JP2015034760A - 温度センサ - Google Patents
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また、特許文献2では、ポリイミドフィルム上に、Ta−Al複合窒化物材料で形成された薄膜のセンサ感応部と、Ni及びCuの電極とを有した熱伝導式水分計が記載されている。
例えば、ガラス(例えば車のフロントガラス)やフィルム等の透明な部材や、ソーラーパネルのように太陽光を受光する面等の温度を測定する際、その部分に温度センサを直接設置すると温度センサによって光が遮られてしまい測定対象の機能等に影響を与えてしまう問題があった。上記従来の薄膜サーミスタを用いたセンサでは、薄膜サーミスタの光の透過率が低く、上記用途に用いると採光等に支障が出て、弊害が生じる場合があった。
従来、TiAlNからなる窒化物系サーミスタを形成した温度センサでは、フィルム上にTiAlNからなるサーミスタ材料層と電極とを積層して形成する場合、サーミスタ材料層上にAu等の電極層を成膜し、複数の櫛部を有した櫛型にパターニングしている。しかし、このサーミスタ材料層は、曲率半径が大きく緩やかに曲げられた場合には、クラックが生じ難く抵抗値等の電気特性に変化がないが、曲率半径が小さくきつく曲げた場合に、クラックが発生し易くなり、抵抗値等が大きく変化して電気特性の信頼性が低くなってしまう。特に、フィルムを櫛部の延在方向に直交する方向に小さい曲率半径できつく曲げた場合、櫛部の延在方向に曲げた場合に比べて櫛型電極とサーミスタ材料層との応力差により、電極エッジ付近にクラックが発生し易くなり、電気特性の信頼性が低下してしまう不都合があった。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.85≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。さらに、c軸に強く配向した結晶構造を有していることで、可視光域で50%以上の高い透過性が得られる。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Ti+Al))が0.95をこえると、抵抗率が非常に高く、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.4未満であると、金属の窒化量が少ないため、ウルツ鉱型の単相が得られず、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
さらに、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.5を超えると、ウルツ鉱型の単相を得ることができない。このことは、ウルツ鉱型の単相において、窒素サイトにおける欠陥がない場合の正しい化学量論比は、N/(Ti+Al+N)=0.5であることに起因する。
すなわち、この温度センサでは、透明基板が、絶縁性フィルムであるので、上述したように、薄膜サーミスタ部が非焼成で絶縁性フィルム上に成膜可能であり、薄くフレキシブルなフィルム型センサを得ることができる。
すなわち、この温度センサでは、透明電極が、ITO(スズがドープされた酸化インジウム)、IGZO(インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を含む酸化物In−Ga−ZnO4)、AZO(Alがドープされた酸化亜鉛)又はGZO(Gaがドープされた酸化亜鉛)で形成されているので、生産性に優れ、電極として良好な低抵抗と光の透過率とを得ることができる。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、電極が、透明電極で形成され、電極が、透明電極で形成され、薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.85≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であり、基板面に対して垂直方向にa軸よりc軸が強く配向しているので、光の透過率の高い薄膜サーミスタ部と透明電極とが透明基板に形成されていることで、全体として柔軟で高い透過率が得られる。
したがって、本発明の温度センサによれば、採光が必要な用途において設置によって光を遮らずに高い透過率で透過させることができ、例えば車のフロントガラスやソーラーパネルの受光面などにおいても採光に影響を与えずに温度の測定が可能になる。また、透明基板を絶縁性フィルムとすることで、設置部分が曲面で構成されていても、フレキシブルに湾曲可能であるため、容易に密着させて設置可能である。
上記電極4は、透明電極で形成され、特に、透明電極は、ITO(スズがドープされた酸化インジウム)、IGZO(インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を含む酸化物In−Ga−ZnO4)、AZO(Alがドープされた酸化亜鉛)又はGZO(Gaがドープされた酸化亜鉛)でパターン形成されていることが好ましい。
なお、上記透明基板2及び透明電極は、いずれも可視光域(波長λ=400〜830nm)において少なくとも50%以上の透過率が得られる透明な材料で形成されたものである。
なお、上記点A,B,C,Dの各組成比(x、y、z)(atm%)は、A(7.5、42.5、50),B(2.5、47.5、50),C(3、57、40),D(9、51、40)である。
なお、基板面に対して垂直方向(膜厚方向)にa軸配向(100)が強いかc軸配向(002)が強いかの判断は、X線回折(XRD)を用いて結晶軸の配向性を調べることで、(100)(a軸配向を示すミラー指数)と(002)(c軸配向を示すミラー指数)とのピーク強度比から、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」が1未満であることで、c軸配向が強いものとする。
この薄膜サーミスタ部3は、特に可視光域(波長λ=400〜830nm)において膜単体において透過率が50%以上であると共に、1500K以上のB定数(25〜50℃)が得られる材料である。
上記電極4は、互いに対向状態に配した櫛形パターンの一対の櫛部4aと、これら櫛部4aに先端部が接続され基端部が透明基板2の端部に配されて延在した一対の直線延在部4bとを有している。
次に、成膜した電極層の上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒のプリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃で5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な電極部分を市販のITOエッチャントでウェットエッチングを行い、図4に示すように、レジスト剥離にて櫛部4aを有する所望の電極4を形成する。
さらに、図1に示すように、その上に保護膜5として透明なカバーレイフィルムを接着することで、温度センサ1が作製される。
また、透明電極4が、ITO、IGZO、AZO又はGZOで形成されているので、生産性に優れ、電極として良好な低抵抗と光の透過率とを得ることができる。
また、薄膜サーミスタ部3は、基板面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
なお、比較としてTixAlyNzの組成比が本発明の範囲外の比較例についても同様に作製して評価を行った。
反応性スパッタ法にて得られた上記薄膜サーミスタ部のTixAlyNz膜は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)にて元素、定量分析を実施した。その結果を、Al比(Al/(Ti+Al)[%])として算出し、表1に示す。
(2)比抵抗測定
反応性スパッタ法にて得られた上記薄膜サーミスタ部のTixAlyNz膜を、4端子法にて25℃での比抵抗を測定した。
温度センサの25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。
なお、本発明におけるB定数算出方法は、上述したように25℃と50℃とのそれぞれの抵抗値から以下の式によって求めている。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部のTixAlyNz膜を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、入射角を1度とすると共に2θ=30〜80度の範囲で測定した。
この結果、本発明の実施例はいずれもウルツ鉱型(六方晶、AlNと同じ相)の単一相であった。
このようにTiAlN系においては、高抵抗かつ高B定数の領域は、Al/(Ti+Al)≧0.7のウルツ鉱型相に存在している。なお、本発明の実施例では、不純物相は確認されておらず、ウルツ鉱型の単一相である。
また、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、同様にウルツ鉱型相の単一相が形成されていることを確認している。また、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、配向性は変わらないことを確認している。
また、Al比が90%でc軸に強く配向したものとNaCl型のものとのXRDプロファイルの一例を、図6の(a)(b)に示す。
ガラス基板上に反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部と電極膜とが成膜された状態で透過率を測定した。その結果を表1に示す。なお、透過率は、可視光域(波長:400〜830nm)において平均した透過率値であり、薄膜サーミスタ部単体(表1で「サーミスタ単体」と表示)と、薄膜サーミスタ部上にITO膜を形成した状態(表1で「サーミスタ+ITO」と表示)とのそれぞれについて透過率を測定した。なお、薄膜サーミスタ部単体の透過率は、成膜後の透過率を成膜前の透過率で割って算出した。
次に、配向性について、薄膜サーミスタ部においてa軸に強く配向したものとc軸に強く配向したものとで、それぞれAl比を替えて透過率を測定したものを表2に示す。なお、薄膜サーミスタ部単体は、表2で「サーミスタ膜単体」と表示し、薄膜サーミスタ部上にITO膜を形成した状態は、表2で「ITO+サーミスタ」)と表示している。また、Al比と透過率(サーミスタ膜単体)との関係を、c軸に強く配向した実施例とa軸に配向した比較例とのそれぞれについて、図9に示す。
これらの結果からAl比が85%以上かつc軸に強く配向した本発明の実施例は、いずれも薄膜サーミスタ部単体の透過率が膜厚100nmで50%以上であった。
本発明の実施例はいずれも高密度な柱状結晶で形成されている。すなわち、基板面に垂直な方向に柱状の結晶が成長している様子が、薄膜サーミスタ部を成膜した熱酸化膜付きSi基板をへき開破断して断面を観察したSEM写真で確認されている。
本発明の実施例について、大気中,125℃,1000hの耐熱試験前後における抵抗値及びB定数を評価した。その結果、Al濃度及び窒素濃度は異なるものの、Ta−Al−N系である比較例と同じB定数で比較したとき、耐熱試験前後における電気特性変化でみたときの耐熱性は、Ti−Al−N系のほうが優れている。なお、この耐熱性評価では、薄膜サーミスタ自体の評価を行うために、透明電極ではなく、Cr膜とAu膜との積層膜を便宜的に電極とした実施例で行った。
例えば、Al比が85%の本発明の実施例では、耐熱試験の結果、B定数の変化率は0.2%であり、抵抗値の変化率は−0.5%であった。
上記実施形態に基づいて絶縁性フィルム(PETフィルム)を用いて作製した温度センサに対して、薄膜サーミスタ部を半径6mm(R3mm)の曲率で凹と凸とに交互に100回ずつ屈曲試験を行い、試験の前後で電気抵抗の測定を行なった。その結果を表1に示す。この結果、本発明の実施例は、いずれもクラックが発生しなかったと共に、抵抗値変化率が0.3%と小さく、B定数の変化率も0.2%と非常に小さかった。
Claims (3)
- 透明基板と、
前記透明基板の表面にサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部と、
前記薄膜サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に互いに対向してパターン形成された一対の電極とを備え、
前記電極が、透明電極で形成され、
前記薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.85≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であり、基板面に対して垂直方向にa軸よりc軸が強く配向していることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記透明基板が、絶縁性フィルムであることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記透明電極が、ITO、IGZO、AZO又はGZOで形成されていることを特徴とする温度センサ。
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