以下に添付図面を参照して、この電子装置及び電流モニタ方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。以下の各実施例の説明においては、同様の構成要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
・電子装置の第1の例
図1は、実施の形態にかかる電子装置の第1の例を示す図である。図2は、図1に示す電子装置における信号及び電流の流れを示す図である。図1及び図2に示すように、電子装置は、電源回路1、レシーバ回路3、電流供給回路4、検出回路5及び制御回路6を有する。
電源回路1とレシーバ回路3とは、電源配線7によって接続されている。電源回路1は、電源配線7を介してレシーバ回路3に主電流を供給する。レシーバ回路3には、主電流が流れ込む。レシーバ回路3は、電源回路1から供給される主電流によって駆動される。図2では、主電流はIlsiと表記されている。
電流供給回路4は、電源配線7において、電源配線7の配線部分2とレシーバ回路3との間に接続されている。電流供給回路4は、制御回路6に接続されている。電流供給回路4は、制御回路6からの制御信号に基づいて、電源配線7にパイロット電流を供給し、またパイロット電流の供給を停止する。パイロット電流の電流値は、主電流の電流値よりも小さい。図2では、パイロット電流はIpltと表記されている。
電流供給回路4によって電源配線7に供給されるパイロット電流は、電源配線7から引き抜かれる。つまり、電流供給回路4によって電源配線7にパイロット電流が供給されている状態では、電源配線7を流れる電流のうち、主電流はレシーバ回路3へ流れ込み、パイロット電流は電流供給回路4へ流れ込む。
検出回路5は、電源配線7の少なくとも一部の配線部分2の両端に接続されている。電源配線7に電流が流れることによって、電源配線7の配線部分2で電圧降下が起こる。検出回路5は、配線部分2の両端の電圧に基づいて、電圧降下によって配線部分2の両端に生じる電圧差を検出する。検出回路5は、電圧差の検出値に対応する信号を制御回路6へ出力する。
電源配線7の配線部分2の一端は電源回路1に接続され、他端はレシーバ回路3に接続される。電源配線7の配線部分2の一端が電源回路1に近く、他端はレシーバ回路3に近いのが好ましい。そうすれば、電源回路1とレシーバ回路3との間の電源配線7のほぼ全体が配線部分2になるため、配線部分2の配線抵抗値が主電流を測定するのに十分な大きさとなる。
制御回路6は、電流供給回路4及び検出回路5に接続されている。制御回路6は、電流供給回路4に対して制御信号を出力し、電流供給回路4におけるパイロット電流の供給及び供給停止を制御する。
制御回路6は、検出回路5から、電圧差の検出値に対応する信号を受け取る。制御回路6は、パイロット電流の供給停止時に検出回路5によって検出される電圧差の値、パイロット電流の供給時に検出回路5によって検出される電圧差の値、及びパイロット電流の電流値に基づいて、配線部分2の配線抵抗値を算出する。制御回路6は、パイロット電流の供給停止時に検出回路5によって検出される電圧差の値、及び配線部分2の配線抵抗値に基づいて、電源回路1からレシーバ回路3に流れ込む主電流の電流値を算出する。
図1に示す電子装置において、電源回路1、レシーバ回路3、電流供給回路4及び検出回路5は、それぞれハードウェアによって実現される。制御回路6は、ハードウェアによって実現されてもよいし、制御回路6によって実現される各機能がソフトウェアの処理によって実現されてもよい。制御回路6の各機能がソフトウェアの処理によって実現される場合のハードウェア構成の一例について説明する。
図3は、図1に示す電子装置における制御回路のハードウェア構成の一例を示す図である。図3に示すように、電子装置において、制御回路6は、例えばプロセッサ11、インタフェース12、不揮発性メモリ13及び揮発性メモリ14を有する。プロセッサ11、インタフェース12、不揮発性メモリ13及び揮発性メモリ14はバス15に接続されていてもよい。
プロセッサ11は、後述する電流モニタ方法を実現するプログラムを処理する。それによって、図1に示す電子装置における制御回路6の各機能が実現される。プロセッサ11の一例として、例えばCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、DSP(Digital Signal Processor、デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit、エーシック)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array、フィールドプログラマブルゲートアレイ)などのプログラマブルロジックデバイスが挙げられる。
不揮発性メモリ13は、ブートプログラムや後述する電流モニタ方法を実現するプログラムを記憶している。プロセッサ11がプログラマブルロジックデバイスである場合には、不揮発性メモリ13はプログラマブルロジックデバイスの回路情報を記憶していてもよい。不揮発性メモリ13の一例として、マスクROM(マスクロム)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory、イーイーピーロム)またはフラッシュメモリなどのROM(Read Only Memory、ロム)が挙げられる。
揮発性メモリ14は、プロセッサ11の作業領域として用いられる。揮発性メモリ14は、不揮発性メモリ13から読み出されたプログラムを保持する。揮発性メモリ14の一例としてDRAM(Dynamic Random Access Memory、ディーラム)やSRAM(Static Random Access Memory、エスラム)などのRAM(Random Access Memory、ラム)が挙げられる。
インタフェース12は、電流供給回路4に対してパイロット電流の供給及び供給停止を制御する制御信号の出力を司る。インタフェース12は、検出回路5からの電圧差の検出値に対応する信号の入力を司る。
・電流モニタ方法の第1の例
図4は、実施の形態にかかる電流モニタ方法の第1の例を示す図である。図4に示す電流モニタ方法は、図1に示す電子装置において実施されてもよい。本実施例では、図4に示す電流モニタ方法が、図1に示す電子装置において実施されるとして説明する。
図4に示すように、電流モニタ方法が開始されると、電源回路1がオンにされ、電源回路1から電源配線7の配線部分2を通ってレシーバ回路3へ主電流が流れる(ステップS1)。このとき、電流供給回路4は、制御回路6からの制御信号によって、パイロット電流の供給を停止している。
次いで、検出回路5は、主電流が流れることによって電源配線7の配線部分2の両端に生じる第1の電圧差を検出する。そして、検出回路5は、第1の電圧差の検出値に基づく信号を制御回路6へ出力する(ステップS2)。
次いで、制御回路6は、電流供給回路4がパイロット電流を流すように、電流供給回路4へ制御信号を出力する。それによって、電源配線7の配線部分2に主電流と、主電流よりも小さい電流値のパイロット電流とが流れる(ステップS3)。
次いで、検出回路5は、主電流とパイロット電流とが流れることによって電源配線7の配線部分2の両端に生じる第2の電圧差を検出する。そして、検出回路5は、第2の電圧差の検出値に基づく信号を制御回路6へ出力する(ステップS4)。
次いで、制御回路6は、検出回路5の出力信号に基づいて、第1の電圧差の値及び第2の電圧差の値を求める。そして、制御回路6は、第1の電圧差の値、第2の電圧差の値及びパイロット電流の電流値に基づいて、電源配線7の配線部分2の配線抵抗値を算出する(ステップS5)。
次いで、制御回路6は、第1の電圧差の値及び配線抵抗値に基づいて主電流の電流値を算出する(ステップS6)。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。なお、ステップS1〜ステップS2を行う前にステップS3〜ステップS4を行ってもよい。
図1に示す電子装置または図4に示す電流モニタ方法によれば、パイロット電流の電流値が主電流の電流値よりも小さいため、パイロット電流が電流供給回路4を流れるときの発熱量が、主電流とパイロット電流とが電源配線7の配線部分2を流れるときの発熱量よりも小さくなる。それによって、電流供給回路4の抵抗値の温度による変化量が電源配線7の配線部分2の配線抵抗値の変化量よりも小さくなるため、電流供給回路4が温度による影響の小さい定電流回路のようになる。つまり、電流供給回路4は、温度による影響を殆ど受けずに一定の電流値のパイロット電流を流すことができる。従って、検出回路5は、温度による影響を殆ど受けずに、パイロット電流が流れるときの電源配線7の配線部分2の両端の電圧差を検出することができる。そして、制御回路6は、温度による影響を殆ど受けずに、配線部分2の配線抵抗値を求め、その配線抵抗値に基づいて主電流の電流値を求めることができる。つまり、電子装置は、電源回路1からレシーバ回路3へ流れ込む主電流を測定することができる。
以下に示す電子装置の第2〜第10の例は、上述した電子装置の第1の例を適用した電子装置の例である。
・電子装置の第2の例
図5は、実施の形態にかかる電子装置の第2の例を示す図である。図5に示すように、電子装置は、コネクタ22、DC/DCコンバータ23、電源配線24、電源配線24の配線部分25、LSI26、スイッチ27、パイロット抵抗28、差動アンプ29、ADC(Analog−to−Digital Converter、アナログデジタルコンバータ)30及びプロセッサ31を有する。コネクタ22、DC/DCコンバータ23、LSI26、スイッチ27、パイロット抵抗28、差動アンプ29、ADC30及びプロセッサ31は、プリント基板21に実装されていてもよい。電源配線24及び電源配線24の配線部分25は、プリント基板21に形成されていてもよい。
コネクタ22は、図示しない他のプリント基板、バックプレーンまたはラックのコネクタなどに接続される。
DC/DCコンバータ23の入力端子は、コネクタ22に接続されている。DC/DCコンバータ23は、コネクタ22を介して、コネクタ22に接続される他のプリント基板などから供給される直流電圧を、LSI26の駆動に適する直流電圧に変換して出力する。例えば、DC/DCコンバータ23には、コネクタ22から12Vの直流電圧が供給され、DC/DCコンバータ23は、12Vの直流電圧を1.0Vの直流電圧に変換して出力してもよい。DC/DCコンバータ23は、電源回路1の一例である。
電源配線24は、DC/DCコンバータ23の電源出力端子とLSI26の電源入力端子とに接続されている。従って、DC/DCコンバータ23から出力される主電流は、電源配線24を通ってLSI26に流れ込む。
LSI26は、DC/DCコンバータ23から供給される主電流によって駆動される。LSI26は、レシーバ回路3の一例である。
スイッチ27の一端は、電源配線24の配線部分25とLSI26の電源入力端子との間に接続されている。スイッチ27の他端には、パイロット抵抗28の一端が接続されている。パイロット抵抗28の他端は、例えばグラウンドに接続されている。スイッチ27は、プロセッサ31から出力される制御信号に基づいて、オンとオフとが切り替わる。
スイッチ27がオン状態にあるときには、電源配線24の配線部分25とLSI26の電源入力端子との間にパイロット抵抗28が接続される。それによって、電源配線24の配線部分25には、主電流とパイロット電流とが流れる。パイロット電流は、電源配線24の配線部分25からパイロット抵抗28へ流れる。パイロット抵抗28の抵抗値は、既知であり、電源配線24の配線部分25の配線抵抗値よりも大きい。従って、パイロット電流の電流値は、主電流の電流値よりも小さい。
スイッチ27がオフ状態にあるときには、電源配線24からパイロット抵抗28が切り離される。そのため、電源配線24の配線部分25には、パイロット電流は流れず、主電流が流れる。スイッチ27及びパイロット抵抗28は、電流供給回路4の一例である。
差動アンプ29の一方の入力端子は、電源配線24において、DC/DCコンバータ23の電源出力端子と電源配線24の配線部分25との間に接続されている。差動アンプ29のもう一方の入力端子は、電源配線24において、LSI26の電源入力端子と電源配線24の配線部分25との間に接続されている。電源配線24の配線部分25に電流が流れることによって、配線部分25で電圧降下が起こる。差動アンプ29は、電圧降下によって配線部分25の両端に生じる電圧差を検出して出力する。
ADC30は、差動アンプ29の出力端に接続されている。ADC30は、差動アンプ29から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換してプロセッサ31へ出力する。差動アンプ29及びADC30は、検出回路5の一例である。
プロセッサ31は、スイッチ27及びADC30の出力端に接続されている。プロセッサ31は、スイッチ27に対して制御信号を出力し、パイロット抵抗28にパイロット電流を流したり、パイロット抵抗28にパイロット電流が流れるのを停止させる。
プロセッサ31は、ADC30から、電圧差の検出値に対応するデジタル信号を受け取る。プロセッサ31は、パイロット電流が流れないときにADC30から受け取るデジタル信号による情報、パイロット電流が流れるときにADC30から受け取るデジタル信号による情報、及びパイロット電流の電流値に基づいて、配線部分25の配線抵抗値を算出する。プロセッサ31は、パイロット抵抗28の抵抗値とLSI26の電源入力端子の電圧値とからパイロット電流の電流値を求めることができる。
プロセッサ31は、パイロット電流が流れないときにADC30から受け取るデジタル信号による情報、及び配線部分25の配線抵抗値に基づいて、DC/DCコンバータ23からLSI26に流れ込む主電流の電流値を算出する。プロセッサ31は、常時または定期的に主電流の電流値を算出してもよい。プロセッサ31は、CPUでもよいし、DSPでもよいし、ASICでもよいし、FPGAでもよい。プロセッサ31は、制御回路6の一例である。
図6及び図7は、実施の形態にかかる電子装置の第2の例を説明する図であり、図6は、スイッチ27がオフ状態である場合を示し、図7は、スイッチ27がオン状態である場合を示す。主電流の電流値をIlsiとし、パイロット電流の電流値をIpltとする。また、電源配線24の配線部分25の配線抵抗値をRptnとし、パイロット抵抗28の抵抗値をRpltとする。
図6に示すように、スイッチ27がオフ状態である場合、DC/DCコンバータ23の電源出力端子VDDの電圧値をVdonとし、LSI26の電源入力端子VDDの電圧値をVlinとする。また、図7に示すように、スイッチ27がオン状態である場合、DC/DCコンバータ23の電源出力端子VDDの電圧値をVdopとし、LSI26の電源入力端子VDDの電圧値をVlipとする。
図8及び図9は、実施の形態にかかる電子装置の第2の例において電源電圧をフィードバック制御する例を説明する図であり、図8は、スイッチ27がオフ状態である場合を示し、図9は、スイッチ27がオン状態である場合を示す。
図8及び図9に示すように、LSI26の電源入力端子VDDの電圧をSENCE電圧として、LSI26のSENCE電圧出力端子SENCE−VDDからDC/DCコンバータ23などの電源回路のSENCE電圧入力端子SENCE−FBにフィードバックすることがある。この場合、DC/DCコンバータ23などの電源回路は、SENCE電圧入力端子SENCE−FBの電圧値に基づいて、配線などの電流経路において発生する電圧降下分を補正することによって、DC/DCコンバータ23の電源出力端子VDDの電圧値を一定に保つ。
図6〜図9を比較して明らかなように、プロセッサ31がパイロット電流の電流値Iplt、配線部分25の配線抵抗値Rptn及び主電流の電流値Ilsiを算出するにあたって、SENCE電圧のフィードバック制御の有無を考慮する必要はない。つまり、SENCE電圧のフィードバック制御があってもなくても、プロセッサ31は同じ演算を行うことによって、パイロット電流の電流値Iplt、配線部分25の配線抵抗値Rptn及び主電流の電流値Ilsiを求めることができる。従って、上述した実施の形態における説明及びこれ以降の説明では、SENCE電圧のフィードバック制御がある場合とない場合との両方を含む。
プロセッサ31における演算内容について説明する。変数を以下のように定義する。
スイッチ27がオフ状態であるとき、すなわちパイロット電流が流れないときのDC/DCコンバータ23の電源出力端子VDDの電圧値をVdonとする。スイッチ27がオン状態であるとき、すなわちパイロット電流が流れるときのDC/DCコンバータ23の電源出力端子VDDの電圧値をVdopとする。
パイロット電流が流れないときのLSI26の電源入力端子VDDの電圧値をVlinとする。パイロット電流が流れるときのLSI26の電源入力端子VDDの電圧値をVlipとする。Vdon、Vdop、Vlin及びVlipの各値は既知である。
電源配線24の配線部分25の配線抵抗値をRptnとする。パイロット抵抗28の抵抗値をRpltとする。LSI26に流れ込む主電流の電流値をIlsiとする。パイロット抵抗28を流れるパイロット電流の電流値をIpltとする。Rptn、Ilsi及びIpltの各値は未知である。Rpltの値は既知である。
パイロット電流が流れないときの電源配線24の配線部分25の両端の電圧差は次の(1)式で表される。また、パイロット電流が流れるときの電源配線24の配線部分25の両端の電圧差は次の(2)式で表される。
Vdon−Vlin=Ilsi×Rptn ・・・(1)
Vdop−Vlip=(Ilsi+Iplt)×Rptn ・・・(2)
パイロット抵抗28にパイロット電流が流れると、次の(3)式が成り立つ。(3)式を変形すると、(4)式が得られる。Vlip及びRpltの各値が既知であるため、プロセッサ31はIpltの値を求めることができる。
Vlip=Iplt×Rplt ・・・(3)
Iplt=Vlip/Rplt ・・・(4)
電源配線24の配線部分25に主電流とパイロット電流とが流れるときの電圧降下量は、電源配線24の配線部分25にパイロット電流が流れずに主電流が流れるときの電圧降下量よりも、パイロット電流が流れる分だけ大きくなる。従って、次の(5)式が成り立ち、プロセッサ31はこの(5)式から、電源配線24の配線部分25の配線抵抗値Rptnを求めることができる。
Rptn={(Vdop−Vlip)−(Vdon−Vlin)}/Iplt ・・・(5)
上記(1)式を変形すると、次の(6)式が得られる。従って、プロセッサ31は、(5)式及び(6)式から、主電流の電流値を求めることができる。
Ilsi=(Vdon−Vlin)/Rptn ・・・(6)
一例として、例えば電源配線24の配線部分25の温度が0℃である場合、Vdonが1.1Vであり、Vlinが1.0Vであり、VdonとVlinとの電圧差は0.1Vであるとする。また、Vdopが1.101Vであり、Vlipが1.0Vであり、VdopとVlipとの電圧差は0.101Vであるとする。また、Rpltが1Ωであるとすると、上記(4)式から、Ipltは1Aとなる。従って、上記(5)式から、Rptnは1mΩとなり、上記(6)式から、Ilsiは100Aとなる。
一例として、例えば電源配線24の配線部分25に電流が流れることによって、配線部分25の温度が100℃になるとする。この場合に、Vdonが1.2Vであり、Vlinが1.0Vであり、VdonとVlinとの電圧差は0.2Vであるとする。また、Vdopが1.202Vであり、Vlipが1.0Vであり、VdopとVlipとの電圧差は0.202Vであるとする。パイロット抵抗28に流れるパイロット電流の電流値は、電源配線24の配線部分25を流れる電流、すなわち主電流とパイロット電流とを合わせた電流の電流値よりも十分に小さい。そのため、パイロット抵抗28にパイロット電流が流れても、パイロット抵抗28の抵抗値は、例えば0℃である場合の抵抗値から殆ど変化しない。つまり、Rpltは1Ωであるとみなすことができる。従って、上記(4)式から、Ipltは1Aとなり、上記(5)式から、Rptnは2mΩとなり、上記(6)式から、Ilsiは100Aとなる。
・電流モニタ方法の第2の例
図10は、実施の形態にかかる電流モニタ方法の第2の例を示す図である。図10に示す電流モニタ方法は、例えば図5に示す電子装置において実施される。
図10に示すように、例えば図5に示す電子装置において電流モニタ方法が開始されると、プロセッサ31は、パイロット電流が流れるように、スイッチ27をオンにする制御信号を出力する。それによって、スイッチ27がオン状態となるため、電源配線24の配線部分25及びパイロット抵抗28にパイロット電流が流れる(ステップS11)。従って、電源配線24の配線部分25には、主電流とパイロット電流とが流れる。
差動アンプ29は、主電流とパイロット電流とが流れることによって電源配線24の配線部分25の両端に生じる電圧差を検出して出力する。ADC30は、差動アンプ29から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換してプロセッサ31へ渡す。それによって、プロセッサ31は、電源配線24の配線部分25に主電流とパイロット電流とが流れるときの配線部分25の両端の電圧差を取得する(ステップS12)。
次いで、プロセッサ31は、パイロット電流が流れないように、スイッチ27をオフにする制御信号を出力する。それによって、スイッチ27がオフ状態となるため、パイロット電流が流れなくなる(ステップS13)。従って、電源配線24の配線部分25には、主電流のみが流れる。
差動アンプ29は、主電流が流れることによって電源配線24の配線部分25の両端に生じる電圧差を検出して出力する。ADC30は、差動アンプ29から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換してプロセッサ31へ渡す。それによって、プロセッサ31は、電源配線24の配線部分25に主電流のみが流れるときの配線部分25の両端の電圧差を取得する(ステップS14)。
次いで、プロセッサ31は、上述した(4)式から、パイロット電流の電流値を算出し、上述した(5)式から、電源配線24の配線部分25の配線抵抗値を算出する(ステップS15)。
次いで、プロセッサ31は、ステップS15で算出した配線抵抗値及び上述した(6)式から、主電流の電流値を算出する(ステップS16)。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。なお、ステップS11〜ステップS12を行う前にステップS13〜ステップS14を行ってもよい。
図5に示す電子装置及び図10に示す電流モニタ方法によれば、パイロット電流の電流値が主電流の電流値よりも小さいため、パイロット電流がパイロット抵抗28を流れるときの発熱量が、主電流とパイロット電流とが電源配線24の配線部分25を流れるときの発熱量よりも小さくなる。それによって、パイロット抵抗28の抵抗値の温度による変化量が電源配線24の配線部分25の配線抵抗値の変化量よりも小さくなるため、パイロット抵抗28が温度による影響の小さい定電流回路のようになる。つまり、パイロット抵抗28は、温度による影響を殆ど受けずに一定の電流値のパイロット電流を流すことができる。従って、差動アンプ29は、温度による影響を殆ど受けずに、パイロット電流が流れるときの電源配線24の配線部分25の両端の電圧差を検出することができる。そして、プロセッサ31は、温度による影響を殆ど受けずに、配線部分25の配線抵抗値を求め、その配線抵抗値に基づいて主電流の電流値を求めることができる。つまり、電子装置は、DC/DCコンバータ23からLSI26へ流れ込む主電流を測定することができる。
・電子装置の第3の例
図11は、実施の形態にかかる電子装置の第3の例を示す図である。図11に示すように、電子装置の第3の例は、図5に示す電子装置の第2の例において、パイロット抵抗28の代わりに定電流回路32を有する。
定電流回路32は、スイッチ27と例えばグラウンドとの間に接続されている。定電流回路32は、スイッチ27がオン状態にあるときに、電流値が一定であるパイロット電流を流す。その他の構成は、図5に示す電子装置の第2の例と同様であるため、重複する説明を省略する。
電子装置の第3の例では、パイロット電流の電流値が既知であるため、上述したプロセッサ31における演算内容において、上記(4)式の演算は不要となる。つまり、プロセッサ31は、ADC30から、パイロット電流が流れないときの電源配線24の配線部分25の両端の電圧差と、パイロット電流が流れるときの配線部分25の両端の電圧差とを取得することによって、上記(5)式から、配線部分25の配線抵抗値を求めることができる。そして、プロセッサ31は、上記(6)式から、主電流の電流値を求めることができる。
図11に示す電子装置において実施される電流モニタ方法については、プロセッサ31がパイロット電流の電流値を算出する演算を行わないことを除いて、図10に示す電流モニタ方法の第2の例と同様であるため、重複する説明を省略する。
図11に示す電子装置によれば、パイロット電流を流す回路が定電流回路32であるため、パイロット電流が流れるときのサージを抑制することができる。従って、主電流の電流値をより高精度に求めることができる。また、DC/DCコンバータ23に接続されるLSI26がサージによって誤動作するのを抑制することができる。
・電子装置の第4の例
図12は、実施の形態にかかる電子装置の第4の例を示す図である。図12に示すように、電子装置の第4の例は、図11に示す電子装置の第3の例において、電源配線24の配線部分25の温度を検出する温度センサ33を有し、メモリ34に温度特性データ35を格納する。
温度センサ33は、電源配線24の配線部分25の近傍に配置され、プロセッサ31に接続されている。温度センサ33は、電源配線24の配線部分25の近傍の温度を検出し、検出値をデジタル信号に変換してプロセッサ31へ渡す。プロセッサ31は、温度センサ33によって検出される電源配線24の配線部分25の近傍の温度を、配線部分25の温度として扱う。温度センサICは、温度センサ33の一例である。なお、温度センサ33が温度の検出値をアナログ信号で出力する場合には、温度センサ33から出力されるアナログ信号をアナログデジタルコンバータによってデジタル信号に変換してプロセッサ31へ入力させればよい。
メモリ34は、プロセッサ31に内蔵されていてもよい。例えば、メモリ34は、図3に示す不揮発性メモリ13であってもよい。あるいは、メモリ34は、プロセッサ31とは別にプリント基板21に実装されており、プロセッサ31がアクセスすることができるようになっていてもよい。メモリ34は、EEPROMやフラッシュメモリなどの書き換え可能なROMであってもよい。
図13は、温度特性データの第1の例を示す図である。図13に示すように、温度特性データ35は、例えば温度フィールド、データ有無フィールド及び配線抵抗値フィールドを有する。温度フィールドには、例えば0.0℃から100.0℃まで0.1℃おきに配線部分25の温度の値が格納される。データ有無フィールドには、各温度ごとに配線抵抗値のデータがあるかないかを示す値が格納される。例えばデータ有無フィールドには、配線抵抗値のデータがない場合には0が格納され、配線抵抗値のデータがある場合には1が格納されてもよい。配線抵抗値フィールドには、各温度ごとに配線部分25の配線抵抗値が格納される。
一例として、例えば図13に示す例では、0.1℃の温度に対しては、データ有無フィールドの値は有りを示し、配線抵抗値として1.001mΩが格納されている。0.2℃の温度に対しては、データ有無フィールドの値は無しを示し、配線抵抗値は格納されていない。100.0℃の温度に対しては、データ有無フィールドの値は有りを示し、配線抵抗値として2.000mΩが格納されている。0.0℃の温度に対しては、データ有無フィールドの値が直前まで無しであったのが、プロセッサ31によって配線抵抗値として1.000mΩが算出されたため、配線抵抗値フィールドに1.000mΩが丁度、格納された状態となっている。この後、プロセッサ31によって0.0℃の温度に対するデータ有無フィールドの値が有りに書き換えられる。
プロセッサ31は、温度センサ33によって電源配線24の配線部分25の温度を検出し、検出した温度に対して、温度特性データ35に配線抵抗値のデータがある場合には、温度特性データ35から配線抵抗値を取得する。プロセッサ31は、温度センサ33によって検出した温度に対して、温度特性データ35に配線抵抗値のデータがない場合には、例えば図10に示す電流モニタ方法の第2の例と同様にして配線部分25の配線抵抗値を算出して温度特性データ35に格納する。
その他の構成は、図11に示す電子装置の第3の例と同様であるため、重複する説明を省略する。なお、図5に示す電子装置の第2の例のように、定電流回路32の代わりにパイロット抵抗28を用いてもよい。
・電流モニタ方法の第3の例
図14は、実施の形態にかかる電流モニタ方法の第3の例を示す図である。図14に示す電流モニタ方法は、例えば図12に示す電子装置において実施される。
図14に示すように、例えば図12に示す電子装置において電流モニタ方法が開始されると、プロセッサ31は、温度センサ33によって電源配線24の配線部分25の温度を検出して取得する(ステップS21)。そして、プロセッサ31は、温度特性データ35を参照し、取得した温度に対応する配線抵抗値のデータが温度特性データ35にあるか否かを判断する(ステップS22)。
温度特性データ35に該当するデータがない場合(ステップS22:No)、上述したステップS11〜ステップS15と同様にして、プロセッサ31は、パイロット電流の供給及び供給停止を制御して、電源配線24の配線部分25の配線抵抗値を算出する(ステップS23〜ステップS27)。そして、プロセッサ31は、温度特性データ35の該当する温度の配線抵抗値フィールドに、算出した配線抵抗値を書き込むとともに、該当する温度のデータ有無フィールドの値を有りに書き換える(ステップS28)。
次いで、プロセッサ31は、ステップS27で算出した配線抵抗値及び上述した(6)式から、主電流の電流値を算出する(ステップS29)。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。
一方、ステップS22において温度特性データ35に該当するデータがある場合(ステップS22:Yes)、プロセッサ31は、パイロット電流が流れないようにスイッチ27をオフに制御した状態で、差動アンプ29及びADC30から、電源配線24の配線部分25の両端に生じる電圧差を取得する(ステップS30)。また、プロセッサ31は、温度特性データ35から該当する温度に対する配線抵抗値のデータを読み出す(ステップS31)。なお、ステップS30の前にステップS31を行ってもよい。
次いで、プロセッサ31は、ステップS30で取得した電圧差の値と、ステップS31で取得した配線抵抗値のデータとに基づいて、主電流の電流値を算出する(ステップS29)。主電流の電流値は、例えばステップS30で取得した電圧差の値を、ステップS31で取得した配線抵抗値で除することにより得られる。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。
図12に示す電子装置及び図14に示す電流モニタ方法によれば、温度特性データ35に、電源配線24の配線部分25の温度に対応する配線抵抗値のデータがある場合には、温度特性データ35から配線抵抗値のデータを取得することができるため、パイロット電流を流さなくて済む。従って、パイロット電流を流す回数が減り、パイロット電流の累積の電流値が抑えられるため、消費電力が増大するのを抑制することができる。
・電子装置の第5の例
図15は、温度特性データの第2の例を示す図である。図15に示すように、電子装置の第5の例は、図12に示す電子装置の第4の例において、温度特性データ35が例えば温度フィールド及びデータ有無フィールドの他に抵抗値の許容範囲フィールドを有し、かつ配線抵抗値フィールドの代わりに配線抵抗値の統計結果フィールドを有するものである。
抵抗値の許容範囲フィールドには、各温度ごとに電源配線24の配線部分25の配線抵抗値の許容範囲の値が格納される。配線抵抗値の許容範囲の値は、予め電子装置の設計者によって設定されてもよい。配線抵抗値の統計結果フィールドには、プロセッサ31が配線部分25の配線抵抗値を算出するたびに、例えば過去に算出した配線抵抗値との統計を取った値が格納される。例えば、新たに算出した配線抵抗値と、過去に算出した配線抵抗値との平均を取ることによって、配線抵抗値の統計結果としてもよい。
一例として、例えば図15に示す例では、0.0℃、0.1℃及び0.2℃の各温度に対しては、抵抗値の許容範囲として1.0mΩ±10%が格納されている。100℃の温度に対しては、抵抗値の許容範囲として2.0mΩ±10%が格納されている。0.0℃の温度に対しては、データ有無フィールドの値が直前まで無しであったのが、プロセッサ31によって配線抵抗値として1.000mΩが算出されたため、配線抵抗値の統計結果フィールドに1.000mΩが丁度、格納された状態となっている。この後、プロセッサ31によって0.0℃の温度に対するデータ有無フィールドの値が有りに書き換えられる。
プロセッサ31は、温度センサ33によって電源配線24の配線部分25の温度を検出し、配線抵抗値を算出する。プロセッサ31は、算出した配線抵抗値が、検出した温度に対する抵抗値の許容範囲内に含まれる場合には、配線抵抗値の統計を取って、温度特性データ35の該当する温度に対する配線抵抗値の統計結果フィールドの値を更新する。
算出した配線抵抗値が、検出した温度に対する抵抗値の許容範囲内に含まれるが、該当する温度に対する配線抵抗値の統計結果フィールドに値が格納されていないことがある。その場合には、プロセッサ31は、該当する温度に対する配線抵抗値の統計結果フィールドに、算出した配線抵抗値を書き込む。
一方、算出した配線抵抗値が、検出した温度に対する抵抗値の許容範囲内に含まれない場合には、プロセッサ31は、再び、パイロット電流の供給及び供給停止を制御して配線抵抗値を算出する。プロセッサ31は、配線抵抗値の算出を所定回数、繰り返しても、算出した配線抵抗値が抵抗値の許容範囲内に含まれない場合には、例えば警報を発して処理を停止してもよい。警報を発生させた電子装置は、不良品として扱われてもよい。算出した配線抵抗値が抵抗値の許容範囲内に含まれない原因の一つとして、例えばノイズの影響が挙げられる。
その他の構成は、図12に示す電子装置の第4の例と同様であるため、重複する説明を省略する。なお、図5に示す電子装置の第2の例のように、定電流回路32の代わりにパイロット抵抗28を用いてもよい。
・電流モニタ方法の第4の例
図16は、実施の形態にかかる電流モニタ方法の第4の例を示す図である。図16に示す電流モニタ方法は、例えば図15に示す温度特性データ35を有する電子装置において実施される。
図16に示すように、例えば図15に示す温度特性データ35を有する電子装置において電流モニタ方法が開始されると、プロセッサ31は、温度センサ33によって電源配線24の配線部分25の温度を検出して取得する(ステップS41)。次いで、上述したステップS11〜ステップS15と同様にして、プロセッサ31は、パイロット電流の供給及び供給停止を制御して、電源配線24の配線部分25の配線抵抗値を算出する(ステップS42〜ステップS46)。
次いで、プロセッサ31は、温度特性データ35を参照し、ステップS46で算出した配線抵抗値が、ステップS41で取得した温度に対する抵抗値の許容範囲内に含まれるか否かを判断する(ステップS47)。許容範囲内に含まれない場合(ステップS47:No)、ステップS41へ戻り、プロセッサ31はステップS41〜ステップS47を繰り返す。ステップS46で算出した配線抵抗値が許容範囲内に含まれないためにステップS41〜ステップS47を繰り返す回数が所定回数に達したら、プロセッサ31は、例えば警報をあげて処理を停止してもよい。
一方、ステップS46で算出した配線抵抗値が、該当する温度に対する抵抗値の許容範囲内に含まれる場合(ステップS47:Yes)、プロセッサ31は、温度特性データ35を参照し、ステップS41で取得した温度に対応する配線抵抗値の統計結果のデータが温度特性データ35にあるか否かを判断する(ステップS48)。
温度特性データ35に該当するデータがない場合(ステップS48:No)、プロセッサ31は、温度特性データ35の該当する温度に対する配線抵抗値の統計結果フィールドに、ステップS46で算出した配線抵抗値を書き込む。また、プロセッサ31は、温度特性データ35の該当する温度に対するデータ有無フィールドの値を有りに書き換える(ステップS49)。
次いで、プロセッサ31は、ステップS46で算出した配線抵抗値及び上述した(6)式から、主電流の電流値を算出する(ステップS50)。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。
一方、ステップS48において温度特性データ35に該当するデータがある場合(ステップS48:Yes)、プロセッサ31は、ステップS41で取得した温度に対応する配線抵抗値の統計結果フィールドの値と、ステップS46で算出した配線抵抗値との統計、例えば平均値を算出する。そして、プロセッサ31は、その統計結果の値、例えば平均値を該当する配線抵抗値の統計結果フィールドに格納して、配線抵抗値の統計結果フィールドの値を更新する(ステップS51)。
次いで、プロセッサ31は、ステップS51で算出した統計結果の値を電源配線24の配線部分25の配線抵抗値とし、その配線抵抗値及び上述した(6)式から、主電流の電流値を算出する(ステップS50)。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。
図15に示す温度特性データ35を有する電子装置及び図16に示す電流モニタ方法によれば、算出した配線抵抗値が許容範囲から外れる場合、パイロット電流の供給及び供給停止を制御して配線抵抗値を算出し直すため、算出した配線抵抗値に対するノイズ等の影響を低減させることができる。従って、電子装置は、主電流の電流値をより高精度に測定することができる。また、配線抵抗値の統計結果を用いて主電流の電流値を算出するため、主電流の電流値をより高精度に測定することができる。
・電子装置の第6の例
図17は、温度特性データの第3の例を示す図である。図17に示すように、電子装置の第6の例は、図12に示す電子装置の第4の例において、温度特性データ35が例えば温度フィールドの代わりに、パイロット電流無しの場合の温度フィールド及びパイロット電流有りの場合の温度フィールドを有するものである。また、温度特性データ35は、データ有無フィールドの他に、Δ℃補正量フィールド、ΔmΩ補正量フィールド、抵抗値の許容範囲フィールドを有し、かつ配線抵抗値フィールドの代わりに配線抵抗値の統計結果フィールドを有する。
パイロット電流無しの場合の温度フィールドには、例えば0.0℃から100.0℃まで0.1℃おきにパイロット電流が流れない場合の配線部分25の温度の値が格納される。パイロット電流有りの場合の温度フィールドには、パイロット電流が流れる場合の配線部分25の温度の値が格納される。
Δ℃補正量フィールドには、パイロット電流が流れる場合とパイロット電流が流れない場合との配線部分25の温度差の値が格納される。ΔmΩ補正量フィールドには、パイロット電流が流れる場合とパイロット電流が流れない場合との配線部分25の温度差に対応する配線抵抗値の補正量の値が格納される。パイロット電流が流れる場合とパイロット電流が流れない場合との配線部分25の温度差に対応する配線抵抗値の補正量の値は、予め電子装置の設計者によって設定されてもよい。
電子装置の設計者は、例えば図12に示す電子装置を用いて実験を行うことができる。例えば、設計者は、電源配線24の配線部分25の各温度に対して、主電流に加えてパイロット電流を流すことによって温度が何度上昇するかを測定し、その温度上昇分に対する配線部分25の配線抵抗値の増加量を測定する。そして、設計者は、温度特性データ35のΔ℃補正量フィールド及びΔmΩ補正量フィールドに、測定した各値を格納しておくようにしてもよい。
抵抗値の許容範囲フィールド及び配線抵抗値の統計結果フィールドについては、図15に示す温度特性データの第2の例において説明した通りである。従って、重複する説明を省略する。
一例として、例えば図17に示す例では、パイロット電流が流れない場合の温度が0.0℃〜0.2℃、30.0℃〜30.2℃及び100.0℃である場合のそれぞれに対して、パイロット電流が流れる場合の温度が0.1℃高くなっている。従って、パイロット電流が流れない場合の各温度に対して、Δ℃補正量として0.1℃が格納されている。また、パイロット電流が流れない場合の各温度に対して、0.1℃のΔ℃補正量に対してΔmΩ補正量として0.001mΩが格納されている。30.0℃の温度に対しては、データ有無フィールドの値が直前まで無しであったのが、プロセッサ31によって配線抵抗値として1.300mΩが算出されたため、配線抵抗値の統計結果フィールドに1.300mΩが丁度、格納された状態となっている。この後、プロセッサ31によって30.0℃の温度に対するデータ有無フィールドの値が有りに書き換えられる。
プロセッサ31は、パイロット電流が流れない場合、すなわち主電流のみが流れる場合と、パイロット電流が流れる場合、すなわち主電流とパイロット電流とが流れる場合とで、温度センサ33によって電源配線24の配線部分25の温度を検出する。プロセッサ31は、パイロット電流が流れない場合とパイロット電流が流れる場合との温度差を求め、この温度差に対応する配線抵抗値の補正量を温度特性データ35から取得して、算出した配線抵抗値を補正する。
その他の構成は、図12に示す電子装置の第4の例と同様であるため、重複する説明を省略する。なお、図5に示す電子装置の第2の例のように、定電流回路32の代わりにパイロット抵抗28を用いてもよい。
・電流モニタ方法の第5の例
図18は、実施の形態にかかる電流モニタ方法の第5の例を示す図である。図18に示す電流モニタ方法は、例えば図17に示す温度特性データ35を有する電子装置において実施される。
図18に示すように、例えば図17に示す温度特性データ35を有する電子装置において電流モニタ方法が開始されると、プロセッサ31は、温度センサ33によって電源配線24の配線部分25の温度T1を検出して取得する(ステップS61)。温度T1は、パイロット電流が流れない場合の温度である。次いで、上述したステップS11〜ステップS12と同様にして、プロセッサ31は、パイロット電流を供給してパイロット電流が流れるようにして(ステップS62)、配線部分25の両端の電圧差を取得する(ステップS63)。
次いで、プロセッサ31は、温度センサ33によって配線部分25の温度T2を検出して取得する(ステップS64)。温度T2は、パイロット電流が流れる場合の温度である。次いで、上述したステップS13〜ステップS14と同様にして、プロセッサ31は、パイロット電流の供給を停止してパイロット電流が流れないようにして(ステップS65)、配線部分25の両端の電圧差を取得する(ステップS66)。そして、上述したステップS15と同様にして、電源配線24の配線部分25の配線抵抗値を算出する(ステップS67)。
次いで、プロセッサ31は、温度特性データ35を参照し、ステップS67で算出した配線抵抗値が、ステップS61で取得した温度T1に対する抵抗値の許容範囲内に含まれるか否かを判断する(ステップS68)。許容範囲内に含まれない場合(ステップS68:No)、ステップS61へ戻り、プロセッサ31はステップS61〜ステップS68を繰り返す。ステップS67で算出した配線抵抗値が許容範囲内に含まれないためにステップS61〜ステップS68を繰り返す回数が所定回数に達したら、プロセッサ31は、例えば警報をあげて処理を停止してもよい。
一方、ステップS67で算出した配線抵抗値が、該当する温度に対する抵抗値の許容範囲内に含まれる場合(ステップS68:Yes)、プロセッサ31は、ステップS61で取得した温度T1とステップS64で取得した温度T2とが一致するか否かを判断する(ステップS69)。一致する場合(ステップS69:Yes)、ステップS70へ進む。一致しない場合(ステップS69:No)、プロセッサ31は、温度特性データ35を参照し、ステップS61で取得した温度T1に対応する配線抵抗値の補正量を温度特性データ35から取得する。プロセッサ31は、その配線抵抗値の補正量を用いて、ステップS67で算出した配線抵抗値を補正する(ステップS73)。そして、ステップS70へ進む。
ステップS70では、上述したステップS48と同様にして、プロセッサ31は、ステップS61で取得した温度に対応する配線抵抗値の統計結果のデータが温度特性データ35にあるか否かを判断する(ステップS70)。温度特性データ35に該当するデータがない場合には(ステップS70:No)、上述したステップS49と同様にして、温度特性データ35の配線抵抗値の統計結果フィールドに、ステップS67で算出した配線抵抗値もしくはステップS73で補正した配線抵抗値を書き込む。そして、プロセッサ31は、対応するデータ有無フィールドの値を有りに書き換える(ステップS71)。
温度特性データ35に該当するデータがある場合には(ステップS70:Yes)、上述したステップS51と同様にして、配線抵抗値の例えば平均値を算出し、平均値を用いて温度特性データ35の配線抵抗値の統計結果フィールドの値を更新する(ステップS74)。
ステップS71またはステップS74に続いて、プロセッサ31は、ステップS71で温度特性データ35の配線抵抗値の統計結果フィールド書き込んだ値、もしくはステップS74で配線抵抗値の統計結果フィールドを更新した値、及び上述した(6)式から、主電流の電流値を算出する(ステップS72)。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。
一例として、例えばパイロット電流が流れない場合の電源配線24の配線部分25の温度が30.0℃であり、配線部分25の両端の電圧差が0.1Vであるとする。また、例えばパイロット電流が流れる場合の電源配線24の配線部分25の温度が30.1℃であり、配線部分25の両端の電圧差が0.101301Vであるとする。また、パイロット電流の電流値が1Aであるとする。この場合、配線部分25の配線抵抗値は、上記(5)式から、1.301mΩとなる。しかし、例えば図17に示す温度特性データ35によれば、パイロット電流が流れることによって配線部分25の温度が30.0℃から30.1℃に0.1℃上昇する場合の配線抵抗値の増加量は0.001mΩであるため、この配線抵抗値の増加量を補正すると、実際の配線部分25の配線抵抗値は1.300mΩとなる。
図19は、温度特性データの第4の例を示す図である。図19に示す例は、例えば0.1℃おきに電源配線24の配線部分25の配線抵抗値を測定し、配線抵抗値の増加量を求めた結果のうち、例えば25℃から26℃までの温度範囲の結果を表したものである。
図19に示すように、電源配線24の配線部分25の温度が上昇する場合の配線抵抗値の増加量を予め測定しておき、配線部分の温度上昇量と配線抵抗値の増加量との関係を、温度特性データ35として電子装置に保持させておいてもよい。例えば、電子装置を立ち上げる際のセットアップ時に、電源配線24の配線部分25に電流が流れ始めるため、電源配線24の配線部分25の温度が上昇する。このセットアップ時の温度上昇時に一定温度間隔、例えば0.0℃から100.0℃まで0.1℃おきに電源配線24の配線部分25の配線抵抗値を測定することによって、図19に示すような温度特性データを取得してもよい。例えば温度が0.1℃上昇するときの配線抵抗値の増加量がばらつく場合には、近似値を用いてもよい。
図17もしくは図19に示す温度特性データ35を有する電子装置、及び図18に示す電流モニタ方法によれば、電源配線24の配線部分25にパイロット電流が流れることによって配線部分25の温度が上昇する場合、この温度の上昇によって配線部分25の配線抵抗値が変化する分を補正することができる。従って、電子装置は、パイロット電流が流れることによる発熱の影響をなくすことができるため、主電流の電流値をより高精度に測定することができる。また、配線部分25の温度上昇量として種々の値を設定し、温度上昇量の各設定値に対する配線部分25の配線抵抗値の増加量を設定しておいてもよい。そうすれば、パイロット電流が流れることによる発熱の影響だけでなく、電子装置が置かれる環境の温度が変化したことによる配線抵抗値の変化分を補正することができる。また、図19に示す温度特性データ35を用いる場合には、電子装置の立ち上げ時に、配線部分25の温度上昇量に対する配線抵抗値の補正量の関係が得られるため、予め電子装置の設計者が実験等によってこの関係を求めておく必要がない。従って、温度特性データ35を容易に取得することができる。
・電子装置の第7の例
図20は、実施の形態にかかる電子装置の第7の例を示す図である。図20に示すように、電子装置の第7の例は、図5に示す電子装置の第2の例もしくは図11に示す電子装置の第3の例において、スイッチ27、パイロット抵抗28もしくは定電流回路32、差動アンプ29、ADC30及びプロセッサ31がないものである。
スイッチ27、パイロット抵抗28もしくは定電流回路32、差動アンプ29、ADC30及びプロセッサ31によって実現される機能は、電子装置に対する外部機器41〜43によって実現される。例えば、電圧計41、電子負荷42及びコントローラ43が外部機器として用いられてもよい。
プリント基板21には、例えば4箇所の測定ポイントが設定されている。例えば、第1の測定ポイント36は、電源配線24においてDC/DCコンバータ23と配線部分25との間に設けられる。例えば、第2の測定ポイント37は、電源配線24において配線部分25とLSI26との間に設けられる。例えば、第3の測定ポイント38は、電源配線24において第2の測定ポイント37とLSI26との間に設けられる。例えば、第4の測定ポイント39は、プリント基板21のグラウンド配線またはLSI26のグラウンド端子に設けられる。
電圧計41は、差動アンプ29及びADC30の機能を実現する。電圧計41において、+端子は第1の測定ポイント36に接続され、−端子は第2の測定ポイント37に接続され、GND端子は第4の測定ポイント39に接続される。電圧計41の一例として、例えばADVANTEST社のDIGITAL MULTIMETER R6451Aが挙げられる。
電子負荷42は、スイッチ27、及びパイロット抵抗28もしくは定電流回路32の機能を実現する。電子負荷42において、+端子は第3の測定ポイント38に接続され、GND端子は第4の測定ポイント39に接続される。電子負荷42の一例として、例えばFUJITSU DENSO社のELECTRONIC LOAD EUL−300αBが挙げられる。
コントローラ43は、プロセッサ31の機能を実現する。コントローラ43は、電圧計41及び電子負荷42に接続される。コントローラ43は、電圧計41及び電子負荷42を制御して、後述する電流モニタ方法の第6または第7の例を実施し、データを収集する。そして、コントローラ43は、収集したデータを処理してLSI26に流れ込む主電流の電流値を算出する。例えば市販のパーソナルコンピュータをコントローラ43に用いることができる。
・電流モニタ方法の第6の例
図21は、実施の形態にかかる電流モニタ方法の第6の例を示す図である。図21に示す電流モニタ方法は、例えば図20に示す電子装置を含む電流測定システムにおいて実施される。
図21に示すように、例えば図20に示す電子装置を含む電流測定システムにおいて電流モニタ方法が開始されると、コントローラ43は、電子負荷42をオフ状態に制御する。そして、コントローラ43は、電圧計41を読み取り、電源配線24の配線部分25に主電流が流れることによって配線部分25の両端に生じる電圧差を取得する(ステップS81)。
次いで、コントローラ43は、電子負荷42の電流値を例えば1Aに設定して電子負荷42をオン状態に制御する(ステップS82)。それによって、電源配線24の配線部分25に主電流と例えば1Aのパイロット電流とが流れる。そして、コントローラ43は、電圧計41を読み取り、電源配線24の配線部分25に主電流とパイロット電流とが流れることによって配線部分25の両端に生じる電圧差を取得する(ステップS83)。
次いで、コントローラ43は、上述した(5)式から、電源配線24の配線部分25の配線抵抗値を算出する(ステップS84)。次いで、コントローラ43は、ステップS84で算出した配線抵抗値及び上述した(6)式から、主電流の電流値を算出する(ステップS85)。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。なお、電子負荷42をオンにして配線部分25の両端に生じる電圧差を取得した後、電子負荷42をオフにして配線部分25の両端に生じる電圧差を取得してもよい。
・電流モニタ方法の第7の例
図22は、実施の形態にかかる電流モニタ方法の第7の例を示す図である。図22に示す電流モニタ方法は、例えば図20に示す電子装置を含む電流測定システムにおいて実施される。
図22に示すように、例えば図20に示す電子装置を含む電流測定システムにおいて電流モニタ方法が開始されると、コントローラ43は、電子負荷42をオフ状態に制御する。そして、コントローラ43は、電圧計41を読み取り、電源配線24の配線部分25に主電流が流れることによって配線部分25の両端に生じる電圧差を取得する(ステップS91)。
次いで、コントローラ43は、電子負荷42の電流値を例えば0Aに設定して電子負荷42をオン状態に制御する(ステップS92)。次いで、コントローラ43は、電子負荷42の電流値を、現在の設定値に対して例えば0.01Aを増やした値に設定する(ステップS93)。それによって、主電流と、ステップS93で設定した電流値のパイロット電流とが、電源配線24の配線部分25に流れる。現在の電子負荷42の電流値に対して増やす値は、0.01Aに限らず、例えば0.02Aであってもよいし、0.1Aであってもよい。
そして、コントローラ43は、電圧計41を読み取り、電源配線24の配線部分25に主電流とパイロット電流とが流れることによって配線部分25の両端に生じる電圧差を取得する(ステップS94)。次いで、コントローラ43は、ステップS94で取得した電圧差の値からステップS91で取得した電圧差の値を減算することによって電圧差の差分を算出し、算出した差分が設定値以上であるか否かを判断する(ステップS95)。判断の基準となる設定値は、特に限定しないが、例えば0.1Vであってもよい。
電圧差の差分が設定値以上でない場合(ステップS95:No)、ステップS93へ戻り、コントローラ43はステップS93〜ステップS95を繰り返す。電圧差の差分が設定値以上である場合(ステップS95:Yes)、コントローラ43は、上述した(5)式から、電源配線24の配線部分25の配線抵抗値を算出する(ステップS96)。次いで、コントローラ43は、ステップS96で算出した配線抵抗値及び上述した(6)式から、主電流の電流値を算出する(ステップS97)。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。
図20に示す電子装置を含む電流測定システム、及び図21もしくは図22に示す電流モニタ方法によれば、電子装置がスイッチ27、パイロット抵抗28もしくは定電流回路32、差動アンプ29、ADC30及びプロセッサ31を有していなくても、主電流の電流値を測定することができる。また、図22に示す電流モニタ方法によれば、パイロット電流の電流値が自動的に設定されるため、予め電子装置の電源配線に応じた各部の電流設定を確認する必要がない。従って、電子装置の回路仕様が明らかでない場合であっても、主電流の電流値を測定することができる。
・電子装置の第8の例
図23は、実施の形態にかかる電子装置の第8の例を示す図である。図8に示すように、電子装置の第8の例は、図5に示す電子装置の第2の例において、DC/DCコンバータ23に電源配線24を介して複数のLSI26が接続されているものである。この場合、LSI26ごとに、スイッチ27、パイロット抵抗28、差動アンプ29、ADC30及びプロセッサ31が設けられる。
各LSI26へ伸びる電源配線24は、できるだけDC/DCコンバータ23の近くから分岐するのが好ましい。そうすれば、DC/DCコンバータ23と各LSI26との間の電源配線24のほぼ全体が配線部分25になるため、各LSI26に対する配線部分25の配線抵抗値が主電流を測定するのに十分な大きさとなる。
その他の構成は、図5に示す電子装置の第2の例と同様であるため、重複する説明を省略する。なお、図11に示す電子装置の第3の例のように、パイロット抵抗28の代わりに定電流回路32を用いてもよい。また、図12に示す電子装置の第4の例、電子装置の第5の例または電子装置の第6の例のように、温度センサ33を有し、メモリ34に温度特性データ35を格納してもよい。
図23に示す電子装置によれば、電子装置が複数のLSI26を有する場合でも、電子装置は、LSI26ごとに主電流の電流値を測定することができる。
・電子装置の第9の例
図24は、実施の形態にかかる電子装置の第9の例を示す図である。図24に示すように、電子装置の第9の例は、図12に示す電子装置の第4の例において、主電流の電流値に基づいて、DC/DCコンバータ23のシャットダウンを制御する。また、電子装置の第9の例は、定電流回路32の代わりにパイロット抵抗28を有する。
プロセッサ31は、算出した主電流の電流値が、予め設定されている閾値を超える場合に、DC/DCコンバータ23をシャットダウンさせる制御信号をDC/DCコンバータ23へ出力する。DC/DCコンバータ23は、プロセッサ31からシャットダウンの制御信号を受け取るとオフ状態に切り替わる。メモリ34は、DC/DCコンバータ23をシャットダウンさせるか否かの判断の基準となる閾値を格納していてもよい。
その他の構成は、図12に示す電子装置の第4の例と同様であるため、重複する説明を省略する。なお、パイロット抵抗28の代わりに定電流回路32を用いてもよい。
・電流モニタ方法の第8の例
図25は、実施の形態にかかる電流モニタ方法の第8の例を示す図である。図25に示す電流モニタ方法は、例えば図24に示す電子装置において実施される。
図25に示すように、例えば図24に示す電子装置において電流モニタ方法が開始されると、上述したステップS21〜ステップS31と同様にして、プロセッサ31は、主電流の電流値を算出する(ステップS101〜ステップS111)。次いで、プロセッサ31は、例えばメモリ34から主電流の電流値の閾値を読み出し、ステップS109で算出した主電流の電流値が、例えばメモリ34から読み出した閾値を超えるか否かを判断する(ステップS112)。
主電流の電流値が閾値を超えない場合(ステップS112:No)、ステップS101へ戻り、プロセッサ31はステップS101〜ステップS112を繰り返す。一方、主電流の電流値が閾値を超える場合(ステップS112:Yes)、プロセッサ31は、DC/DCコンバータ23をシャットダウンさせる制御信号をDC/DCコンバータ23へ出力する(ステップS113)。それによって、DC/DCコンバータ23がオフ状態に切り替わる。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。
図24に示す電子装置及び図25に示す電流モニタ方法によれば、主電流の電流値が閾値を超えるとDC/DCコンバータ23がオフ状態に切り替わるため、LSI26に過剰な電流が流れ込むのを防ぐことができる。従って、過剰な電流の流れ込みによってLSI26が故障するのを防ぐことができる。
・電子装置の第10の例
電子装置の第10の例は、図24に示す電子装置の第9の例において、主電流の電流値に基づいてDC/DCコンバータ23をシャットダウン制御する代わりに、DC/DCコンバータ23の出力電圧値に基づいて、DC/DCコンバータ23の出力電圧を制御する。電子装置の第10の例は、図8及び図9に示すようなSENCE電圧によるフィードバック制御のない電子装置に適用することができる。
プロセッサ31は、電源配線24の配線部分25の配線抵抗値、主電流の電流値及びLSI26の入力電圧値に基づいて、DC/DCコンバータ23の出力電圧値を算出する。例えば、プロセッサ31は、上記(1)式を変形して得られる次の(7)式を計算することによってDC/DCコンバータ23の出力電圧値を算出することができる。
Vdon=Vlin+Ilsi×Rptn ・・・(7)
上述したように、Ilsiは、主電流の電流値であり、プロセッサ31によって算出される。Rptnは、配線部分25の配線抵抗値であり、プロセッサ31によって算出される。Vlinは、パイロット電流が流れないときのLSI26の入力電圧値であり、既知である。また、Vdonは、パイロット電流が流れないときのDC/DCコンバータ23の出力電圧値であり、Rptn及びIlsiを算出する際には既知としているが、例えばSENCE電圧によるフィードバック制御がない場合には、時間の経年とともに変化することがある。
プロセッサ31は、算出したDC/DCコンバータ23の出力電圧値が、予め設定されている閾値に満たない場合に、DC/DCコンバータ23の出力電圧値が閾値以上になるようにDC/DCコンバータ23の出力電圧を増大させる制御信号をDC/DCコンバータ23へ出力する。DC/DCコンバータ23は、プロセッサ31から出力増大の制御信号を受け取ると出力電圧を増大させる。メモリ34は、DC/DCコンバータ23の出力電圧を増大させるか否かの判断の基準となる閾値を格納していてもよい。
その他の構成は、図12に示す電子装置の第4の例と同様であるため、重複する説明を省略する。なお、パイロット抵抗28の代わりに定電流回路32を用いてもよい。
・電流モニタ方法の第9の例
図26は、実施の形態にかかる電流モニタ方法の第9の例を示す図である。図26に示す電流モニタ方法は、例えば図24に示す電子装置において実施される。
図26に示すように、例えば図24に示す電子装置において電流モニタ方法が開始されると、上述したステップS21〜ステップS31と同様にして、プロセッサ31は、主電流の電流値を算出する(ステップS121〜ステップS131)。次いで、プロセッサ31は、上記(7)式を計算して、DC/DCコンバータ23の出力電圧値を算出する。そして、プロセッサ31は、例えばメモリ34からDC/DCコンバータ23の出力電圧値の閾値を読み出し、算出したDC/DCコンバータ23の出力電圧値が、例えばメモリ34から読み出した閾値よりも小さいか否かを判断する(ステップS132)。
DC/DCコンバータ23の出力電圧値が閾値よりも小さくない場合(ステップS132:No)、ステップS121へ戻り、プロセッサ31はステップS121〜ステップS132を繰り返す。一方、DC/DCコンバータ23の出力電圧値が閾値よりも小さい場合(ステップS132:Yes)、プロセッサ31は、DC/DCコンバータ23の出力電圧値が閾値以上になるようにDC/DCコンバータ23の出力電圧を増大させる制御信号をDC/DCコンバータ23へ出力する(ステップS133)。それによって、DC/DCコンバータ23の出力電圧が増大し、閾値以上の出力電圧値となる。そして、一連の電流モニタ方法の処理を終了する。
図24に示す電子装置及び図26に示す電流モニタ方法によれば、DC/DCコンバータ23の出力電圧値が閾値以上に保たれるため、SENCE電圧によるフィードバック制御のない電子装置において、DC/DCコンバータ23の出力電圧が低下するのを防ぐことができる。従って、LSI26の入力電圧の低下によってLSI26が誤動作するのを防ぐことができる。
上述した各実施例を含む実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)主電流を供給する電源回路と、前記電源回路から供給される主電流によって駆動されるレシーバ回路と、前記電源回路と前記レシーバ回路とを接続する電源配線に流れる電流によって前記電源配線の少なくとも一部の配線部分の両端に生じる電圧差を検出する検出回路と、前記電源配線に、前記主電流よりも小さい電流値のパイロット電流を供給する電流供給回路と、前記電流供給回路に対して前記パイロット電流の供給及び供給停止を制御し、前記パイロット電流の供給停止時に前記検出回路によって検出される前記電圧差の値、前記パイロット電流の供給時に前記検出回路によって検出される前記電圧差の値、及び前記パイロット電流の電流値に基づいて、前記配線部分の配線抵抗値を算出し、前記パイロット電流の供給停止時に前記検出回路によって検出される前記電圧差の値、及び前記配線抵抗値に基づいて、前記主電流の電流値を算出する制御回路と、を備えることを特徴とする電子装置。
(付記2)前記電流供給回路は、一端が前記配線部分と前記レシーバ回路との間の電源配線に接続され、かつ他端がグラウンドに接続され、かつ抵抗値が前記配線抵抗値よりも大きい既知である抵抗を有し、前記制御回路は、前記パイロット電流の供給時における前記レシーバ回路の入力電圧値、及び前記電流供給回路の前記抵抗の抵抗値に基づいて、前記パイロット電流の電流値を算出することを特徴とする付記1に記載の電子装置。
(付記3)前記電流供給回路は、前記配線部分と前記レシーバ回路との間の電源配線に接続され、かつ一定の電流値の前記パイロット電流を流す定電流回路を有することを特徴とする付記1に記載の電子装置。
(付記4)前記配線部分の温度を検出する温度センサと、前記配線抵抗値の温度特性データを格納するメモリと、を備え、前記制御回路は、前記温度センサによって検出される前記温度に対応する前記配線抵抗値のデータが前記メモリに格納されている場合には、前記メモリから前記配線抵抗値を読み出して前記主電流の電流値を算出することを特徴とする付記1乃至3のいずれか一つに記載の電子装置。
(付記5)前記配線抵抗値の温度特性データは、温度ごとに前記配線抵抗値の許容範囲のデータを含み、前記制御回路は、算出した前記配線抵抗値を、前記温度センサによって検出される前記温度に対応する前記配線抵抗値の許容範囲のデータと比較し、算出した前記配線抵抗値が前記許容範囲から外れる場合には、再度、前記パイロット電流の供給停止時に前記検出回路によって検出される前記電圧差の値、前記パイロット電流の供給時に前記検出回路によって検出される前記電圧差の値、及び前記パイロット電流の電流値に基づいて、前記配線部分の配線抵抗値を算出することを特徴とする付記4に記載の電子装置。
(付記6)前記配線抵抗値の温度特性データは、前記パイロット電流の供給時における前記配線部分の温度上昇量及び配線抵抗値変化量のデータを含み、前記制御回路は、前記パイロット電流の供給停止時に前記温度センサによって検出される前記温度と、前記パイロット電流の供給時に前記温度センサによって検出される前記温度との差分を求め、前記メモリから前記差分に対応する前記配線抵抗値変化量を読み出し、前記配線抵抗値変化量に基づいて前記パイロット電流の供給時における前記配線抵抗値を補正することを特徴とする付記4または5に記載の電子装置。
(付記7)複数の前記レシーバ回路がそれぞれの前記電源配線によって前記電源回路に接続されている場合、前記レシーバ回路ごとに前記電流供給回路を有し、前記電流供給回路は、それぞれの前記電源配線の前記配線部分とそれぞれの前記レシーバ回路との間の電源配線に接続されていることを特徴とする付記1乃至6のいずれか一つに記載の電子装置。
(付記8)前記制御回路は、前記主電流の電流値が閾値を超える場合に、前記電源回路に対して主電流の供給を停止させる制御を行うことを特徴とする付記1乃至7のいずれか一つに記載の電子装置。
(付記9)前記制御回路は、前記配線部分の配線抵抗値、前記主電流の電流値及び前記レシーバ回路の入力電圧値に基づいて、前記電源回路の出力電圧値を算出し、前記出力電圧値が閾値に満たない場合に、前記電源回路に対して前記出力電圧値が前記閾値以上になるように出力電圧を増大させる制御を行うことを特徴とする付記1乃至8のいずれか一つに記載の電子装置。
(付記10)主電流を供給する電源回路と、前記電源回路から供給される主電流によって駆動されるレシーバ回路と、を接続する電源配線の少なくとも一部の配線部分に、前記電源回路から前記レシーバ回路に流れ込む主電流を流して、前記配線部分の両端に生じる第1の電圧差を検出し、前記配線部分に前記主電流と、前記主電流よりも小さい電流値のパイロット電流とを流して、前記配線部分の両端に生じる第2の電圧差を検出し、前記第1の電圧差の値、前記第2の電圧差の値、及び前記パイロット電流の電流値に基づいて、前記配線部分の配線抵抗値を算出し、前記第1の電圧差の値及び前記配線抵抗値に基づいて前記主電流の電流値を算出することを特徴とする電流モニタ方法。
(付記11)前記配線部分の温度を検出し、検出した前記温度に対応する前記配線抵抗値のデータがメモリに格納されている場合には、前記メモリから前記配線抵抗値を読み出して前記主電流の電流値を算出することを特徴とする付記10に記載の電流モニタ方法。