JP2015019604A - オレンジ色の発光を示すルシフェラーゼ - Google Patents

オレンジ色の発光を示すルシフェラーゼ Download PDF

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Abstract

【課題】高輝度のオレンジ色の発光を生じさせるルシフェラーゼの提供。【解決手段】実施形態に係るルシフェラーゼは、クロイワボタル(Luciora kuroiwae)から取得された野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列に対して変異が導入されたアミノ酸配列を有する。実施形態に係るルシフェラーゼは、570nmから610nmの最大発光波長を有する発光を生じる発光反応を触媒する。前記発光は、イリオモテボタル(Rhagophthalmus ohbai)由来のオレンジ色ルシフェラーゼ(SLOルシフェラーゼ)に触媒される発光反応の発光と比較して、10倍以上の強度を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、オレンジ色の発光を示すルシフェラーゼに関する。
細胞内のシグナル伝達および遺伝子発現といった細胞の機能を調べるためには、蛍光色素および蛍光タンパク質といった蛍光プローブ並びにルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を利用する化学発光プローブ等が用いられている。
特に遺伝子の発現調節の解析には、励起光による細胞のダメージが生じず且つ自家発光の問題が生じない、定量性に優れた発光計測が用いられる。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子が導入された細胞を観察する場合、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光強度を測定することで、ルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さ(具体的には発現量)を調べることができる。具体的には、最初に細胞を溶解して細胞溶解液を作製し、その後この細胞溶解液にルシフェリンおよびアデノシン三リン酸(ATP)等を添加し、光電子増倍管を用いたルミノメーターで発光強度を定量し、その結果に基づいて発現量を特定する。
この方法では、発光強度の測定は細胞を溶解した後に行われる。このため、ある時点でのルシフェラーゼ遺伝子の発現量は、測定に使用した全細胞の平均値として得られる。
ルシフェラーゼ遺伝子等の発光遺伝子をレポーター遺伝子として導入する方法として、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクチン法またはエレクトロポレーション法等を使用でき、これらの方法は目的および細胞の種類の違いに応じて使い分けられている。細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子の上流または下流に目的のDNA断片を繋ぎ、ルシフェラーゼ遺伝子の発現量を測定することで、当該DNA断片がルシフェラーゼ遺伝子の転写に及ぼす影響を調べることが可能となる。また、細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子と目的の遺伝子とを共発現させることで、当該遺伝子産物がルシフェラーゼ遺伝子の発現に及ぼす影響を調べることが可能となる。
時間経過に沿って発光遺伝子の発現量を分析するには、生きた細胞からの発光強度を経時的に測定する必要がある。このような測定は、ルミノメーターを備えたインキュベーターにて細胞を培養し、細胞集団全体からの発光強度を一定時間ごとに測定することで行われる。細胞集団全体における発光遺伝子の発現量の経時的な変化を捉えることにより、一定の周期性をもった発現リズム等を分析することができる。
しかし、1つのルシフェラーゼをレポーターとした解析ではインターナルコントロールがないため、目的とする遺伝子転写活性を定量することが困難である。そこで、デュアルアッセイ(非特許文献1)やマルチカラーアッセイ(特許文献1および非特許文献2)など、発光色の異なる複数のルシフェラーゼをレポーターとして用いる手法が確立された。
特にマルチカラーアッセイは、550nm付近に最大発光波長を示すルシフェラーゼ(緑色発光)、580nm付近に最大発光波長を示すルシフェラーゼ(オレンジ色発光)および620nm付近に最大発光波長を示すルシフェラーゼ(赤色発光)といった複数色の発光酵素を含む検体において、各発光酵素による相対光量を同時に測定および算出する方法である。
マルチカラーアッセイに使用するルシフェラーゼの全てを、共通したホタルに由来のものとする場合、単一種の基質を用いて、複数の発光色を同時に検出することが可能となる。これまでに市販されているそのようなルシフェラーゼの例は、イリオモテボタルRhagophthalmus ohbai由来のルシフェラーゼ群であり、それには、緑色ルシフェラーゼ(SLGルシフェラーゼ:東洋紡株式会社)、オレンジ色ルシフェラーゼ(SLOルシフェラーゼ:東洋紡株式会社)および赤色ルシフェラーゼ(SLRルシフェラーゼ:東洋紡株式会社)が含まれる(特許文献1)。
しかしながら、SLOルシフェラーゼのような従来のオレンジ色ルシフェラーゼは、他の色のルシフェラーゼと比較して発光強度が低い。そのため、これを利用したマルチカラーアッセイは、ノイズの影響を受けやすく、感度の高い測定を行うことは困難である。
特開2007−218774号公報
Naylor L. H.(1999)Biochem. Pharmacol., 58(5):749-757, Reporter gene technology: the future looks bright. Nakajima, Y., T. Kimura, K. Sugata, T. Enomoto, T. Asakawa, H. Kubota, M. Ikeda, and Y. Ohmiya., (2005)BioTechniques, 38:891-894, A multicolor luciferase assay system, one-step monitoring of multiple gene expressions with a single substrate. Viviani VR, Silva AC, Perez GL, Santelli RV, Bechara EJ, Reinach FC., (1999)Photochem. Photobiol., 70(2):254-260, Cloning and molecular characterization of the cDNA for the Brazilian larval click-beetle Pyrearinus termitilluminans luciferase.
本発明の目的は、高輝度のオレンジ色の発光を生じさせるルシフェラーゼを提供することにある。
実施形態に係るルシフェラーゼは、配列番号38のアミノ酸配列に対して変異が導入されたアミノ酸配列を有する。実施形態に係るルシフェラーゼは、570nmから610nmの最大発光波長を有する発光を生じる発光反応を触媒する。前記発光は、配列番号48のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼに触媒される発光反応の発光と比較して、10倍以上の強度を有する。
本発明によれば、高輝度のオレンジ色の発光を生じさせるルシフェラーゼが提供される。
図1は、D−ルシフェリンを発光基質として用いた場合に、種々のルシフェラーゼを含むHeLa細胞内にて誘起される発光を示す図である。 図2は、D−ルシフェリンを基質として用いた場合に、種々のルシフェラーゼによって誘起される発光の発光強度を示す図である。 図3は、D−ルシフェリンを基質として用いた場合に、種々のルシフェラーゼによって誘起される発光の発光スペクトルを示す図である。
本発明の第1の実施形態はルシフェラーゼである。
「ルシフェラーゼ」とは、一般に、発光が生じる化学反応を触媒する酵素を指す。当該酵素の基質となる物質はルシフェリンと呼ばれる。ATPの存在下、ルシフェラーゼの触媒作用により、ルシフェリンが化学変化を起こす際に発光する。現在、ルシフェラーゼは、ホタルに由来するものおよびバクテリアに由来するものが取得されている。実施形態に係るルシフェラーゼも、上述の通り定義されるルシフェラーゼと同義であるが、後述するホタルから取得されたルシフェラーゼである。
実施形態に関してルシフェリンとは、ホタルルシフェラーゼの基質となるルシフェリンおよびそのアナログを意味する。ルシフェリンは、例えば、WO2009/096197及びWO2010/106896に基質として記載されている物質である。具体的には、例えば、ジメチルアニリン−モノエン型ルシフェリン、ジメチルアニリン−ジエン型ルシフェリン、ジメチルアニリン型ルシフェリン、D−ルシフェリン及びこれらの誘導体である。
実施形態に係るルシフェラーゼは、配列番号38のアミノ酸配列に対して変異が導入されたアミノ酸配列を有する。
配列番号38のアミノ酸配列とは、クロイワボタル(Luciora kuroiwae)から取得された野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号1)に変異を導入したものである。クロイワボタルとは節足動物門昆虫綱コウチュウ目ホタル科ホタル属に属すホタルである。配列番号38のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列のN末端側から283番目のセリン残基がグリシン残基に置換されたものである。本願では、このような置換変異を「S283G変異」または「S283G」と表す場合があり、また、配列番号38のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼを「S283G変異体」または「変異体1」と表す場合がある。
クロイワボタルから取得された野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列は、次の通りである。
MEKEENVIYGPEPFYPVEEGSAGTQLHRFMERYAKMGAICFSNALTGQDVTYAEYFDRSVRLAEALRRHGLTPEKKIGICSENCLEFFIPVLSGAYIASPVAPTNEIYTIRELVHSFGISEPMIVFSSKKGLDKVLEVQKTVHSIKTIVIIDSSTTYRGYDSMDAFVKKYVPANFNLSEFKTVEVDNETHTLLIMNSSGSTGLPKGVLVRHCGAVTRFSHCRDPIFGNQVSPGTAILTVVPFHHGFGMFTTLGYFVCGYRIVMLTKFDDEVLLKTLQDYKCTSVILVPTLFAILNRSELLEKFDLSNLTEIASGGAPLAKEVGEAVARRFNLPGVRQGYGLTETTSAFIITPEGDDKPGASGKVVPLMKVKVIDLDTKKTLGPNRRGEICVKGPMLMTGYEKNPTETKEIIDEDGWLHSGDIGYWDEDHHFFIVDRLKSLIKYKGYQVPPAELESVLLQHPNIFDAGVAGIPDPEAGELPGAVVVLEKGKHLTEQEVLDYVAGQVYNAKRLRGGVRFVDEVPKGLTGKIDAKAIREILKKPQAKM(配列番号1)
また、S283G変異体(変異体1)のアミノ酸配列は、次の通りである。
MEKEENVIYGPEPFYPVEEGSAGTQLHRFMERYAKMGAICFSNALTGQDVTYAEYFDRSVRLAEALRRHGLTPEKKIGICSENCLEFFIPVLSGAYIASPVAPTNEIYTIRELVHSFGISEPMIVFSSKKGLDKVLEVQKTVHSIKTIVIIDSSTTYRGYDSMDAFVKKYVPANFNLSEFKTVEVDNETHTLLIMNSSGSTGLPKGVLVRHCGAVTRFSHCRDPIFGNQVSPGTAILTVVPFHHGFGMFTTLGYFVCGYRIVMLTKFDDEVLLKTLQDYKCTGVILVPTLFAILNRSELLEKFDLSNLTEIASGGAPLAKEVGEAVARRFNLPGVRQGYGLTETTSAFIITPEGDDKPGASGKVVPLMKVKVIDLDTKKTLGPNRRGEICVKGPMLMTGYEKNPTETKEIIDEDGWLHSGDIGYWDEDHHFFIVDRLKSLIKYKGYQVPPAELESVLLQHPNIFDAGVAGIPDPEAGELPGAVVVLEKGKHLTEQEVLDYVAGQVYNAKRLRGGVRFVDEVPKGLTGKIDAKAIREILKKPQAKM(配列番号38)
配列番号38のアミノ酸配列に対して導入される変異とは、例えば、アミノ酸残基の置換、欠失および/または付加等である。また、配列番号38のアミノ酸配列上において、1カ所に変異が導入されてもよく、または複数カ所に変異が導入されてもよい。実施形態に係るルシフェラーゼのアミノ酸配列と、元となる配列番号38のアミノ酸配列とは、一定の相同性を有してよい。例えば、これらのアミノ酸配列は、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上または99.8%以上の相同性を有する。
実施形態に係るルシフェラーゼは、570nmから610nmの最大発光波長を有する発光を生じる発光反応を触媒する。
570nmから610nmの波長を有する光とは、一般にオレンジ色と言われる光である。実施形態に係るルシフェラーゼによる発光の最大発光波長は、好ましくは580nmから600nmの範囲にあり、さらに好ましくは585nmから595nmの範囲にあり、最も好ましくは590nm付近である。
実施形態に係るルシフェラーゼによる発光は、この範囲に最大発光波長を有するが、この範囲から外れる波長の光が混在していてもよい。しかしながら、そのような範囲外の波長の光の強度は小さい方が好ましい。
実施形態に係るルシフェラーゼによると、生物の培養に適した温度においてオレンジ色の発光が得られる。好ましくは、実施形態に係るルシフェラーゼによると、哺乳類細胞の培養に適した温度域においてオレンジ色の発光が得られ、その温度とは、例えば32℃から42℃であり、より具体的には35℃から39℃であり、特に37℃付近である。
実施形態に係るルシフェラーゼによると、従来のオレンジ色ルシフェラーゼと比較して、高い強度の発光が得られる。例えば、イリオモテボタル(Rhagophthalmus ohbai)由来のオレンジ色ルシフェラーゼ(SLOルシフェラーゼとして東洋紡株式会社から市販されている)と比較すると、10倍以上の強度を有し、好ましくは20倍以上の強度を有し、さらに好ましくは29倍以上の強度を有する。
なお、SLOルシフェラーゼ(東洋紡株式会社製)のアミノ酸配列は以下の通りである。
MANEIILHGAKPRDPLDLGTAGIQLYRALTNFSFLREALIDAHTEEVVSYADILENSCRLAKCYENYGLRQNSVISVCSENSTIFFYPVIAALYMGVITATVNDSYTERELLETLNISKPELVFCSKKAIKNMMALKRNVNFIKKVVLLDSKEDMGEAQCLSNFMARYSEPNLDVRNFKPRDFDAKEQVALIMSSSGTTGLPKGVVLTHRNLSVRFVHCKDPLFGNRTIPSTSILSIVPFHHAFGMFTTLSYFIVGLRVVLLKRFEEKFFLSTIEKYRIPTIVLAPPVMVFLAKSPLVDQYDLSSIREVATGGAPVGTEVAVAVAKRLKIGGILQGYGLTETCCAVLITPHDDVKTGSTGRVAPYVQAKIVDLTTGKSLGPNKRGELCFKSEIIMKGYFNNKQATEEAIDKEGWLHSGDVGYYDDDGHFFVVDRLKELIKYKGYQVAPAELEWLLLQHPSIKDAGVTGVPDEAAGELPGACIVLQEGKSLTEQEIIDYIAERVSPTKRIRGGVVFVDDIPKGATGKLVRSELRKLLAQKKSKL(配列番号48)
また、SLOルシフェラーゼ(東洋紡株式会社製)の遺伝子の塩基配列は以下の通りである。
ATGGCTAACGAGATCATCCTGCACGGCGCCAAGCCCAGGGACCCCCTGGACCTGGGCACCGCCGGCATTCAGCTCTACAGGGCCCTGACCAACTTCTCCTTCCTGAGGGAGGCCCTGATCGACGCCCACACCGAGGAGGTGGTGTCTTACGCCGACATCCTGGAGAACAGCTGTAGACTGGCTAAGTGCTACGAGAACTACGGCCTGCGCCAGAACAGCGTGATCTCCGTGTGCAGCGAGAATAGCACCATCTTCTTCTACCCCGTGATCGCCGCCCTGTACATGGGCGTGATCACCGCCACCGTGAACGACAGCTACACCGAGCGGGAGCTGCTGGAGACCCTGAACATCTCCAAGCCCGAACTGGTGTTCTGCTCCAAGAAGGCCATCAAGAACATGATGGCCCTGAAGAGGAACGTGAACTTCATCAAGAAGGTGGTGCTGCTGGACAGCAAGGAGGATATGGGCGAGGCCCAGTGCCTGAGCAACTTCATGGCCCGGTACTCCGAGCCCAACCTGGACGTGAGAAACTTCAAGCCAAGGGACTTCGACGCCAAGGAGCAGGTGGCCCTTATTATGTCCTCCTCTGGCACCACCGGCCTGCCAAAGGGCGTGGTGCTGACCCACAGGAACCTGAGCGTGCGCTTCGTCCACTGCAAGGACCCCCTGTTCGGCAACAGAACCATCCCCTCCACCTCCATCCTGTCCATCGTGCCCTTCCACCACGCCTTCGGAATGTTCACAACCCTGTCCTACTTCATCGTGGGCCTGAGAGTGGTGCTGCTGAAGAGATTCGAGGAGAAGTTCTTCCTGAGCACCATCGAGAAGTACAGAATCCCAACAATCGTGCTGGCCCCTCCTGTGATGGTGTTCCTGGCTAAGAGCCCCCTGGTGGACCAGTACGACCTGTCCAGCATCAGAGAGGTGGCCACCGGCGGCGCCCCTGTGGGCACCGAGGTTGCCGTGGCCGTGGCCAAGCGGCTGAAGATCGGCGGCATCCTCCAGGGCTACGGCCTGACCGAGACCTGCTGCGCCGTGCTGATCACCCCCCACGACGACGTGAAGACCGGCTCCACCGGCAGGGTAGCCCCCTACGTGCAGGCTAAGATCGTGGACCTGACCACCGGCAAGTCCCTGGGACCTAACAAGAGAGGCGAGCTGTGCTTCAAGAGCGAGATCATCATGAAGGGCTACTTCAACAACAAGCAGGCCACCGAGGAGGCCATCGACAAGGAGGGCTGGCTGCACTCCGGCGACGTGGGATACTACGACGACGATGGACATTTCTTCGTGGTGGACCGGCTGAAAGAGCTGATCAAGTACAAGGGCTACCAGGTGGCCCCCGCCGAGCTGGAGTGGCTGCTGCTCCAGCACCCATCCATCAAGGATGCCGGCGTGACCGGCGTGCCCGACGAGGCCGCCGGCGAGCTGCCCGGCGCCTGCATCGTGCTCCAGGAGGGCAAGAGCCTGACCGAGCAGGAGATCATCGACTACATCGCCGAGCGAGTGTCTCCCACCAAGCGCATCCGGGGCGGAGTCGTCTTCGTGGACGACATCCCCAAGGGCGCCACCGGCAAGCTGGTGAGAAGCGAGCTGCGGAAGCTGCTGGCCCAGAAGAAGTCCAAGCTGTAA(配列番号49)
実施形態に係るルシフェラーゼの具体例の1つは、配列番号40のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼである。このアミノ酸配列は、配列番号38のアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸残基の置換が導入されたものである。具体的には、配列番号38のアミノ酸配列のN末端側から256番目のバリン残基がアラニン残基に置換されている。この置換変異を本願では「V256A変異」または「V256A」等と表す場合がある。配列番号40のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼは、クロイワボタル由来の野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号1)を基準とすると、S283GおよびV256Aの変異が導入されている。本願では、配列番号40のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼを、「変異体2」と表す場合がある。
変異体2のアミノ酸配列は以下の通りである。
MEKEENVIYGPEPFYPVEEGSAGTQLHRFMERYAKMGAICFSNALTGQDVTYAEYFDRSVRLAEALRRHGLTPEKKIGICSENCLEFFIPVLSGAYIASPVAPTNEIYTIRELVHSFGISEPMIVFSSKKGLDKVLEVQKTVHSIKTIVIIDSSTTYRGYDSMDAFVKKYVPANFNLSEFKTVEVDNETHTLLIMNSSGSTGLPKGVLVRHCGAVTRFSHCRDPIFGNQVSPGTAILTVVPFHHGFGMFTTLGYFACGYRIVMLTKFDDEVLLKTLQDYKCTGVILVPTLFAILNRSELLEKFDLSNLTEIASGGAPLAKEVGEAVARRFNLPGVRQGYGLTETTSAFIITPEGDDKPGASGKVVPLMKVKVIDLDTKKTLGPNRRGEICVKGPMLMTGYEKNPTETKEIIDEDGWLHSGDIGYWDEDHHFFIVDRLKSLIKYKGYQVPPAELESVLLQHPNIFDAGVAGIPDPEAGELPGAVVVLEKGKHLTEQEVLDYVAGQVYNAKRLRGGVRFVDEVPKGLTGKIDAKAIREILKKPQAKM(配列番号40)
実施形態に係るルシフェラーゼの別の具体例は、変異体2の更なる変異体であって、変異体2の発光に関する性質が維持された変異体である。具体的には、配列番号40のアミノ酸配列との間で80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、N末端側から283番目および256番目のアミノ酸残基が、それぞれグリシン残基およびアラニン残基であるアミノ酸配列を有し、570nmから610nmの最大発光波長を有する発光を生じる発光反応を触媒し、前記発光は、配列番号48のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼに触媒される発光反応の発光と比較して、10倍以上の強度を有するルシフェラーゼである。
変異体2のアミノ酸配列と、変異体2の更なる変異体のアミノ酸配列との間の相同性は、好ましくは85%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上である。この相同性が高いほど、変異体2の性質が、更なる変異体においても維持される可能性が高まり、実用上十分な効果が期待される。
実施形態に係るルシフェラーゼの別の具体例は、配列番号42のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼである。このアミノ酸配列は、配列番号38のアミノ酸配列に対して2つのアミノ酸残基の置換が導入されたものである。1つの目の置換は、上述のV256Aの置換である。2つ目の置換は、配列番号38のアミノ酸配列のN末端側から111番目のアルギニン残基がヒスチジン残基に代わった置換である。この置換変異を本願では「R111H変異」または「R111H」等と表す場合がある。配列番号42のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼは、クロイワボタル由来の野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号1)を基準とすると、R111H、S283GおよびV256Aの変異が導入されている。本願では、配列番号42のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼを、「変異体3」と表す場合がある。
変異体3のアミノ酸配列は以下の通りである。
MEKEENVIYGPEPFYPVEEGSAGTQLHRFMERYAKMGAICFSNALTGQDVTYAEYFDRSVRLAEALRRHGLTPEKKIGICSENCLEFFIPVLSGAYIASPVAPTNEIYTIHELVHSFGISEPMIVFSSKKGLDKVLEVQKTVHSIKTIVIIDSSTTYRGYDSMDAFVKKYVPANFNLSEFKTVEVDNETHTLLIMNSSGSTGLPKGVLVRHCGAVTRFSHCRDPIFGNQVSPGTAILTVVPFHHGFGMFTTLGYFACGYRIVMLTKFDDEVLLKTLQDYKCTGVILVPTLFAILNRSELLEKFDLSNLTEIASGGAPLAKEVGEAVARRFNLPGVRQGYGLTETTSAFIITPEGDDKPGASGKVVPLMKVKVIDLDTKKTLGPNRRGEICVKGPMLMTGYEKNPTETKEIIDEDGWLHSGDIGYWDEDHHFFIVDRLKSLIKYKGYQVPPAELESVLLQHPNIFDAGVAGIPDPEAGELPGAVVVLEKGKHLTEQEVLDYVAGQVYNAKRLRGGVRFVDEVPKGLTGKIDAKAIREILKKPQAKM(配列番号42)
実施形態に係るルシフェラーゼの別の具体例は、変異体3の更なる変異体であって、変異体3の発光に関する性質が維持された変異体である。具体的には、配列番号42のアミノ酸配列との間で80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、N末端側から111番目、283番目および256番目のアミノ酸残基が、それぞれヒスチジン残基、グリシン残基およびアラニン残基であるアミノ酸配列を有し、570nmから610nmの最大発光波長を有する発光を生じる発光反応を触媒し、前記発光は、配列番号48のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼに触媒される発光反応の発光と比較して、10倍以上の強度を有するルシフェラーゼである。
変異体3のアミノ酸配列と、変異体3の更なる変異体のアミノ酸配列との間の相同性は、好ましくは85%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上である。この相同性が高いほど、変異体3の性質が、更なる変異体においても維持される可能性が高まり、実用上十分な効果が期待される。
実施形態に係るルシフェラーゼから、S283G変異体(変異体1)は除外されてもよい。
実施形態に係るルシフェラーゼは、一般的なルシフェラーゼと同様に、生体内における発光の観察や定量に使用することができる。さらに、実施形態に係るルシフェラーゼは、オレンジ色以外の発光を誘起するルシフェラーゼとともに、マルチカラーアッセイに使用することができる。特に、赤色ルシフェラーゼおよび緑色ルシフェラーゼとともに、3色のマルチカラーアッセイに使用することができる。
本発明の第2の実施形態は、実施形態に係るルシフェラーゼをコードする塩基配列を有する核酸である。
実施形態に係る核酸は、特定の生物種に対してコドンが最適化された配列を有していてよい。ここにいう「最適化」とは、核酸に含まれる遺伝子のコドンを、特定の生物種においてコドン出現頻度が高いコドンに代えることを意味する。最適化を行った場合、特定の生物種における遺伝子の発現は、最適化をしない場合に比べて高まる。コドンは、例えば哺乳細胞に最適化され、具体的にはマウス、ヒト等に最適化できる。
実施形態に係る核酸は、ルシフェラーゼの塩基配列以外にも、プロモーターといった転写因子結合領域をさらに含んでよい。
実施形態に係る核酸は、ベクターの形態であってよい。このベクターは、実施形態に係るルシフェラーゼをコードする遺伝子およびプロモーター等の転写因子結合領域に加えて、抗生物質耐性遺伝子および複製起点といった一般的なベクターに含まれる要素を含んでよい。
実施形態に係る核酸の具体例の1つは、配列番号41の塩基配列を有する核酸である。この塩基配列は、変異体2をコードする。
変異体2をコードする塩基配列は以下の通りである。
ATGGAAAAAGAGGAAAACGTCATCTACGGCcCCGAGCCCTTCTACCCTGTGGAAGAAGGCAGCGCCGGCACCCAGCTGCACCGGTTCATGGAAAGATACGCCAAGATGGGCGCCATCTGCTTCAGCAATGCCCTGACCGGCCAGGACGTGACCTACGCCGAGTACTTCGACAGAAGCGTGCGGCTGGCCGAGGCCCTGAGAAGGCATGGACTGACCCCCGAGAAGAAGATCGGCATCTGCAGCGAGAACTGCCTGGAATTTTTCATCCCCGTGCTGAGCGGCGCCTATATCGCCTCTCCTGTGGCCCCCACCAACGAGATCTACACCATCCGCGAGCTGGTGCACAGCTTCGGCATCAGCGAGCCCATGATCGTGTTCAGCAGCAAGAAAGGCCTGGACAAGGTGCTGGAAGTGCAGAAAACCGTGCACAGCATCAAGACCATCGTGATCATCGACAGCAGCACCACCTACCGGGGCTACGACAGCATGGACGCCTTCGTGAAGAAATACGTGCCCGCCAACTTCAACCTGAGCGAGTTCAAGACCGTGGAAGTGGACAACGAGACACACACCCTGCTGATCATGAACAGCTCCGGCAGCACCGGCCTGCCTAAAGGCGTGCTCGTCAGACATTGTGGCGCCGTGACCCGGTTCAGCCACTGCAGAGATCCCATCTTCGGAAACCAGGTGTCCCCCGGCACCGCCATTCTGACCGTGGTGCCTTTCCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACCCTGGGCTACTTCGCGTGCGGCTACCGGATCGTGATGCTGACCAAGTTCGACGACGAGGTGCTGCTGAAAACCCTGCAGGACTACAAGTGCACCGGCGTGATCCTGGTGCCCACCCTGTTCGCCATCCTGAACAGAAGCGAGCTGCTGGAAAAGTTCGACCTGAGCAATCTGACCGAGATTGCCTCTGGCGGAGCCCCTCTGGCCAAAGAAGTGGGAGAAGCCGTCGCCAGACGGTTCAATCTGCCCGGCGTGCGGCAGGGCTACGGACTGACTGAGACAACCAGCGCCTTCATCATCACACCCGAGGGCGACGATAAGCCTGGCGCCTCTGGAAAGGTGGTGCCCCTGATGAAGGTCAAAGTGATCGACCTGGACACCAAGAAAACCCTGGGCCCCAACAGACGGGGCGAGATCTGTGTGAAGGGCCCCATGCTGATGACCGGCTACGAGAAGAACCCCACCGAGACAAAAGAGATCATCGACGAGGACGGCTGGCTGCACTCTGGCGACATCGGCTACTGGGACGAGGACCACCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGTCCCTGATCAAGTACAAGGGCTACCAGGTGCCCCCTGCCGAGCTGGAATCTGTGCTGCTGCAGCATCCCAACATCTTCGATGCCGGCGTGGCCGGCATCCCTGATCCTGAAGCTGGCGAACTGCCAGGCGCTGTGGTGGTGCTGGAAAAAGGCAAGCACCTGACAGAGCAGGAAGTGCTGGACTACGTCGCCGGCCAGGTGTACAACGCCAAGAGACTGAGAGGCGGCGTGCGCTTCGTGGATGAAGTGCCTAAGGGCCTGACCGGCAAGATCGACGCCAAGGCCATCAGAGAGATCCTGAAGAAACCCCAGGCCAAGATGTGA(配列番号41)
実施形態に係る核酸の別の具体例は、配列番号43の塩基配列を有する核酸である。この塩基配列は、変異体3をコードする。
変異体3をコードする塩基配列は以下の通りである。
ATGGAAAAAGAGGAAAACGTCATCTACGGCCCCGAGCCCTTCTACCCTGTGGAAGAAGGCAGCGCCGGCACCCAGCTGCACCGGTTCATGGAAAGATACGCCAAGATGGGCGCCATCTGCTTCAGCAATGCCCTGACCGGCCAGGACGTGACCTACGCCGAGTACTTCGACAGAAGCGTGCGGCTGGCCGAGGCCCTGAGAAGGCATGGACTGACCCCCGAGAAGAAGATCGGCATCTGCAGCGAGAACTGCCTGGAATTTTTCATCCCCGTGCTGAGCGGCGCCTATATCGCCTCTCCTGTGGCCCCCACCAACGAGATCTACACCATCCACGAGCTGGTGCACAGCTTCGGCATCAGCGAGCCCATGATCGTGTTCAGCAGCAAGAAAGGCCTGGACAAGGTGCTGGAAGTGCAGAAAACCGTGCACAGCATCAAGACCATCGTGATCATCGACAGCAGCACCACCTACCGGGGCTACGACAGCATGGACGCCTTCGTGAAGAAATACGTGCCCGCCAACTTCAACCTGAGCGAGTTCAAGACCGTGGAAGTGGACAACGAGACACACACCCTGCTGATCATGAACAGCTCCGGCAGCACCGGCCTGCCTAAAGGCGTGCTCGTCAGACATTGTGGCGCCGTGACCCGGTTCAGCCACTGCAGAGATCCCATCTTCGGAAACCAGGTGTCCCCCGGCACCGCCATTCTGACCGTGGTGCCTTTCCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACCCTGGGCTACTTCGCGTGCGGCTACCGGATCGTGATGCTGACCAAGTTCGACGACGAGGTGCTGCTGAAAACCCTGCAGGACTACAAGTGCACCGGCGTGATCCTGGTGCCCACCCTGTTCGCCATCCTGAACAGAAGCGAGCTGCTGGAAAAGTTCGACCTGAGCAATCTGACCGAGATTGCCTCTGGCGGAGCCCCTCTGGCCAAAGAAGTGGGAGAAGCCGTCGCCAGACGGTTCAATCTGCCCGGCGTGCGGCAGGGCTACGGACTGACTGAGACAACCAGCGCCTTCATCATCACACCCGAGGGCGACGATAAGCCTGGCGCCTCTGGAAAGGTGGTGCCCCTGATGAAGGTCAAAGTGATCGACCTGGACACCAAGAAAACCCTGGGCCCCAACAGACGGGGCGAGATCTGTGTGAAGGGCCCCATGCTGATGACCGGCTACGAGAAGAACCCCACCGAGACAAAAGAGATCATCGACGAGGACGGCTGGCTGCACTCTGGCGACATCGGCTACTGGGACGAGGACCACCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGTCCCTGATCAAGTACAAGGGCTACCAGGTGCCCCCTGCCGAGCTGGAATCTGTGCTGCTGCAGCATCCCAACATCTTCGATGCCGGCGTGGCCGGCATCCCTGATCCTGAAGCTGGCGAACTGCCAGGCGCTGTGGTGGTGCTGGAAAAAGGCAAGCACCTGACAGAGCAGGAAGTGCTGGACTACGTCGCCGGCCAGGTGTACAACGCCAAGAGACTGAGAGGCGGCGTGCGCTTCGTGGATGAAGTGCCTAAGGGCCTGACCGGCAAGATCGACGCCAAGGCCATCAGAGAGATCCTGAAGAAACCCCAGGCCAAGATGTGA(配列番号43)
本発明の第3の実施形態は、実施形態に係るルシフェラーゼを製造する方法である。
実施形態に係る方法は、変異体1の遺伝子に変異を導入する工程を含む。例えば、変異体1をコードする塩基配列(配列番号39)に対して変異が導入される。
なお、変異体1をコードする塩基配列は以下の通りである。
ATGGAAAAAGAGGAAAACGTCATCTACGGCCCCGAGCCCTTCTACCCTGTGGAAGAAGGCAGCGCCGGCACCCAGCTGCACCGGTTCATGGAAAGATACGCCAAGATGGGCGCCATCTGCTTCAGCAATGCCCTGACCGGCCAGGACGTGACCTACGCCGAGTACTTCGACAGAAGCGTGCGGCTGGCCGAGGCCCTGAGAAGGCATGGACTGACCCCCGAGAAGAAGATCGGCATCTGCAGCGAGAACTGCCTGGAATTTTTCATCCCCGTGCTGAGCGGCGCCTATATCGCCTCTCCTGTGGCCCCCACCAACGAGATCTACACCATCCGCGAGCTGGTGCACAGCTTCGGCATCAGCGAGCCCATGATCGTGTTCAGCAGCAAGAAAGGCCTGGACAAGGTGCTGGAAGTGCAGAAAACCGTGCACAGCATCAAGACCATCGTGATCATCGACAGCAGCACCACCTACCGGGGCTACGACAGCATGGACGCCTTCGTGAAGAAATACGTGCCCGCCAACTTCAACCTGAGCGAGTTCAAGACCGTGGAAGTGGACAACGAGACACACACCCTGCTGATCATGAACAGCTCCGGCAGCACCGGCCTGCCTAAAGGCGTGCTCGTCAGACATTGTGGCGCCGTGACCCGGTTCAGCCACTGCAGAGATCCCATCTTCGGAAACCAGGTGTCCCCCGGCACCGCCATTCTGACCGTGGTGCCTTTCCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACCCTGGGCTACTTCGTGTGCGGCTACCGGATCGTGATGCTGACCAAGTTCGACGACGAGGTGCTGCTGAAAACCCTGCAGGACTACAAGTGCACCGGCGTGATCCTGGTGCCCACCCTGTTCGCCATCCTGAACAGAAGCGAGCTGCTGGAAAAGTTCGACCTGAGCAACCTGACCGAGATCGCCTCTGGCGGAGCCCCTCTGGCCAAAGAAGTGGGAGAAGCCGTCGCCAGACGGTTCAATCTGCCCGGCGTGCGGCAGGGCTACGGACTGACAGAGACAACCAGCGCCTTCATCATCACCCCCGAGGGCGACGATAAGCCTGGCGCCTCTGGAAAGGTGGTGCCCCTGATGAAGGTCAAAGTGATCGACCTGGACACCAAGAAAACCCTGGGCCCCAACAGACGGGGCGAGATCTGTGTGAAGGGCCCCATGCTGATGACCGGCTACGAGAAGAACCCCACCGAGACAAAAGAGATCATCGACGAGGACGGCTGGCTGCACTCTGGCGACATCGGCTACTGGGACGAGGACCACCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGTCCCTGATCAAGTACAAGGGCTACCAGGTGCCCCCTGCCGAGCTGGAATCTGTGCTGCTGCAGCATCCCAACATCTTCGATGCCGGCGTGGCCGGCATCCCTGATCCTGAAGCTGGCGAACTGCCAGGCGCTGTGGTGGTGCTGGAAAAAGGCAAGCACCTGACAGAGCAGGAAGTGCTGGACTACGTCGCCGGCCAGGTGTACAACGCCAAGAGACTGAGAGGCGGCGTGCGCTTCGTGGATGAAGTGCCTAAGGGCCTGACCGGCAAGATCGACGCCAAGGCCATCAGAGAGATCCTGAAGAAACCCCAGGCCAAGATGTGA(配列番号39)
変異は、一般的な方法によって導入してよい。例えば、ニトロソグアニジンや紫外線といった突然変異原を利用してランダムに変異を導入してもよい。また、一定の頻度で突然変異を誘発するDNAポリメラーゼを用いて、PCR法によってランダムに変異を導入してもよい。あるいは、組み換え技術等により特定の位置に意図した変異を導入してもよい。
実施形態に係る方法は、変異を導入する工程に続いて、候補となる変異体の中から目的とする変異体を選択する工程を含む。
このような選択は、一般的なスクリーニング技術によって行ってよい。具体的には、例えば、変異導入後の核酸を発現ベクターに挿入し、さらにそのベクターを大腸菌に組み込み、その大腸菌内にて変異体の遺伝子を発現させる。その後、発光反応に必要なルシフェリン等の物質を供給して、発光反応を生じさせる。そして、発光の様子から、実施形態に係るルシフェリンを発現する大腸菌を選択できる。すなわち、高輝度でオレンジ色に光る大腸菌を選択できる。その後、任意に、選択した大腸菌から、ルシフェラーゼ遺伝子を含む核酸を抽出したり、さらにその塩基配列を確認したりしてもよい。
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
すなわち、本発明の実施形態によれば、高輝度のオレンジ色の発光を実現することができる。
従来、発光強度が低い化学発光試料を顕微鏡により撮像する場合、鮮明な画像を撮影するために必要な露出時間は長くなる。このような化学発光試料は、使用できる研究用途が制限される。例えば、発光強度の低さのために30分間の露出時間が必要となる場合、30分間の経時的撮影は可能であっても、より短い時間での撮影、さらにはリアルタイムでの撮影は不可能である。また、画像の取得に当って、発光する細胞に焦点を合わせるために複数枚の画像を取得し比較する必要があるが、発光強度の低さのために長い露出時間を必要とする場合、1枚の画像を取得するだけでも手間と時間を要することになる。
これに対し、実施形態に係るルシフェラーゼは、既知のルシフェラーゼと比較して、高輝度のオレンジ色の発光を誘起できるため、タンパク質のイメージングのためのレポーターとして利用する場合に特に有利な効果を奏する。すなわち、実施形態に係るルシフェラーゼは、少量でも高い発光強度を提供できるため、発現量が低いタンパク質の良好な検出を可能とする。また、得られる発光強度が高いことにより、検出に必要な露出時間を短縮できる。このため、このルシフェラーゼを経時的観察のためのレポーターとして利用すれば、撮影に必要な露出時間を短くすることが可能となり、よりリアルタイムに近い観察が可能となる。すなわち、時間分解能が高い経時的観察が可能となる。
また、従来のオレンジ色の発光を生じるルシフェラーゼでは、十分な発光強度の発光は得られない。そもそも、オレンジ色の発光を生じるルシフェラーゼの数は少ない。そのため、赤色、オレンジ色および緑色による、従来のマルチカラーアッセイの有用性は低い。
一方、実施形態に係るルシフェラーゼによれば、高輝度なオレンジ色の発光を生じさせるため、赤色、オレンジ色および緑色のマルチカラーアッセイに利用することで、その他のルシフェラーゼのシグナルとの分離性が高まり、定量性の高い測定が可能となる。
[実施例1:クロイワボタル由来のルシフェラーゼ遺伝子のクローニング]
1.材料
材料として沖縄県久米島産クロイワボタル(Luciora kuroiwae)の成虫4個体を用いた。
2.トータルRNAの抽出とcDNAの合成
ホタルの成虫からハサミを用いて発光器を切り取った。組織および細胞のホモジナイズ用のビーズを含むチューブであるLysing Matrix Dチューブ(MP−Biomedicals社)に、採取した発光器および1mLのトータルRNA抽出試薬TRIzol Reagent(インビトロジェン社)を入れた。このチューブを組織細胞破砕装置FastPrep 24(MP−Biomedicals社)またはFastPrep FP100A(MP−Biomedicals社)に装着し、振動速度6.5m/sおよび振動時間45秒の条件で、ホタルの発光器を試薬中にて破砕した。完了後、チューブを破砕装置から取り出し、30分間氷上に置いた。その後、もう一度同じ条件で破砕した。
次に、トータルRNA抽出試薬TRIzol Reagentの説明書に従って、破砕した溶液からトータルRNAの分離精製を行った。得られたRNA溶液100μlを、エタノール沈殿法によって沈殿濃縮した。次に、完全長cDNA合成試薬GeneRacer(インビトロジェン社)をマニュアルに従って使用して、沈殿濃縮したトータルRNAから完全長cDNAを合成した。得られたcDNA溶液20μlをホタル完全長cDNAライブラリーとして以下の遺伝子実験に用いた。
3.ホタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端側の同定
3−1.Rapid Amplification of cDNA End(RACE)法に用いるプライマーの作製
クロイワボタルのルシフェラーゼ遺伝子のクローニングをPolymerase chain reaction(PCR)法によって行った。このPCRに使用するプライマーは、既知の近縁生物由来のルシフェラーゼ遺伝子のアミノ酸配列に基づいて、以下の通り作製した。
ホタルルシフェラーゼにおいてよく保存されているアミノ酸領域を確認するために、既に公開されている10種類のホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列を、配列情報解析ソフトウェアDNASIS Pro(日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社)を用いて比較した。比較に用いた近縁生物は、ラムフィリス・ノクティルカ(Lampyris noctiluca)(登録番号CAA61668)、ルキオラ・クルシアタ(Luciola cruciata)(登録番号P13129)、ルキオラ・ラテラリス(Luciola lateralis)(登録番号Q01158)、ルキオラ・ミングレリカ(Luciola mingrelica)(登録番号Q26304)、ホタリア・パルヴラ(Hotaria parvula)(登録番号AAC37253)、フォティヌス・ピラリス(Photinus pyralis)(登録番号BAF48390)、フォトゥリス・ペンシルヴァニカ(Photuris pennsylvanica)(登録番号Q27757)、ピロコエリア・ミヤコ(Pyrocoelia miyako)(登録番号AAC37254)、ピロコエリア・ルファ(Pyrocoelia rufa)(登録番号AAG45439)およびラハゴフタルムス・オーバイ(Rhagophthalmus ohbai)(登録番号BAF34360)である。
その結果、ホタルルシフェラーゼのC末端側440残基付近に位置するL−I−K−Y−K−G−Y−Q−V(配列番号7)のアミノ酸配列がよく保存されていることがわかった。この9つのアミノ酸配列をコードするコドンから塩基配列を予測し、5’末端RACE PCRに用いる12種類のホタルルシフェラーゼ特異的混合プライマーを設計した。このプライマーの名称および配列は以下の通りである(プライマー配列中のY、RおよびNは混合塩基を示す。すなわち、Yは、CまたはTを示し、Rは、AまたはGを示し、Nは、A、G、CまたはTを示す):
flexLuc5−ATA(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAT TTA AT−3’:配列番号8)、
flexLuc5−ATG(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAT TTG AT−3’:配列番号9)、
flexLuc5−ATT(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAT TTT AT−3’:配列番号10)、
flexLuc5−ACA(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAC TTA AT−3’:配列番号11)、
flexLuc5−ACG(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAC TTG AT−3’:配列番号12)、
flexLuc5−ACT(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAC TTT AT−3’:配列番号13)、
flexLuc5−GTA(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAT TTA AT−3’:配列番号14)、
flexLuc5−GTG(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAT TTG AT−3’:配列番号15)、
flexLuc5−GTT(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAT TTT AT−3’:配列番号16)、
flexLuc5−GCA(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAC TTA AT−3’:配列番号17)、
flexLuc5−GCG(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAC TTG AT−3’:配列番号18)、
flexLuc5−GCT(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAC TTT AT−3’:配列番号19)。これらのプライマーの合成はライフテクノロジーズジャパン株式会社に委託して行った。
3−2.5’−RACE PCRによる、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端側のクローニング
上述の通り作製したホタル完全長cDNAライブラリーを鋳型として用い、上述の通り作製した12種類の特異的混合プライマーおよび5’末端特異的プライマーであるGeneRacer5’Primer(5’−CGA CTG GAG CAC GAG GAC ACT GA−3’:配列番号20)およびGeneRacer5’Nested Primer(5’−GGA CAC TGA CAT GGA CTG AAG GAG TA−3’:配列番号21)を用いて5’−RACE PCRを行った。GeneRacer5’ PrimerおよびGeneRacer5’ Nested Primerは、完全長cDNA合成試薬GeneRacerキット(インビトロジェン社)に含まれているものを使用した。5’−RACE PCRによって効率的にルシフェラーゼ遺伝子を増幅させるため、一度PCRによって増幅した遺伝子を鋳型にし、内側のプライマー対でさらに特異的に遺伝子増幅させるnested PCRを行った。PCRにはポリメラーゼEx−Taq(タカラバイオ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。
一度目のPCRとして、上述の通り作製した12種類の特異的混合プライマーのいずれかとGeneRacer5’ Primerとから成る12通りのプライマー対を用いてルシフェラーゼ遺伝子を増幅した。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)、最終濃度が1.0μMの12種類プライマーの内1つおよび最終濃度が0.3μMのGeneRacer3’ Primerを含む10μlのPCR反応溶液を作製し、そこへホタル完全長cDNAライブラリー溶液を0.2μl加えた。なお、ホタル完全長cDNAライブラリー溶液の濃度は未定量であった。PCR反応は、最初に94℃2分間の熱変性を行った後、94℃30秒、45℃30秒および72℃90秒を30サイクル繰り返し、最後に72℃5分間の伸長反応を行った。PCR反応後、1μlのPCR反応溶液を、1%トリス酢酸緩衝液(TAE)アガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。12の反応溶液の全てにおいてわずかに遺伝子増幅が認められたため、これらのPCR反応溶液を鋳型としてそれぞれnested PCR反応を次の通り実施した。
nested PCRとして、一度目のPCRで使用した12種類プライマーのうちの4つとGeneRacer3’ Nested Primerとから成る4通りのプライマー対を用いてルシフェラーゼ遺伝子の増幅を行った。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)、最終濃度が1.0μMの12種類プライマーの内1つおよび最終濃度が0.3μMのGeneRacer3’ Primerを含む10μlのPCR反応溶液を作製し、そこへ鋳型として1度目のPCR反応溶液を滅菌水で10倍希釈した溶液を1.0μl加えた。PCR反応は、最初に94℃2分間の熱変性を行った後、94℃30秒、45℃30秒および72℃90秒を30サイクル繰り返し、最後に72℃5分間の伸長反応を行った。PCR反応後、1μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。約1.4kbp付近に効率よく遺伝子が増幅したプライマーの組み合わせ条件を確認した。
3−3.5’−RACEで増幅した遺伝子の塩基配列の決定
5’−RACEで増幅した遺伝子の塩基配列を読み取るため、ゲル抽出によるPCR産物の精製、サブクローニングおよびダイレクトシークエンスを実施した。詳細を以下に示す。
約1.4kbp付近に効率よく遺伝子が増幅したプライマーの組み合わせでPCR(最終容量20μl)を実施し、ゲル抽出の手法を用いて目的とする遺伝子片を回収した。ゲル抽出はWizard SV Gel and PCR Clean−Up System(プロメガ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。TAクローニングの手法を用いて、ゲルから抽出したPCR産物のサブクローニングを実施した。TAクローニングはpGEM−T Easy Vector System(プロメガ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。その後、このベクターDNAを大腸菌(TOP10株またはDH5α株)に形質転換し、青・白スクリーニングの手法を用いてインサートポジティブコロニーを選択した。選択されたコロニーをダイレクトコロニーPCRに供し、遺伝子が導入されていることを確認した。ダイレクトコロニーPCRには、M13−F(−29) Primer(5’−CAC GAC GTT GTA AAA CGA C−3’:配列番号22)とM13 Reverse(5’−GGA TAA CAA TTT CAC AGG−3’:配列番号23)とから成るプライマー対を用いた。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)、最終濃度がそれぞれ0.2μMのプライマー対を含む10μlのPCR反応溶液を作製し、そこへ鋳型として少量の大腸菌コロニーを加えた。PCR反応は、最初に94℃1分間の熱変性を行った後、94℃30秒、50℃30秒および72℃2分を25サイクル繰り返し、最後に72℃2分間の伸長反応を行った。PCR反応後、2μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。
増幅が確認できたPCR反応溶液について、ダイレクトシークエンシング法を用いてその遺伝子の塩基配列の決定を行った。PCR産物精製キットExoSAP−IT(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いて、PCR反応溶液に含まれる余剰なdNTPおよびプライマーを除去し、PCRダイレクトシークエンシングのための鋳型を調製した。BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ)を用いて、この鋳型を含むシークエンシング反応溶液を調製し、サーマルサイクラーを用いてシークエンシング反応を行った。PCR産物の精製およびシークエンシングはそれぞれマニュアルに従って実施した。シークエンシング反応後、反応産物の精製を次の通りに行った。反応溶液に2.5倍量の100%エタノールを加え、遠心機を用いて核酸を沈殿させた。次に、上清を取り除いた後、70%エタノールを加えて沈殿を洗浄し、遠心機を用いて核酸を沈殿させた。最後に、上清を取り除いた後、沈殿を乾燥させた。精製した沈殿にHi−Di Formamide(アプライドバイオシステムズ)を15μl加え、溶解させた。この溶液を94℃で2分間熱変性させ、更に氷上で急冷して、塩基配列を決定するためのサンプルとした。このサンプルをApplied Biosystems 3130xl ジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステムズ)を用いて塩基配列を読み取った。塩基配列の解析方法はマニュアルに従って実施した。得られた塩基配列を、クロイワボタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端側非翻訳領域の塩基配列とする。この配列は次の通りである。
GTTCGGTATACTCGCGAGTTCGGGCAAAAAATAACAAGTAGCGCAAGATGGAAAAAGAAGAAAATGTGATATACGGTCCCGAGCCGTTTTACCCCGTCGAAGAGGGATCTGCAGGAACGCAACTGCACAGATTTATGGAGCGATACGCCAAAATGGGGGCTATATGTTTTTCTAACGCCCTCACGGGCCAAGATGTAACGTATGCCGAATATTTTGACCGACCGGTTCGTTTAGCGGAAGCTTTGAGAAGGCACGGCTTAACGCCAGAGAAAAAAATCGGTATTTGCAGCGAAAATTGCTTAGAATTTTTCATTCCGGTGCTTTCGGGAGCGTATATCGCTTCACCCGTCGCTCCAACTAACGAAATTTACACTATACGCGAATTGGTTCACAGTTTTGGAATATCCGAGCCAATGATCGTGTTTAGCTCAAAGAAAGGATTGGATAAAGTCTTGGAAGTACAAAAAACAGTGCACTCTATTAAAACAATAGTCATTATTGATAGCTCAACTACTTATCGAGGATATGACAGCATGGATGCGTTTGTTAAAAAAATACGTACCCGCAAATTTCAATTTATCCGAATTCAAAACTGTAGAAGTCGATAATGAAACTCACACTCTTCTTATAATGAACTCGTCCGGTTCCACCGG(配列番号24)
シークエンシングによって得られた遺伝子配列を、配列情報解析ソフトウェア DNASIS Proの「シークエンス連結」機能を用いて解析した。この配列をNational Center for Biotechnology Information(NCBI)が提供するblastxサーチを利用して相同性検索を実施し、既知ホタルルシフェラーゼの塩基配列と高い相同性を示すことを確認した。以上の実験および解析で得られた塩基配列を新規ホタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端側であると決定した。
4.ホタルルシフェラーゼ遺伝子の3’Race PCRおよび完全長cDNAの取得
4−1.3’Race PCRに用いるプライマーの設計
5’Race PCRの実験で得られたホタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端側非翻訳領域の配列を基にして、3’RACEに用いるプライマー(配列番号27)およびNested PCRに用いるプライマー(配列番号28)を作製した。プライマーの合成はライフテクノロジーズジャパン株式会社に委託した。
4−2.ホタルルシフェラーゼ遺伝子の完全長cDNA取得のための3’Race PCR
上述の通り作成したホタル完全長cDNAライブラリーを鋳型として用い、目的とするホタルルシフェラーゼの5’末端側非翻訳領域の塩基配列から作製したプライマーNo2−Kuroiwa−F1(GTTCGGTATACTCGCGAGTTCG):配列番号25)、GeneRacer3’ Primer(5’−GCT GTC AAC GAT ACG CTA CGT AAC G−3’:配列番号27)およびGeneRacer3’ Nested Primer(5’−CGC TAC GTA ACG GCA TGA CAG TG−3’:配列番号28)を用いて3’−RACE PCRを行った。GeneRacer3’ PrimerおよびGeneRacer3’ Nested Primerは、完全長cDNA合成試薬GeneRacerキット(インビトロジェン社)に含まれているものを使用した。3’−RACE PCRによって効率的にルシフェラーゼ遺伝子を増幅させるため、一度PCRによって増幅した遺伝子を鋳型にし、内側のプライマー対でさらに特異的に遺伝子増幅させるnested PCRを行った。PCRにはポリメラーゼEx−Taq(タカラバイオ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。
一度目のPCRとして、5’末端側非翻訳領域の塩基配列から作製したプライマーとGeneRacer3’ Primerとから成るプライマー対を用いてルシフェラーゼ遺伝子の増幅を行った。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)および最終濃度がそれぞれ0.3μMのプライマーを含む20μlのPCR反応溶液を作製し、そこへホタル完全長cDNAライブラリー溶液を0.4μl加えた。なお、ホタル完全長cDNAライブラリー溶液の濃度は未定量であった。PCR反応は、最初に94℃2分間の熱変性を行った後、94℃30秒、50℃30秒および72℃2分を30サイクル繰り返し、最後に72℃5分間の伸長反応を行った。PCR反応後、1μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。わずかに遺伝子増幅が認められたため、このPCR反応溶液を鋳型としてそれぞれnested PCR反応を実施した。
Nested PCRとして、Nested PCR用のプライマーNo2−Kuroiwa−F2(GTTCGGTATACTCGCGAGTTCGGGCAA:配列番号26)とGeneRacer3’ Nested Primerとから成るプライマー対を用いてルシフェラーゼ遺伝子の増幅を行った。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)および最終濃度がそれぞれ0.3μMのプライマーを含む20μlのNested PCR反応溶液を作製し、そこへ鋳型として1度目のPCR反応溶液を滅菌水で10倍希釈した溶液を1.0μl加えた。PCR反応は、最初に94℃2分間の熱変性を行った後、94℃30秒、50℃30秒および72℃2分を30サイクル繰り返し、最後に72℃5分間の伸長反応を行った。PCR反応後、1μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。約2kbp付近に効率よく遺伝子が増幅していることを確認した。
4−3.3’−Raceで増幅した遺伝子の塩基配列の決定
3’−RACEで増幅した遺伝子の塩基配列を読み取るため、ゲル抽出によるPCR産物の精製、サブクローニングおよびダイレクトシークエンスを実施した。詳細を以下に示す。
約2kbp付近に効率よく遺伝子が増幅したプライマーの組み合わせでPCR(最終容量20μl)を実施し、ゲル抽出の手法を用いて目的とする遺伝子片を回収した。ゲル抽出はWizard SV Gel and PCR Clean−Up System(プロメガ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。TAクローニングの手法を用いて、ゲルから抽出したPCR産物のサブクローニングを実施した。TAクローニングはpGEM−T Easy Vector System(プロメガ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。その後、このベクターDNAを大腸菌(TOP10株またはDH5α株)に形質転換し、青・白スクリーニングの手法を用いてインサートポジティブコロニーを選択した。選択されたコロニーをダイレクトコロニーPCRに供し、遺伝子が導入されていることを確認した。ダイレクトコロニーPCRには、M13−F(−29) Primer(5’−CAC GAC GTT GTA AAA CGA C−3’:配列番号21)とM13 Reverse(5’−GGA TAA CAA TTT CAC AGG−3’:配列番号22)とから成るプライマー対を用いた。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)、最終濃度がそれぞれ0.2μMのプライマー対を含む10μlのPCR反応溶液を作製し、そこへ鋳型として少量の大腸菌コロニーを加えた。PCR反応は、最初に94℃1分間の熱変性を行った後、94℃30秒、50℃30秒および72℃2分を25サイクル繰り返し、最後に72℃2分間の伸長反応を行った。PCR反応後、2μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。
増幅が確認できたPCR反応溶液について、ダイレクトシークエンシング法を用いてその遺伝子の塩基配列の決定を行った。PCR産物精製キットExoSAP−IT(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いて、PCR反応溶液に含まれる余剰なdNTPおよびプライマーを除去し、PCRダイレクトシークエンシングのための鋳型を調製した。BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ)を用いて、この鋳型を含むシークエンシング反応溶液を調製し、サーマルサイクラーを用いてシークエンシング反応を行った。シークエンスに用いたプライマーはベクタープライマーまたは遺伝子特異的なプライマーを用いた。PCR産物の精製およびシークエンシングはそれぞれマニュアルに従って実施した。シークエンシング反応後、反応産物の精製を次の通りに行った。反応溶液に2.5倍量の100%エタノールを加え、遠心機を用いて核酸を沈殿させた。次に、上清を取り除いた後、70%エタノールを加えて沈殿を洗浄し、遠心機を用いて核酸を沈殿させた。最後に、上清を取り除いた後、沈殿を乾燥させた。精製した沈殿にHi−Di Formamide(アプライドバイオシステムズ)を15μl加え、溶解させた。この溶液を94℃2分間の熱変性させ、更に氷上で急冷して、塩基配列を決定するためのサンプルとした。このサンプルをApplied Biosystems 3130xlジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステムズ)を用いて塩基配列を読み取った。塩基配列の解析方法はマニュアルに従って実施した。得られた塩基配列を、野生型クロイワボタルルシフェラーゼ遺伝子の塩基配列とした。この配列は次の通りである。
ATGGAAAAAGAAGAAAATGTGATATACGGTCCCGAGCCGTTTTACCCCGTCGAAGAGGGATCTGCAGGAACGCAACTGCACAGATTTATGGAGCGATACGCCAAAATGGGGGCTATATGTTTTTCTAACGCCCTCACGGGCCAAGATGTAACGTATGCCGAATATTTTGACCGATCGGTTCGTTTAGCGGAAGCTTTGAGAAGGCACGGCTTAACGCCAGAGAAAAAAATCGGTATTTGCAGCGAAAATTGCTTAGAATTTTTCATTCCGGTGCTTTCGGGAGCGTATATCGCTTCACCCGTCGCTCCAACTAACGAAATTTACACTATACGCGAATTGGTTCACAGTTTTGGAATATCCGAGCCAATGATCGTGTTTAGCTCAAAGAAAGGATTGGATAAAGTCTTGGAAGTACAAAAAACAGTGCACTCTATTAAAACAATAGTCATTATTGATAGCTCAACTACTTATCGAGGATATGACAGCATGGATGCGTTTGTTAAAAAATACGTACCCGCAAATTTCAATTTATCCGAATTCAAAACTGTAGAAGTCGATAATGAAACTCACACTCTTCTTATAATGAACTCGTCCGGTTCCACCGGTCTACCGAAAGGTGTGCTAGTCCGTCATTGTGGGGCAGTTACAAGATTTTCTCATTGCAGGGATCCGATTTTTGGTAATCAAGTTTCACCAGGCACAGCAATTTTAACGGTCGTTCCGTTCCATCATGGCTTTGGTATGTTCACTACTTTAGGATACTTTGTTTGTGGATACCGAATCGTAATGTTAACAAAATTTGATGACGAAGTATTGTTGAAAACCCTACAAGATTATAAGTGTACTAGTGTTATCCTAGTACCAACTTTGTTCGCTATCCTTAATAGAAGTGAACTACTGGAGAAATTCGACTTGTCTAATCTGACTGAAATTGCATCTGGTGGTGCCCCATTAGCAAAAGAAGTTGGGGAAGCCGTTGCCAGAAGATTTAATCTTCCTGGTGTTCGCCAAGGTTACGGTTTAACTGAAACCACATCCGCTTTTATTATCACCCCAGAAGGGGATGACAAACCAGGGGCTTCTGGAAAAGTTGTGCCTTTAATGAAAGTTAAAGTGATTGATCTTGACACTAAGAAAACGCTTGGTCCTAACCGTCGTGGAGAAATTTGCGTTAAGGGTCCTATGTTGATGACAGGTTACGAGAAGAATCCTACAGAAACTAAAGAAATTATCGACGAAGATGGTTGGCTGCACAGTGGAGATATTGGGTATTGGGACGAAGATCATCACTTCTTTATTGTAGATCGTCTCAAATCCTTAATCAAATACAAAGGATATCAAGTACCACCTGCTGAATTGGAATCCGTACTTTTACAACATCCAAATATATTTGATGCCGGTGTTGCCGGAATTCCCGATCCCGAAGCCGGGGAGCTTCCGGGTGCTGTGGTTGTATTAGAGAAAGGAAAACATCTAACTGAACAAGAAGTATTGGATTACGTTGCCGGACAAGTTTACAACGCAAAACGTTTACGCGGTGGCGTTCGTTTTGTAGACGAGGTACCTAAAGGTCTCACTGGAAAAATTGACGCAAAGGCAATTAGAGAAATTCTTAAGAAGCCGCAAGCTAAGATGTGA(配列番号2)。
シークエンシングによって完全長ホタルルシフェラーゼ遺伝子を獲得した。この塩基配列(配列番号2)またはアミノ酸へ翻訳した配列(配列番号1)について、NCBIが提供するblastxまたはblastpサーチを利用して相同性検索を実施した。それぞれの検索で既知ホタルルシフェラーゼの塩基配列と高い相同性を示すことを確認した。以上の実験および解析で得られた塩基配列を新規ホタルルシフェラーゼ遺伝子の完全長cDNA配列であると決定した。
以下、この新規のルシフェラーゼ遺伝子にコードされるタンパク質を野生型クロイワボタルルシフェラーゼと称する。
[実施例2:S283G変異型クロイワボタルルシフェラーゼの作製]
下記のとおり、S283G変異型クロイワボタルルシフェラーゼを発現する変異型遺伝子を作製した。
実施例1において作製した野生型クロイワボタルルシフェラーゼ遺伝子の塩基配列(配列番号2)を、哺乳細胞における発現に最適化した。最適化後の塩基配列は次の通りである。
ATGGAAAAAGAGGAAAACGTCATCTACGGCCCCGAGCCCTTCTACCCTGTGGAAGAAGGCAGCGCCGGCACCCAGCTGCACCGGTTCATGGAAAGATACGCCAAGATGGGCGCCATCTGCTTCAGCAATGCCCTGACCGGCCAGGACGTGACCTACGCCGAGTACTTCGACAGAAGCGTGCGGCTGGCCGAGGCCCTGAGAAGGCATGGACTGACCCCCGAGAAGAAGATCGGCATCTGCAGCGAGAACTGCCTGGAATTTTTCATCCCCGTGCTGAGCGGCGCCTATATCGCCTCTCCTGTGGCCCCCACCAACGAGATCTACACCATCCGCGAGCTGGTGCACAGCTTCGGCATCAGCGAGCCCATGATCGTGTTCAGCAGCAAGAAAGGCCTGGACAAGGTGCTGGAAGTGCAGAAAACCGTGCACAGCATCAAGACCATCGTGATCATCGACAGCAGCACCACCTACCGGGGCTACGACAGCATGGACGCCTTCGTGAAGAAATACGTGCCCGCCAACTTCAACCTGAGCGAGTTCAAGACCGTGGAAGTGGACAACGAGACACACACCCTGCTGATCATGAACAGCTCCGGCAGCACCGGCCTGCCTAAAGGCGTGCTCGTCAGACATTGTGGCGCCGTGACCCGGTTCAGCCACTGCAGAGATCCCATCTTCGGAAACCAGGTGTCCCCCGGCACCGCCATTCTGACCGTGGTGCCTTTCCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACCCTGGGCTACTTCGTGTGCGGCTACCGGATCGTGATGCTGACCAAGTTCGACGACGAGGTGCTGCTGAAAACCCTGCAGGACTACAAGTGCACCAGCGTGATCCTGGTGCCCACCCTGTTCGCCATCCTGAACAGAAGCGAGCTGCTGGAAAAGTTCGACCTGAGCAACCTGACCGAGATCGCCTCTGGCGGAGCCCCTCTGGCCAAAGAAGTGGGAGAAGCCGTCGCCAGACGGTTCAATCTGCCCGGCGTGCGGCAGGGCTACGGACTGACAGAGACAACCAGCGCCTTCATCATCACCCCCGAGGGCGACGATAAGCCTGGCGCCTCTGGAAAGGTGGTGCCCCTGATGAAGGTCAAAGTGATCGACCTGGACACCAAGAAAACCCTGGGCCCCAACAGACGGGGCGAGATCTGTGTGAAGGGCCCCATGCTGATGACCGGCTACGAGAAGAACCCCACCGAGACAAAAGAGATCATCGACGAGGACGGCTGGCTGCACTCTGGCGACATCGGCTACTGGGACGAGGACCACCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGTCCCTGATCAAGTACAAGGGCTACCAGGTGCCCCCTGCCGAGCTGGAATCTGTGCTGCTGCAGCATCCCAACATCTTCGATGCCGGCGTGGCCGGCATCCCTGATCCTGAAGCTGGCGAACTGCCAGGCGCTGTGGTGGTGCTGGAAAAAGGCAAGCACCTGACAGAGCAGGAAGTGCTGGACTACGTCGCCGGCCAGGTGTACAACGCCAAGAGACTGAGAGGCGGCGTGCGCTTCGTGGATGAAGTGCCTAAGGGCCTGACCGGCAAGATCGACGCCAAGGCCATCAGAGAGATCCTGAAGAAACCCCAGGCCAAGATGTGA(配列番号4)
さらに、この最適化後のルシフェラーゼ遺伝子に対し、コードされるアミノ酸配列上N末端側から283番目のセリンがグリシンに置換されるような変異(S283G)を導入した。この変異の導入には、KroiwaOkisj(m)S283Gプライマー:(GAC TAC AAG TGC ACC GGC GTG ATC CTG GTG CCC:配列番号33)を使用した。
これにより、配列番号39に示される塩基配列を有する遺伝子を取得した。この遺伝子にコードされるルシフェラーゼを「変異体1」または「S283G変異体」と称する。変異体1のアミノ酸配列は配列番号38に示される。変異体1によると、野生型ルシフェラーゼよりも高輝度であって、発光色が長波長側にシフトした発光が得られた。
なお、上記変異の導入は文献の記載に基づいて行った(Asako Sawano and Atsushi Miyawaki, Nucleic Acids Research,2000, Vol.28, No.16)。
[実施例3:ランダム変異導入]
S283G変異型クロイワボタルルシフェラーゼに対し、ランダムに変異を導入し、さらなる変異を有したクロイワボタルルシフェラーゼを発現する変異型遺伝子を作製した。
変異体1(S283G)に対し、GeneMorph II EZClone Domain Mutagenesis Kit(アジレント社)を用いてルシフェラーゼの570bp付近から1132bp付近のドメインへのランダムな変異導入を行った。変異導入には、JP−Kuroiwa(mam)−570−Fプライマー:(cgtggaagtggacaacgagacacac:配列番号36)およびJP−Kuroiwa(mam)−1132−Rプライマー:(TGGTGTCCAGGTCGATCACTTTGAC:配列番号37)のプライマーセットを用いて、キット添付の説明書にしたがって実施した。
上記方法にて得られた変異導入済みのプラスミドを大腸菌JM109(DE3)株(プロメガ社)に形質転換してコロニーを形成させた。このコロニーに対して最終濃度2mMのD−Luciferinを噴霧後、CCDカメラDP−70(オリンパス)にて発光を撮像した。他のコロニーよりも明るく、オレンジ色発光を呈するコロニーを拾い上げ、変異導入後にシーケンサーを用いて配列を読み取り、ランダムな変異がルシフェラーゼ遺伝子に導入されていることを確認した。
そのように取得した変異が導入された遺伝子の1つを「変異体2」と称する。変異体2の塩基配列は配列番号41に示される。また、その塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号40に示す。配列番号40に示されるように、変異体2では、S283Gの変異に加えて、アミノ酸配列上のN末端側から256番目のバリン残基がアラニン残基に置換される変異(V256A)が生じていた。
さらに、変異体2に対して、再度ランダムな変異導入を行った。すなわち、変異体2の遺伝子に対し、GeneMorph II EZClone Domain Mutagenesis Kit(アジレント社)を用いて上記と同様のドメインへのランダムな変異導入を行った。
そして、上記と同様にコロニーを形成させ、発光を撮像した。変異体2よりも高い輝度で発光するコロニーを取得し、そのルシフェラーゼ遺伝子を解析した。この遺伝子の1つを、「変異体3」と称する。変異体3の塩基配列を配列番号43に示す。また、その塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号42に示す。配列番号42に示されるように、変異体3では、S283GおよびV256Aの変異に加えて、アミノ酸配列上のN末端側から111番目のアルギニン残基がヒスチジン残基に置換される変異(R111H)が生じていた。アミノ酸配列上のN末端側から111番目の残基における変異は、当初意図していなかった変異であり、PCRにおいて偶然に置換されたものと考えられる。
[実施例4:HeLa細胞内における発光観察、発光強度および発光スペクトルの測定]
1.発現ベクターの作製
以下の通り、実施例1から3において取得したクロイワボタルの野生型ルシフェラーゼおよび変異型ルシフェラーゼ(変異体1から3)のそれぞれについてHeLa細胞内での発光強度を測定し、これらを、イリオモテボタルRhagophthalmus ohbai由来の橙色ルシフェラーゼ(SLOルシフェラーゼ:東洋紡株式会社)と比較した。
各遺伝子に対してKozak配列を付与した。なお、これら4種の配列とも哺乳細胞における発現に対してコドン最適化されている。その後、これら配列をそれぞれ、pF9A CMV hRLuc neo Flexi vector(Promega)のマルチクローニングサイトのSgfIおよびPmeIのサイト間に挿入した。pF9Aベクターは内部コントロールとしてウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子(hRLuc)をベクター配列に含んでおり、マルチクローニングサイトに挿入された発光遺伝子による発光強度をウミシイタケルシフェラーゼによる発光強度との比として算出することが可能である。
同様の手順に従って、比較のためのルシフェラーゼであるSLOルシフェラーゼ遺伝子に対してKozak配列を付与した後、pF9Aベクターのマルチクローニングサイトに挿入した。
2.発光観察
そのように作製した5種の発現ベクターの各々を、48穴のプレートに播種したHeLa細胞にリポフェクション法で遺伝子導入した。遺伝子が発現した段階で、2mMのD−ルシフェリンを基質として添加し、DP70カラーCCD(オリンパス株式会社製)を用いて露光時間1分間(ISO1600)で撮影した。なお、細胞の培養温度は約37℃とした。
撮影により取得した画像を図1にまとめる。図1では、上から順に変異体1、変異体2、変異体3、野生型3およびSLOについての、4つの隣接したウェルにおける結果が示されている。なお、図1は、カラーで取得した観察結果をモノクロで表示したものである。
図1に示されるように、野生型クロイワボタルルシフェラーゼおよびSLOルシフェラーゼでは、上述の撮影条件では、顕著な発光像を得ることができなかった。一方、変異体1から3では、十分な発光像を得ることができた。そして、カラーの結果によると、変異体1における発光は赤みがかった光であるのに対して、変異体2および3による発光はオレンジ色の光であった。
3.発光強度の比較
次に、発光強度の比較を行った。これは、Dual−Glo(登録商標)Luciferase Assay System(米国プロメガ社製、製品番号E2940)を用いて実施した。5種の発現ベクターを、48穴のプレートに播種したHeLa細胞にそれぞれリポフェクション法で遺伝子導入し、22時間後PBSで細胞を洗浄した。48穴プレートの各ウェルに2mM D−ルシフェリン/CO2 Independent Medium(Invitrogen)を200μlずつ添加し、37℃、各ウェルあたり1秒間測定の条件でLuminescensor(ATTO)を用いて60分間発光強度を測定した。60分経過時点の発光強度を5種のルシフェラーゼの発光強度とした。その後、マニュアルに従ってセレンテラジンを添加し、内部コントロールであるウミシイタケルシフェラーゼによる発光強度を37℃、各ウェルあたり1秒間測定の条件でLuminescensorを用いて15分間発光強度を測定した。クロイワボタル野生型ルシフェラーゼ、変異体1から3、SLOルシフェラーゼによる発光強度をウミシイタケルシフェラーゼによる発光強度でそれぞれ除算した値を算出し、その値を各ルシフェラーゼの発光強度としてグラフ化した。
結果を図2に示す。図2に示されるように、HeLa細胞においてクロイワボタルルシフェラーゼを発現させた場合、SLOルシフェラーゼによる発光強度を基準とすると、野生型では1.2倍、変異体1では17.1倍、変異体2では20.6倍および変異体3では29.1倍となった。すなわち、従来のオレンジ色ルシフェラーゼと比較して、変異体2および3によれば、非常に高輝度のオレンジ色の発光を得られることがわかった。
4.発光スペクトルの測定
次に、発光スペクトルを測定した。
測定のための装置としてLumiFlSpectroCapture(ATTO)(スリット幅0.5mm、露光時間1分)を用い、2mM D−ルシフェリン/CO2 Independent Medium(Invitrogen)を含む溶液で、各種ルシフェラーゼをそれぞれ遺伝子発現するHeLa細胞を懸濁し、細胞内で発光させて発光スペクトルを37度の環境下で測定した。なお、このHeLa細胞はトリプシン処理して浮遊させた細胞である。
測定された発光スペクトルを図3に示す。また、各ルシフェラーゼの最大発光波長を以下の表1にまとめる。なお、「最大発光波長」とは、ルシフェラーゼが誘起するルシフェリンの発光を測定することによって得られるスペクトルにおいて、発光強度が最大となる波長を意味する。
Figure 2015019604
図3および表1より、野生型クロイワボタルルシフェラーゼは、約37度の培地中で浮遊するHeLa細胞内において、約585nmの最大発光波長を示した。また、同じ条件において、変異体1では約606nm、変異体2では約590nm、変異体3では約590nmおよびSLOルシフェラーゼ(東洋紡社)では約594nmの最大発光波長を示した。
変異体1では、やや長波長側に最大発光波長がシフトしているのに対し、変異体2および3では、SLOルシフェラーゼとほぼ同様の最大発光波長を示した。
また、図3から、変異体1から3によるスペクトルは、1つのピークから成るシャープなものであることがわかった。
以上より、クロイワボタルルシフェラーゼ変異体2および3はSLOルシフェラーゼと同様な最大発光波長を示しながら、SLOルシフェラーゼによる発光強度の20.6倍および29.1倍の発光強度を有するものであることがわかった。
このような、従来にないほど高輝度なオレンジ色ルシフェラーゼである変異体2および3を、レポーターとしてマルチカラーアッセイを実施することで、オレンジ色領域のシグナルを効果的に得ることが可能になると考えられる。

Claims (10)

  1. 配列番号38のアミノ酸配列に対して変異が導入されたアミノ酸配列を有するルシフェラーゼであって、
    前記ルシフェラーゼは、570nmから610nmの最大発光波長を有する発光を生じる発光反応を触媒し、前記発光は、配列番号48のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼに触媒される発光反応の発光と比較して、10倍以上の強度を有するルシフェラーゼ。
  2. 導入される前記変異は、配列番号38のアミノ酸配列におけるN末端側から256番目のバリン残基がアラニン残基に置換される変異を含む請求項1に記載のルシフェラーゼ。
  3. 導入される前記変異は、配列番号38のアミノ酸配列におけるN末端側から111番目のアルギニン残基がヒスチジン残基に置換される変異を含む請求項1または2に記載のルシフェラーゼ。
  4. 配列番号40のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼ。
  5. 配列番号40のアミノ酸配列との間で80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、N末端側から283番目および256番目のアミノ酸残基が、それぞれグリシン残基およびアラニン残基であるアミノ酸配列を有し、
    570nmから610nmの最大発光波長を有する発光を生じる発光反応を触媒し、前記発光は、配列番号48のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼに触媒される発光反応の発光と比較して、10倍以上の強度を有するルシフェラーゼ。
  6. 配列番号42のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼ。
  7. 配列番号42のアミノ酸配列との間で80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、N末端側から111番目、283番目および256番目のアミノ酸残基が、それぞれヒスチジン残基、グリシン残基およびアラニン残基であるアミノ酸配列を有し、
    570nmから610nmの最大発光波長を有する発光を生じる発光反応を触媒し、前記発光は、配列番号48のアミノ酸配列を有するルシフェラーゼに触媒される発光反応の発光と比較して、10倍以上の強度を有するルシフェラーゼ。
  8. 請求項1から7の何れか1項に記載のルシフェラーゼをコードする塩基配列を有する核酸。
  9. 配列番号41の塩基配列を有する請求項8に記載の核酸。
  10. 配列番号43の塩基配列を有する請求項8に記載の核酸。
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