(実施例1)
以下、図面を参照しながら本発明の実施例1に係るギヤポンプについて説明する。図1は実施例1に係るギヤポンプの駆動軸に沿う断面図である。図2から図6は、それぞれ図1に示すギヤポンプのII−II線、III−III線、IV−IV線、V−V線及びVI−VI線に沿う断面図である。なお、図1は図2のI−I線に沿う断面図である。
図1から図6に示すように、ギヤポンプ1は、ケース15と、該ケース15に収容される組立体10と、ケース15と組立体10との間に配置される環状シール部材8,9と、を備える。
ケース15は、フロントケース13とリアケース14とを有する半割状のケースである。リアケース14は、フロントケース13と対向する面に、組立体10を収容する凹部14aを有している。凹部14aの解放端部にフロントケース13が取り付けられることで、組立体10は環状シール部材8,9を介してフロントケース13とリアケース14との間に狭持され、凹部14aはポンプ室29となる。
フロントケース13及びリアケース14の内部には、回転軸2,3を軸支する軸受16が設置される。フロントケース13とリアケース14は、図3及び図4に示すノックピン19によって互いの位置が合わされ、ボルト20によって締結される。フロントケース13及びリアケース14は、例えば金属材料によって製作されている。
組立体10は、主に一対のギヤ4,4と、該ギヤ4,4の側面に配置される側板7及びシールブロック6とを有している。すなわち、本実施例の組立体10は、シールブロック6と側板7との間に一対のギヤ4,4を配置した構成となっている。また、組立体10は、駆動軸である第1の回転軸2と、従動軸である第2の回転軸3と、ギヤ4,4を回転軸2,3に固定する駆動ピン5,5を有している。これらの各部材は、例えば金属材料によって製作されている。
回転軸2は、図示しない外部のモータ等の駆動源に接続され、ギヤポンプ1の駆動時に回転することで回転軸2に固定された一方のギヤ4を回転させる。回転軸3は、回転軸2のギヤ4と噛み合う他方のギヤ4を介して回転軸2の動力が伝達されて回転する。一対のギヤ4,4は、図3に示すように歯先同士が互いに噛み合う。駆動ピン5,5は、回転軸2,3とギヤ4,4がそれぞれ一体となって回転するように、これらに設けられたピン穴に挿入される。
シールブロック6と側板7は、ギヤ4の回転軸方向Aを向く両側面に隣接して配置される。シールブロック6は、図3に示すようにギヤ4の円周方向の一部を覆う歯先シール部12を有する。すなわち、シールブロック6の歯先シール部12は、ギヤ4の円周方向の一部範囲においてギヤ4の歯先に近接する。側板7は、図5及び図6に示すようにシールブロック6と当接面11で接触した状態で設置される。シールブロック6と側板7は、それぞれ回転軸2,3が通される貫通穴を有している。
シールブロック6は、図6に示すように、固定ピン17及び回転止めピン18によってリアケース14に対して位置決めされている。固定ピン17はシールブロック6及びリアケース14に開けられたピン穴に通される。回転止めピン18は、リアケース14に開けられた穴に通され、図4に示すようにシールブロック6の凹部6sに収容されて凹部6sの側壁に接するように設置される。シールブロック6及び側板7は、例えば金属材料或いは樹脂材料によって製作されている。
環状シール部材8,9は、組立体10とケース15との間に配置され、ケース15の内部の高圧部分と低圧部分とを区画する。具体的には、第1の環状シール部材8はシールブロック6とリアケース14との間に配置され、第2の環状シール部材9は側板7とフロントケース13との間に配置されている。環状シール部材8,9は例えばゴムなどの弾性材料によって製作されている。
ここで、本実施例におけるケース15、シールブロック6、側板7及び環状シール部材8,9の構成について詳細に説明する。以下の説明では、回転軸2,3に沿う方向である、例えば回転軸2,3に平行な方向を「回転軸方向A」とする。また、回転軸方向Aに垂直な方向において、回転軸2,3に対して近い側を「内側」、回転軸2,3に対して遠い側を「外側」とする。
図1に示すように、シールブロック6は、リアケース14に対向する面に環状溝部60を有している。同様に、側板7及びシールブロック6は、フロントケース13に対向する面に環状溝部70を有している。図4に示すように、環状溝部70は、シールブロック6及び側板7の双方を通過するように連続的に設けられている。環状溝部60,70は回転軸方向Aに深さを有して環状シール部材8,9の少なくとも一部を収容することで、環状溝部60,70内に環状シール部材8,9が収容配置されている。
シールブロック6に設けられた環状溝部60は、図2に示すように回転軸方向Aの平面視で回転軸2,3及び固定ピン17の外周に沿ってこれらを囲むように連続して設けられている。環状溝部60は、回転軸2の外周に沿う第1の円弧部60aと、回転軸3の外周に沿う第2の円弧部60bと、固定ピン17の外周に沿う第3の円弧部60cとを有している。また、環状溝部60は、内側に向けて凸となる円弧状の接続部60d,60e,60fを有している。円弧部60a,60b,60cは接続部60d,60e,60fによって滑らかに接続されている。
図7は、シールブロック6の斜視図である。図7に示すように、シールブロックに設けられた環状溝部60は、環状溝部60に高圧液を導入する高圧液導入路6gを備えている。高圧液導入路6gは、シールブロック6のリアケース14に対向する面に設けられた溝状の流路であり、図2に示すように環状溝部60の円弧部60a,60b,60cを接続する接続部60d,60e,60fに接続されている。高圧液導入路6gは、環状溝部60の底面と、該環状溝部60に収容配置される環状シール部材8の底面との間に、高圧領域の高圧液を導入するように設けられている。
側板7に設けられた環状溝部70は、図4に示すように回転軸方向Aの平面視で回転軸2,3及び固定ピン17の外周に沿ってこれらを囲むように連続して設けられている。環状溝部70は、回転軸2の外周に沿う第1の円弧部70aと、回転軸3の外周に沿う第2の円弧部70bと、固定ピン17の外周に沿う第3の円弧部70cとを有している。また、環状溝部70は、内側に向けて凸となる円弧状の接続部70d,70eと直線状の接続部70fを有している。第1、第2の円弧部70a、70bと第3の円弧部70cとの間は、接続部70d,70eによって滑らかに接続されている。また、第1、第2の円弧部70a、70bの間は、接続部70fによって接続されている。
図8(A)は、ケース15の締結前における図1に示すX部分の拡大図である。図8(B)は、ケース15の締結後の図1に示すX部分の拡大図である。ここで、環状シール部材8,9の断面形状は特に限定されないが、本実施例において環状シール部材8,9は段差を有する階段状の断面形状に形成されている。また、本実施例において、側板7に設けられた環状溝部70はシールブロック6に設けられた環状溝部60と同様の構成を有している。以下、これらを代表してシールブロック6に設けられた環状溝部60と第1の環状シール部材8について、図8(A)及び図8(B)を用いて詳細に説明する。
(実施例1:ケースの締結前)
図8(A)に示すように、本実施例の環状シール部材8は、リアケース14側に回転軸方向Aの段差を有する階段状の断面形状に形成されている。環状シール部材8は、内側に位置する厚肉部8Aと、外側に位置する薄肉部8Bとを有している。厚肉部8Aの回転軸方向Aの厚み(寸法T)は、薄肉部8Bの回転軸方向Aの厚み(寸法M)よりも大きくなっている。環状シール部材8は、シールブロック6側の一部である底部が環状溝部60に収容され、リアケース14側の一部である上部が環状溝部60の上端からリアケース14側に突出している。
環状溝部60は、その幅(寸法J)が環状シール部材8の幅(寸法I)よりも広くされると共に、環状シール部材8を載置する載置面である内側接触部63及び外側接触部64と、これら載置面よりも深い底面65aとを備えている。環状溝部60は、その幅(寸法J)方向の内側と外側で対向する内側壁面61及び外側壁面62を有している。前記載置面のうち内側に位置する内側接触部63は、内側壁面61から外側へ向けて延出している。また、前記載置面のうち外側に位置する外側接触部64は、外側壁面62から内側へ向けて延出している。底面65aが載置面である内側接触部63及び外側接触部64よりも環状溝部60の深い位置に形成されることで、内側接触部63と外側接触部64との間に、これら載置面に対して回転軸方向Aに窪んだ受容部65が形成されている。
図7に示すように、環状溝部60の内側壁面61、外側壁面62、内側接触部63、外側接触部64及び底面65aは、高圧導入路6gの接続部などの一部を除き、環状溝部60の全周に亘って形成されている。
内側壁面61及び外側壁面62は、回転軸方向Aと平行または回転軸方向Aに沿って設けられている。内側壁面61は、ケース15の締結前、すなわち環状シール部材8の弾性変形前において、環状シール部材8の内側面8cと接触するか僅かに隙間を有して隣接している。内側壁面61と外側壁面62との間の間隔すなわち環状溝部60の幅(寸法J)は、環状シール部材8の内側面8cから外側面8dまでの幅(寸法I)よりも大きくされて、環状シール部材8との間に幅方向の間隙S1を有している。すなわち、環状溝部60の外側壁面62は、ケース15の締結前において環状シール部材8の外側面8dと接触せず、外側面8dとの間に間隙S1を有して対向している。
内側接触部63は、内側壁面61の受容部65側の端縁において、回転軸方向Aと垂直な面または回転軸方向Aと交差する面を有する段差状または階段状に形成されている。内側接触部63は、ケース15の締結前において、環状シール部材8の底面8bの内側の部分と接触するかまたは僅かに隙間を有して隣接している。内側接触部63の内側の端縁から外側の端縁までの幅(寸法H)は、例えば図8(A)に示すように、ケース15の締結前における環状溝部60の外側壁面62と環状シール部材8の外側面8dとの間の間隙S1の幅(寸法K)よりも大きくされている。
外側接触部64は、外側壁面62の受容部65側の端縁において、回転軸方向Aと垂直な面または回転軸方向Aと交差する面を有する段差状または階段状に形成されている。外側接触部64は、ケース15の締結前において、環状シール部材8の底面8bの外側の部分と接触するかまたは僅かに隙間を有して隣接している。外側接触部64の内側の端縁から外側の端縁までの幅(寸法W)は、内側接触部63の内側の端縁から外側の端縁までの幅(寸法H)と同等とされている。
受容部65は、内側接触部63及び外側接触部64に対して回転軸方向Aに段差状に形成された底面65aと、該底面65aの内側と外側の端縁で対向する内側側壁及び外側側壁を有している。受容部65は、底面65aと内側側壁と外側側壁とによって画成される空間を有する溝状の凹部である。受容部65の両側壁は回転軸方向Aに延在し、底面65aは回転軸方向Aと垂直に設けられるかあるいは回転軸方向Aと交差するように設けられる。
受容部65は、ケース15の締結前において、回転軸方向Aのリアケース14側に開口する開口部が、環状シール部材8の底面8bの幅(寸法I)方向の両端部を除く中央部分または中間部分に面している。このように、底面65aが環状シール部材8を載置する内側接触部63および外側接触部64よりも深くされることで、環状シール部材8の底面8bの前記中央部分又は中間部分が、環状溝部60すなわちシールブロック6と非接触とされている。例えば図8(A)に示すように、受容部65の開口部の幅すなわち底面65aの内側の端縁から外側の端縁までの幅(寸法Z)は、内側接触部63及び外側接触部64のそれぞれの内側の端縁から外側の端縁までの幅(寸法H及び寸法W)よりも大きくされている。
環状溝部60は、内側壁面61の内側接触部63からの回転軸方向Aの高さ(寸法V)が、環状シール部材8の内側面8cの同方向Aの高さ、すなわち環状シール部材8の厚肉部8Aの同方向Aの厚み(寸法T)よりも小さくされている。これにより、環状シール部材8が環状溝部60の内側壁面61のリアケース14側の端縁からリアケース14側に突出し、環状シール部材8のしめ代(寸法G)が確保されている。また、内側壁面61の内側接触部63からの回転軸方向Aの高さ(寸法V)は、環状シール部材8の薄肉部8Bの同方向Aの厚さ(寸法M)と等しいかそれよりも大きくされている。
環状溝部60は、外側壁面62の内側接触部63からの回転軸方向Aの高さ(寸法L)が、環状シール部材8の外側面8dの高さ、すなわち環状シール部材8の薄肉部8Bの同方向の厚み(寸法M)と等しいかそれよりも小さくされている。これにより、環状シール部材8が環状溝部60の外側壁面62のリアケース14側の端縁からリアケース14側に突出することになる。また、内側接触部63の受容部65の底面65aからの回転軸方向Aの高さ(寸法N)と外側接触部64の受容部65の底面65aからの同方向Aの高さ(寸法N)は等しいか同等とされている。
リアケース14は、環状溝部60に対向する面が環状シール部材8の上面8aを押圧する押圧面14bとして機能する。環状シール部材8の回転軸方向Aの厚み(寸法T,M)は、内側接触部63に載置される部分である厚肉部Aにおいて最大の厚み(寸法T)となっている。すなわち、環状シール部材8の回転軸方向Aの厚み(寸法T,M)は、リアケース14の押圧面14bと環状溝部60の内側接触部63との間に挟持される部分である厚肉部Aにおいて最大の厚み(寸法T)となっている。
図8(A)に示すケース15の締結前の状態から、図8(B)に示す締結後の状態とするべく、ケース15のフロントケース13とリアケース14とがボルト20によって締結されると、環状シール部材8の厚肉部8Aの上面8aが押圧面14bと接触して回転軸方向Aに押圧される。そして、環状シール部材8の厚肉部8Aがリアケース14の押圧面14bと環状溝部60の内側接触部63との間に挟持され、環状シール部材8が押圧面14bと内側接触部63との間で加圧される。このとき、環状シール部材8は、環状溝部60から突出した部分の寸法Gがしめ代となって回転軸方向Aに圧縮されて弾性変形する。
(実施例1:ケースの締結後)
ケース15の締結後は、図8(B)に示すように、環状シール部材8がリアケース14の押圧面14aと環状溝部60の内側接触部63との間で回転軸方向Aに圧縮されて弾性変形した状態になる。このとき、環状シール部材8の断面形状が階段状に形成されているため、厚肉部8Aは押圧面14aに押圧されて圧縮されるが、薄肉部8Bは押圧面14aと接触せず、リアケース14によって直接的には圧縮されない。
また、環状シール部材8の弾性変形により環状シール部材8の上面8aとリアケース14の押圧面14bとが所定の面圧で密着し、環状シール部材8の底面8bの内側の部分が内側接触部63と所定の面圧で密着する。また、環状シール部材8の底面8bの外側の部分が外側接触部64と所定の面圧で密着する。さらに、環状シール部材8は弾性変形する際に内側から外側に延伸するように変形する。
これにより、図8(A)に示されているように、間に間隙S1を有して対向していた環状溝部60の外側壁面62と環状シール部材8の外側面8dとが接触し、環状シール部材8の内側面8c及び外側面8dが環状溝部60の内側壁面61及び外側壁面62に対して所定の面圧で密着する。すなわち、環状シール部材8は、リアケース14とシールブロック6との間で押圧された時に、環状溝部60の幅(寸法J)一杯に弾性変形する。これにより、環状シール部材8によるシール性が確保される。
このように、環状シール部材8は、図8(A)に示すケース15の締結前においては外側面8dが環状溝部60の外側壁面62と接触せず、図8(B)に示す弾性変形時に環状溝部60の外側壁面62と接触すると共に該接触により弾性変形が拘束される。そのため、環状シール部材8は回転軸方向Aに圧縮されて弾性変形する際に、外側面8dが環状溝部60の内側壁外側壁面62と接触して拘束されるまでは、内側から外側に向けて自由に変形することができる。これにより、環状シール部材8の変形を回転軸方向Aと交差する方向に逃がすことが可能になり、ケース15の締結後に環状シール部材8が発生する回転軸方向Aの反発力を低減することができる。
前記のように環状シール部材8の外側面8dと環状溝部60の外側壁面62が密着して発生した反発力により、環状シール部材8の内側面8cと環状溝部60の内側壁面61がより強く密着するため、環状シール部材8によるシール性を十分に確保することができる。
また、本実施例においては、環状溝部60の外側壁面62と環状シール部材8の外側面8dとの間の間隙S1の幅(寸法K)は、内側接触部63の幅(寸法H)よりも小さくされている。これにより、環状シール部材8が弾性変形する際の内側から外側への移動範囲を制限することができる。そのため、環状シール部材8の内側の端部が内側接触部63から受容部65内に脱落することが防止され、内側接触部63の幅(寸法H)を極力小さくすることができる。
このように内側接触部63の幅(寸法H)を小さくするほど、内側接触部63とリアケース14の押圧面14bとの間で圧縮される環状シール部材8の肉厚部Aの幅(寸法H)が狭くなり、環状シール部材8が発生する回転軸方向Aの反発力が小さくなる。すなわち、図8(A)に示す間隙S1の幅(寸法K)を内側接触部63の幅(寸法H)よりも小さくすることで、内側接触部63の幅(寸法H)を可能な限り小さくして、弾性変形後の環状シール部材8が発生する回転軸方向Aの反発力をより低減することができる。
また、本実施例においては、環状溝部60の外側壁面62の内側接触部63からの高さ(寸法L)は、環状シール部材8の外側面8dの高さ(寸法M)よりも低くされている。これにより、環状シール部材8の外側面8dのリアケース14側の部分が環状溝部60の外側壁面62のリアケース14側の端縁から突出した状態となる。そのため、環状シール部材8が弾性変形する際に、環状シール部材8の外側壁面62から突出した部分の内側から外側への変形が許容される。よって、弾性変形後の環状シール部材8が発生する回転軸方向Aの反発力をより低減することができる。
また、本実施例においては、環状溝部60の内側壁面61の内側接触部63からの高さ(寸法V)は、環状シール部材8の薄肉部8Bの厚さ(寸法M)と等しいかそれよりも高くされている。そのため、薄肉部8Bとリアケース14の押圧面14bとが比較的低い面圧で接触するか、または図8(B)に示すようにリアケース14の押圧面14bと薄肉部8Bとの間に空間が形成され、薄肉部8Bが押圧面14bによって押圧されない。すなわち、環状シール部材8の押圧面14bによって回転軸方向Aに圧縮される部分を厚肉部8Aに限定することができ、ケース15の締結後に環状シール部材8が発生する回転軸方向Aの反発力をより低減することができる。
環状シール部材8がさらに回転軸方向Aに圧縮されて弾性変形すると、図8(B)に示すように、最終的に環状シール部材8の底面8bの受容部65に面する部分、すなわち底面8bの前記中間部分または中央部分が、受容部65内に膨出した状態となる。このように、環状シール部材8の一部が受容部65内に膨出することで、環状シール部材8の変形を受容部65内に逃がすことができる。したがって、受容部65を有さない場合と比較して、弾性変形後に環状シール部材8が発生する回転軸方向Aの反発力を低減することができる。
なお、図8(B)に示す弾性変形後の環状シール部材8の底面8bが内側接触部63から受容部65内に膨出する回転軸方向Aの高さすなわち膨出量(寸法P)が、例えばシミュレーションなどにより既知である場合がある。その場合には、受容部65の同方向Aの深さ、すなわち受容部65の底面65aから内側接触部63までの同方向Aの高さ(寸法N)が環状シール部材8の底面8bの膨出量(寸法P)と等しいかまたは大きくなるように設計することが好ましい。
本実施例においては、受容部65の深さ(寸法N)が環状シール部材8の底面8bの膨出量(寸法P)より大きく、ケース15の締結後に受容部65の底面65aと環状シール部材8の底面8bとが接触しない。これにより、受容部65によって環状シール部材8の変形を受容し、弾性変形後に環状シール部材8が発生する回転軸方向Aの反発力をより低減することができる。
また、本実施例においては、環状溝部60は、図2及び図7に示すように環状溝部60の底面65aと環状シール部材8の底面8bとの間に高圧液を導入する高圧液導入路6gを備えている。これによって、受容部65内の空気が抜けやすくなる。
また、本実施例において、高圧液導入路6gは、図2に示すように環状溝部60の円弧部60a,60b,60cを接続する接続部60d,60e,60fに接続されている。この場合、環状シール部材8がリアケース14の押圧面14bで押圧されて弾性変形したときに、高圧液導入路6gの両側の円弧部60a,60b,60cに収容されている環状シール部材8が高圧導入溝6gの方向に寄り集まり、環状シール部材8を環状溝部60の内側壁面61に押し付ける力が作用する。そのため、環状溝部60の高圧液導入路6gが接続された部分に外側壁面62がなくても環状シール部材8の内側から外側への移動を防止することができる。
図9は、しめ代(寸法G)と、弾性変形後の環状シール部材8が発生する回転軸方向Aの反発力であるシール部材反力との関係を示すグラフである。図9において、破線L2は本実施例のギヤポンプ1におけるしめ代とシール部材反力との関係を示す。また、実線L1は、本実施例のような載置面(側接触部63、外側接触部64)、底面65a、受容部65を有さない従来のギヤポンプにおけるしめ代とシール部材反力との関係を示している。図9に示すように、本実施例のギヤポンプ1によれば、しめ代が大きくなっても、従来のギヤポンプと比較してシール部材反力の増加を抑制することが可能になる。
以上の説明では、シールブロック6に設けられた環状溝部60と第1の環状シール部材8の構成について詳細に説明したが、側板7及びシールブロック6に設けられた環状溝部70と第2の環状シール部材9も同様の構成を有している。また、フロントケース13もリアケース14の押圧面14bと同様の押圧面を有している。したがって、側板7及びシールブロック6に設けられた環状溝部70と第2の環状シール部材9においても、シールブロック6に設けられた環状溝部60と第1の環状シール部材8と同様の効果を得ることができる。すなわち、側板7及びシールブロック6に設けられた環状溝部70によれば、ケース15の締結後に環状シール部材9が発生する回転軸方向Aの反発力を低減することができる。
以下、ギヤポンプ1のその他の構成について説明する。図1に示すように、フロントケース13は、リアケース14との接触面に環状溝13aを有する。環状溝13aには、環状ケースシール21が配置される。環状ケースシール21は、フロントケース13とリアケース14とを組み合わせた際に双方の間に生じ得る隙間をシールして、リアケース14に設けられた凹部14aから液体が外部へ漏れるのを防止する。
フロントケース13は、リアケース14と接触する面の反対側の面に回転軸2と同軸に凹部を有し、この凹部にオイルシール22が圧入収容されている。オイルシール22は、外周面が凹部の壁面と密着し、内周面が回転軸2の外周面と摺接する。これにより、オイルシール22は、回転軸2とフロントケース13との間の隙間をシールし、ギヤポンプ1の駆動時に、ポンプ室29の内部の液体が外部に漏れ出さないようにしている。
フロントケース13は、図6に示すように、ポンプ室29の外部と内部を連通する吸入路23を有している。吸入路23は、ポンプ室29の内部のシールブロック6と側板7とに挟まれた部分にある吸入口24(図4参照)と連通している。吸入路23の上流には、ギヤポンプ1へ液体を供給するタンク(図示せず)等が接続される。
リアケース14は、図6に示すように、凹部14aの円筒部内周にポンプ室29の外部と連通する吐出口25を有している。吐出口25の下流には、バルブやシリンダ(図示せず)等が接続され、ポンプ吐出圧が調整される。
ギヤポンプ1を駆動した際には、リアケース14の凹部14aに、高圧領域と低圧領域とが形成される。この高圧領域と低圧領域は、各部品のシール部によって区画される。ギヤポンプ1は、シール部として、ギヤ4の噛み合い部、ギヤ4の歯先とシールブロック6の歯先シール部12との近接面、ギヤ4の側面とシールブロック6の摺接面、ギヤ4の側面と側板7の摺接面、シールブロック6と側板7との当接面、ポンプ組立体10の端面とフロントケース13及びリアケース14との間に設置された環状シール部材8,9を有している。これらのシール部の吸入口24側が低圧(吸入圧力)領域となり、それ以外の部分が高圧(吐出圧力)領域になる。
ギヤポンプ1は、モータ等の駆動源によって回転軸2が回転し、駆動ピン5を介してギヤ4が図3の矢印Rで示す方向に回転すると、ギヤ4の噛合い部の歯先が離れて低圧領域の空間が大きくなることでタンクから液が吸入される。低圧領域の液はギヤ4の歯溝に収まった状態でギヤ4が回転することにより、シールブロック6の歯先シール部12を通過する。先に述べた各シール部があることにより、歯先シール部12を通過した液は再び低圧領域に戻ることができない。ギヤ4の回転によって次々に低圧領域から液が送り出される状態で、吐出口25の下流に設置されたバルブ等により流路を絞ると先に述べた高圧領域の圧力が上昇する。
ギヤポンプ1の駆動時には、シールブロック6及び側板7とギヤ4,4の回転軸方向Aの側面は互いに接触しかつ摺動する。この際、ケース15の締結後の環状シール部材8,9の弾性変形によって発生する回転軸方向Aの反発力により、シールブロック6及び側板7がギヤ4,4に押し付けられる。この反発力が大きくなると、ギヤ4,4がシールブロック6及び側板7と摺動する際の摩擦力が大きくなり、摩擦損失トルクが増加する。
本実施例のギヤポンプ1は、前述のように、シールブロック6及び側板7に形成された環状溝部60,70及び該環状溝部60,70に収容配置される環状シール部材8,9を有している。したがって、ケース15の締結後に環状シール部材8,9が弾性変形することで発生する回転軸方向Aの反発力を低減することができる。これにより、ギヤ4,4がシールブロック6及び側板7と摺動する際の摩擦力を低減させ、ギヤポンプ1の摩擦損失トルクを低減し、ギヤポンプ1の駆動トルクを小さくすることができる。
また、例えばギヤ4、シールブロック6、側板7、リアケース14の凹部14aの寸法が図面の寸法公差の範囲で変動し、環状シール部材8,9のしめ代(寸法G)の値がギヤポンプ1の個体毎にばらつく場合がある。この場合でも、本実施例のギヤポンプ1によれば、環状シール部材8,9の発生する反発力を低減することで、しめ代(寸法G)の変動による環状シール部材8,9の反発力の変動を低減することができる。これにより、ギヤポンプ1の製造個体毎の摩擦損失トルクのばらつきが摩擦損失トルクの変動が抑えられ、摩擦損失トルクの変動を低減することができる。したがって、ギヤポンプ1の駆動トルクが最も大きくなる場合に合わせてモータを設計した場合であっても、モータのサイズを小さくすることができる。
また、本実施例の環状溝部60,70によれば、ゴムなどの弾性材料で構成される環状シール部材8,9を製造可能なサイズで製作しても、環状シール部材8のしめ代(寸法G)の変化に対する環状シール部材8の反発力の変化を小さくすることができる。そのため、ギヤポンプ1が小型のギヤポンプであり、断面積の小さい環状シール部材8,9を製作が可能な断面形状及び寸法で製作した場合であっても、シールブロック6及び側板7とケース15との間にできる隙間を介した液の行き来がないようにシール性を十分に確保しつつ、環状シール部材8,9の反発力を十分に抑制することが可能となる。
以上説明したように、実施例1のギヤポンプ1によれば、ギヤポンプ1の大きさ如何によらず、摩擦損失トルクの低減及び該摩擦損失トルクの変動の低減をすることができる。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2に係るギヤポンプについて、図10を用い、図8を援用して説明する。図10は、実施例1の図8(A)に相当する実施例2に係るギヤポンプの拡大図である。本実施例のギヤポンプは、シールブロック6の環状溝部60に外側接触部64を有さない点で、図1〜8に示す実施例1のギヤポンプ1と異なっている。その他の点は実施例1のギヤポンプ1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図10に示す本実施例の環状溝部60は、図8(A)及び図8(B)に示す外側接触部64を有していないので、ケース15の締結後に環状シール部材8が図8(B)に示すように弾性変形すると、環状シール部材8の外側面8dは環状溝部60の外側壁面62と接触して面圧を発生するが、環状シール部材8の底面8bの外側の部分は下方から支持されない。これにより、環状シール部材8の外側の端部が受容部65内に移動または変形することが許容され、環状シール部材8が回転軸方向Aに圧縮される際に発生する反発力を低減することが可能になる。よって、本実施例のギヤポンプによれば、上述の実施例1のギヤポンプ1と同様に、ギヤポンプの大きさ如何によらず、摩擦損失トルクの低減及び該摩擦損失トルクの変動の低減をすることができる。
(実施例3)
次に、本発明の実施例3に係るギヤポンプについて、図11を用いて説明する。図11は、実施例1の図8(A)に相当する実施例3に係るギヤポンプの拡大図である。本実施例のギヤポンプは、高圧液導入路6gに換えて高圧液導入穴6hを有している点で実施例1のギヤポンプ1と異なっている。その他の点は実施例1のギヤポンプ1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図11に示すように、本実施例のギヤポンプの環状溝部60は、受容部65に連通する高圧液導入穴6hを有している。高圧液導入穴6hは、ギヤポンプの高圧領域に連通し、高圧領域の液を受容部65に供給することができるようになっている。
本実施例のギヤポンプによれば、実施例1のギヤポンプと同様に、ギヤポンプの大きさ如何によらず、摩擦損失トルクを低減及び該摩擦損失トルクの変動の低減をすることができる。また、高圧液導入穴6hにより実施例1の高圧液導入路6gと同様の効果が得られるだけでなく、受容部65の底面65aの任意の位置に高圧液導入穴6hを形成して、受容部65を高圧領域と連通させることが可能になる。
(実施例4)
次に、本発明の実施例4に係るギヤポンプについて、図12を用いて説明する。図12は、実施例2の図10に相当する実施例4に係るギヤポンプの拡大図である。本実施例のギヤポンプは、受容部66の底面が傾斜面66a,66bを有する点で、実施例2のギヤポンプと異なっている。その他の点は実施例2のギヤポンプと同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図12に示すように、本実施例の受容部66の底面すなわち環状溝部60の底面は、載置面である内側接触部63に対して傾斜する第1、第2の傾斜面66a,66bにより構成されている。第1の傾斜面66aは、内側接触部63の外側の端縁から外側に向かうにつれて回転軸方向Aにおいてギヤ4,4(図1参照)に近づくように傾斜している。第2の傾斜面66bは、外側壁面62から内側に向かうにつれて回転軸方向Aにおいてギヤ4,4に近づくように傾斜している。
これにより、受容部66の回転軸方向Aの深さは、内側接触部63から外側に向かうにつれて徐々に深くなる。そして、受容部66の回転軸方向Aの深さは、内側接触部63と外側壁面62との中間点またはその近傍、すなわち傾斜面66aと傾斜面66bと接続部で最大の深さ(寸法D)となり、外側壁面62に近づくにつれて徐々に浅くなる。また、回転軸方向Aにおける第1の傾斜面66aの高さ(寸法D)と第2の傾斜面66bの高さ(寸法D)は等しいか同等になっている。
ケース15の締結後には、図12に示す構成の環状溝部60において、図8(B)に示すように環状シール部材8が弾性変形し、環状シール部材8の外側面8dが環状溝部60の外側壁面62と当接し、環状シール部材8の底面8bが受容部66内に膨出する。すると、ケース15の締結前には接触していなかった環状シール部材8の底面8bの内側接触部63の近傍の部分と第1の斜面66aの内側の部分とが接触する。また、環状シール部材8の底面8bの外側の部分が第2の斜面66bの外側の部分に接触する。このとき、傾斜面66a,66bに接触する環状シール部材8の底面8bの面圧は、内側接触部63に近いほど大きくなり、内側接触部63と外側壁面62との中間部またはその近傍において最も小さくなり、外側壁面62に近づくほど大きくなる。
図12に示す構成の環状溝部60を備える本実施例のギヤポンプによれば、実施例2のギヤポンプと同様に、ギヤポンプの大きさ如何によらず、摩擦損失トルクの低減及び該摩擦損失トルクの変動の低減をすることができる。さらに、傾斜面66a,66bによって環状シール部材8を安定して支持することが可能になる。なお、傾斜面66a,66bは平面に限られず、ギヤ4に向けて凸となる凹面状、球面状などの曲面状に形成してもよい。また、ケース15の締結後の環状シール部材8の底面8bの膨出形状がシミュレーション等により既知である場合には、傾斜面66a,66bを環状シール部材8の底面8bの膨出形状に沿う曲面状に形成することができる。これにより、環状シール部材8の回転軸方向Aの反発力を低減しつつ、環状シール部材8をより安定して環状溝部60に保持することが可能になり、シール性を向上させることができる。
(実施例5)
次に、本発明の実施例5に係るギヤポンプについて、図13を用いて説明する。図13は、実施例2の図10に相当する実施例5に係るギヤポンプの拡大図である。本実施例のギヤポンプは、環状シール部材80が円形の断面を有する点と、内側接触部63の幅(寸法H)が大きくされている点が、実施例2のギヤポンプと異なっている。その他の点は実施例2のギヤポンプと同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図13に示すように、本実施例の環状シール部材80は円形の断面形状を有し、内側の部分が環状溝部60の内側壁面61に接触している。環状溝部60の内側接触部63の幅(寸法H)は、環状シール部材80の円形断面の半径と等しいかまたはそれよりも大きくされている。これにより、環状シール部材80の回転軸方向Aのシールブロック6側の頂部が内側接触部63に接触している。すなわち、本実施例においても、環状溝部60は、環状シール部材80を載置する載置面すなわち内側接触部63と、該載置面よりも深い底面65aとを備えている。
環状溝部60の内側壁面61と外側壁面62との距離(寸法J)は環状シール部材80の断面直径(寸法I)よりも大きくされている。すなわち、本実施例においても、環状溝部60は、その幅(寸法J)が環状シール部材80の幅(寸法I)よりも広くされている。これにより、環状シール部材80の外側の部分と環状溝部60の外側壁面62とが対向し、これらの間に隙間S1が形成されている。
隙間S1の幅(寸法K)は、内側接触部63の幅(寸法H)よりも小さくされている。また、隙間S1の幅(寸法K)は、仮に環状溝部60の外側壁面62が存在しなかった場合に、ケース15の締結による弾性変形後の環状シール部材80が幅(寸法I)方向に変形する変形量よりも小くされている。環状溝部60は、回転軸方向Aにおける内側接触部63からの高さ(寸法V)が、環状シール部材80の直径(寸法M)よりも小さくされている。これにより、環状シール部材のしめ代(寸法G)が確保されている。
前述の実施例1から実施例4と異なり、本実施例の環状シール部材80の断面形状は円形である。しかし、前述の実施例と同様に、回転軸方向Aにおける環状シール部材80のリアケース14側の頂点から周方向の所定の範囲の外周面を環状シール部材80の上面と定義することができる。同様に、回転軸方向Aにおける環状シール部材80のシールブロック6側の頂点から周方向の所定の範囲を環状シール部材80の底面と定義することができる。また、環状シール部材80の内側の外周面の頂点から周方向の所定の範囲を環状シール部材80の内側面と定義し、外側の外周面の頂点から周方向の所定の範囲を環状シール部材80の外側面と定義することができる。
ケース15の締結前は、環状溝部60の内側壁面61に環状シール部材80の内側面が接触または隣接している。また、環状溝部60の内側接触部63に環状シール部材80の底面の一部が接触または隣接し、環状溝部60の受容部65に環状シール部材80の底面の他の一部が面している。また、環状溝部60の外側壁面62に環状シール部材80の外側面が間隙Sを有して対向し、リアケース14の押圧面14bが環状シール部材80の上面に対向している。
そのため、ケース15の締結後は、環状シール部材80が押圧面14bと環状溝部60の内側接触部63との間で回転軸方向Aにしめ代(寸法G)の分だけ圧縮されて弾性変形する。そして、環状シール部材80の内側面及び外側面が環状溝部60の内側壁面61及び外側壁面62と接触して面圧が作用した状態で密着する。すなわち、環状シール部材80は、リアケース14とシールブロック6との間で押圧された時に、環状溝部60の幅(寸法J)一杯に弾性変形する。また、環状シール部材80の底面の一部が内側接触部63と面圧が作用した状態で密着し、底面の他の一部が受容部65の内側に膨出する。また、環状シール部材80の上面と押圧面14bは、面圧が作用した状態で密着する。
したがって、図13に示す本実施例のギヤポンプによれば、実施例2と同様に、ギヤポンプの大きさ如何によらず、摩擦損失トルクの低減及び該摩擦損失トルクの変動の低減をすることができる。さらに、環状シール部材80の断面形状が単純であり、環状シール部材80の製作を容易にすることができる。
(実施例6)
次に、本発明の実施例6に係るギヤポンプについて、図14を用いて説明する。図14は、実施例5の図13に相当する実施例6に係るギヤポンプの拡大図である。本実施例のギヤポンプは、受容部67が底面として傾斜面67aを有する点で、図13に示す実施例5のギヤポンプと異なっている。その他の点は実施例5のギヤポンプと同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図14に示すように本実施例の環状溝部60は、図12に示す実施例4の傾斜面66aと同様に、内側接触部63の外側の端縁から外側に向かうにつれて回転軸方向Aにおいてギヤ4に近づくように傾斜する傾斜面67aを有している。したがって、本実施例の環状溝部60によれば、実施例4及び実施例5と同様の効果を得ることができ、ギヤポンプの大きさ如何によらず、摩擦損失トルクの低減及び該摩擦損失トルクの変動の低減をすることができる。
(実施例7)
次に、本発明の実施例7に係るギヤポンプについて、図15から図17を用いて説明する。図15は、実施例7に係るギヤポンプ101の図1に相当する断面図である。図16は、図15に示すギヤポンプ101の組立前のX部分の拡大図である。図17は、図15に示すギヤポンプ101の回転軸方向Aにおけるリアケース114の平面図である。
本実施例のギヤポンプ101は、環状シール部材8,9を収容する環状溝部160が半割状のケース115を構成するフロントケース113及びリアケース114に設けられ、環状シール部材8,9を押圧する押圧面106a,107aがシールブロック106及び側板107に設けられている点で、実施例1のギヤポンプ1と異なっている。その他の点は実施例1のギヤポンプ1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図15に示す本実施例のギヤポンプ101は、図1に示す実施例1のギヤポンプ1が備える組立体10及びケース15に相当する組立体110及びケース115を有している。すなわち、本実施例の組立体110は、駆動軸である第1の回転軸2と、従動軸である第2の回転軸3と、回転軸2,3と共に回転する一対のギヤ4,4と、ギヤ4,4を回転軸2,3に固定する駆動ピン5と、ギヤ4,4の回転軸2,3と平行な方向の側面に配置されたシールブロック106及び側板107と、を有している。また、本実施例のケース115は、実施例1のケース15が備えるフロントケース13及びリアケース14に相当するフロントケース113及びリアケース114を備えている。
図15に示す本実施例のシールブロック106及び側板107は、それぞれリアケース114及びフロントケース113に対向する面が平坦な押圧面106a,107aとされ、環状シール部材8,9を収容する環状溝部を有していないが、フロントケース113及びリアケース114が、シールブロック106及び側板107の押圧面106a,107aに対向する環状溝部160,170を有している。
図16に示すリアケース114の環状溝部160は、図10に示す実施例2のシールブロック6に設けられた環状溝部60と同様の構成を有している。すなわち、図16に示す本実施例の環状溝部160は、図10に示す実施例2の環状溝部60が備える内側壁面61、外側壁面62、内側接触部63、底面65a及び受容部65と同様の内側壁面161、外側壁面162、内側接触部163、底面165a及び受容部165を有している。
図17に示すように、環状溝部160は、図2に示す実施例1のシールブロック6に設けられた環状溝部60と同様の平面形状を有している。また、本実施例の環状溝部160は、実施例1の環状溝部60の円弧部60a,60b,60c、接続部60d,60e,60f及び高圧液導入路6gと同様の円弧部160a,160b,160c、接続部160d,160e,160f及び高圧液導入路106gを有している。
また、本実施例のフロントケース113に設けられた環状溝部170は、リアケース114の環状溝部160と同様の構成を有している。したがって、本実施例のギヤポンプ101によれば、実施例1及び実施例2のギヤポンプと同様に、ギヤポンプ101の大きさ如何によらず、摩擦損失トルクの低減及び該摩擦損失トルクの変動の低減をすることができる。
(実施例8)
次に、本発明の実施例8に係るギヤポンプについて、図18を用いて説明する。図18は、実施例7に係るギヤポンプの図16に相当する断面図である。本実施例のギヤポンプは、環状溝部160の受容部166が傾斜面166a,166bを有している点で図15〜図17に示す実施例7のギヤポンプ101と異なっている。その他の点は実施例7のギヤポンプ101と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図18に示すように、本実施例のギヤポンプは、図12に示す実施例4のギヤポンプの環状溝部60の受容部66が有する傾斜面66a,66bと同様の傾斜面166a,166bを有している。したがって、図18に示す本実施例のギヤポンプによれば、前述の実施例4及び実施例7と同様の効果を得ることができ、ギヤポンプの大きさ如何によらず、摩擦損失トルクの低減及び該摩擦損失トルクの変動の低減をすることができる。
なお、本発明は前述の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。前述の実施例は本発明を解りやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されない。
例えば、図7では実施例1に係る環状溝部の構成を、環状溝部の全周に亘って適用した例が示したが、本発明の実施例に係る環状溝部の構成を環状溝部の一部に対して適用した場合にも、前述の実施例と同様の効果を得ることができる。
また、前述の実施例ではケースとシールブロック又は側板とのいずれか一方に環状溝部を形成する場合について説明したが、ケースとシールブロックの双方、またはケースと側板の双方に環状溝部を備えてもよいことは言うまでもない。