からなる触媒成分をシリカや粘土鉱物等の無機粒子に担持し変性させた触媒系等が挙げられる。
また、上記の触媒系の存在下でエチレンやプロピレンやα−オレフィンを予備重合させて調製される予備重合済触媒を用いてもよい。
上記の触媒系としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平9−316147号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報に記載の触媒系が挙げられる。
<重合方法>
重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合または気相重合が挙げられる。バルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法であり、溶液重合またはスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法である。そして、気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法である。
これらの重合方法は、バッチ式または連続式のいずれでもよい。そして、単独の重合反応槽を用いる単段式または複数の重合反応槽を直列に連結させた多段式のいずれでもよく、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。大量生産に有利であり、経済的であるということから、連続式の気相重合法または、バルク重合法と気相重合法を連続的に行うバルク−気相重合法が好ましい。
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、製造する(1)プロピレン単独重合体、(2)プロピレンランダム共重合体、(3)プロピレンブロック共重合体、または(4)プロピレン多段重合材料に応じて、適宜決定すればよい。
(1)プロピレン単独重合体、(2)プロピレンランダム共重合体、(3)プロピレンブロック共重合体、または(4)プロピレン多段重合材料の製造において、上記の単独重合体、共重合体または多段重合材料に含まれる残留溶媒や、製造時に副生するオリゴマー等を除去するために、上記の単独重合体、共重合体または多段重合材料をその単独重合体、共重合体または多段重合材料が融解する温度以下の温度で加熱してもよい。残留溶媒やオリゴマー等の除去方法としては、例えば、特開昭55−75410号公報、特許第2565753号公報に記載の方法等が挙げられる。
また、(1)プロピレン単独重合体、(2)プロピレンランダム共重合体、(3)プロピレンブロック共重合体、または(4)プロピレン多段重合材料の製造方法としては、上記の重合触媒を用いて、上記の重合方法によって得られたプロピレンの単独重合体や、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体を、沸騰オクタンによる抽出操作に付して、沸騰オクタンに可溶な成分を除去し、沸騰オクタンに不溶な成分として、(1)プロピレン単独重合体、(2)プロピレンランダム共重合体、(3)プロピレンブロック共重合体、または(4)プロピレン多段重合材料を回収する方法が挙げられる。
沸騰オクタンに不溶な成分の回収方法は、例えば、ソックスレー抽出管を用いて、ソックスレー抽出用濾紙に重合によって得られたプロピレンの単独重合体または、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体を加え、沸騰オクタンで5時間還流して、前記の単独重合体または共重合体から沸騰オクタンに可溶な成分を抽出して除去し、ソックスレー抽出用濾紙に残った沸騰オクタンに不溶な成分を回収する方法である。
抽出操作に使用するオクタンは、重合によって得られた単独重合体または共重合体20gに対して0.1Lである。
<(1)プロピレン単独重合体>
プロピレン単独重合体は、プロピレンに由来する構造単位からなる重合体である。
<(2)プロピレンランダム共重合体>
プロピレンランダム共重合体は、
(2−1)プロピレン由来の構造単位とエチレンに由来する構造単位とからなるランダム共重合体、
(2−2)プロピレン由来の構造単位と炭素原子数4〜10個のα−オレフィンに由来する構造単位とからなるランダム共重合体、または、
(2−3)プロピレン由来の構造単位とエチレンに由来する構造単位と炭素原子数4〜10個のα−オレフィンに由来する構造単位とからなるランダム共重合体、
である。
前記のランダム共重合体(2−2)または(2−3)で用いられる炭素原子数4〜10個のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
前記のランダム共重合体(2−2)としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム、プロピレン−1−デセンランダム共重合体等が挙げられる。
前記のランダム共重合体(2−3)としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体等が挙げられる。
前記のランダム共重合体(2−1)に含有されるエチレンに由来する構造単位の含有量は、0.1〜40重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましく、2〜15重量%であることが更に好ましい。そして、プロピレンに由来する構造単位の含有量は99.9〜60重量%であることが好ましく、99.9〜70重量%であることがより好ましく、98〜85重量%であることが更に好ましい。(ただし、前記のランダム共重合体(2−1)の全体の重量を100重量%とする。)
前記のランダム共重合体(2−2)に含有される炭素原子数4〜10個のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量は、0.1〜40重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましく、2〜15重量%であることが更に好ましい。そして、プロピレンに由来する構造単位の含有量は99.9〜60重量%であることが好ましく、99.9〜70重量%であることがより好ましく、98〜85重量%であることが更に好ましい。(ただし、前記のランダム共重合体(2−2)の全体の重量を100重量%とする。)
前記のランダム共重合体(2−3)に含有されるエチレンに由来する構造単位の含有量と炭素原子数4〜10個のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量の合計は、0.1〜40重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましく、2〜15重量%であることが更に好ましい。そして、プロピレンに由来する構造単位の含有量は99.9〜60重量%であることが好ましく、99.9〜70重量%であることがより好ましく、98〜85重量%であることが更に好ましい。(ただし、前記のランダム共重合体(2−3)の全体の重量を100重量%とする。)
<(3)プロピレン多段重合材料>
プロピレン多段重合材料は、
(3−1)下記のプロピレン単独重合体成分(I−1)と下記のプロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン多段重合材料(単独重合体成分(I−1)と共重合体成分(II)の混合物)、または、
(3−2)下記のプロピレン共重合体成分(I−2)と下記のプロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン多段重合材料(共重合体成分(I−2)と共重合体成分(II)の混合物)、
である。(なお、前記の単独重合体成分(I−1)と共重合体成分(I−2)を併せて重合体成分(I)と称する。)
プロピレン単独重合体成分(I−1)は、プロピレンに由来する構造単位からなる単独重合体成分である。
プロピレン共重合体成分(I−2)は、プロピレンに由来する構造単位とエチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンから選ばれるオレフィンに由来する構造単位とからなる共重合体成分であって、エチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンから選ばれるオレフィンに由来する構造単位の含有量が0.01重量%以上20重量%未満である。好ましくは0.01〜15重量%、より好ましくは5〜15重量%である。(ただし、プロピレン共重合体成分(I−2)の全体の重量を100重量%とする。)
プロピレン共重合体成分(II)は、プロピレンに由来する構造単位とエチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンから選ばれるオレフィンに由来する構造単位とからなる共重合体成分であって、エチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンから選ばれるオレフィンに由来する構造単位の含有量が20〜80重量%である。好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜60重量%である。(ただし、プロピレン共重合体成分(II)の全体の重量を100重量%とする。)
プロピレン共重合体成分(I−2)またはプロピレン共重合体成分(II)に用いられる炭素原子数4〜10個のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは1−ブテンである。
プロピレン共重合体成分(I−2)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられ、好ましくはプロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分である。
プロピレン共重合体成分(II)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−デセン共重合体成分等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分であり、より好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分である。
多段重合材料(4−1)としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)多段重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)多段重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)多段重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)多段重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)多段重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)多段重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−1−オクテン)多段重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−1−デセン)多段重合材料等が挙げられる。
好ましくは(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)多段重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)多段重合材料、であり、より好ましくは(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)多段重合材料である。
多段重合材料(4−2)としては、例えば、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)多段重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)多段重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)多段重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)多段重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)多段重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)多段重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)多段重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−オクテン)多段重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−デセン)多段重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)多段重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)多段重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)多段重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)多段重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)多段重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)多段重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)多段重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−オクテン)多段重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−デセン)多段重合材料、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−ヘキセン)多段重合材料、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−オクテン)多段重合材料、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−デセン)多段重合材料、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−オクテン)多段重合材料、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−デセン)多段重合材料等が挙げられる。
好ましくは(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)多段重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)多段重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)多段重合材料である。
重合体成分(I)と共重合体成分(II)とからなる多段重合材料に含有される共重合体成分(II)の含有量は1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、10〜40重量%であることが更に好ましく、10〜30重量%であることが更に一層好ましい(但し、多段重合材料の全体の重量を100重量%とする)。
重合体成分(I)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]I、単位:dl/g)は0.1〜5dl/gであり、好ましくは0.3〜4dl/gであり、より好ましくは0.5〜3dl/gである。
共重合体成分(II)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]II、単位:dl/g)は1〜20dl/gであり、好ましくは1〜10dl/gであり、より好ましくは2〜7dl/gである。
また、重合体成分(I)の極限粘度([η]I)に対する共重合体成分(II)の極限粘度([η]II)の比([η]II/[η]I)は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは2〜9である。
なお、本発明における極限粘度(単位:dl/g)は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定される値である。
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1g/dl、0.2g/dl及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定する。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求められる。
多段重合材料が多段重合によって製造され、
(1)前段の重合槽で重合体成分(I)が製造され、後段の重合槽で共重合体成分(II)が製造される場合、前段の重合槽から重合体成分(I)の一部を抜出し、重合体成分(I)の極限粘度を測定し、後段の重合槽から最終的に製造される多段重合材料の一部を抜出し、多段重合材料の極限粘度を測定し、重合体成分(I)の極限粘度と多段重合材料の極限粘度と、重合体成分(I)の含有量と共重合体成分(II)の含有量を用いて、共重合体成分(II)の極限粘度を算出する。
(2)前段の重合槽で共重合体成分(II)が製造され、後段の重合槽で重合体成分(I)が製造される場合、前段の重合槽から共重合体成分(II)の一部を抜出し、共重合体成分(II)の極限粘度を測定し、後段の重合槽から最終的に製造される多段重合材料の一部を抜出し、多段重合材料の極限粘度を測定し、共重合体成分(II)の極限粘度と多段重合材料の極限粘度と、重合体成分(I)の含有量と共重合体成分(II)の含有量を用いて、重合体成分(I)の極限粘度を算出する。
多段重合材料が、重合体成分(I)が前段の重合工程で製造され、共重合体成分(II)が後段の工程で製造される多段重合材料である場合、その重合体成分(I)の極限粘度と共重合体成分(II)の極限粘度の測定方法と算出方法について、以下のとおり説明する。
重合体成分(I)および共重合体成分(II)の含有量、重合体成分(I)の極限粘度([η]I)、共重合体成分(II)の極限粘度([η]II)および後段の工程で得られる最終的な多段重合材料の極限粘度([η]Total)の測定および算出の手順は、以下のとおりである。
前記の極限粘度の測定方法に従って、
前段の重合工程で製造された重合体成分(I)の極限粘度([η]I)、
後段の重合工程で得られる最終的な多段重合材料の極限粘度([η]Total)を測定する。
そして、測定された極限粘度([η]I)と極限粘度([η]Total)と、最終的な多段重合材料に含有される重合体成分(I)の含有量と共重合体成分(II)の含有量とを用いて、共重合体成分(II)の極限粘度([η]II)を、下記式から算出する。
[η]II=([η]Total−[η]I×XI)/XII
[η]Total:後段の重合工程で得られる最終的な多段重合材料の極限粘度(dl/g)
[η]I:前段の重合工程の最後の重合槽から抜き出した重合体成分(I)の極限粘度(dl/g)
I:最終的な多段重合材料の全体に対する重合体成分(I)の重量比
II:最終的な多段重合材料の全体に対する共重合体成分(II)の重量比
なお、XI、XIIは重合時の物質収支から求める。
なお、最終的な多段重合材料の全体に対する共重合体成分(II)の重量比(XII)は、重合体成分(I)の結晶融解熱量と最終的な多段重合材料の全体の結晶融解熱量のそれぞれを測定し、次式を用いて算出することもできる。結晶融解熱量は、示差走査型熱分析(DSC)によって測定できる。
II=1−(ΔHf)Total/(ΔHf)I
(ΔHf)Total:最終的な多段重合材料の全体の融解熱量(cal/g)
(ΔHf)I:重合体成分(I)の融解熱量(cal/g)
最終的な多段重合材料に含まれる共重合体成分(II)のコモノマーに由来する構造単位の含有量((Cα’)II)は、赤外線吸収スペクトル法によって最終的な多段重合材料の全体に含まれるコモノマーに由来する構造単位の含有量((Cα’)Total)を測定し、次式を用いて算出した。
(Cα’)II=(Cα’)Total/XII
(Cα’)Total:最終的な多段重合材料の全体のコモノマーに由来する構造単位の含有量(重量%)
(Cα’)II:共重合体成分(II)のコモノマーに由来する構造単位の含有量(重量%)
II:最終的な多段重合材料の全体に対する共重合部(II)の重量比
なお、XIIは重合時の物質収支から求める。
本発明のプロピレン重合体の「アイソタクチックペンタッド分率」とは、A. Zambelli等の「Macromolecules 6, 925 (1973)」に記載された13C−NMRスペクトルによって測定されるプロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位での、アイソタクチック分率を意味する。また13C−NMRスペクトルの測定におけるピークの帰属方法は、A. Zambelli等の「Macromolecules 8, 687 (1975)」に記載された方法に従った。
本発明のプロピレン重合体のアイソタクチックペンタッド分率は、0.97以上(条件a)であり、耐衝撃性の観点から好ましくは0.975、より好ましくは0.98以上である。
本発明のプロピレン重合体の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、4.0以下(条件b)であり、耐衝撃性の観点から好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下である。
上記の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、次の方法に従い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと称する)の測定結果に基づき算出する。具体的には、測定装置としてはウォーターズ社製GPC−150Cを用い、カラムとしては混合ポリスチレンゲルカラム(東ソー(株)社製PSKgelGMH6−HT)を用い、ポリマー濃度0.05重量%のオルトジクロロベンゼン溶液を用い、135℃で測定することによって重量平均分子量(Mw)および重量平均分子量(Mw)を求める。そして、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)を算出する。
本発明のプロピレン重合体は、重量平均分子量が14,000以下である成分の重量割合が1.8重量%以上(条件c)のプロピレン重合体である。耐衝撃性の観点から好ましくは1.8重量%以上3.5重量%以下であり、より好ましくは1.8重量%以上3.0重量%以下であり、さらに好ましくは1.8重量%以上2.5重量%以下である。
上記の重量平均分子量が14,000以下である成分の重量割合とは、上記のGPCによって測定されたプロピレン重合体に含まれる全ての成分の重量平均分子量に対する積算値を100重量%とした時の、重量平均分子量が14,000以下である成分の積算値の割合を意味する。
本発明のプロピレン重合体は、オルトジクロロベンゼンによる昇温溶出分別において、90℃以下で溶出する成分の重量割合が0.21重量%以下(条件d)のプロピレン重合体である。
耐衝撃性の観点から好ましくは0.20重量%以下であり、より好ましくは0.10重量%以下である。
上記のオルトジクロロベンゼンによる昇温溶出分別において、90℃以下で溶出する成分の重量割合は、次の方法に従い、クロス分別クロマトグラフィー(以下CFCと称する)の測定結果に基づき算出する。具体的には、測定装置としては三菱化学(株)社製CFC−T150A型を用い、カラムとしてはポリスチレンジビニルベンゼンカラム(昭和電工(株)社製UT−806M)を用い、ポリマー濃度0.05重量%のオルトジクロロベンゼン溶液を用い、1℃/1分の速度で170℃から0℃まで降温した後、30分間放置して、0℃フラクションから溶出を開始し、検出器(ニコレージャパン(株)社製Magna−IR550)で溶出成分を検出し、90℃以下の温度で溶出する成分量を求める。そして、プロピレン重合体の全体の重量を100重量%として90℃以下の温度で溶出する成分の重量割合を算出する。
本発明のプロピレン重合体として、好ましくは、プロピレンの1,3挿入反応に起因する異種結合が検出されないプロピレン重合体(条件e)である。
上記のプロピレンの1,3挿入反応に起因する異種結合とは、筒井(T.Tsutsui)等の「POLYMER,30,1350(1989)」に記載された13C−NMRスペクトルによって測定され、プロピレン重合体分子鎖中に検出されるプロピレンの1,3挿入反応に起因する異種結合である。
本発明のプロピレン重合体には、必要に応じて、その他の樹脂を加えてもよい。その他の樹脂としてはエチレン重合体が挙げられる。
エチレン重合体として、好ましくはエチレン−プロピレン共重合体、または、エチレン−α−オレフィン共重合体である。エチレン−プロピレン共重合体は、エチレンに由来する構造単位とプロピレンに由来する構造単位とを有する共重合体であり、エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位と炭素原子数4〜10個のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンに由来する構造単位とを有する共重合体である。
エチレン−プロピレン共重合体に含有されるプロピレンに由来する構造単位の含有量は1〜49重量%であり、好ましくは1〜30重量%であり、より好ましくは1〜20重量%である(エチレン−プロピレン共重合体の全体の重量を各100重量%とする)。
エチレン−プロピレン共重合体のメルトフローレートは、0.1〜50g/10分である。なお、当該メルトフローレートは、190℃、2.16kgf荷重下で、JIS−K−7210に準拠して測定されたメルトフローレートである。
エチレン−プロピレン共重合体の密度は、成形体の耐衝撃性を向上させる観点から、0.85〜0.89g/cm3であり、好ましくは0.85〜0.88g/cm3、さらに好ましくは0.855〜0.875g/cm3である。
エチレン−α−オレフィン共重合体に用いられる炭素原子数4〜10個のα−オレフィンとして、具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
エチレン−α−オレフィン共重合体に含有される炭素原子数4〜10個のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは1〜49重量%であり、より好ましくは1〜30重量%であり、さらに好ましくは1〜20重量%である(エチレン−α−オレフィン共重合体の全体の重量を各100重量%とする)。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、0.1〜50g/10分である。なお、当該メルトフローレートは、190℃、2.16kgf荷重下で、JIS−K−7210に準拠して測定されたメルトフローレートである。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、成形体の耐衝撃性を向上させる観点から、0.85〜0.89g/cm3であり、好ましくは0.85〜0.88g/cm3、さらに好ましくは0.855〜0.875g/cm3である。
本発明のプロピレン重合体にエチレン重合体を加えてプロピレン樹脂組成物とする場合、プロピレン重合体およびエチレン重合体のそれぞれの含有量は、プロピレン重合体99〜51重量%およびエチレン重合体1〜49重量%であり(ただし、プロピレン重合体とエチレン重合体のそれぞれの重量の合計を100重量%とする)、耐衝撃性と剛性の観点から好ましくはプロピレン重合体95〜51重量%およびエチレン重合体5〜49重量%であり、より好ましくはプロピレン重合体90〜51重量%およびエチレン重合体10〜49重量%であり、さらにより好ましくはプロピレン重合体85〜51重量%およびエチレン重合体15〜49重量%である。
本発明のプロピレン樹脂組成物に用いられるエチレン重合体として、好ましくは、融解熱量が5.0J/g以上のエチレン重合体である。上記の融解熱量として、より好ましくは10.0〜90.0J/gであり、さらに好ましくは10.0〜70.0J/gである。
上記の融解熱量は、JIS K7122に従って示差走査熱量測定によって測定され、−50℃〜200℃の範囲に観測される結晶の融解熱量を意味する。具体的には、試料約5mgを、窒素雰囲気下200℃で5分間溶融させ、降温速度10℃/分で−50℃まで冷却し、5分間保温した後、10℃/分で昇温し、温度変調±0.976℃、周期30秒で測定を行い、昇温曲線から融解熱量を算出する。
本発明のプロピレン樹脂組成物に用いられるエチレン重合体として、好ましくは、耐衝撃性の観点から、本発明のプロピレン重合体のせん断粘度に対するエチレン重合体のせん断粘度の比(エチレン重合体のせん断粘度/プロピレン重合体のせん断粘度)が2.0以下のエチレン重合体である。上記のせん断粘度の比として、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.2以下である。
上記のせん断粘度の比は、粘弾性測定装置を用いて、せん断速度100rad/sにおけるプロピレン重合体とエチレン重合体のそれぞれのせん断粘度を測定し、その測定結果から、せん断粘度の比(エチレン重合体のせん断粘度/プロピレン重合体)を算出して求められる。
本発明のプロピレン重合体には、必要に応じて、添加剤を加えてもよい。添加剤としては充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、造核剤、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が挙げられる。
充填剤としては、無機充填剤が挙げられる。無機充填剤として、好ましくはタルクまたは繊維状マグネシウムオキシサルフェートである。
本発明のプロピレン樹脂組成物の製造方法としては、プロピレン重合体とエチレン重合体と必要に応じて加えられる添加剤を溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練には、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸同方向回転押出機等が用いられる。
添加剤を加える場合、
(1)プロピレン重合体とエチレン重合体を予め溶融混練した後に、添加剤を加えて溶融混練する方法、
(2)プロピレン重合体と添加剤を予め溶融混練した後に、エチレン重合体を加えて溶融混練する方法、
(3)エチレン重合体と添加剤を予め溶融混練した後に、プロピレン重合体を加えて溶融混練する方法、
等が挙げられる。
本発明のプロピレン重合体またはプロピレン樹脂組成物は、射出成形体、押出成形体、発泡成形体、中空成形体等に用いられる。これらの成形体としては、例えば、各種工業用射出成形部品、各種容器、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、シート、パイプ、繊維等が挙げられる。
さらに、自動車部材では、バンパー材、インパネ材等が挙げられ、包装用途では、食品包装材、繊維包装材、雑貨包装材等が挙げられ、その他の用途としては、家電部材、モニター用部材、OA機器部材、医療用部材、排水パン、トイレタリー部材、ボトル、コンテナー等が挙げられる。
そして、これらの成形体の製造方法としては、射出成形法、押出成形法、発泡成形法、中空成形法等が挙げられる。
本発明を、以下に、実施例および比較例によって具体的に説明する。実施例および比較例で使用したプロピレン重合体およびエチレン重合体を下記に示す。
実施例および比較例で用いた重合体の製造に用いた固体触媒成分(I)の合成方法を以下に示した。
(1)固体触媒成分(I)
200リットルの円筒型反応器(直径0.35mの攪拌羽根を3対持つ撹拌機および幅0.05mの邪魔板4枚を備えた直径0.5mのもの)を窒素置換し、ヘキサン 54リットル、ジイソブチルフタレート 100g、テトラエトキシシラン 20.6kg及びテトラブトキシチタン 2.23kgを投入、撹拌した。次に、前記攪拌混合物に、ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液(濃度2.1モル/リットル)51リットルを反応器内の温度を7℃に保ちながら4時間かけて滴下した。この時の攪拌回転数は150rpmであった。滴下終了後、20℃で1時間撹拌したあと濾過し、得られた固体について室温下トルエン 70リットルでの洗浄を3回実施し、トルエンを加え、固体触媒成分前駆体スラリーを得た。該固体触媒成分前駆体は、Ti:1.9重量%、OEt(エトキシ基):35.6重量%、OBu(ブトキシ基):3.5重量%を含有していた。その平均粒径は39μmであり、16μm以下の微粉成分量は0.5重量%であった。次いでスラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、80℃で1時
間攪拌し、その後、スラリーを40℃以下となるように冷却し、攪拌下、テトラクロロチタン 30リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgとの混合液を投入、さらにオルトフタル酸クロライド 4.23kgを投入した。反応器内の温度を110℃として3時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を3回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン 15リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgと、ジイソブチルフタレート 0.87kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を2回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン 15リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を2回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン 15リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を3回、ヘキサン 90リットルでの洗浄を2回実施した。得られた固体成分を乾燥し、固体触媒成分を得た。該固体触媒成分は、Ti:2.1重量%、フタル酸エステル成分:10.8重量%を含有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分(I)と呼ぶ。
〔プロピレン単独重合体(HPP)の重合〕
(1)HPP−1の重合
固体触媒成分(I)を用い、連続の気相重合において、系内の水素濃度と重合温度を制御することによってプロピレン単独重合体を得た。得られたポリマーの極限粘度[η]Pは1.57dl/g、アイソタクチックペンタッド分率は0.982、分子量分布(Mw/Mn)は3.8であった。
(2)HPP−2の重合
固体触媒成分(I)を用い、連続の気相重合において、系内の水素濃度と重合温度を制御することによってプロピレン単独重合体を得た。得られたポリマーの極限粘度[η]Pは2.11dl/g、アイソタクチックペンタッド分率は0.969、分子量分布(Mw/Mn)は3.8であった。
(A)プロピレン重合体
(A−1)プロピレン重合体
ソックスレー抽出管を用いて、ソックスレー抽出用濾紙に前記プロピレン重合体(HPP−1)20gを加え、0.1Lの沸騰オクタンで、5時間抽出操作を行い、液相−気相重合法によって製造されたプロピレン重合体から沸騰オクタン可溶成分を除去した。
そして、ソックスレー抽出用濾紙に残った沸騰オクタン不溶成分をプロピレン重合体(A−1)として得た。
得られたプロピレン重合体(A−1)の物性を以下に示す。
・アイソタクチックペンタッド分率([mmmm]):0.986
・プロピレンの1,3挿入反応に起因する異種結合:検出されず
・分子量分布(Mw/Mn):3.0
・重量平均分子量が14,000以下である成分の重量割合:1.8重量%
・90℃以下で溶出する成分の重量割合:0.16重量%
・せん断速度100rad/sにおけるせん断粘度:540.9Pa・s
(A−2)プロピレン重合体
前記プロピレン重合体(HPP−1)を(A−2)とした。
得られたプロピレン重合体(A−2)の物性を以下に示す。
・アイソタクチックペンタッド分率([mmmm]):0.982
・プロピレンの1,3挿入反応に起因する異種結合:検出されず
・分子量分布(Mw/Mn):3.8
・重量平均分子量が14,000以下である成分の重量割合:4.3重量%
・90℃以下で溶出する成分の重量割合:0.32重量%
・せん断速度100rad/sにおけるせん断粘度:535.9Pa・s
(A−3)プロピレン重合体
前記プロピレン重合体(HPP−2)を(A−3)とした。
得られたプロピレン重合体(A−3)の物性を以下に示す。
・アイソタクチックペンタッド分率([mmmm]):0.969
・プロピレンの1,3挿入反応に起因する異種結合:検出されず
・分子量分布(Mw/Mn):3.8
・重量平均分子量が14,000以下である成分の重量割合:1.8重量%
・90℃以下で溶出する成分の重量割合:1.11重量%
・せん断速度100rad/sにおけるせん断粘度:798.3Pa・s
(B)エチレン重合体
エチレン重合体(B)としてダウケミカルジャパン社製Engage8200を使用した。Engage8200は、エチレン−オクテン共重合体である。
・融解熱量:25.6J/g
・せん断速度100rad/sにおけるせん断粘度:606.4Pa・s
・密度:0.87g/cm3
原料成分及び樹脂組成物の物性は下記に示した方法によって測定された。
(1)アイソタクチックペンタッド分率([mmmm])
アイソタクチックペンタッド分率とは、プロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の分率であり、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。
アイソタクチックペンタッド分率の測定方法は、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている13C−NMRスペクトルを使用する測定方法である。ただし、13C−NMRスペクトルによって得られる吸収ピークの帰属は、Macromolecules,8,687(1975)の記載に基づいて行った。具体的には、13C−NMRスペクトルによって得られるメチル炭素領域の全吸収ピークの面積に対するmmmmピークの面積の比を、アイソタクチックペンタッド分率として求めた。なお、この方法によって求められる英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチックペンタッド分率は、94.4であった。13C−NMR測定は下記の条件下で行った。
〔測定条件〕
機種:Bruker AVANCE600
プローブ:10mmクライオプローブ
測定温度:130℃
パルス繰り返し時間:4秒
パルス幅:45°
積算回数:700回
磁場強度:600MHz
(2)異種結合量(単位:mol%)
筒井(T.Tsutsui)らによって、POLYMER,30,1350(1989)に記載されている方法に基づき、13C−NMRスペクトルによって測定されるプロピレン重合体分子鎖中に含まれるプロピレンの1,3挿入反応に起因する異種結合の存在割合を検出した。なお、測定可能な下限界値は0.02モル%であった。(ただし、プロピレン重合体分子鎖中に含まれるプロピレンに起因する結合の全量を100mol%とする。)
(3)重量平均分子量14,000以下の成分量割合(単位:重量%)および、
重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果に基づき算出した。GPCの測定は、測定装置としては、ウォーターズ社製GPC−150Cを用いて、ポリマー濃度0.05重量%のオルトジクロロベンゼン溶液を用い、カラムは混合ポリスチレンゲルカラム(東ソー(株)社製PSKgelGMH6−HT)を使用し、135℃で測定した。(ただし、プロピレン重合体の全重量を100重量%とする。)
(4)90℃以下溶出成分量割合(単位:重量%)
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)の測定結果に基づき算出した。CFCの測定は、測定装置としては、三菱化学(株)社製CFC−T150A型を用いて、ポリマー濃度0.05重量%のオルトジクロロベンゼン溶液を用い、カラムはポリスチレンジビニルベンゼンカラム(昭和電工(株)社製UT−806M)を使用し、1℃/1分の速度で170℃から0℃まで降温した後、30分間放置して、0℃フラクションから溶出を開始し、検出器(ニコレージャパン(株)社製 Magna−IR550)によって溶出成分を検出して測定した。(ただし、プロピレン重合体の全重量を100重量%とする。)
(5)融解熱量(単位:J/g)
融解熱量は、示差走査熱量測定(TAインスツルメンツ社製DSC Q100)を用いて測定した。試料約5mgを、窒素雰囲気下200℃で5分間溶融させ、降温速度10℃/分で−50℃まで冷却し、5分間保温した後、10℃/分で昇温した。温度変調±0.976℃、周期30秒で測定を行い、昇温曲線から融解熱量を算出した。
(6)プロピレン重合体のせん断粘度に対するエチレン重合体のせん断粘度の比
TAインスツルメント製Ares(粘弾性測定装置)を用いて、角周波数0.1〜100rad/s、ひずみ5%で、温度200℃で、角周波数100rad/sにおけるプロピレン重合体およびエチレン重合体のそれぞれのせん断粘度(単位Pa・s)を測定し、プロピレン重合体のせん断粘度に対するエチレン重合体のせん断粘度の比を算出した。
(7)曲げ弾性率(単位:MPa)
〔評価試験片〕
プロピレン樹脂組成物をプレス成形機(新藤金属工業所製圧縮成形機P−37)によって、温度230℃で2mmの厚みにした後、30℃まで冷却して、JIS形の評価試験片を作成した。
〔測定方法〕
得られた試験片を相対湿度50%、温度23℃の室内で72時間状態調整した後、JISK7106に準拠し、曲げ弾性率を測定した。
(8)耐衝撃性(単位:kJ/m2
〔評価試験片〕
(7)と同様にして評価試験片を作成した。
〔測定方法〕
ASTM1822に準拠し、テンサイルインパクト値を測定した。
(9)成形性
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを使用して、低せん断速度(60.8sec-1)と高せん断速度(2432sec-1)におけるせん断粘度を測定し、せん断粘度比(60.8sec-1でのせん断粘度/2432sec-1でのせん断粘度)を測定した。測定温度は220℃、オリフィスのL/Dは40で行った。
当該せん断粘度比は、せん断速度に対するせん断粘度依存性を示しており、粘度比が大きいほど、加工時の流動性にすぐれ、成形性が高いことを示す。
実施例1
プロピレン重合体(A−1)80重量%と、エチレン重合体(B−1)20重量%とを混合し、DSM−Xplore社製小型混練機を用いて、230℃の温度で5分間、溶融混練し、切削して、プロピレン樹脂組成物のペレットを得た。
次に、新藤金属工業所圧縮成形機(P−37)を用いて、得られたペレットを温度230℃で5分間融解させ、温度230℃で5分間、10MPaで加圧した後、温度30℃で5分間、10MPaで加圧し、厚み2mmの成形体を得た。
次に、得られた成形体の剛性と耐衝撃性、および、プロピレン樹脂組成物の成形性を評価した。結果を表1に示す。
比較例1
プロピレン重合体(A−2)80重量%と、エチレン重合体(B−1)20重量%とを混合し、DSM−Xplore社製小型混練機を用いて、230℃の温度で5分間、溶融混練し、切削して、プロピレン樹脂組成物のペレットを得た。
次に、新藤金属工業所圧縮成形機(P−37)を用いて、得られたペレットを温度230℃で5分間融解させ、温度230℃で5分間、10MPaで加圧した後、温度30℃で5分間、10MPaで加圧し、厚み2mmの成形体を得た。
次に、得られた成形体の剛性と耐衝撃性、および、プロピレン樹脂組成物の成形性を評価した。結果を表1に示す。
比較例2
プロピレン重合体(A−3)80重量%と、エチレン重合体(B−1)20重量%とを混合し、DSM−Xplore社製小型混練機を用いて、230℃の温度で5分間、溶融混練し、切削して、プロピレン樹脂組成物のペレットを得た。
次に、新藤金属工業所圧縮成形機(P−37)を用いて、得られたペレットを温度230℃で5分間融解させ、温度230℃で5分間、10MPaで加圧した後、温度30℃で5分間、10MPaで加圧し、厚み2mmの成形体を得た。
次に、得られた成形体の剛性と耐衝撃性、および、プロピレン樹脂組成物の成形性を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2015036386

Claims (4)

  1. 以下の(条件a)と(条件b)と(条件c)と(条件d)の全てを満足するプロピレン重合体。
    (条件a):アイソタクチックペンタッド分率が0.97以上であること。
    (条件b):数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が4.0以下であること。
    (条件c):重量平均分子量が14,000以下である成分の重量割合が1.8重量%以上であること(ただし、プロピレン重合体の全体の重量を100重量%とする)。
    (条件d):オルトジクロロベンゼンによる昇温溶出分別において、90℃以下で溶出する成分の重量割合が0.21重量%以下であること(ただし、プロピレン重合体の全体の重量を100重量%とする)。
  2. さらに、以下の(条件e)を満足する請求項1に記載のプロピレン重合体。
    (条件e):プロピレンの1,3挿入反応に起因する異種結合が13C−NMRによって検出されないこと。
  3. 請求項1または2に記載のプロピレン重合体99〜51重量%およびエチレン重合体1〜49重量%を含有するプロピレン樹脂組成物。
  4. 請求項1または2に記載のプロピレン重合体からなる成形体、または、請求項3に記載のプロピレン樹脂組成物からなる成形体。
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JP2013167314A Pending JP2015036386A (ja) 2013-08-12 2013-08-12 プロピレン重合体、該重合体からなるプロピレン樹脂組成物および成形体

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11414537B2 (en) 2018-11-05 2022-08-16 Lg Chem, Ltd. Resin composition for bi-component fiber

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