JP2015027692A - 引上式連続鋳造装置及び引上式連続鋳造方法 - Google Patents

引上式連続鋳造装置及び引上式連続鋳造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】スタータの形状を工夫することにより、スタータによる溶湯の導出性を向上させることが可能な引上式連続鋳造装置及び引上式連続鋳造方法を提供すること。【解決手段】本発明の一態様に係る引上式連続鋳造装置は、溶湯M1を保持する溶湯保持炉101と、溶湯保持炉101に保持された溶湯M1の湯面から溶湯M1を導出するスタータSTと、スタータSTによって導出された保持溶湯M2に外力を印加することにより、鋳造する鋳物M3の断面形状を規定する形状規定部材102と、を備え、スタータSTは、胴体部107と、胴体部107よりも水平方向の断面積が小さい先端109を有する先端部108と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は引上式連続鋳造装置及び引上式連続鋳造方法に関する。
特許文献1には、発明者らにより、鋳型を要しない画期的な連続鋳造方法として、自由鋳造方法が提案されている。特許文献1に示したように、溶融金属(溶湯)の表面(すなわち湯面)にスタータを浸漬させた後、当該スタータを引き上げると、溶湯の表面膜や表面張力によりスタータに追従して溶湯も導出される。ここで、湯面近傍に設置された形状規定部材を介して、溶湯を導出し、冷却することにより、所望の断面形状を有する鋳物を連続鋳造することができる。
通常の連続鋳造方法では、鋳型によって断面形状とともに長手方向の形状も規定される。とりわけ、連続鋳造方法では、鋳型内を凝固した金属(すなわち鋳物)が通り抜ける必要があるため、鋳造された鋳物は長手方向に直線状に延びた形状となる。
これに対し、自由鋳造方法における形状規定部材は、鋳物の断面形状のみを規定し、長手方向の形状は規定しない。そして、形状規定部材は、湯面に平行な方向(すなわち水平方向)に移動可能であるから、長手方向の形状が様々な鋳物が得られる。例えば、特許文献1には、長手方向に直線状でなく、ジグザグ状あるいは螺旋状に形成された中空鋳物(すなわちパイプ)が開示されている。
特開2012−61518号公報
発明者は以下の課題を見出した。
特許文献1に記載の自由鋳造方法では、スタータによる溶湯の導出性が十分でない、という問題があった。
本発明は、上記を鑑みなされたものであって、スタータの形状を工夫することにより、スタータによる溶湯の導出性を向上させることが可能な引上式連続鋳造装置及び引上式連続鋳造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る引上式連続鋳造装置は、溶湯を保持する保持炉と、前記保持炉に保持された前記溶湯の湯面から前記溶湯を導出する導出部材と、前記導出部材によって導出された前記溶湯に外力を印加することにより、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材と、を備え、前記導出部材は、胴体部と、前記胴体部よりも水平方向の断面積が小さい先端を有する先端部と、を備えるものである。それにより、溶湯の湯面に形成された酸化膜を突き破ってスタータ(導出部材)を溶湯に浸漬させることができるため、スタータによる溶湯の導出性を向上させることができる。
前記先端部は、前記先端に向けて細くなるテーパ形状を有していることが好ましい。
前記先端の角度は45度以下であることが好ましい。
前記先端部は、複数の前記先端を有することが好ましい。
前記導出部材は、前記先端部又は前記胴体部の側面から突出した第1凸部、及び、前記先端部又は前記胴体部の側面から窪んだ第1凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに備えることが好ましい。
前記第1凸部の突出長さ又は前記第1凹部の窪み深さは1mm以上であることが好ましい。
複数の前記第1凸部又は複数の前記第1凹部を備えることが好ましい。
前記先端部は、先端から開口した開口部と、前記開口部の側面から突出した第2凸部、及び、前記開口部の側面から窪んだ第2凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに備えることが好ましい。
前記第2凸部の突出長さ又は前記第2凹部の窪み深さは1mm以上であることが好ましい。
複数の前記第2凸部又は複数の前記第2凹部を備えることが好ましい。
本発明の別の態様に係る引上式連続鋳造装置は、溶湯を保持する保持炉と、前記保持炉に保持された前記溶湯の湯面から前記溶湯を導出する導出部材と、前記導出部材によって導出された前記溶湯に外力を印加することにより、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材と、を備え、前記導出部材は、胴体部と、前記胴体部の側面から突出した第1凸部、及び、前記胴体部の側面から窪んだ第1凹部のうち少なくとも何れか一方と、を備えるものである。それにより、スタータ(導出部材)と溶湯との結合力を向上させることができるため、スタータによる溶湯の導出性を向上させることができる。
前記第1凸部の突出長さ又は前記第1凹部の窪み深さは1mm以上であることが好ましい。
前記導出部材は、複数の前記第1凸部又は複数の前記第1凹部を備えることが好ましい。
前記胴体部は、先端から開口した開口部と、前記開口部の側面から突出した第2凸部、及び、前記開口部の側面から窪んだ第2凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに備えることが好ましい。
前記第2凸部の突出長さ又は前記第2凹部の窪み深さは1mm以上であることが好ましい。
複数の前記第2凸部又は複数の前記第2凹部を備えることが好ましい。
本発明の一態様に係る引上式連続鋳造方法は、保持炉に保持された溶湯の湯面に導出部材を浸漬させるステップと、前記導出部材により前記溶湯を導出して、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材を通過させるステップと、を備え、前記導出部材を、胴体部と、前記胴体部よりも水平方向の断面積が小さい先端を有する先端部と、によって構成するものである。それにより、溶湯の湯面に形成された酸化膜を突き破ってスタータ(導出部材)を溶湯に浸漬させることができるため、スタータによる溶湯の導出性を向上させることができる。
前記先端部を前記先端に向けて細くなるテーパ形状にすることが好ましい。
前記先端の角度を45度以下にすることが好ましい。
前記先端部に複数の前記先端を設けることが好ましい。
前記導出部材に、前記先端部又は前記胴体部の側面から突出した第1凸部、及び、前記先端部又は前記胴体部の側面から窪んだ第1凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに設けることが好ましい。
前記第1凸部の突出長さ又は前記第1凹部の窪み深さを1mm以上にすることが好ましい。
複数の前記第1凸部又は複数の前記第1凹部を設けることが好ましい。
前記先端部に、先端から開口した開口部と、前記開口部の側面から突出した第2凸部、及び、前記開口部の側面から窪んだ第2凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに設けることが好ましい。
前記第2凸部の突出長さ又は前記第2凹部の窪み深さを1mm以上にすることが好ましい。
複数の前記第2凸部又は複数の前記第2凹部を設けることが好ましい。
本発明の別の態様に係る引上式連続鋳造方法は、保持炉に保持された溶湯の湯面に導出部材を浸漬させるステップと、前記導出部材により前記溶湯を導出して、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材を通過させるステップと、を備え、前記導出部材を、胴体部と、前記胴体部の側面から突出した第1凸部、及び、前記胴体部の側面から窪んだ第1凹部のうち少なくとも何れか一方と、によって構成するものである。それにより、スタータ(導出部材)と溶湯との結合力を向上させることができるため、スタータによる溶湯の導出性を向上させることができる。
前記第1凸部の突出長さ又は前記第1凹部の窪み深さを1mm以上にすることが好ましい。
前記導出部材に、複数の前記第1凸部又は複数の前記第1凹部を設けることが好ましい。
前記胴体部に、先端から開口した開口部と、前記開口部の側面から突出した第2凸部、及び、前記開口部の側面から窪んだ第2凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに設けることが好ましい。
前記第2凸部の突出長さ又は前記第2凹部の窪み深さを1mm以上にすることが好ましい。
複数の前記第2凸部又は複数の前記第2凹部を設けることが好ましい。
本発明により、スタータによる溶湯の導出性を向上させることができる。
実施の形態1に係る自由鋳造装置の構成例を示す断面図である。 図1に示す自由鋳造装置に設けられた形状規定部材102の平面図である。 実施の形態1に係る自由鋳造装置に設けられたスタータSTの構成例を示す斜視図である。 実施の形態1に係る自由鋳造装置の溶湯導出方法を示す図である。 スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。 スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。 実施の形態2に係る自由鋳造装置の構成例を示す断面図である。 実施の形態2に係る自由鋳造装置に設けられたスタータSTの構成例を示す斜視図である。 実施の形態2に係る自由鋳造装置の溶湯導出方法を示す図である。 スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。 スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。 スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。 スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。 スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。 スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。 スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。 図16に示すスタータSTの先端角度に応じた導出成功率の実験結果を示す図である。 図16に示すスタータSTの先端角度に応じた導出成功率の実験結果を示す写真である。 図16に示すスタータSTの凸部の突出長さに応じた導出成功率の実験結果を示す図である。 図16に示すスタータSTの凸部の突出長さに応じた導出成功率の実験結果を示す写真である。 本発明に係る自由鋳造装置のその他の構成例を示す断面図である。 図17に示す自由鋳造装置に設けられた形状規定部材102の平面図である。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
<実施の形態1>
まず、図1を参照して、実施の形態1に係る自由鋳造装置(引上式連続鋳造装置)について説明する。図1は、実施の形態1に係る自由鋳造装置の構成例を示す断面図である。図1に示すように、実施の形態1に係る自由鋳造装置は、溶湯保持炉(保持炉)101、外部形状規定部材102a、支持ロッド103、アクチュエータ104、冷却ノズル105、及び、導出部106を備えている。
溶湯保持炉101は、例えばアルミニウムやその合金などの溶湯M1を収容し、所定の温度に保持する。本実施の形態では、溶湯M1がアルミニウムである場合を例に説明する。なお、当然のことながら、溶湯M1はアルミニウム以外の他の金属や合金であってもよい。また、図1の例では、鋳造中に溶湯保持炉101へ溶湯を補充しないため、鋳造の進行とともに溶湯M1の表面(つまり湯面)は低下する。他方、鋳造中に溶湯保持炉101へ溶湯を随時補充し、湯面を一定に保持するような構成としてもよい。
外部形状規定部材102aは、例えばセラミックスやステンレスなどからなり、湯面近傍に配置されている。図1の例では、外部形状規定部材102aが湯面に接触するように配置されている。しかしながら、外部形状規定部材102aは、それらの下側(湯面側)の主面が湯面に接触しないように設置されてもよい。具体的には、外部形状規定部材102aの下側の主面と湯面との間に所定の(例えば0.5mm程度の)ギャップを設けてもよい。
外部形状規定部材102aは、鋳造する鋳物M3の外部形状を規定する。図1に示した鋳物M3は、水平方向の断面(以下、横断面と称す)の形状が四角形状の角柱鋳物である。即ち、より具体的には、外部形状規定部材102aは、鋳物M3の横断面の外径を規定する。
図2は、外部形状規定部材102aの平面図である。ここで、図1の外部形状規定部材102aの断面図は、図2のI−I断面図に相当する。図2に示すように、外部形状規定部材102aは、例えば矩形状の平面形状を有し、中央部に四角形状の開口部を有している。この開口部が、溶湯が通過する溶湯通過部102bとなる。このように、外部形状規定部材102a及び溶湯通過部102bによって形状規定部材102が構成されている。
導出部106は、溶湯M1に浸漬されるスタータ(導出部材)STと、スタータSTを例えば鉛直方向に駆動する引上機PLと、を有する。
図1に示すように、溶湯M1は、浸漬されたスタータSTと結合した後、その表面膜や表面張力により外形を維持したままスタータSTに追従して引き上げられ、溶湯通過部102bを通過する。ここで、溶湯M1の表面膜や表面張力によってスタータST(又は、スタータSTによって導出された溶湯M1が凝固して形成された鋳物M3)に追従して湯面から引き上げられた溶湯を保持溶湯M2と呼ぶ。また、鋳物M3と保持溶湯M2との界面が凝固界面である。
スタータSTは、例えば、溶湯M1の融点以上の高融点の材料で形成されている。それにより、スタータSTの溶損をある程度抑制することができる。本実施の形態では、スタータSTが溶湯M1と同じアルミニウムである場合を例に説明する。なお、スタータSTは、アルミニウムに限られず、ステンレス、鉄、それらの合金、セラミック等により形成されていてもよい。
図3は、実施の形態1に係るスタータSTの構成例を示す斜視図である。図3に示すスタータSTは、胴体部107と先端部108とにより構成されている。なお、胴体部107と先端部108とは一体形成されている。図3の例では、胴体部107が角柱形状を有している。また、先端部108は、スタータSTを降下させた場合に溶湯M1に最初に接触する先端109と、胴体部107に接続される他端と、を有する。ここで、先端部108の先端109は、胴体部107よりも水平方向の断面積(横断面積)が小さい。図3の例では、先端部108が、先端109に向けて細くなるテーパ形状(先の尖った形状)を有している。それにより、溶湯M1の湯面に形成された酸化膜を突き破って容易にスタータSTを溶湯M1内に浸漬させることができるため、スタータSTによる溶湯M1の導出性を向上させることができる。
支持ロッド103は、外部形状規定部材102aを支持する。なお、支持ロッド103は、アクチュエータ104に連結されている。
アクチュエータ104は、支持ロッド103を介して、外部形状規定部材102aを上下方向(鉛直方向)及び水平方向に移動させる機能を有する。それにより、鋳造の進行による湯面の低下とともに、外部形状規定部材102aを下方向に移動させることができる。また、外部形状規定部材102aを水平方向に移動させることができるため、鋳物M3の長手方向の形状を自由に変化させることができる。
冷却ノズル(冷却部)105は、スタータSTや鋳物M3に冷却ガス(空気、窒素、アルゴンなど)を吹き付け、冷却するためのものである。スタータSTに連結された引上機PLにより鋳物M3を引き上げつつ、冷却ガスによりスタータSTや鋳物M3を冷却することにより、凝固界面近傍の保持溶湯M2が順次凝固し、連続的に鋳物M3が形成されていく。
次に、図1〜図4を参照して、本実施の形態にかかる自由鋳造方法について説明する。図4は、実施の形態1に係る自由鋳造装置の溶湯導出方法を示す図である。
まず、溶湯保持炉101内に溶湯M1をセットする(図4のS101)。
次に、先の尖ったスタータSTを降下させ、溶湯通過部102bを通して、スタータSTの先端部108を溶湯M1の湯面に接触させる(図4のS102)。その後、スタータSTをさらに降下させ、スタータSTの先端部108で溶湯M1の湯面に形成された酸化膜を突き破って当該スタータSTを溶湯M1に浸漬させる(図4のS103)。
次に、所定の速度でスタータSTの引き上げを開始する(図4のS104)。ここで、スタータSTが湯面から離間しても、溶湯M1は、表面膜や表面張力によってスタータSTに追従して湯面から引き上げられ(導出され)保持溶湯M2を形成する。図1に示すように、保持溶湯M2は、溶湯通過部102bに形成される。換言すると、外部形状規定部材102aにより、保持溶湯M2に形状が付与される。
次に、スタータST及び鋳物M3は、冷却ノズル105から吹き出される冷却ガスにより冷却される。それにより、保持溶湯M2が上側から下側に向かって順に凝固し、鋳物M3が成長していく。このようにして、鋳物M3を連続鋳造することができる。
このように、本実施の形態に係る自由鋳造装置では、スタータSTが、胴体部よりも水平方向の断面積が小さい先端を有する(先の尖った)先端部を備えている。それにより、本実施の形態にかかる自由鋳造装置は、溶湯M1の湯面に形成された酸化膜を突き破って容易にスタータSTを溶湯M1内に浸漬させることができるため、スタータSTによる溶湯M1の導出性を向上させることができる。スタータSTを溶湯M1に浸漬する際、湯面の酸化膜がスタータST先端の壁面に付着し、酸化膜が付着したままスタータを引き上げると、引き上げ初期の溶湯の導出でスタータST壁面への溶湯の付きが悪くなりやすい。スタータSTの浸漬の際酸化膜を突き破ってスタータST先端が非酸化状態の溶湯内に入り込むと、スタータST先端の壁面に酸化膜が付着しにくく、先端に非酸化状態の溶湯が付着する。スタータST先端に非酸化状態の溶湯が付着すれば、後の引上げの際にも溶湯は比較的安定的に導出される傾向となり、途中一部で溶湯切れが発生するということが起こりにくくなる。
(実施の形態1に係るスタータSTのその他の構成例)
以下、図5及び図6を参照して、スタータSTのその他の構成例について説明する。図5及び図6は、スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。
図5に示すスタータSTでは、先端部108が、胴体部107よりも水平方向の断面積(横断面積)の小さい角柱形状を有している。図6に示すスタータSTでは、先端部108が、複数の先端109を有している。図5及び図6に示すスタータSTを用いることで、図3に示すスタータSTを用いる場合と同等の効果を奏することができる。なお、スタータSTの先端部108は、胴体部107よりも水平方向の断面積(横断面積)が小さい構成に適宜変更可能である。
<実施の形態2>
図7は、実施の形態2に係る自由鋳造装置の構成例を示す断面図である。図7に示す自由鋳造装置は、図1に示す自由鋳造装置と比較して、スタータSTの形状が異なる。図7に示す自由鋳造装置のその他の構成については、図1に示す自由鋳造装置の場合と同様であるため、その説明を省略する。
図8は、実施の形態2に係るスタータSTの構成例を示す斜視図である。図8に示すスタータSTは、胴体部(本例では角柱形状の胴体部)107と凸部(第1凸部)110とにより構成されている。なお、胴体部107と凸部110とは一体形成されている。ここで、凸部110は、胴体部107の側面から突出して設けられている。それにより、スタータSTの引き上げ時に、溶湯M1が凸部110によって持ち上げられる。より詳細には、スタータSTの引き上げ時に、溶湯M1の湯面近傍に形成された表面凝固層が凸部110によって持ち上げられる。つまり、スタータSTと溶湯M1との結合力が向上する。それにより、導出された溶湯M1が表面凝固層の重力により千切れるのを防ぐことができる。つまり、スタータSTによる溶湯M1の導出性を向上させることができる。
次に、図7〜図9を参照して、本実施の形態にかかる自由鋳造方法について説明する。図9は、実施の形態2に係る自由鋳造装置の溶湯導出方法を示す図である。
まず、溶湯保持炉101内に溶湯M1をセットする(図9のS201)。
次に、凸部110を有するスタータSTを降下させ、溶湯通過部102bを通して、スタータSTを溶湯M1の湯面に接触させる(図9のS202)。その後、スタータSTをさらに降下させ、スタータSTを溶湯M1内に浸漬させる(図9のS203)。
次に、所定の速度でスタータSTの引き上げを開始する(図9のS204)。ここで、スタータSTが湯面から離間しても、溶湯M1は、表面膜や表面張力によってスタータSTに追従して湯面から引き上げられ(導出され)保持溶湯M2を形成する。なお、溶湯M1の湯面近傍に形成された表面凝固層がスタータSTの凸部110によって持ち上げられるため、溶湯M1は、表面凝固層の重力によって千切れることなく導出され保持溶湯M2を形成する。図7に示すように、保持溶湯M2は、溶湯通過部102bに形成される。換言すると、外部形状規定部材102aにより、保持溶湯M2に形状が付与される。
次に、スタータST及び鋳物M3は、冷却ノズル105から吹き出される冷却ガスにより冷却される。それにより、保持溶湯M2が上側から下側に向かって順に凝固し、鋳物M3が成長していく。このようにして、鋳物M3を連続鋳造することができる。
このように、本実施の形態に係る自由鋳造装置では、スタータSTが、胴体部107の側面から突出した凸部を備えている。それにより、本実施の形態にかかる自由鋳造装置は、スタータSTと溶湯M1との結合力を向上させることができるため、スタータSTによる溶湯M1の導出性を向上させることができる。スタータST凸部にある段差で溶湯との接触面積が大きくなり、また溶湯がスタータSTの凸部に引っかかりやすくなることが結合力の向上の1つの理由になると思われる。
(実施の形態2に係るスタータSTのその他の構成例)
以下、図10〜図16を参照して、スタータSTのその他の構成例について説明する。図10〜図16は、スタータSTのその他の構成例を示す斜視図である。
図10に示すスタータSTは、胴体部107の側面から突出した凸部110を複数段備えている。図11に示すスタータSTは、胴体部107の側面から引上げ方向に向けて突出した凸部110を備えている。図10及び図11に示すスタータSTを用いることで、スタータSTと溶湯M1との結合力をさらに向上させることができる。
図12に示すスタータSTは、凸部110に代えて、胴体部107の側面から窪んだ凹部(第1凹部)111を備える。図13に示すスタータSTは、胴体部107の側面から窪んだ凹部111を複数段備える。図12及び図13に示すスタータSTを用いることで、図8及び図10に示すスタータST等を用いる場合と同様に、スタータSTと溶湯M1との結合力を向上させることができる。
図14に示すスタータSTは、胴体部107の先端中央から開口する開口部112と、開口部112の側面から突出した凸部(第2凸部)113と、をさらに備える。なお、凸部113の代わりに、開口部112の側面から窪んだ凹部(第2凹部)が設けられてもよい。図14に示すスタータSTを用いることで、すでに示した他のスタータSTの場合と同様に、スタータSTと溶湯M1との結合力を向上させることができる。
なお、実施の形態1で説明したスタータSTの形状と、実施の形態2で説明したスタータSTの形状と、は組み合わされてもよい。この場合、例えば、凸部110は、胴体部107の側面だけでなく、先端部108の側面から突出していてもよく、凹部111は、胴体部107の側面だけでなく、先端部108の側面から窪んでいてもよい。また、開口部112は、先端部108の先端から開口する。それにより、溶湯M1の湯面に形成された酸化膜を突き破って容易にスタータSTを溶湯M1内に浸漬させることができるとともに、スタータSTと溶湯M1との結合力を向上させることができる。
図15及び図16に示すスタータSTは、実施の形態1,2で説明したスタータSTの形状が組み合わされた例である。図15に示すスタータSTは、図3に示すスタータSTの形状に加え、胴体部107の側面に突出した凸部110をさらに備えている。結果として、図15に示すスタータSTは、正面視して矢印型の形状を有している。図16に示すスタータSTは、図15に示すスタータSTと類似する形状であるが、正面視して長方形状の板材の長手方向の側面の一部をくり抜き、短手方向の側面に接する2つの角部を切り落とすことで、容易に形成することができる。
(実験結果)
続いて、発明者らが、スタータSTの先端角度Aや凸部110の突出長さLを様々に変更して、スタータSTによる溶湯M1の導出性を実験したので、その実験結果について説明する。
なお、実験では、図16に示すスタータSTが用いられた。スタータSTは、アルミニウム合金(A5052)からなり、溶湯M1に浸漬する前は常温に保たれている。また、溶湯M1も、アルミニウム合金(A5052)であり、720℃に保たれている。スタータSTの引上げ速度は、1mm/secである。
図17は、スタータSTの先端角度に応じた導出成功率の実験結果を示す図である。なお、ここでいう導出成功率とは、溶湯M1の湯面に形成された酸化膜を突き破ってスタータSTを溶湯M1内に浸漬させることができた率(実験総数に対する成功の割合)のことである。
図17に示すように、先端角度Aが小さいほど導出成功率が高くなっていることがわかる。特に、先端角度Aが45°以下では、導出成功率が100%近くにまで高くなっている。
図18は、スタータSTの先端角度Aに応じた導出成功率の実験結果を示す写真である。左の写真は、先端角度Aが大きくて溶湯M1の導出に成功しなかった例を示している。この例では、溶湯M1の湯面に形成された酸化膜を完全に突き破ることができなかったため、残った酸化膜が保持溶湯M2表面に付着などして成型品の形状に影響を与えている。右の写真は、先端角度Aが小さくて溶湯M1の導出に成功した例を示している。この例では、溶湯M1の湯面に形成された酸化膜を突き破ることができたため、酸化膜が成型品の形状に影響を与えていない。
図19は、スタータSTの凸部110の突出長さLに応じた導出成功率の実験結果を示す図である。なお、ここでいう導出成功率とは、スタータSTの引き上げ時に、溶湯M1の湯面近傍に形成された表面凝固層が凸部110によって持ち上げられることで精度良く溶湯M1を導出できた率(実験総数に対する成功の割合)のことである。
図19に示すように、突出長さLが大きいほど導出成功率が高くなっていることがわかる。特に、突出長さLが1.0mm以上では、導出成功率が100%近くにまで高くなっている。
図20は、スタータSTの凸部110の突出長さLに応じた導出成功率の実験結果を示す写真である。左の写真は、突出長さLが短くて溶湯M1の導出に成功しなかった例を示している。この例では、凸部110が表面凝固層の重力を支えきれず、導出された溶湯M1が表面凝固層の重力によって千切れかけている。右の写真は、突出長さLが長くて溶湯M1の導出に成功した例を示している。この例では、凸部110が表面凝固層の重力を支えることでき、溶湯M1は表面凝固層の重力によって千切れることなく導出されている。
以上のように、上記実施の形態1,2に係る自由鋳造装置では、スタータSTが、胴体部107よりも水平方向の断面積が小さい先端109を有する先端部108を備えたり、胴体部107の側面から突出した凸部111を備えたりしている。それにより、上記実施の形態1,2に係る自由鋳造装置は、溶湯M1の湯面に形成された酸化膜を突き破って容易にスタータSTを溶湯M1内に浸漬させたり、スタータSTと溶湯M1との結合力を向上させたりすることができるため、スタータSTによる溶湯M1の導出性を向上させることができる。
上記実施の形態では、角柱形状の鋳物(角柱鋳物)を鋳造する場合を例に説明したが、これに限られない。角筒形状、円柱形状、円筒形状等のその他の形状の鋳物を鋳造する場合にも、本発明を適用可能である。以下、図21及び図22を参照して、角筒形状の鋳物を鋳造する場合について簡単に説明する。
図21は、本発明に係る自由鋳造装置のその他の構成例を示す断面図である。図21に示す自由鋳造装置は、外部形状規定部材102aに加えて内部形状規定部材102cをさらに備える。
内部形状規定部材102cは、鋳造する鋳物M3の内部形状を規定し、外部形状規定部材102aは、鋳造する鋳物M3の外部形状を規定する。図21に示した鋳物M3は、水平方向の断面(以下、横断面と称す)の形状が管状の中空鋳物(つまりパイプ)である。即ち、より具体的には、内部形状規定部材102cは、鋳物M3の横断面の内径を規定し、外部形状規定部材102aは、鋳物M3の横断面の外径を規定する。
図22は、内部形状規定部材102c及び外部形状規定部材102aの平面図である。ここで、図21の内部形状規定部材102c及び外部形状規定部材102aの断面図は、図22のII−II断面図に相当する。図22に示すように、外部形状規定部材102aは、例えば矩形状の平面形状を有し、中央部に四角形状の開口部を有している。内部形状規定部材102cは、四角形状の平面形状を有し、外部形状規定部材102aの開口部の中央部に配置されている。内部形状規定部材102cと外部形状規定部材102aとの間の間隙が、溶湯が通過する溶湯通過部102bとなる。このように、内部形状規定部材102c、外部形状規定部材102a、溶湯通過部102bによって形状規定部材102が構成されている。このような構成により、角筒形状の鋳物が鋳造される。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記した構成例は組み合わせて用いられても良い。
101 溶湯保持炉
102 形状規定部材
102a 外部形状規定部材
102b 溶湯通過部
102c 内部形状規定部材
103 支持ロッド
104 アクチュエータ
105 冷却ノズル
106 導出部
107 胴体部
108 先端部
109 先端
110 凸部
111 凹部
112 開口部
M1 溶湯
M2 保持溶湯
M3 鋳物
ST スタータ
PL 引上機

Claims (32)

  1. 溶湯を保持する保持炉と、
    前記保持炉に保持された前記溶湯の湯面から前記溶湯を導出する導出部材と、
    前記導出部材によって導出された前記溶湯に外力を印加することにより、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材と、を備え、
    前記導出部材は、
    胴体部と、
    前記胴体部よりも水平方向の断面積が小さい先端を有する先端部と、を備えた、引上式連続鋳造装置。
  2. 前記先端部は、前記先端に向けて細くなるテーパ形状を有する、請求項1に記載の引上式連続鋳造装置。
  3. 前記先端の角度は45度以下である、請求項2に記載の引上式連続鋳造装置。
  4. 前記先端部は、複数の前記先端を有する、請求項1〜3の何れか一項に記載の引上式連続鋳造装置。
  5. 前記導出部材は、
    前記先端部又は前記胴体部の側面から突出した第1凸部、及び、前記先端部又は前記胴体部の側面から窪んだ第1凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに備えた、請求項1〜4の何れか一項に記載の引上式連続鋳造装置。
  6. 前記第1凸部の突出長さ又は前記第1凹部の窪み深さは1mm以上である、請求項5に記載の引上式連続鋳造装置。
  7. 複数の前記第1凸部又は複数の前記第1凹部を備える、請求項5又は6に記載の引上式連続鋳造装置。
  8. 前記先端部は、
    先端から開口した開口部と、
    前記開口部の側面から突出した第2凸部、及び、前記開口部の側面から窪んだ第2凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに備えた、請求項1〜7のいずれか一項に記載の引上式連続鋳造装置。
  9. 前記第2凸部の突出長さ又は前記第2凹部の窪み深さは1mm以上である、請求項8に記載の引上式連続鋳造装置。
  10. 複数の前記第2凸部又は複数の前記第2凹部を備える、請求項8又は9に記載の引上式連続鋳造装置。
  11. 溶湯を保持する保持炉と、
    前記保持炉に保持された前記溶湯の湯面から前記溶湯を導出する導出部材と、
    前記導出部材によって導出された前記溶湯に外力を印加することにより、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材と、を備え、
    前記導出部材は、
    胴体部と、
    前記胴体部の側面から突出した第1凸部、及び、前記胴体部の側面から窪んだ第1凹部のうち少なくとも何れか一方と、を備えた、引上式連続鋳造装置。
  12. 前記第1凸部の突出長さ又は前記第1凹部の窪み深さは1mm以上である、請求項11に記載の引上式連続鋳造装置。
  13. 前記導出部材は、複数の前記第1凸部又は複数の前記第1凹部を備える、請求項11又は12に記載の引上式連続鋳造装置。
  14. 前記胴体部は、
    先端から開口した開口部と、
    前記開口部の側面から突出した第2凸部、及び、前記開口部の側面から窪んだ第2凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに備えた、請求項11〜13の何れか一項に記載の引上式連続鋳造装置。
  15. 前記第2凸部の突出長さ又は前記第2凹部の窪み深さは1mm以上である、請求項14に記載の引上式連続鋳造装置。
  16. 複数の前記第2凸部又は複数の前記第2凹部を備える、請求項14又は15に記載の引上式連続鋳造装置。
  17. 保持炉に保持された溶湯の湯面に導出部材を浸漬させるステップと、
    前記導出部材により前記溶湯を導出して、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材を通過させるステップと、を備え、
    前記導出部材を、
    胴体部と、
    前記胴体部よりも水平方向の断面積が小さい先端を有する先端部と、によって構成する、引上式連続鋳造方法。
  18. 前記先端部を前記先端に向けて細くなるテーパ形状にする、請求項17に記載の引上式連続鋳造方法。
  19. 前記先端の角度を45度以下にする、請求項18に記載の引上式連続鋳造方法。
  20. 前記先端部に複数の前記先端を設ける、請求項17〜19の何れか一項に記載の引上式連続鋳造方法。
  21. 前記導出部材に、
    前記先端部又は前記胴体部の側面から突出した第1凸部、及び、前記先端部又は前記胴体部の側面から窪んだ第1凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに設ける、請求項17〜20の何れか一項に記載の引上式連続鋳造方法。
  22. 前記第1凸部の突出長さ又は前記第1凹部の窪み深さを1mm以上にする、請求項21に記載の引上式連続鋳造方法。
  23. 複数の前記第1凸部又は複数の前記第1凹部を設ける、請求項21又は22に記載の引上式連続鋳造方法。
  24. 前記先端部に、
    先端から開口した開口部と、
    前記開口部の側面から突出した第2凸部、及び、前記開口部の側面から窪んだ第2凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに設ける、請求項17〜23のいずれか一項に記載の引上式連続鋳造方法。
  25. 前記第2凸部の突出長さ又は前記第2凹部の窪み深さを1mm以上にする、請求項24に記載の引上式連続鋳造方法。
  26. 複数の前記第2凸部又は複数の前記第2凹部を設ける、請求項24又は25に記載の引上式連続鋳造方法。
  27. 保持炉に保持された溶湯の湯面に導出部材を浸漬させるステップと、
    前記導出部材により前記溶湯を導出して、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材を通過させるステップと、を備え、
    前記導出部材を、
    胴体部と、
    前記胴体部の側面から突出した第1凸部、及び、前記胴体部の側面から窪んだ第1凹部のうち少なくとも何れか一方と、によって構成する、引上式連続鋳造方法。
  28. 前記第1凸部の突出長さ又は前記第1凹部の窪み深さを1mm以上にする、請求項27に記載の引上式連続鋳造方法。
  29. 前記導出部材に、複数の前記第1凸部又は複数の前記第1凹部を設ける、請求項27又は28に記載の引上式連続鋳造方法。
  30. 前記胴体部に
    先端から開口した開口部と、
    前記開口部の側面から突出した第2凸部、及び、前記開口部の側面から窪んだ第2凹部のうち少なくとも何れか一方をさらに設ける、請求項27〜29の何れか一項に記載の引上式連続鋳造方法。
  31. 前記第2凸部の突出長さ又は前記第2凹部の窪み深さを1mm以上にする、請求項30に記載の引上式連続鋳造方法。
  32. 複数の前記第2凸部又は複数の前記第2凹部を設ける、請求項30又は31に記載の引上式連続鋳造方法。
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