JP2015013307A - 抵抗溶接用電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】被溶接材が難溶接材であっても、通電による自身の発熱が大きさにより溶接が可能で、かつ、被溶接材と反応しにくい抵抗溶接用電極を得る。【解決手段】抵抗溶接用電極の少なくとも非溶接材と接する面に、Wを5〜95体積%と4a〜6a族金属炭化物、窒化物、ホウ化物等を5〜95体積%有する材料を用いることで解決した。これらの材料は電気抵抗率が比較的高く、電極として用いた場合に抵抗発熱量が大きく、難溶接材も溶接が容易になる。また、被溶接金属がアルミニウム、マグネシウムなどの電極と溶着が起こりやすい材料であっても、反応性が低いために溶着が起こりにくい。Wの破壊靱性が高いために、様々な電極形状に用いることが可能である。【選択図】図1

Description

本発明は、一対の電極間に挟まれた2以上の部材に通電することにより、2以上の部材の材料自体や界面の高い電気抵抗を利用して溶接を行なう「抵抗溶接」に用いる抵抗溶接用電極に関する。
抵抗溶接用の電極(以下、単に「電極」とも表現する)としては、現在までに様々な材質が提案されている。
抵抗溶接用電極として最も用いられる機会が多いのは、クロム銅、アルミナ分散銅、ベリリウム銅などの銅合金である。銅合金は、電気抵抗率が極めて低く、また熱伝導率が高く温度の上昇および下降が速いために生産性が高くでき、例えば鉄材やステンレス材などの接合される2以上の被溶接材(以下「ワーク」とも表現する)との反応が大きくはなく、抵抗溶接用電極として広く用いられている。
しかしながら、被溶接材が鉄材やステンレス材ではなく、アルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛や真鍮などの金属や、鉄材にこれらの成分を含むメッキ層を有する材料を抵抗溶接すると、ワークと電極との反応が顕著になり、使用可能回数が極めて少なくなる。この際、ワークと電極との反応生成物によって電気抵抗率が変化して、接合品質にムラが生じる問題が生じる。アルミニウムのように、大気中の酸素を取り込んで表面に酸化膜を容易に作るような金属は、ワーク同士が溶着しにくいという問題点もある。
また、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛などは、鉄材と比べて低融点なために、短時間で大電流を流して溶接する必要がある。電極はどのような材質でも、使用していくうちに表面にクラックが入るが、さらに被溶接材がアルミニウムなどの場合には、被溶接材と電極との反応が激しく、溶接後に電極とワークとが一体化して、電極がワークを持ち上げる「ピックアップ」と呼ばれる現象も発生する。この現象は、電極の表面状態が荒くなるほど起き易く、使用中に発生し始めるために、製造ラインでは連続稼動の大きな弊害となり望ましくない。
これらの問題を解決するために、現在まで様々な提案がなされている。
銅材と並んで抵抗溶接用電極材料として用いられるのがW(タングステン)およびタングステンを基とする材料である。
タングステンは電気抵抗率が低い上に融点が高く、硬さや他の機械的物性地も有しているために、抵抗溶接用電極としての特性に優れており、多くの種類が用いられている。
特許文献1には、Cu又はCu合金からなる抵抗溶接用電極の溶接面に、Wを基材とする芯材を埋設した電極で、W中に2a族元素,4a族 元素,5a族元素,6a族元素,希土類元素の酸化物,窒化物,炭化物,ホウ化物から選ばれる融点が2400℃以上の微粒子が、0.5〜10体積%分散したスポット溶接用電極が開示されている。この構成とすることにより、大電流下で加圧を伴う条件でスポット溶接するような場合にあっても、めっき金属との溶着,合金化を抑え、亀裂の発生を防止することが可能であると記載されている。
特許文献2には、横断面平均粒子径が50μm以上で結晶粒子が1.5以上のアスペクトを有するWまたはMo中に2a族、4a族、5a族、6a族元素などの酸化物、窒化物、炭化物およびホウ化物の微粒子が0.5〜10質量%分散したヒュージング溶接用電極が開示されている。この構成により、耐久性が高められたヒュージング電極が得られると記載されている。
特許文献3には、銅などの基材上にCo、Ni、W、Zrなどの母材金属中に酸化物、窒化物、炭化物などの粒子が分散した、代表的に1〜300μmの厚さを持つ被覆層を有する抵抗溶接用電極が開示されている。抵抗溶接用電極母材とワークの溶着が改善され、特に亜鉛メッキ鋼板のスポット溶接に適していると記載されている。
特許文献4には、基材部を銅系材料、先端部をセラミック粉末、側周面をZrB、TiB、WC、Moとし、合せて焼成することで一体化するスポット溶接電極が開示されている。この電極の使用により、亜鉛メッキ鋼板の溶接も鉄材と同様に、耐久性高く行なうことができると記載されている。
特許文献5には銅の抵抗溶接用電極上に中間層としてNi、Co、Cr、Moなどからなる層、更にその上にWなどの金属に酸化物、炭化物、窒化物などの粒子を分散した表面層を有する電極が開示されている。この電極構造とすることにより、溶着が抑えられ、電極は変形しにくく、価格も抑えられるとの記載がある。実施例には亜鉛メッキ鉄板をワークとした例が示されている。
特許文献6には、銅または銅合金の基材上にTi、Zr、Hfなどの中間層、中間層状に周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物などからなる表面層を被覆した抵抗溶接用電極が開示されている。
銅材やタングステンを基材とした抵抗溶接用電極は以上のように多く提案されているが、以下に示す問題点を未だ有している。
(1)被覆層を設けていない抵抗溶接用電極は、ワークがアルミニウムや亜鉛などの反応しやすい材料を含む場合は、耐溶着性が十分ではない。そのために十分な寿命が得られておらず、また、前記ピックアップ現状の問題も残されており、また、交換頻度が高く溶接機の稼動率が十分でない
(2)被覆層を設けた抵抗溶接用電極は、被覆層の亀裂や溶着が進展した時点で寿命となり、再研磨などの手法で再生ができない。よって、電極としては高価なものとなる
また、抵抗溶接の種類としては、円形状の比較的狭い範囲のみを溶接するスポット溶接、重ね合わせた板を連続した線状に溶接するシーム溶接、あらかじめ被溶接材の一部に突起を形成してその部分に通電させ溶接を行なうプロジェクション溶接、突合せ抵抗溶接、ヒュージング溶接とも呼ばれる熱カシメ溶接などが挙げられる。これらの溶接方法は相違があるが、いずれの方法で行なう場合でも「適当な電気抵抗」「被溶接材との低い反応性」が求められる。
特開2006−102775号公報 特開2008−073712号公報 特開平02−117780号公報 特開昭64−078683号公報 特開昭60−231597号公報 特開昭62−089583号公報
本発明は、以下に記載の課題の少なくともひとつを解決する。
(1)例えばワークがアルミニウムのような、従来の電極と溶着や反応しやすい場合でも、溶着や反応しにくい電極を得る
(2)再研磨などの手段により、電極寿命を被覆電極と比較して大幅に伸ばす
(3)従来のCuなどの電極を使用する場合と比較して、ワークの接合強度を向上させる
(4)従来のCuなどの電極を使用する場合と比較して、電極の耐摩耗性を向上し、電極寿命を延ばす。それに伴い、溶接機の稼働率を高める
抵抗溶接用電極の材質をW(タングステン)と、電気抵抗率が5×10−6〜1×10−3(Ω・cm)の導電性セラミックスをそれぞれ5体積%以上含む材料とする。
前記導電性セラミックスは金属の炭化物、窒化物、ホウ化物のいずれか1種または2種以上、およびこれらの固溶体から選択する。
前記金属は4a〜6a族金属のうちいずれか1種または2種以上であり、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wの中から選ばれる。
以下にそれぞれの例を挙げる。
単体金属の窒化物 TiN、ZrN、HfN、NbN、TaN、CrN、CrN、MoN、MoN、WN、WN、Wなど
単体金属の炭化物 TiC、ZrC、HfC、VC、TaC,Cr、MoC、WC、WCなど
単体金属のホウ化物 TiB、ZrB、HfB、Cr、CrB、NbB、Nb、NbB、WB、WB、W、MoB、Mo、MoB、MoB、Moなど
複合窒化物 (Ti・Ta)N、(Ti・Mo)N、(Ti・W)Nなど
単体の炭窒化物 TiCN、ZrCNなど
複合炭窒化物 (Ti・Mo)CN、(Ti・W)CNなど
これらの窒化物、炭窒化物やホウ化物等は1種でもよいし、複数でもよい。固溶体でもよいし、混合物でも構わない。
以下説明のために、以上の金属窒化物、金属炭窒化物、金属ホウ化物などをまとめて「金属化合成分」と表現する。
タングステンと金属化合成分とは溶接温度で全く、もしくは殆ど反応しないために、組織としては図1に組織写真を示すように、独立したW相、金属化合成分相として存在する。なお、W(タングステン)は、10〜200ppm程度のK(カリウム)を、酸化物、窒化物、金属カリウム、炭化物或いは硼化物の形態でドープされたものが多用されている。本明細書中では、タングステンは上記ドープタングステンをも包含していることを付記しておく。
前記金属化合成分は、総じて下記の特徴を有する。
(1)アルミニウム、銅、ニッケル、マグネシウム、チタン、真鍮、メッキ鋼板のメッキ成分などとの反応性が極めて小さく、化合物を生成しにくい
(2)硬さが高く、耐摩耗性が高い
(3)電気抵抗率が5×10−6〜1×10−3Ω・cm、銅(1.7×10−6Ω・cm)やタングステン(5.5×10−6Ω・cm)よりも高い。そのために、通電時に熱が発生しやすく、高い熱をワークに対して与えることができる
(4)空気中に多く含まれる酸素、窒素、水等と反応しにくい。そのために、熱を帯びた状態でも変質が少なく、安定した電気抵抗および溶接のための発熱量が得られる
(5)例えば金属製の電極上に耐溶着性の高い薄膜を形成する方法と異なり、研削等による再研磨が可能である。そのために、電極1ケあたりのコストが下がる
一方、タングステンは高融点金属であり、熱伝導率が高融点金属の中でも高い。また、金属化合成分と反応を殆どしないという利点がある。一方、タングステン単体の抵抗溶接用電極は、ワーク材質によっては反応化合物を生成して抵抗溶接用電極表面に付着したり、付着物によって発熱量が安定しなかったり、あるいは前述のピックアップと呼ばれる現象が生じていた。
この金属化合成分とタングステンとを複合材料化することにより、ワーク成分と溶着しにくく、安定した発熱を長期間にわたって得られる抵抗溶接用電極が得られる。ワークの成分はタングステンとは反応しやすいものもあるが、表面には金属化合成分も同時に表出しているために、反応が進みにくい。金属化合成分は一様に硬さがタングステンよりも高いために、タングステン単体の抵抗溶接用電極と比較して硬さおよび耐摩耗性が高まる。
Wと金属化合成分は、それぞれ最低でも5体積%、両方で最低95%が必要である。
まずWが5体積%必要なのは、Wが高い破壊靱性値および高い熱伝導率を有するためである。
金属化合成分は一般にセラミックス質と分類される成分であり、その硬さは高く、金属との反応性は小さいが、一方で金属成分よりも脆いという性質がある。抵抗溶接用電極はワークと接触し加圧するが、溶接工程の速度を上げるためには一定以上の速度でワークに接触させる必要がある。この際に、金属化合成分だけでは衝撃で破壊しやすい。Wは金属化合成分に対して靱性が非常に高く、通常の溶接条件では5体積%以上のWを含有していれば、電極としての靱性値を支障ない程度まで改善できる。Wが5体積%未満の場合、溶接自体は可能であるが、電極が脆くなる。その場合は電極に欠けが発生しやすいエッジ部や破壊の起点を作らないような電極形状とする必要が生じ、電極の形状が制限される。
また、Wの熱伝導率は150(W/m・K)程度と高い。そのため、溶接面で発生した熱を電極全体に伝導でき、その結果外部の局所的な温度変化などに対しても電極全体で温度変化が緩和され、溶接時にワークに与える熱量に差が生じにくくなる。その結果、安定した溶接が可能となる。
金属化合成分が少なくとも5体積%必要なのは、5体積%未満の場合は耐溶着性を向上させる効果が十分発現せず、金属化合成分以外の成分でワークとの溶着現象が起こりやすくなるためである。また、金属化合成分が5体積%以上であれば、電極溶接面の硬さや耐摩耗性を使用に十分耐える程度に高めることができる。
Wと金属化合成分は、両者の合計が少なくとも95体積%を必要とする。言い換えれば、5体積%未満であれば第3の成分を含んでいてもよい。第3の成分は金属化合成分に対して焼結助剤などの働きを有する成分、例えばアルミナ、スピネル、マグネシア、チタニア、イットリアなどを含むことが好ましい。この第3成分が5体積%を超えると、電極が脆くなったり、電気抵抗率が大きく変化したり、あるいは脱落した成分がワーク面に付着したりするおそれがある。
また、本発明の抵抗溶接用電極は少なくとも溶接面が前記組成の焼結体を有する。たとえば、特許文献3の様に窒化物セラミックスのような薄膜をつける方法は有効であるが、熱膨張差などにより薄膜が剥離する危険性が高い上に、一定回数の溶接後に使用不可となればその電極は廃棄する他無く、コスト的に不利である。一方、本願発明の電極の少なくとも溶接面は焼結体であるために、焼結体の大きさを大きくすることで使用後にごく表面層のみを削り取る作業(再研磨)を行って再利用することができる。そのために、一度製造した電極はサイズが極端に小さくなるか、再研磨により焼結体部分が無くなるまで使用することができ、コスト削減に寄与する。
抵抗溶接用電極は前記材質の焼結体を溶接面およびその付近にのみ用いて他の部分はシャンク部と組合せることも可能であるし、焼結体でシャンク部まで形成する構造でもよい。なお、後述のシャンク部を用いる場合は、溶接面を含む前記材質の部分は「チップ部」と表現する。図2にはこれらの模式図を示す。図2(2)には前記材料をチップ部として、溶接面を含む先端部にのみ前記材料を用いた模式図を、(1)にはシャンク部を含む抵抗溶接用電極全体を前記材料にて形成した例を示す。
また、図2(3)に示すように、電極の長さ方向に凹凸をつけ、凹部にシャンク部材料2を進入させることにより、チップ部1が抜けない構造とすることも有効である。このような構造であれば、チップ部1とシャンク部2の電極の接合が完全でなくとも、チップ部1が抜け落ちるような不具合が生じない。この構造の製造に適しているのは後述の埋設固着法である。
シャンク部は様々な材料が使用可能であるが、銅(純銅および添加物を加えた銅)、アルミニウムなどを用いることが好ましい。これらの材質は電気抵抗率が低く、通電によってシャンク部で発熱が殆ど起こらない。また、金属であり溶接時などに欠損が起こりにくい。空気中の酸素や水と反応しないか、反応してもごく表層部のみにとどまる。所望のシャンク形状を得るための鋳造、機械加工などが容易であり、素材も安価である。
チップ部とシャンク部とを接合する場合は、埋設固着や真空ロウ付けなどの手段を行なうことができる。
埋設固着とは、チップ部と低融点の金属(シャンク材料を指す)を昇温し、溶融した低融点の金属がチップ部表面の一部または全部と接触した状態とし、そのまま降温してチップ部と固化した低融点金属を一体化する方法である。固化した低融点金属の部分に必要な加工を加え、所望の形状とした部分がシャンク部となる。埋設固着ではなく鋳ぐるみ、鋳包みなどと呼ばれることもある。
真空ロウ付けは、真空雰囲気とした炉中にて、ロウ材を用いてチップ部とシャンク部を接合する方法である。ロウ材としては活性ロウ材と呼ばれるAgCuSnTiなどのロウ材を用いて行なう。
チップ部とシャンク部とを接合する際に、例えばWの量が50%よりも低くなれば、前記接合方法で良好に接合できない場合がある。これは、金属化合成分の反応性が著しく低いために起こる現象であり、接合のしやすさと、ワークとの反応のしにくさはトレードオフの関係にある。前記接合方法にて良好な接合が行なえない場合は、図3に示すように、チップ部の溶接面側である第1チップ部に前記Wと金属化合成分の複合材料を、チップ部の溶接面ではない部分である第2チップ部を第1チップ部よりW成分が多く金属化合成分が少ない組成の複合材料で構成し、第2チップ部とシャンク部とを接合する方法である。この方法を使えば、第1チップ部を例えばWが5体積%で残部が金属化合成分である第1チップ部の場合でも第2チップ部を介してシャンク部と接合できる。
また、チップ部を傾斜機能材料とすることもできる。この傾斜機能材料は、ワークと接する側の金属化合成分含有率を多く(最大で95体積%)し、シャンクと接合する側のW含有を多く(最大で95体積%)し、その間は両者の間の傾斜的な組成を有する構造とする。この構造とすることにより、ワークと反応しにくく、シャンクと接合しやすいチップ部とすることができる。
本発明の抵抗溶接用電極は、様々な抵抗溶接の形態に用いることができる。例として、円形状の比較的狭い範囲のみを溶接するスポット溶接、重ねた板材を連続線的に溶接するシーム溶接、あらかじめ被溶接材の一部に突起を形成してその部分に通電させ溶接を行なうプロジェクション溶接、突合せ抵抗溶接、ヒュージング溶接とも呼ばれる熱カシメ溶接などが挙げられる。これらに限らず、「一対の電極と、その電極間に挟まれた2以上の被溶接材とに電流を掛け、温度を上げて、被溶接材同士を接合する」どのような溶接方法にも用いることが可能である。
本発明の抵抗溶接用電極は、ワーク(被溶接物)との反応が極めて小さい。そのために本発明の抵抗溶接用電極を使用すると以下の効果がある。
(1)ワークとの溶着が少ないために、溶接後のワーク面の凹凸が極めて少ない
(2)反応生成物の電極への付着による電気抵抗の変化が極めて少ない。よって、電流の印加による安定的な抵抗発熱を得られる。ワークの不良発生率が抑えられ、電流値や電極の調整も少なく済む
(3)反応性生物による溶接面の減耗が極めて少ないために、繰り返し溶接しても電極の形状変化が少ない。よって、従来の電極より長寿命を得られる
また、Wよりも硬質な炭化物、窒化物、ホウ化物などを5〜95体積%含むことにより
(4)ワークとの接触、加圧による機械的な摩耗が抑制できる。よって、従来の電極よりも長寿命が得られる
さらに、本発明の抵抗溶接用電極は、従来用いられているW材やCu材よりも電気抵抗が高い。そのために
(5)抵抗発熱を大きくでき、ワークの溶接時に形成される「ナゲット」が従来の電極よりも大きく形成しやすくなる
本発明の電極は、少なくとも溶接面には前記焼結体を使用している、そのために
(6)溶接面およびその周辺のわずかな量の再研磨により、電極を繰り返し使用することが可能であり、コスト面で有利である
本発明の放電加工用電極に用いるW−金属化合成分材料の組織写真の一例を示す(白色部 W、黒色部 金属化合成分) (1)全体がW−金属化合成分からなる電極の模式図 (2)チップ部とシャンク部を有する電極の模式図 チップ部が金属化合成分を多く含む部分(上)と、タングステンを多く含む部分(中央部)とを有し、タングステンを多く含む部分でシャンクと接合した電極の模式図 本発明の電極によるスポット溶接の要部の模式図 本発明の電極によるシーム溶接の要部の模式図
抵抗溶接用電極の少なくとも電極本体が被溶接材に当接する面を、Wと金属化合成分とをそれぞれ5体積%以上、合計で95体積%以上含む焼結体とし、種々の抵抗溶接方法にて従来使用されている銅材の抵抗溶接用電極、W材の抵抗溶接用電極と合せて抵抗溶接試験を行い、電極寿命を調査した。
その結果、溶接面をWと金属化合成分をそれぞれ5体積%以上、合計で95体積%以上含む焼結体とすることにより、ワークとの溶着性が改善されてワークの外観品質が高く、ワークの接合強度を高くできた。また、抵抗溶接用電極の長寿命化に有効であることを確認した。
本発明の抵抗溶接用電極は以下の方法にて得られる。
まず、W粉末と、粉末状の金属化合成分とを乾式または湿式で混合する。粉末の粒子径は特に問わないが、入手しやすい0.2〜10μm程度の粉末を用いるのが好ましい。配合量はWを5〜95体積%、金属化合成分を5〜95質量%、両者で少なくとも95体積%を占める量とする。混合には、ボールミル、アトライタ、らいかい機、スターミルなど公知の装置にて行なえばよい。こうして混合粉末が得られる。
次に、混合粉末をプレス成形する。プレス成形は金型プレス、CIP(冷間静水圧)装置、乾式ラバープレス機など公知のプレス装置を使い、50〜500MPaの圧力にて混合粉末をプレス成形する。必要であれば、その後に旋盤やフライス盤、マシニングセンタなどで成形体の中間加工を行なう。こうして成形体を得る。
得られた成形体を焼結する。Wと金属化合成分はいずれも難焼結材であり、焼結には高い温度が必要となる。成分比率や金属化合成分の種類にもよるが、焼結温度は1700〜2200℃が適当である。第3成分として適当な焼結助剤を添加している場合は、下限が1500℃程度に下がる場合もある。また、焼結時の雰囲気は真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気、水素ガス雰囲気などの非酸化雰囲気とする必要がある。これは、Wと金属化合成分はいずれも酸素を含む雰囲気で焼結すれば、表面から酸化して化学変化を起こし、異なる酸化物などを生成するからである。焼結後、冷却して焼結体を得る。
以上にプレス後に焼結する工程の例を示したが、混合粉末をカーボン型内に詰め、温度を1400〜2100℃まで上げた状態で1〜30MPaの圧力にて加圧して焼結体を得るホットプレス法でも焼結体を得ることができる。
また、カプセルHIP(熱間静水圧プレス)法によっても製造可能である。カプセルHIPを行なう場合は、チタンなどのカプセルに金属化合物の粉末を詰め、蓋をしてカプセル内を脱気したうえで、50〜200MPa、1400〜1700℃程度の温度でHIP焼結することにより得られる。
得られた焼結体に必要であれば機械加工、電気加工で所望の形状とする。電極全体を以上に説明した材料で形成する場合はこれで完成となる。
一方、前記材料で電極のチップ部を製造する場合は、この後にシャンク部との接合が必要となる。
シャンク部は前述のように主に金属材料で形成するが、チップ部との一体化には大きく分けて2つの手段がある。
一つはチップ部とシャンク部をそれぞれ製造した後に、両者を接合する方法である。この方法として代表的なのはロウ付けによる接合である。ロウ材は活性ロウ材を使用するために、低酸素分圧下で行う炉中ロウ付けが適している。活性ロウ材を使用することで、Wの含有量が少ない焼結体であっても、シャンク部と接合することが可能である。
もう一つは、埋設固着(または鋳ぐるみ、鋳づつみと呼ばれることもある)による一体化である。埋設固着とは、チップ部と低融点の金属(シャンク材料を指す)とを昇温し、溶融した低融点の金属がチップ部表面の一部または全部と接触した状態とし、そのまま降温してチップ部と固化した低融点金属を一体化する方法である。固化した低融点金属の部分に必要な加工を加え、所望の形状とした部分がシャンク部となる。
いずれかの方法にてチップ部とシャンク部とを一体化した後、仕上げ加工をして完成する。
得られた抵抗溶接用電極を実際に使用した結果を、以下の実施例にて詳細に評価する。
(実施例1)スポット溶接用電極に使用した実施例
板厚0.7mmの2枚のアルミニウム板をワーク3とし、溶接面およびチップ部1の直径が6mm、シャンク部2の直径が16mmのF形(フラット形)電極20で、下記の試料1に記載した電極である。
試料1の電極20にて、表1に示す条件で連続打点の溶接を行った。そして、形成されたナゲット径(4の径)を測定し、ナゲット径が3.3mmを下回るものを溶接不良として、電極寿命を求めた。また、ワークの溶接表面の面荒れが大きくなった場合も同様に寿命とした。
試料1:
チップの材質:W 30体積%、TiN 70体積%(成形プレス圧150MPa、焼結温度2000℃、焼結雰囲気 Arガス)
シャンクの材質:純銅(C1020)
チップとシャンクの接合方法:950℃、Ar雰囲気にて埋設固着
Figure 2015013307
溶接を始めて5万ショットを過ぎた時点でワーク溶接面に面あれが生じ始めたために、試験を終了した。調査した全てのワークのナゲット径は3.3mmを超えていた。
次に、表2および表3に示すように、チップの材質を様々変更した電極についても同様の試験を行った。
それぞれのチップ材質について試料1と同様の試験を行った結果を合せて表4および表5に示す。
また、比較としてWのみで製作したチップ材を用いたものを*比較試料No.101、W96体積%−4体積%TiNで作製したチップ材を用いたものを*比較試料No.102とする。
Figure 2015013307
表1中で「*」のつく試料は、本発明の範囲外の比較試料である
Figure 2015013307
試験の結果より以下のことが分かった。
まず、いずれの試料を用いた場合も、寿命と判断した時点でのナゲット径は3.3mmを確保していた。
公知の抵抗溶接用電極であるタングステン電極*比較試料No.101は500ショットの時点で早くもワークとの溶着が発生し、再研磨が必要となった。
本発明の範囲である試料No.1〜8は従来のタングステン電極と比較すると、いずれも大幅に寿命を伸ばすことができた。その中でも、タングステンが20〜80体積%、残部がTiNの試料(試料No.1、3〜6)は特に寿命が長く、50000ショット終了時点で電極の大きな割れや、ワークとの大きな溶着がなく、正常に溶接を行なうことができた。
一方、W量を4体積%としたチップ*比較試料No.102は、早期に電極に大きな割れが発生し、ナゲット形成が出来なくなった。これは、タングステンの含有量が十分でないために、チップ部の靱性が本発明の電極に対して劣り、衝撃により容易に破壊したためだと考える。
本発明の範囲内の使用である試料No.7、8のチップ部は、比較的タングステンの含有率が低い試料であり、従来材よりも明らかに寿命が優れている一方で、割れにより寿命を迎えた。
逆に、タングステン含有量の比較的大きな試料No.2については、大きな溶着が起こることで寿命を迎えた。
これらの結果は、いずれもタングステンとTiNの特徴を反映していた。
また、試料No.21〜29は、金属化合成分としてTiNに替えて周期律表の4a〜6a族金属元素の炭化物、窒化物、ホウ化物の1種または2種以上を用いた試料である。これらの試料も、試料1〜8とほぼ同様の特性を有していた。
本発明の試料は、いずれも焼結体でできているために、再研磨を行なった後に再使用可能であった。
(実施例2)シーム溶接用電極に使用した実施例
角状の板厚1mmの2枚のメッキ鋼板(メッキ層:亜鉛、マグネシウム合金)をワーク3とし、2枚を重ね、重ねた面の一部に直線的にシーム溶接を行なった。溶接条件は表4に示したとおりである。
溶接電極30は先端幅が6mm、全体幅が20mmのCF形(円錐台形)電極であり、外径が260mmの電極2枚の外径平端部で、前記重ねた面を加圧しながら通電した。
電極30の材質は以下のものを用い、これを試料No.51とした。
試料No.51
電極材質:W 50体積%、WC 20体積%、TiB 30体積%(成形プレス圧100MPa、焼結温度1900℃、焼結雰囲気 Hガス)
Figure 2015013307
試料51の電極にて、溶接距離100mごとに溶接部の横断面観察を行って電極寿命を判断した。電極輪・幅方向のナゲット幅(4の幅)を測定し、形成されたナゲット径が3.3mmを下回るものを溶接不良として、電極寿命を求めた。また、電極についても観察し、大きな割れやワークとの溶着が大きく、溶接面に荒れが生じる場合はそこで寿命とした。同様に、電極に割れや欠けが生じ、溶接面に凹凸が生じる場合もそこで寿命とした。
試料51の電極は、1000mまで良好にシーム溶接を行なえることがわかった。この良好というのは、ナゲット径が十分であり、電極に大きな欠けが無く、電極とワークとの溶着が小さく接合面が荒れていないことである。
次に、電極の材質のみを表5および表6に示す材質に変更し、試料No.51と同様の試験を行った。
Figure 2015013307
表5中の「*」のついた試料は、本発明の範囲外の比較試料である
Figure 2015013307
試験の結果より以下のことが分かった。
公知の抵抗溶接用電極であるタングステン電極(*比較試料No.151)は100mの時点で早くもワークとの溶着が発生し、再研磨が必要となった。
本発明の範囲である試料No.52〜60は公知のタングステン電極と比較すると、いずれも大幅に寿命を伸ばすことができた。その中でも、タングステンが30〜70体積%、残部がWCおよびTiBの試料(試料No.51、54〜57)は特に寿命が長く、1000m終了時点で電極の大きな割れや、ワークとの大きな溶着がなく、正常に溶接を行なうことができた。
一方、Wが4体積%の試料であるチップ*比較試料No.152は、早期に電極の角部に大きな割れが発生し、ナゲット形成が出来なくなった。これは、タングステンの含有量が少ないために、チップ部の靱性が本発明の電極に対して劣り、衝撃により破壊したためだと考える。
本発明の範囲内の使用である試料No.58〜60のチップ部は、比較的タングステンの含有率が低い試料であり、従来材よりも明らかに寿命が優れている一方で、割れにより寿命を迎えた。
逆に、タングステン含有量の比較的大きな試料No.52、53については、大きな溶着が起こることで寿命を迎えた。
これらの結果は、いずれもタングステンとTiBの特徴を反映していた。
また、試料No.61〜69は、金属化合成分としてTiBに替えて周期律表の4a〜6a族金属元素の炭化物、窒化物、ホウ化物の1種または2種以上を用いた試料である。これらの試料も、試料51〜58とほぼ同様の特性を有していた。
本発明の試料は、いずれも焼結体でできているために、再研磨を行なった後に再使用可能であった。
10 抵抗溶接用電極
20 F形抵抗溶接用電極
30 シーム溶接用電極
1 チップ部
2 シャンク部
3 板状の被用接材
4 ナゲット(被溶接材が互いに溶着した部分)
矢印 抵抗溶接用電極の回転方向および進行方向

Claims (3)

  1. 少なくとも被溶接材と接触する部分が
    5〜95体積%のタングステンと、
    5〜95体積%の周期律表の4a〜6a族金属の炭化物、窒化物、ホウ化物のいずれか1種または2種以上の混合物または相互の固溶体からなる金属化合物成分
    とを有し、
    前記タングステンと前記金属化合物成分が合せて95体積%以上を占める焼結体からなる
    抵抗溶接用電極。
  2. アルミニウム、銅、マグネシウム、チタン、真鍮、メッキ鋼板のいずれかの抵抗溶接に使用する請求項1に記載の抵抗溶接用電極の使用方法。
  3. 抵抗溶接用電極として請求項1に記載の抵抗溶接用電極と、
    溶接に必要な電流を付与する電源装置とを備えた抵抗溶接装置。
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