JP2015028614A - 電子写真用中間転写体及び電子写真装置 - Google Patents

電子写真用中間転写体及び電子写真装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 繰り返し転写を行っても、放電による画像不良を抑制することができ、長期に亘って良好な画像を得ることができる電子写真用中間転写体及び電子写真装置を提供することである。
【解決手段】 電子写真用中間転写体をパーフルオロポリエーテルが溶解可能な溶剤に25℃で24時間浸漬後の、該表面層10mmあたりのパーフルオロポリエーテルの抽出量が、0.10mg以上5.00mg以下であり、第1処理及び第2処理を行っていない電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が55°以上であり、第1処理後の該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が40°以下であり、第2処理後の該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が50°以上であることを特徴とする電子写真用中間転写体。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複写機及びプリンタの如き電子写真方式の画像形成装置において使用できる電子写真用中間転写体、及び、該電子写真用中間転写体を用いた電子写真装置に関する。
複写機やプリンタの如き電子写真方式の画像形成装置(以下、「電子写真装置」とも称する)において、高画質なカラー画像を得ることができる画像形成装置が上市されている。
紙の如き記録媒体にカラー画像を形成させる方法としては以下の方法がある。
まず、感光体上の静電潜像を各色ごとに現像する。現像された各色のトナー画像を中間転写体に順次転写し、中間転写体上にカラーのトナー画像を形成する。次に、中間転写体上に形成されたカラーのトナー画像を記録媒体に一括転写することで、カラーのトナー画像が形成された記録媒体を得ることができる。
中間転写体としては半導電性のベルトが一般的で、代表的なものとしてはポリイミド及びポリアミドイミドの如き樹脂に、カーボンブラックを分散させて形成したベルトが知られている。
さらに、中間転写体は更なる高機能化のため、様々な改良が行われている。
例えば、特許文献1では、中間転写体の表面に撥水性及び撥油性を有するフッ素化合物をコーティングすることで、転写効率を高めたという中間転写体が提案されている。
特開2009−192901号公報
しかしながら、多数枚印刷することにより、繰り返し転写が行われたとき、感光体または記録媒体と、中間転写体とが接触する前後のギャップで放電が発生することがあった。そして、この放電が発生すると、中間転写体上のトナーが飛び散ったり、転写性能が落ちてしまい、その結果、トナー画像が乱れてしまうことがあった。
そこで、本発明の目的は、繰り返し転写を行っても、放電による画像不良を抑制することができ、長期に亘って良好な画像を得ることができる電子写真用中間転写体及び電子写真装置を提供することである。
本発明は、基層及び表面層を有する電子写真用中間転写体であって、該表面層は、結着樹脂及びパーフルオロポリエーテルを含有し、該電子写真用中間転写体を、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンとメチルエチルケトンを1:1(質量基準)で混合した溶剤に25℃で24時間浸漬後の、該表面層10mmあたりのパーフルオロポリエーテルの抽出量が、0.10mg以上5.00mg以下であり、下記第1処理及び第2処理を行っていない該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が55°以上であり、下記第1処理後の該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が40°以下であり、下記第2処理後の該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が50°以上であることを特徴とする電子写真用中間転写体に関する:
(I)第1処理:
(i)該電子写真用中間転写体から切り出した短冊形状の試験片を準備し、
(ii)該短冊形状の試験片を円柱形状の金属芯の周面に巻きつけて固定した第1のローラを作製し、
(iii)該第1のローラを2kgfの荷重で、円柱形状の金属芯、及び、該金属芯の周面に形成されたカーボンブラック及びアクリロニトリルゴムを含有する表面層を有し、かつ、体積抵抗率が1.0×10Ω・cmである第2のローラに接触させ、
(iv)該第1のローラと該第2のローラの間に6.5kVの電圧を印加した状態で、該第1のローラを周速200mm/sの速度で15時間回転させる、
(II)第2処理:
(v)該電子写真用中間転写体から切り出した短冊形状の試験片を準備し、
(vi)該短冊形状の試験片を円柱形状の金属芯の周面に巻きつけて固定した第1のローラを作製し、
(vii)該第1のローラを2kgfの荷重で、円柱形状の金属芯、及び、該金属芯の周面に形成されたカーボンブラック及びアクリロニトリルゴムを含有する表面層を有し、かつ、体積抵抗率が1.0×10Ω・cmである第2のローラに接触させ、
(viii)該第1のローラと該第2のローラの間に6.5kVの電圧を印加した状態で、該第1のローラを周速200mm/sの速度で15時間回転させる;
(ix)工程(viii)後の該第1のローラを70℃で2時間加熱する。
さらに本発明は、該電子写真用中間転写体を有することを特徴とする電子写真装置に関する。
本発明によれば、繰り返し転写を行っても、放電による画像不良を抑制することができ、長期に亘って良好な画像を得ることができる電子写真用中間転写体及び電子写真装置を提供することが可能である。
本発明の電子写真装置の一例を示す模式図である。
(電子写真用中間転写体)
以下、本発明に係る電子写真用中間転写体(以下、中間転写体とも称する)について詳しく説明する。
本発明者らの検討で、感光体または記録媒体と、中間転写体とが接触する前後のギャップで放電(以下、異常放電とも称する)を抑制するためには、中間転写体の表面をイオン化ポテンシャルの高い化合物でコーティングすることが重要であることが分かった。
イオン化ポテンシャルと異常放電との関係について説明する。
イオン化ポテンシャルはイオン化エネルギーとも呼ばれ、原子から電子を取り去ってイオン化するために要するエネルギーのことである。また、放電とは電極間にかかる電位差によって、電極間に存在する気体に絶縁破壊が生じ、電子が放出され、電流が流れる現象である。つまり、イオン化ポテンシャルが高い表面は電子が放出されにくいため、異常放電が発生しにくくなる。
イオン化ポテンシャルの高い材料のうち、代表的なものとしてフッ素化合物が挙げられる。フッ素のような周期表の第17族に分類される元素は、電子を放出しにくいため、第一イオン化エネルギーが非常に高い。そのため、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やパーフルオロポリエーテル(PFPE)といったフッ素化合物はイオン化ポテンシャルを高く保つことができる。
しかしながら、イオン化ポテンシャルの高い化合物をコーティングした中間転写体であっても、繰り返し転写を行った場合、徐々に中間転写体表面のイオン化ポテンシャルが低下してしまうことが分かった。そして、さらに繰り返し転写を行っていくと、イオン化ポテンシャルの高い化合物をコーティングしていない中間転写体を用いた場合と同等のレベルまでイオン化ポテンシャルが低下してしまうことがあった。
この現象について、本発明者らは、以下のように考えている。
感光体から中間転写体、及び、中間転写体から紙にトナーを転写するためには、高い電圧を印加する必要である。また、中間転写体は転写残トナーを除去するために、クリーニングブレード等でクリーニングされることがある。そのため、トナーを転写する際に発生する放電によって、イオン化ポテンシャルの高い化合物が化学的に劣化したり、クリーニングによる摩擦によって、中間転写体表面のイオン化ポテンシャルの高い化合物が除去されてしまう。その結果、繰り返し転写を行ったときに、中間転写体表面のイオン化ポテンシャルが低下してしまい、異常放電が発生してしまうと考えられる。
これに対して、本発明では、基層及び表面層を有する電子写真用中間転写体であって、該表面層は、結着樹脂及びパーフルオロポリエーテルを含有し、該電子写真用中間転写体を、パーフルオロポリエーテルが溶解可能な溶剤である1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンとメチルエチルケトンを1:1(質量基準)で混合した溶剤に25℃で24時間浸漬後の、該表面層10mmあたりのパーフルオロポリエーテルの抽出量が、0.10mg以上5.00mg以下であり、上記第1処理及び第2処理を行っていない該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が55°以上であり、下記第1処理後の該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が40°以下であり、下記第2処理後の該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が50°以上であることを特徴とする電子写真用中間転写体によって上記の課題を解決している。
以下に、本発明についてさらに詳しく述べる。
PFPEはイオン化ポテンシャルが高いフッ素化合物であり、PFPEが中間転写体の表面に存在させることによって、異常放電を抑制することが可能となる。しかしながら、上記のように、繰り返し転写が行われると、中間転写体表面に存在するPFPEが劣化や除去されることによって、異常放電が発生しやすくなる。
これに対して、本発明では、繰り返し転写によって劣化又は除去された中間転写体表面のPFPEを、表面層中に存在するPFPEを中間転写体表面に移行させることで補い、異常放電の発生を抑制している。
そして、本発明に係る電子写真用中間転写体は、該電子写真用中間転写体を、PFPEが溶解可能な溶剤である1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンとメチルエチルケトンを1:1(質量基準)で混合した溶剤に25℃で24時間浸漬後の、表面層10mmあたりのPFPEの抽出量が、0.10mg以上5.00mg以下である。この規定は、本発明に係る中間転写体の表面層中に、中間転写体表面に移行しやすいPFPEが一定量存在することを意味する。また、該表面層10mmあたりのPFPEの抽出量は、0.20mg以上4.70mg以下であることがより好ましい。
このような本発明の電子写真用中間転写体を得るためには、中間転写体の表面に移行しやすいPFPEを多く表面層中に含有させることが重要となる。しかしながら、中間転写体を作製する際に、中間転写体表面に移行しやすいPFPEを多く添加するだけでは、表面層中にPFPEを多く含有させることは困難である。
そのため、本発明では、PFPEを表面層中に分散させるための分散剤を添加したり、表面層を形成する際の硬化条件を制御することよって、表面層中に、中間転写体の表面に移行しやすいPFPEを多く含有した中間転写体を作製している。
また、本発明の電子写真用中間転写体は、下記第1処理及び第2処理を行っていない該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が55°以上であり、下記第1処理後の該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が40°以下であり、下記第2処理後の該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が50°以上である。
(I)第1処理:
(i)該電子写真用中間転写体から切り出した短冊形状の試験片を準備し、
(ii)該短冊形状の試験片を円柱形状の金属芯の周面に巻きつけて固定した第1のローラを作製し、
(iii)該第1のローラを2kgfの荷重で、円柱形状の金属芯、及び、該金属芯の周面に形成されたカーボンブラック及びアクリロニトリルゴムを含有する表面層を有し、かつ、体積抵抗率が1.0×10Ω・cmである第2のローラに接触させ、
(iv)該第1のローラと該第2のローラの間に6.5kVの電圧を印加した状態で、該第1のローラを周速200mm/sの速度で15時間回転させる、
(II)第2処理:
(v)該電子写真用中間転写体から切り出した短冊形状の試験片を準備し、
(vi)該短冊形状の試験片を円柱形状の金属芯の周面に巻きつけて固定した第1のローラを作製し、
(vii)該第1のローラを2kgfの荷重で、円柱形状の金属芯、及び、該金属芯の周面に形成されたカーボンブラック及びアクリロニトリルゴムを含有する表面層を有し、かつ、体積抵抗率が1.0×10Ω・cmである第2のローラに接触させ、
(viii)該第1のローラと該第2のローラの間に6.5kVの電圧を印加した状態で、該第1のローラを周速200mm/sの速度で15時間回転させ、
(ix)工程(viii)後の該第1のローラを70℃で2時間加熱する。
この規定は、電子写真用中間転写体の表面に存在するフッ素量が減少した場合でも、その後、再びフッ素量が増加することを意味する。
本発明者らの検討の結果、X線光電子分光法(XPS)により測定された中間転写体表面のフッ素量と、中間転写体表面のノルマルヘキサデカン(以下、n−HDとも称する)の接触角に正の相関がみられることが分かった。そのため、本発明では、n−HDの接触角を用いることによって、中間転写体表面におけるフッ素量を規定している。
第1処理及び第2処理を行っていない中間転写体の表面のn−HDの接触角は55°以上であるという規定は、中間転写体の表面に一定量のフッ素が存在していることを意味する。
また、第1処理後の中間転写体の表面のn−HDの接触角は40°以下であるという規定は、第1処理後の中間転写体の表面のフッ素量が少ないことを意味する。これは、第1処理を行い、中間転写体表面のフッ素量を意図的に減少させることで、第1処理後の処理によって中間転写体表面のフッ素量が再び増加するかどうかを確認するための基準となる。
また、第2処理後の中間転写体の表面のn−HDの接触角は50°以上であるという規定は、第2処理後の中間転写体の表面に一定量のフッ素が存在していることを意味する。第2処理では、前記第1処理後に、さらに中間転写体を有する試験片固定ローラ(第1のローラ)を70℃で2時間加熱している。この加熱処理により、中間転写体の表面層中に、中間転写体表面に移行しやすいPFPEが存在する場合は、中間転写体表面に移行することが可能となる。
以上述べてきたように、上記のn−HDの接触角に関する規定を満たす電子写真用中間転写体は、中間転写体表面のフッ素量が減少した場合、中間転写体表面に移行することが可能なPFPEを一定量含む表面層を備えたものとなる。そのため、繰り返し転写を行った場合でも、異常放電による画像劣化を更に起こしにくい。
〔電子写真用中間転写体の構成〕
本発明の電子写真用中間転写体は、ベルト、ローラあるいはその他類似の形態で使用することが可能であり、形態を選ばず用いるのに好適な形態を選択して使用することが出来る。
以下に電子写真用中間転写体の構成について、ベルト形状のものを例に挙げて説明する。
<基層>
本発明の電子写真用中間転写体における基層は、樹脂に導電剤を含有させた半導電性のフィルムであることが好ましい。
ここで樹脂は熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれの樹脂を使用することも可能である。その中でも、高強度かつ高耐久性の点から、該基層は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド又はポリエステルを含むことが好ましく、より好ましくはポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエーテルエーテルケトンを含むことである。
樹脂は単一の樹脂であっても、複数の樹脂をブレンド又はアロイされた混合体であってもよく、目的とされる機械的強度などの特性に応じて最適に選択される。
導電剤としては、電子伝導性物質又はイオン電導性物質を用いることが可能である。
電子導電性物質としてはカーボンブラック、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン又は導電性高分子が使用可能である。
イオン導電性物質としては、過塩素酸ナトリウム、リチウム、カチオン性又はアニオン性のイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、もしくは、オキシアルキレン繰り返しユニットを持つオリゴマー又はポリマーが使用可能である。
基層は、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上1.0×1012Ω・cm以下であることが好ましい。また、表面抵抗率は1.0×10Ω/□以上1.0×1014Ω/□以下であることが好ましい。
基層の体積抵抗率を上記の範囲に設定することによって、連続駆動時のチャージアップや転写バイアス不足による画像不良を更に低減することができる。
また、基層の表面抵抗率を上記の範囲に設定することによって、転写材Sが中間転写ベルト7から離れる際の剥離放電やトナー飛散による画像不良を更に低減することができる。
また、基層上に表面層を形成した後の電子写真用中間転写体の体積抵抗率及び表面抵抗率についても同程度の値を示すことが好ましい。
このため、電子写真用中間転写体の表面層も半導電性であることが好ましい。すなわち、電子写真用中間転写体の体積抵抗率は1.0×10Ω・cm以上1.0×1012Ω・cm以下であることが好ましい。また、電子写真用中間転写体の表面抵抗率は1.0×10Ω/□以上1.0×1014Ω/□以下であることが好ましい。
電子写真用中間転写体の体積抵抗率や表面抵抗率を調整するために、表面層中に導電剤を含むことが好ましい。表面層中に含有される導電剤としては、上記基層に用いることができる導電剤と同じのものを使用することが出来る。
また、基層の膜厚は、30μm以上150μm以下であることが好ましい。
<表面層>
次に、電子写真用中間転写体の表面層に関して説明する。
{結着樹脂}
表面層に含まれる結着樹脂は、PFPEを分散させたり、基層との密着性を確保したり、機械的強度の特性を確保したりするために用いられる。
結着樹脂としては、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、並びに、それらの混合樹脂を用いることができる。
上記の結着樹脂の中でも特に、メタクリル樹脂またはアクリル樹脂(以下、メタクリル樹脂及びアクリル樹脂を総称してアクリル系樹脂と呼ぶ)が、好ましく用いられる。
具体的には、まず、アクリル系樹脂を形成するための重合性モノマー、溶媒、パーフルオロポリエーテル及び分散剤を湿式分散装置で均一分散し、分散液を得る。その分散液を基層上にバーコートまたはスプレーコートの如き塗布方法でコートする。そして、コートされた分散液から溶媒を乾燥除去したのち、熱硬化、電子線または紫外線によって重合性モノマーを重合させることによって表面層を形成する。
このとき重合を行うための、重合開始剤を適宜使用してもよい。
重合開始剤としては、アルキルフェノン、アシルフォスフィンオキサイドの如きラジカル重合性開始剤、芳香族スルホニウム塩の如きカチオン重合開始剤、ニフェジピンアニオン重合開始剤が挙げられる。具体的には、ラジカル重合開始剤としてはイルガキュアシリーズ(BASF社製)、カチオン重合開始剤としてはSPシリーズ(ADEKA社製)が挙げられる。
また、その他、上述した導電剤、酸化防止剤、レベリング剤、架橋剤及び難燃剤の如き公知の添加剤を適宜配合して使用してもよい。また固体フィラーを混合することは強度補強など必要特性に応じて適宜行ってもよい。
結着樹脂の含有量は、表面層の全固形分の質量に対して20.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30.0質量%以上90.0質量%以下である。
表面層の膜厚については成膜条件(例えば固形分濃度、成膜速度など)を調整することにより適宜所望の膜厚を形成することが可能である。表面層の膜厚は、実機耐久条件での摩耗及び損耗を考慮すると1μm以上であることが好ましく、ベルトを張架したときの耐屈曲性を考慮すると20μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下である。
アクリル系樹脂としては、
(i)ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、エチレングリコ―ルジアクリレート及びビスフェノールAジアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のアクリレート、及び、
(ii)ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、アルキルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチレングリコ―ルジメタクリレート及びビスフェノールAメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のメタクリレート
のいずれかの重合性モノマーを重合して得られた繰り返し構造単位を有する重合体であることが好ましい。
トナー付着を低減するという点から結着樹脂は硬いことが好ましい。このためアクリル系樹脂についても2官能以上の架橋性モノマーを多く使用し、高硬度とすることが好ましい。具体的には、重合性モノマーの平均アクリル官能数が2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、更に好ましくは4以上である。このような高架橋性で高硬度の樹脂は一般的に熱硬化性となり易く、その点で本発明においてはアクリル系樹脂を含めて熱硬化性樹脂は典型的に好ましく用いられる樹脂である。
次に、表面層の結着樹脂の物性について説明する。
表面層の結着樹脂としては、固体であることが好ましく、該結着樹脂のガラス転移温度が使用温度域以上、実質的には40℃以上であることが好ましく、より好ましくは50℃以上である。
{パーフルオロポリエーテル(PFPE)}
本発明においてPFPEは、パーフルオロアルキレンエーテルを繰り返し構造単位として有するオリゴマー又はポリマーのことである。パーフルオロアルキレンエーテルの繰り返し構造単位としては、パーフルオロメチレンエーテル、パーフルオロエチレンエーテル、及び、パーフルオロプロピレンエーテルの繰り返し構造単位が挙げられる。具体的には、ダイキン工業のデムナム、デュポン社のクライトックス、ソルベイソレクシス社のフォンブリンが挙げられる。その中でも、パーフルオロポリエーテルが下記式(a)
で示される繰り返し構造単位1、又は、下記式(b)
で示される繰り返し構造単位2を有していることが好ましい。
PFPEは、該繰り返し構造単位1又は該繰り返し構造単位2を有する場合、該繰り返し構造単位1の繰り返し数p及び該繰り返し構造単位2の繰り返し数qは、それぞれ独立で0≦p≦100、0≦q≦100であり、且つ、p+q≧1であることが好ましい。
また、該繰り返し構造単位1及び該繰り返し構造単位2の両方を有する場合、該繰り返し構造単位1と該繰り返し構造単位2とは、ブロック共重合体構造を形成していてもランダム共重合体構造を形成していてもよい。
該PFPEの重量平均分子量Mwは、PFPEの中間転写体の表面への移行性の観点から100以上9,000以下であることが好ましく、より好ましくは、100以上8,000以下である。
また、PFPEは、電子写真用中間転写体の表面層の結着樹脂と結合または結合に近い状態を形成することができる反応性官能基、または、表面層の結着樹脂と結合または結合に近い状態を形成することができない非反応性官能基を有していてもよい。
例えば、結着樹脂が付加反応によって形成される場合、結着樹脂を形成するためのモノマーと付加反応を生じる反応性官能基としてはアクリル基、メタクリル基またはオキシラニル基が挙げられる。
このような反応性官能基を有するPFPEとしては、ソルベイソレクシス社のアクリル基またはメタクリル基含有のFluorolink MD500、MD700、MD40、5101X、5113X、AD1700、ダイキン工業社のオプツールDACやシラン基含有のFluorolink S10がある。
また、例えば、結着樹脂が付加反応によって形成される場合、結着樹脂を形成するためのモノマーと付加反応を生じない非反応性官能基としては、ヒドロキシル基、トリフルオロメチル基またはメチル基が挙げられる。このような非反応性官能基を有するPFPEとしては、ソルベイソレクシス社のFluorolink D10H、D4000、Fomblin Z15、ダイキン工業社のデムナムS−20、S−65、S200がある。
その中でも、PFPEの中間転写体の表面への移行のしやすさの観点から、PFPEは非反応性官能基を有しているものが好ましい。
また、PFPEは、表面層の全固形分の質量に対して10.0質量%以上70.0質量%以下含有していることが好ましく、より好ましくは10.0質量%以上60.0質量%以下であり、更に好ましくは20.0質量%以上50.0質量%以下である。PFPEの含有量を上記の範囲内に調整することによって、繰り返し転写を行った場合でも、中間転写体の表面層の中から中間転写体の表面にPFPEを供給し、中間転写体表面のPFPEの量の減少をより抑制することができる。
ところで、本発明に係る中間転写体の表面層10mmあたりのPFPEの抽出量を0.10mg以上5.00mg以下に調整するためには、PFPEを表面層中に、結着樹脂とはできる限り化学結合していない状態で存在させることが好ましい。そのため、PFPEとしては、上述したように、結着樹脂結着樹脂と結合または結合に近い状態を形成することができる反応性官能基を有さないものを選択することが好ましい。また、反応性官能基を有するPFPEを用いる場合には、当該反応性官能基が結着樹脂と化学反応しないように、電子写真用部材を製造する過程を制御することが好ましい。
{分散剤}
電子写真用中間転写体の表面層は、パーフルオロポリエーテルを分散させるための分散剤を含有することが好ましい。このような分散剤を含有することによって、表面層中でのPFPEの分散状態をより安定させることができる。分散剤としては、パーフロオロアルキル鎖と炭化水素に親和性のある部位を持つ化合物、つまりは親フッ素と嫌フッ素の両親媒性を持つ化合物で、界面活性剤、両親媒性ブロックコポリマー及び両親媒性グラフトコポリマーが好ましく用いられる。その中でも、分散剤は、下記(i)及び(ii)の少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
(i)フルオロアルキル基を有するビニルモノマーと、アクリレートまたはメタクリレートとを共重合させて得られるブロック共重合体。
(ii)フルオロアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートと、ポリメチルメタクリレートを側鎖に有するメタクリレートマクロモノマーとを共重合させて得られる櫛型グラフト共重合体。
上記(i)のブロック共重合体としては、日本油脂(株)製のモディパーF200、F210、F2020、F600、FT−600が挙げられる。また、上記(ii)の櫛型グラフト共重合体としては、フッ素系グラフトポリマーとしては、東亜合成(株)製のアロンGF−150、GF−300、GF−400が挙げられる。
分散剤の含有量は、表面層の全固形分の質量に対して1.0質量%以上70.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5.0質量%以上60.0質量%以下である。
ここで、分散剤の種類及び配合量もまた、中間転写体の表面層10mmあたりのPFPEの抽出量を0.10mg以上5.00mg以下に調整するための重要な要素となり得る。
〔電子写真用中間転写体の製造方法〕
以下に本発明の電子写真用中間転写体の具体的な製造方法について説明する。なお、本発明は、以下の製造方法に制限されるわけではない。
{基層}
電子写真用中間転写体の基層は、以下の方法によって作製することが可能である。
例えば、熱硬化性樹脂を用いる場合、カーボンブラックの如き導電剤を、熱硬化性樹脂の前駆体又は可溶性の熱硬化性樹脂、溶剤とともにワニスとして分散する。そして、このワニスを遠心成型装置の成形型にコーティングし、コーティングされたものを焼成する焼成工程を経ることによって半導電性フィルムを成型することができる。
また、熱可塑性樹脂を用いる場合、カーボンブラックの如き導電剤と熱可塑性樹脂、必要に応じてさらに添加剤を混合し、2軸の混練装置などで溶融混練して半導電性の樹脂組成物を作製する。次にこの樹脂組成物を溶融押出しによりシート、フィルムまたはシームレスベルトの形状に押出す押出方法により半導電性フィルムを得ることが出来る。シームレスベルトは円筒ダイスから押し出しベルトとする方法でも、押出しにより成形したシートをつなぎ合わせてシームレス化してもよい。また、この成形方法の他に、熱プレスまたは射出成型を使用して成型することもできる。
また、電子写真用中間転写体の機械的強度及び耐久強度を強化する目的で、結晶化処理を施すことが好ましい。結晶化処理としては、例えば用いる樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度でアニーリング処理することであり、これにより用いた樹脂の結晶化を促進することが出来る。このようにして得られた電子写真用中間転写体は、機械的強度及び耐久強度に優れるだけでなく、耐磨耗性、耐薬品性、摺動性、強靭性及び難燃性の面においても優れたものを作製することが可能である。
なお、本発明の電子写真用中間転写体はJIS K 7113による引張り試験を行うことで優れた機械的強度を有していることを確認することが出来る。具体的には、電子写真用中間転写体の引張り弾性率は、1.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは2.0GPa以上、更に好ましくは2.5GPa以上である。また、電子写真用中間転写体の引張り破断伸びは10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。また屈曲疲労試験としてはJIS P 8115が知られているが、これにおいても優れた特性を確認することが出来る。
{表面層}
電子写真用中間転写体の表面層は、以下の方法によって作製することが可能である。
表面層は、
(1)パーフルオロポリエーテル、結着樹脂を形成するための重合性モノマー、分散剤及び重合開始剤を混合して混合物を得る混合工程、
(2)該混合物を基層上に塗布する塗布工程、及び、
(3)該混合物に紫外線を照射して該重合性モノマーを重合させる重合工程
を経て形成されることが好ましい。
まず、混合工程では、パーフルオロポリエーテル、結着樹脂を形成するための重合性モノマー、分散剤及び重合開始剤を撹拌型ホモジナイザー及び超音波ホモジナイザーで混合して、混合物を得る。このとき、混合物に溶媒、紫外線硬化剤、導電剤及び添加剤を更に添加してもよい。ここで、溶媒としては、MEK、MIBK、エチレングリコールを用いることができる。また、紫外線硬化剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤を用いることができる。また、添加剤としては、導電剤、フィラー粒子、着色剤、レベリング剤を用いることができる。
次に、塗布工程では、得られた混合物を基層上にバーコートもしくはスプレーコートによって塗布する。また、塗布した後、60〜90℃で乾燥し溶媒を留去する。
次に、重合工程では、基層上に塗布された混合物に紫外線照射装置によって紫外線を照射して混合物中の重合性モノマーを重合させる。このような工程を経ることによって本発明の電子写真用中間転写体を得ることができる。また、ベルト体へのコート方法としてリングコート法も使用できる。
〔電子写真装置〕
次に、図1を参照して、本発明の電子写真用中間転写体を用いた電子写真装置の一例を説明する。
図1の電子写真装置100は、電子写真方式のカラー画像形成装置(カラーレーザープリンタ)である。
画像形成装置100には、中間転写体である中間転写ベルト7に沿って、その移動方向に順に、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色成分の画像形成部である画像形成ユニットPy、Pm、Pc、Pkが配設されている。各画像形成ユニットの基本的な構成は同一であるので、画像形成ユニットの詳細については、イエロー画像形成ユニットPyについてのみ説明する。
イエロー画像形成ユニットPyは、像担持体としてドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと称する)1Yを有する。感光ドラム1Yは、アルミシリンダを基体として、その上に電荷発生層電荷輸送層及び表面保護層を順に積層して形成したものである。
また、イエロー画像形成ユニットPyは、帯電手段としての帯電ローラ2Yを備えている。帯電ローラ2Yに帯電バイアスを印加することで、感光ドラム1Yの表面は一様に帯電される。
感光ドラム1Yの上方には、画像露光手段としてのレーザー露光装置3Yが配設されている。レーザー露光装置3Yは、一様に帯電された感光ドラム1Yの表面を画像情報に応じて走査露光して、イエロー色成分の静電潜像をその表面に形成する。
感光ドラム1Yに形成された静電潜像は、現像手段としての現像器4Yによって現像剤であるところのトナーによって現像される。つまり、現像器4Yは、現像剤担持体としての現像ローラ4Ya、現像剤量規制部材としての規制ブレード4Ybを備えており、又現像剤としてイエロートナーを収容している。イエロートナーが供給された現像ローラ4Yaは、現像部において感光ドラム1Yと軽圧接されており、感光ドラム1Yと順方向に速度差を持って回転される。現像ローラ4Yaによって現像部に搬送されたイエロートナーは、現像ローラ4Yaに現像バイアスを印加することで、感光ドラム1Yに形成された静電潜像に付着する。これにより、感光ドラム1Yに可視像(イエロートナー像)が形成される。
中間転写体であるところの中間転写ベルト7は、駆動ローラ71、テンションローラ72、従動ローラ73に張架されており、感光ドラム1Yと接触して図中矢印の方向に移動(回転駆動)される。そして、1次転写部Tyに到達したイエロートナー像は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1Yに対向して圧接されている1次転写部材としての1次転写ローラ5Yによって、中間転写ベルト7上に転写される。
同様に、以上の作像動作を、中間転写ベルト7の移動に伴ってマゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各ユニットPm、Pc、Pkにおいて行い、中間転写ベルト7上にイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色のトナー像を積層する。4色のトナー層は中間転写ベルト7の移動に従って搬送され、2次転写部T’において、2次転写手段としての2次転写ローラ8により、所定のタイミングで搬送されてくる転写材S上に一括転写される。このような2次転写においては通常十分な転写率を確保するために数kVの転写電圧を印加するが、その際に転写ニップ近傍において放電が発生することがある。なお、この放電が転写部材(中間転写ベルト)の化学劣化の一因となっている。
転写材Sは、転写材収納部であるカセット12に収納されている。この転写材Sは、ピックアップローラ13によって機内に分離供給され、搬送ローラ対14、レジストローラ対15によって中間転写ベルト7に転写された4色のトナー像と同期をとられて2次転写部T’まで搬送される。
転写材Sに転写されたトナー像は、定着器9によって定着されて、例えばフルカラーの画像となる。定着器9は、加熱手段を備えた定着ローラ91と加圧ローラ92とを有し、転写材S上の未定着トナー像を加熱、加圧することで定着する。
その後、転写材Sは搬送ローラ対16、排出ローラ対17などによって機外に排出される。
中間転写ベルト7のクリーニング手段としてのクリーニングブレード11が、中間転写ベルト7の駆動方向の2次転写部T’の下流に配設されており、2次転写部T’において転写材Sに転写されずに中間転写ベルト7に残った転写残トナーを除去する。
以上説明したように感光体から中間転写ベルト、中間転写ベルトから記録媒体へトナー画像の電気的転写プロセスが繰り返し行われる。また、多数の転写媒体へ記録を繰り返すことで電気的転写プロセスが更に繰り返し行われることになる。
この電子写真装置は、以上の作像動作を中間転写ベルト7の移動に伴ってマゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各ユニットPm、Pc、Pkにおいて行い、中間転写ベルト7上にイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色のトナー像を積層する。4色のトナー層は中間転写ベルト7の移動に従って搬送され、2次転写部T’において、2次転写手段としての2次転写ローラ8により、所定のタイミングで搬送されてくる転写材S上に一括転写される。
以下に、実施例、比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
〔測定方法〕
以下の実施例1〜10及び比較例1〜4で作製された中間転写ベルト1〜14の物性(PFPEの抽出量及び抽出されたPFPEの重量平均分子量、ノルマルヘキサデカンの接触角)は以下の方法によって測定された。
<PFPE抽出量及び抽出されたPFPEの重量平均分子量>
電子写真用中間転写体のPFPEの抽出量及び抽出されたPFPEの重量平均分子量を、以下の方法で測定した。
まず、縦:50mm、横:50mm、表面層の層厚:4μmとした中間転写体を、PFPEが溶解可能な溶剤(ゼオローラH(日本ゼオン(株)製):メチルエチルケトン=1:1(質量基準))100mlに25℃で24時間浸漬する。その後、エバポレーターによって、該溶剤を除去し、残存物質の量からPFPEの抽出量を算出した。なお、ゼオローラHの化合物名は1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンである。
また、この残存物質を液体クロマトグラフィー分析((株)島津製作所製)を行い、抽出されたPFPEの重量平均分子量Mwの測定を行った。
<ノルマルヘキサデカンの接触角>
第1処理及び第2処理を行っていない電子写真用中間転写体、第1処理後及び第2処理後の電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカン(n−HD)の接触角は、接触角計(商品名:CA−W、協和界面科学(株)製)を用いて測定した。なお、表2の初期のn−HDの接触角とは、第1処理または第2処理を施していない電子写真用中間転写体のn−HDの接触角のことである。
第1処理および第2処理において、まず、電子写真用中間転写体から切り出した短冊形状の試験片を準備する。この短冊形状の試験片を円柱形状のSUSの金属芯の周面に巻きつけて固定した試験片固定ローラ(第1のローラ)を作製する。
このようにして得られた試験片固定ローラを2kgfの荷重で導電性ゴムローラ(第2のローラ)に押し当てる。そして、第1処理では、該試験片固定ローラと該導電性ゴムローラの間に6.5kVの電圧を印加した状態で、該試験片固定ローラを周速200mm/sの速度で15時間回転させる。また、第2処理では、この第1処理の後、上記試験片固定ローラを70℃で2時間加熱した。
なお、導電性ゴムローラとしては、円柱形状のSUSの金属芯の周面にカーボンブラックを添加して導電性を付与したアクリロニトリルゴムによる表面層を形成したものを用いた。また、この導電性ゴムローラの体積抵抗率は、1.0×10Ω・cmである。
〔画像評価〕
以下の実施例1〜10及び比較例1〜4で作製された中間転写ベルト1〜14について、以下の方法によって画像評価を行った。
<転写性の評価>
この電子写真用中間転写体である中間転写ベルトをキヤノン社製iRC2620に備え付けられているポリイミド製中間転写ベルトの代わりに取り付け、印刷を行った。このとき、印刷開始直後と1万枚印刷後(繰り返し転写1万回後)に印刷された画像について評価した。
画像評価の基準は以下のとおりである。
A:転写不良による画質の低下が見られない。
B:転写不良による画質の低下がほとんどない。
C:転写不良による画質の低下が生じているが、印刷面積の50%以下である。
D:転写不良による画質の低下が全面に発生している。
<トナー飛び散りの評価>
細線画像(7本/1mm)が紙上に転写にされた時点の未定着画像を出力し、それを100℃のオーブンを用いて非加圧で定着させた画像を得た。その画像をルーペを用いて観察し、各細線画像のトナーの飛び散りの有無を確認した。
A:トナーの飛び散りが発生した細線画像が0本
B:トナーの飛び散りが発生した細線画像が1〜2本
C:トナーの飛び散りが発生した細線画像が3〜4本
D:トナーの飛び散りが発生した細線画像が5本以上
(実施例1)
電子写真装置(キヤノン社製、iRC2620)に備え付けられているポリイミド製中間転写ベルト自体を基層とし、この基層上に、以下に示す方法で表面層を形成し、中間転写ベルトを作製した。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 8.0質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 17.0質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 5.0質量部
メチルエチルケトン 43.0質量部
エチレングリコール 15.0質量部
アンチモンドープ酸化錫微粒子(石原産業社製、SN−100P)
4.0質量部
光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア184)
2.0質量部
分散剤(東亜合成社製、GF−300(固形分濃度:25質量%))
63.0質量部
PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700(重量平均分子量:1,700))
21.0質量部
これらの材料を撹拌式ホモジナイザー(アズワン社製)で混合分散したのち、さらに分散装置ナノマイザー(吉田機械興業社製)により分散を行い、上記材料の混合分散液を得た。この混合分散液を上記電子写真装置(キヤノン社製、iRC2620)に備え付けられているポリイミド製中間転写ベルトにコートし、70℃で3分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製、出力:160W)を用いて、積算光量500mJ/cmの紫外線を照射することで重合し、表面層の膜厚が4μmの中間転写ベルト1を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト1の物性を表2、評価結果を表3に示す。
(実施例2)
実施例1において、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700)の添加量を7.0質量部に変更し、分散剤(東亜合成社製、GF−300)の添加量を21.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、中間転写ベルト2を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト2の物性を表2、評価結果を表3に示す。
(実施例3)
実施例1において、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700)を、PFPE(ソルベイソレクシス社D10H)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、中間転写ベルト3を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト3の物性を表2、評価結果を表3に示す。なお、PFPE(ソルベイソレクシス社製、D10H)の重量平均分子量は、1600である。
(実施例4)
実施例1において、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700)を、PFPE(ソルベイソレクシス社、MD40)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、中間転写ベルト4を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト4の物性を表2、評価結果を表3に示す。なお、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD40)の重量平均分子量は、4000である。
(実施例5)
実施例1において、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700)を、PFPE(ソルベイソレクシス社、MD500)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、中間転写ベルト5を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト5の物性を表2、評価結果を表3に示す。なお、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD500)の重量平均分子量は、1700である。
(実施例6)
実施例1において、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700)の添加量を14.0質量部に変更し、さらにPFPE(ソルベイソレクシス社製、D10H)を7.0質量部添加した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、中間転写ベルト6を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト6の物性を表2、評価結果を表3に示す。
(実施例7)
実施例6において、PFPE(ソルベイソレクシス社製、D10H)をPFPE(ソルベイソレクシス社製、MD40)に変更した以外は、実施例6と同様の方法で作製し、中間転写ベルト7を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト7の物性を表2、評価結果を表3に示す。
(実施例8)
実施例6において、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700)をPFPE(ソルベイソレクシス社製、MD40)に変更した以外は、実施例6と同様の方法で作製し、中間転写ベルト8を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト8の物性を表2、評価結果を表3に示す。
(実施例9)
実施例1において、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700)を、PFPE(ソルベイソレクシス社製、Z15)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、中間転写ベルト9を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト9の物性を表2、評価結果を表3に示す。なお、PFPE(ソルベイソレクシス社製、Z15)の重量平均分子量は、8000である。
(実施例10)
実施例3において、PFPE(ソルベイソレクシス社D10H)の添加量を70.0質量部に変更し、分散剤(東亜合成社製、GF−300)の添加量を140.0質量部に変更した以外は、実施例3と同様の方法で作製し、中間転写ベルト10を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト10の物性を表2、評価結果を表3に示す。
(比較例1)
PFPE(ソルベイソレクシス社製、Z15)を1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)(日本エニモント社製、フォンブリンソルベントZS−100)により2倍に希釈した。この希釈されたPFPEを、大量分取液体クロマトグラフ(島津製作所社製)により精製し、分子量の大きいもののみを取り出した。この分取されたPFPEの重量平均分子量Mwを測定したところ、10,000であった。この分取されたPFPEをPFPE−Mw10,000とする。
実施例1において、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700)をPFPE(PFPE−Mw10,000)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、中間転写ベルト11を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト11の物性を表2、評価結果を表3に示す。
(比較例2)
実施例1において、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700)をPFPE(ソルベイソレクシス社製、5113X)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、中間転写ベルト12を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト12の物性を表2、評価結果を表3に示す。なお、PFPE(ソルベイソレクシス社製、5113X)の重量平均分子量は、1000である。
(比較例3)
実施例1において、紫外線の代わりに、積算線量:1,000kGyの電子線によって重合した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、中間転写ベルト13を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト13の物性を表2、評価結果を表3に示す。
(比較例4)
実施例1において、分散剤(東亜合成社製、GF−300)を用いず、PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700)の添加量を1.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、中間転写ベルト14を得た。使用したPFPEの種類及び添加量、並びに、分散剤の種類及び添加量を表1、得られた中間転写ベルト14の物性を表2、評価結果を表3に示す。
(比較例5)
実施例1において、分散剤(東亜合成社製、GF−300)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で表面層を形成するための混合分散液を作製した。しかしながら、PFPEを混合分散液中に十分に分散させることができなかったため、中間転写ベルトを作製することができなかった。

Claims (12)

  1. 基層及び表面層を有する電子写真用中間転写体であって、
    該表面層は、結着樹脂及びパーフルオロポリエーテルを含有し、
    該電子写真用中間転写体を、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンとメチルエチルケトンを1:1(質量基準)で混合した溶剤に25℃で24時間浸漬後の、該表面層10mmあたりのパーフルオロポリエーテルの抽出量が、0.10mg以上5.00mg以下であり、
    下記第1処理及び第2処理を行っていない該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が55°以上であり、
    下記第1処理後の該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が40°以下であり、
    下記第2処理後の該電子写真用中間転写体の表面のノルマルヘキサデカンの接触角が50°以上であることを特徴とする電子写真用中間転写体:
    (I)第1処理:
    (i)該電子写真用中間転写体から切り出した短冊形状の試験片を準備し、
    (ii)該短冊形状の試験片を円柱形状の金属芯の周面に巻きつけて固定した第1のローラを作製し、
    (iii)該第1のローラを2kgfの荷重で、円柱形状の金属芯、及び、該金属芯の周面に形成されたカーボンブラック及びアクリロニトリルゴムを含有する表面層を有し、かつ、体積抵抗率が1.0×10Ω・cmである第2のローラに接触させ、
    (iv)該第1のローラと該第2のローラの間に6.5kVの電圧を印加した状態で、該第1のローラを周速200mm/sの速度で15時間回転させる、
    (II)第2処理:
    (v)該電子写真用中間転写体から切り出した短冊形状の試験片を準備し、
    (vi)該短冊形状の試験片を円柱形状の金属芯の周面に巻きつけて固定した第1のローラを作製し、
    (vii)該第1のローラを2kgfの荷重で、円柱形状の金属芯、及び、該金属芯の周面に形成されたカーボンブラック及びアクリロニトリルゴムを含有する表面層を有し、かつ、体積抵抗率が1.0×10Ω・cmである第2のローラに接触させ、
    (viii)該第1のローラと該第2のローラの間に6.5kVの電圧を印加した状態で、該第1のローラを周速200mm/sの速度で15時間回転させ、
    (ix)工程(viii)後の該第1のローラを70℃で2時間加熱する。
  2. 該パーフルオロポリエーテルの重量平均分子量Mwが、100以上9,000以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用中間転写体。
  3. 該表面層は、該パーフルオロポリエーテルを分散させるための分散剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用中間転写体。
  4. 該パーフルオロポリエーテルは、下記式(a)

    で示される繰り返し構造単位1、又は、下記式(b)

    で示される繰り返し構造単位2
    を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真用中間転写体。
  5. 該パーフルオロポリエーテルは、該表面層の全固形分の質量に対して10.0質量%以上70.0質量%以下含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真用中間転写体。
  6. 該パーフルオロポリエーテルは、ヒドロキシル基、トリフルオロメチル基またはメチル基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真用中間転写体。
  7. 該表面層10mmあたりのパーフルオロポリエーテルの抽出量が、0.20mg以上4.70mg以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真用中間転写体。
  8. 該結着樹脂は、アクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真用中間転写体。
  9. 該アクリル系樹脂は、
    (i)ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、エチレングリコ―ルジアクリレート及びビスフェノールAジアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のアクリレート、及び、
    (ii)ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、アルキルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチレングリコ―ルジメタクリレート及びビスフェノールAメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のメタクリレート
    のいずれかの重合性モノマーを重合して得られた繰り返し構造単位を有する重合体であることを特徴とする請求項8に記載の電子写真用中間転写体。
  10. 該表面層は、
    (1)該パーフルオロポリエーテル、該結着樹脂を形成するための重合性モノマー、該分散剤及び重合開始剤を混合して混合物を得る混合工程、
    (2)該混合物を該基層上に塗布する塗布工程、及び、
    (3)該混合物に紫外線を照射して該重合性モノマーを重合させる重合工程
    を経て形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子写真用中間転写体。
  11. 該基層はポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド又はポリエステルを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の電子写真用中間転写体。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子写真用中間転写体を有することを特徴とする電子写真装置。
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