JP2015012852A - 微細藻類バイオマスを原料とするバイオ燃料の製造方法 - Google Patents

微細藻類バイオマスを原料とするバイオ燃料の製造方法 Download PDF

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一章 仁宮
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浩 東
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繁春 守屋
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Abstract

【課題】非食料系植物バイオマスである微細藻類から少ない工程でバイオ燃料を効率的に製造する方法を開発し、提供する。
【解決手段】セルラーゼを発現することのできるトランスジェニックテトラヒメナからなる微生物触媒を用いて、僅かな工程で微細藻類からバイオ燃料を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、非食料系植物バイオマスからバイオ燃料を製造するための微生物触媒及びそれを用いたバイオ燃料の製造方法に関する。
新興国における産業の発達や生活水準の向上等により国際的な石油消費量が急速に増加しており、化石燃料の枯渇問題が懸念されている。また、化石燃料の燃焼に伴い大気中に排出される二酸化炭素の増加は、地球温暖化を進行させ、地球規模での大きな問題となっている。
それ故、近年は、化石燃料代替エネルギー資源としてバイオマスエネルギーが注目を集めている。植物の光合成に基づくバイオマスは、再生可能資源であり、化石燃料のような枯渇問題が生じないという利点がある。また、バイオマスエネルギーは、燃焼に伴い発生する二酸化炭素が元々光合成によって固定化された大気中の二酸化炭素に起因することから、カーボンニュートラルな循環エネルギーであり、地球温暖化防止にも寄与し得る。
上記のような理由から、地球上に豊富に存在する植物バイオマスを利用して、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオガス等のバイオ燃料を生産する動きが世界各国で活発化している。
しかし、バイオマスを利用したバイオ燃料製造には、解決すべき問題も多い。例えば、バイオエタノールやバイオディーゼルの原料には、製造プロセスが比較的少なく、生産コストを低く抑えることが可能なトウモロコシ、ダイズ、サトウキビ等が多く利用されている。ところが、これらは食料系植物バイオマスであることから食料との競合問題が発生し、国際レベルでの穀物の価格高騰を招いている。また、耕作地の拡大に伴う、環境破壊も大きな問題となっている。
そこで、食料との競合関係にない非食料系植物バイオマスが新たなバイオマスとして期待されている。リグノセルロース系バイオマスや微細藻類バイオマスは、その例として挙げられる。
リグノセルロース系バイオマスは、植物の木質部を構成することから木質系バイオマスとも呼ばれ、地上で最も豊富に存在するバイオマスであり、その潜在的な利用価値は高い。しかし、リグノセルロース系バイオマスを利用したバイオ燃料の製造には変換収率と製造コストの点で大きな問題がある。リグノセルロースは化学的に非常に安定なセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを主要成分としているため、糖化処理が容易ではない。必然的に製造工程も多くなり、また、バイオ燃料の製造までに多量のエネルギーを必要とするため、製造コストに見合う変換収率を得ることが難しい。
一方、微細藻類バイオマスは、リグノセルロース系バイオマスに比べて、リグニン含量が少ないことや増殖による再生が容易で大量培養が可能という利点がある。微細藻類バイオマスを効率的にバイオ燃料に変換するためには、微細藻類が含むセルロースの糖化処理を行う必要がある。例えば、特許文献1では、緑藻綱藻類であるホソジュズモを基質原料として、ホソジュズモが含むセルロースをセルラーゼ及びβ-1,4-グルコシダーゼで糖化してグルコースとし、そのグルコースを発酵してエタノールを製造する方法を開示している。しかし、この製造方法も発酵工程の前に、セルラーゼによる処理やβ-1,4-グルコシダーゼによる処理等の糖化工程が必須であることから、製造プロセスは煩雑であり、製造コストの抑制も十分とは言い難い。
それ故、化石燃料代替エネルギー資源としてバイオマスエネルギーをより有効に活用するために、バイオマスからバイオ燃料を少ない工程で、大量かつ低コストで製造できる技術が求められている。
特許4654362
本発明は、非食料系植物バイオマスである微細藻類から少ない工程でバイオ燃料を効率的に製造する方法を開発し、提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、繊毛虫の一種であるテトラヒメナ(Tetrahymena)に着目した。テトラヒメナは、細胞口を有することから、高分子基質を細胞内に取り込むことが可能な上に、様々な生物種に由来するタンパク質を発現することが可能である。そこで、鋭意研究を重ねた結果、テトラヒメナの細胞内にシロアリ共生べん毛虫由来のセルラーゼ遺伝子を導入し、それを発現させることによって、少ない工程で微細藻類であるクロレラ(Chlorella)を完全に資化し、エタノールや有機酸をはじめとするバイオ燃料を効率的に製造する方法の開発に成功した。本発明は、当該開発結果に基づくものであって、以下を提供する。
(1)セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片をコードする核酸を発現可能な状態で含むトランスジェニックテトラヒメナを含む、微細藻類を基質としてバイオ燃料を製造するための微生物触媒。
(2)前記セルラーゼがシロアリ目(Isoptera)昆虫又はキゴキブリ属(Cryptocercus)昆虫由来又は当該昆虫の消化管内共生べん毛虫由来である、(1)に記載の微生物触媒。
(3)前記セルラーゼのアミノ酸配列が配列番号1、4又は6で示される、(1)又は(2)に記載の微生物触媒。
(4)前記セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片がN末端にシグナルペプチドを含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の微生物触媒。
(5)前記微細藻類がクロレラである、(1)〜(4)のいずれかに記載の微生物触媒。
(6)前記バイオ燃料がエタノール及び/又は有機酸である、(1)〜(5)のいずれかに記載の微生物触媒。
(7)セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片をコードする核酸を発現可能な状態で含むトランスジェニックテトラヒメナを微細藻類の存在下で培養する工程を含むバイオ燃料の製造方法。
(8)前記培養工程を嫌気的環境下で行う、(7)に記載の製造方法。
(9)前記セルラーゼがシロアリ目昆虫又はキゴキブリ属昆虫由来又は当該昆虫の消化管内共生べん毛虫由来である、(7)又は(8)に記載の製造方法。
(10)前記セルラーゼのアミノ酸配列が配列番号1、4又は6で示される、(9)に記載の製造方法。
(11)前記セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片がN末端にシグナルペプチドを含む、(7)〜(10)のいずれかに記載の製造方法。
(12)前記微細藻類がクロレラである、(7)〜(11)のいずれかに記載の製造方法。
(13)前記バイオ燃料がエタノール及び/又は有機酸である、(7)〜(12)のいずれかに記載の製造方法。
本発明の微生物触媒によれば、微細藻類をバイオ燃料に直接変換することができる。
本発明のバイオ燃料の製造方法によれば、簡便かつ少ない工程で非食料系の微細藻類バイオマスから効率的にバイオ燃料を製造することができる。
セルラーゼ発現性テトラヒメナ又はセルラーゼ非発現性テトラヒメナの共存下におけるクロレラ細胞数の経時的変化を示す図である。aはクロレラのみの溶液、bはテトラヒメナのみの溶液、cはクロレラとテトラヒメナの混合溶液におけるクロレラ細胞数である。 クロレラとの共存下におけるセルラーゼ発現性テトラヒメナ又はセルラーゼ非発現性テトラヒメナのテトラヒメナ細胞数の経時的変化を示す図である。dはクロレラのみの溶液、eはテトラヒメナのみの溶液、fはクロレラとテトラヒメナの混合溶液におけるテトラヒメナの細胞数である。 セルラーゼによるクロレラの分解を示す図である。aはクロレラの細胞数の培養による経時的変化を、またbは排出クロレラの細胞数の培養による経時的変化を示す。 実施例4における培養液中のクロレラの細胞数を示す。aは好気培養、bは嫌気培養の結果である。 実施例4における培養液中のテトラヒメナの細胞数を示す。aは好気培養、bは嫌気培養の結果である。 実施例4における培養液中のエタノールの濃度を示す。aは好気培養、bは嫌気培養の結果である。
1.微生物触媒
1−1.概要及び定義
本発明の第1の態様は微生物触媒に関する。本態様の微生物触媒は、微細藻類を基質としてバイオ燃料を製造するための触媒として機能する。本態様の微生物触媒によれば、大量培養が容易な非食料系バイオマスをバイオ燃料に直接変換することができる。それ故、少ない工程で非食料系バイオマスからバイオ燃料を製造することができる。
本明細書において「微生物触媒」とは、微生物細胞内で生合成された酵素やその微生物自身の資化能力によって、微生物体そのものが触媒として機能し、基質を特定の物質に変換することのできる微生物をいう。本態様の微生物触媒は、微細藻類を基質として、バイオ燃料に変換することのできるトランスジェニックテトラヒメナが該当する。
本明細書において「バイオ燃料」とは、再生可能な非枯渇性資源であるバイオマス(生物資源)を原料として製造される燃料をいう。通常は、エタノール(バイオエタノール)のようなアルコール類、バイオディーゼル、メタンガスのようなバイオガス、フルフラール(フルフルアルデヒド)が該当するが、本明細書では、さらにギ酸、酢酸、クエン酸、及びシュウ酸のような有機酸も包含する。特に好適なバイオ燃料は、エタノールである。
1−2.構成
本態様の微生物触媒は、トランスジェニックテトラヒメナからなり、微細藻類を基質としてバイオ燃料を製造するために使用される。
(1)トランスジェニックテトラヒメナ
本明細書においてトランスジェニックテトラヒメナは、前述のように本態様の微生物触媒本体を構成する。「テトラヒメナ」とは、繊毛虫テトラヒメナ科(Tetrahymenidae)に属する水中生息性単細胞真核生物をいう。具体的には、テトラヒメナ属(Tetrahymena)に属する種、例えばT. thermophila、T. pyrifomis、T. americanis、T. australis、T. borealis、T. canadensis、T. capricornis、T. cosmopolitanis、T. elliotti、T. furgasoni、T. hegewschi、T. hyperangularis、T. limacis、T. lwoffi、T. nipissingi、T. patula、T. pigmentosa、T. rostrata、T. setifera、T. setosa、T. sonneborni、T. tropicalis及びT. vorax、ランボルネラ属(Lambornella)に属する種、例えばL. clarki、及びデルトピルム属(Deltopylum)に属する種、例えばD. rhabdoidesが知られているが、本明細書におけるテトラヒメナはいずれの種であってもよい。テトラヒメナは、世代時間が約2〜3時間と短く、15〜41℃の温度範囲で増殖でき、単純で安価な栄養条件下でも培養が可能な上に、高密度でも大量培養が容易という利点を有する。さらに、大腸菌や酵母よりもタンパク質のフォールディング能が高い。それ故に、大腸菌や酵母で発現しない、又は発現させても不活性となるタンパク質であっても活性化状態で発現することができる。また、テトラヒメナは、嫌気的条件下では酵母と同様に嫌気呼吸により糖を代謝してエタノールや酢酸等の有機酸を産生することができる。
本明細書において「トランスジェニックテトラヒメナ」とは、前記テトラヒメナの形質転換体をいう。テトラヒメナは、分子遺伝学的技法が確立されており、遺伝子導入が容易である。本態様のトランスジェニックテトラヒメナは、セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片をコードする核酸を発現可能な状態で含む形質転換体で、本態様の微生物触媒として機能する。
本明細書において「セルラーゼ」とは、セルロースのβ-1,4-グルカン又はβ-D-グルコシド結合を加水分解して、セロオリゴ糖、セロビオース及びβ-D-グルコースを生成する酵素の総称をいう。その作用形式によりエンドグルカナーゼ(EG;EC3.2.1.4)、エキソグルカナーゼ(セロビオハイドラーゼ;CBH;EC3.2.1.91)、及びβ-グルコシダーゼ(β-D-グルコシドグルハイドラーゼ;BG;EC3.2.1.21)の3型が知られている。エンドグルカナーゼは、主としてセルロース繊維の非結晶部分に作用してセルロース糖鎖の内部を切断し、エキソグルカナーゼは、結晶性セルロースに作用してセルロース糖鎖の末端を分解し、セロビオースを産生する。一方、β-グルコシダーゼは、エンドグルカナーゼ及び/又はエキソグルカナーゼの作用によって生じたセロビオース及び/又はセロオリゴ糖等から最終産物であるβ-D-グルコースを遊離させる。本明細書におけるトランスジェニックテトラヒメナは、いずれの型のセルラーゼを含んでいてもよいが、好ましくは最終産物であるβ-D-グルコースを遊離することのできるβ-グルコシダーゼタイプのエンドグルカナーゼ、例えば、Glycosyl hydrolase family7のエンドグルカナーゼである。
本明細書のセルラーゼは、セルロースのβ-1,4-グルカン又はβ-D-グルコシド結合を加水分解する活性を保持する限りにおいて、野生型セルラーゼのみならず変異型セルラーゼを含む。ここで「野生型セルラーゼ」とは、本来のセルラーゼの機能を有し、同一種の対立遺伝子(アレル:allele)群において、通常、自然界に最も多く存在するセルラーゼ遺伝子にコードされたセルラーゼである。一方、「変異型セルラーゼ」とは、野生型セルラーゼのアミノ酸配列において、1又は複数個、あるいは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドをいう。また、野生型セルラーゼのアミノ酸配列において、1又は複数個、あるいは数個のアミノ酸がメチル化される等の修飾を受け、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドも包含される。ここで「複数個」とは、2〜20個、2〜15個、2〜10個、2〜7個、2〜2個のアミノ酸をいう。野生型セルラーゼのアミノ酸配列において置換されるアミノ酸は、保存的アミノ酸であることが好ましい。さらに、変異型セルラーゼは、野生型セルラーゼのアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より一層好ましくは99%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドであってもよい。ここで「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの野生型セルラーゼのアミノ酸配列の全アミノ酸残基数に対する変異型セルラーゼのアミノ酸配列中の同一アミノ酸残基数の割合(%)をいう。
本明細書において「その酵素活性を保持するポリペプチド断片」とは、セルロースのβ-1,4-グルカン又はβ-D-グルコシド結合を加水分解する活性を保持する前記セルラーゼの部分断片をいう。ポリペプチド断片のアミノ酸長は特に限定はしない。通常は、セルラーゼ中の機能ドメインを破壊しない状態で包含するポリペプチド断片が好適に用いられる。
野生型テトラヒメナは、内因性のセルラーゼを持たないことから、本明細書におけるトランスジェニックテトラヒメナが含むセルラーゼは、他種生物由来の外因性セルラーゼである。トランスジェニックテトラヒメナが有する核酸にコードされたセルラーゼは、セルロースの加水分解活性を有するものであれば、いずれの生物種由来であってもよい。例えば、真正細菌、真菌(例えば、酵母、糸状菌)、粘菌、原生動物、線虫又は昆虫等のいずれの生物由来のセルラーゼを利用することができる。セルラーゼを有する真正細菌の例として、アクチノマイセス属(Actinomyces)、バチルス属(Bacillus)、シュードモナス属(Pseudomonas)の細菌が挙げられる。またセルラーゼを有する真菌の例として、トリコデルマ属(Trichoderma)、アスペルギルス属(Aspergillus)、ペニシリウム属(Penicillium)、フザリウム属(Fuzarium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)等が挙げられる。さらにセルラーゼを有する粘菌の例として、タマホコリカビ属(Dictyostelium)等が、原生動物の例として、べん毛虫が、また線虫の例として、ブルサフェレンクス属(Bursaphelenchus)等が挙げられる。そして、セルラーゼを有する昆虫の例として、シロアリ目(Isoptera)、カミキリムシ科(Cerambycidae)及びハムシ科(Chrysomelidae)等が挙げられる。
上記セルラーゼの中で、シロアリ目昆虫又はキゴキブリ属(Cryptocercus)昆虫の消化管内に共生するべん毛虫由来のセルラーゼは、他の生物種由来のセルラーゼよりも比活性が高いことから特に好ましい。シロアリ目昆虫又はキゴキブリ属昆虫の消化管内共生べん毛虫に由来するセルラーゼ遺伝子は、通常、細菌や酵母等の宿主では発現できない。しかし、テトラヒメナは、前述のようなタンパク質の高いフォールディング能を有することから、消化管内共生べん毛虫由来のセルラーゼを活性状態で発現することができる。消化管内共生べん毛虫を保有するシロアリ目昆虫は、シロアリ科(Termitinae)を除いた、下等シロアリと総称される6科、すなわちムカシシロアリ科(Mastotermitinae)、レイビシロアリ科(Kalotermitinae)、オオシロアリ科(Termopsinae)、シュウカクシロアリ科(Hodotermitinae)、ミゾガシラシロアリ科(Thinotermitinae)、ノコギリシロアリ科(Serritermitinae)に属する種をいう。なお、近年では、分類学的にシロアリ目をゴキブリ目(Blattaria)に包含させる学説があるが、本明細書では従来の分類法に従った。前記シロアリ目昆虫又はキゴキブリ属昆虫の消化管内共生べん毛虫には、例えば、オキシモナス目(Oxymonadida)、トリコモナス目(Trichomonadida)、クリスタモナス目(Crystamonadida)、及びトリコニンファ目(Trychonymphida)に属する種が挙げられる。なお、上記消化管内共生べん毛虫由来のセルラーゼについては、そのセルラーゼの由来する共生べん毛虫の種類が必ずしも同定されている必要はない。また、共生べん毛虫由来のセルラーゼの単離に際して、各共生べん毛虫を単離、培養する必要もない。なぜなら、例えば、上記昆虫の消化管内細菌叢から、セルラーゼ遺伝子をメタゲノム的に単離できれば、共生べん毛虫が未同定で、単離、培養できなくても共生べん毛虫由来のセルラーゼは入手可能で、目的を達し得るからである。
前記セルラーゼの具体例として、配列番号1のアミノ酸配列で示される前記オオシロアリ科のオオシロアリ(Hodotermopsis sjostedti)の共生べん毛虫由来のエンドグルカナーゼ、配列番号4又は6のアミノ酸配列で示される前記ミゾガシラシロアリ科のヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)の唾液腺由来のエンドグルカナーゼが挙げられる。
本態様のトランスジェニックテトラヒメナは、前記セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片をコードする核酸を発現可能な状態で含む。
本明細書において「核酸」とは、主としてDNA及び/又はRNAのような天然型核酸をいうが、人工的に化学修飾又は構築された核酸又は核酸類似体を含むこともできる。また、核酸は、必要に応じて、リン酸基、糖及び/又は塩基が核酸用標識物質で標識されていてもよい。
本明細書において「セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片をコードする核酸」とは、例えば、野生型セルラーゼ遺伝子若しくは変異型セルラーゼ遺伝子、又はそれらの遺伝子断片であって、酵素活性を保持するポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドをいう。
「野生型セルラーゼ遺伝子」とは、前述の野生型セルラーゼをコードする核酸である。例えば、前述の配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるエンドグルカナーゼをコードする配列番号2で示される塩基配列からなるエンドグルカナーゼ遺伝子、又はその塩基配列をテトラヒメナのコドンに最適化した配列番号3で示されるクローンNT0285A-72のエンドグルカナーゼ遺伝子、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるエンドグルカナーゼをコードする配列番号5で示される塩基配列からなるエンドグルカナーゼ遺伝子、及び配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるエンドグルカナーゼをコードする配列番号7で示される塩基配列からなるエンドグルカナーゼ遺伝子が挙げられる。
本明細書において「変異型セルラーゼ遺伝子」とは、前述の変異型セルラーゼをコードする核酸である。あるいは、変異型セルラーゼ遺伝子には、例えば、それぞれの野生型セルラーゼ遺伝子の塩基配列において1個又は複数個、あるいは数個のヌクレオチドが欠失、置換又は付加されたもの、前記塩基配列と70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の塩基同一性を有するもの、又は野生型セルラーゼ遺伝子の部分塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするセルラーゼの酵素活性を保持するポリペプチドをコードする核酸が含まれる。ここで前記「塩基同一性」とは、二つの塩基配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者の塩基一致度が最も高くなるようにしたときの野生型セルラーゼ遺伝子の塩基配列の全塩基数に対する変異型セルラーゼ遺伝子の塩基配列中の同一塩基数の割合(%)をいう。「複数個のヌクレオチド」とは、2〜30個、2〜14個、2〜10個、2〜8個、2〜6個、又は2〜5個のヌクレオチドをいう。また、「ストリンジェントな条件」とは、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味する。高ストリンジェントな条件が好ましい。高ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1% SDSで洗浄する条件である。変異型セルラーゼ遺伝子の具体例としては、SNP(一塩基多型)等の多型に基づく変異体が挙げられる。
前記セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片をコードする核酸を本明細書では、便宜的に、以下「セルラーゼ遺伝子等」とする。
本明細書で「発現可能な状態」とは、テトラヒメナの細胞内で外因性のセルラーゼ遺伝子等が発現可能な状態で遺伝子発現ベクター内に挿入されていることを意味する。
「遺伝子発現ベクター」とは、内包する遺伝子又はその断片を発現することのできる一つの発現系単位をいう。「発現可能な状態で遺伝子発現ベクター内に挿入されている」とは、遺伝子発現ベクター内のプロモーターとターミネーターの制御下に配置されていることをいう。したがって、遺伝子発現ベクターは、セルラーゼ遺伝子等の他にも必須エレメントとして少なくともプロモーター及びターミネーターを有している。
前記遺伝子発現ベクターに含まれるプロモーターは、テトラヒメナ細胞内で作動可能なプロモーターであれば、その種類は特に限定はしない。当該分野で公知のプロモーターを用いればよい。プロモーターには、その発現制御の性質により過剰発現型プロモーター、構成的プロモーター、部位特異的プロモーター、段階特異的プロモーター、又は誘導性プロモーター等が知られている。遺伝子発現ベクターの包含されるプロモーターをいずれのプロモーターにするかは、必要に応じて適宜選択すればよい。好ましくは、過剰発現型プロモーター、構成的プロモーター又は両者の性質を有するプロモーターである。遺伝子発現ベクターにおいて、プロモーターは、前記セルラーゼ遺伝子等の開始コドンよりも上流の5’側に配置される。遺伝子発現ベクターで使用可能なプロモーターの具体例としては、システインプロテアーゼプロモーター、metallothionein(MTT)1プロモーター、及びMTT2プロモーターが挙げられる。
前記遺伝子発現ベクターに含まれるターミネーターは、テトラヒメナ細胞内で前記プロモーターにより転写された遺伝子の転写終結機能を有するターミネーターであれば、その種類は特に限定はしない。好ましくは前記プロモーターと同一生物種由来のターミネーターであり、より好ましくはプロモーターが由来する生物種のゲノム上の発現単位において、そのプロモーターと組となっているターミネーターである。遺伝子発現ベクターにおいて、ターミネーターは、前記遺伝子の終止コドンよりも下流の3’側に配置される。
前記タンパク質を組換え細菌内で安定的に発現させるため、遺伝子発現ベクターを同菌体内に導入することができる。又は、相同性組換えを介して同菌のゲノム内に挿入してもよい。遺伝子発現ベクターを使用する場合、ベクターには、プラスミド等を使用することができる。ベクターは、本発明の組換え細菌内で複製可能であり、また菌体内で安定的に保持される適当な選抜マーカー遺伝子を含むものを用いる。ベクターは、大腸菌等の他の細菌内でも複製可能なシャトルベクターであってもよい。例えば、pKKT427、pBESAF2、pPSAB1等が挙げられる。組換え細菌のゲノム内に挿入する場合、遺伝子のみを組換え細菌のゲノム中に発現可能な状態となるように挿入してもよい。すなわち、組換え細菌の内在性のプロモーターやターミネーターの制御下に遺伝子を挿入してもよい。
前記遺伝子発現ベクターは、他のエレメントを選択的に含むことができる。他のエレメントとしては、例えば、シグナルペプチドコード配列、エンハンサ、ポリA付加シグナル、5'-UTR(非翻訳領域)配列、3'-UTR配列、標識若しくは選抜マーカー遺伝子、マルチクローニング部位、又は複製開始点等が挙げられる。
「シグナルペプチドコード配列」は、シグナルペプチドをコードする塩基配列である。シグナルペプチドは、細胞内で生合成されたタンパク質の細胞外移行に必要なペプチドであって、通常は、N末端側にLysやArgのような正電荷を有するアミノ酸を配し、それに続いてAla、Leu、Val、Ile、Val、及びPheのような疎水性の高いアミノ酸配列を配する構成を有する。前記遺伝子発現ベクターにおいて、シグナルペプチドコード配列は、テトラヒメナの細胞内で発現されたセルラーゼ又はその酵素活性断片を細胞外に分泌させる場合に選択すればよい。シグナルペプチドコード配列がコードするシグナルペプチドのアミノ酸配列は、テトラヒメナで機能し得る公知のあらゆるシグナル配列のアミノ酸配列を利用することができる。例えば、テトラヒメナの細胞外分泌タンパク質の1つであり、配列番号8で示されるシステインプロテアーゼのシグナルペプチドが挙げられる。シグナルペプチドコード配列は、セルラーゼ遺伝子等の5’末に配置してシグナルペプチドとセルラーゼ又はその酵素活性断片が融合タンパク質を形成するように設計すればよい。
「5'-UTR配列、3'-UTR配列」は、遺伝子発現ベクターにおいて、それぞれタンパク質コード領域の5'末端側及び3'末端側に配置される領域である。本態様で使用する遺伝子発現ベクターでは、遺伝子発現ベクターを相同組換え法によって宿主テトラヒメナのゲノム内に組み込むための要素として使用することもできる。UTR配列の由来遺伝子の種類は、限定はしない。相同組換えを目的として遺伝子発現ベクターに加える場合には、宿主テトラヒメナのゲノムにおいて挿入目的の位置に存在する遺伝子由来のUTR配列を用いればよい。
「標識若しくは選抜マーカー遺伝子」としては、例えば、薬剤耐性遺伝子(例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、又はネオマイシン耐性遺伝子)、蛍光又は発光レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニターゼ(GUS)、又はグリーンフルオレッセンスプロテイン(GFP))、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPT II)、ジヒドロ葉酸還元酵素、ブラストサイジンS耐性遺伝子等の酵素遺伝子が挙げられる。
上述した遺伝子発現ベクターは、例えば、Green, MR and Sambrook, J, (2012) Molecular Cloning: A Laboratory Manual Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の方法を参照して構築すればよい。
プラスミド発現ベクターを用いる場合、通常は所望の構成を有する遺伝子発現ベクターに調製した後、線形化(linearized)して、相同組換えによってテトラヒメナのゲノム内に組み込むことで、遺伝子発現ベクターとして機能させることができる。
(2)トランスジェニックテトラヒメナの製造方法
本態様の微生物触媒を構成するトランスジェニックテトラヒメナは、上記遺伝子発現ベクターを宿主であるテトラヒメナの細胞内、好ましくは大核内に導入することによって得ることができる。
遺伝子発現ベクターのテトラヒメナへの導入方法は、テトラヒメナに外因性核酸を導入する可能な方法であれば特に限定はしない。例えば、パーティクルガン法、ヒートショック法、カルシウムイオン法、エレクトロポレーション法が挙げられる。この技術は、当該分野で公知であり、例えば、前述のGreen, MR and Sambrook, J, (2012) Molecular Cloningに記載の方法を参照すればよい。
なお、上記のように相同組換え法によりテトラヒメナの細胞内遺伝子発現ベクターをテトラヒメナのゲノム内に組み込んでセルラーゼ遺伝子等をトランスジェニックテトラヒメナ細胞内で安定的に発現させる他にも相同組換え法等を用いて、セルラーゼ遺伝子等そのものをテトラヒメナのゲノム中に発現可能な状態となるように挿入してもよい。すなわち、テトラヒメナの内因性プロモーターやターミネーターの制御下にセルラーゼ遺伝子等を挿入するようにして安定的に発現させることもできる。
(3)微細藻類
微細藻類は、微生物触媒であるトランスジェニックテトラヒメナの基質を構成する。本明細書において「微細藻類」(microalgae)とは、葉緑素を有し、光合成によって大気中の二酸化炭素を固定化することのできる、緑藻綱に属する単細胞植物プランクトンをいう。淡水性、汽水性及び海水性を含む多数の種類が知られるが、本明細書においては特に限定はしない。ただし、テトラヒメナの多くは淡水性のため淡水性テトラヒメナを微細藻類存在下で培養することを考慮すれば原則として淡水性若しくは汽水性の種が好ましい。具体的な例としては、クロレラ(Chlorella)、スピルリナ(Spirulina)、アルスロスピラ(Arthrospira)、ディナリエラ(Dunaliella)、ユーグレナ(Euglenophyceae)、ホシミドロ(Charophyceae)等が挙げられる。光合成能や増殖力が高く、単純で安価な栄養条件下でも培養が容易で、毒素を産生せず安全性の高い微細藻類は、本態様における微細藻類として好ましく、中でもクロレラは特に好適である。
また微細藻類には、他生物と共生関係を有する種が存在する。例えば、繊毛虫(例えば、Paramecium bursaria:ミドリゾウムシやStentor sp.:ミドリラッパムシ)やアメーバ(例えば、Mayorella sp.:ミドリアメーバ)、及びヒドラ(例えば、Hydra viridisミドリヒドラ)の細胞内に共生するクロレラが挙げられる。これらの細胞内共生性微細藻類も本発明の微細藻類として好適である。
1−3.効果
本態様によれば、安価な栄養条件下で大量培養が可能で、大気中の二酸化炭素の固定化でき、かつ非食料系バイオマスである微細藻類を基質として、少ない工程で効率的にバイオ燃料に変換することのできる微生物触媒を提供することができる。
2.バイオ燃料製造方法
2−1.概要
本発明の第2の態様はバイオ燃料製造方法に関する。本態様の製造方法では、前記第1態様に記載の微生物触媒を構成するトランスジェニックテトラヒメナを触媒として、低コストで大量に培養可能な非食料系バイオマスである微細藻類を効率的に資化することによって、少ない工程でバイオ燃料を製造することができる。
2−2.製造方法
本発明のバイオ燃料製造方法は、培養工程を必須工程として、また微細藻類抽出工程を選択工程として含む。以下、各工程について説明をする。
(培養工程)
「培養工程」は、トランスジェニックテトラヒメナを微細藻類の存在下で培養する工程である。本工程で使用するトランスジェニックテトラヒメナは、前記第1態様に記載の微生物触媒を構成するトランスジェニックテトラヒメナである。また、本工程において基質として使用される微細藻類も第1態様に記載の微細藻類である。トランスジェニックテトラヒメナと微細藻類については、前述した通りであることから、ここではその具体的な説明を省略し、本工程に特有の構成のみについて説明をする。
本工程は、同一溶液内でトランスジェニックテトラヒメナと微細藻類を存在させた状態で培養する方法であれば、いずれの方法であってもよく、特に限定はしない。例えば、トランスジェニックテトラヒメナと微細藻類のそれぞれの培養液又は懸濁液を混合して培養する方法が挙げられる。
それぞれの培養液を混合する場合、テトラヒメナと微細藻類の培養液は、それぞれ当該分野で公知の方法によって、培養した培養液を用いればよい。トランスジェニックテトラヒメナの培養液は、例えば、YPD培地(Yeast extract 20 g/L, Proteose peptone 10 g/L, D-glucose 5 g/L)にトランスジェニックテトラヒメナを播種し、30℃にて48時間培養したものを使用すればよい。また、微細藻類がクロレラの場合、クロレラの培養液は、例えば、適当な培地に微細藻類を播種し、25℃にて2週間程度培養したものを使用すればよい。微細藻類の培地は、C培地(Ca(NO3)2・4H2O 150mg/L, KNO3 100mg/L, β-Na2 glycerophosphate・5H2O 50mg/L, MgSO4・7H2O 40mg/L, Vitamin B12 0.1μg/L, Biotin 0.1μg/L, Thiamine HCl 10μg/L, PIV metals 3mL/L, Tris (hydroxymethyl) aminomethane 500mg/L,pH7.5)のように公知の培地を使用してもよいが、微細藻類が増殖可能な溶液であれば、その組成は特に限定はしない。
また、それぞれの懸濁液を混合する場合、懸濁液は、上記それぞれの培養液から回収したテトラヒメナ及び微細藻類を適当なバッファ、例えば、2 mMリン酸緩衝液に懸濁することによって調製できる。
培養液中又は懸濁液中のそれぞれの個体数(細胞数)は、特に制限はしないが、混合後の溶液中において、微細藻類の個体数がトランスジェニックテトラヒメナの個体数の等倍〜1000倍、好ましくは20〜500倍、より好ましくは50〜200倍の範囲となるように調整する。混合する微細藻類は単一種であっても、複数種であっても構わない。例えば、クロレラとスピルリナの混在する微細藻類懸濁液を使用することができる。
また、微細藻類は、乾燥した固体状態(粉末状態を含む)であってもよい。この場合、固体状態の微細藻類を、トランスジェニックテトラヒメナの培養液に直接投与すれば本工程を達成し得る。
トランスジェニックテトラヒメナと微細藻類を十分に混合するために、必要であれば、スターラ―等を用いて溶液を撹拌してもよい。
培養工程では、微細藻類の糖化及びトランスジェニックテトラヒメナの増殖を目的とする場合、好気的環境下で培養を行う。微細藻類の糖化は、トランスジェニックテトラヒメナによる微細藻類の捕食及びトランスジェニックテトラヒメナが産生するセルラーゼによる微細藻類の分解によって達成される。また、トランスジェニックテトラヒメナの増殖は、微細藻類の糖化によって生じたグルコースを資化することで達成される。好気的環境下での培養は、培養液中のトランスジェニックテトラヒメナの増殖が必要な場合等に、必要に応じて行えばよい。
また、テトラヒメナはエタノール等のアルコールを基質として好気的環境下で有機酸を生産することができる。トランスジェニックテトラヒメナを好気的環境下で培養することで、酢酸等の有機酸を生産することもできる。例えば、後述するように、嫌気的環境下でトランスジェニックテトラヒメナを培養して、生じたエタノール等のバイオ燃料を基質として、好気的環境下で再培養することで、増殖に加えて、有機酸を得ることもできる。
好気的環境下で培養する方法は、当該分野で公知の通気培養法を利用することができる。例えば、振とう培養、撹拌培養、又はエアレーション(曝気)培養が挙げられる。本工程の培養温度や培養時間は、特に限定はしないが、テトラヒメナが増殖する上で十分な時間であればよい。例えば、培養液を30℃にて24〜120時間程度培養すればよい。
トランスジェニックテトラヒメナによる微細藻類の資化において、代謝産物として目的のエタノール等のバイオ燃料を生産させる場合、嫌気的環境下で培養を行う。嫌気的環境は、公知の方法を用いて調整すればよい。例えば、窒素(N2)や二酸化炭素(CO2)を通気して、培養容器内を窒素雰囲気下又は二酸化炭素雰囲気下にする方法や、密閉した培養容器に脱酸素剤を入れて容器内の酸素を除去する方法が挙げられる。本工程の培養温度や培養時間は、特に限定はしないが、テトラヒメナが微細藻類を捕食するのに適した温度で、かつ培養液中のテトラヒメナの多くが微細藻類を捕食することのできる十分な時間であればよい。一例として、培養液を30℃にて0.5〜120時間程度培養すればよい。
(微細藻類抽出工程)
「微細藻類抽出工程」は、微細藻類が細胞内共生する宿主生物から微細藻類を抽出する工程である。本工程は、微細藻類が細胞内共生性の場合に、必要に応じて採用される選択工程であって、前記培養工程に先立ち行われる。宿主生物から微細藻類を抽出する方法は、特に限定はしない。一例として、宿主生物の培養液に対して終濃度0.5%になるようにSDS等の界面活性剤を加えて、軽く撹拌し、宿主生物の細胞のみを破砕すればよい。クロレラをはじめとする細胞内共生性の微細藻類の細胞壁は、通常強固であるため、微細藻類は破砕されずに抽出できる。その後、遠心分離により微細藻類を回収し、2 mMリン酸緩衝液等のバッファで5回洗浄すればよい。
2−3.効果
従来法で微生物触媒からバイオ燃料を得る場合、微細藻類をセルラーゼ溶液で処理して微細藻類が含むセルロースを分解した後、グルコシダーゼ溶液で糖化処理を行い、酵母等による発酵工程を経なければならなかった。工程毎に反応槽を変える必要がある等、各工程が非常に煩雑な上に工程数も多く、またバイオマスからのエネルギー(バイオ燃料)変換効率も低かった。一方、本態様のバイオ燃料製造方法によれば、微生物触媒であるセルラーゼを発現可能なトランスジェニックテトラヒメナを基質原料となる微細藻類の存在下で、好気条件下又は嫌気条件下で培養を行うだけで、一反応槽で効率的にバイオ燃料に変換することができる。従来法と比較して、工程数が少なく、各工程も簡便な上にエネルギー変換効率も高いことから、バイオ燃料の製造コストを抑えることもできる。
本態様のバイオ燃料の製造方法によれば、使用する原料が微細藻類であることから、光合成により二酸化炭素を固定化することで大気中の二酸化炭素の削減に寄与し得る。
本態様のバイオ燃料の製造方法で得られるバイオ燃料は、光合成により生産される循環エネルギーに基づくことから、大気中の二酸化炭素量を上昇させることがない。
本態様のバイオ燃料の製造方法で使用する基質原料は、非食料系植物バイオマスの微細藻類であることから、食料系植物バイオマスを原料とするバイオ燃料の製造方法と異なり、食料価格の高騰や耕作地拡大による環境破壊といった、食品経済や環境に対する影響が小さい。
<実施例1:セルラーゼ発現性トランスジェニックテトラヒメナの作製>
(目的)
本発明の微生物触媒における有効成分であるセルラーゼ等をコードする核酸を発現可能な状態で含むトランスジェニックテトラヒメナを作製する。
(材料)
宿主テトラヒメナには、Tetrahymena thermophila CU428株を用いた。このテトラヒメナはNational Tetrahymena Stock Center, located at Cornell Universityより入手した。
(方法)
1.セルラーゼ遺伝子のクローニング
セルラーゼ遺伝子には、オオシロアリ共生べん毛虫由来のエンドグルカナーゼをコードする遺伝子を用いた。詳細には、WO2008/108116に記載の方法に準じたクローニング法によって得られたエンドグルカナーゼ遺伝子の全塩基配列(配列番号2)を決定した後、その配列に基づいてテトラヒメナのコドン使用頻度に最適化した塩基配列(配列番号3)を決定し、そのDNA合成をBioneer社に委託してセルラーゼ遺伝子(NT0285A-72)を得た。
セルラーゼ遺伝子の発現ベクターには、pT7Blue T-Vector(Novagen社)を用いた。
2.セルラーゼ発現ベクターの構築
トランスジェニックテトラヒメナに導入するセルラーゼ発現ベクターを構築した。本実施例では、細胞外分泌性セルラーゼを発現するプラスミドベクターとした。
2−1.システインプロテアーゼ由来のシグナルペプチドのクローニング
テトラヒメナが恒常的に細胞外へ分泌しているシステインプロテアーゼの分泌シグナルをクローニングした。具体的には、テトラヒメナTetrahymena thermophilaのゲノムDNAを鋳型として、フォワードプライマー(配列番号10)及びリバースプライマー(配列番号11)を用いて、システインプロテアーゼ1(TtCyp1)のシグナルペプチド(配列番号8)を含むprepro-peptideのコード領域(配列番号9)、その上流に位置する912bp(配列番号14)の5’-非翻訳領域(5’-UTR)及び下流に位置する約1.2kb(配列番号15)の3’-非翻訳領域(3’-UTR)を含む配列をPCRで増幅した。得られた増幅産物を添付のプロトコルに従ってpT7Blue T-Vector(Novagen)組み込み、クローニングした。このUTRは、相同組み換えによりテトラヒメナのゲノム内に組み込むための配列となる。
2−2.分泌性セルラーゼ発現ベクターの構築
2−1でクローニングしたシステインプロテアーゼ1遺伝子及びその両末端にUTRを含むプラスミドpT7Blue T-TtCyp1をベースとして分泌性セルラーゼ発現ベクターを構築した。
まず、pT7Blue T-TtCyp1から、システインプロテアーゼ1遺伝子の分泌シグナルをコードする配列より下流の領域、すなわち配列番号9における20位のグルタミン(Gln)以降の領域を除去した。前記除去後の領域に5’側から順番にセルラーゼ遺伝子(NT0285A-72)、テトラヒメナのMTT1遺伝子由来のpolyA配列(配列番号12)、及び薬剤耐性遺伝子Neo-cassette配列(ゾウリムシのβ-チューブリン遺伝子のプロモーター配列+ネオマイシン遺伝子+テトラヒメナのMTT1遺伝子のpolyA配列)(配列番号13)を含む核酸断片を挿入した。
3.セルラーゼ発現性トランスジェニックテトラヒメナの調製
3−1.テトラヒメナの調製
YPD培地にテトラヒメナCU428株を播種し、30℃にて48時間培養した。10mLの培養液を10mLの5mM Tris-HCl(pH7.5)に移し、一晩静置した。翌日、10mLの10mM Tris-HCl(pH7.5)で菌体を2回洗い、1mLの10 mM Tris-HCLで再懸濁した。
3−2.マイクロキャリアの調製
パーティクルガン用のマイクロキャリア(金粒子)を調製した。まず、マイクロキャリアとして、約10mgの0.6 Micron Gold(BIO-RAD社)をマイクロチューブに入れ、1mLの70%エタノールを加えて、3分間ボルテックスした後、15分間振とうさせた。遠心後、上清を取り除き、1mLのミリQでマイクロキャリアを3回洗浄し、50%グリセロールを打ち込み回数分×50μLで加えた。
3−3.分泌性セルラーゼ発現ベクターのコーティング
3−2で調製したマイクロキャリアを5分間ボルテックスして均一化した後、50μLを取り、構築した分泌性セルラーゼ発現ベクターを線状化して加えた。さらに50μLの2.5M CaCl2、20μLの0.1M spermidine(HAMPTON RESERCH)を加え、1分間ボルテックスをした後、1分間放置し、マイクロキャリア表面に分泌性セルラーゼ発現ベクターをコーティングした。遠心して上清を除去した後、140μLの70%エタノールを加えて再度遠心し、上清を取り除いた。140μLの100%エタノールを加えて遠心し、再び上清を除去した。最後に10μLの100%エタノールを加えた。
3−4.パーティクルガンによるテトラヒメナへのセルラーゼ発現ベクターの導入
前記2−2で構築した分泌性セルラーゼ発現ベクターの導入は、Biolistic PDS-1000/He Particle Derivery System(BIO-RAD社)を用いて行なった。プラスチックシャーレに1.5×1.5cmにカットした滅菌済ろ紙を置き、その上に3−1で調製したテトラヒメナ懸濁液を50μL載せた。サンプル(テトラヒメナ)とパーティクルガンの銃口の距離が6cmになるようにセットし、3−3で調製した分泌性セルラーゼ発現ベクターでコーティングしたマイクロキャリアを1100psiで打ち込んだ。打ち込み後すぐに1mLの10mM Tris-HCl(pH7.5)を加えて6時間静置した。
3−5.スクリーニング
6時間後、1mLの細胞懸濁液に対して、抗生物質(250μg/mL ampicillin、50U/mL penicillin、50μg/mL streptomycin、5μg/mL aureobasidin A)含むYPD培地1mLを加えた。さらに、パロモマイシンを初期濃度25μg/mLになるように加え、30℃にて培養した。培養後、ある程度細胞数が増え始めてからテトラヒメナを96穴プレートに8サンプルに分注し、スクリーニングを行った。パロモマイシンは、8サンプルに対して25、50、100、200、500、1000、2000、及び3000μg/mLで添加した。
(結果)
パロモマイシン耐性細胞を目的のセルラーゼ発現性トランスジェニックテトラヒメナとして単離した。ここで得られたセルラーゼ発現性トランスジェニックテトラヒメナは、本発明の微生物触媒の有効成分となり得る。本明細書では、本実施例で得られたセルラーゼ発現性トランスジェニックテトラヒメナを、以下しばしば「セルラーゼ発現性テトラヒメナ」と表記する。
<実施例2:クロレラ培養液中のテトラヒメナの増殖挙動>
(目的)
実施例1で作製したセルラーゼ発現性テトラヒメナが前処理を行っていないクロレラを捕食し、資化できるかを検証した。
(方法)
テトラヒメナには、実施例1で調製したセルラーゼ発現性テトラヒメナ及びそのベースとなったセルラーゼ発現プラスミドベクターを含まないテトラヒメナ(本明細書では、以下、しばしば「セルラーゼ非発現性テトラヒメナ」と表記する)を用いた。両テトラヒメナを2mMリン酸バファで1.0×105cells/mLに調整し、テトラヒメナ溶液を作製した。セルラーゼ発現性テトラヒメナを含むテトラヒメナ溶液は、本発明の微生物触媒に相当する。
クロレラは、金沢市(日本)で採取されたミドリゾウリムシの野生株(Paramecium bursaria KNZ0901)より抽出したミドリゾウリムシ内共生クロレラを用いた。ミドリゾウリムシ内共生クロレラをミドリゾウリムシから抽出する方法は、実施例1に記載の方法に準じた。抽出したクロレラを2mMリン酸バファで1.0×107cells/mLに調整し、クロレラ溶液を調製した。
2 mMリン酸緩衝液2 mLに対して、終濃度としてテトラヒメナ1×105 cells/mL、クロレラ1×107 cells/mLとなるように加えて混合溶液を調製した。陰性対照として、2 mMリン酸緩衝液2 mLに対して、終濃度としてテトラヒメナ1×105 cells/mLのみ、又はクロレラ1×107 cells/mLのみを含む懸濁液を用いた。それぞれの溶液を、30℃にて培養し、0、12、24及び48時間後に一部を回収して、溶液中のクロレラ及びテトラヒメナの細胞数をカウントした。
(結果)
図1A及び1Bに、セルラーゼ発現性テトラヒメナとセルラーゼ非発現性テトラヒメナの培養時間と各細胞数との関係を示す。図1Aのa〜cはクロレラ細胞数を、図1Bのd〜fはテトラヒメナ細胞数を示す図である。a及びdはクロレラのみの溶液、b及びeはテトラヒメナのみの溶液、c及びfはクロレラとテトラヒメナの混合溶液である。
図1Aのcから、クロレラとテトラヒメナの混合溶液では、セルラーゼ発現性テトラヒメナ混合溶液及びセルラーゼ非発現性テトラヒメナ混合溶液のいずれにおいても、ほぼ同じ傾向でクロレラ細胞数が減少した。この結果は、テトラヒメナがセルラーゼの発現の有無にかかわらずクロレラを細胞内に取り込むことができることを示唆している。
一方、図1Bのfから、セルラーゼ発現性テトラヒメナ混合溶液及びセルラーゼ非発現性テトラヒメナ混合溶液では、セルラーゼ発現性テトラヒメナがセルラーゼ非発現性テトラヒメナよりも増殖速度が速かった。この結果は、セルラーゼ非発現性テトラヒメナでは、取り込んだクロレラを消化できずに排出するのに対して、セルラーゼ発現性テトラヒメナでは取り込んだクロレラを排出した後に、その排出クロレラを細胞外に分泌したセルラーゼによって分解し、生成したグルコースを資化することで、より多く増殖できたことが推測された。
<実施例3:セルラーゼ発現性テトラヒメナによるクロレラ資化の検証>
(目的)
クロレラがテトラヒメナによる捕食とセルラーゼ酵素による糖化によって完全分解されることを確認する。
(方法)
クロレラは、実施例2に記載の方法で調製したミドリゾウリムシ内共生クロレラを用いて2mMリン酸バファで1.0×107cells/mLに調整し、クロレラ懸濁液を調製した。また、排出クロレラは、当該クロレラ懸濁液と実施例2で調製したセルラーゼ非発現性テトラヒメナ懸濁液を混合し、セルラーゼ非発現性テトラヒメナにクロレラを捕食させた後、消化できずに排出したクロレラを15krpm、3分間の遠心分離で回収し、2mMリン酸バファで1.0×107cells/mLに調整して、排出クロレラ懸濁液とした。
セルラーゼは、セルラーゼ発現性テトラヒメナを用いて調製した。セルラーゼ発現性テトラヒメナを実施例2に示す方法で、2mLの2mMリン酸緩衝液中で共生クロレラと共に、30℃にて2日間、140rpmで往復振とうする好気的条件下で共培養した後、培養液を15krpm、3分間遠心処理して培養上清を回収した。培養上清中にはセルラーゼ発現性テトラヒメナから細胞外分泌されたセルラーゼが含まれることから、これをセルラーゼ溶液とした。
2mLのセルラーゼ溶液にクロレラ(約1×107 cells/mL)又は排出クロレラ(約5×105 cells/mL)を懸濁させた。陰性対照として、2mLの2mMリン酸バファにクロレラ(約1×107 cells/mL)又は排出クロレラ(約5×105 cells/mL)を懸濁させたものを用いた。それぞれの溶液を、30℃にて培養し、0、12、24及び48時間後に一部を回収して、溶液中のクロレラ又は排出クロレラの細胞数をカウントした。
(結果)
図2に結果を示す。aはクロレラの細胞数、bは排出クロレラの細胞数を示す。aではクロレラのみの溶液とクロレラ及びセルラーゼの混合溶液において、クロレラ細胞数に大きな変化はなく、クロレラはセルラーゼによってほとんど分解されないことが明らかとなった。
一方、bでは排出クロレラ及びセルラーゼの混合溶液において、排出クロレラ細胞数が時間経過と共に劇的に減少し、排出クロレラがセルラーゼによって効率的に分解されることが明らかとなった。
以上の結果から、クロレラの完全分解には、テトラヒメナによる捕食工程とセルラーゼによる分解工程が必須であることが明らかとなり、またセルラーゼ発現性テトラヒメナを用いることで、これら2つの工程を同時に行い、クロレラを効率的に資化できることが立証された。また、実施例2においてセルラーゼ発現性テトラヒメナがセルラーゼ非発現性テトラヒメナよりも増殖率が高い理由が捕食したクロレラを排出した後に、その排出クロレラを細胞外に分泌したセルラーゼによって分解し、生成したグルコースを資化できるためであることが立証された。
<実施例4>
(目的)
好気培養と嫌気培養におけるテトラヒメナの代謝物生産の違いを調べる。
(方法)
実施例2で調製したセルラーゼ発現性テトラヒメナ溶液又はセルラーゼ非発現性テトラヒメナ溶液、及びクロレラ溶液を用いた。基本的な方法は実施例2に記載の方法に準じた。ただし、試験管を30℃にて120時間、140rpmで往復振とう培養した好気的条件下(好気培養)と、試験管を脱酸素剤であるアネロパック(三菱ガス化学)を入れたパウチ内に入れ、パウチごと30℃にて0〜120時間、140rpmで往復振とう培養した嫌気的条件下(嫌気培養)で培養を行った。クロレラ溶液にセルラーゼ発現性テトラヒメナ溶液を混合した後、30℃にて培養し、0、24、48、72及び96時間後に培養液の一部を回収して、溶液中のクロレラ及びテトラヒメナの細胞数をカウントした。また、溶液中のエタノール濃度を液体クロマトグラフィーによって、測定した。
(結果)
図3〜6に結果を示す。図3は培養液中のクロレラの細胞数を、図4は培養液中のテトラヒメナの細胞数を、図5は培養液中のエタノールの濃度を示す。図3〜5のaは好気培養の、またbは嫌気培養の結果である。
図3から、好気培養及び嫌気培養にかかわらずクロレラの捕食率はセルラーゼ発現性テトラヒメナとセルラーゼ非発現性テトラヒメナ間で差異はなかったが、好気培養の方が嫌気培養よりも捕食率が高かった。図4から、嫌気培養下では、セルラーゼ発現性テトラヒメナとセルラーゼ非発現性テトラヒメナ共に、ほとんど増殖を行わないことが明らかとなった。また図5から、好気培養下で全く生成されなかったエタノールが、嫌気培養下では培養後24時間にセルラーゼ発現性テトラヒメナでのみ生成された。
以上の結果から、クロレラを基質材料としてセルラーゼ発現性テトラヒメナを用いてことで、好気培養下ではクロレラを効率的に分解して資化することでテトラヒメナの増殖率を高め、また増殖したテトラヒメナを嫌気培養することでバイオ燃料であるエタノールを生成できることが立証された。

Claims (13)

  1. セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片をコードする核酸を発現可能な状態で含むトランスジェニックテトラヒメナを含む、微細藻類を基質としてバイオ燃料を製造するための微生物触媒。
  2. 前記セルラーゼがシロアリ目昆虫又はキゴキブリ属昆虫由来又は当該昆虫の消化管内共生べん毛虫由来である、請求項1に記載の微生物触媒。
  3. 前記セルラーゼのアミノ酸配列が配列番号1、4又は6で示される、請求項1又は2に記載の微生物触媒。
  4. 前記セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片がN末端にシグナルペプチドを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の微生物触媒。
  5. 前記微細藻類がクロレラである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微生物触媒。
  6. 前記バイオ燃料がエタノール及び/又は有機酸である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の微生物触媒。
  7. セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片をコードする核酸を発現可能な状態で含むトランスジェニックテトラヒメナを微細藻類の存在下で培養する工程を含むバイオ燃料の製造方法。
  8. 前記培養工程を嫌気的環境下で行う、請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記セルラーゼがシロアリ目昆虫又はキゴキブリ属昆虫由来又は当該昆虫の消化管内共生べん毛虫由来である、請求項7又は8に記載の製造方法。
  10. 前記セルラーゼのアミノ酸配列が配列番号1、4又は6で示される、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記セルラーゼ又はその酵素活性を保持するポリペプチド断片がN末端にシグナルペプチドを含む、請求項7〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. 前記微細藻類がクロレラである、請求項7〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
  13. 前記バイオ燃料がエタノール及び/又は有機酸である、請求項7〜12のいずれか一項に記載の製造方法。
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