JP2008289475A - 最大発光波長がシフトした変異型ルシフェラーゼ - Google Patents
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Abstract
【課題】ブラジル産ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼ(Pyrearinus termitilluminans luciferase)は、pHに非感受性で、哺乳類細胞内で高い安定性および長寿命特性を示すが、緑色(波長538nm前後)の光を発するものしか見出されておらず、これとは異なる発光色、特に、より長波長の発光色を持つルシフェラーゼを提供する。
【解決手段】野生型ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼとは異なるピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼを提供する。特に、野生型より長波長側のピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼを得ることが可能となる。変異型ルシフェラーゼ及びその遺伝子は種々のバイオ検出に使用される。
【効果】野生型ルシフェラーゼに変異を入れることにより、緑色とは異なる、特に、より長波長側のピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼを得ることが可能となる。
【選択図】図2
【解決手段】野生型ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼとは異なるピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼを提供する。特に、野生型より長波長側のピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼを得ることが可能となる。変異型ルシフェラーゼ及びその遺伝子は種々のバイオ検出に使用される。
【効果】野生型ルシフェラーゼに変異を入れることにより、緑色とは異なる、特に、より長波長側のピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼを得ることが可能となる。
【選択図】図2
Description
本発明は、変異型ルシフェラーゼ、変異型ルシフェラーゼ遺伝子、及びその遺伝子を用いた変異型ルシフェラーゼの製造法に関する。さらに、該遺伝子を用いた細胞内イメージング、転写活性測定方法に関する。
発光性甲虫由来のルシフェラーゼは、これまでにPhotinus、Photuris及びLuciola属のホタルや、Pyrophorus属及びPyrearinus属のヒカリコメツキムシ等からcDNAが単離されている。特にPhotinus pylalis由来のものは、長年に渡って仔細な研究がなされている。これらのホタルやヒカリコメツキムシを含む甲虫由来のルシフェラーゼは、多複素環式有機酸D-(-)-2-(6’-ヒドロキシ-2’-ベンゾチアゾリル)-Δ2-チアゾリン-4-カルボン酸(以後、ルシフェリンと表記する)を基質とし、Mgイオン存在下でATPとルシフェリンが反応してルシフェニルアデニレートを形成し、酸素と結合し、励起状態のオキシルシフェリンが生じる。このオキシルシフェリンが基底状態に戻るときに光を発する。
今日、ルシフェラーゼは、生命科学の分野ではレポーター遺伝子として転写活性測定や細胞イメージングに使用されている。また、基質としてATPを利用する性質を利用してATP検出試薬にも利用されている。
すなわち、ルシフェラーゼはレポーター遺伝子として、細胞に与える外来因子の影響の評価、細胞内情報伝達の伝播、或いは個々のタンパク群の発現解析等に用いられている。ルシフェラーゼ遺伝子に転写活性領域を挿入、細胞内に遺伝子構築体を導入、レポーター遺伝子を導入した培養細胞を一定時間、薬剤等で処理した後、細胞を集め、発光基質を加えることで、細胞内で合成されたルシフェラーゼ量を測定、転写活性を評価するシステムが挙げられる。ルシフェラーゼの発光量から転写活性を評価することから定量性に優れており、既に多くの会社から本システム関連製品が開発、市販化されている。
また、ルシフェラーゼはイメージング用途としても利用され始めている。例えば、細胞内カルシウム量を発光タンパク質イクオリンで、ATP量をルシフェラーゼで測定し、細胞内におけるエネルギー物質ATPの変動の可視化に成功している(非特許文献1)。また、ルシフェラーゼスプリットアッセイによりタンパク間分子間力の可視化に成功した例もある(非特許文献2)。
さらに、ルシフェラーゼは、基質としてATPを使用することからATPの検出に利用されている。あらゆる生物はそのエネルギー源としてATPを利用することから、生物の有無あるいはその数をATPの量をもって検出する方法である。ルシフェラーゼによる発光は、その量子効率が高く、微量なATPを感度良く測定できる特長があり、血液中のATP含有量の測定や食品検査等において微生物による汚染の有無を測定する際の有効な方法となっている。
ルシフェラーゼのうちイメージングその他に最も多く用いられている酵素がアメリカ産ホタル(Photinus pyralis)由来のルシフェラーゼである。しかしながら、ホタル由来ルシフェラーゼは、細胞内のpHに連動して発光色を変える欠点があり、発光色の多様性に目を向けたマルチ遺伝子発現のような用途には不向きであることが指摘されている(マルチ遺伝子転写活性測定システム:近江谷克裕、中島芳浩;特許文献1)。
一方、これに対し、ブラジル産ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼ(Pyrearinus termitilluminans luciferase)は、pHに非感受性で、哺乳類細胞内で高い安定性および長寿命特性を有し、特に哺乳類細胞内での発光イメージングが可能であることが報告されている(非特許文献3)。また、本ヒカリコメツキ由来ルシフェラーゼは、哺乳類細胞などの生細胞における転写活性測定に適し、転写活性の弱いプロモーターや遺伝子導入効率の低い細胞において従来のホタルルシフェラーゼを用いたアッセイに比べ感度よく安定した計測が可能であることが明らかとなっている。
しかしながら、ブラジル産ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼは、緑色(波長538nm前後)の光を発するものしか見出されておらず、これとは異なる発光色、特に、生体において光透過性の優れたより長波長の発光色を持つルシフェラーゼが望まれていた。そこで、ブラジル産ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼに変異を入れ、野生型ルシフェラーゼより長波長側のピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼを取得することを試みた。
WO2004/99421
Sala-Newby GB et al.: Imaging bioluminescent indicators shows Ca2+ and ATP permeability thresholds in live cells attacked by complement. Immunology. 1998 Apr;93(4):601-9.
Ozawa T et al.: Split luciferase as an optical probe for detecting protein-protein interactions in mammalian cells based on protein splicing. Anal Chem. 2001 Jun 1;73(11):2516-21.
Viviani V.R. et al.: Cloning and molecular characterization of the cDNA for the Brazilian larval click-beetle Pyrearinus termitilluminans luciferase. Photochem Photobiol. 1999 Aug;70(2):254-60.
本発明は、野生型ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼ遺伝子とは異なるピーク波長を有する変異型ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼを提供することを目的とする。特に、野生型ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼより長波長側のピーク波長を有する変異型ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼを提供することを目的とする。
そこで、本発明者等は、緑色以外の光を発する変異型ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼを取得すべく種々検討した結果、野生型ルシフェラーゼ遺伝子を変異処理して変異型ルシフェラーゼ遺伝子を取得し、該遺伝子をベクターDNAに挿入した遺伝子構築体を含む微生物あるいは動物細胞を培養すれば、野生型ルシフェラーゼの波長とは異なる発光波長を有する変異型ルシフェラーゼを効率よく得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、以下の変異型ルシフェラーゼ、変異型ルシフェラーゼをコードする遺伝子、それらの遺伝子を含む遺伝子構築体、遺伝子構築体を含む形質転換細胞、形質転換細胞を用いた変異型ルシフェラーゼの製造方法、及び、形質転換細胞を用いたイメージング方法、転写活性測定方法を提供するものである。
項1.ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼであって、そのピーク強度の発光波長が、野生型酵素のピーク強度の発光波長から少なくとも1nm異なるピーク強度の波長を有する変異型ルシフェラーゼ。
項2.ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼであって、そのピーク強度の発光波長が、野生型酵素のピーク強度の発光波長より長波長側にシフトした項1記載の変異型ルシフェラーゼ。
項3.ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼがPyrearinus属由来ルシフェラーゼである項1または2記載の変異型ルシフェラーゼ。
項4.Pyrearinus属由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列において、少なくとも、223位のバリン、246位のセリン、282位のイソロイシン、347位のヒスチジンから選択されるアミノ酸位置のうち1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列を有する項3記載の変異型ルシフェラーゼ。
項5.前記282位のイソロイシンが、アスパラギン、スレオニン、セリン、メチオニン、アラニン、グリシン、バリン、チロシン、システイン及びフェニルアラニンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
項6.223位のバリンが、アラニン、ロイシン、メチオニン、スレオニン、及びチロシンからなる群より選択さるいずれかのアミノ酸で置換されている項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
項7.246位のセリンが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、及びヒスチジンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
項8.347位のヒスチジンが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、及びグルタミンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
項9.Pyrearinus属由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列において、少なくとも、246位のセリンおよび347位のヒスチジンが他のアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列を有する項3記載の変異型ルシフェラーゼ。
項10.246位のセリンが、アラニン、アスパラギン、及びヒスチジンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されており、かつ、347位のヒスチジンが、アラニン、システイン、及びグルタミンからなる群から選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている項9記載の変異型ルシフェラーゼ。
項11.ヒカリコメツキ由来ルシフェラーゼが、配列番号:2の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する、項5〜8および10のいずれかに記載の変異型ルシフェラーゼ。
項12.配列番号5に示されるアミノ酸配列の347番目のヒスチジンがグルタミンに置換され、246番目のセリンがヒスチジン、アラニン、及びアスパラギンから成る群から選択される1種のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を有するヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼ。
項13.項1〜12のいずれかに記載される変異型ルシフェラーゼをコードする遺伝子。
項14.項13に記載の遺伝子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする遺伝子構築体。
項15.項14に記載の遺伝子構築体を用いて微生物を形質転換し、得られた微生物を培養し、培養物より変異型ルシフェラーゼを採取することを特徴とする変異型ルシフェラーゼの製造法。
項16.項14に記載の遺伝子構築体を用いて形質転換された形質転換細胞。
項17.前記細胞が哺乳類細胞である項16に記載の形質転換細胞。
項18.前記細胞がヒト細胞である項17に記載の形質転換細胞。
項19.細胞内のオルガネラのイメージングのための項16〜18のいずれかに記載の形質転換細胞の使用。
項20.前記遺伝子を制御するプロモーターの転写活性測定のための項16〜18のいずれかに記載の形質転換細胞の使用。
項1.ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼであって、そのピーク強度の発光波長が、野生型酵素のピーク強度の発光波長から少なくとも1nm異なるピーク強度の波長を有する変異型ルシフェラーゼ。
項2.ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼであって、そのピーク強度の発光波長が、野生型酵素のピーク強度の発光波長より長波長側にシフトした項1記載の変異型ルシフェラーゼ。
項3.ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼがPyrearinus属由来ルシフェラーゼである項1または2記載の変異型ルシフェラーゼ。
項4.Pyrearinus属由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列において、少なくとも、223位のバリン、246位のセリン、282位のイソロイシン、347位のヒスチジンから選択されるアミノ酸位置のうち1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列を有する項3記載の変異型ルシフェラーゼ。
項5.前記282位のイソロイシンが、アスパラギン、スレオニン、セリン、メチオニン、アラニン、グリシン、バリン、チロシン、システイン及びフェニルアラニンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
項6.223位のバリンが、アラニン、ロイシン、メチオニン、スレオニン、及びチロシンからなる群より選択さるいずれかのアミノ酸で置換されている項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
項7.246位のセリンが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、及びヒスチジンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
項8.347位のヒスチジンが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、及びグルタミンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
項9.Pyrearinus属由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列において、少なくとも、246位のセリンおよび347位のヒスチジンが他のアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列を有する項3記載の変異型ルシフェラーゼ。
項10.246位のセリンが、アラニン、アスパラギン、及びヒスチジンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されており、かつ、347位のヒスチジンが、アラニン、システイン、及びグルタミンからなる群から選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている項9記載の変異型ルシフェラーゼ。
項11.ヒカリコメツキ由来ルシフェラーゼが、配列番号:2の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する、項5〜8および10のいずれかに記載の変異型ルシフェラーゼ。
項12.配列番号5に示されるアミノ酸配列の347番目のヒスチジンがグルタミンに置換され、246番目のセリンがヒスチジン、アラニン、及びアスパラギンから成る群から選択される1種のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を有するヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼ。
項13.項1〜12のいずれかに記載される変異型ルシフェラーゼをコードする遺伝子。
項14.項13に記載の遺伝子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする遺伝子構築体。
項15.項14に記載の遺伝子構築体を用いて微生物を形質転換し、得られた微生物を培養し、培養物より変異型ルシフェラーゼを採取することを特徴とする変異型ルシフェラーゼの製造法。
項16.項14に記載の遺伝子構築体を用いて形質転換された形質転換細胞。
項17.前記細胞が哺乳類細胞である項16に記載の形質転換細胞。
項18.前記細胞がヒト細胞である項17に記載の形質転換細胞。
項19.細胞内のオルガネラのイメージングのための項16〜18のいずれかに記載の形質転換細胞の使用。
項20.前記遺伝子を制御するプロモーターの転写活性測定のための項16〜18のいずれかに記載の形質転換細胞の使用。
本発明によれば、野生型ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼとは異なるピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼを得ることが可能となった。特に、野生型ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼより長波長側のピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼを得ることが可能となった。これらの変異型ルシフェラーゼ、特により長波長側(赤色側)のピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼは、細胞あるいは組織透過性に優れるため、インビボ発光イメージングに好適となる。また、ATP検出において、赤色等の有色溶液中の物質、例えば、血液中のATP含有量を測定するといった場合において、測定感度を向上させることが可能となる。さらに、野生型と変異型、あるいは、ピーク発光波長の異なる2種類の変異型ルシフェラーゼを用いて、2色のレポーター遺伝子を用いることが可能となり、例えば、複数の遺伝子の転写活性を同時に測定することが可能となる。
本発明のルシフェラーゼは、ヒカリコメツキ由来のルシフェラーゼで、野生型とは異なるピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼである。ヒカリコメツキ由来のルシフェラーゼ遺伝子としては、配列番号1の遺伝子が例示されるが、本野生型の配列では、開始コドンからメチオニンが2残基連続するため、メチオニンを一つ削除した配列番号2の遺伝子であってもよい。すなわち、配列番号2で規定されるアミノ酸配列は、配列番号1で規定されるルシフェラーゼより1アミノ酸短くなっている。従って、配列番号1の遺伝子で規定される野生型ルシフェラーゼにおける283位のイソロイシンは、配列番号2の遺伝子で規定されるルシフェラーゼでは282位にあたる。
以下、Pyrearinus属由来ルシフェラーゼ由来の配列番号5のアミノ酸配列の変異の導入について説明するが、ヒカリコメツキムシ由来の他のルシフェラーゼにおいても、当業者であれば同様に変異の導入を行い、ピーク強度の発光波長を(特に長波長側に)シフトさせることができる。
配列番号5で示されるPyrearinus属由来ルシフェラーゼにおいて、少なくとも282位のイソロイシンを他のアミノ酸に置換することにより、ピーク強度の発光波長をシフトさせることができる。282位に導入される新たなアミノ酸は、イソロイシン以外の天然の19種のアミノ酸であればいずれでもよいが、好ましくはアスパラギン、グルタミン、スレオニン、セリン、メチオニン、アラニン、グリシン、バリン、チロシン、システイン、フェニルアラニンなどの側鎖に電荷を有さないアミノ酸がよく、特にアスパラギン、グルタミン、セリン、メチオニン、アラニン、グリシン、フェニルアラニンなどが好ましい。
282位Ile以外の、ピーク強度の発光波長を特に長波長側にシフトさせることができる位置としては、225位Thr、243位Phe、251位Tyr、280位Ser、307位Gluのアミノ酸位置が挙げられる。これらのアミノ酸は、ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼの高次構造において、反応中間体であるルシフェニル・AMPを囲む位置に存在し、発光反応の遷移状態に影響を与えることにより、結果的に、発光波長をシフトさせることができると予想される。
上記以外に223位のバリンを他のアミノ酸に置換しても、ピーク強度の発光波長を長波長側にシフトすることができる。223位に導入される新たなアミノ酸は、バリン以外の天然の19種のアミノ酸であればいずれでもよいが、好ましくはアラニン、ロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンなどの側鎖に電荷を有さないアミノ酸がよく、特にロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、セリン、システイン、チロシン、アスパラギンなどが好ましい。
また、246位のセリンを他のアミノ酸に置換した場合も、ピーク強度の発光波長を長波長側にシフトさせることが可能である。246位に導入される新たなアミノ酸は、セリン以外の天然の19種のアミノ酸であればいずれでもよいが、好ましくはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなどの側鎖に電荷を有さないアミノ酸、あるいは、ヒスチジン、リシンなどの側鎖に塩基性基を有するアミノ酸がよく、特にアラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、システイン、チロシン、アスパラギン、ヒスチジン、リシンなどが好ましい。
本発明でピーク強度の発光波長を長波長側にシフトするために他のアミノ酸に置換する位置は347位のヒスチジンであってもよい。347位に導入される新たなアミノ酸は、ヒスチジン以外の天然の19種のアミノ酸であればいずれでもよいが、好ましくはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミンなどの側鎖に電荷を有さないアミノ酸がよく、特にグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミンなどが好ましい。
本発明ではピーク強度の発光波長を長波長側にシフトするために、他のアミノ酸への置換を複数箇所で行ってもよい。置換位置としては特に限定されないが、例えば246位のセリンおよび347位のヒスチジンの2箇所があげられる。246位に導入される新たなアミノ酸はセリン以外の天然の19種のアミノ酸であればいずれでもよいが、好ましくはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなどの側鎖に電荷を有さないアミノ酸、あるいは、ヒスチジン、リシンなどの側鎖に塩基性基を有するアミノ酸がよく、特にアラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、システイン、チロシン、アスパラギン、ヒスチジン、リシンなどが好ましい。347位に導入される新たなアミノ酸は、ヒスチジン以外の天然の19種のアミノ酸であればいずれでもよいが、好ましくはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミンなどの側鎖に電荷を有さないアミノ酸がよく、特にグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミンなどが好ましい。
本発明の一実施形態において、変異型ルシフェラーゼは610nm以上のピーク波長を有する光を発することが好ましい。より好ましくは、本発明の変異型ルシフェラーゼは611nm以上のピーク波長を有する光を発し、更に好ましくは616nm以上のピーク波長を有する光を発し、特に好ましく619nm以上のピーク波長を有する光を発する。このような610nm以上のピーク波長を有する光を発する変異型ルシフェラーゼは、例えば、配列番号5の246位のセリン及び347位のヒスチジンに同時に変異を加えることによって得られる。特に、347位のヒスチジンをグルタミンに置換し、246位のセリンをヒスチジン、アラニン、又はアスパラギンに置換することが好ましく、中でも246位のセリンをヒスチジン又はアラニンに置換することがより好ましく、246位のセリンをHisに置換することが最も好ましい。
また、本発明のヒカリコメツキ由来のルシフェラーゼをコードする遺伝子には、配列番号2のDNAとストリンジェントな条件下にハイブリダイズする変異型遺伝子も包含される。さらに、本発明の変異型ルシフェラーゼは、本明細記載の変異型ルシフェラーゼだけでなく、それらにさらに、1又は2以上(例えば1または数個)のアミノ酸を置換、付加、欠失又は挿入された変異型ルシフェラーゼも包含する。また、N末端またはC末端に第2のタンパク質が結合した融合タンパク質であってもよい。さらにPEST配列等のタンパク不安定化のための配列が結合された融合タンパク質であってもよい。
なお、「ストリンジェントな条件」とは,特異的なハイブリダイゼーションのみが起き,非特異的なハイブリダイゼーションが起きないような条件をいう。このような条件は,通常,「1xSSC,0.1%SDS,37℃」程度であり,好ましくは「0.5xSSC,0.1%SDS,42℃」程度であり,更に好ましくは「0.2xSSC,0.1%SDS,65℃」程度である。ハイブリダイゼーションによって得られるDNAは配列番号2記載の塩基配列により表わされるDNAと通常高い相同性を有する。高い相同性とは,80%以上の相同性,好ましくは85%以上の相同性,更に好ましくは90%以上、特に95%以上、あるいは98%以上の相同性を指す。
本発明に述べる「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸に対する、同一アミノ酸残基の割合(%)を意味する。本発明に述べる相同性は、非特許文献4に記載のアルゴリズムが組み込まれたBLASTプログラムにより算出された値である。
非特許文献4:Karlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) Vol.90 p5873-5877
遺伝子構築体を導入する宿主となる微生物としては、大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、真核藻類などが挙げられ、好ましくは大腸菌である。
非特許文献4:Karlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) Vol.90 p5873-5877
遺伝子構築体を導入する宿主となる微生物としては、大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、真核藻類などが挙げられ、好ましくは大腸菌である。
大腸菌としては、Escherichia coliに属するものが挙げられ,例えばB株やK12株を親株とするものが使用できる。具体的には、市販のXL1−Blue株、BL−21株、JM107株、TB1株、JM109株、C600株、DH5α株、HB101株等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。糸状菌としては、アクレモニウム属、フミコーラ属、アスペルギルス属、トリコデルマ属、フザリウム属、ペニシリウム属、ムコール属、リゾープス属、ニューロスポラ属等に属する糸状菌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。酵母としては、サッカロミセス属、ピキア属、シゾサッカロミセス属、クリベロマイセス属に属する酵母が挙げられる。
宿主が大腸菌である場合はプロモーターとして、例えば誘導酵素のプロモーター領域を使用することがより好ましく、具体的には、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、lppプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーター、λPLプロモーターなどが好ましく、宿主が酵母である場合はプロモーターとして、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が糸状菌である場合はプロモーターとして、具体的にはamyB glaA, agdA, glaB、TEF1, xynF1 tannase gene, No.8AN, gpdA, pgkA, enoA, melO, sodM, catA, catBなどが挙げられる。
本発明の遺伝子構築物は、通常本発明の変異型ルシフェラーゼ遺伝子の上流にプロモーターを連結する。
本発明の形質転換細胞は、変異型ルシフェラーゼを製造する場合には、上記の微生物が好ましいが、細胞のイメージング(例えば細胞内オルガネラのイメージング)には、動物細胞、植物細胞の形質転換細胞が挙げられる。植物細胞は自家蛍光が強く蛍光を用いたイメージングに適さないため、発光を利用したイメージングが注目を集めている。動物細胞のイメージングには特に哺乳類細胞の形質転換細胞が挙げられる。該遺伝子構築物が哺乳類細胞に導入される場合には、標的となる遺伝子のプロモーターに本発明の変異型ルシフェラーゼ遺伝子を連結し、常法に従い該遺伝子構築物(ベクターDNA)を哺乳類細胞に導入して形質転換された哺乳類細胞を得る。
遺伝子構築物において、プロモーターは、レポーター遺伝子の上流に連結される。ルシフェラーゼ遺伝子は哺乳類細胞で効率よく発現させるため、哺乳類型のコドンユーセージに変更されていることが望ましい。さらに、翻訳を効率化するため、Kozak配列が挿入されてもよい。
哺乳類細胞への遺伝子構築物の導入方法としては、市販のリポフェクション系試薬やリン酸カルシウムなどによる化学的方法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどの物理的方法、ウイルスベクターを用いた生物学的方法のいずれであってもよい。
哺乳類としては、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル、ブタ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌが挙げられ、好ましくはヒトである。
哺乳類細胞の標的遺伝子の転写活性測定は、標的遺伝子(即ち、本発明の変異型ルシフェラーゼをコードする遺伝子)のプロモーターに連結されたヒカリコメツキ虫由来ルシフェラーゼの発現量をルシフェラーゼ活性により測定することで実施可能である。
ヒカリコメツキ虫由来ルシフェラーゼの活性測定は、界面活性剤を含む細胞溶解剤、または超音波処理などにより細胞を破砕し、ルシフェリン、ATPなどを含む発光基質溶液と混合し、発光を測定する。細胞培養液にルシフェリンを添加し、そのまま発光を測定することも可能である。複数の発光色ルシフェラーゼを用いる場合は、光分離機能付きルミノメーターで分離測定することによって1つの反応で複数のルシフェラーゼ(例えばヒカリコメツキ由来の野生型と変異型のルシフェラーゼ、あるいはヒカリコメツキ由来変異型ルシフェラーゼと最大(ピーク)発光波長の異なる他の由来のルシフェラーゼ)の活性を測定することが可能である。また、ルシフェラーゼに宿主で機能するシグナルペプチドを連結し、ヒカリコメツキムシ由来変異型ルシフェラーゼを宿主外に分泌させることができる。これは、形質転換宿主を培養して、変異型ルシフェラーゼを製造する場合、単離が容易になる利点があり、変異型ルシフェラーゼの哺乳類細胞中での発現量を検出する場合、哺乳類細胞の破砕が不要になるので好ましい。
本発明の変異型ルシフェラーゼは、適当なタグを連結して精製を容易にすることができる。このようなタグとしては、Hisタグ、GST、MBP 、T7tag、Trxtag、Stag、CBDtag、Stag、Nustag(pET system manual、メルク社)などが挙げられ、これらのタグを変異型ルシフェラーゼに連結し、特異的プロテアーゼ(例えば、thrombinやenterokinaseなど)認識部位においてHisタグ、GST、MBP、T7tag、Trxtag、Stag、CBDtag、Stag、Nustagなどのタグを切断し、形質転換微生物の培養物から目的とする変異型ルシフェラーゼを得ることができる。認識部位は遺伝子工学的にアミノ酸配列を作成し、配列特異的に認識する各種の切断酵素(特にプロテアーゼ)を作用させればよい。
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
実施例1
まず、配列番号2で示されるヒカリコメツキ由来ルシフェラーゼ遺伝子を大腸菌発現用ベクターpSE380(インビトロジェン社)に挿入し、大腸菌での発現用プラスミドベクターを作製した。その際、ルシフェラーゼ遺伝子の開始コドン直後にヒスチジンタグを導入し、本タグを利用したタンパク精製ができるようにした。次に、本プラスミドを鋳型にルシフェラーゼの282番目のIleを他のアミノ酸に変換すべくインバースPCRによるsaturation mutagenesisを行った。すなわち、282番目のIleに対応するコドンの位置をNNNにして、3箇所に4種類全ての塩基(すなわち64通りの塩基の組み合わせ)が挿入されるようにPCRプライマーを設計し、これをPrimer#1(配列番号3)とした。また、背中合わせの逆方向の25merの相補鎖をPrimer#2(配列番号4)とした。これらのprimerを用いて、ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドDNAを鋳型に、インバースPCR法による変異導入を実施した(図1)。変異導入は、部位特異的変異導入キットKOD - Plus- Mutagenesis Kit(東洋紡績)をキット付属の取扱説明書に従い実施し、得られたプラスミドを用いて、大腸菌コンピテントセルDH5α(東洋紡績)の形質転換を行った。次に、得られたコロニーから96クローンをサンプリングしてシーケンシングを行い、変異導入部位の塩基配列を調べた。その結果、表1(282番目のIleに対応するコドンとその個数)に示すように、GGGの9クローンを最多に、39種類の異なるコドンを持つ変異体を得ることができた。これらは、アミノ酸レベルでは、Gln、Lysを除く18種類のアミノ酸に対応し、野生型のIle以外に17種類の変異体が得られたことになる。
実施例1
まず、配列番号2で示されるヒカリコメツキ由来ルシフェラーゼ遺伝子を大腸菌発現用ベクターpSE380(インビトロジェン社)に挿入し、大腸菌での発現用プラスミドベクターを作製した。その際、ルシフェラーゼ遺伝子の開始コドン直後にヒスチジンタグを導入し、本タグを利用したタンパク精製ができるようにした。次に、本プラスミドを鋳型にルシフェラーゼの282番目のIleを他のアミノ酸に変換すべくインバースPCRによるsaturation mutagenesisを行った。すなわち、282番目のIleに対応するコドンの位置をNNNにして、3箇所に4種類全ての塩基(すなわち64通りの塩基の組み合わせ)が挿入されるようにPCRプライマーを設計し、これをPrimer#1(配列番号3)とした。また、背中合わせの逆方向の25merの相補鎖をPrimer#2(配列番号4)とした。これらのprimerを用いて、ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドDNAを鋳型に、インバースPCR法による変異導入を実施した(図1)。変異導入は、部位特異的変異導入キットKOD - Plus- Mutagenesis Kit(東洋紡績)をキット付属の取扱説明書に従い実施し、得られたプラスミドを用いて、大腸菌コンピテントセルDH5α(東洋紡績)の形質転換を行った。次に、得られたコロニーから96クローンをサンプリングしてシーケンシングを行い、変異導入部位の塩基配列を調べた。その結果、表1(282番目のIleに対応するコドンとその個数)に示すように、GGGの9クローンを最多に、39種類の異なるコドンを持つ変異体を得ることができた。これらは、アミノ酸レベルでは、Gln、Lysを除く18種類のアミノ酸に対応し、野生型のIle以外に17種類の変異体が得られたことになる。
実施例2
次に、実施例1で取得できたルシフェラーゼ変異体の発光波長が変化しているかを調べるために、上で得られた17種類の変異体及び野生型ルシフェラーゼ遺伝子を含む大腸菌形質転換体を培養し、ルシフェラーゼを発現させた。続いて、ルシフェラーゼをヒスチジンタグ融合タンパク質精製キットMagExtactor TM-His-tag-(東洋紡績)により精製した後、それらの発光スペクトルの測定を行った。発光スペクトルの測定は、それぞれの精製酵素を15mM MgSO4、6mM EDTA、4mM Coenzyme A、1.2mM D-luciferin,6mM DTT、0.2% Nonidet P40、2mM ATPからなる発光試薬に添加して測定した。測定結果の一部を図2に示す。その結果、測定できた変異体では、最大発光波長(λmax )が赤色側へシフトしていることが明らかとなった。このようにして得られたルシフェラーゼ変異体について、282番目のアミノ酸の種類及びその最大発光波長の対応関係を表2に示した。全ての変異型ルシフェラーゼにおいて、最大発光波長が長波長側にシフトしており、特にアスパラギンに置換した変異型ルシフェラーゼでは、最大発光波長は575nmであり、野生型の538nmに比べて、30nm以上長波長側にシフトしていることが明らかとなった。
次に、実施例1で取得できたルシフェラーゼ変異体の発光波長が変化しているかを調べるために、上で得られた17種類の変異体及び野生型ルシフェラーゼ遺伝子を含む大腸菌形質転換体を培養し、ルシフェラーゼを発現させた。続いて、ルシフェラーゼをヒスチジンタグ融合タンパク質精製キットMagExtactor TM-His-tag-(東洋紡績)により精製した後、それらの発光スペクトルの測定を行った。発光スペクトルの測定は、それぞれの精製酵素を15mM MgSO4、6mM EDTA、4mM Coenzyme A、1.2mM D-luciferin,6mM DTT、0.2% Nonidet P40、2mM ATPからなる発光試薬に添加して測定した。測定結果の一部を図2に示す。その結果、測定できた変異体では、最大発光波長(λmax )が赤色側へシフトしていることが明らかとなった。このようにして得られたルシフェラーゼ変異体について、282番目のアミノ酸の種類及びその最大発光波長の対応関係を表2に示した。全ての変異型ルシフェラーゼにおいて、最大発光波長が長波長側にシフトしており、特にアスパラギンに置換した変異型ルシフェラーゼでは、最大発光波長は575nmであり、野生型の538nmに比べて、30nm以上長波長側にシフトしていることが明らかとなった。
実施例3
まず、配列番号2で示されるヒカリコメツキ由来ルシフェラーゼ遺伝子を哺乳類細胞の発現用ベクターpcDNA3.1(インビトロジェン社)に挿入し、哺乳類細胞での発現用プラスミドベクターを作製した。次に、本プラスミドを鋳型にルシフェラーゼの223番目のVal、246番目のSerあるいは347番目のHisを他のアミノ酸に変換すべく、実施例1と同様の方法でインバースPCRによるsaturation mutagenesisを行った。すなわち、223番目のValに対応するコドンの位置をNNNにしたPrimer#3(配列番号6)、背中合わせの逆方向の21merの相補鎖のPrimer#4(配列番号7)を設計した。同様にして、246番目のSerに対応するコドンの位置をNNNにしたPrimer#5(配列番号8)、背中合わせの逆方向の19merの相補鎖のPrimer#6(配列番号9)、および、347番目のHisに対応するコドンの位置をNNNにしたPrimer#7(配列番号10)、背中合わせの逆方向の21merの相補鎖のPrimer#8(配列番号11)を設計した。Primer#3とPrimer#4、Primer#5とPrimer#6、あるいは、Primer#7とPrimer#8のprimer setを用いて、pcDNA3.1にヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼ遺伝子を挿入したプラスミドDNAを鋳型にインバースPCR法による変異導入を実施した。変異導入は、部位特異的変異導入キットKOD - Plus- Mutagenesis Kitをキット付属の取扱説明書に従い実施し、得られたプラスミドを用いて、大腸菌コンピテントセルDH5αの形質転換を行った。次に、得られたコロニーからサンプリングしてシーケンシングを行い、変異導入部位の塩基配列を調べた。その結果、223番目のValの変換を試みた場合、72クローンの解析を行い、表3(223番目のValに対応するコドンとその個数)に示すように、28種類の異なるコドンを持つ変異体を得ることができた。これらは、アミノ酸レベルでは、Trp、Phe、Ser、Cys、Asnを除く15種類のアミノ酸に対応し、野生型のVal以外に14種類の変異体が得られたことになる。246番目のSerの変換を試みた場合、56クローンの解析を行い、表4(246番目のSerに対応するコドンとその個数)に示すように、30種類の異なるコドンを持つ変異体を得ることができた。これらは、アミノ酸レベルでは、Met、Phe、Cys、Tyr、Lys、Asp、Gluを除く13種類のアミノ酸に対応し、野生型のSer以外に12種類の変異体が得られたことになる。また、347番目のHisの変換を試みた場合、72クローンの解析を行い、表5(347番目のHisに対応するコドンとその個数)に示すように、34種類の異なるコドンを持つ変異体を得ることができた。これらは、アミノ酸レベルでは、Met、Asn、Lysを除く17種類のアミノ酸に対応し、野生型のHis以外に16種類の変異体が得られたことになる。
まず、配列番号2で示されるヒカリコメツキ由来ルシフェラーゼ遺伝子を哺乳類細胞の発現用ベクターpcDNA3.1(インビトロジェン社)に挿入し、哺乳類細胞での発現用プラスミドベクターを作製した。次に、本プラスミドを鋳型にルシフェラーゼの223番目のVal、246番目のSerあるいは347番目のHisを他のアミノ酸に変換すべく、実施例1と同様の方法でインバースPCRによるsaturation mutagenesisを行った。すなわち、223番目のValに対応するコドンの位置をNNNにしたPrimer#3(配列番号6)、背中合わせの逆方向の21merの相補鎖のPrimer#4(配列番号7)を設計した。同様にして、246番目のSerに対応するコドンの位置をNNNにしたPrimer#5(配列番号8)、背中合わせの逆方向の19merの相補鎖のPrimer#6(配列番号9)、および、347番目のHisに対応するコドンの位置をNNNにしたPrimer#7(配列番号10)、背中合わせの逆方向の21merの相補鎖のPrimer#8(配列番号11)を設計した。Primer#3とPrimer#4、Primer#5とPrimer#6、あるいは、Primer#7とPrimer#8のprimer setを用いて、pcDNA3.1にヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼ遺伝子を挿入したプラスミドDNAを鋳型にインバースPCR法による変異導入を実施した。変異導入は、部位特異的変異導入キットKOD - Plus- Mutagenesis Kitをキット付属の取扱説明書に従い実施し、得られたプラスミドを用いて、大腸菌コンピテントセルDH5αの形質転換を行った。次に、得られたコロニーからサンプリングしてシーケンシングを行い、変異導入部位の塩基配列を調べた。その結果、223番目のValの変換を試みた場合、72クローンの解析を行い、表3(223番目のValに対応するコドンとその個数)に示すように、28種類の異なるコドンを持つ変異体を得ることができた。これらは、アミノ酸レベルでは、Trp、Phe、Ser、Cys、Asnを除く15種類のアミノ酸に対応し、野生型のVal以外に14種類の変異体が得られたことになる。246番目のSerの変換を試みた場合、56クローンの解析を行い、表4(246番目のSerに対応するコドンとその個数)に示すように、30種類の異なるコドンを持つ変異体を得ることができた。これらは、アミノ酸レベルでは、Met、Phe、Cys、Tyr、Lys、Asp、Gluを除く13種類のアミノ酸に対応し、野生型のSer以外に12種類の変異体が得られたことになる。また、347番目のHisの変換を試みた場合、72クローンの解析を行い、表5(347番目のHisに対応するコドンとその個数)に示すように、34種類の異なるコドンを持つ変異体を得ることができた。これらは、アミノ酸レベルでは、Met、Asn、Lysを除く17種類のアミノ酸に対応し、野生型のHis以外に16種類の変異体が得られたことになる。
実施例4
次に、実施例3で取得できたルシフェラーゼ変異体の発光波長が変化しているかを調べるために、上で得られた変異体及び野生型ルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミドDNAを動物細胞にトランスフェクションし、ルシフェラーゼを発現させた。すなわち、COS-7細胞を対象にLipofectamine2000(インビトロジェン社)を用いキット付属の取扱説明書に従いトランスフェクションを実施した。トランスフェクションの1日後、Emerald Luc Lysis Solution(東洋紡績)にて細胞を溶解し、発光スペクトルおよび発光強度の測定に供した。
次に、実施例3で取得できたルシフェラーゼ変異体の発光波長が変化しているかを調べるために、上で得られた変異体及び野生型ルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミドDNAを動物細胞にトランスフェクションし、ルシフェラーゼを発現させた。すなわち、COS-7細胞を対象にLipofectamine2000(インビトロジェン社)を用いキット付属の取扱説明書に従いトランスフェクションを実施した。トランスフェクションの1日後、Emerald Luc Lysis Solution(東洋紡績)にて細胞を溶解し、発光スペクトルおよび発光強度の測定に供した。
発光スペクトルおよび発光強度の測定は、細胞溶解液をEmerald Luc Luciferase Assay Reagent(東洋紡績)に添加して測定した。発光強度についてはカラフルックアナライザー(東洋紡績)を用い、フィルター非存在下で全光を測定した。その結果、発光スペクトルを測定できた変異体では、最大発光波長(λmax )が赤色側へシフトしていることが明らかとなった。このようにして得られた223番目のアミノ酸の変異体について223番目のアミノ酸の種類、その最大発光波長、および野生型を100%としたときの相対発光強度の対応関係を表6に、246番目のアミノ酸の変異体について246番目のアミノ酸の種類、その最大発光波長、および野生型を100%としたときの相対発光強度の対応関係を表7に、347番目のアミノ酸の変異体について347番目のアミノ酸の種類、その最大発光波長、および野生型を100%としたときの相対発光強度の対応関係を表8に示す。全ての変異型ルシフェラーゼにおいて、最大発光波長が長波長側にシフトしており、347番目のアミノ酸の変異体でより長波長側にシフトしていた。特に347番目のヒスチジンをグルタミンに置換した変異型ルシフェラーゼでは最大発光波長は605nmであり、野生型の539nmに比べて66nm以上長波長側にシフトしていることが明らかとなった。
実施例5
実施例3で作製したルシフェラーゼの347番目のHisをAla、CysあるいはGlnに置換したプラスミドを鋳型に、ルシフェラーゼの246番目のSerをAla、AsnあるいはHisに変換すべく、実施例1と同様の方法でインバースPCRによるsaturation mutagenesisを行った。すなわち、246番目のSerに対応するコドンの位置をそれぞれGCC、AAC、CATにしたPrimer#9(配列番号12)、Primer#10(配列番号13)、およびPrimer#11(配列番号14)を設計した。Primer#9、Primer#10、あるいは、Primer#11と背中合わせの逆方向の19merの相補鎖のPrimer#6(配列番号9)のprimer setを用いて、ルシフェラーゼの347番目のHisをAla、CysあるいはGlnに置換したプラスミドを鋳型にインバースPCR法による変異導入を実施した。変異導入は、部位特異的変異導入キットKOD - Plus- Mutagenesis Kitをキット付属の取扱説明書に従い実施し、得られたプラスミドを用いて、大腸菌コンピテントセルDH5αの形質転換を行った。次に、得られたコロニーからサンプリングしてシーケンシングを行い、変異導入部位の塩基配列を調べた。その結果、各々のプラスミドで246番目のSerがAla、AsnあるいはHisに置換されていることが確認できた。すなわち、ルシフェラーゼの246番目のSerがAla、AsnあるいはHisに、347番目のHisがAla、CysあるいはGlnに置換された9種類のプラスミドを取得することができた。
実施例3で作製したルシフェラーゼの347番目のHisをAla、CysあるいはGlnに置換したプラスミドを鋳型に、ルシフェラーゼの246番目のSerをAla、AsnあるいはHisに変換すべく、実施例1と同様の方法でインバースPCRによるsaturation mutagenesisを行った。すなわち、246番目のSerに対応するコドンの位置をそれぞれGCC、AAC、CATにしたPrimer#9(配列番号12)、Primer#10(配列番号13)、およびPrimer#11(配列番号14)を設計した。Primer#9、Primer#10、あるいは、Primer#11と背中合わせの逆方向の19merの相補鎖のPrimer#6(配列番号9)のprimer setを用いて、ルシフェラーゼの347番目のHisをAla、CysあるいはGlnに置換したプラスミドを鋳型にインバースPCR法による変異導入を実施した。変異導入は、部位特異的変異導入キットKOD - Plus- Mutagenesis Kitをキット付属の取扱説明書に従い実施し、得られたプラスミドを用いて、大腸菌コンピテントセルDH5αの形質転換を行った。次に、得られたコロニーからサンプリングしてシーケンシングを行い、変異導入部位の塩基配列を調べた。その結果、各々のプラスミドで246番目のSerがAla、AsnあるいはHisに置換されていることが確認できた。すなわち、ルシフェラーゼの246番目のSerがAla、AsnあるいはHisに、347番目のHisがAla、CysあるいはGlnに置換された9種類のプラスミドを取得することができた。
実施例6
次に、実施例5で取得できたルシフェラーゼ変異体の発光波長が変化しているかを調べるために、実施例4記載の方法で各変異体及び野生型ルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミドDNAを動物細胞にトランスフェクションし、ルシフェラーゼを発現させ、発光スペクトルおよび発光強度を測定した。
次に、実施例5で取得できたルシフェラーゼ変異体の発光波長が変化しているかを調べるために、実施例4記載の方法で各変異体及び野生型ルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミドDNAを動物細胞にトランスフェクションし、ルシフェラーゼを発現させ、発光スペクトルおよび発光強度を測定した。
発光スペクトルの測定結果の一部を図3に示す。また、このようにして得られた各変異体の246番目および347番目のアミノ酸の種類、その最大発光波長、および野生型を100%としたときの相対発光強度の対応関係を表9に示す。全ての変異型ルシフェラーゼにおいて、最大発光波長が60nm以上長波長側にシフトしていた。特に246番目のセリンをヒスチジンに、347番目のヒスチジンをグルタミンに置換した変異型ルシフェラーゼでは、最大発光波長は619nmであり、野生型の539nmに比べて、80nm以上長波長側にシフトしていることが明らかとなった。
246番目のセリンをヒスチジンに、347番目のヒスチジンをグルタミンに置換した変異型ルシフェラーゼ、246番目のセリンをアラニンに、347番目のヒスチジンをグルタミンに置換した変異型ルシフェラーゼ、246番目のセリンをアスパラギンに、347番目のヒスチジンをグルタミンに置換した変異型ルシフェラーゼ等では、一箇所のみ変異を挿入したとき最も発光波長が長波長側にシフトしていた347番目のヒスチジンをグルタミンに置換した変異型ルシフェラーゼと比較して、発光波長が更に長波長側にシフトしていた。これら二箇所を置換した変異型ルシフェラーゼは、347番目のヒスチジンをグルタミンに置換した変異型ルシフェラーゼと比較して細胞あるいは組織透過性が更に改善されているため、インビボ発光イメージング等により好適と考えられる。
また、246番目のセリンをヒスチジンに、347番目のヒスチジンをアラニンに置換した変異型ルシフェラーゼ、246番目のセリンをヒスチジンに、347番目のヒスチジンをシステインに置換した変異型ルシフェラーゼ等では、最大発光波長は一箇所のみ変異を挿入したとき最も発光波長が長波長側にシフトしていた347番目のヒスチジンをグルタミンに置換した変異型ルシフェラーゼとほぼ同じ値であったものの、発光強度は347番目のヒスチジンをグルタミンに置換した変異型ルシフェラーゼよりも強かった。
これら二箇所を置換した変異型ルシフェラーゼは、347番目のヒスチジンをグルタミンに置換した変異型ルシフェラーゼと比較して細胞あるいは組織透過性が同等程度であるものの、発光強度が大幅に増大しているため、インビボ発光イメージング等により好適と考えられる。一方、223番目のバリンをチロシン、246番目のセリンをヒスチジンに置換した変異型ルシフェラーゼは、223番目のバリンをチロシンに置換した変異型ルシフェラーゼと比較して最大発光波長が多少長波長側にシフトするのみであった。223番目のバリンをチロシン、347番目のヒスチジンをグルタミンに置換したルシフェラーゼは、発光強度が大きく低下し発光スペクトルを測定することができなかった。以上より、意外にも246番目のセリン、347番目のヒスチジンの二箇所を置換することで、単変異体から更に最大発光波長を長波長化すること、あるいは、最大発光波長が単変異体と同等以上かつ発光強度を単変異体から増大させることができた。
実施例7
実施例4および6で取得した、野生型および変異型ルシフェラーゼを発現させた細胞溶解液を用いて、存在比の異なる2色のルシフェラーゼを定量可能か、モデル実験で検証した。変異型ルシフェラーゼは246番目のセリンをヒスチジンに、347番目のヒスチジンをアラニンに置換したルシフェラーゼ(以下S246H/H347Aと記載)、あるいは、347番目のヒスチジンをグルタミンに置換したルシフェラーゼ(以下H347Qと記載)を用いた。上記の野生型と、S246H/H347AあるいはH347Q変異体のルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比を変えたサンプルについて、Emerald Luc Luciferase Assay Reagentを添加して、フィルターなしおよび600nmのロングパスフィルター存在下でカラフルックアナライザーにて発光を測定した。野生型あるいは変異体のルシフェラーゼの細胞溶解液単独の条件で予め発光を測定し、算出した各ルシフェラーゼのフィルター透過率を用いて、測定値から各ルシフェラーゼの活性を算出した。野生型ルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比に対する、野生型およびS246H/H347A変異体のルシフェラーゼの相対活性をプロットしたグラフを図4に、野生型ルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比に対する、野生型およびH347Q変異体のルシフェラーゼの相対活性をプロットしたグラフを図5に示す。その結果、どちらの変異体を用いた場合も細胞溶解液の添加量に比例した各ルシフェラーゼの活性を確認することができた。特に、S246H/H347A変異体を用いた場合は、野生型ルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比が小さいときも、正確な定量が可能であった。
実施例4および6で取得した、野生型および変異型ルシフェラーゼを発現させた細胞溶解液を用いて、存在比の異なる2色のルシフェラーゼを定量可能か、モデル実験で検証した。変異型ルシフェラーゼは246番目のセリンをヒスチジンに、347番目のヒスチジンをアラニンに置換したルシフェラーゼ(以下S246H/H347Aと記載)、あるいは、347番目のヒスチジンをグルタミンに置換したルシフェラーゼ(以下H347Qと記載)を用いた。上記の野生型と、S246H/H347AあるいはH347Q変異体のルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比を変えたサンプルについて、Emerald Luc Luciferase Assay Reagentを添加して、フィルターなしおよび600nmのロングパスフィルター存在下でカラフルックアナライザーにて発光を測定した。野生型あるいは変異体のルシフェラーゼの細胞溶解液単独の条件で予め発光を測定し、算出した各ルシフェラーゼのフィルター透過率を用いて、測定値から各ルシフェラーゼの活性を算出した。野生型ルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比に対する、野生型およびS246H/H347A変異体のルシフェラーゼの相対活性をプロットしたグラフを図4に、野生型ルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比に対する、野生型およびH347Q変異体のルシフェラーゼの相対活性をプロットしたグラフを図5に示す。その結果、どちらの変異体を用いた場合も細胞溶解液の添加量に比例した各ルシフェラーゼの活性を確認することができた。特に、S246H/H347A変異体を用いた場合は、野生型ルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比が小さいときも、正確な定量が可能であった。
実施例8
実施例4および 6で取得した、野生型および変異型ルシフェラーゼを発現させた細胞溶解液を用いて、存在比の異なる3色のルシフェラーゼを定量可能か、モデル実験で検証した。変異型ルシフェラーゼは246番目のセリンをバリンに置換したルシフェラーゼ(以下S246Vと記載)、および、S246H/H347A変異体のルシフェラーゼを用いた。上記の野生型ルシフェラーゼの細胞溶解液を一定量とし、S246V変異体とS246H/H347A変異体のルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比を変えたサンプルについて、Emerald Luc Luciferase Assay Reagentを添加して、フィルターなし、560nmのロングパスフィルターおよび600nmのロングパスフィルター存在下でカラフルックアナライザーにて発光を測定した。野生型、S246V変異体、あるいはS246H/H347A変異体のルシフェラーゼの細胞溶解液単独の条件で予め発光を測定し、算出した各ルシフェラーゼのフィルター透過率を用いて、測定値から各ルシフェラーゼの活性を算出した。更に内部標準として一定量添加した野生型ルシフェラーゼの活性値を用いて、各変異体のルシフェラーゼの活性値を標準化した。S246V変異体のルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比に対する、S246V変異体とS246H/H347A変異体のルシフェラーゼの相対活性をプロットしたグラフを図6に示す。その結果、細胞溶解液の添加量に比例した各ルシフェラーゼの活性を確認することができた。
実施例4および 6で取得した、野生型および変異型ルシフェラーゼを発現させた細胞溶解液を用いて、存在比の異なる3色のルシフェラーゼを定量可能か、モデル実験で検証した。変異型ルシフェラーゼは246番目のセリンをバリンに置換したルシフェラーゼ(以下S246Vと記載)、および、S246H/H347A変異体のルシフェラーゼを用いた。上記の野生型ルシフェラーゼの細胞溶解液を一定量とし、S246V変異体とS246H/H347A変異体のルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比を変えたサンプルについて、Emerald Luc Luciferase Assay Reagentを添加して、フィルターなし、560nmのロングパスフィルターおよび600nmのロングパスフィルター存在下でカラフルックアナライザーにて発光を測定した。野生型、S246V変異体、あるいはS246H/H347A変異体のルシフェラーゼの細胞溶解液単独の条件で予め発光を測定し、算出した各ルシフェラーゼのフィルター透過率を用いて、測定値から各ルシフェラーゼの活性を算出した。更に内部標準として一定量添加した野生型ルシフェラーゼの活性値を用いて、各変異体のルシフェラーゼの活性値を標準化した。S246V変異体のルシフェラーゼの細胞溶解液の存在比に対する、S246V変異体とS246H/H347A変異体のルシフェラーゼの相対活性をプロットしたグラフを図6に示す。その結果、細胞溶解液の添加量に比例した各ルシフェラーゼの活性を確認することができた。
本発明は、野生型ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼとは異なるピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼを提供する。特に、野生型ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼより長波長側のピーク波長を有する変異型ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼを得ることが可能となる。これらの変異型ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼ、特により長波長側(赤色側)のピーク波長を有する変異型ルシフェラーゼは、細胞あるいは組織透過性に優れるため、インビボ発光イメージングに好適となる。また、ATP検出において、赤色等の有色溶液中の物質、例えば、血液中のATP含有量を測定するといった場合において、測定感度を向上させることが可能となる。さらに、野生型と変異型、あるいは、ピーク発光波長の異なる2種類の変異型ルシフェラーゼを用いて、2色のレポーター遺伝子を用いることが可能となり、例えば、複数の遺伝子の転写活性を同時に測定すること等に利用することができ、創薬・医療・食品検査などの産業界に寄与することが大いに期待できる。
Claims (20)
- ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼであって、そのピーク強度の発光波長が、野生型酵素のピーク強度の発光波長から少なくとも1nm異なるピーク強度の波長を有する変異型ルシフェラーゼ。
- ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼであって、そのピーク強度の発光波長が、野生型酵素のピーク強度の発光波長より長波長側にシフトした請求項1記載の変異型ルシフェラーゼ。
- ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼがPyrearinus属由来ルシフェラーゼである請求項1または2記載の変異型ルシフェラーゼ。
- Pyrearinus属由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列において、少なくとも、223位のバリン、246位のセリン、282位のイソロイシン、347位のヒスチジンから選択されるアミノ酸位置のうち1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列を有する請求項3記載の変異型ルシフェラーゼ。
- 前記282位のイソロイシンが、アスパラギン、スレオニン、セリン、メチオニン、アラニン、グリシン、バリン、チロシン、システイン及びフェニルアラニンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている請求項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
- 223位のバリンが、アラニン、ロイシン、メチオニン、スレオニン、及びチロシンからなる群より選択さるいずれかのアミノ酸で置換されている請求項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
- 246位のセリンが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、及びヒスチジンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている請求項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
- 347位のヒスチジンが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、及びグルタミンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている請求項4記載の変異型ルシフェラーゼ。
- Pyrearinus属由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列において、少なくとも、246位のセリンおよび347位のヒスチジンが他のアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列を有する請求項3記載の変異型ルシフェラーゼ。
- 246位のセリンが、アラニン、アスパラギン、及びヒスチジンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸で置換されており、かつ、347位のヒスチジンが、アラニン、システイン、及びグルタミンからなる群から選択されるいずれかのアミノ酸で置換されている請求項9記載の変異型ルシフェラーゼ。
- ヒカリコメツキ由来ルシフェラーゼが、配列番号:2の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する、請求項5〜8および10のいずれかに記載の変異型ルシフェラーゼ。
- 配列番号5に示されるアミノ酸配列の347番目のヒスチジンがグルタミンに置換され、246番目のセリンがヒスチジン、アラニン、及びアスパラギンから成る群から選択される1種のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を有するヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼ。
- 請求項1〜12のいずれかに記載される変異型ルシフェラーゼをコードする遺伝子。
- 請求項13に記載の遺伝子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする遺伝子構築体。
- 請求項14に記載の遺伝子構築体を用いて微生物を形質転換し、得られた微生物を培養し、培養物より変異型ルシフェラーゼを採取することを特徴とする変異型ルシフェラーゼの製造法。
- 請求項14に記載の遺伝子構築体を用いて形質転換された形質転換細胞。
- 前記細胞が哺乳類細胞である請求項16に記載の形質転換細胞。
- 前記細胞がヒト細胞である請求項17に記載の形質転換細胞。
- 細胞内のオルガネラのイメージングのための請求項16〜18のいずれかに記載の形質転換細胞の使用。
- 前記遺伝子を制御するプロモーターの転写活性測定のための請求項16〜18のいずれかに記載の形質転換細胞の使用。
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