JP2015032778A - 圧電体膜の製造方法、電気―機械変換素子の製造方法、および、液体吐出ヘッド、インクジェットプリンタ。 - Google Patents

圧電体膜の製造方法、電気―機械変換素子の製造方法、および、液体吐出ヘッド、インクジェットプリンタ。 Download PDF

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Abstract

【課題】膜厚ムラを抑制し、生産性に優れた圧電体膜の製造方法を提供する。【解決手段】圧電体膜の製造方法は、基板31上の第1の電極32表面にインクジェット方式によりゾル−ゲル液を部分的に塗布しパターン化されたゾル−ゲル膜53を形成する工程とゾル−ゲル膜を加熱処理することでゾル−ゲル膜を乾燥する工程とを有し、ゾル−ゲル膜を乾燥する工程は、ゾル−ゲル膜の加熱温度を室温から変更点温度Tcまで、第1の昇温レートにより昇温する第1の昇温工程と、変更点温度Tcに到達後、昇温レートを第2の昇温レートに変更しゾル−ゲル膜の加熱温度をゾル−ゲル膜の乾燥温度まで昇温する第2の昇温工程とを有し、変更点温度Tcはゾル−ゲル液の主溶媒の沸点Tbpとの間でTbp−23≰Tc≰Tbp+23の関係を満たし、第1の昇温レートは第2の昇温レートよりも遅い。【選択図】図6

Description

本発明は、圧電体膜の製造方法、電気―機械変換素子の製造方法、および、液体吐出ヘッド、インクジェットプリンタに関する。
近年、圧電体膜を備えた電気−機械変換素子は、例えば、プリンタ、ファクシミリ等の画像記録装置あるいは画像形成装置として使用されるインクジェットプリンタ等の液体吐出ヘッド等各種分野で用いられている(例えば特許文献1)。
電気−機械変換素子は、例えば基板上に配置した第1の電極(下部電極)、圧電体膜(電気−機械変換層)、第2の電極(上部電極)から構成できる。
この際、圧電体膜の形成方法としては水熱合成法や、蒸着法、AD法、スピンコート法、インクジェット法等の各種の成膜方法が知られていた。
中でも、所望の圧電体膜のパターン形状に合わせ、インクジェット法により高解像度で第1の電極(下部電極)上に圧電体膜の前駆体であるゾル−ゲル液滴を吐出、塗布する方法であるインクジェット方式による圧電体膜の製造方法が近年着目されている。
これは、インクジェット方式による圧電体膜の製造方法によれば所望の圧電体膜のパターンにあわせて圧電体膜を成膜でき、塗布後、加熱した後にドライエッチング等を行う必要がなく、工数の増加や材料廃棄に伴うコストの増加は発生しない。また、上記のようにドライエッチング等によるパターニングを行う必要がないため、圧電体膜が鉛成分を含んでいる場合でも鉛廃棄物による環境への影響も大幅に軽減することができるためである。
しかしながら、インクジェット方式による圧電体膜の製造方法においても、以下に説明するプロセス特有の課題が依然として存在していた。
第1の電極上に圧電体膜を形成する際に用いるゾル−ゲル液は、スピンコート法よりも遥かに微量となる。このため、ゾル−ゲル膜(ゾル−ゲル液)を乾燥する工程においてゾル−ゲル膜のパターン端部では微量液体から蒸発する溶媒の蒸気濃度が低くなり、ゾル−ゲル膜の乾燥が速くなる。そして、ゾル−ゲル膜内で乾燥速度の差が生じ、ゾル−ゲル膜のパターン稜線沿いの膜厚が極端に増加するいわゆるコーヒーステイン現象が発生し、ゾル−ゲル膜のパターンの端部と中心部で顕著な膜厚ムラが生じるという問題があった。
コーヒーステイン現象について、図1、図2を用いて説明する。
図1は第1の電極上に着弾したゾル−ゲル液滴から発生するコーヒーステイン現象のメカニズムを示したモデル図であり、図2はゾル−ゲル膜を乾燥する工程における第1の電極上に着弾した液滴内の流れを表したモデル図である。
第1の電極上に着弾したゾル−ゲル液滴は、当初、図1(A)に示す通り同じ形状を保ったまま蒸発が進む。なお、図中の丸はゾル−ゲル液滴中の溶質を模式的に示したものである。しかし蒸発が進むと図1(B)に示すように、ゾル−ゲル液滴内で溶質濃度の偏差が発生し、パターン端部では溶媒の蒸気濃度が低くなる。同時にゾル−ゲル液滴の縁の領域は増粘(ゲル化)する(図1(C))。
図1(D)、図2中に矢印で示すように、ゾル−ゲル液滴の縁が止まったまま高さのみが低くなる内部流れによって、端部に溶質が供給されることから、パターン稜線沿いの膜厚が増加する。図1(D)、図2に示したゾル−ゲル液滴内部流れは、ゾル−ゲル液滴の鉛直方向で温度勾配が生じ、密度差によって対流が発生することから起こる。
そして、最終的に得られた圧電体膜は、コーヒーステイン現象により、図1(E)に示すように、その端部の膜厚と中心部とで顕著な膜厚ムラが生じる。なお、図1(E)は得られた圧電体膜の端部から中心部分の断面を拡大して示した図である。
加えてゾル−ゲル膜を乾燥する工程時は、スピンコート法と同様にホットプレート、ランプアニール装置等の加熱手段を使用するが、この際、圧電体膜のパターン周囲に存在する金属膜面への蓄熱・伝熱効果により乾燥がより促進される。このため、上述の膜厚ムラが顕著になるという問題があった。係る圧電体膜を用いて電気−機械変換素子とした場合、電気−機械変換素子の電気特性に不具合を生じることとなる。
前記課題に対し、インクジェット方式で使用するゾル−ゲル液に、高沸点の溶媒を添加することで、ゾル−ゲル膜端部の蒸気濃度を上げ、自然乾燥の速度を抑制する方法が提案されている。しかし、係る方法でもコーヒーステイン現象の発生を十分には抑制できていなかった。
上記従来技術の問題に鑑み、本発明は膜厚ムラを抑制し、かつ、生産性に優れた圧電体膜の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、基板上に設けられた第1の電極表面にインクジェット方式によりゾル−ゲル液を部分的に塗布しパターン化されたゾル−ゲル膜を形成する工程と、
前記ゾル−ゲル膜を加熱処理することでゾル−ゲル膜を乾燥する工程と、を有しており、
前記ゾル−ゲル膜を乾燥する工程は、ゾル−ゲル膜の加熱温度を、室温から予め規定した変更点温度Tまで、第1の昇温レートにより昇温する第1の昇温工程と、
前記変更点温度Tに到達後、昇温レートを第2の昇温レートに変更し、ゾル−ゲル膜の加熱温度をゾル−ゲル膜の乾燥温度まで昇温する第2の昇温工程と、を有し、
前記変更点温度Tは、前記ゾル−ゲル液の主溶媒の沸点Tbpとの間で、Tbp−23≦T≦Tbp+23の関係を満たし、
前記第1の昇温レートの1分当たりの昇温レートは、前記ゾル−ゲル液の主溶媒の沸点の45%以下であり、
前記第1の昇温レートは、前記第2の昇温レートよりも遅いことを特徴とする圧電体膜の製造方法を提供する。
本発明によれば、膜厚ムラを抑制し、かつ、生産性に優れた圧電体膜の製造方法を提供することが可能になる。
コーヒーステイン現象の説明図 従来の乾燥工程における第1の電極上に着弾した液滴内の流れを示したモデル図 本発明の第1の実施形態に係る第1の電極表面の表面改質方法の説明図 本発明の第1の実施形態に係るゾル−ゲル液の塗布に使用可能な産業用インクジェット描画装置の説明図 本発明の第1の実施形態に係る、圧電体膜の製造フロー例の説明図 本発明の第1の実施形態に係る圧電体膜の製造工程の説明図 本発明の第3の実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成の説明図 本発明の第3の実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成の説明図 本発明の第4の実施形態に係るインクジェットプリンタの構成の斜視説明図 本発明の第4の実施形態に係るインクジェットプリンタの機構部の側面説明図 本発明の実施例1においてインクジェット方式により形成する圧電体膜パターンの説明図 本発明の実施例1に係る電気−機械変換素子のP−Eヒステリシス曲線
以下に、発明を実施するための形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[第1の実施形態]
以下、本発明の圧電体膜の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の圧電体膜の製造方法は、基板上に設けられた第1の電極表面にインクジェット方式によりゾル−ゲル液を部分的に塗布しパターン化されたゾル−ゲル膜を形成する工程と、ゾル−ゲル膜を加熱処理することでゾル−ゲル膜を乾燥する工程と、を有する。
そして、ゾル−ゲル膜を乾燥する工程は、以下の第1の昇温工程、第2の昇温工程を有することができる。第1の昇温工程は、ゾル−ゲル膜の加熱温度を、室温から予め規定した変更点温度Tまで、第1の昇温レートにより昇温する工程とすることができる。また、第2の昇温工程は、変更点温度Tに到達後、昇温レートを第2の昇温レートに変更し、ゾル−ゲル膜の加熱温度をゾル−ゲル膜の乾燥温度まで昇温する工程とすることができる。
この際、変更点温度Tは、ゾル−ゲル液の主溶媒の沸点Tbpとの間で、Tbp−23≦T≦Tbp+23の関係を満たしていることが好ましい。第1の昇温レートの1分当たりの昇温レートは、ゾル−ゲル液の主溶媒の沸点の45%以下であることが好ましい。さらに、第1の昇温レートは、第2の昇温レートよりも遅いことが好ましい。
各工程について以下に説明する。
まず、基板上に設けられた第1の電極表面にインクジェット方式によりゾル−ゲル液を部分的に塗布し、パターン化されたゾル−ゲル膜を形成する工程について説明する。
本工程は、インクジェット方式により圧電体膜の前駆体であるゾル−ゲル液を、目的とする圧電体膜のパターンに応じて基板上に設けられた第1の電極表面に部分的に塗布し、ゾル−ゲル膜を形成する工程である。
インクジェット方式によりゾル−ゲル液を部分的に塗布する方法については特に限定されるものではなく、前処理工程を行うことなく、第1の電極上に直接インクジェット方式により塗布することもできる。しかし、微細なパターン形成を行ったり、ゾル−ゲル液が目的以外の部分に付着したりしないようにするため、ゾル−ゲル液を塗布する前に前処理工程を行うことが好ましい。
ここで、前処理工程の構成例について説明する。
前処理工程としては、例えば基板上に設けられた第1の電極表面を部分的に表面改質する工程(以下、「表面改質工程」とも記載する)を有することが好ましい。表面改質工程としては、例えば第1の電極表面を部分的に表面改質することにより、第1の電極表面の濡れ性を制御するものであることが好ましい。表面改質工程を行うことにより、第1の電極表面に表面エネルギーのコントラストを設けることができ、ゾル−ゲル液を塗布した際、ゾル−ゲル液が濡れ広がるのは親水性の領域のみとなるため、容易に塗り分けることが可能となる。すなわち、表面改質工程を行うことにより、ゾル−ゲル液を第1の電極表面に塗布する際、所望の場所にのみに塗布することが容易に行えるようになる。
このため、例えば、形成するゾル−ゲル膜(圧電体膜)の形状にあわせて第1の電極表面について予め表面改質を行うことが好ましい。この場合、表面改質を行う部分としては、ゾル−ゲル膜を形成する部分、ゾル−ゲル膜を形成しない部分のどちらを表面改質してもよく、表面改質後の表面特性に応じて選択することができる。
第1の電極表面の濡れ性を制御する方法としては、例えば疎水性または親水性の液体、膜を第1の電極表面に塗布、成膜する等の方法により行うことができる。
具体的には、例えば、以下に示すアルカンチオールの特定金属上に自己配列する現象を利用する方法が挙げられる。
具体的な操作例について図3を用いて説明する。
アルカンチオールは、白金族の金属表面上にSAM膜を形成する特性があることから、基板31上に、白金や白金族金属またはその合金によって構成される第1の電極32を形成したものを用意する(図3(A))。
そして、第1の電極を形成した基板ごとアルカンチオール液にディップすることでSAM処理を行うと、第1の電極32表面にSAM膜(自己組織化単分子膜)33が形成される(図3(B))。SAM膜33にはアルキル基が配置されることから、基板上の第1の電極表面の全面が疎水性になる。
次に、これをフォトレジスト34、フォトマスク35を用いたフォトリソグラフィー法により、所定の開口部を有するフォトレジスト34を形成するフォトリソグラフィー工程を行う。フォトリソグラフィー工程後、エッチング工程により、SAM膜を所望の圧電体膜の形状に合わせてパターニングを行う(図3(C))。この際、例えば、酸素プラズマや、UV光を照射することによってSAM膜のエッチングを行うことができる。
フォトリソグラフィー工程でフォトレジスト34が残った領域は、レジスト剥離後もパターン化SAM膜が残り、この領域では疎水性が保たれる。一方、フォトリソグラフィー工程でレジスト除去された領域は、エッチング工程により第1の電極表面のSAM膜が除去されるため、親水性となる(図3(D))。
前処理工程として、以上説明したような表面改質工程を行うことにより、第1の電極表面を部分的に表面改質することができ、ゾル−ゲル液を容易に、また、正確に目的とする第1の電極表面の部分に塗布することが可能になる。
なお、表面改質工程の例として、白金族の電極を用いた例で説明したが係る形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例とすることもできる。
本変形例では基板上に形成する第1の電極としてニッケル酸ランタン(LNO)を用いる。この場合、LNO膜の下に予め白金膜を成膜しておく。このLNO膜をフォトリソグラフィー工程およびエッチング工程で予め目的とする圧電体膜形状にパターニングすることで、LNO膜が除去され白金膜が露出する領域とLNO膜が残留する領域の両者を形成する。この基板をSAM処理(基板ごとアルカンチオール液にディップ)すると、白金膜上にのみにSAM膜が形成され撥水性となる一方、LNO上はSAM膜が形成されないため親水性となる。よってインクジェット方式によるゾル−ゲル液の塗り分けが可能となる。
次に、基板上に設けられた第1の電極表面にインクジェット方式によりゾル−ゲル液を部分的に塗布しパターン化されたゾル−ゲル膜を形成する工程(以下、「ゾル−ゲル膜形成工程」とも記載する)について具体的に説明する。
インクジェット方式によるゾル−ゲル液の塗布には、例えば図4に示すような一般的な産業用インクジェット描画装置40を用いることができる。
図4に示す産業用インクジェット描画装置40は、架台41上に、ゾル−ゲル液を塗布する対象物である基板42を固定するステージ43が備えられており、ステージ43には、基板をY方向に移動させることが可能なY軸駆動手段44が備えられている。
そして、基板42に対してゾル−ゲル液を塗布するのは基板42に対向するように設けられたインクジェットヘッド45である。インクジェットヘッド45はゾル−ゲル液供給用パイプ46に接続され、図示しない制御部からの信号により、ゾル−ゲル液を基板42に対して供給、塗布する。インクジェットヘッド45は、ヘッドベース47に固定されており、ヘッドベース47は、X軸支持部材48に設けられたX軸駆動手段49に接続されており、X方向に移動させることが可能になっている。このため、架台41側に設けられたY軸駆動手段44とあわせてインクジェットヘッド45を基板42上の所望の位置に移動させることができる。
係る産業用インクジェット描画装置40により、予めインクジェット描画装置の制御部にインプットされた圧電体膜のパターン画像を基に、インクジェットヘッド45からゾル−ゲル液滴を圧電体膜パターン形成箇所のみに着弾させパターンを塗布することができる。
なお、本プロセスで使用するゾル−ゲル液は、インクジェットヘッド45で塗布可能なように予め粘度、表面張力を調整していることが好ましい。また、一度の成膜で得られる膜厚は50〜100nm程度が好ましく、ゾル−ゲル液濃度は成膜面積とゾル−ゲル液の塗布量の関係から適正化されていることが好ましい。
用いるゾル−ゲル液としては特に限定されるものではなく、成膜後、圧電性を示す材料であれば用いることができる。
例えば、成膜した際にPZTとなる材料や、ランタン添加ジルコン酸チタン酸鉛(PLZT)、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN)、チタン酸バリウム(BT)等の様々な圧電セラミック材料となる原料溶液を用いることができる。
なお、ここでいうPZTとは、ジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)の固溶体で、その比率により特性が異なるが、その比率についても限定されるものではなく、要求される圧電性能等に応じて選択することができる。中でもPbZrOとPbTiOの比率(モル比)が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)Oで表わされるPZT(PZT(53/47)とも示される)は、特に優れた圧電特性を示すことから好ましく用いることができる。
次に、ゾル−ゲル膜を乾燥する工程(以下「乾燥工程」とも記載する)について説明する。
本実施形態においては、ゾル−ゲル膜を乾燥する工程は、以下の第1の昇温工程、第2の昇温工程を有することができる。第1の昇温工程は、ゾル−ゲル膜の加熱温度を、室温から予め規定した変更点温度まで、第1の昇温レートにより昇温する工程とすることができる。また、第2の昇温工程は、変更点温度に到達後、昇温レートを第2の昇温レートに変更し、ゾル−ゲル膜の加熱温度をゾル−ゲル膜の乾燥温度まで昇温する工程とすることができる。すなわち、乾燥工程においては、昇温レートの水準の異なる二種類の乾燥温度で段階的に乾燥させることができる。
上記従来技術で述べたように、インクジェット方式でゾル−ゲル液を塗布した場合、塗布するゾル−ゲル液の量が微量のため、従来、乾燥工程においていわゆるコーヒーステイン現象が発生することがあった。この場合、圧電体膜パターンの端部と中心部とで極端な膜厚ムラを生じるため、例えば電気−機械変換素子とした場合に、その電気特性に不具合を生じるという問題があった。そして、コーヒーステイン現象は、乾燥工程においてゾル−ゲル膜内で溶質濃度の偏差が発生し、パターン端部では溶媒の蒸気濃度が低くなるために生じていると考えられる。
そこで、本発明の発明者らが検討したところ、昇温レートの異なる第1の昇温レート及び第2の昇温レートによりゾル−ゲル膜の加熱温度を昇温し、段階的に乾燥することにより、ゾル−ゲル膜形成領域内で溶媒の蒸気濃度分布を小さくできることを見出した。このため、熱処理時に良好な焼成状態を得ることができ、乾燥の不均一による膜厚のバラツキが抑制され、コーヒーステイン現象の発生を抑制できると共に、乾燥工程の所要時間を短縮し生産性が向上することを見出した。
そして、乾燥工程において、第1の昇温レートから第2の昇温レートに変更する変更点温度は、ゾル−ゲル液を構成する主溶媒の沸点付近であることが好ましい。また、第1の昇温レートの1分当たりの昇温レートは、ゾル−ゲル液の主溶媒の沸点の45%以下であることが好ましく、第1の昇温レートは、第2の昇温レートよりも遅いことが好ましい。
まず、変更点温度について説明する。
変更点温度がゾル−ゲル液を構成する主溶媒の沸点付近よりも大幅に低い場合、ゾル−ゲル液中の溶媒成分の蒸発が進まない状態で、第1の昇温レートより昇温レートが速い第2の昇温レートに切り替わることとなる。この場合、第2の昇温レートに変更後は、ゾル−ゲル膜の乾燥温度到達まで昇温レートが速くなるため、パターン化ゾル−ゲル膜内で溶質濃度偏差が大きくなり、パターン端部の溶媒の蒸気密度が低くなるため、コーヒーステイン現象が発生する場合がある。
一方、変更点温度が、ゾル−ゲル液を構成する主溶媒の沸点付近よりも大幅に高い場合、既にゾル−ゲル液中の溶媒成分のほとんどが蒸発して久しい時点で、第1の昇温レートより昇温レートが速い第2の昇温レートに切り替わる。すなわちコーヒーステイン現象が発生しない環境になっているにもかかわらず、ゾル−ゲル液を構成する主溶媒の沸点を過ぎても第2の昇温レートより遅い第1の昇温レートで加熱を進めることになる。このため、乾燥工程にかかる時間が長くなり、生産性が低下する場合がある。
このため、変更点温度は、ゾル−ゲル液を構成する主溶媒の沸点付近とすることが好ましい。特に、変更点温度Tは例えば、ゾル−ゲル液の主溶媒の沸点Tbpとの間でTbp−23≦T≦Tbp+23の関係を満たすことが好ましく、Tbp−20≦T≦Tbp+20の関係を満たすことがより好ましい。Tbp−10≦T≦Tbp+10の関係を満たすことがさらに好ましい。
次に、第1の昇温レートについて説明する。
第1の昇温レートは上述のように、第1の昇温レートの1分当たりの昇温レート(昇温速度)がゾル−ゲル液の主溶媒の沸点の45%以下であることが好ましい。これは、第1の昇温レートの1分当たりの昇温レートが、前述のゾル−ゲル液を構成する主溶媒の沸点の45%より速い場合、ゾル−ゲル液膜パターン端部で微量液体から蒸発する溶媒の蒸気濃度が低くなり、乾燥が早くなる場合がある。このため、コーヒーステイン現象が発生する場合があるためである。
特に第1の昇温レートは、第1の昇温レートの1分当たりの昇温レートが、ゾル−ゲル液の主溶媒の沸点の25%以下であることがより好ましい。第1の昇温レートの1分当たりの昇温レートをゾル−ゲル液の主溶媒の沸点の25%以下とすることにより、コーヒーステイン現象の発生をより確実に防止することができる。
なお、ここで述べている主溶媒とは、ゾル−ゲル液中に含まれる溶媒のうち体積を基準にみたときに含有量のもっとも多い溶媒のことを意味している。
また、第1の昇温レートの下限値は特に限定されるものではないが、例えば第1の昇温レートの1分当たりの昇温レートが主溶媒の沸点の8%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。第1の昇温レートを上記範囲から選択することにより、コーヒーステイン減少の発生を抑制し、生産性の更なる向上を図ることができる。そして、パターン内中央部膜厚をより確実に端部膜厚以下とすることができる。
次に、第1の昇温レートと、第2の昇温レートとの関係について説明する。
上述のように、加熱温度を室温から変更点温度まで昇温する際の第1の昇温レートが所定の範囲にあることにより、コーヒーステイン現象の発生を抑制することができる。そして、加熱温度が変更点温度まで到達した際には、ゾル−ゲル液を構成する主溶媒成分の多くが蒸発しているため、変更点温度よりも高い温度においては、昇温レートが速くなってもコーヒーステイン現象は起こりにくくなっていると考えられる。むしろ、変更点温度から乾燥温度到達まで使用する第2の昇温レートが、室温から変更点温度まで使用する第1の昇温レートよりも遅い場合、ゾル−ゲル液の主溶媒成分が蒸発した後、乾燥温度到達までにかかる時間が延びることになる。このため、タクトタイムが落ちるという問題がある。このため、上述のように、第1の昇温レートは、第2の昇温レートよりも遅いことが好ましい。
なお、第1の昇温レートと第2の昇温レートが同じ、すなわち昇温レートが同水準の一種類の昇温レートで単調に乾燥させる場合、これも前述と同じように、既にゾル−ゲル液中の溶媒成分のほとんどが蒸発した後も同じ昇温レートで乾燥することとなる。このため、乾燥工程の所要時間が延びて生産性が低下するため好ましくない。
以上の事由により、第1の昇温レート及び第2の昇温レートや、変更点温度を適切に選択することにより、熱処理時に良好な焼成状態を効率的に得ることができる。このため、乾燥の不均一による膜厚のバラツキが抑制され、コーヒーステイン現象の発生を抑制できる。加えて乾燥工程の時間を短縮し、生産性を向上することが可能になる。
なお、乾燥工程で使用される、第1の昇温レートから第2の昇温レートへの変更点温度に到達後の保持時間、及び、最終的な乾燥温度に到達後の保持時間については特に限定されるものではない。例えば、変更点温度または乾燥温度に到達後、任意の時間保持することもできるが、昇温過程のみで十分に溶媒を除去できる場合には、前記昇温レートの変更点温度ならびに最終的な乾燥温度に到達後、温度を保持する必要はない。
また、乾燥温度についても特に限定されるものではない。ゾル−ゲル液に含まれる溶媒を十分に除去できる温度であれば良く、例えばゾル−ゲル液に含まれる溶媒のうち最も沸点の高い溶媒の沸点を乾燥温度とすることができる。
また、ゾル−ゲル膜を乾燥する工程(乾燥工程)の後に、ゾル−ゲル膜を熱分解する工程および/またはゾル−ゲル膜を結晶化する工程を行うことができる。
ゾル−ゲル膜を熱分解する工程(以下、「熱分解工程」とも記載する)とは、溶媒成分が除去されたゾル−ゲル膜中の有機物を除去し、圧電体膜(例えばPZT膜)のパターンを形成する工程である。また、ゾル−ゲル膜を結晶化する工程(以下、「結晶化工程」とも記載する)とは、熱分解を経た圧電体膜をさらに高温で焼結、結晶化させる工程である。
ゾル−ゲル膜を熱分解する工程および/またはゾル−ゲル膜を結晶化する工程を行うことによって、ゾル−ゲル膜を全て圧電体に変化させることができ、圧電体として、十分な性能を発揮させることが可能になる。また、上記工程は両方の工程とも実施することが好ましい。
熱分解工程、結晶化工程については乾燥工程で昇温した温度(到達した温度)、すなわち、例えば乾燥温度から連続的に行うこともできる。また、乾燥工程後、乾燥温度から一旦冷却した後、それぞれの設定温度に昇温し、実施することもできる。
熱分解工程、結晶化工程については、昇温速度、最終到達温度については特定されるものではなく、ゾル−ゲル液(膜)中に含まれる成分等により選択することができる。
以上、説明した工程により、圧電体膜を形成することができるが、インクジェット法により液滴を1回塗布し、作製した圧電体膜では目的とする膜厚を得られない場合がある。この場合、上記した圧電体膜の製造方法を繰り返し行うことにより、所望の膜厚の圧電体膜とすることができる。
上記した圧電体膜の製造方法を繰り返し行う場合、繰り返す工程、組み合わせは任意に選択することができる。
図5に圧電体膜の製造を繰り返し行う場合の操作フロー例を示す。図5中(a)、(b)、(c)の矢印は工程の繰り返しを意味しており、以下に説明するように任意に、また、任意のタイミングで繰り返しを行うことができる。
図5に示した操作フローにおいては、第1の電極を設けた基板を用意する工程(S50)を開始点とし、圧電体膜の成膜工程が終了(S55)した点を終了点として記載している。そして、ゾル−ゲル膜形成工程(S51)、乾燥工程(S52)、熱分解工程(S53)、結晶化工程(S54)を有している。
まず、第1の例としては、乾燥工程(S52)、熱分解工程(S53)、結晶化工程(S54)の何れかの工程後の任意のタイミングで繰り返しを行うことが挙げられる。
例えば、まず、ゾル−ゲル膜形成工程(S51)と、乾燥工程(S52)のみを所定回繰り返しゾル−ゲル膜を複数層積層する(図5中(a)の矢印)。そして、任意のタイミングで、熱分解工程(S53)を行い、さらに結晶化工程(S54)を行うことができる。場合によっては結晶化工程(S54)の後、さらに同様にして繰り返しを行うことができる。すなわち、ゾル−ゲル膜形成工程(S51)に戻り(図5中(c)の矢印)、ゾル−ゲル膜形成工程(S51)と、乾燥工程(S52)を所定回繰り返した後、さらに熱分解工程(S53)、結晶化工程(S54)を行うこともできる。
また、その変形例としては、ゾル−ゲル膜形成工程(S51)と、乾燥工程(S52)、熱分解工程(S53)を所定回繰り返してゾル−ゲル膜を積層する(図5中(b)の矢印)。そして、任意のタイミングで、結晶化工程(S54)を行うことができる。場合によってはその後さらに、ゾル−ゲル膜形成工程(S51)に戻り(図5中(c)の矢印)、ゾル−ゲル膜形成工程(S51)と、乾燥工程(S52)、熱分解工程(S53)を繰り返し行い、さらに結晶化工程(S54)を行うこともできる。
第2の例としては、ゾル−ゲル膜形成工程(S51)、乾燥工程(S52)、熱分解工程(S53)、結晶化工程(S54)をこの順で繰り返し行い成膜、積層する(図5中(c)の矢印)方法が挙げられる。
なお、ゾル−ゲル膜形成工程(S51)において、上述した前処理工程についてもゾル−ゲル膜形成工程(S51)を行う際に、併せて繰り返し実施することができる。
ここでは繰り返しゾル−ゲル膜を成膜する際の前処理工程の操作手順の構成例について、上記と同じアルカンチオールを用いた場合を例に以下に説明する。
上述の様に、2回目以降の前処理工程についても1回目と同様に行うことができる。ただし、圧電体膜として例えばPZT膜を形成した場合、アルカンチオール液への基板ごとのディップによるSAM処理を実施しても、SAM膜は酸化物薄膜であるパターン化PZT圧電体膜上には形成されない。すなわちSAM処理後でもPZT圧電体膜上は親水性が保たれている。このため、PZT圧電体膜パターン外に露出している例えば白金や白金族金属またはその合金から構成される第1の電極上のみにSAM膜が形成され疎水性となるため、SAM膜のパターニング工程を省略でき、プロセスの簡便化が可能である。なお、圧電体膜の材質等によっては1回目と同様にしてSAM膜のパターニング工程を行うこともできる。
図6を用いて具体的に説明する。
図6(D)は、図3(D)の状態と同じ状態を示しており、基板31上に設けられた第1の電極32上には、開口部を有するSAM膜が形成されている。このため、親水性の部分50と、疎水性の部分51とが形成されている。
次に図6(E)では、インクジェット方式によりゾル−ゲル液を部分的に塗布しパターン化されたゾル−ゲル膜を形成する工程を行っている。図中インクジェットヘッド52から、ゾル−ゲル液が塗布され、図6(D)における親水性の部分50に、ゾル−ゲル膜53が形成される。
図6(F)では、形成されたゾル−ゲル膜について乾燥工程、引き続いて熱分解工程を行い圧電体膜54とする。この際、加熱されることによりSAM膜も除去される。なお、上述のように熱分解工程まで行わずに乾燥工程のみとすることもできる。
そして、図6(D´)〜図6(F´)は、繰り返し行っている様子を示している。
図6(D´)では、図6(F)で得られた、圧電体膜54を有する基板をアルカンチオール液に基板ごとディップした状態を示している。上記の様に、圧電体膜54上にはSAM膜が形成されないため、図3(B)、(C)の工程を経ずに、開口部を有するSAM膜を形成することができる。
その後、図6(E´)、(F´)は図6(E)、(F)の工程と同様にしてゾル−ゲル膜53´を形成し、例えば乾燥工程、熱分解工程を行うことにより圧電体膜54´を形成することができる。さらに、同様に図6(D´)〜図6(F´)を所定回繰り返して圧電体膜を積層することができる。
以上に説明した方法により繰り返し圧電体膜を形成、積層することによって、所望の厚さの圧電体膜を形成できる。具体的には、例えば圧電体膜の膜厚が5μmの厚さまで形成できる。
なお、繰り返し圧電体膜を形成する場合でも、上述のゾル−ゲル膜を乾燥する工程と同様にして乾燥工程を行うことが好ましい。すなわち、乾燥工程は、第1の昇温工程と、第2の昇温工程とを有し、第1の昇温工程と、第2の昇温工程により室温から乾燥温度まで昇温し、ゾル−ゲル膜を乾燥することが好ましい。
これは、所望の圧電体膜厚が厚くなるほど、乾燥工程を繰り返す回数が増加することになるため、上述の乾燥工程の手順により実施することによって乾燥工程に要する時間を随時短縮することができる。このため、圧電体膜形成の全工程におけるタクトタイムの短縮に大きな効果をもたらし、生産性をより向上させることが可能となるためである。
また、各回のゾル−ゲル膜を乾燥する工程においては、ゾル−ゲル膜形成領域内で溶媒の蒸気濃度分布が制御されるため、コーヒーステイン現象の発生を抑制し、乾燥の不均一による膜厚のバラツキも抑制される。このため、圧電体膜の膜厚ムラを抑制することが可能となる。この結果、前記プロセスを繰り返すことで形成される圧電体膜も所望の形状となり、電気特性が良好な高品質デバイスを提供することができる。
[第2の実施形態]
以下、本発明の電気−機械変換素子の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の電気−機械変換素子の製造方法は、第1の実施形態で説明した圧電体膜の製造方法により得られた圧電体膜上に、第2の電極を配置する工程を有することができる。
圧電体膜上に第2の電極を配置する工程としては特に限定されるものではなく、スパッタ法等により圧電体膜上に第2の電極を形成することができる。
また、第2の電極の材料としては特に限定されるものではなく、第1の電極と同じ材料により構成することもできるし、異なる材料とすることもできる。具体的には、例えば、第2の電極としては、白金等の白金族金属やその合金、また、例えば導電性酸化物等も用いることができる。
本実施形態の電気−機械変換素子の製造方法により得られた電気−機械変換素子は、構成する圧電体膜の膜厚ムラが抑制されている為、電気特性が良好な電気−機械変換素子とすることができる
[第3の実施形態]
以下、本発明の液体吐出ヘッドの一実施形態について説明する。
本実施形態の液体吐出ヘッドは、第2の実施形態で説明した電気−機械変換素子の製造方法により得られた電気―機械変換素子を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッドとすることができる。その構造について、図7、図8を用いて説明する。なお、図7に示す液体吐出ヘッド60は1ノズルの構成の一例の概略図であり、図8は図7に示した1ノズルの液体吐出ヘッド60を複数個配列して形成された液体吐出ヘッド67の概略を示したものである。
図7、図8には、液滴を吐出するノズルと、ノズルが連通する加圧室と、加圧室の壁の一部を構成する振動板と、振動板上に形成された第2の実施形態で説明した電気−機械変換素子と、を有する液体吐出ヘッドを示している。
液体吐出ヘッド60の構成について図7を用いて具体的に説明する。
液体吐出ヘッド60は、インク等の液体(以下、「インク」という)を収容するインク室である加圧室(圧力室)61を有しており、加圧室61は、例えば電気−機械変換素子66が形成されている基板64をエッチングして形成することができる。そして、加圧室61内の液体を昇圧させる吐出駆動手段として、加圧室の壁の一部を振動板65で構成し、振動板65に電気−機械変換素子66が配置されている。係る電気−機械変換素子66としては上述のように第2の実施形態で説明した電気−機械変換素子を用いることが好ましい。さらに、加圧室61内のインクを液滴状に吐出するインク吐出口としてのノズル孔であるノズル62を備えたインクノズルとしてのノズル板63とを有している。
液体吐出ヘッド60が液滴を吐出するメカニズムとしては、第1の電極(下部電極)661、第2の電極(上部電極)663に給電されることで圧電体膜(電気−機械変換膜)662に応力が発生し、これによって振動板(振動板)65を振動させる。そして、この振動に伴って、ノズル62から加圧室61内のインクを液滴状に吐出するようになっている。なお、加圧室61内にインクを供給するインク供給手段である液体供給手段、インクの流路、流体抵抗についての図示及び説明は省略している。
また、図8は上述のように、図7を用いて説明した液体吐出ヘッド60を複数個配列して形成した液体吐出ヘッド67となる。
本実施形態の液体吐出ヘッドにおいては、第2の実施形態で説明した、圧電体膜の膜厚ムラが抑制され、電気特性が良好な電気−機械変換素子を用いているため、インク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られる。
また、電気−機械変換素子が簡便な構造を有しており、かつバルクセラミックスと同等の性能を持つ、さらに、その構成上、圧力室形成のための裏面からのエッチング除去、ノズル孔を有するノズル板を接合することで容易に液体吐出ヘッドとすることができる。
[第4の実施形態]
以下、本発明のインクジェットプリンタの一実施形態について説明する。
本実施形態のインクジェットプリンタは、第3の実施形態で説明した液体吐出ヘッドを備えた構成とすることができる。
インクジェットプリンタの具体的な構成例について図9、図10を用いて説明する。なお、図9はインクジェットプリンタの斜視説明図、図10はインクジェットプリンタの機構部の側面説明図をそれぞれ示している。
本実施形態のインクジェットプリンタ(記録装置本体)70は、内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ71、キャリッジ71に搭載した第3の実施形態で説明した液体吐出ヘッドを備えたインクジェットヘッドである記録ヘッド80を有している。そして、記録ヘッド80へインクを供給するインクカートリッジ72等で構成される印字機構部73等を収納している。また、インクジェットプリンタ70の下方部には前方側から多数枚の用紙74を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)75を抜き差し自在に装着することができる。
また、用紙74を手差しで給紙するための手差しトレイ76を開倒することができ、給紙カセット75或いは手差しトレイ76から給送される用紙74を取り込み、印字機構部73によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ77に排紙する。
印字機構部73は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド78と従ガイドロッド79とでキャリッジ71を主走査方向に摺動自在に保持している。上述のように、キャリッジ71には各色のインク滴を吐出する第3の実施形態で説明した液体吐出ヘッドを備えた記録ヘッド80を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向にインク滴吐出方向を下方に向けて配列している。キャリッジ71には例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各職のインク滴を吐出する記録ヘッド80を設けることができる。
またキャリッジ71には記録ヘッド80に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ72を交換可能に装着することができる。インクカートリッジ72は上方に大気と連通する大気口、下方には記録ヘッド80へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有した構成とすることができる。この場合、多孔質体の毛管力により液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド80を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
キャリッジ71は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド78に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド79に摺動自在に載置している。キャリッジ71を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ81で回転駆動される駆動プーリ82と従動プーリ83との間にタイミングベルト84を張装し、このタイミングベルト84をキャリッジ71に固定している。そして、主走査モータ81の正逆回転によりキャリッジ71が往復駆動される。
一方、給紙カセット75にセットした用紙74を記録ヘッド80の下方側に搬送するために、まず、給紙カセット75から用紙74を分離給装する給紙ローラ85及びフリクションパッド86を有している。さらに、用紙74を案内するガイド部材87と、給紙された用紙74を反転させて搬送する搬送ローラ88と、この搬送ローラ88の周面に押し付けられる搬送コロ89及び搬送ローラ88からの用紙74の送り出し角度を規定する先端コロ90とを設けている。搬送ローラ88は副走査モータ91によってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ71の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ88から送り出された用紙74を記録ヘッド80の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材92を設けている。印写受け部材92の用紙搬送方向下流側には、用紙74を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ93、拍車94を設けている。さらに用紙74を排紙トレイ77に送り出す排紙ローラ95及び拍車96と、排紙経路を形成するガイド部材97、98とを配設している。
記録時には、キャリッジ71を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド80を駆動することにより、停止している用紙74にインクを吐出して1行分を記録し、用紙74を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙74の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙74を排紙する。
また、図9中、キャリッジ71の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド80の吐出不良を回復するための回復装置99を配置している。回復装置99はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ71は例えば印字待機中にはこの回復装置99側に移動してキャッピング手段により記録ヘッド80のキャッピングを行い、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止することができる。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で記録ヘッド80の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等をクリーニング手段により除去し吐出不良を回復できる。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持することができる。
そして、本実施形態のインクジェット記録装置は、第3の実施形態で説明した液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を搭載している。該液体吐出ヘッドは、既に説明したように、液体吐出ヘッドを構成する電気−機械変換素子の圧電体膜の膜厚ムラが抑制されており、電気特性が良好な電気−機械変換素子を用いているため、電気−機械変換素子振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がない。このため、本実施形態のインクジェット記録装置は安定したインク滴吐出特性が得られ、画像品質を向上することができる。
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1、2]
本実施例においては、以下の手順により圧電体膜、電気−機械変換素子を形成し、その特性の評価を行った。
製造手順について、図3、図6、図11を用いて説明する。
まず、図3(A)に示すように、シリコン基板31表面にスパッタ法により白金からなる第1の電極(下部電極)32が成膜した部材を用意した。
次いで、図3(B)に示すようにシリコン基板31上の第1の電極32(白金)の表面全体にSAM膜33を形成した。SAM膜33はアルカンチオール液に基板ごとディップして自己配列させることで得た。アルカンチオール液はドデカンチオールCH(CH11−SHを使用した。
図3(C)に示すように、圧電体膜を形成する部分のSAM膜を除去し、かつ必要部分のSAM膜を保護するためにフォトリソグラフィー法により、フォトマスク35を用いてフォトレジスト34をパターニングした(フォトリソグラフィー工程)。なお、この際、図11に示すパターン110になるようにパターニングを行った。
そして、図11中、圧電体膜パターン111で表わされる部分についてシリコン基板の上面側から、酸素プラズマを基板表面側に照射することにより、圧電体膜パターンを形成する部分のSAM膜を除去して親水性とした(エッチング工程)。
図3(D)に示すようにフォトレジスト34を剥離した。ここまでの工程により形成されたSAM膜の純水に対する接触角は110度となり疎水性を示し、SAM膜を除去した基板上の第1の電極32(白金)表面の接触角は10度以下となり親水性を示した。
図6(D)に示すように、圧電体膜のパターンが形成される領域、すなわちゾル−ゲル液が塗布される領域50は、塗布前に前記フォトリソグラフィー工程およびエッチング工程にてSAM膜が除去され、表面を親水性の状態とした。一方、前記ゾル−ゲル液が塗布されない領域51は、フォトリソグラフィー工程においてパターニングされず、フォトレジスト34を除去した後でも、疎水性のあるSAM膜が保持されている状態である。
次に図6(E)には、PZT前駆体であるゾル−ゲル液を、インクジェット法により、上記工程で形成したシリコン基板上に形成された第1の電極32(白金)の親水部50に塗布する工程を示す。インクジェット法では、図4で示す一般的な産業用インクジェット描画装置40を用いた。
用いたゾル−ゲル液について説明する。本実施例においては、PZT膜となるゾル−ゲル液を用いた。ゾル−ゲル液は出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水は主溶媒である2−メトキシエタノール(沸点:124℃)に溶解後、脱水した。そして、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解した2−メトキシエタノール溶液と混合することでゾル−ゲル液を合成した。この際、上記各溶液を、ゾル−ゲル液中に含まれる金属種のモル比がPb:Zr:Ti=115:53:47になるように混合してある。なお、上記金属種のモル比において、鉛添加量は、目的とする化学両論組成に対して15mol%過剰としてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。また、合成されたゾル−ゲル液には、メトキシエタノールより高沸点であるジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:194.1℃)および1−ノナノール(沸点:213℃)を添加した。なお、1回の成膜で得られる圧電体の膜厚が80nm〜90nm程度になるように、ゾル−ゲル液中のPZT濃度を0.2mol/Lに調整した。
インクジェット方式により形成する圧電体膜パターン111は図11に示すように、幅50μm、長さ1000μmの長尺パターンとし、幅方向に1:1ピッチ(パターン幅とパターン間のスペース幅を同じ50μmとした)で配列させた。なお、幅方向とは図11中、矢印112で表わされる方向のことを意味している。
そして、図6(E)に示すように、例えば産業用インクジェット描画装置のインクジェットヘッド52によりゾル−ゲル液を第1の電極32表面に塗布した。この際、第1の電極32表面の接触角のコントラストのためゾル−ゲル液は親水部50のみに広がり圧電体膜パターン111に対応したゾル−ゲル膜を形成する。
そして、得られたゾル−ゲル膜について第一の加熱工程、すなわち乾燥工程を行った。乾燥工程は、ホットプレートによる基板下面加熱により、まず第1の昇温工程として室温から変更点温度である124℃まで温度上昇させて行った。この場合、変更点温度はゾル−ゲル液の主溶媒である2−メトキシエタノールの沸点と同じ温度に設定した。使用した第1の昇温レートは表1に示すように、実施例1では30℃/min、実施例2では56℃/minとした。第1の昇温レートの1分あたりの昇温レート(昇温速度)は、主溶媒である2−メトキシエタノールの沸点(124℃)に対して、実施例1では24%、実施例2では45%であった。
変更点温度である124℃に到達した後は1分間保持し、続いて第2の昇温レートとして、表1に示すように実施例1は60℃/min、実施例2は90℃/minでゾル−ゲル膜の乾燥温度である300℃まで温度上昇させる第2の昇温工程を実施した。
乾燥工程でゾル−ゲル膜を乾燥させた後は第二の加熱工程、すなわち有機物の熱分解処理を行う熱分解工程を温度500℃で実施し、図6(F)に示すような1層目の圧電体膜54(PZT圧電体膜パターン)を得た。得られた1層目の圧電体膜54の膜厚をパターン長手方向の端部/中央部で測定し、圧電体膜54の端部、中央部で測定した膜厚から、膜厚比を算出した。膜厚の測定結果と膜厚比の計算結果を表1に1層目圧電体膜として示す。
表1に示すように膜厚比(端部/中央部)が実施例1では0.96、実施例2では1.21となっており、ほぼ均一な膜厚の圧電体膜が得られていることが確認できた。
その後、引き続き、繰返し工程としてイソプロピルアルコール洗浄後、同様の浸漬処理にてSAM膜を形成した。2回目以降のSAM処理において、SAM膜は酸化膜である圧電体膜54上には形成されないので、フォトリソグラフィー工程を実施せずに図6(D´)に示すようなSAM膜のパターンが得られた。なお、この時の接触角は純水に対して疎水性の部分51であるSAM膜上は105度、親水性の部分50である圧電体膜(PZT膜)54上は25度であった。
そして、図6(E´)に示すように、この状態で1度目に形成した圧電体膜54のパターンに位置合わせを行い、再度、産業用インクジェット描画装置のインクジェットヘッド52によりゾル−ゲル液を塗布した。
図6(F´)に示すように、さらに1回目と同様に、第1の昇温工程、第2の昇温工程を有する二段階の乾燥工程、熱分解工程を実施し、重ね塗りされた圧電体膜(PZT圧電体膜)54´が得られた。なお、乾燥工程の際には、2種類の昇温レート、および第1の昇温レートと第2の昇温レートとの変更点温度について、各実施例共に1回目の塗布後の乾燥工程時と同様とした。
以後もさらに上記繰り返し工程を4回、すなわち既述した2回の工程(1層目と、1回の繰り返し工程)を含めて上記工程を計6回繰り返し、合計6層の圧電体膜を形成した(1回目)。一連のゾル−ゲル液塗布から第二の加熱工程を繰り返すことにより得た6層の圧電体膜について、結晶化処理(温度750℃)をRTA(急速熱処理)装置にて実施した。
なお、後述する比較例1での説明の都合上、この時点を「繰り返し6回塗布(1回目)」と表記する。この時、いずれの実施例でも圧電体膜にクラックなどの不良は生じなかった。
続いて、さらに同様にして上記圧電体膜上に繰り返し6回、圧電体膜の形成を行った(2回目)。すなわち、SAM膜処理→ゾル−ゲル液の塗布→二種類の昇温レートでの乾燥工程(300℃)→500℃での熱分解工程を6回繰り返し行い、7層目から12層目の圧電体膜を形成した。その後1回目の場合と同様に、さらに750℃で結晶化処理をした。結晶化処理後、得られた圧電体膜を確認したがクラックなどの不良は生じなかった。なお、この場合も乾燥工程の際には、2種類の昇温レート、および第1の昇温レートと第2の昇温レートとの変更点温度について、各実施例の1層目のゾル−ゲル液塗布後の乾燥工程時と同様とした。
また、さらに得られた圧電体膜上に繰り返し6回、圧電体膜の形成を行った(3回目)。すなわち、SAM膜処理→ゾル−ゲル液の塗布→二種類の昇温レートでの乾燥工程(300℃)→500℃での熱分解工程を6回繰り返し行い、13層目から18層目の圧電体膜を形成した。その後1、2回目の場合と同様に、さらに750℃で結晶化処理をした。なお、比較例1での説明の都合上、この時点を「繰り返し6回塗布(3回目)」と表記する。また、この場合も乾燥工程の際には、2種類の昇温レート、および第1の昇温レートと第2の昇温レートとの変更点温度について、各実施例の1層目のゾルーゲル液塗布後の乾燥工程時と同様にした。
結晶化完了後、圧電体膜パターン長手方向の端部/中央部で膜厚を測定し、圧電体膜の端部、中央部で測定した膜厚から、膜厚比を算出した。膜厚の測定結果と膜厚比の計算結果を表1に「繰り返し6回塗布(3回目)圧電体膜」として示す。
表1に示した結果から分かるように、パターン長手方向での膜厚差(端部−中央部)は実施例1が−0.1μm、実施例2が+0.3μmであり、膜厚比は実施例1が0.94、実施例2が1.23であった。すなわち、実施例1、2共にパターン内での膜厚ムラがほとんどない良好な圧電体膜が得られることが確認できた。
次に、形成された圧電体膜上に、第2の電極(Pt)をスパッタ法にて成膜しパターニングすることで電気−機械変換素子の形態を成し、電気特性、電気−機械変換能(圧電定数)の評価を行った。電気特性の評価結果を表1に、比誘電率、誘電損失、耐圧として示す。表1によると、実施例1、2で作製した圧電体膜はいずれも、比誘電率、誘電損失、および耐圧共に優れた電気特性を示し、圧電体膜としての機能を持つのに充分な特性を得られた。
また、実施例1、2において得られた圧電体膜はいずれも、残留分極は19.5μC/cm、抗電界は36.5kV/cmであり、通常のセラミック焼結体と同等の特性を持っていることが確認できた。実施例1の電気−機械変換素子のP−Eヒステリシス曲線を図12に示す。
電気−機械変換能は、電界印加による変形量をレーザードップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。評価結果によれば、実施例1、2の圧電定数d31は110〜125pm/Vとなり、こちらもセラミック焼結体と同等の値であった。これは液体吐出ヘッドとして十分設計できうる特性値であった。
また、第2の電極(上部電極)を配置せずに、更なる厚膜化も試みた。
すなわち、SAM膜処理→ゾル−ゲル液の塗布→二種類の昇温レートでの乾燥工程(300℃)→500℃での熱分解工程を6回繰り返した後750℃での結晶化処理を行う操作を合計10回行い、合計60層、厚さが5μmの圧電体膜を形成した。得られた圧電体膜にはクラックなどの欠陥を伴わずに得られることが確認できた。
[実施例3]
乾燥工程において、第1の昇温レートと、第2の昇温レートとの変更点温度を、145℃とした点以外は実施例1と同様にして圧電体膜を作製、評価した。評価結果を表1に示す。
表1によると、1層目の圧電体膜の膜厚比は0.96であり、繰り返し6回塗布(3回目)、すなわち18層の圧電体膜を形成した時点での膜厚比は0.94であった。本比較例では圧電体膜の膜厚ムラはほとんど発生せず、膜厚の構成および電気特性は実施例1と同等となった。
乾燥工程における熱処理時間は実施例1と比較して、1回のゾル−ゲル液の塗布あたりで0.5分長くなり、一連の18回のゾル−ゲル液塗布では、工程全体のタクトタイムが実施例1より9分長くなった。しかし、圧電体膜の製造に要する時間は実施例1の場合と概ね同じであり、十分な生産性を有していることが確認できた。
[比較例1]
乾燥工程において昇温レートを30℃/minとして室温から乾燥温度である300℃まで単一の昇温レートにて温度上昇させて熱処理を実施した以外は実施例1と同様にして実験を行った。
表1に評価結果を示す。表1によると、1層目の圧電体膜の膜厚比は0.96、繰り返し6回塗布(3回目)の圧電体膜、すなわち、合計18層の圧電体膜が積層された圧電体膜でも膜厚比が0.94であった。圧電体膜の膜厚ムラはほとんど発生せず、膜厚の構成および電気特性は実施例1と同等となった。
しかし、乾燥工程における熱処理時間が実施例1と比較して、1回のゾル−ゲル液の塗布あたりで3分長くなった。実施例1と同様の1.5μm程度の膜厚の圧電体膜を作製する場合、繰り返し6回塗布を3回繰り返すため、ゾル−ゲル液の塗布を18回実施することとなる。従って、表1に示すように工程全体のタクトタイムが実施例1よりも54分長くなった。よって実施例1との比較により、生産性が劣る結果となった。
[比較例2]
乾燥工程において、第1の昇温レートと、第2の昇温レートとの変更点温度を100℃とした点以外は実施例1と同様にして圧電体膜を作製、評価した。評価結果を表1に示す。
表1によると比較例2では、1層目の圧電体膜について膜厚比が1.88と実施例1の場合の約2倍弱と大きくなり、コーヒーステイン現象が見られた。
同様にゾル−ゲル液の塗布、乾燥、熱分解を6回繰り返した後、RTA装置にて結晶化処理まで行った時点、すなわち、6層の圧電体膜を形成した時点(繰り返し6回塗布(1回目))で圧電体膜を観察した。すると、本比較例では、コーヒーステイン現象により膜厚が極端に厚くなった圧電体膜の端部にクラックの発生が確認された。
さらに、同様の条件でゾル−ゲル液の塗布、乾燥、熱分解を6回繰り返した後、結晶化工程までを計3回行った時点、すなわち、上記実施例1の繰り返し6回塗布(3回目)に対応する18層の圧電体膜を形成した。得られた圧電体膜について、実施例1の場合と同様に、パターン長手方向の端部/中央部で測定したところ、表1に示すように(端部/中央部)膜厚比が2.0となった。すなわち、コーヒーステイン現象がより強調された圧電体膜となり、これより得られた圧電体膜の電気特性も実施例1、2と比べて劣ることが確認された。
[比較例3]
乾燥工程において、第2の昇温レートを15℃/minとした点以外は実施例1と同様にして圧電体膜を作製、評価した。評価結果を表1に示す。
表1によると、1層目の圧電体膜の膜厚比は0.96であり、繰り返し6回塗布(3回目)、すなわち18層の圧電体膜を形成した時点での膜厚比は0.94であった。本比較例では圧電体膜の膜厚ムラはほとんど発生せず、膜厚の構成および電気特性は実施例1と同等となった。
しかし、乾燥工程における熱処理時間が実施例1と比較して、1回のゾル−ゲル液の塗布あたりで約9分、一連の18回のゾル−ゲル液塗布では、工程全体のタクトタイムが実施例1より2時間半程度も長くなり、実施例と比べて生産性が著しく劣る結果となった。
[比較例4]
乾燥工程において、第1の昇温レートを60℃/min、第2の昇温レートを90℃/minとした以外は実施例1と同様にして圧電体膜を作製、評価した。評価結果を表1に示す。
表1によると、1層目の圧電体膜の膜厚は、端部/中央部で80nm/30nmであり、膜厚比が2.5以上と大きくなっており、コーヒーステイン現象が見られた。
同様にゾル−ゲル液の塗布、乾燥、熱分解を6回繰り返した後、RTA装置にて結晶化処理まで行った時点、すなわち、6層の圧電体膜を形成した時点(繰り返し6回塗布(1回目))で圧電体膜を観察した。すると、本比較例では、コーヒーステイン現象により膜厚が極端に厚くなった圧電体膜パターンの端部にてクラックの発生が確認された。
さらに、同様にゾル−ゲル液の塗布、乾燥、熱分解を6回繰り返した後、結晶化処理を行う工程を計3回行った時点、すなわち、上記実施例1の繰り返し6回塗布(3回目)に対応する18層の圧電体膜を形成した。
得られた圧電体膜について、実施例1の場合と同様に、パターン長手方向の端部/中央部で膜厚を測定したところ、膜厚が1.8/0.6μm(端部/中央部)、膜厚比が3.0となった。すなわち、コーヒーステイン現象がより強調された圧電体膜が得られており、膜厚比が0.94(実施例1)、1.23(実施例2)である実施例1、2と比較して膜厚比が非常に大きくなっていることが確認できた。
さらに、実施例1の場合と同様に、形成されたパターン化圧電体膜上に、第2の電極(上部電極)(Pt)をスパッタ法にて成膜しパターニングすることで電気−機械変換素子の形態をなした。そして、得られた電気−機械変換素子について評価を行ったところ、圧電体膜の比誘電率1100、誘電損失27、耐圧2Vとなり、圧電体膜としての機能を成さないことが確認できた。
31、64 基板
32、661 第1の電極
54、54´、662 圧電体膜
663 第2の電極
66 電気−機械変換素子
60、67 液体吐出ヘッド
70 インクジェットプリンタ
国際公開第03/098714

Claims (6)

  1. 基板上に設けられた第1の電極表面にインクジェット方式によりゾル−ゲル液を部分的に塗布しパターン化されたゾル−ゲル膜を形成する工程と、
    前記ゾル−ゲル膜を加熱処理することでゾル−ゲル膜を乾燥する工程と、を有しており、
    前記ゾル−ゲル膜を乾燥する工程は、ゾル−ゲル膜の加熱温度を、室温から予め規定した変更点温度Tまで、第1の昇温レートにより昇温する第1の昇温工程と、
    前記変更点温度Tに到達後、昇温レートを第2の昇温レートに変更し、ゾル−ゲル膜の加熱温度をゾル−ゲル膜の乾燥温度まで昇温する第2の昇温工程と、を有し、
    前記変更点温度Tは、前記ゾル−ゲル液の主溶媒の沸点Tbpとの間で、Tbp−23≦T≦Tbp+23の関係を満たし、
    前記第1の昇温レートの1分当たりの昇温レートは、前記ゾル−ゲル液の主溶媒の沸点の45%以下であり、
    前記第1の昇温レートは、前記第2の昇温レートよりも遅いことを特徴とする圧電体膜の製造方法。
  2. 前記ゾル−ゲル膜を乾燥する工程の後に、前記ゾル−ゲル膜を熱分解する工程および/または前記ゾル−ゲル液を結晶化する工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の圧電体膜の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の圧電体膜の製造方法を繰り返し行うことにより、所望の膜厚の圧電体膜とすることを特徴とする圧電体膜の製造方法。
  4. 請求項1乃至3いずれか一項に記載された圧電体膜の製造方法により製造された圧電体膜上に、第2の電極を配置する工程を有することを特徴とする電気―機械変換素子の製造方法。
  5. 請求項4記載の電気―機械変換素子の製造方法により得られた電気―機械変換素子を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  6. 請求項5に記載の液体吐出ヘッドを備えた、インクジェットプリンタ。
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