JP2015028140A - マトリックス材 - Google Patents

マトリックス材 Download PDF

Info

Publication number
JP2015028140A
JP2015028140A JP2014109040A JP2014109040A JP2015028140A JP 2015028140 A JP2015028140 A JP 2015028140A JP 2014109040 A JP2014109040 A JP 2014109040A JP 2014109040 A JP2014109040 A JP 2014109040A JP 2015028140 A JP2015028140 A JP 2015028140A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
epoxy resin
resin
epoxy
matrix
matrix material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014109040A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6240560B2 (ja
Inventor
州一郎 吉田
Shuichiro Yoshida
州一郎 吉田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2014109040A priority Critical patent/JP6240560B2/ja
Priority to US14/306,814 priority patent/US9376560B2/en
Publication of JP2015028140A publication Critical patent/JP2015028140A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6240560B2 publication Critical patent/JP6240560B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L63/00Compositions of epoxy resins; Compositions of derivatives of epoxy resins
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G59/00Polycondensates containing more than one epoxy group per molecule; Macromolecules obtained by polymerising compounds containing more than one epoxy group per molecule using curing agents or catalysts which react with the epoxy groups
    • C08G59/02Polycondensates containing more than one epoxy group per molecule
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G59/00Polycondensates containing more than one epoxy group per molecule; Macromolecules obtained by polymerising compounds containing more than one epoxy group per molecule using curing agents or catalysts which react with the epoxy groups
    • C08G59/18Macromolecules obtained by polymerising compounds containing more than one epoxy group per molecule using curing agents or catalysts which react with the epoxy groups ; e.g. general methods of curing
    • C08G59/20Macromolecules obtained by polymerising compounds containing more than one epoxy group per molecule using curing agents or catalysts which react with the epoxy groups ; e.g. general methods of curing characterised by the epoxy compounds used
    • C08G59/32Epoxy compounds containing three or more epoxy groups

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Reinforced Plastic Materials (AREA)
  • Epoxy Resins (AREA)

Abstract

【課題】簡便且つ低コストに炭素繊維との接着性を高めて、炭素繊維複合強化材料からなる構造体の強度特性等を効果的に向上させることが可能なマトリックス材を提供する。【解決手段】炭素繊維複合材料用のマトリックス材は、樹脂成分としてマトリックス樹脂を含む。このマトリックス樹脂は、少なくとも、1分子中に4個のエポキシ基を含む多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂からなる第1エポキシ樹脂を含有する。マトリックス樹脂には、さらに、1分子中に3個のエポキシ基を含むp−アミノフェノール型エポキシ樹脂、又は、1分子中に2個のエポキシ基を含むテトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方を添加してもよい。なお、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量は99〜163である。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維強化複合材料用のマトリックス材に関する。
炭素繊維強化複合材料(CFRP)からなる構造体は、軽量で機械強度に優れるため、幅広い分野で利用されている。このような構造体は、一般的に、CFRPのプリプレグを経由して作製される。すなわち、先ず、互いに平行となるように配向させた複数の炭素繊維の束(UD材)や、縦横に炭素繊維を織り込んだクロス材にマトリックス材を含浸させることによって、シート状のプリプレグを形成する。このプリプレグを複数積層して加熱・加圧成形し、マトリックス材を硬化させることで、CFRPからなる構造体を得ることができる。なお、マトリックス材としては、強度や耐熱性等の観点から、エポキシ樹脂を樹脂成分(マトリックス樹脂)として含むものが好適に用いられる。
上記UD材から形成されたプリプレグないし構造体は、繊維方向の強度に比して、繊維方向に直交する方向の強度が小さくなる。また、上記UD材及びクロス材から形成されたプリプレグを複数積層してなる構造体では、各層同士の間の強度、ひいては積層方向の強度が上記繊維方向の強度に比して小さくなる。このように、CFRPからなる構造体では、特定方向の強度が相対的に小さくなり、強度特性に異方性がある。しかしながら、この構造体を、例えば、航空機部材として用いる場合、特に優れた強度特性等を備えることが求められる。このため、構造体の上記の特定方向の強度についても十分に向上させる必要がある。
そこで、炭素繊維とマトリックス材との界面の接着性を高めることで、構造体の異方性による強度低下を抑制して、上記の特定方向を含めた構造体全体の強度を向上させることが考えられる。この観点から、特許文献1、2に示す方法が提案されている。
すなわち、特許文献1記載の技術では、第1化合物と第2化合物とを特定の比率で含む混合物からなるサイジング剤を炭素繊維束の表面に塗布する表面処理工程を行っている。具体的には、この表面処理工程では、第1化合物及び第2化合物を有機溶媒又は水に溶解させてサイジング剤溶液を得て、該サイジング剤溶液中に炭素繊維束を浸漬した後、該有機溶媒等を乾燥除去している。第1化合物は、水酸基及び/又はカルボキシル基と、1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有する物質であり、第2化合物は、エポキシ基を有する物質である。
また、特許文献2には、炭素繊維の表面をビニルエステル樹脂等からなるサイジング剤で表面処理するとともに、マトリックス材を不飽和マトリックス材とエポキシ樹脂との混合型とすることが示されている。この炭素繊維の表面処理工程では、表面酸化処理を行った炭素繊維の表面に対して、液没ローラ等を介してサイジング剤を含浸させている。なお、不飽和マトリックス材としては、ビニルエステル樹脂等が挙げられ、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられている。
特開2011−214209号公報 特開2006−249395号公報
炭素繊維は、その表面がサイジング剤によって被覆された状態で市販されている。このような市販品に対し、特許文献1、2記載の方法のようにサイジング剤を塗布する場合、表面処理工程や、サイジング剤用の樹脂がさらに必要となる。従って、CFRPの構造体を得るための工程が煩雑になることや、コストが増大することが懸念される。また、サイジング剤用の樹脂がマトリックス材中に混入してしまうと、マトリックス樹脂の硬化阻害等が生じて構造体の強度を十分に向上させることが困難になることが考えられる。
特に、特許文献1の表面処理工程では、サイジング剤を有機溶媒等に溶解して炭素繊維に塗布するため、サイジング剤溶液中から有機溶媒等を完全に乾燥除去することは容易ではない。有機溶媒等が残存してしまった場合も、マトリックス樹脂の硬化阻害等が生じ易くなり、構造体の強度や耐熱性が低下してしまうことが懸念される。
さらに、特許文献2では、上記の通り、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂以外の樹脂(ビニルエステル樹脂等)との混合物からマトリックス材が構成されている。このように異なる種類の樹脂を複数混合すると、樹脂同士が良好な相溶性を示さないことや、複数の樹脂の間で成形収縮率がばらつくこと等が考えられる。従って、構造体にひび割れ等が生じ易くなり、構造体の強度等を十分に向上させることが困難になる懸念がある。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、簡便且つ低コストに炭素繊維との接着性を高めて、炭素繊維複合強化材料からなる構造体の強度特性等を効果的に向上させることが可能なマトリックス材を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、第1エポキシ樹脂と第2エポキシ樹脂の両方、又は、前記第1エポキシ樹脂のみからなるマトリックス樹脂を含有する、炭素繊維強化複合材料用のマトリックス材であって、
前記第1エポキシ樹脂は、1分子中に4個のエポキシ基を有する多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂からなり、
前記第2エポキシ樹脂は、1分子中に3個のエポキシ基を有するp−アミノフェノール型エポキシ樹脂、又は、1分子中に2個のエポキシ基を有するテトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方からなり、
前記マトリックス樹脂の下記の式(A)で求められる平均エポキシ当量が99〜163であることを特徴とする。
マトリックス樹脂の平均エポキシ当量=[第1エポキシ樹脂のエポキシ当量×(第1エポキシ樹脂の重量%/100)]+第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量 …(A)
ここで、第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は、下記の式(B)によって求められる値である。
第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量=[p−アミノフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量×(p−アミノフェノール型エポキシ樹脂の重量%/100)]+[テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂のエポキシ当量×(テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の重量%/100)] …(B)
本発明に係るマトリックス材中のマトリックス樹脂は、一般的なエポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂等に比べ、エポキシ基同士の間の主鎖骨格の分子量が小さく且つ芳香族環の含有率が大きいエポキシ樹脂からなる。
従って、このマトリックス材は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等に比して分子が剛直である分、硬化後の強度を高めることができる。また、マトリックス材中のマトリックス樹脂の平均エポキシ当量を効果的に小さくすることができる。すなわち、このマトリックス材は、炭素繊維の表面において化学結合を形成するためのエポキシ基を多く含むため、炭素繊維との接着強度を良好に高めることができる。
なお、本明細書において、「エポキシ当量」は、エポキシ樹脂の分子量を、該エポキシ樹脂1分子に含まれるエポキシ基の数で除することで算出される値である。すなわち、エポキシ当量(平均エポキシ当量)が小さくなるにつれて、単位重量あたりの樹脂に含まれるエポキシ基の数が多くなる。
ここで、単位重量あたりのエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数が多くなるにつれて、該エポキシ樹脂の粘度は上昇する傾向にある。すなわち、エポキシ樹脂のエポキシ当量を小さくするにつれて、炭素繊維の表面に対するエポキシ樹脂の濡れ性が低下する。これによって、炭素繊維の表面とエポキシ樹脂との接触面積が減少すると、互いの接着強度を高めることが困難になる。
このマトリックス材中のマトリックス樹脂では、平均エポキシ当量が99〜163の範囲に調整されている。これによって、単位重量あたりのエポキシ基数と、マトリックス材の粘度とを適切に均衡させることができる。すなわち、炭素繊維の表面とマトリックス材との接触面積を増大させつつ、互いの界面にエポキシ基による化学結合を良好に形成することができる。その結果、炭素繊維とマトリックス材との界面の接着強度を一層良好に高めることができる。
また、エポキシ樹脂中のエポキシ基数が多いほど、エポキシ樹脂の硬化強度を高めることができる一方で、靱性は低下してしまう。このマトリックス材では、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量が上記の範囲に調整されているため、マトリックス材の硬化強度と靱性(耐衝撃性)との均衡についても適切に図ることができる。
これらの結果、マトリックス材及び炭素繊維から形成される炭素繊維強化複合材料(CFRP)の構造体について、異方性による特定方向の強度低下を抑制しつつ、該構造体全体の強度を効果的に向上させることが可能になる。また、耐熱性や耐衝撃性等の特性にも優れた構造体を得ることができる。
さらに、このマトリックス材では、炭素繊維の表面に新たにサイジング剤を設けることなく、上記のように特性に優れた構造体を得ることができる。従って、構造体を得るための工程が煩雑になることや、コストが増大することを抑制できる。
また、上記の通り、マトリックス樹脂はエポキシ樹脂のみから構成され、エポキシ樹脂以外の樹脂(他種類の樹脂)を含まない。このため、複数種類の樹脂が混合された場合のように、複数の樹脂の間で成形収縮率がばらつくことや、樹脂同士が良好に相溶しないこと等を回避することができる。その結果、樹脂の硬化阻害、構造体のひび割れ等を抑制することができ、該構造体の強度や耐熱性を良好に向上させることができる。
以上から、本発明では、簡便且つ低コストに炭素繊維とマトリックス材との界面の接着性を高めて、最終的に得られるCFRPの構造体の強度、耐熱性、耐衝撃性等を十分に向上させることが可能になる。その結果、航空機部材として好適に用いることが可能な構造体を得ることができる。すなわち、信頼性の高い航空機部材を供給することが可能になる。
上記のマトリックス材中のマトリックス樹脂においては、例えば、第1エポキシ樹脂のエポキシ当量を21〜106、第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量を0〜142に設定することが好ましい。
なお、前記多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂は構造式(1)で示され、前記p−アミノフェノール型エポキシ樹脂は構造式(2)で示され、前記テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂は構造式(3)で示されるものであることが好ましい。
Figure 2015028140
Figure 2015028140
Figure 2015028140
上記のようなエポキシ基同士の間の主鎖骨格の分子量が小さく且つ芳香族環の含有率が大きいエポキシ樹脂からマトリックス樹脂を構成することで、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量を効果的に小さくすることができる。また、マトリックス材を硬化させてなる構造体の強度特性等を一層良好に向上させることができる。
この場合、上記の特性を得るには、前記多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂の割合を20〜100phr、前記p−アミノフェノール型エポキシ樹脂及び前記テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方の割合を80〜0phrとすればよい。ここで、phr(per hundred resin)は、マトリックス樹脂(エポキシ樹脂)の全重量を100としたときの重量の割合を示す。
第1エポキシ樹脂は、1分子中に4個のエポキシ樹脂を含む。このため、前記マトリックス樹脂中の第1エポキシ樹脂の割合を増大させると、該マトリックス樹脂中のエポキシ基数を効果的に増やすことができる。従って、マトリックス樹脂中の第1エポキシ樹脂の割合を20phr以上とすることで、マトリックス材の硬化強度を良好に高めることができる。
さらに、この場合、マトリックス樹脂中の第2エポキシ樹脂は、0〜80phrとなる。構造体の用途等に応じて、この範囲内で第2エポキシ樹脂の割合を調整することで、マトリックス材と炭素繊維との界面の接着強度を良好に高めることができる。また、マトリックス材の粘度や靱性等の特性についても、硬化強度との均衡を図りつつ、適切に向上させることができる。これによって、航空機部材として好適に用いることが可能な構造体を得ることが可能になる。
なお、前記多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂を30〜80phr、前記p−アミノフェノール型エポキシ樹脂及び前記テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方を70〜20phrとすることが一層好ましい。
上記のマトリックス材は、前記マトリックス樹脂100重量部に対して、40〜64重量部の硬化剤をさらに含有することが好ましい。この場合、前記マトリックス材を効果的に硬化させることができ、一層良好な強度特性等を有する構造体を効率良く得ることが可能になる。
上記のマトリックス材において、炭素繊維に対するマイクロドロップレット法による接着強度が66〜121MPaであることが好ましい。この場合、構造体の異方性によって相対的に低下し易い特定方向の強度についても十分に高めることができ、航空機部材としても好適に用いることが可能な特性を備える構造体を得ることができる。
ここで、マイクロドロップレット法による接着強度は、例えば、特開平8−334455号公報に記載されているマイクロドロップレット法による複合材の界面特性評価方法によって測定することができる。つまり、1本の炭素繊維に付着して硬化したマトリックス材を剪断の力で引き抜くのに必要な力から算出される。
なお、このように、マイクロドロップレット法を用いることで、構造体の異方性によって相対的に低下し易い上記の特定方向の強度についても、容易且つ効率的に評価することができる。すなわち、例えば、該構造体について、直接上記の特定方向、すなわち、炭素繊維の繊維方向に直交する方向や、積層方向の強度を評価する場合、実際に構造体を作製する工程が必要となる。しかしながら、マイクロドロップレット法を用いる場合、上記の通り、1本の炭素繊維にマトリックス材を塗布して硬化させることで測定試料を作製することができる。従って、プリプレグないし構造体を作製する必要がない分、短時間且つ簡便に評価を行うことができる。
本発明のマトリックス材中のマトリックス樹脂は、主鎖骨格の分子量が小さく且つ芳香族環の含有率が大きい第1エポキシ樹脂と第2エポキシ樹脂の両方、又は第1エポキシ樹脂のみからなる。また、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量が99〜163に調整されている。
このようなマトリックス材を硬化して得られる構造体では、炭素繊維とマトリックス材との界面の接着強度を十分に向上させることができるため、異方性による強度低下を抑制することができる。また、耐熱性や耐衝撃性等も兼ね備えることができる。この際、炭素繊維の表面に新たにサイジング剤を設ける必要や、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂以外の樹脂を複数混合して用いる必要がない。従って、良好な強度特性を備え、航空機部材としても好適に用いることが可能な構造体を低コスト且つ簡便に得ることができる。
実施例1〜9のマトリックス材における、エポキシ樹脂及び硬化剤の配合比率と、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量と、炭素繊維Aに対するマイクロドロップレット法による接着強度(剪断強度τ)との関係を示す図表である。 実施例10〜19のマトリックス材における、エポキシ樹脂及び硬化剤の配合比率と、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量と、炭素繊維Bに対する剪断強度τとの関係を示す図表である。 比較例のマトリックス材における、エポキシ樹脂及び硬化剤の配合比率と、エポキシ当量と、炭素繊維A、Bに対する剪断強度τとの関係を表す図表である。
以下、本発明に係るマトリックス材につき好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係るマトリックス材は、硬化剤が添加されたマトリックス樹脂からなり、炭素繊維強化複合材料(carbon-fiber-reinforced plastic;CFRP)に用いられる。すなわち、先ず、このマトリックス材を炭素繊維に含浸させることでプリプレグを作製する。このプリプレグを複数積層して加熱・加圧成形する。これによって、マトリックス材を硬化させることで、CFRPの構造体を得ることができる。
マトリックス材は、上記したようにマトリックス樹脂を樹脂成分として含む。本実施形態において、マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂のみからなり、第1エポキシ樹脂を必須の成分とする。また、マトリックス樹脂の後述する平均エポキシ当量は99〜163である。
第1エポキシ樹脂は、1分子中に4個のエポキシ基を含む多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂からなり、例えば、構造式(1)で示すテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンを好適に採用することができる。この種のエポキシ樹脂としては、商品名「アラルダイドMY721」(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ社製)等の市販品を使用することができる。
Figure 2015028140
第1エポキシ樹脂は、一般的なエポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂等に比して、エポキシ基同士の間の主鎖骨格の分子量が小さく且つ芳香族環の含有率が大きい。すなわち、第1エポキシ樹脂は、比較的、分子が剛直であり且つエポキシ当量が小さいため、優れた硬化強度を示す。
マトリックス樹脂に含まれるエポキシ樹脂は、上記したような第1エポキシ樹脂のみであってもよいが、下記に挙げるような第2エポキシ樹脂をさらに含んでもよい。この場合、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量を容易且つ効果的に調整して上記の範囲とすることができる。なお、第2エポキシ樹脂も第1エポキシ樹脂と同様の分子構造を有し、優れた硬化強度を示す。
第2エポキシ樹脂は、1分子中に3個のエポキシ基を含むp−アミノフェノール型エポキシ樹脂及び1分子中に2個のエポキシ基を含むテトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方からなる。
p−アミノフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、構造式(2)で示す、N,N−ビス(オキシラニルメチル)−4−(オキシラニルメトキシ)アニリンを好適に採用することができる。この場合、商品名「jER630」(三菱化学社製)等の市販品を使用することができる。
Figure 2015028140
また、テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂としては、例えば、構造式(3)で示す、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4−ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニルを好適に採用することができる。この場合、商品名「YX4000」(三菱化学社製)等の市販品を使用することができる。
Figure 2015028140
このマトリックス樹脂(エポキシ樹脂)における平均エポキシ当量は、具体的には、下記の式(A)に従って算出することができる。
マトリックス樹脂の平均エポキシ当量=[第1エポキシ樹脂のエポキシ当量×(第1エポキシ樹脂の重量%/100)]+第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量 …(A)
なお、第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は、下記の式(B)で算出される値である。
第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量=[p−アミノフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量×(p−アミノフェノール型エポキシ樹脂の重量%/100)]+[テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂のエポキシ当量×(テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の重量%/100)] …(B)
マトリックス樹脂が第1エポキシ樹脂のみである場合、p−アミノフェノール型エポキシ樹脂の重量%及びメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の重量%はいずれも0であるから、第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は0である。従って、この場合、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量は、第1エポキシ樹脂のエポキシ当量に等しい。
なお、第1エポキシ樹脂のエポキシ当量は、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂の分子量を4で除した値である。重量%は、マトリックス樹脂の全重量を100%としたときの重量割合、換言すれば、phr(=per hundred resin)である。すなわち、エポキシ当量(平均エポキシ当量)が小さくなるにつれて、単位重量あたりのエポキシ樹脂(マトリックス樹脂)に含まれるエポキシ基の個数が多くなる。
平均エポキシ当量の計算の一例につき説明する。例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(第1エポキシ樹脂・エポキシ当量=106)を50phr、N,N−ビス(オキシラニルメチル)−4−(オキシラニルメトキシ)アニリン(第2エポキシ樹脂・エポキシ当量=92)を40phr、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4−ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニル(第2エポキシ樹脂・エポキシ当量=177)を10phr含むマトリックス樹脂である場合、式(B)から算出される第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は、以下の通りである。なお、平均エポキシ当量は、小数点1位以下を四捨五入して整数で示している。
第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量
=(92×40/100)+(177×10/100)
=55
マトリックス樹脂の平均エポキシ当量は、この値と、式(A)とに基づき、以下のようにして求められる。
マトリックス樹脂の平均エポキシ当量
=[106×(50/100)]+54.5
=108
本実施形態においては、第1エポキシ樹脂及び第2エポキシ樹脂について、種類や配合を調整することで、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量を99〜163の範囲内に設定している。
すなわち、マトリックス樹脂は、上記の通り分子が剛直であり且つエポキシ当量が小さい第1エポキシ樹脂及び第2エポキシ樹脂の少なくとも一方を含んで構成されている。このため、マトリックス材を硬化して得られる構造体についての強度を高めることができる。また、炭素繊維の表面において化学結合を形成するエポキシ基を比較的多く含むため、マトリックス材と炭素繊維の界面との接着強度を良好に高めることができる。
この際、単位重量あたりのエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数が多くなるにつれ、エポキシ樹脂の粘度が上昇する傾向にある。エポキシ樹脂の粘度が過度に上昇すると、炭素繊維とマトリックス樹脂との接触面積が減少して、互いの接着強度を良好に高めることが困難になる懸念がある。一方で、エポキシ基は、炭素繊維との接着を担う要素の一つとなるため、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数が少なくなるにつれ、エポキシ樹脂と炭素繊維との接着強度が低下する傾向にある。
そこで、本実施形態では、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量を163以下とするようにしている。これにより、マトリックス樹脂の粘度が過度に上昇することを抑制しつつ、マトリックス材と炭素繊維との接着強度を十分に維持することができる。その結果、炭素繊維の表面に対するマトリックス材の濡れ性が低下することを抑制できる。すなわち、炭素繊維の表面とマトリックス材との接触面積が減少することや、これに起因して互いの接着強度が低下することを抑制できる。
また、エポキシ樹脂中のエポキシ基数が多いほど、硬化後のエポキシ樹脂自体の強度を高めることができる一方で、該硬化後のエポキシ樹脂の靱性は低下してしまう。このマトリックス樹脂では、平均エポキシ当量が上記の範囲に調整されることで、硬化後の該マトリックス樹脂の強度と靱性(耐衝撃性)との均衡についても適切に図ることが可能になる。
なお、本実施形態では、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量を99以上に設定することで、マトリックス材の硬化強度や、炭素繊維との接着強度等の強度特性を良好に向上させることができる。また、マトリックス材の架橋密度が過剰に高くなることを抑制できるため、マトリックス材の靱性が低下することを抑制できる。すなわち、マトリックス材が脆化することを効果的に回避できる。
第1エポキシ樹脂のエポキシ当量、第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量の各々は、例えば、21〜106、0〜142とすることが好ましい。第1エポキシ樹脂のエポキシ当量を21以上とすることで、エポキシ基の数が過剰となること、すなわち、マトリックス材の架橋密度が過剰に高くなることを抑制して、マトリックス材の脆化を抑制できる。また、第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量を142以下とすることで、エポキシ基の数を十分に増大させて、炭素繊維とマトリックス材のとの接着強度を良好に向上させることができる。従って、第1エポキシ樹脂と第2エポキシ樹脂とを混合して、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量を上記のように調製することで、優れた強度特性と靭性とを兼ね備えた構造体を得ることができる。
第1エポキシ樹脂がテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンであり、第2エポキシ樹脂がN,N−ビス(オキシラニルメチル)−4−(オキシラニルメトキシ)アニリン又は3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4−ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニルの少なくともいずれか一方であるときには、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの割合を20〜100phr、p−アミノフェノール型エポキシ樹脂又はテトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方の割合を80〜0phrとすることが好ましい。
一層好ましい割合は、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンが30〜80phr、N,N−ビス(オキシラニルメチル)−4−(オキシラニルメトキシ)アニリン又は3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4−ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニルの少なくともいずれか一方が70〜20phrである。
なお、N,N−ビス(オキシラニルメチル)−4−(オキシラニルメトキシ)アニリンは0〜50phr、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4−ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニルは0〜60phrとすることが好ましく、これらの双方が存在することが一層好ましい。
上記の通り、1分子中に4個のエポキシ基を含む第1エポキシ樹脂の割合を増大させると、マトリックス樹脂中のエポキシ基数を効果的に増やすことができる。従って、マトリックス樹脂中の第1エポキシ樹脂の割合を20phr以上とすることで、マトリックス材と炭素繊維との接着強度及びマトリックス材の硬化強度を良好に高めることができる。
また、構造体の用途等に応じて、上記の範囲内で第2エポキシ樹脂の割合を調整することで、単位重量あたりのエポキシ基数と、マトリックス材の粘度とを適切に均衡させることができる。すなわち、炭素繊維の表面とマトリックス材との接触面積を増大させつつ、互いの界面にエポキシ基による化学結合を良好に形成することができる。その結果、炭素繊維とマトリックス材との界面の接着強度を良好に高めることができる。
また、炭素繊維の表面にエッチング処理等が施されることによって、該炭素繊維の表面に凹凸形状が設けられる場合がある。この場合、上記の通りマトリックス材の粘度を調整することによって、該炭素繊維の凹凸形状内にマトリックス材を効果的に良好に進入させることが可能になる。これによって、炭素繊維の表面とマトリックス材との接触面積を拡大することができるとともに、互いの間にアンカー効果を生じさせることができ、上記の接着強度を一層高くすることができる。
これらの結果、マトリックス材及び炭素繊維から形成される構造体について、異方性による特定方向の強度低下を抑制しつつ、該構造体全体の強度を効果的に向上させることが可能になる。また、耐熱性や耐衝撃性等の特性にも優れた構造体を得ることができる。
さらに、マトリックス材では、構造体を得る際に、炭素繊維の表面に新たにサイジング剤を設ける必要がない。従って、構造体を得るための工程が煩雑になることや、コストが増大することを抑制できる。
また、上記の通り、マトリックス材に含まれる樹脂成分はエポキシ樹脂のみであり、エポキシ樹脂以外の樹脂(他種類の樹脂)は含まれていない。このため、複数種類の樹脂が混合された場合のように、複数種類の樹脂の間で成形収縮率がばらつくことや、樹脂同士が良好に相溶しないこと等を回避することができる。その結果、樹脂の硬化阻害、構造体のひび割れ等を抑制することができ、該構造体の強度や耐熱性を向上させることができる。
従って、本実施形態に係るマトリックス材では、簡便且つ低コストに炭素繊維とマトリックス材との界面の接着性を高めて、最終的に得られる構造体の強度、耐熱性、耐衝撃性等を十分に向上させることが可能になる。その結果、航空機部材として好適に用いることが可能な構造体を得ることができる。すなわち、信頼性の高い航空機部材を供給することが可能になる。
マトリックス材に含まれる硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであればよく、例えば、芳香族ポリアミン等を用いることができる。好適には、構造式(4)で示す4,4−ジアミノジフェニルスルフォンを採用することができる。この場合、商品名「Aradur976−1」(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ社製)等の市販品を使用することができる。
Figure 2015028140
なお、上記「アラルダイド」、「jER」、「Aradur」はともに登録商標である。
また、マトリックス樹脂に対する硬化剤の添加割合は、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量に応じて設定されればよいが、マトリックス樹脂を100重量部とするとき、硬化剤が40〜64重量部となることが好ましい。硬化剤を40重量部以上とすることで、マトリックス材を十分に硬化させることができる。また、硬化剤を64重量部以下とすることで、余剰となった硬化剤によって想定外の副反応が生じることを抑制できる。すなわち、硬化剤の添加割合を上記の通り設定することで、一層良好な強度特性等を有する構造体を効率良く得ることが可能になる。
以上のように構成されるマトリックス材からCFRPの構造体を、例えば、航空機部材等の用途として用いる場合、炭素繊維としては、低密度、高強度、高弾性率等の特徴から、PAN系のものが好適に用いられる。PAN系炭素繊維は、PAN(ポリアクリロニトリル)繊維を高温で炭化して得られるものである。また、この炭素繊維の特性として、好ましくは、引張強度;2000〜7000MPa、引張弾性率;200〜1000GPa、密度;1.5〜2.5g/cm3である。
このような炭素繊維に対する、マトリックス材のマイクロドロップレット法による接着強度は、66〜121MPaであることが好ましい。この範囲内であれば、硬化後のマトリックス材が十分な強度を有するため、構造体を種々の用途に活用することができる。すなわち、上記の接着強度を66MPaよりも大きくすることで、マトリックス材と繊維との接着性を十分に高めることができ、互いの界面で破壊が生じることを効果的に回避できる。一方、上記の接着強度が121MPa以内であれば、マトリックス材の架橋密度が過剰に高くなるほど、エポキシ基の数を増大させる必要がないため、構造体の靱性が低下すること等を抑制できる。
ここで、マイクロドロップレット法による接着強度は、例えば、特開平8−334455号公報に記載されているマイクロドロップレット法による複合材の界面特性評価方法によって測定することができる。
つまり、先ず、一定長さの炭素繊維の両端をホルダに固着した後、溶融状態のマトリックス材を該炭素繊維に付着させてマイクロドロップレットを形成する。
次に、上記のホルダを加熱炉等に入れ、マイクロドロップレットを硬化させた後、炭素繊維の移動のみを許容し、マイクロドロップレットの移動を阻止するブレードを炭素繊維上に配設する。そして、ブレード又はホルダのいずれか一方を固定した状態で、他方を移動させ、該ブレードによりマイクロドロップレットが炭素繊維から剥離するまで荷重を加える。この際にマイクロドロップレットに作用する最大荷重を測定し、この値を測定前のマイクロドロップレットと炭素繊維との接触面積で除することで、接着強度(剪断強度)が算出される。
以上から、本実施形態に係るマトリックス材では、低コスト且つ簡便に炭素繊維とマトリックス材との界面の接着強度を高めることができ、構造体について、耐熱性や耐衝撃性等との均衡を図りつつ強度を向上させることができる。その結果、航空機部材として優れた特性を備える構造体を得ることが可能になる。
なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
[実施例1〜9]
第1エポキシ樹脂を構成する多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂としてハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ社製のアラルダイドMY721(以下、MY721ともいう)を採用した。また、第2エポキシ樹脂を構成するp−アミノフェノール型エポキシ樹脂としてjER630を採用し、テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂としてYX4000(いずれも三菱化学社製)を採用した。さらに、硬化剤として、Aradur976−1(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ社製)を採用した。
これらの第1エポキシ樹脂(MY721)及び第2エポキシ樹脂(jER630及び/又はYX4000)の両方、又は該第1エポキシ樹脂のみからなるエポキシ樹脂に、上記の硬化剤を添加して実施例に係るマトリックス材を作製した。具体的には、MY721、jER630、YX4000、硬化剤それぞれの配合比率を図1に示す範囲で変化させて実施例1〜9のマトリックス材を作製した。
MY721、jER630、YX4000それぞれのエポキシ当量は、106、92、177である。これらのエポキシ当量と、図1に示すMY721、jER630、YX4000の配合比率とに基づいて、実施例1〜9のマトリックス樹脂の平均エポキシ当量をそれぞれ算出した。
さらに、炭素繊維に、商品名「T800SC」(東レ社製)を採用して炭素繊維Aとした。なお、炭素繊維Aの特性としては、繊維径が5.5μm、引張強度が5880MPa、引張弾性率が294GPaとなっている。
そして、実施例1〜9のマトリックス材それぞれについて、炭素繊維Aとの界面の接着強度(剪断強度τ)をマイクロドロップレット法によって測定した。この測定は、複合材料界面特性評価装置HM410(東栄産業株式会社製)を用いて行った。具体的には、先ず、1本の炭素繊維Aの両端を粘着テープによってホルダに固着する。この炭素繊維Aの表面に、スパチュラ等によって溶融状態のマトリックス材を付着させてマイクロドロップレットを形成する。
次に、ホルダを加熱炉に入れ、空気中、180℃、2時間の条件で、マイクロドロップレットを硬化させた。その後、炭素繊維A上に配設したブレードと、ホルダとを0.1mm/分の速さで相対的に移動させることで、該ブレードによって、マイクロドロップレットに引張荷重を加えた。これによって、マイクロドロップレットが炭素繊維Aから剥離するのに必要な最大引張荷重F(N)を求め、F/(πDL)に基づいて剪断強度(MPa)を算出した。ここで、Dは、炭素繊維Aの直径(m)であり、Lは、マイクロドロップレットの繊維接着長さ(m)である。
上記の測定を6回行って平均値を求め、該平均値から標準偏差を引いた値を剪断強度τとした。この剪断強度τによって、炭素繊維Aとマトリックス材との界面の接着強度の評価を行った。
実施例1〜9のマトリックス材のそれぞれについて、上記の通りエポキシ当量及び剪断強度τを求め、図1に併せて示した。
[実施例10〜19]
実施例1〜9と同様に、MY721、jER630、YX4000、硬化剤それぞれの配合比率を図2に示す範囲で変化させて実施例10〜19のマトリックス材を作製した。実施例10〜19のマトリックス材のそれぞれについても、実施例1〜9と同様に平均エポキシ当量を算出した。
また、炭素繊維に、商品名「IMS60」(東邦テナックス社製)を採用して炭素繊維Bとした。なお、炭素繊維Bの特性としては、繊維径が5.5μm、引張強度が5800MPa、引張弾性率が290GPaとなっている。そして、実施例10〜19のマトリックス材のそれぞれについて、炭素繊維Bとの界面の接着強度(剪断強度τ)をマイクロドロップレット法によって上記と同様に測定した。
実施例10〜19のマトリックス材のそれぞれのエポキシ当量及び剪断強度τについても、図2に併せて示した。
[比較例]
一般的なエポキシ樹脂として、構造式(5)に示すビスフェノールA型のエポキシ樹脂(4,4−イソプロピリデンジフェノールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパンの重縮合物)が知られている。このビスフェノールA型のエポキシ樹脂として、商品名「jER828」(三菱化学社製)を採用し、上記の硬化剤を添加して比較例のマトリックス材とした。
Figure 2015028140
この比較例のマトリックス材についても同様に、炭素繊維A、Bのそれぞれとの界面の接着強度(剪断強度τ)をマイクロドロップレット法によって測定した。その結果を図3にそれぞれ示す。なお、jER828のエポキシ当量は190である。また、比較例1のマトリックス樹脂100重量部に対する硬化剤の添加割合を33重量部とした。
図1より、炭素繊維Aに対する剪断強度τは、実施例1〜9のマトリックス材のうち、実施例1のマトリックス材において最大となった。すなわち、MY721、jER630、YX4000、硬化剤それぞれの配合比率が、50、50、0、64であり、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量が99であるとき、剪断強度τの値が110MPaとなった。
また、炭素繊維Aに対する剪断強度τは、実施例9のマトリックス材において最小となった。すなわち、MY721、jER630、YX4000、硬化剤それぞれの配合比率が、20、0、80、40であり、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量が163のとき、剪断強度τの値が66MPaとなった。また、図3より、炭素繊維Aに対する比較例のマトリックス材の剪断強度τは55MPaであった。
図2より、炭素繊維Bに対する剪断強度τは、実施例10〜19のマトリックス材のうち、実施例10のマトリックス材において最大となった。すなわち、MY721、jER630、YX4000、硬化剤それぞれの配合比率が、70、25、5、61であり、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量が106であるとき、剪断強度τの値が121MPaとなった。
また、炭素繊維Bに対する剪断強度τは、実施例19のマトリックス材において最小となった。すなわち、MY721、jER630、YX4000、硬化剤それぞれの配合比率が、25、0、75、42であり、マトリックス樹脂の平均エポキシ当量が159のとき、剪断強度τの値が70MPaとなった。また、図3より、炭素繊維Bに対する比較例のマトリックス材の剪断強度τは49MPaであった。
すなわち、実施例1〜19のマトリックス材はいずれも、比較例のマトリックス材よりも剪断強度τが大きいことが確認された。
実施例1〜19のマトリックス材は、上記のエポキシ樹脂からなり、且つマトリックス樹脂の平均エポキシ当量が99〜163である。また、マトリックス樹脂が第1エポキシ樹脂(MY721)を20phr以上含み、該マトリックス樹脂100重量部に対して、40〜64重量部の硬化剤が添加されている。従って、このような条件を満たすマトリックス材では、一般的なエポキシ樹脂からなるマトリックス材よりも炭素繊維の界面との接着強度を高めることができることが分かった。
具体的には、実施例1〜19のマトリックス材では、剪断強度τが66〜121MPaであり、一般的なエポキシ樹脂からなるマトリックス材の剪断強度τの1.2〜2.5倍に高められている。このように剪断強度τが高められた本実施形態のマトリックス材を用いてCFRPの構造体を作製することによって、該構造体全体の強度特性等を効果的に向上させることができる。従って、航空機部材として適用可能な優れた特性を備える構造体を得ることができる。

Claims (6)

  1. 第1エポキシ樹脂と第2エポキシ樹脂の両方、又は、前記第1エポキシ樹脂のみからなるマトリックス樹脂を含有する、炭素繊維強化複合材料用のマトリックス材であって、
    前記第1エポキシ樹脂は、1分子中に4個のエポキシ基を有する多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂からなり、
    前記第2エポキシ樹脂は、1分子中に3個のエポキシ基を有するp−アミノフェノール型エポキシ樹脂、又は、1分子中に2個のエポキシ基を有するテトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方からなり、
    前記マトリックス樹脂の下記の式(A)で求められる平均エポキシ当量が99〜163であることを特徴とするマトリックス材。
    マトリックス樹脂の平均エポキシ当量=[第1エポキシ樹脂のエポキシ当量×(第1エポキシ樹脂の重量%/100)]+第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量 …(A)
    ここで、第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は、下記の式(B)によって求められる値である。
    第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量=[p−アミノフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量×(p−アミノフェノール型エポキシ樹脂の重量%/100)]+[テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂のエポキシ当量×(テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の重量%/100)] …(B)
  2. 請求項1記載のマトリックス材において、
    第1エポキシ樹脂のエポキシ当量が21〜106であり、且つ第2エポキシ樹脂の平均エポキシ当量が0〜142であるマトリックス樹脂を含有することを特徴とするマトリックス材。
  3. 請求項1又は2記載のマトリックス材において、
    前記多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂が下記の構造式(1)で示され、
    前記p−アミノフェノール型エポキシ樹脂が下記の構造式(2)で示され、
    前記テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂が構造式(3)で示されるものであり、
    前記多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂を20〜100phr、前記p−アミノフェノール型エポキシ樹脂及び前記テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方を80〜0phr含むマトリックス樹脂を含有することを特徴とするマトリックス材。
    Figure 2015028140
    Figure 2015028140
    Figure 2015028140
  4. 請求項3記載のマトリックス材において、
    前記多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂を30〜80phr、前記p−アミノフェノール型エポキシ樹脂及び前記テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方を70〜20phr含むマトリックス樹脂を含有することを特徴とするマトリックス材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のマトリックス材において、
    前記マトリックス樹脂100重量部に対して、40〜64重量部の硬化剤が添加されることを特徴とするマトリックス材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のマトリックス材において、
    炭素繊維に対するマイクロドロップレット法による接着強度が66〜121MPaであることを特徴とするマトリックス材。
JP2014109040A 2013-06-26 2014-05-27 マトリックス材 Active JP6240560B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014109040A JP6240560B2 (ja) 2013-06-26 2014-05-27 マトリックス材
US14/306,814 US9376560B2 (en) 2013-06-26 2014-06-17 Matrix material

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013133555 2013-06-26
JP2013133555 2013-06-26
JP2014109040A JP6240560B2 (ja) 2013-06-26 2014-05-27 マトリックス材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015028140A true JP2015028140A (ja) 2015-02-12
JP6240560B2 JP6240560B2 (ja) 2017-11-29

Family

ID=52116211

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014109040A Active JP6240560B2 (ja) 2013-06-26 2014-05-27 マトリックス材

Country Status (2)

Country Link
US (1) US9376560B2 (ja)
JP (1) JP6240560B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6238130B2 (ja) * 2013-12-20 2017-11-29 本田技研工業株式会社 繊維強化樹脂成形品の製造方法
US10345702B2 (en) 2017-08-24 2019-07-09 International Business Machines Corporation Polymer brushes for extreme ultraviolet photolithography
JP7322771B2 (ja) * 2020-03-24 2023-08-08 トヨタ自動車株式会社 繊維強化樹脂成形品の製造方法
CN115725053A (zh) * 2022-11-24 2023-03-03 深圳市郎搏万先进材料有限公司 一种环氧树脂组合物、增强纤维预浸料及增强纤维复合材料

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5477699A (en) * 1977-12-01 1979-06-21 Toray Ind Inc Heat resistant epoxy resin composition
JPS6058419A (ja) * 1983-09-08 1985-04-04 Toray Ind Inc 炭素繊維強化用エポキシ樹脂組成物
JPH0335018A (ja) * 1989-06-30 1991-02-15 Tonen Corp エポキシ樹脂組成物
JPH0362821A (ja) * 1989-07-31 1991-03-18 Tonen Corp エポキシ樹脂組成物
JPH1017675A (ja) * 1996-04-30 1998-01-20 Arisawa Mfg Co Ltd 極低温において使用されるfrpのマトリックス及び極低温において使用されるfrp
WO2001081445A1 (fr) * 2000-04-21 2001-11-01 Mitsubishi Rayon Co., Ltd. Composition de resine epoxy et preimpregne fabrique avec cette composition de resine epoxy

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08334455A (ja) 1995-03-10 1996-12-17 Hitoshi Morishita 複合材の界面特性評価方法及び装置
JP3489025B2 (ja) * 2000-01-14 2004-01-19 大塚化学ホールディングス株式会社 エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた電子部品
JP4863630B2 (ja) 2004-12-10 2012-01-25 Agcマテックス株式会社 炭素繊維強化樹脂
TWI414538B (zh) * 2006-04-25 2013-11-11 Yokohama Rubber Co Ltd 纖維強化複合材料用環氧樹脂組成物
JP5477312B2 (ja) 2010-03-18 2014-04-23 東レ株式会社 サイジング剤塗布炭素繊維束およびその製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5477699A (en) * 1977-12-01 1979-06-21 Toray Ind Inc Heat resistant epoxy resin composition
JPS6058419A (ja) * 1983-09-08 1985-04-04 Toray Ind Inc 炭素繊維強化用エポキシ樹脂組成物
JPH0335018A (ja) * 1989-06-30 1991-02-15 Tonen Corp エポキシ樹脂組成物
JPH0362821A (ja) * 1989-07-31 1991-03-18 Tonen Corp エポキシ樹脂組成物
JPH1017675A (ja) * 1996-04-30 1998-01-20 Arisawa Mfg Co Ltd 極低温において使用されるfrpのマトリックス及び極低温において使用されるfrp
WO2001081445A1 (fr) * 2000-04-21 2001-11-01 Mitsubishi Rayon Co., Ltd. Composition de resine epoxy et preimpregne fabrique avec cette composition de resine epoxy

Also Published As

Publication number Publication date
JP6240560B2 (ja) 2017-11-29
US9376560B2 (en) 2016-06-28
US20150005458A1 (en) 2015-01-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5454138B2 (ja) エポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料、およびその製造方法
KR102081662B1 (ko) 에폭시 수지 조성물, 프리프레그 및 탄소 섬유 강화 복합 재료
TWI491683B (zh) 石墨烯複合塗層
JP6240560B2 (ja) マトリックス材
JP6977842B2 (ja) 熱硬化性樹脂組成物の製造方法、プリプレグ、繊維強化複合材料、繊維強化複合材料の製造方法、自動車材料、およびプリプレグの製造方法
CN110945061B (zh) 片状模塑料、预浸料和纤维增强复合材料
KR101950627B1 (ko) 에폭시 수지 조성물, 및 이것을 이용한 필름, 프리프레그 및 섬유 강화 플라스틱
WO2018043490A1 (ja) 熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、及び繊維強化プラスチック成形体とその製造方法
JP2014227473A (ja) 複合材料用エポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料およびそれらの製造方法
JP6439901B1 (ja) 繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、および繊維強化複合材料
TWI754045B (zh) 纖維強化複合材料的製造方法
JP2004346092A (ja) プリプレグ用樹脂組成物
JP2017203107A (ja) 成形材料および繊維強化複合材料
JP2010248664A (ja) 炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維束及び炭素繊維強化複合材料
JP5712908B2 (ja) 金属複合体の製造方法
TWI793219B (zh) 碳纖維之製造方法
JP6569215B2 (ja) マトリックス材
JP2009227907A (ja) エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた繊維強化複合材料
TW201512279A (zh) 纖維強化複合材料用組成物、預浸漬物、及纖維強化複合材料
JPH09132636A (ja) エポキシ樹脂組成物
US9670356B2 (en) Matrix material
JP6015027B2 (ja) サイジング剤、炭素繊維束および炭素繊維束の製造方法
JP6737410B1 (ja) シートモールディングコンパウンドおよび繊維強化複合材料
JP6447791B1 (ja) シートモールディングコンパウンド、プリプレグおよび繊維強化複合材料
JP2017075225A (ja) タイヤ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161129

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170809

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170815

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171005

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171024

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171106

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6240560

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150