JP5083442B2 - 色素増感型太陽電池 - Google Patents
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Description
このような固体電解質層を用いた色素増感型太陽電池においても、基材としてフレキシブルな基材を用いることが望まれている。
しかしながら、上記固体電解質層を用いた色素増感型太陽電池においては、多孔質層の周囲において色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材が接触することにより、内部短絡が発生する可能性があるという問題があった。また、上記問題を解決するために、例えば図12に示すように、多孔質層4の周囲おいて色素増感型太陽電池用基材1および対向電極基材2が対向する部分を設けないような構造についても検討されたが、この場合は、色素増感型太陽電池用基材と対向電極基材とを貼り合わせる際の貼り合わせ位置に高い精度が必要となることから製造工程が煩雑になるといった問題があった。なお、図12の詳しい説明については後述する。
また、本発明によれば上記固体電解質層を有することにより、電解質として流動性を有さないものを用いることから、ヨウ素耐性の高い高価なシール剤による固体電解質層の封止が不要となり、低コストで色素増感型太陽電池を製造することができる。
また、本発明によれば、上記固体電解質層および絶縁層を有することから、色素増感型太陽電池の製造の際、各部材の形成位置、および、上記色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材の貼り合わせ位置に高い精度を必要としないため、容易に色素増感型太陽電池を製造することができる。
また、本発明によれば、上記多孔質層の周囲が上記外通部を有することにより、色素増感型太陽電池を形成する際の色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材を貼り合わせる工程において、色素増感型太陽電池内の空気を上記外通部から排出させて貼り合わせを行うことが可能であることから容易に製造可能な色素増感型太陽電池とすることができる。
また、上記色素増感型太陽電池用基材が金属箔からなり、かつ、上記対向電極基材が透明性を有する基材である構造(以下、逆構造と称する場合がある。)においては、光が固体電解質層を通って多孔質層に入るので、固体電解質層での光の損失が懸念される。そこで、固体電解質層を薄くすることが望ましいが、固体電解質層を薄くすると両基材の間隔が狭くなるので、電極間の短絡の危険性が大きくなる。したがって、逆構造の色素増感型太陽電池において、本発明に用いられる絶縁層を採用することは好ましい。
上記色素増感型太陽電池の形状は、大量生産を行う際に適した形状であり、例えばRoll to Roll法等を用いることにより大量に生産することができるからである。
また、本発明によれば、固体電解質層形成工程および絶縁層形成工程により、固体電解質層および絶縁層が形成されるため、上記貼り合わせ工程において、上記色素増感型太陽電池用基材と対向電極基材とを貼り合わせる際の貼り合わせ位置に高い精度を必要としないことから、色素増感型太陽電池を容易に製造することができる。
また、本発明によれば、シール剤により電解質層を封止する工程を有さないことから、多孔質層が形成された色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材をシール剤で封止したのち、電解質を注入して電解質層を形成する従来の色素増感型太陽電池の製造方法に比べ、容易に色素増感型太陽電池を製造することができる。
また、本発明の色素増感型太陽電池は、上記絶縁層および固体電解質層を有することから、色素増感型太陽電池の各部材の形成位置、および上記色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材の貼り合わせ位置に高い精度を必要としないため、容易に製造することが可能となるといった効果を奏する。
本発明の色素増感型太陽電池は、電極としての機能を備え、フレキシブル性を有し、かつ、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層が一方の表面上に形成されている色素増感型太陽電池用基材と、上記色素増感型太陽電池用基材に対向するように配置され、電極としての機能を備え、かつ、フレキシブル性を有する対向電極基材と、上記色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材の間に形成され、上記多孔質層と接するように形成された固体電解質層とを有し、さらに、上記色素増感型太陽電池用基材または上記対向電極基材の少なくとも一方が透明性を有する基材である色素増感型太陽電池であって、上記色素増感型太陽電池用基材または上記対向電極基材の少なくとも一方の表面上には絶縁層が形成されており、上記絶縁層は、上記多孔質層が形成されている多孔質層形成領域の周囲であり、かつ、上記色素増感型太陽電池用基材および上記対向電極基材が対向している領域に形成され、さらに上記絶縁層は、上記多孔質層形成領域内から外部に外通する外通部を有することを特徴とするものである。
また、「上記絶縁層の空隙部分」とは、絶縁層が色素増感型太陽電池用基材または対向電極基材のいずれか一方に接していないように形成された状態や、絶縁層が部分的に形成されていない状態を示すものである。
また、本発明によれば上記固体電解質層を有することにより、電解質として流動性を有さないものを用いることから、ヨウ素耐性の高い高価なシール剤による固体電解質層の封止が不要となり、低コストで色素増感型太陽電池を製造することができる。また、シール剤により固体電解質層を封止する必要がないことから、色素増感型太陽電池の製造の際に、各部材の形成位置、および上記色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材の貼り合わせ位置に高い精度を必要としないため、容易に色素増感型太陽電池を製造することができる。
また、図5に示す多面付け部材を用いた場合は、断裁位置で断裁することにより、図2に示すように、多孔質層形成領域の周囲を囲うように絶縁層が形成されている色素増感型太陽電池を複数個形成することが可能となる。
なお、図3〜4において説明していない符号については図1と同様とすることができ、図5において説明していない符号については図2と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる絶縁層は、後述する色素増感型太陽電池用基材または上記対向電極基材の少なくとも一方の表面上に形成されており、後述する多孔質層が形成されている多孔質層形成領域の周囲であって、上記色素増感型太陽電池用基材および上記対向電極基材が対向している領域に形成されるものである。
このような絶縁層の材料としては、無機材料であってもよいし、有機材料であってもよい。上記無機材料としては、SiO2等の絶縁性材料を挙げることができる。また、有機材料としては、天然ゴム、ニトリルゴム等のエラストマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体等を挙げることができる。
上記絶縁層の厚みと上記多孔質層および上記固体電解質層からなる積層体の厚みとの差が小さいことにより、本態様の色素増感型太陽電池の端部の膜厚を均一なものとすることが可能となる。
本発明に用いられる固体電解質層は、後述する色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材の間に形成され、かつ、上記多孔質層と接するように形成されるものである。また、後述する多孔質層および対向電極基材間に位置し、多孔質層から伝導された電荷が、色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材を介して多孔質層へ輸入される際の輸送を行うものである。
上記のようなセルロース系樹脂の分子量は、そのセルロース系樹脂の種類によって異なり特に限定されないが、電解質層を形成する際に良好な造膜性を得る観点から、重量平均分子量が10,000以上(ポリスチレン換算)、特に100,000〜200,000の範囲であることが好ましい。例えば、セルロース系樹脂としてエチルセルロースを用いる場合には、水に2重量%でエチルセルロースを溶解させ、30℃で粘度測定を行った場合の値で、10mPa・s〜1000mPa・s、特に5mPa・s〜500mPa・sの粘度を示すような分子量とすることが好ましい。
また、セルロース系樹脂のガラス転移温度は、電解質層の十分な熱安定性を得るために、80℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
次に、本発明に用いられる多孔質層について説明する。本発明に用いられる多孔質層は、表面に色素増感剤が担持された金属酸化物半導体微粒子を含有するものであり、後述する色素増感型太陽電池用基材上に形成され、かつ、上記固体電解質層と接するものである。
ここで、「多孔質層の形状が四辺形である」とは、多孔質層が矩形、平行四辺形、ひし形等の形状であることを指す。また上記「四辺形」としては、矩形、平行四辺形、ひし形の形状において、角だけが丸くなるようにした形状も含むものとする。
本発明に用いられる金属酸化物半導体微粒子としては、半導体特性を備える金属酸化物からなるものであれば特に限定されるものではない。本発明に用いられる金属酸化物半導体微粒子を構成する金属酸化物としては、例えば、TiO2、ZnO、SnO2、ITO、ZrO2、MgO、Al2O3、CeO2、Bi2O3、Mn3O4、Y2O3、WO3、Ta2O5、Nb2O5、La2O3等を挙げることができる。これらの金属酸化物半導体微粒子は、多孔性の多孔質層を形成するのに適しており、エネルギー変換効率の向上、コストの削減を図ることができるため本発明に好適に用いられる。
なかでも本発明においてはTiO2からなる金属酸化物半導体微粒子を用いることが最も好ましい。TiO2は特に半導体特性に優れるからである。
なお、上記金属酸化物半導体微粒子の平均粒径は一次粒径を意味するものとする。
本発明に用いられる色素増感剤としては、光を吸収して起電力を生じさせることが可能なものであれば特に限定はされない。このような色素増感剤としては、有機色素または金属錯体色素を挙げることができる。上記有機色素としては、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン、インドリン、カルバゾール系の色素が挙げられる。本発明においてはこれらの有機色素の中でも、クマリン系色素を用いることが好ましい。また、上記金属錯体色素としてはルテニウム系色素を用いることが好ましく、特にルテニウム錯体であるルテニウムビピリジン色素およびルテニウムターピリジン色素を用いることが好ましい。このようなルテニウム錯体は吸収する光の波長範囲が広いため、光電変換できる光の波長領域を大幅に広げることができるからである。
本発明に用いられる多孔質層には、上記金属酸化物半導体微粒子の他に任意の成分が含まれていてもよい。本発明に用いられる任意の成分としては、例えば、バインダー樹脂を挙げることができる。上記多孔質層にバインダー樹脂が含有されることにより、本発明に用いられる多孔質層を脆性の低いものにできるからである。
本発明に用いられる多孔質層の厚みは、本発明の色素増感型太陽電池の用途に応じて、適宜決定できるものであり特に限定されるものではい。なかでも本発明における多孔質層の厚みは、通常、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に3μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。多孔質層の厚みが上記範囲よりも厚いと、多孔質層自体の凝集破壊が起りやすく、膜抵抗となりやすくなってしまう場合があるからである。また、多孔質層の厚みが上記範囲よりも薄いと厚みが均一な多孔質層を形成するのが困難となったり、色素増感剤が担持される量が少なくなり、太陽光を十分に吸収できないために性能不良になる可能性があるからである。
本発明に用いられる色素増感型太陽電池用基材は、電極としての機能を備え、フレキシブル性を有し、かつ、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層が一方の表面上に形成されているものである。
本態様の色素増感型太陽電池用基材は、基材と基材上に形成された第1電極層とを有するものである。以下、それぞれについて説明する。
まず、本態様に用いられる基材について説明する。本態様に用いられる基材としては、フレキシブル性を有し、本態様に用いられる第1電極層、および多孔質層を支持することが可能な程度の自己支持性を有するものであれば特に限定されるものではない。
なお、基材のフレキシブル性については、上述した色素増感型太陽電池用基材のフレキシブル性と同等とすることができるので、ここでの記載は省略する。
次に、本態様に用いられる第1電極層について説明する。本態様に用いられる第1電極層は、上記基材上に形成されたものである。
上記金属酸化物としては、所望の導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本態様に用いられる金属酸化物は太陽光に対して透過性を有するものであることが好ましい。このような太陽光に対する透過性を有する金属酸化物としては、例えば、SnO2、ITO、IZO、ZnOを挙げることができる。本態様においては、これらのいずれの金属酸化物であっても好適に用いることができるが、なかでもフッ素ドープしたSnO2(以下、FTOと称する。)、ITOを用いることが好ましい。FTOおよびITOは、導電性および太陽光の透過性の両方に優れているからである。
一方、上記導電性高分子材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリエチレンスルフォン酸(PSS)、ポリアニリン(PA)、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いることもできる。
なお、上記厚みは、第1電極層が複数の層から構成される場合には、すべての層の厚みを合計した総厚みを指すものとする。
本態様に用いられる色素増感型太陽電池用基材は、少なくとも上記基材、および第1電極層を有するものであればよいが、必要に応じて他の任意の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる任意の構成としては、例えば、上記第1電極層に接するように形成され、導電性材料からなる補助電極を挙げることができる。このような補助電極が形成されていることにより、上記第1電極層の導電性が不足する場合に、それを補充することができるため、本態様の色素増感型太陽電池をより発電効率に優れたものにできるという利点がある。
本態様の色素増感型太陽電池用基材は、金属箔からなるものである。
本態様に用いられる色素増感型太陽電池用基材は、金属箔それ自体が電極としての機能を有するため、他の構成を有することは必須ではないことになる。上記色素増感型太陽電池用基材として用いられる金属箔としては、フレキシブル性を有するものである限り特に限定されないが、材質としては、銅、アルミニウム、チタン、クロム、タングステン、モリブデン、白金、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、亜鉛、各種ステンレスおよびそれらの合金等が挙げられ、好ましくはチタン、クロム、タングステン、各種ステンレスおよびそれらの合金が望ましい。また、金属箔からなる色素増感型太陽電池用基材が用いられる場合、当該金属箔の厚みとしては、フレキシブル性を有し、色素増感型太陽電池用基材上に上述した多孔質層を形成することが可能な自己支持性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、5μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜500μmの範囲内であることがより好ましく、20μm〜200μmの範囲内であることがさらに好ましい。
次に、本発明に用いられる対向電極基材について説明する。本発明に用いられる対向電極基材は、上記色素増感型太陽電池用基材に対向するように配置され、電極としての機能を備え、かつ、フレキシブル性を有するものである。
本発明における対向電極基材のフレキシブル性としては、上述した色素増感型太陽電池用基材のフレキシブル性と同等とすることができるので、ここでの記載は省略する。
本発明に用いられる対向基材は、上記色素増感型太陽電池用基材に用いられる基材と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
本発明の色素増感型太陽電池は、上記多孔質層に吸着した色素増感剤が太陽光を受光して励起されることによって働くものである。したがって、色素増感型太陽電池用基材または対向電極基材の少なくとも一方は、透明性を有する必要がある。よって、本発明においては、色素増感型太陽電池用基材または対向電極基材の少なくとも一方が透明性を有する基材となるように適宜選択される。本発明においては、色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材の両方が透明性を有する基材であってもよいし、色素増感型太陽電池用基材または対向電極基材のいずれか一方が金属箔からなり、他方が透明性を有する基材であってもよい。
また、上記逆構造を有する色素増感型太陽電池においては、光が固体電解質層を通って多孔質層に入るので、固体電解質層での光の損失が懸念される。そこで、固体電解質層を薄くすることが望ましいが、固体電解質層を薄くすると両基材の間隔が狭くなるので、電極間の短絡の危険性が大きくなる。したがって、逆構造の色素増感型太陽電池においては、本発明に用いられる絶縁層の作用効果が高く発揮されることから好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池は、上述した絶縁層、固体電解質層、多孔質層、色素増感型太陽電池用基材、および対向電極基材を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要な部材を適宜追加することができる。このような部材としては、上記色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材を対向させて貼り合わせる際に、上記色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材の外側に配置することにより、両基材を固定する固定部材等が挙げられる。
本発明の色素増感型太陽電池モジュールは、「A.色素増感型太陽電池」の項で記載した色素増感型太陽電池が複数個連結されてなることを特徴とするものである。
なお、図示しないが、本発明の色素増感型太陽電池モジュールとしては、色素増感型太陽電池が直列に複数連結されていてもよい。
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、電極としての機能を備え、フレキシブル性を有し、かつ、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層が一方の表面上に形成される色素増感型太陽電池用基材と、上記色素増感型太陽電池用基材に対向するように配置され、電極としての機能を備え、かつ、フレキシブル性を有する対向電極基材とを、上記色素増感型太陽電池用基材または上記対向電極基材の少なくとも一方が透明性を有する基材として準備した後、上記色素増感型太陽電池用基材上に上記多孔質層を形成する多孔質層形成工程、上記多孔質層上に接するように固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程、および、上記色素増感型太陽電池用基材または上記対向電極基材の少なくとも一方の表面上の、上記多孔質層が形成される多孔質層形成領域に対応する領域の周囲で、かつ、上記色素増感型太陽電池用基材および上記対向電極基材を貼り合わせた際に上記色素増感型太陽電池用基材および上記対向電極基材が対向する領域に、絶縁層を形成する絶縁層形成工程、の各工程を順不同で行い、その後、上記色素増感型太陽電池用基材と上記対向電極基材とを上記多孔質層および電解質層を挟持するように対向させて貼り合わせる貼り合わせ工程を有することを特徴とする製造方法である。
また、本発明によれば、シール剤により電解質層を封止する工程を有さないことから、多孔質層が形成された色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材をシール剤で封止したのち、電解質を注入して電解質層を形成する従来の色素増感型太陽電池の製造方法に比べ、容易に色素増感型太陽電池を製造することができる。
本工程は、上記色素増感型太陽電池用基材上に、上記多孔質層を形成する工程である。
本態様の多孔質層の形成方法は、上記色素増感型太陽電池用基材として金属箔を用い、上記金属箔上に、上記多孔質層を焼成して形成する方法である。
また、本態様においては上記色素増感型太陽電池用基材として金属箔が用いられることから、上記対向電極基材としては透明性を有する基材が準備される。
また、金属箔は、耐熱温度が高いことから、多孔質層に用いられる材料の選択の幅が広がる、金属箔および多孔質層の密着性が良好であるといった利点も有する。
本態様の多孔質層の形成方法は、上記色素増感型太陽電池用基材上に多孔質層を形成する多孔質層形成用組成物をパターン状に塗布することによって多孔質層を形成する方法である。また、本態様においては、色素増感型太陽電池用基材の耐熱温度以下で熱処理(以下、単に熱処理と称する場合がある。)を行ってもよいものとする。
また、上記対向電極基材については、色素増感型太陽電池用基材または対向電極基材の少なくとも一方が透明性を有する基材として準備すればよい。
本態様の多孔質層の形成方法は、耐熱基板上で多孔質層を焼成して形成した後、上記多孔質層を上記色素増感型太陽電池用基材に配置し、次いで耐熱基板を剥離することにより多孔質層を形成する方法(転写法)である。
本工程が、後述する絶縁層形成工程後に行われる場合は、例えば図7(a)に示されるように、絶縁層の一部に多孔質層が形成されていてもよい。後述する絶縁層は、本発明の製造方法により製造される色素増感型太陽電池において、色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材が電気的に接触しないように形成されているのであれば特に限定されない。したがって、絶縁層が形成されていない多孔質形成領域上に高い位置精度をもって上記多孔質層を形成する必要がないことから、上記多孔質層を容易に形成することが可能となる。
本工程は、上記多孔質層に接するように固体電解質層を形成する工程である。
本工程は、上記色素増感型太陽電池用基材または上記対向電極基材の少なくとも一方の表面上の、上記多孔質層が形成される多孔質層形成領域に対応する領域の周囲で、かつ、上記色素増感型太陽電池用基材および上記対向電極基材を貼り合わせた際に上記色素増感型太陽電池用基材および上記対向電極基材が対向する領域に絶縁層を形成する工程である。
また、上記絶縁性材料(高分子フィルム)としては、「A.色素増感型太陽電池」の項で記載した絶縁層の材料を含み、かつ、ヒートシール性を有するもの、およびヒートシール性を有さないもの、もしくは、「A.色素増感型太陽電池」の項で記載した絶縁層の材料を含み、かつ、粘着性を有するものおよび粘着性を有さないもののいずれをも含むものとする。
また上記外通部については、「A.色素増感型太陽電池」の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
本工程は、色素増感型太陽電池用基材と、上記対向電極基材とを、上記多孔質層および電解質層を挟持するように対向させて貼り合わせる工程である。
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、上記貼り合わせ工程を有する製造方法であれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜追加することができる。このような工程としては、例えば上述した貼り合わせ工程において組み立てられた色素増感型太陽電池を所望の大きさに断裁する工程が挙げられる。本発明においては、電解質が固体状であるため、組み立てられた色素増感型太陽電池を所望の大きさに断裁することが可能である。
また、上記対向電極基材上に触媒層を形成する触媒層工程等が挙げられる。上記触媒層の形成方法については、一般的な色素増感型太陽電池の製造の際に用いられる方法と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
本発明においては、上記多孔質層形成工程では、上記色素増感型太陽電池用基材に、多孔質層を形成する多孔質層形成用組成物をパターン状に塗布することによって上記多孔質層を形成し、上記固体電解質層形成工程では、上記多孔質層上に固体電解質層を形成する固体電解質層形成用組成物をパターン状に塗布することによって固体電解質層を形成し、上記絶縁層形成工程では、上記色素増感型太陽電池用基材または対向電極基材の少なくとも一方に、上記絶縁層を形成する絶縁層形成用組成物をパターン状に塗布することによって上記絶縁層を形成することが好ましい。これにより、本発明の色素増感型太陽電池を1つの製造ラインで製造することが可能となり、製造効率を向上させることができるからである。また、本発明に用いられる色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材はいずれもフレキシブル性を有するものであることから、上記各工程すべてを塗布方法によって行うことにより、上記各部材をテープ等を用いて形成する場合に比べて、色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材に加わる負荷が少なく、加工精度が低下することを防止することが可能となる。
また、Roll to Roll法等を用いて上記多面付け部材を形成することができ、これを断裁することによって色素増感型太陽電池を大量生産することができることから、低コストで色素増感型太陽電池を形成することが可能となる。
色素増感型太陽電池用基材としてチタン箔を準備し、対向基材としてPENフィルム上にITO膜が形成された透明導電フィルムを用意し、そのITO膜上に白金を厚み13Å(透過率72%)で積層することにより対向電極基材を準備した。
日本エアロジル社製P25をエタノールで分散した分散液に、高分子成分としてエチルセルロース(日新化成製ST−100)を固形分比で5%添加して多孔質層形成用塗工液を調製した。その多孔質層形成用塗工液をチタン箔上に、ドクターブレードで10mm×10mmの面積で塗布した120℃で乾燥し、膜厚6μmの多孔質層形成用塗布膜を得た。その多孔質層形成用塗布膜にプレス機で0.1t/cmの圧力を加えた。プレス時に高分子成分を添加したのは、ロールに多孔質層形成用塗布膜が取られないようにするためである。プレス後500℃で焼成して多孔質層形成用層とした。次いで、ルテニウム錯体(Solaronix社製 RuL2(NCS)2)を無水エタノールで3.0×10−4mol/lの濃度となるように溶解された色素溶液に、上述の多孔質層形成用層を20時間浸漬させた。浸漬後色素溶液から引き上げ多孔質層に付着した色素溶液をアセトニトリルで洗浄し、風乾した。これにより、色素増感剤が坦持された多孔質層を得た。
EMIm−B(CN)4 3.64gにPMIm−I 10.0gとI20.24gを加えて拡販して溶解させた。また、この溶液にカチオン性ヒドロキシセルロース(ダイセル化学製ジェルナーQH-200)のメタノール5w%溶液を28g添加し、攪拌することによりコーティング可能な固体電解質層形成用組成物を調製した。
次に、上記色素増感型太陽電池用基材の多孔質層が形成されている領域と同じ領域に、上述の固体電解質層形成用組成物をドクターブレードで塗布し、100℃で乾燥することにより、固体電解質層を厚み4μmで設けた。
次に、多孔質層が形成されている領域以外で、色素増感型太陽電池用基材と対向電極基材とが重なっている領域(図1(a)の絶縁層5の領域)に、絶縁層として厚み12μmのPETフィルム(東洋紡績製ルミラーT−25)を挟み、色素増感型太陽電池用基材と対向電極基材を重ねた。次いで、OPPフィルム(東洋紡績製)P3162 40μmを用いて、色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材の外側から120℃でヒートシールすることにより圧着した。これにより色素増感型太陽電池を得た。
絶縁層形成工程において、厚み15μmの両面テープ(共同技研化学製400P15)を用いた以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を得た。
上記色素増感型太陽電池用基材の面積を10mm×40mmにして、図3の絶縁層5の位置に絶縁層を挟んだ以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を得た。次いで図3に示すように、絶縁層上の断裁位置で断裁することにより、10mm×10mmの色素増感型太陽電池を得た。
30mm×30mmのチタン箔に多孔質層を10mm×10mmの面積で4か所に、上記多孔質層形成用塗工液をパターン塗布することにより形成し、図5の絶縁層5の位置に絶縁層を挟んだこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を得た。ついで、図5に示すように、絶縁層上の断裁位置で断裁することにより10mm×10mmの色素増感型太陽電池を得た。
色素増感型太陽電池用基材として、PENフィルム上にITO膜が形成された透明導電フィルムを用意し、面積を10mm×40mmとした。また、対向基材としてチタン箔上に白金を厚み13Å(透過率72%)で積層することにより対向電極基材を準備した。
色素増感型太陽電池用基材上に上記の酸化チタンペーストおよび塗布液をドクターブレード法によりITO膜面に塗布し、その後120℃で5分間乾燥させることで、膜厚4μmの多孔質層形成用塗布膜を得た。次いで、ルテニウム錯体(Solaronix社製 RuL2(NCS)2)を無水エタノールで3.0×10−4mol/lの濃度となるように溶解された色素溶液に、上述の多孔質層形成用層を20時間浸漬させた。浸漬後色素溶液から引き上げ多孔質層に付着した色素溶液をアセトニトリルで洗浄し、風乾した。これにより、色素増感剤が坦持された多孔質層を得た。
次に、上記色素増感型太陽電池用基材の多孔質層が形成されている領域と同じ領域に、上述の固体電解質層形成用組成物をドクターブレードで塗布し、100℃で乾燥することにより、固体電解質層を厚み4μmで設けた。
次に、多孔質層が形成されている領域以外で、色素増感型太陽電池用基材と対向電極基材とが重なっている領域(図3の絶縁層5の領域)に、絶縁層としてドライラミ接着剤(東洋インキ製造製 接着剤AD-76PI/硬化剤CAT-RT85=100/7)をドクターブレードで塗布し、100℃で乾燥することにより厚み8μmで設けた。色素増感型太陽電池用基材と対向電極基材を重ね、接着させた。その後、50℃で7日間エージングした。
次いで実施例3と同様に図3に示す断裁位置で断裁することにより、10mm×10mmの色素増感型太陽電池を得た。
絶縁層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作成した。
絶縁層を形成しないこと以外は実施例4と同様にして色素増感型太陽電池を作成した。
実施例1〜5、および比較例1〜2の色素増感型太陽電池をAM1.5、疑似太陽光(入射光強度 100mW/cm2)を光源としてソースメジャーユニット(ケースレー2400型)にて電圧印加により電流電圧特性を測定した。
実施例1〜5で作成した色素増感型太陽電池は短絡なく、良好に発電した。一方、比較例1〜2はすべて短絡が発生した。
1a … 基材
1b … 第1電極層
2 … 対向電極基材
2a … 対向基材
2b … 第2電極層
3 … 固体電解質層
4 … 多孔質層
5 … 絶縁層
10 … 色素増感型太陽電池
20 … 多面付け部材
30 … 色素増感型太陽電池モジュール
Claims (4)
- 電極としての機能を備え、フレキシブル性を有し、かつ、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層が一方の表面上に形成されている色素増感型太陽電池用基材と、前記色素増感型太陽電池用基材に対向するように配置され、電極としての機能を備え、かつ、フレキシブル性を有する対向電極基材と、前記色素増感型太陽電池用基材および対向電極基材の間に形成され、前記多孔質層と接するように形成された固体電解質層とを有し、さらに、前記色素増感型太陽電池用基材または前記対向電極基材の少なくとも一方が透明性を有する基材である色素増感型太陽電池であって、
前記色素増感型太陽電池用基材または前記対向電極基材の少なくとも一方の表面上には絶縁層が形成されており、
前記絶縁層は、前記多孔質層が形成されている多孔質層形成領域の周囲であり、かつ、前記色素増感型太陽電池用基材および前記対向電極基材が対向している領域に形成され、
さらに前記絶縁層は、前記多孔質層形成領域内から外部に外通する外通部を有し、
前記外通部は、前記絶縁層が前記色素増感型太陽電池用基材または前記対向電極基材のいずれか一方に接していないことにより形成された空隙部分であることを特徴とする色素増感型太陽電池。 - 前記色素増感型太陽電池用基材が金属箔からなり、かつ、前記対向電極基材が透明性を有する基材であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池。
- 前記絶縁層が粘着性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色素増感型太陽電池。
- 請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の色素増感型太陽電池が複数個連結されてなることを特徴とする色素増感型太陽電池モジュール。
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