JP6501059B2 - サーミスタ及びその製造方法並びにサーミスタセンサ - Google Patents
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Description
また、特許文献5のCr−N−M系材料は、B定数が500以下と小さい材料であり、また、200℃以上1000℃以下の熱処理を実施しないと、200℃以内の耐熱性が確保できないことから、フィルムに直接成膜したサーミスタセンサが実現できないという問題点があった。そのため、非焼成で直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれていた。
また、例えばガラス(例えば車のフロントガラス)やフィルム等の透明な部材や、ソーラーパネルのように太陽光を受光する面等の温度を測定する際、その部分に温度センサを直接設置すると温度センサによって光が遮られてしまい測定対象の機能等に影響を与えてしまう問題があった。上記従来の薄膜サーミスタを用いたセンサでは、薄膜サーミスタの光の透過率が低く、上記用途に用いると採光等に支障が出て、弊害が生じる場合があった。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
このサーミスタ用金属窒化物材料では、サーミスタに用いられる金属窒化物材料であって、一般式:ZnxAly(N1−wOw)z(0.70≦y/(x+y)≦0.98、0.45≦z≦0.55、0<w≦0.35、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。特に、酸素(O)が含まれることで、結晶内の窒素欠陥を酸素が埋める、もしくは、格子間酸素が導入される等の効果によって耐熱性がより向上する。さらに、このサーミスタ用金属窒化物材料で形成されたサーミスタ膜は、光の高い透過率を有している。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Zn+Al))が0.98を超えると、抵抗率が非常に高く、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、(N+O)/(Zn+Al+N+O))が0.45未満であると、金属の窒化量が少ないため、ウルツ鉱型の単相が得られず、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
また、上記「z」(すなわち、(N+O)/(Zn+Al+N+O))が0.55を超えると、ウルツ鉱型の単相を得ることができない。このことは、ウルツ鉱型の単相において、窒素サイトにおける欠陥がない場合の化学量論比が、N/(Zn+Al+N)=0.5であることと、窒素サイトにおける欠陥を酸素が全て補った場合の化学量論比が、(N+O)/(Zn+Al+N+O)=0.5であることとに起因する。0.5を超えるz量については、格子間酸素が導入されたことと、XPS分析における軽元素(窒素、酸素)の定量精度とに起因するものである。
また、本研究において、上記「w」(すなわち、O/(N+O))が0.35を超えたウルツ鉱型の単相を得ることができなかった。w=1、かつ、y/(x+y)=0では、ウルツ鉱型ZnO相であるが、本研究で用いた材料は、Alを含む材料であり、w=1、かつ、y/(x+y)=2/3ではスピネル型ZnAl2O4相であり、w=1、かつ、y/(x+y)=1ではコランダム型Al2O3相であることを考慮すると、0.70≦y/(x+y)≦0.98、かつ、0.35<wを満たす領域においてウルツ鉱型単相が得られないことが理解できる。w値が増え、窒素量に対し酸素量が増えると、ウルツ鉱型単相が得ることが困難であることがわかり、本研究では、O/(N+O)=0.35まで、ウルツ鉱型単相が得られることを見出している。
すなわち、このサーミスタ用金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
すなわち、このサーミスタセンサでは、絶縁性フィルム上に第1又は第2の発明のサーミスタ用金属窒化物材料で薄膜サーミスタ部が形成されているので、非焼成で形成され高B定数で耐熱性の高い薄膜サーミスタ部により、樹脂フィルム等の耐熱性の低い絶縁性フィルムを用いることができると共に、良好なサーミスタ特性を有した薄型でフレキシブルなサーミスタセンサが得られる。
また、従来アルミナ等のセラミックスを用いた基板がしばしば用いられ、例えば、厚さ0.1mmへと薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、本発明においてはフィルムを用いることができるので、例えば、厚さ0.1mmの非常に薄いサーミスタセンサを得ることができる。
すなわち、このサーミスタセンサでは、絶縁性フィルムが透明基板であるので、光の透過率の高い薄膜サーミスタ部と透明基板とによって、全体として高い透過率が得られる。なお、本発明の透明基板は、半透明基板も含むものである。
すなわち、このサーミスタセンサでは、パターン電極が透明電極であるので、光の透過率の高い薄膜サーミスタ部と透明電極とによって、全体として高い透過率が得られる。
すなわち、このサーミスタセンサでは、透明電極が、IGZO(インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を含む酸化物In−Ga−ZnO4)、AZO(Alがドープされた酸化亜鉛)又はGZO(Gaがドープされた酸化亜鉛)で形成されているので、生産性に優れ、電極として良好な低抵抗と光の透過率とを得ることができると共に、これらZnを含有する透明電極とZnを含有する薄膜サーミスタ部との高い接合性が得られる。
すなわち、このサーミスタ用金属窒化物材料の製造方法では、Zn−Al合金スパッタリングターゲットを用いて窒素及び酸素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜するので、上記ZnxAly(N,O)zからなる本発明のサーミスタ用金属窒化物材料を非焼成で成膜することができる。
すなわち、本発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料によれば、一般式:ZnxAly(N1−wOw)z(0.70≦y/(x+y)≦0.98、0.45≦z≦0.55、0<w≦0.35、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。また、本発明に係るサーミスタ用金属窒化物材料の製造方法によれば、Zn−Al合金スパッタリングターゲットを用いて窒素及び酸素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜するので、上記ZnxAly(N,O)zからなる本発明のサーミスタ用金属窒化物材料を非焼成で成膜することができる。さらに、本発明に係るサーミスタセンサによれば、絶縁性フィルム上に本発明のサーミスタ用金属窒化物材料で薄膜サーミスタ部が形成されているので、樹脂フィルム等の耐熱性の低い絶縁性フィルムを用いて良好なサーミスタ特性を有した薄型でフレキシブルなサーミスタセンサが得られる。さらに、基板が、薄くすると非常に脆く壊れやすいセラミックスでなく、樹脂フィルムであることから、厚さ0.1mmの非常に薄いサーミスタセンサが得られる。
また、光の透過率の高い薄膜サーミスタ部と透明電極とが透明基板に形成されていることで、全体として柔軟で高い透過率が得られる。
したがって、本発明のサーミスタセンサによれば、採光が必要な用途において設置によって光を遮らずに高い透過率で透過させることができ、例えば車のフロントガラスやソーラーパネルの受光面などにおいても採光に影響を与えずに温度の測定が可能になる。また、透明基板を絶縁性フィルムとすることで、設置部分が曲面で構成されていても、フレキシブルに湾曲可能であるため、容易に密着させて設置可能である。
なお、上記点A,B,C,Dの各組成比(x,y,z)(atm%)は、A(x,y,z=13.5,31.5,55.0),B(x,y,z=0.9,44.1,55.0),C(x,y,z=1.1,53.9,45.0),D(x,y,z=16.5,38.5,45.0)である。
なお、膜の表面に対して垂直方向(膜厚方向)にa軸配向(100)が強いかc軸配向(002)が強いかの判断は、X線回折(XRD)を用いて結晶軸の配向性を調べることで、(100)(a軸配向を示すhkl指数)と(002)(c軸配向を示すhkl指数)とのピーク強度比から、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」が1未満であることで、c軸配向が強いものとする。
このサーミスタ用金属窒化物材料は、特に可視光域(波長λ=400〜830nm)において膜単体において透過率が65%以上である。
なお、PET,PEN,無アルカリガラス基板上にウルツ鉱型Zn−Al−N系材料を直接成膜することが可能であることを確認している。また、PIは、PETよりも透明度が低いが、膜厚を薄く設定することで、透明基板として用いることが可能である。
なお、上記透明電極は、可視光域(波長λ=400〜830nm)において少なくとも50%以上の透過率が得られる透明な材料で形成されたものである。
一対のパターン電極4は、薄膜サーミスタ部3上で互いに対向状態に配した櫛形パターンの一対の櫛形電極部4aと、これら櫛形電極部4aに先端部が接続され基端部が絶縁性フィルム2の端部に配されて延在した一対の直線延在部4bとを有している。
また、上記反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、1.5Pa未満に設定している。
さらに、上記成膜工程後に、形成された膜に窒素プラズマを照射することが好ましい。
このようにして、例えばサイズを25×3.6mmとし、厚さを0.1mmとした薄いサーミスタセンサ1が得られる。
また、このサーミスタ用金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
さらに、このサーミスタ用金属窒化物材料で形成されたサーミスタ膜は、光の高い透過率を有している。
また、従来、アルミナ等のセラミックスを用いた基板がしばしば用いられ、例えば、厚さ0.1mmへと薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、本発明においてはフィルムを用いることができるので、例えば、厚さ0.1mmの非常に薄いサーミスタセンサを得ることができる。
本発明の実施例及び比較例として、図4に示す膜評価用素子121を次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、様々な組成比のZn−Al合金ターゲットを用いて、Si基板Sとなる熱酸化膜付きSiウエハ上に、厚さ500nmの表1に示す様々な組成比で形成されたサーミスタ用金属窒化物材料の薄膜サーミスタ部3を形成した。その時のスパッタ条件は、到達真空度:5×10−6Pa、スパッタガス圧:0.1〜1.5Pa、ターゲット投入電力(出力):100〜500Wで、Arガス+窒素ガス+酸素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分圧を10〜100%、酸素ガス分圧を0〜3%と変えて作製した。
なお、比較としてZnxAly(N,O)zの組成比が本発明の範囲外であって結晶系が異なる比較例についても同様に作製して評価を行った。
(1)組成分析
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部3について、X線光電子分光法(XPS)にて元素分析を行った。このXPSでは、Arスパッタにより、最表面から深さ20nmのスパッタ面において、定量分析を実施した。その結果を表1に示す。なお、以下の表中の組成比は「原子%」で示している。一部のサンプルに対して、最表面から深さ100nmのスパッタ面における定量分析を実施し、深さ20nmのスパッタ面と定量精度の範囲内で同じ組成であることを確認している。
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部3について、4端子法(van der pauw法)にて25℃での比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
(3)B定数測定
膜評価用素子121の25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果を表1に示す。また、25℃と50℃との抵抗値より負の温度特性をもつサーミスタであることを確認している。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
表1に示す比較例1は、(N+O)/(Zn+Al+N+O)が40%に満たない領域であり、金属が窒化不足の結晶状態になっている。この比較例1は、NaCl型でも、ウルツ鉱型でもない、非常に結晶性の劣る状態であった。また、これら比較例では、B定数及び抵抗値が共に非常に小さく、金属的振舞いに近いことがわかった。
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部3を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、入射角を1度とすると共に2θ=20〜130度の範囲で測定した。一部のサンプルについては、入射角を0度とし、2θ=20〜100度の範囲で測定した。
なお、表1に示す比較例1は、上述したように結晶相がウルツ鉱型相でないことは確認できたが、本試験においては同定できなかった。また、これらの比較例は、XRDのピーク幅が非常に広いことから、非常に結晶性の劣る材料であった。これは、電気特性により金属的振舞いに近いことから、窒化不足、かつ、酸化不足の金属相になっていると考えられる。
なお、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、同様にウルツ鉱型の単一相が形成されていることを確認している。また、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、配向性は変わらないことを確認している。
本発明の実施例のXRDプロファイルの一例を、図7に示す。この実施例は、Al/(Zn+Al)=0.89(ウルツ鉱型六方晶)であり、入射角を1度として測定した。この結果からわかるように、この実施例では、(100)よりも(002)の強度が非常に強くなっている。
次に、薄膜サーミスタ部3の断面における結晶形態を示す一例として、熱酸化膜付きSi基板S上に260nm程度成膜された実施例(Al/(Zn+Al)=0.94,ウルツ鉱型六方晶、c軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部3における断面SEM写真を、図8に示す。
この実施例のサンプルは、Si基板Sをへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。なお、熱酸化膜付きSi基板S上に200nm、500nm、1000nmの厚さでそれぞれ成膜された場合にも、上記同様、緻密な柱状結晶で形成されていることを確認している。
なお、図中の柱状結晶サイズについて、図8の実施例は、粒径が15nmφ(±10nmφ)、長さ260nm程度であった。なお、ここでの粒径は、基板面内における柱状結晶の直径であり、長さは、基板面に垂直な方向の柱状結晶の長さ(膜厚)である。
柱状結晶のアスペクト比を(長さ)÷(粒径)として定義すると、本実施例は10以上の大きいアスペクト比をもっている。柱状結晶の粒径が小さいことにより、膜が緻密となっていると考えられる。
表1に示す実施例及び比較例の一部において、大気中,125℃,1000hの耐熱試験前後における抵抗値及びB定数を評価した。その結果を表2に示す。なお、比較として従来のTa−Al−N系材料による比較例も同様に評価した。また、参考として、酸素ガスを含有しない窒素ガスとArガスとの混合ガス雰囲気中で反応性スパッタを行い、Zn−Al−N系材料による薄膜サーミスタ部3を形成した参考例1(ウルツ鉱型六方晶系、c軸配向が強い)についても同様に耐熱試験を行った結果を、表2に併せて示す。
また、酸素を積極的に含有させていないZn−Al−N系材料による参考例1は、比較例よりも耐熱性に優れているが、この参考例1に比べて、酸素を積極的に含有させた本発明のZn−Al−(N+O)系材料による実施例の方が、抵抗値上昇率が小さく、さらに耐熱性に優れていることがわかる。
透明度の極めて高い無アルカリガラス基板上に反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部とが成膜された状態で透過率を測定した。その結果を表3に示す。なお、透過率は、可視光域(波長:400〜830nm)において平均した透過率値であり、薄膜サーミスタ部単体の透過率を測定した。なお、薄膜サーミスタ部単体の透過率は、成膜後の透過率を成膜前の透過率で割って算出した。また、薄膜サーミスタ部の膜厚は、200nmとした。
その結果、表3からわかるように、本発明の実施例では、透過率が65%以上の非常に高い透過度をもったサーミスタ膜が得られている。
Claims (7)
- 一般式:ZnxAly(N1−wOw)z(0.70≦y/(x+y)≦0.98、0.45≦z≦0.55、0<w≦0.35、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、
その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とするサーミスタ。 - 請求項1に記載のサーミスタにおいて、
膜状に形成され、
前記膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であることを特徴とするサーミスタ。 - 絶縁性フィルムと、
該絶縁性フィルム上に請求項1又は2に記載のサーミスタで形成された薄膜サーミスタ部と、
少なくとも前記薄膜サーミスタ部の上又は下に形成された一対のパターン電極とを備えていることを特徴とするサーミスタセンサ。 - 請求項3に記載のサーミスタセンサにおいて、
前記絶縁性フィルムが、透明基板であることを特徴とするサーミスタセンサ。 - 請求項3又は4に記載のサーミスタセンサにおいて、
前記パターン電極が、透明電極であることを特徴とするサーミスタセンサ。 - 請求項5に記載の温度センサにおいて、
前記透明電極が、IGZO、AZO又はGZOで形成されていることを特徴とするサーミスタセンサ。 - 請求項1又は2に記載のサーミスタを製造する方法であって、
Zn−Al合金スパッタリングターゲットを用いて窒素及び酸素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜する成膜工程を有していることを特徴とするサーミスタの製造方法。
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