ところで、上記構成の車両用液圧ブレーキ装置では、ブレーキペダルのブレーキ操作開始時において第3制御弁の弁開度を可変制御して作動液の一部をリザーバに排出することによって反力液室の液圧を調整している。しかしながら、このように作動液の一部をリザーバに排出する制御の場合、電動式液圧源で消費されるエネルギーが増えるため省エネルギー化を図るうえで改善の余地がある。
そこで本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、車両用液圧ブレーキ装置において、作動液を供給するための電動式液圧源での消費エネルギーの低減を図るのに有効な技術を提供することである。
この目的を達成するために、本発明に係る車両用液圧ブレーキ装置は、作動液の液圧を利用して車輪に制動力を付与するべく車両に搭載される装置であって、マスタシリンダ、リザーバ、電動式液圧源、第1制御弁、第2制御弁、第3制御弁、第4制御弁及び制御部を含む。マスタシリンダは、マスタシリンダボディ内に、車輪に制動力を付与するマスタピストンを作動液の液圧によって駆動するための駆動液室と、ブレーキペダルのブレーキ操作に応じた反力を作動液の液圧によって生成するめの反力液室と、を有する。リザーバは作動液を貯留する機能を果たす。電動式液圧源は、ブレーキペダルのブレーキ操作に伴って作動しリザーバに貯留されている作動液を電動ポンプによって加圧して吐出する。第1制御弁は、電動式液圧源と反力液室とを接続する第1供給経路に開閉制御可能に設けられる。第2制御弁は、電動式液圧源と駆動液室とを接続する第2供給経路に開閉制御可能に設けられる。第3制御弁は、リザーバと反力液室とを接続する第1排出経路に開閉制御可能に設けられる。第4制御弁は、リザーバと駆動液室とを接続する第2排出経路に開閉制御可能に設けられる。2つの供給経路及び2つの排出経路のそれぞれに別の制御弁を追加することも可能である。
制御部は、ブレーキペダルのブレーキ操作に応じて電動式液圧源、第1制御弁、第2制御弁、第3制御弁及び第4制御弁のそれぞれを制御する機能を果たす。特に、この制御部は、ブレーキペダルのブレーキ操作開始時にブレーキ操作開始時制御モードを実行する。このブレーキ操作開始時制御モードでは、制御部は、第1制御弁及び第2制御弁を開放制御した状態で所定の切り替え条件が成立するまで第3制御弁に閉止指示信号を出力し、且つ駆動液室の液圧に基づいて第4制御弁の弁開度を可変制御する。その後、制御部は、所定の切り替え条件が成立したときにブレーキ操作開始時制御モードから通常制御モードに切り替える。通常制御モードでは、制御部は、第1制御弁及び第2制御弁を開放制御した状態で反力液室の液圧に基づいて第3制御弁の弁開度を可変制御し、且つ駆動液室の液圧に基づいて第4制御弁の弁開度を可変制御する。
上記構成の車両用液圧ブレーキ装置によれば、ブレーキペダルのブレーキ操作開始時に第3制御弁が閉止指示信号によって強制的に閉止されることによって或いは閉止状態が維持されることによって反力液室からリザーバへの作動液の流れが阻止される。その結果、リザーバに排出される余分な作動液の液量を抑えることによって電動ポンプの必要吐出量(ポンプ回転数)を減らすことができ、以って電動式液圧源での消費エネルギーの低減を図ることが可能になる。また、ブレーキペダルのブレーキ操作開始時における第3制御弁の閉止によって反力液室の作動液が駆動液室に向けて供給される。従って、駆動液室の液圧の立ち上がりが良くなり、車輪に必要な制動力を迅速に達成することが可能になる。
上記構成の車両用液圧ブレーキ装置では、制御部は、ブレーキ操作開始時制御モードにおいて、電動式液圧源が作動した状態で第1供給経路のうち第1制御弁の両側経路間に生じる差圧によって駆動液室の液圧が反力液室の液圧に達したときに所定の切り替え条件が成立したと判定するのが好ましい。これにより、ブレーキ操作開始時制御モードから通常制御モードへの切り替えを、駆動液室の液圧と反力液室の液圧の相対関係に基づいて設定することができる。
上記構成の車両用液圧ブレーキ装置では、制御部は、ブレーキ操作開始時制御モードにおいて、反力液室の液圧がブレーキペダルのブレーキ操作に応じた反力を生成するための目標液圧に達したときに所定の切り替え条件が成立したと判定するのが好ましい。これにより、ブレーキ操作開始時制御モードから通常制御モードへの切り替えを、反力液室の液圧のみに基づいて簡便に設定することができる。
上記構成の車両用液圧ブレーキ装置では、制御部は、ブレーキ操作開始時制御モードにおいて、ブレーキペダルのブレーキ操作が開始されてから予め設定された設定時間が経過したときに所定の切り替え条件が成立したと判定するのが好ましい。これにより、ブレーキ操作開始時制御モードから通常制御モードへの切り替えを、予め設定された設定時間を用いて簡便に設定することができる。
以上のように、本発明によれば、車両用液圧ブレーキ装置において、作動液を供給するための電動式液圧源での消費エネルギーの低減を図ることが可能になった。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態の車両用液圧ブレーキ装置(以下、単に「ブレーキ装置」ともいう)100が概略的に示されている。このブレーキ装置100は、作動液の液圧を利用して車輪に制動力を付与するべく車両に搭載されるものであり、ブレーキペダル10、マスタシリンダ20、車輪に割り当てられた4つのホイールシリンダFL,FR,RL,RR、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30、液圧制御回路40及びブレーキECU50を主体に構成されている。
ブレーキペダル10は、運転者のブレーキ操作(踏込操作)にかかるブレーキ操作部材であり、このブレーキペダル10のブレーキ操作に基づいてマスタシリンダ20が作動する。マスタシリンダ20は、第1シリンダボディ21及び第2シリンダボディ22からなるマスタシリンダボディを備え、このマスタシリンダボディ内に複数の構成要素を有する。このマスタシリンダボディが本発明の「マスタシリンダ」に相当する。具体的には、マスタシリンダ20の第1シリンダボディ21はシリンダ内孔21aを有する長尺筒状に構成されており、このシリンダ内孔21aに組付けられた入力ピストン23がブレーキペダル10のブレーキ操作によって押圧されて第1方向D1に駆動するように構成されている。ブレーキペダル10の操作量(以下、「作動量」ともいう)は、ストロークセンサS1及び踏力センサS2の双方によって検出され、これらストロークセンサS1及び踏力センサS2の検出信号がブレーキECU50に伝送される。ブレーキペダル10に代えて、ブレーキレバー等のブレーキ操作部材を採用することもできる。
第1シリンダボディ21のシリンダ内孔21aには、入力ピストン23によって区画された反力液室(「反力室」ともいう)C1が設けられている。この反力液室C1は、作動液(「ブレーキ液」ともいう)が貯留されるマスタリザーバRmと液圧制御回路40とにそれぞれ接続されており、これら各接続先との間で作動液が流通可能になっている。この反力液室C1は、ブレーキペダル10のブレーキ操作に応じた反力を作動液の液圧によって生成する機能を果たす。この反力液室C1が本発明の「反力液室」に相当する。入力ピストン23は、第1シリンダボディ21のシリンダ内孔21aから第2シリンダボディ22のシリンダ内孔22aに突出する小径部23aを備えている。
マスタシリンダ20は、第1シリンダボディ21に同軸的に連接する第2シリンダボディ22を備えている。この第2シリンダボディ22は、シリンダ内孔22aを有する長尺筒状に構成されており、シリンダ内孔22aに一対のマスタピストン24,25及び一対のスプリング26,27が組み付けられている。この場合、マスタシリンダ20のシリンダ軸方向に入力ピストン23側から順に、第1マスタピストン24及び第2マスタピストン25が配置されており、スプリング26が第1マスタピストン24を第2方向D2に弾性付勢し、スプリング27が第2マスタピストン25を第2方向D2に弾性付勢している。また第2シリンダボディ22のシリンダ内孔22aは、マスタリザーバRm、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30及び液圧制御回路40のそれぞれに接続されており、これら各接続先との間で作動液が流通可能になっている。
第2シリンダボディ22のシリンダ内孔22aには、駆動液室(「サーボ室」ともいう)C2、圧力室C3及び圧力室C4が設けられている。駆動液室C2は、入力ピストン23の小径部23aと第1マスタピストン24とによって区画されている。入力ピストン23の小径部23aは、シリンダ軸方向の駆動によって第1マスタピストン24に対して係合及び離脱が可能であり、図1に示す初期位置(「復帰位置」ともいう)にある場合にはマスタシリンダ20のシリンダ軸方向に関し第1マスタピストン24から所定の離間距離Lを隔てて配置される。第1マスタピストン24は、入力ピストン23の小径部23aの第1方向D1の押圧力によって或いは駆動液室C2の作動液の液圧によって、スプリング26の第2方向D2の弾性付勢力に抗して駆動される。この駆動液室C2が本発明の「駆動液室」に相当する。圧力室C3は、第1マスタピストン24と第2マスタピストン25とによって区画されている。圧力室C4は、第2マスタピストン25を挟んで圧力室C3の反対側に形成されている。第2マスタピストン25は、スプリング26の第1方向D1の弾性付勢力によって或いは圧力室C3の作動液の液圧によって、スプリング27の第2方向D2の弾性付勢力に抗して駆動される。
上記の反力液室C1及び駆動液室C2はそれぞれ、液圧制御回路40に接続されている。一方で、上記の圧力室C3及び圧力室C4はそれぞれ、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30に接続されている。反力液室C1及び各圧力室C3,C4は、ピストン23,24,25が図1の初期位置にあるときにマスタリザーバRmに連通する。一方で、反力液室C1及び各圧力室C3,C4は、ピストン23,24,25が図1の初期位置から第1方向D1に移動したとき、マスタリザーバRmとの連通が遮断される。
第1マスタピストン24が第1方向D1に移動したときに圧力室C3の液圧が上昇し、また第2マスタピストン25が第1方向D1に移動したときに圧力室C4の液圧が上昇する。この場合、圧力室C3の液圧及び圧力室C4の液圧は、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30を介してホイールシリンダFL,FR,RL,RRのそれぞれに伝達されて車輪に制動力が付与される。この場合、特に駆動液室C2は、車輪に制動力を付与するマスタピストン24,25を作動液の液圧によって駆動する機能を果たす。
なお、マスタシリンダ20の構成のうち上述した以外の構成については、特開2012−20707号公報の図1に記載されている車両用液圧ブレーキ装置のマスタシリンダが参照される。また、ホイールシリンダFL,FR,RL,RRの構成や、当該ホイールシリンダを駆動するためのブレーキ液圧制御用アクチュエータ30の構成については、特開2012−20707号公報の図1に記載されているホイールシリンダ及びブレーキ液圧制御用アクチュエータ構成が参照される。
図1及び図2に示すように、液圧制御回路40には、大気圧リザーバRa、電動式液圧源41、吸入路42、吐出路43、第1供給経路44、第1排出経路45、第2供給経路46、第2排出経路47、循環路48、複数の弁(バルブ)V1〜V7及び圧力センサS3,S4が含まれている。
大気圧リザーバRaは、作動液を貯留する機能を果たす。電動式液圧源41は、その作動状態で電動モータMによって駆動される電動ポンプPを備え、この電動ポンプPは大気圧リザーバRaに貯留されている作動液(ブレーキ液)を吸入路42から吸入して加圧して吐出路43に吐出する。この電動式液圧源41として、電動ポンプPに加えてアキュムレータ等の蓄圧手段を用いることもできる。ここでいう電動式液圧源41及び大気圧リザーバRaがそれぞれ本発明の「電動式液圧源」及び「リザーバ」に相当する。
第1供給経路44は、吐出路43に連通しており電動式液圧源41と反力液室C1とを接続する経路である。特にこの第1供給経路44では、後述の第1制御弁V1を挟んでその上流側と下流側との間に差圧が生じるように経路断面積(「流路径」ともいう)が設定されている。具体的には、第1供給経路44のうち第1制御弁V1よりも反力液室C1側の経路断面積が第1制御弁V1よりも電動式液圧源41側の経路断面積を下回るように構成されている。第1排出経路45は、第1供給経路44上の接続部X1と循環路48とを接続することによって大気圧リザーバRaと反力液室C1とを接続する経路である。一方で、第2供給経路46は、吐出路43に連通しており電動式液圧源41と駆動液室C2とを接続するための経路である。第2排出経路47は、第2供給経路46上の接続部X2と循環路48とを接続することによって大気圧リザーバRaと駆動液室C2とを接続する経路である。循環路48は、第1排出経路45及び第2排出経路47を大気圧リザーバRaに接続するための経路である。
圧力センサS3は、第1供給経路44の圧力(作動液の液圧)を検出するセンサであり、その検出情報がブレーキECU50に伝送される。圧力センサS4は、第2供給経路46の圧力(作動液の液圧)を検出するセンサであり、その検出情報がブレーキECU50に伝送される。
第1制御弁V1は、常開型で電磁式の開閉弁(オン・オフ弁(二位置電磁弁))であり第1供給経路44のうち接続部X1よりも上流側(吐出路43側)に開閉制御可能に設けられている。第2制御弁V2は、常開型で電磁式の開閉弁(オン・オフ弁(二位置電磁弁))であり第2供給経路46のうち接続部X2よりも上流側(吐出路43側)に開閉制御可能に設けられている。これら第1制御弁V1及び第2制御弁V2がそれぞれ、本発明の「第1制御弁」及び「第2制御弁」に相当する。メイン逆止弁V3は、電動式液圧源41の吐出路43に設けられており、電動式液圧源41側への作動液の流れを規制する機能を果たす。第1逆止弁V4は、第1供給経路44において第1制御弁V1に対して並列に配置されており、下流側(接続部X1側)への作動液の流れを規制する機能を果たす。第2逆止弁V5は、第2供給経路46において第1制御弁V2に対して並列に配置されており、下流側(接続部X2側)への作動液の流れを規制する機能を果たす。
第3制御弁V6は、常閉型で電磁式のリニア制御弁であり第1排出経路45に弁開度を可変制御可能に設けられている。この第3制御弁V6は、電動式液圧源41から第1供給経路44を通じて反力液室C1に供給される作動液の液圧をブレーキペダル10の操作量に応じて制御する機能を果たす。即ち、反力液室C1の液圧(圧力センサS3の検出値)が、ブレーキペダル10の操作量に応じた目標値になるように第3制御弁V6の弁開度が可変制御される。第4制御弁V7は、常閉型で電磁式のリニア制御弁であり第2排出経路47に弁開度を可変制御可能に設けられている。この第4制御弁V7は、電動式液圧源41から第2供給経路46を通じて駆動液室C2に供給される作動液の液圧をブレーキペダル10の操作量に応じて制御する機能を果たす。即ち、駆動液室C2の液圧(圧力センサS4の検出値)がブレーキペダル10の操作量に応じた目標値になるように第4制御弁V7の弁開度が可変制御される。この場合、典型的には駆動液室C2の液圧の目標値が反力液室C1の液圧の目標値を上回るように設定される。ここでいう第3制御弁V6及び第4制御弁V7がそれぞれ、本発明の「第3制御弁」及び「第4制御弁」に相当する。
上記構成のブレーキ装置100では、ブレーキECU50は、ブレーキペダル10のブレーキ操作に応じて、具体的には各センサS1〜S4からの検出情報に基づいて、液圧制御回路40の電動式液圧源41、第1制御弁V1、第2制御弁V2、第3制御弁V6、第4制御弁V7のそれぞれの動作を制御する。このブレーキECU50が本発明の「制御部」に相当する。
以下に、電気系統が正常である場合、典型的には液圧制御回路40の電気機器類やブレーキECU50が故障していない場合と、電気系統が異常である場合、典型的には電気系統の失陥によって液圧制御回路40の電気機器類やブレーキECU50が故障した場合のそれぞれについて、液圧制御回路40の動作を図3〜図6を参照しつつ説明する。これらの図面のうち特に図3、図4及び図6において作動液の液圧が常時に作用している経路を太実線で示している。
電気系統が正常である場合、ブレーキECU50は、ブレーキペダル10のブレーキ操作を検出することによって電動式液圧源41を作動させる。即ち、電動式液圧源41がブレーキペダル10のブレーキ操作に伴って作動し大気圧リザーバRaに貯留されている作動液を電動ポンプPによって加圧して吐出する。本実施の形態では、このブレーキ操作開始時(ブレーキ操作初期時)に、ブレーキECU50が図3に示すブレーキ操作開始時制御モードを実行することを特徴としている。このブレーキ操作開始時制御モードでは、ブレーキECU50は、第1制御弁V1及び第2制御弁V2を開放した状態で所定の切り替え条件が成立するまで第3制御弁V6に閉止指示信号を出力し、且つ駆動液室C2の液圧(実質的には圧力センサS4の検出情報)に基づいて第4制御弁V7の弁開度を可変制御する。
このブレーキ操作開始時制御モードによれば、初期状態で開放状態にある第3制御弁V6が閉止指示信号によって強制的に閉止されることによって反力液室C1から大気圧リザーバRaへの作動液の流れが阻止される。その結果、電動ポンプPを用いた電動式液圧源41から第1排出経路45を通じて大気圧リザーバRaに排出される余分な作動液の液量を抑えることによって電動ポンプPの必要吐出量(ポンプ回転数)を減らすことができ、以って電動式液圧源41での消費エネルギーの低減を図ることが可能になる。また、第3制御弁V6が強制的に閉止されることで反力液室C1の作動液が駆動液室C2に向けて供給される。従って、駆動液室の液圧の立ち上がりが良くなり、車輪に必要な制動力を迅速に達成することが可能になる。このとき、電動式液圧源41が作動して駆動液室C2が所望の液圧まで上昇するのに所定のタイムラグがあるため、特にブレーキペダル10が運転者によって急激に操作される急ブレーキ操作時においては、所望の制動力を得るのが難しい場合がある。そこで、本実施の形態のように、上記のブレーキ操作開始時制御で第3制御弁V6を強制的に閉止する制御は急ブレーキ操作時に特に効果的である。
その後、ブレーキECU50は、所定の切り替え条件が成立したときに、前述のブレーキ操作開始時制御モードから図4に示す通常制御モードに切り替える。この通常制御モードでは、ブレーキECU50は、第1制御弁V1及び第2制御弁V2を開放した状態で反力液室C1の液圧(実質的には圧力センサS3の検出情報)に基づいて第3制御弁V6の弁開度を可変制御し、且つ駆動液室C2の液圧(実質的には圧力センサS4の検出情報)に基づいて第4制御弁V7の弁開度を可変制御する。この場合、反力液室C1の液圧と駆動液室C2の液圧が別個に調整される。その結果、反力液室C1及び駆動液室C2がブレーキペダル10の操作量に応じた目標液圧に調整されて適正な反力及び制動力が得られる。
ここで、上記のブレーキ操作開始時制御モードから通常制御モードへの切り替えタイミング、即ちブレーキ操作開始時制御モードの終期については図5が参照される。図5に示すように、ブレーキ操作開始時制御モードでは、ストロークセンサS1及び踏力センサS2の検出情報に基づいてブレーキペダル10のブレーキ操作が開始されたと判定された時点taで第3制御弁V6に閉止指示信号が出力される。従って、この時点taから時間経過とともに反力室C1の液圧が上昇する。このとき、前述のように第1供給経路44のうち第1制御弁V1の上流側と下流側との間の差圧構造によって、電動式液圧源41の作動によって第2供給経路46の液圧が上昇するまでは、反力液室C1の液圧P1が駆動液室C2の液圧P2を上回る。更に、駆動液室C2の液圧P2は、時点tbで反力液室C1の液圧P1に達するまで上昇した後、更に第1制御弁V1の両側経路間に生じる差圧によって反力液室C1の液圧P1を上回るまで上昇する。本実施の形態では、ブレーキECU50は、圧力センサS3,S4の双方の検出情報に基づいて駆動液室C2の液圧P2が反力液室C1の液圧P1に達した場合に上記の「所定の切り替え条件」が成立したと判定することができる。
この判定に関しては、圧力センサS3,S4の双方の検出情報を用いる形態に代えて、圧力センサS3の検出情報のみを用いる形態を採用することもできる。具体的には、反力液室C1の液圧がブレーキペダル10のブレーキ操作に応じた反力を生成するための目標液圧に達した場合に所定の切り替え条件が成立したと判定することができる。これにより、ブレーキ操作開始時制御モードから通常制御モードへの切り替えを、反力液室C1の液圧のみに基づいて簡便に設定することができる。更なる変更例として、圧力センサS3,S4等の検出情報を用いることなく、タイマ等の手段によってブレーキペダル10のブレーキ操作の開始時から予め設定された設定時間が経過した場合に所定の切り替え条件が成立したと判定することもできる。これにより、ブレーキ操作開始時制御モードから通常制御モードへの切り替えを、予め設定された設定時間を用いて簡便に設定することができる。
図6に示すように、電気系統が異常である場合、典型的には電気系統の失陥によって液圧制御回路40の電気機器類やブレーキECU50が故障した場合、各制御弁への指示信号が出力されなくなることによって、第1制御弁V1及び第2制御弁V2がいずれも開状態になり、且つ第3制御弁V6及び第4制御弁V7がいずれも閉状態になる。その結果、メイン逆止弁V3によって第1供給経路44及び第2供給経路46から吐出路43に向かう作動液の流れが規制された状態で、反力液室C1は第1供給経路44及び第2供給経路46を通じて駆動液室C2と連通する。従って、電気系統が異常である場合には、ブレーキペダル10の操作量に応じて、反力液室C1内の作動液が第1供給経路44及び第2供給経路46を通じて駆動液室C2に遅れなく供給されて、第1マスタピストン24及び第2マスタピストン25が無効ストロークなく作動する。このため、マスタシリンダ20が適正に作動して所望の制動力を発生させることが可能になる。
なお、上記した実施形態において、通常のブレーキ作動時に回生制動が要求される場合、ブレーキECU50は、第2制御弁V2を閉止する制御によって電動式液圧源41から第2供給経路46を通じて駆動液室C2へ作動液が供給されるのを阻止する。この場合には、回生制動装置(図示省略)にて制動力が得られ、マスタシリンダ20にてブレーキ操作に応じた反力は得られるものの制動力が得られない状態に設定することが可能である。これにより、高い回生効率を確保したブレーキ作動を得ることが可能である。
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記の実施形態では、ブレーキ操作開始時制御モードから通常制御モードへの切り替えタイミングとして、駆動液室C2の液圧P2が反力液室C1の液圧P1に達した場合、反力液室C1の液圧が目標液圧に達した場合、ブレーキ操作の開始時から予め設定された設定時間が経過した場合の3つの場合について説明したが、本発明では必要に応じて他のタイミングを設定することもできる。例えば、駆動液室C2の液圧P2が目標液圧に達した場合や、駆動液室C2の液圧P2と反力液室C1の液圧P1との差圧が目標値に達した場合にブレーキ操作開始時制御モードから通常制御モードへの切り替えを実行することができる。
また、上記の実施形態では、液圧制御回路40の構成要素に、1つの電動式液圧源41と、4つの制御弁V1,V2,V6,V7が含まれる場合について記載したが、本発明では電動式液圧源や制御弁の数や配置は、必要に応じて適宜に変更可能である。例えば、図7が参照される液圧制御回路140を備えたブレーキ装置200を採用することもできる。
図7に示す液圧制御回路140では、液圧制御回路40の1つの常閉型のリニア制御弁(第3制御弁V6)の代わりに、1つの常開型のリニア制御弁V6aと1つの常閉型の制御弁(オン・オフ弁(二位置電磁弁))V6bとを直列に接続した構成を採用し、且つ液圧制御回路40の1つの常閉型のリニア制御弁(第4制御弁V7)の代わりに、1つの常開型のリニア制御弁V7aと1つの常閉型の制御弁(オン・オフ弁(二位置電磁弁))V7bとを直列に接続した構成を採用している。この構成では、前述のブレーキ操作開始時制御において、リニア制御弁V6a及びリニア制御弁V7aが共に閉止指示信号によって閉止状態に制御され、且つ制御弁V6b及び制御弁V7bが共に開放指示信号によって開放状態に制御される。その後の通常制御において、制御弁V6b及び制御弁V7bが共に開放状態に位置されたまま、リニア制御弁V6a及びリニア制御弁V7aの弁開度が共に可変制御される。一方で、電気系統の失陥時には、指示信号が出力されなくなることによってリニア制御弁V6a及びリニア制御弁V7aが共に開放され、且つフェールセーフ用の制御弁V6b及び制御弁V7bが共に閉止される。この液圧制御回路140によれば、常閉型のリニア制御弁よりも制御性に優れた常開型のリニア制御弁V6a,V7aを用いることで液圧制御の適正化を図ることができる。これに対して、前述の液圧制御回路40では第1排出経路45に設ける電磁弁の数を第3制御弁V6及び第4制御弁V7の2つに抑えることによってコスト低減を図ることができる。