JP2015018664A - 色素増感型太陽電池の製造方法および多孔質層形成用塗工液 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、層内全体に密にネッキングを形成し、良好な膜質を有する多孔質層を形成するためには、長時間にわたる焼成時間が必要となる。焼成時間が短いと、上記塗布膜中に含まれるバインダ成分が急激に熱分解されることで多孔質層に割れやクラック等の欠陥が生じる場合や、バインダ成分が十分に熱分解されず多孔質層内に残留物として多く存在することにより、電荷移動の際の抵抗となる場合があるからである。また、焼成時間が短いと、酸化チタンによるネッキングが十分に形成されない場合もある。これらの不具合が生じると、結果として色素増感型太陽電池の電池特性が低下するという問題がある。そのため、短時間で色素増感型太陽電池の製造を行うためには、多孔質層の焼成時間の短縮化が課題とされる。
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法について説明する。本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、電極としての機能を有し、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層が一方の表面上に形成されている色素増感型太陽電池用基材と、上記色素増感型太陽電池用基材に対向するように配置され、電極としての機能を有する対向電極基材と、上記色素増感型太陽電池用基材および上記対向電極基材の間に形成され、上記多孔質層と接するように形成された電解質層とを有し、上記色素増感型太陽電池用基材または上記対向電極基材の少なくとも一方が透明性を有する色素増感型太陽電池の製造方法であって、上記金属酸化物半導体微粒子およびカルボキシル基を2つ以上有する水溶性ポリカルボン酸塩を少なくとも含み、上記水溶性ポリカルボン酸塩が、上記金属酸化物半導体微粒子に対して分散機能を有し、溶液中に含有される全有機固形分中で、上記水溶性ポリカルボン酸塩の含有量が最も多い多孔質層形成用塗工液を用い、上記色素増感型太陽電池用基材上に塗布または印刷し、焼成することにより上記多孔質層を形成する多孔質層形成工程を有することを特徴とする。
次に、多孔質層2上に電解質層3を形成する(図1(d))。続いて、別途、対向電極基材4を準備し、色素増感型太陽電池用基材1と対向電極基材4とを、多孔質層2および電解質層3を挟持するように対向させて貼り合わせることにより色素増感型太陽電池10を製造することが出来る。なお、図1(a)〜(c)が、本発明における多孔質層形成工程に相当する。
多孔質層形成工程後、別途、対向電極基材4上に触媒層5を設け、多孔質層2および触媒層5が対向するように上記色素増感型太陽電池用基材1および対向電極基材4を配置して、封止部材6で封止する(図2(d))。次いで、電解質層形成材料Cを色素増感型太陽電池用基材1および対向電極基材4の間に注入して電解質層3を形成することにより、色素増感型太陽電池10を製造することが出来る(図2(e)〜(f))。
通常、多孔質層を形成する場合、多くの金属酸化物半導体微粒子間でネッキングを形成させ、焼成後の多孔質層の強度を高めるために、多孔質層形成用塗工液にバインダ成分を多く含有させる必要がある。しかし、バインダ成分自体は分散性を有さないことから、塗布膜内においてバインダ成分が疎に存在する領域(疎領域)と密に存在する領域(密領域)とが混在すると想定される。このような塗布膜を短時間で焼成させると、上記塗布膜内のバインダ成分を均一に熱分解させることができないと推量される。
例えば、焼成炉内に入れてから取出すまでを数分程度の時間で行った際に、上記疎領域では全てのバインダ成分が熱分解されているのに対し、上記密領域ではバインダ成分の一部が熱分解されずに残留物として多孔質層内に存在してしまう。上記残留物は、色素増感型太陽電池において電荷移動の際に抵抗となり、電池特性の低下を招く恐れがある。また、昇温速度を速めて上記バインダ成分を急激に熱分解させると、上記塗布膜において温度差や収縮差が生じ、得られる多孔質層に割れやクラック等の欠陥が生じてしまう場合もある。このため、従来の多孔質層の形成方法においては、焼成炉内に入れてから取出すまでの時間として数時間から数十時間といった長時間が必要であり、1時間以内で行うことは難しかった。
また、上記水溶性ポリカルボン酸塩がカルボキシル基を有するため、表面に水酸基を有する金属酸化物半導体微粒子に吸着しやすいことが予想される。つまり、上記水溶性ポリカルボン酸塩はバインダとしても機能するため、多量のバインダ成分を用いる必要がない。上述したように水溶性ポリカルボン酸塩および金属酸化物半導体微粒子は、上記塗布膜内において均一に分散して存在するため、上記塗布膜を焼成させることにより水溶性ポリカルボン酸塩がバインダとなって金属酸化物半導体微粒子同士を結合させ、多孔質層全体に渡って強固かつ密にネッキングを形成することができる。これにより、割れやクラック等の欠陥が発生しにくい良好な膜質の多孔質層が形成されるものと推測される。
以下、本発明の色素増感型太陽電池の製造方法について各工程を説明する。
本発明における多孔質層形成工程は、上記金属酸化物半導体微粒子およびカルボキシル基を2つ以上有する水溶性ポリカルボン酸塩を少なくとも含み、上記水溶性ポリカルボン酸塩が、上記金属酸化物半導体微粒子に対して分散機能を有し、溶液中に含有される全有機固形分中で、上記水溶性ポリカルボン酸塩の含有量が最も多い多孔質層形成用塗工液を用い、上記色素増感型太陽電池用基材上に塗布または印刷し、焼成することにより上記多孔質層を形成する工程である。
まず、本工程において用いられる多孔質層形成用塗工液について説明する。本工程において用いられる多孔質層形成用塗工液は、金属酸化物半導体微粒子およびカルボキシル基を2つ以上有する水溶性ポリカルボン酸塩を少なくとも含み、上記水溶性ポリカルボン酸塩が、上記金属酸化物半導体微粒子に対して分散機能を有し、溶液中に含有される全有機固形分中で、上記水溶性ポリカルボン酸塩の含有量が最も多いことを特徴とするものである。
以下、上記多孔質層形成用塗工液における各材料について説明する。
水溶性ポリカルボン酸塩は、カルボキシル基を2つ以上有するものであり、また、金属酸化物半導体微粒子に対して分散機能を有する。このような水溶性ポリカルボン酸塩としては、ポリカルボン酸アルカリ金属塩、ポリカルボン酸アルカリ土類金属塩、ポリカルボン酸アミン塩等のカルボキシル基の一部が金属塩化されたもの、ポリカルボン酸アンモニウム塩、およびこれらの塩のアニオン等が挙げられる。中でも、ポリカルボン酸ナトリウム塩アニオン、ポリカルボン酸アンモニウム塩アニオンが好ましい。
また、このとき、上記水溶性ポリカルボン酸塩の含有量は、金属酸化物半導体微粒子を十分に分散させることができ、焼成処理により当該微粒子を十分に結合させることが可能な量であることが好ましい。具体的には、上記多孔質層形成用塗工液中の金属酸化物半導体微粒子の含有量を100質量部としたときの水溶性ポリカルボン酸塩の含有量が、1質量部〜20質量部の範囲内であることが好ましく、中でも5質量部〜10質量部の範囲内が好ましい。
金属酸化物半導体微粒子としては、半導体特性を備える金属酸化物からなるものであれば特に限定されるものではない。上記金属酸化物半導体微粒子を構成する金属酸化物としては、例えば、TiO2、ZnO、SnO2、ITO、ZrO2、MgO、Al2O3、CeO2、Bi2O3、Mn3O4、Y2O3、WO3、Ta2O5、Nb2O5、La2O3等を挙げることができる。これらの金属酸化物半導体微粒子は、多孔性の多孔質層を形成するのに適しており、光電変換効率の向上、コストの削減を図ることができるため好適に用いられる。
上記多孔質層形成用塗工液は、上述の金属酸化物半導体微粒子および水溶性ポリカルボン酸塩を少なくとも含むものであるが、その他の材料としてバインダ成分を含んでいても良く、含まなくても良い。上記多孔質層形成用塗工液はバインダ成分を含まなくても、上述したように、水溶性ポリカルボン酸塩がバインダとしての機能を有するため、焼成の際にバインダ成分の熱分解を考慮する必要が無く、さらに焼成時間を短くすることができる。一方、上記多孔質層形成用塗工液がバインダ成分を含む場合、焼成および乾燥後における多孔質層の割れやクラック等の欠陥の発生をさらに抑制することができるため、多孔質層の強度の向上が図れる。
水溶性樹脂としては、例えば、アクリル系ウレタン樹脂等のポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ゼラチン、スチレンアクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、ポリアルキレノキサイド系共重合ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、カルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独重合体や共重合体等を挙げることができる。上述の水溶性樹脂は単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
また、ゴム系樹脂としては、例えば、ブチル系ゴム、ブタジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)及びその変性体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム及びその変性体、アクリル系ゴム、ニトリル系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。上述のゴム系樹脂は単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
上記多孔質層形成用塗工液に用いられる溶媒は、上述した各材料を分散させることができ、自然乾燥または熱処理により除去することが可能であれば特に限定されるものではない。このような溶媒としては、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、アセトン、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、tert−ブチルアルコール等を用いることができ、2種類以上の溶剤を混合して用いても良い。中でも、成膜後の揮発分の環境への影響等の点から水やアルコール系溶剤を用いることが望ましい。
本工程における多孔質層の形成方法は、少なくとも、上述した多孔質層形成用塗工液を用いて色素増感型太陽電池用基材上に塗布または印刷し、焼成することにより多孔質層を形成するものであればよい。
本工程において、多孔質層形成用塗工液を用い、色素増感型太陽電池用基材上に塗布または印刷し、焼成することを「焼成処理」として、以下に説明する。
本工程の焼成処理において、多孔質層形成用塗工液の塗布方法、および印刷方法については、色素増感型太陽電池用基材上に所望の膜厚および形状で均一な塗布膜を形成出来る方法であればよく、多孔質層を形成する際に一般的に用いられる塗布方法および印刷方法を用いることができる。
昇温速度については、焼成時間が上述の範囲内となるように、使用する焼成炉の機能や外部環境等に応じて適宜設定されるものである。例えば、焼成温度が300℃〜700℃の範囲内であるとき、焼成炉内に投入直後の塗布膜の温度から上記焼成温度に達するまでの昇温速度が50℃/分〜100℃/分の範囲内であることが好ましい。
なお、本工程において用いられる焼成炉は、色素増感型太陽電池における一般な多孔質層の形成の際に用いられるものと同様とすることができる。
本工程においては、上述した焼成処理後に、金属酸化物半導体微粒子に色素増感剤を担持させる担持処理を行うことが好ましい。
また、色素担持用塗工液を焼成後の多孔質層に塗布する方法としては、グラビアロール等のロール周面に付着保持された色素担持用塗工液を転写するロールコート方法、焼成処理後の金属酸化物半導体微粒子に向けてノズルから色素担持用塗工液を吐出して塗布するダイコート方法、または、金属細線を巻き付けた棒からなるワイヤーバーを利用したワイヤーバー方法等が挙げられる。
本工程において形成される多孔質層は、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含むものである。
上記金属酸化物半導体および色素増感剤については、上述した「(1)多孔質層形成用塗工液」の項で説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、少なくとも上述の多孔質層形成工程を有するものであれば特に限定されず、必要な工程を適宜選択し行うことができる。
以下、本発明において想定される工程について説明する。
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、色素増感型太陽電池用基材準備工程を有していてもよい。
本工程において形成される色素増感型太陽電池用基材は、電極としての機能を備えるものである。また、上記色素増感型太陽電池用基材の一方の表面上には上述の多孔質層が形成されるものである。
本態様の色素増感型太陽電池用基材は、基材と上記基材上に形成された第1電極層とを有するものである。
本態様における基材としては、後述する第1電極層および上述の多孔質層を支持することが可能な程度の自己支持性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、無機基材、樹脂製基材等を用いることができるが、中でも樹脂製基材であることが好ましい。樹脂製基材は軽量かつ加工性に優れ、色素増感型太陽電池の製造コストの低減が図れるからである。
上記無機基材としては、例えば、合成石英基材やガラス基板等を挙げることができる。
また、上記樹脂製基材としては、例えば、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエステルナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂からなる基材等を挙げることができる、なかでも本発明においては二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂からなる基材が用いられることが好ましい。
なお、ガスバリア性を達成するために、上記基材上に任意のガスバリア層を有していてもよい。
本態様に用いられる第1電極層の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、導電性高分子材料や金属酸化物等を用いることができる。
上記金属酸化物としては、所望の導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも太陽光に対して透過性を有するものであることが好ましい。具体的には、SnO2、ZnO、酸化インジウムにスズを添加した化合物(ITO)、酸化インジウムに酸化亜鉛を添加した化合物(IZO)等を挙げることができる。中でもフッ素ドープしたSnO2(以下、FTOと称する。)、ITOを用いることが好ましい。FTOおよびITOは、導電性および光透過性の両方に優れているからである。
一方、上記導電性高分子材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリエチレンスルフォン酸(PSS)、ポリアニリン(PA)、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等を挙げることができる。これらの材料は単独で用いても良く、2種以上混合して用いることもできる。
なお、上記厚みは、第1電極層が複数の層から構成される場合には、すべての層の厚み
を合計した総厚みを指すものとする。
なお、上記全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピュータ(型番:SM−C)を用いて測定した値である。
本態様の色素増感型太陽電池用基材は、必要に応じて他の任意の構成を有してもよい。任意の構成としては、例えば、上記第1電極層に接するように形成され、導電性材料からなる補助電極を挙げることができる。上記補助電極が形成されていることにより、上記第1電極層の導電性が不足する場合に補充することができるため、色素増感型太陽電池をより発電効率に優れたものにできるという利点がある。
本態様の色素増感型太陽電池用基材は、金属箔からなるものである。本態様に用いられる色素増感型太陽電池用基材は、金属箔それ自体が電極としての機能を有するため、他の構成を有することは必須としない。
本工程において形成される色素増感型太陽電池用基材が上述した第1の態様のものである場合は、基材上に第1電極層を形成することができる方法であれば特に限定されない。
上記形成方法としては、例えば、基材上に金属マスクを用いて第1電極層をスパッタ法等の蒸着法により形成する方法、上記第1電極層の材料の金属ペーストを用いて基材上に印刷する方法等を挙げることができる。
また、本工程において形成される色素増感型太陽電池用基材が上述した第2の態様のものである場合は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法等の蒸着法により成膜する方法等を挙げることができる。
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、上記色素増感型太陽電池用基材および上記対向電極基材の間に、上記多孔質層と接するように電解質層を形成する電解質層形成工程を有していても良い。
まず、本工程において形成される電解質層について説明する。本工程において形成される電解質層は、通常、酸化還元対を含むものである。
本工程において形成される電解質層がゲル状である場合には、物理ゲルと化学ゲルのいずれであってもよい。ここで、物理ゲルは物理的な相互作用により室温付近でゲル化しているものであり、化学ゲルは架橋反応などにより化学結合でゲルを形成しているものである。
本工程において形成される電解質層が液状である場合には、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、炭酸プロピレン等の溶媒に酸化還元対を含むものや、同じくイミダゾリウム塩をカチオンとするイオン性液体を溶媒とすることができる。
本工程において形成される電解質層が固体状、すなわち固体電解質層である場合は、上述した酸化還元対を高分子成分により固体化したもの、一般的な色素増感型太陽電池に用いられる電解質溶液中に酸化チタン粒子、シリカ粒子等を添加することによって流動性を低下させたもの等が挙げられるが、中でも酸化還元対を高分子成分により固体化したものが好ましい。固体電解質層を容易に形成することができ、経時劣化が少ないからである。また、上記固体電解質層の場合、酸化還元対を含まずに自身が正孔輸送剤として機能するものであってもよく、例えばCuI、ポリピロール、ポリチオフェンなどを含む正孔輸送剤であってもよい。
また、上記固体電解質層における高分子成分の含有量としては特に限定はされないが、例えば、固体電解質層中に5重量%〜60重量%の範囲内で含有させることが好ましい。高分子成分の含有量が小さ過ぎると、多孔質層との密着性が十分に得られない場合や、固体電解質層の機械的強度の低下に繋がる場合がある。一方、高分子成分の含有量が大き過ぎると、絶縁性である高分子成分が多量に存在することから、電荷の移動が阻害されて光電変換効率が低下する場合がある。
上記イオン性液体としては、例えば、特開2012−54238号公報に記載されるイオン性液体等を用いることができる。また、固体電解質層に含まれるイオン性液体の割合については、イオン性液体の種類等に応じて適宜設定することができる。
本工程において形成される電解質層は、その他の材料として、架橋剤、光重合開始剤、増粘剤、常温融解塩等の添加剤を含有していてもよい。
本工程において電解質層を形成する方法としては、所望の膜厚で電解質層を上記多孔質層に接するように形成することができるのであれば特に限定はされない。例えば、図2で例示したように、色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材を封止部材等で封止した後、上述した電解質層の材料、または電解質の材料を適切な溶媒に分散または溶解させた溶液を注入することにより形成する方法等を用いることができる。
固体電解質層の形成方法として、具体的には、当該固体電解質層形成用塗工液を多孔質層上にパターン状に塗布した後、活性光線を照射することにより硬化させ形成する方法、対向電極基材上に固体電解質層を設け、これを多孔質層が設けられた色素増感型太陽電池用基材と、固体電解質層および多孔質層が接するように配置して貼り合わせる方法等がある。
また、対向電極基材上に第1固体電解質層を設け、色素増感型太陽電池用基材の多孔質層上に上記第1固体電解質層と同様の固体電解質層形成用塗工液からなる第2固体電解質層を設け、上記第1固体電解質層および上記第2固体電解質層多孔質層が接するように配置して貼り合わせることにより、1層の固体電解質層を形成することができる。
さらに、当該固体電解質層形成用塗工液を用いて、固体電解質層を別個に固体高分子フィルムとして形成し、上記多孔質層上に配置することによって形成することにより、固体電解質層を形成することができる。
また、本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、電極としての機能を有する対向電極基材を形成する対向電極基材形成工程を有していても良い。
まず、本工程において得られる対向電極基材について説明する。本工程において準備される対向電極基材は、電極としての機能を有するものである。また、上記対向電極基材は、上述した色素増感型太陽電池用基材と同等のフレキシブル性を有することが好ましい。
本工程における対向電極基材の形成方法としては、上記対向電極基材の態様に応じて適宜選択することができるが、例えば、上述した「(1)色素増感型太陽電池用基材準備工程」の項で説明した方法を用いて形成することができる。
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、対向電極基材上に触媒層を形成する触媒層形成工程等を有していても良い。上記触媒層は、色素増感型太陽電池の発電効率の向上に寄与する働きを有するものである。
上記触媒層の例としては、例えば、特開2012−54238号公報に記載される触媒層とすることができる。なお、対向電極基材が第4の態様である場合、上記触媒層は第2電極層上に形成されることになる。
なお、上記触媒層の膜厚としては、5nm〜500nmの範囲内、中でも10nm〜300nmの範囲内、特に15nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、色素増感型太陽電池用基材と対向電極基材とを、多孔質層および電解質層を挟持するように対向させて貼り合わせる貼り合わせ工程を有していても良い。
本工程における貼り合わせ方法としては色素増感型太陽電池用基材と、上記対向電極基材とを上記多孔質層および電解質層を挟持するように対向させて貼り合わせることができるのであれば特に限定されるものではなく、一般的な色素増感型太陽電池の製造方法に用いられる方法と同様とすることができる。
本発明におけるその他の工程として、例えば、色素増感型太陽電池を所望の大きさに断裁する断栽工程等が挙げられる。
次に、本発明によって製造される色素増感型太陽電池について説明する。本発明により製造される色素増感型太陽電池は、電極としての機能を有し、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層が一方の表面上に形成されている色素増感型太陽電池用基材と、上記色素増感型太陽電池用基材に対向するように配置され、電極としての機能を有する対向電極基材と、上記色素増感型太陽電池用基材および上記対向電極基材の間に形成され、上記多孔質層と接するように形成された電解質層とを有するものである。
次に、本発明の多孔質層形成用塗工液について説明する。本発明の多孔質層形成用塗工液は、金属酸化物半導体微粒子およびカルボキシル基を2つ以上有する水溶性ポリカルボン酸塩を少なくとも含み、上記水溶性ポリカルボン酸塩が、上記金属酸化物半導体微粒子に対して分散機能を有し、溶液中に含有される全有機固形分中で、上記水溶性ポリカルボン酸塩の含有量が最も多いことを特徴とする。
なお、上述の組成を有する多孔質層形成用塗工液を用いることにより、短い焼成時間で良好な膜質を有する多孔質層の形成が可能になる要因については、上述した「A.色素増感型太陽電池の製造方法」の項で説明した内容と同様である。
(多孔質層形成用塗工液の調製)
多孔質酸化チタン微粒子(製品名:P25、日本アエロジル社製)10g、およびポリカルボン酸アンモニウム塩アニオン40wt%水溶液(製品名:ノプコスパース5600、サンノプコ社製)2.0gをイオン交換水15gに投入し、ホモジナイザーにより攪拌して多孔質層形成用塗工液を調製した。
上述した多孔質層形成用塗工液を、色素増感型太陽電池用基材としての厚さ0.050mmのチタン箔(210mm×300mm)上にドクターブレード法により12mm×12mmの面積で塗布し、その後120℃で10分間乾燥させ、多数の多孔質酸化チタン微粒子を含む膜厚8μmの塗布膜を形成した。上記塗布膜に対し、プレス機を用いて0.1t/cmの圧力で加圧し、その後、焼成温度を500℃に設定された焼成炉内に入れて焼成を行った。焼成時間は5分であった。
透明なポリエチレンナフタレート(PEN)製の対向基材上に、第2電極としてインジウムドープ酸化スズ(ITO)対向電極基材を形成した。当該透明電極層上にポリチオフェン系導電性樹脂(BaytronPAI4083、スタルク社製)をワイヤーバーで塗布し、120℃で5分間乾燥することで厚さ0.1μmの触媒層を形成し、触媒層を備える対向電極基材とした。
カチオン性ヒドロキシセルロース(製品名:ジェルナーQH200、ダイセル化学社製)0.14gをメタノール2.72gに分散させた溶液を攪拌した。次いで、当該溶液に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMIm−B(CN)4)0.18g、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド(PMIm−I)0.5g、およびI2を0.025g加えて撹拌して溶解させた。これにより、コーティング可能な固体電解質層形成用塗工液を調製した。
色素増感型太陽電池用基材の多孔質層上に、上述した固体電解質層形成用塗工液をドクターブレード法により塗布して120℃で乾燥することにより、厚み6μmの第2固体電解質層を形成した。同様にして、対向電極基材の触媒層上に、上述の固体電解質層形成用塗工液を塗布して120℃で乾燥することにより、厚み6μmの第1固体電解質層を形成した。
色素増感型太陽電池用基材上の第2固体電解質層と対向電極基材上の第1固体電解質層とが対向するように配置し、25℃で0.1MPa加圧して貼り合わせることで色素増感型太陽電池を得た。
ポリカルボン酸アンモニウム塩アニオンの代わりに、ポリカルボン酸ナトリウム塩アニオン40wt%水溶液(製品名:SNディスパーサント5045、サンノプコ社製)2.0gを含む多孔質半導体形成用塗工液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして色素増感太陽電池を得た。
実施例1の多孔質半導体形成用塗工液に、さらにバインダ成分としてポリビニルピロリドン(日本触媒社製、商品名:K90)の10wt%水溶液が5g含まれていること以外は、実施例1と同様にして色素増感太陽電池を得た。
実施例1の多孔質半導体形成用塗工液に、さらにバインダ成分としてスチレンブタジエンゴム40wt%分散液が1g含まれていること以外は、実施例1と同様にして色素増感太陽電池を得た。
焼成時間を60分にしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を得た。
ポリカルボン酸アンモニウム塩アニオンの替わりに、バインダ成分としてポリビニルピロリドン(日本触媒社製、商品名:K90)の10wt%水溶液が15g含有した多孔質半導体形成用塗工液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして色素増感太陽電池を得た。
実施例および比較例で得た色素増感型太陽電池について、擬似太陽光(AM1.5、入射光強度100mW/cm2)を光源として、対向電極基材側から光照射し、ソースメジャーユニット(ケースレー2400型)を用いて電圧印加による電流電圧特性(電流値、電圧値、および光電変換効率値)を測定した。なお、測定に用いた多孔質層の面積は1cm2(1cm×1cm)である。
また、65℃に調整したオーブン内に、実施例および比較例で得た色素増感型太陽電池を入れて、1000時間経過後の電流電圧特性を同様に測定し、初期値に対する光電変換効率維持率(%)を算出した。これらの評価結果を表1に示す。
一方、比較例の結果から、水溶性ポリカルボン酸塩を含まない多孔質半導体形成用塗工液を用いる場合、焼成時間を5分にすると実施例と比較して光電変換効率が低く、また、光電変換効率維持率についても実施例と比較して大幅な低下が見られた。
よって、本発明により得られる色素増感型太陽電池は、焼成時間を短縮しても、従来と同等の発電特性を示すことが可能である。
2 … 電解質層
3 … 多孔質層
4 … 対向電極基材
10 … 色素増感型太陽電池
Claims (7)
- 電極としての機能を有し、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層が一方の表面上に形成されている色素増感型太陽電池用基材と、
前記色素増感型太陽電池用基材に対向するように配置され、電極としての機能を有する対向電極基材と、
前記色素増感型太陽電池用基材および前記対向電極基材の間に形成され、前記多孔質層と接するように形成された電解質層とを有し、
前記色素増感型太陽電池用基材または前記対向電極基材の少なくとも一方が透明性を有する色素増感型太陽電池の製造方法であって、
前記金属酸化物半導体微粒子およびカルボキシル基を2つ以上有する水溶性ポリカルボン酸塩を少なくとも含み、前記水溶性ポリカルボン酸塩が、前記金属酸化物半導体微粒子に対して分散機能を有し、溶液中に含有される全有機固形分中で、前記水溶性ポリカルボン酸塩の含有量が最も多い多孔質層形成用塗工液を用い、前記色素増感型太陽電池用基材上に塗布または印刷し、焼成することにより前記多孔質層を形成する多孔質層形成工程を有することを特徴とする色素増感型太陽電池の製造方法。 - 前記多孔質層形成用塗工液が、バインダ成分を含まないことを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
- 前記多孔質層形成用塗工液が、バインダ成分として水溶性樹脂またはゴム系樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
- 前記多孔質層形成工程における焼成時間が、1分〜60分の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
- 金属酸化物半導体微粒子およびカルボキシル基を2つ以上有する水溶性ポリカルボン酸塩を少なくとも含み、前記水溶性ポリカルボン酸塩が、前記金属酸化物半導体微粒子に対して分散機能を有し、溶液中に含有される全有機固形分中で、前記水溶性ポリカルボン酸塩の含有量が最も多いことを特徴とする多孔質層形成用塗工液。
- バインダ成分を含まないことを特徴とする請求項5に記載の多孔質層形成用塗工液。
- バインダ成分として水溶性樹脂またはゴム系樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載の多孔質層形成用塗工液。
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