JP6518107B2 - 転写因子変異株 - Google Patents

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本発明は、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの高い生産能を有するタラロマイセス(Talaromyces)属糸状菌の変異株に関する。
今日、微生物は様々な酵素生産の宿主として工業的に用いられており、例えば、セルラーゼの生産においては、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)やタラロマイセス・セルロリティカス(Talaromyces cellulolyticus)などの糸状菌が用いられている。また、これまでにランダムな遺伝子変異の導入により、これらの糸状菌についてセルラーゼ生産能の高い変異株が取得されている。このような変異株としては、タラロマイセス・セルロリティカス(旧名:アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus))変異株(例えば、TN株、C1株、CF−2612株等)等が挙げられる(特許文献1−3)。
さらに、セルラーゼ生産に関与する遺伝子機構の解明も進められており、タラロマイセス・セルロリティカスにおいてはセルラーゼ生産に関与する複数の転写活性因子が明らかにされている(非特許文献1、2、3)。加えて、遺伝子組み換え技術の進歩や、全ゲノム情報の解読等により、糸状菌の変異株の作製が効率的に行えるようになり、セルラーゼの高い生産能を有する変異株の開発が進められている。例えば、タラロマイセス・セルロリティカスにおいてセルラーゼ生産に関与する転写活性因子の一つであるCre1の機能を欠損させた場合、培地中にグルコースが存在する条件下においても、効率良くセルラーゼを生産できることが報告されている(特許文献4)。
一方、近年、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼを用いてバイオマス資源を酵素分解、糖化することにより構成単位であるグルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトースにし、更にこれを発酵して得られるエタノールや乳酸などを液体燃料もしくは化学原料として利用することが、注目、検討されており、その実用化技術の開発が促進されている。そのため、バイオマス資源の実用化経済性のために、上記セルラーゼ生産菌やその変異株よりも、セルラーゼやヘミセルラーゼの高い生産能を有する菌株が、依然として求められている。
特開2002−101876号公報 特開2003−135052号公報 特開2008−271927号公報 特開2014−168424号公報
Fujiiら、Appl Biochem Biotechnol. 2015;175(6):3218−29. Biosci Biotechnol Biochem.2014;78(9):1564−1567 Fujiiら、AMB Express,2013;3
本発明は、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの高い生産能を有する微生物を提供することを目的とする。また、本発明は、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの生産、ならびにバイオマス資源の分解又は糖化を、効率的に行うことが可能な新たな手法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、タラロマイセス(Talaromyces)属糸状菌において、セルラーゼ生産に関与する転写活性化因子をコードする遺伝子である、xlnR遺伝子、clbR遺伝子、ace1遺伝子、及びclr2遺伝子について、xlnR遺伝子、clbR遺伝子、及びace1遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子を高発現させることによって、ならびに/あるいは、clr2遺伝子の機能を欠損させることによって、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの高い生産能を有する変異株を作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の特徴を有する。
[1] ace1遺伝子、xlnR遺伝子、及びclbR遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子を高発現する、あるいは、clr2遺伝子の機能が欠損している、タラロマイセス(Talaromyces)属糸状菌CF−2612株(受託番号FERM P−21290)又はC1株(受託番号FERM P−18508)の変異株。
[2] ace1遺伝子を高発現する、[1]の変異株。
[3] clbR遺伝子を高発現する、[1]の変異株。
[4] xlnR遺伝子を高発現する、[1]の変異株。
[5] xlnR遺伝子及びclbR遺伝子を高発現する、[1]の変異株。
[6] clr2遺伝子が欠失している、[1]の変異株。
[7] セルロース含有原料を含む培地中にて、[1]〜[6]のいずれかの変異株を培養することを含む、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの製造方法。
[8] 培地がさらに糖類を含む、[7]の方法。
[9] [7]又は[8]の方法により得られた、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼ。
[10] [7]又は[8]の方法により得られたセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼを用いてバイオマス資源を分解または糖化することを含む、バイオマス資源の分解または糖化方法。
本発明によれば、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの高い生産能を有する、タラロマイセス属糸状菌の変異株を提供することができる。また、本発明によれば、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの生産、ならびにバイオマス資源の分解又は糖化を、効率的に行うことが可能な新たな手法を提供することができる。
1.変異株
本発明は、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの生産能が高い、タラロマイセス(Talaromyces)属糸状菌の変異株に関する。
「セルラーゼ」とは、FPアーゼ、CMCアーゼ、アビセラーゼ、セロビアーゼ等のセルロースの分解に関与する酵素の総称であり、セルロースの分解活性を有していれば、本明細書において「セルラーゼ」に含まれる。「セルロース」とは、グルコースがβ−1,4グルコシド結合により高度に重合したグルコースポリマーであり、全ての植物の細胞壁構成成分として存在する。
「ヘミセルラーゼ」とは、キシラナーゼ、アラビナナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、マンナナーゼ、ガラクタナーゼ、キシロシダーゼ、マンノシダーゼ等のへミセルロースを分解する酵素の総称であり、へミセルロースの分解活性を有していれば、本明細書において「ヘミセルラーゼ」に含まれる。「へミセルロース」とは、陸上植物細胞の細胞壁を構成する多糖類のうち、セルロースとペクチン以外のものをいう。
「セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの生産能」とは、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼを生産する能力を指し、セルラーゼの総酵素活性及び/又はヘミセルラーゼの総酵素活性が高いほど当該酵素の生産能が高いことを意味する。
セルラーゼの総酵素活性及びヘミセルラーゼの総酵素活性はそれぞれ、公知の手法に基づいて測定することができる。すなわち、下記の詳述する、当該酵素を含む粗酵素液又は精製した酵素に、適当な基質(例えば、濾紙、カルボキシメチルセルロース(CMC)、微結晶セルロース(Avicel)、サリシン、セロビオース、キシラン等)を加えて、一定時間酵素反応を行わせた後に、生じた還元糖をSomogy−Nelson法又はDNS法などにより発色させ所定の波長で比色定量して測定することができる。
Somogy−Nelson法においては、一定時間反応させた上記反応溶液にSomogy銅試薬(和光純薬)を加えて反応を停止する。その後およそ20分間煮沸し、煮沸終了後急速に水道水にて冷却する。冷却後、Nelson試薬を注入して還元銅沈殿を溶解し発色させ、およそ30分静置した後蒸留水を加え、吸光度を測定する。
DNS法を用いる場合は、基質液に酵素液を加え、一定時間酵素反応を行わせたのち、煮沸などによって酵素反応を停止する。この反応液にジニトロサリチル酸を加えて、5分間煮沸し、冷却後吸光度を測定する(柏木豊「発酵糸状菌の酵素」、微生物遺伝資源利用マニュアル(16)、独立行政法人農業生物資源研究所発行、2004年2月29日発行)。
本発明の変異株は、タラロマイセス属糸状菌において、セルラーゼ生産に関与する転写活性化因子をコードする遺伝子である、xlnR遺伝子、clbR遺伝子、ace1遺伝子、及びclr2遺伝子について、xlnR遺伝子、clbR遺伝子、及びace1遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子を高発現させることによって、ならびに/あるいは、clr2遺伝子の機能を欠損させることにより得ることができる。
タラロマイセス属糸状菌の「xlnR遺伝子」、「clbR遺伝子」、「ace1遺伝子」、及び「clr2遺伝子」は公知であり、公開されたデータベースにその配列情報が公開されている。例えば、GenBankにxlnR遺伝子はAB915784として、clbR遺伝子はLC012354として、ace1遺伝子はLC012352として、clr2遺伝子はLC015750として、それぞれ登録されており、本発明においてはこれらの配列情報を利用することができる。なお、clbR遺伝子、ace1遺伝子、及びclr2遺伝子はそれぞれ、tclA遺伝子、tacA遺伝子、及びtclB2遺伝子と称される場合があり、公開されたデータベースには後者の名称で登録されている場合がある。
タラロマイセス属糸状菌のこれらの遺伝子及び/又は染色体上のその周辺領域(以下、「その周辺領域」と記載する)のDNAは、公知の手法により得ることができる。すなわち、上記公知の配列情報をもとにタラロマイセス属糸状菌のcDNAライブラリー又はゲノムライブラリーに対してスクリーニングを行い、目的の遺伝子及び/又はその周辺領域のDNAを得ることができる。スクリーニングは、目的の遺伝子及び/又はその周辺領域の配列情報をもとに設計されたプローブと、上記ライブラリーとを、低い、中程度又は高いストリンジェントな条件下にてハイブリダイゼーションさせることによって行ってよいし、あるいは目的の遺伝子及び/又はその周辺領域を増幅するために設計されたプライマー用い、上記ライブラリーを鋳型としたとしたPCR法によって行ってもよい。
本発明において、「xlnR遺伝子」としては、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。
また、本発明において、「clbR遺伝子」としては、配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。
さらに、本発明において、「ace1遺伝子」としては、配列番号3で示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。
そして、本発明において、「clr2遺伝子」としては、配列番号4で示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。
本発明において「xlnR遺伝子」、「clbR遺伝子」、「ace1遺伝子」、及び「clr2遺伝子」として、これら遺伝子の変異体も利用することができる。このような「変異体」としては、上記配列番号1〜4で示される各アミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加された配列を有し、かつ、セルラーゼ生産に関与する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子が含まれる。ここで「複数」とは1〜30個、好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個を意味する。さらに、「変異体」には、上記配列番号1〜4で示される各アミノ酸配列とBLAST等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有する配列を有し、かつ、セルラーゼ生産に関与する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子が含まれる。
具体的な例示として、「xlnR遺伝子」として配列番号5で示される塩基配列を含むDNA、「clbR遺伝子」として配列番号6で示される塩基配列を含むDNA、「ace1遺伝子」として配列番号7で示される塩基配列を含むDNA、「clr2遺伝子」として配列番号8で示される塩基配列を含むDNAが挙げられ、本発明においてはこれらの遺伝子及びその配列情報を利用することができる。
本発明の変異株は、xlnR遺伝子、clbR遺伝子、及びace1遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子を高発現する高発現変異株、ならびに、clr2遺伝子の機能が欠損した機能欠損株である。これらの変異株は、自然突然変異によるものであってもよいし、タラロマイセス属糸状菌を紫外線照射や変異誘発剤(例えば、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、エチルメタンスルホン酸など)で処理することによって得られたものであってもよいが、より効率的には、これらの変異株は、当業者に公知である一般的な分子生物学的手法を用いた遺伝子組換え技術に基づいて得ることができる(Sambrook J.ら、“MOLECULAR CLONING,A LBORATORY MANUAL/fourth edition”,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012))。
すなわち、本発明の高発現変異株は、xlnR遺伝子、clbR遺伝子、及びace1遺伝子から選択される遺伝子を適当なベクターに組み込み、そのベクターを宿主となるタラロマイセス属糸状菌に導入し、形質転換することにより得ることができる。なお、「高発現」とは、変異株における導入された遺伝子の発現量が、宿主における当該遺伝子の発現量よりも高い、好ましくは宿主における当該遺伝子の発現量の1.2倍以上、1.5倍以上、1.8倍以上、2倍以上、又はそれ以上であることを意味する。
ベクターとしては、遺伝子の導入及び発現のために当業者に公知である一般的な発現ベクターを用いることができる。このようなベクターとしては、例えば、pBluescriptIIKS+やpUC19等が挙げられる。
ベクターには、xlnR遺伝子、clbR遺伝子、及びace1遺伝子をそれぞれ別個に含めてもよいし、これら遺伝子より選択される2つ以上の組合せ(例えば、xlnR遺伝子とclbR遺伝子、xlnR遺伝子とace1遺伝子、clbR遺伝子とace1遺伝子など)を一つのベクターに含めてもよい。
ベクターには、上記遺伝子を発現調節配列に操作可能に連結して含めることができる。「発現調節配列」には遺伝子の転写を促すプロモーターが含まれる。上記遺伝子は発現調節配列に操作可能に連結されることによって、導入された宿主細胞において当該発現調節配列の制御のもと、遺伝子発現(転写)が駆動される。プロモーターとしては、宿主となるタラロマイセス属糸状菌にて、連結された遺伝子の発現を駆動できるものであればよく特に限定されないが、連結された遺伝子の高発現を可能とするプロモーターが好ましい。このようなプロモーターとして、例えば、pyr4プロモーター、cbhlプロモーター、gpdプロモーター等が挙げられるが、これらに限定はされない。
ベクターにはさらに、エンハンサー、宿主における複製を可能とする複製起点、形質転換体を同定する選択マーカー(例えば、テトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシンもしくはネオマイシン、ハイグロマイシンまたはスペクチノマイシン等の抗生物質耐性遺伝子、栄養要求性遺伝子等)、ターミネーター領域等を含めることができる。
宿主となるタラロマイセス属糸状菌の形質転換は、xlnR遺伝子、clbR遺伝子、又はace1遺伝子のいずれかを含む単一のベクターを用いて行ってよいし、これら遺伝子のいずれかを含むベクターを複数種組合せて用いて行ってよいし、あるいはこれら遺伝子より選択される2つ以上の遺伝子の組合せを含むベクターを単独で、又は他のベクターと組合せて用いて行ってもよい。
本発明の機能欠損株は、clr2遺伝子について一又は複数個の塩基の欠失、置換、付加または挿入などを含むために、当該遺伝子によってコードされるタンパク質の活性が、正常なタンパク質の活性と比較して70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満又は全く活性を有さない状態を指す。好ましくは、本発明の機能欠損株は、clr2遺伝子遺伝子の一部又は全体が欠失した状態にあり、当該遺伝子によってコードされるタンパク質が全く活性を有さない状態にある。
本発明の機能欠損株の作製は、相同組換え手法を利用する公知の手法(相同組換え法によるダブルクロスオーバー等)により行うことができる。例えば、clr2遺伝子を遺伝子導入のための当業者に公知である一般的なベクターにクローニングする。その後、クローン化したclr2遺伝子の配列中に外来遺伝子(例えば、薬剤耐性遺伝子)を挿入することで、外来遺伝子(例えば、薬剤耐性遺伝子)により分断されたclr2遺伝子を含むベクターを調製する。このベクターを宿主となるタラロマイセス属糸状菌に導入することにより、ベクター上の分断されたclr2遺伝子と当該宿主の染色体上のclr2遺伝子とが相同組換えを生じ、宿主のclr2遺伝子が外来遺伝子により分断されることにより、当該遺伝子の機能を欠損させることができる。あるいは、clr2遺伝子に外来遺伝子を挿入して分断するかわりに、clr2遺伝子の塩基配列においてその一部または全体を欠失させるべく、その欠失させるべき部位に隣接する上流領域及び下流領域の塩基配列をそれぞれクローニングし、これらの領域のDNAを連結して含むベクターを調製する。これを宿主に導入することにより、ベクター上の上流領域及び下流領域と当該宿主の染色体上の対応する塩基配列とが相同組換えを生じ、宿主のclr2遺伝子の塩基配列においてその一部又は全体が欠失することにより、当該遺伝子の機能を欠損させることができる。上流領域及び下流領域の塩基配列は、宿主由来のcDNAライブラリー又はゲノムライブラリーを鋳型として用いるPCR法により得ることができる。
本発明の高発現変異株及び機能欠損株の作製において、宿主としては、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼを生産することができるタラロマイセス属糸状菌を用いることができ、好ましくはタラロマイセス・セルロリティカス(Talaromyces cellulolyticus)である。より好ましくは、タラロマイセス・セルロリティカスの野生株であるY−94株や、タラロマイセス・セルロリティカスのセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの高生産変異株であるTN株、C1株、及びCF−2612株であり、特に好ましくはC1株及びCF−2612株である。C1株は、平成13年9月14日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現:独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター)に、受託番号FERM P−18508にて寄託されている。また、CF−2612株は、平成19年4月10日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(同上)に、受託番号FERM P−21290にて寄託されている。なお、これら寄託された微生物の表示は、アクレモニウム(Acremonium)属とされているが、アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus)は近年のリボソーマルDNAの遺伝子配列解析結果に基づいて、タラロマイセス属へ属名が変更されている。
上記ベクターの宿主への導入は、リン酸カルシウム法又は塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃等を用いる方法により行うことができる。
本発明の変異株は、好ましくはセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの高生産能を有する従来公知のタラロマイセス属糸状菌及びその変異株よりも高いセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの生産能を有するものであり、特に好ましくはC1株及びCF−2612株よりも高いセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの生産能を有するものである。より詳細には、本発明の変異株は、xlnR遺伝子を高発現する変異株、clbR遺伝子を高発現する変異株、xlnR遺伝子及びclbR遺伝子を高発現する変異株、ace1遺伝子を高発現する変異株、ならびにclr2遺伝子の機能が欠損した機能欠損変異株である。
本発明の変異株は、固相支持体(例えば、ポリマー、鉱物、金属、ゲル、多糖類等)に固定化されていてもよい。変異株の固相支持体への固定化は、共有結合又は非共有結合を用いて行うことができる。
2.セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの生産
セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの生産は、上記本発明の変異株を培養することにより行うことができる。
培養のための培地には、炭素源としてセルロース含有原料、窒素源として、硫安、硝安等の無機アンモニウム塩、尿素、アミノ酸、肉エキス、酵母エキス、ポリペプトン、及びタンパク質分解物などの有機窒素含有物、ならびに無機塩類(酒石酸カリウム、リン酸2水素カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、塩化鉄、塩化マンガン等)を含めることができる。「セルロース含有原料」としては、粉末セルロース(例えば、Solka−Floc(登録商標,International Fiber Co.)及びアビセル等)、麦わら、稲わら、ふすま、もみがら、バガス、古紙類、瀘紙、一般紙類、製紙汚泥、スイッチグラス、パーム残渣、木材等が挙げられるが、本発明の変異株の培養において炭素源となり得る限り、これらに限定されない。セルロース含有原料は、酸処理、酵素処理、アルカリ処理、水熱処理などを用いた加水分解処理、あるいは粗粉砕又は細断処理などにより予め前処理されることが好ましい。セルロース含有原料に前処理を行うことでセルロース間の結合を緩め、本発明の変異株がより効率的に炭素源として利用することができる。
培地にはさらに、糖類を含めることができる。培地に加える糖類としては、単糖類、二糖類、多糖類などが挙げられ、例えば、グルコースを利用することができる。培地中のセルロース含有原料とグルコースの量は、1:0〜9、好ましくは1:4(重量比)で含めることができる。
培地は、寒天やゼラチンを加えて固化した固体培地、低濃度の寒天を加えた半流動培地、又は液体培地を用いることができるが、液体培地が好ましい。
培養は、25〜35℃、好ましくは28〜32℃にて、48時間〜10日ほど培養を行う。培養温度及び培養時間は、変異株の種類、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼ生産能に応じて適宜調節することができる。培養は、バッチ式、フェドバッチ式、半連続式、又は連続式にて適宜行うことができる。
培養に用いることができる培養槽としては、通気撹拌型、気泡塔型、流動層型、充填層型などが挙げられる。
培養終了後、次いで培養液を回収する。得られた培養液は、さらなる処理に付すことなくそのままセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの粗酵素液として利用することができる。
また、得られた培養液から、遠心分離、濾過などの公知の方法によって菌体を除去し、上清液を回収する。得られた上清液は、さらなる処理に付すことなくそのままセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの粗酵素液として利用することができる。
さらに、上記得られた上清液より、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼを精製してもよい。セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼは、タンパク質精製に用いられる一般的な手法、例えば、硫安塩析、有機溶媒(エタノール、メタノール、アセトン等)による沈殿分離、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、基質又は抗体等を利用したアフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー等)、濾過処理(例えば、限外ろ過、逆浸透ろ過、精密ろ過等)を一又は複数組み合わせて用いて精製することができる。
精製したセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼは、固定化してもよい。固定化することによって、安定化され、連続反復使用が可能となる点において有効である。酵素の固定化は、担体結合法、架橋法、包括法により行うことができる。担体結合法では、酵素を水不溶性の担体(例えば、ポリアクリルアミドゲル、ポリスチレン樹脂、多孔性ガラス、金属酸化物等)に、物理的吸着、イオン結合又は共有結合を用いて結合させることができる。架橋法では、2個又はそれ以上の官能基を持つ架橋試薬を用いて、酵素を架橋して固定化することができる。架橋試薬としては、グルタルアルデヒド、イソシアン酸誘導体、N,N’−エチレンマレイミド、ビスジアゾベンジン、あるいはN,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミドなどを用いることができる。包括法では、高分子ゲルの細かい格子の中に酵素を取り込む格子型と、半透膜の高分子の皮膜によって酵素を皮膜するマイクロカプセル型を用いる。格子型の方法では、合成高分子物質のポリアクリルアミドゲル、ポリビニルアルコール、光硬化性樹脂などの高分子化合物を用いることができる。マイクロカプセル型の方法では、ヘキサメチレンジアミン、セバコイルクロリド、ポリスチレン、レシチンなどを用いることができる(福井三郎、千畑一郎、鈴木周一、「酵素工学」東京化学同人発行、1981年)。
3.バイオマス資源の分解又は糖化
上記生産されたセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼ、ならびにそれらの粗酵素液は、バイオマス資源の分解又は糖化に用いることができる。
「バイオマス資源」とは、植物や藻類が生産するセルロース系及び/又はリグノセルロース系バイオマスを含み、例えば、麦わら、稲わら、ふすま、もみがら、バガス、古紙類、瀘紙、一般紙類、製紙汚泥、スイッチグラス、パーム残渣、木材、大豆粕、大豆おから、コーヒー粕、米ぬか等が挙げられる。バイオマス資源は、酸処理、酵素処理、アルカリ処理、水熱処理などを用いた加水分解処理により予め前処理されたものが好ましい。また、バイオマス資源は、乾燥物でも、また湿潤物でもよいが、処理速度を高めるために予め100〜1000μmのサイズに粗粉砕又は細断されたものが好ましい。
「バイオマス資源の分解又は糖化」とは、バイオマス資源に含まれるセルロース及び/又はヘミセルロースを分解し、オリゴ糖類、二糖類、単糖類及びそれらの混合物にすることをいう。すなわち、「バイオマス資源の分解又は糖化」とは、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼによって、多糖類のグリコシド結合を加水分解することをいう。
バイオマス資源の分解又は糖化は、公知の方法を用いることができる。すなわち、バイオマス資源を水性媒体中に懸濁し、そこに精製したセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼ、あるいは上記それらの粗酵素液を加え、撹拌又は振とうしながら加温して酵素反応を行う。この方法において、反応液のpH及び温度は、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼが失活しない範囲内であればよく、一般的に、常圧で反応を行う場合、温度は5〜95℃、pHは1〜11の範囲とすることができる。
バイオマス資源の分解又は糖化の工程は、バッチ式、フェドバッチ式、半連続式、又は連続式にて行うことができる。
また、上記「セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの生産」において、培地に含める炭素源として「バイオマス資源」を利用することにより、「セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの生産」と「バイオマス資源の分解又は糖化」とは、同一の装置(培養槽)内にて同時に行うことができる。
あるいは、「バイオマス資源の分解又は糖化」は、生成した糖類を原料(発酵基質)とする微生物(酵母など)による発酵処理を同一の装置にて同時に行う、いわゆる同時糖化発酵(SSF:Simultaneous Saccharification and Fermentation)にて行うことができる。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1:ゲノムDNAの抽出
タラロマイセス・セルロリティカス(Talaromyces cellulolyticus)C1株(FERM P−18508)(以下、「C1株」と記載する)をPD(ポテトデキストロース)培地で一晩培養し、得られた培養液を遠心分離によって集菌した。次に、菌体の2倍量から3倍量のTE緩衝液(2%SDS含有)で菌体を懸濁し、50℃で1時間保温し、5M酢酸カリウム溶液を全量の10分の1量加えて、氷上で1時間冷却した後、遠心して上清を回収した。得られた上清に対し、フェノール・クロロホルム処理を2回行い、100%エタノールを2.5倍量加えて、マイナス20℃で1時間以上冷却した後、遠心処理により核酸を沈殿させた。得られた沈殿を70%エタノールで2回洗い、適当量のTE緩衝液に懸濁した後、RNaseAを加え、37℃で1時間保温し、C1株のゲノムDNAを得た。
実施例2:C1株由来ウラシル要求性株の取得
(2−1)pyrF遺伝子破壊用プラスミドの調製
pyrF遺伝子(AB668056)の配列情報をもとに以下のプライマーを設計し、上記実施例1で得たゲノムDNAを鋳型として、pyrF遺伝子の上流領域及び下流領域をそれぞれ増幅した。
Figure 0006518107
増幅した上流領域及び下流領域を、pBluescript II KS+のXbaI−SmaIサイト及びSmaI−ApaIサイトへそれぞれ導入し、pyrF遺伝子破壊用プラスミドを得た。
(2−2)C1株由来ウラシル要求性株の作製
PD培地を用いて一晩培養したC1株を遠心分離によって回収し、0.8M NaClを用いて洗浄した。
得られた菌体に対し、10mM KHPO、0.8M NaClに懸濁した0.2%Yatalase(タカラバイオ株式会社)を加え、30℃下で1時間穏やかに振盪した。顕微鏡下で菌体がプロトプラスト化していることを確認し、これを遠心分離により回収した後に、0.8M NaClを用いて菌体を洗浄した。得られた菌体を溶液A(1.2Mソルビトール、10mM Tris−HCl(pH7.5))へ懸濁し、プロトプラスト溶液を得た。
プロトプラスト溶液0.2mLに、pyrF遺伝子破壊用プラスミド(約10μg)および50μLのPEG溶液(40%PEG 4000、10mM Tris−HCl、10mM CaCl:pH7.5)を加え、氷上に30分静置後、1mLのPEG溶液を加え、十分に混合して室温下で30分間静置した。次に、得られた溶液を0.2mLずつ、1Mスクロース、1.2%5−FOA、1%ウラシル、1%ウリジンを加えたMM寒天培地に塗布し、5〜7日後生育してきたコロニーを選択した。
得られたコロニーの全DNAを回収し、サザン解析によりpyrF遺伝子が破壊された株を選抜・取得した。以下、pyrF遺伝子が破壊された株を「CP4株」と記載する。
実施例3:clr2遺伝子破壊用プラスミドの作製
clr2遺伝子(配列番号8)の配列情報をもとに以下のプライマーを設計し、上記実施例1で得たゲノムDNAを鋳型として、clr2遺伝子の上流領域及び下流領域をそれぞれ増幅した。
Figure 0006518107
増幅した上流領域及び下流領域を、pbs−pyrF(Fujii et al.Biosci Biotechnol Biochem 78(2014))のApaI−EcoRVサイト及びXbaI−NotIサイトへそれぞれ導入し、clr2遺伝子破壊用プラスミドを得た。
実施例4:xlnR遺伝子高発現用プラスミドの作製
グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(AB847425)の配列情報をもとに以下のプライマーを設計し、上記実施例1で得たゲノムDNAを鋳型として、当該遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域をそれぞれ増幅した。
Figure 0006518107
増幅したプロモーター領域及びターミネーター領域を、pBluescript II KS+のXbaI−EcoRIサイト及びSalI−ApaIサイトへそれぞれ導入し、pbs−gpdを得た。
次に、pyrF遺伝子(AB668056)の配列情報をもとに以下のプライマーを設計し、上記実施例1で得たゲノムDNAを鋳型として、当該遺伝子の全長を増幅した。
Figure 0006518107
増幅した全長遺伝子を、pbs−gpdのNotI−XbaIサイトへ導入し、pbs−gpd−pyrFを得た。
次に、xlnR遺伝子(配列番号5)の配列情報をもとに以下のプライマーを設計し、上記実施例1で得たゲノムDNAを鋳型として、当該遺伝子の全長を増幅した。
Figure 0006518107
増幅した全長遺伝子を、pbs−gpd−pyrFのEcoRI−SalIサイトへ導入し、xlnR遺伝子高発現用プラスミドを得た。
実施例5:clbR遺伝子高発現用プラスミドの作製
clbR遺伝子(配列番号6)の配列情報をもとに以下のプライマーを設計し、上記実施例1で得たゲノムDNAを鋳型として、当該遺伝子の全長を増幅した。
Figure 0006518107
増幅した全長遺伝子を、上記pbs−gpd−pyrFのEcoRI−SalIサイトへ導入し、clbR遺伝子高発現用プラスミドを得た。
実施例6:ace1遺伝子高発現用プラスミドの作製
ace1遺伝子(配列番号7)の配列情報をもとに以下のプライマーを設計し、上記実施例1で得たゲノムDNAを鋳型として、当該遺伝子の全長を増幅した。
Figure 0006518107
増幅した全長遺伝子を、上記pbs−gpd−pyrFのEcoRV−SbfIサイトへ導入し、ace1遺伝子高発現用プラスミドを得た。
実施例7:xlnR−clbR遺伝子高発現用プラスミドの作製
上記実施例4で得たxlnR遺伝子高発現用プラスミドを鋳型とし、以下のプライマーを用いて、xlnR遺伝子を含む断片Aを増幅した。
Figure 0006518107
次に、上記実施例5で得たclbR遺伝子高発現用プラスミドを鋳型とし、以下のプライマーを用いて、clbR遺伝子を含む断片Bを増幅した。
Figure 0006518107
次に、増幅した断片Aと断片BとをIn−Fusion HD Cloning Kit(クロンテック)を用いて連結し、xlnR−clbR遺伝子高発現用プラスミドを得た。
実施例8:形質転換体の作製
上記実施例2で得たCP4株をPD培地を用いて一晩培養し、遠心分離によって菌体を回収した後、0.8M NaClを用いて洗浄した。
得られた菌体に対し、10mM KHPO、0.8M NaClに懸濁した0.2%Yatalase(タカラバイオ株式会社)を加え、30℃下で1時間穏やかに振盪した。顕微鏡下で菌体がプロトプラスト化していることを確認し、これを遠心分離により回収した後に、0.8M NaClを用いて菌体を洗浄した。得られた菌体を溶液A(1.2Mソルビトール、10mM Tris−HCl(pH7.5))へ懸濁し、プロトプラスト溶液を得た。
プロトプラスト溶液0.2mLに、上記実施例3〜7で作製した各プラスミド(約10μg)及び50μLのPEG溶液(40%PEG 4000、10mM Tris−HCl、10mM CaCl:pH7.5)を加え、氷上に30分静置後、1mLのPEG溶液を加え、十分に混合して室温下で30分間静置した。次に、得られた溶液を0.2mLずつ、1Mスクロースを加えたMM寒天培地に塗布し、5〜7日後生育してきたコロニーを選択した。
得られたコロニーの全DNAを回収し、サザン解析により標的遺伝子が破壊された株及び標的遺伝子の全長を高発現する株をそれぞれ選抜・取得した。以下、上記実施例3〜7で作製した各プラスミドを用いて形質転換し、上記のとおり選抜・取得された菌株をそれぞれ、Clr2破壊株、XlnR高発現株、ClbR高発現株、Ace1高発現株、及びXlnR−ClbR高発現株と記載する。
実施例9:酵素活性の評価
C1株(対照)、ならびにClr2破壊株、XlnR高発現株、ClbR高発現株、Ace1高発現株、及びXlnR−ClbR高発現株をそれぞれ、(1)ソルカフロック50g/L、(2)ソルカフロック10g/L+グルコース40g/L、又は(3)微粉砕イナワラ100g/Lを炭素源とする以下の組成の培地に接種して、30℃で8日間好気的に培養した。なお、(2)ソルカフロック10g/L+グルコース40g/Lを利用する培養については、グルコース40g/Lを培養初期に全量添加する方式(バッチ式)にて行った。
Figure 0006518107
各培養液を回収し、遠心分離して得た上澄液について、酵素活性を測定した。
セルラーゼ(FPアーゼ)活性は、ろ紙(Whatman No.1)を基質として用い、培養液を混合して50℃で60分間インキュベートし、次いで、遊離されたグルコースをDNS法を用いて比色定量することにより算出した。
ヘミセルラーゼ(キシラナーゼ)活性は、キシラン(Birchwood、SIGMA)を基質として用い、培養液を混合して45℃で30分間インキュベートし、次いで、遊離されたキシロースをDNS法を用いて比色定量することにより算出した。
各炭素源を利用した培養条件下における、C1株(対照)、ならびにClr2破壊株、XlnR高発現株、ClbR高発現株、Ace1高発現株、及びXlnR−ClbR高発現株の培養液中の各酵素活性の測定値を以下の表に示す。なお、表中の値は、C1株(対照)の測定値を「100」とする相対値にて示す。
Figure 0006518107
Figure 0006518107
Figure 0006518107
上記結果より明らかなとおり、Clr2破壊株はいずれの培養条件においても、C1株と比べて、高いセルラーゼ生産能を示した。また、セルロース(ソルカフロック)及び天然のバイオマス資源(イナワラ)を炭素源としたいずれの培養条件においても、C1株と比べて、高いヘミセルラーゼ生産能を示したが、特に、炭素源としてセルロース(ソルカフロック)を用いた場合に、高いヘミセルラーゼ生産能を示した。
Ace1高発現株はセルロース(ソルカフロック)を炭素源とした培養条件において、C1株と比べて、高いセルラーゼ生産能及び高いヘミセルラーゼ生産能を示した。特に、炭素源としてグルコースを主体した場合に、高いセルラーゼ生産能を示した。
XlnR高発現株はいずれの培養条件においても、C1株と比べて、高いセルラーゼ生産能を示した。特に、炭素源としてセルロース(ソルカフロック)を用いた場合に、高いセルラーゼ生産能を示した。
ClbR高発現株はいずれの培養条件においても、C1株と比べて、高いセルラーゼ生産能を示した。特に、炭素源としてグルコースを主体した場合、及び天然のバイオマス資源(イナワラ)を用いた場合に、高いセルラーゼ生産能を示した。また、セルロース(ソルカフロック)及び天然のバイオマス資源(イナワラ)を炭素源としたいずれの培養条件においても、C1株と比べて、高いヘミセルラーゼ生産能を示したが、特に、炭素源として天然のバイオマス資源(イナワラ)を用いた場合に、高いヘミセルラーゼ生産能を示した。
XlnR−ClbR高発現株は、いずれの培養条件においても、C1株と比べて、高いセルラーゼ生産能を示した。特に、炭素源としてグルコースを主体した場合、及び天然のバイオマス資源(イナワラ)を用いた場合に、高いセルラーゼ生産能を示した。また、セルロース(ソルカフロック)及び天然のバイオマス資源(イナワラ)を炭素源としたいずれの培養条件においても、C1株と比べて、高いヘミセルラーゼ生産能を示したが、特に、炭素源として天然のバイオマス資源(イナワラ)を用いた場合に、高いヘミセルラーゼ生産能を示した。
以上より、Clr2破壊株、XlnR高発現株、ClbR高発現株、Ace1高発現株、及びXlnR−ClbR高発現株は、セルラーゼの高生産株として公知であるC1株と比べて、高いセルラーゼ生産能を有することが明らかとなった。
本発明によるタラロマイセス属糸状菌の変異株は、従来公知のセルラーゼ高生産株と比べて、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの高い生産能を有し、これにより、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼ生産の低コスト化、ならびにバイオマス資源の分解又は糖化を効率的に行うことができる。故に、本発明はセルラーゼ等の酵素生産の分野、及びバイオマス資源の分解又は糖化の分野において大いに貢献することが期待される。

Claims (10)

  1. ace1遺伝子、xlnR遺伝子、及びclbR遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子を高発現する、あるいは、clr2遺伝子の機能が欠損している、タラロマイセス(Talaromyces)属糸状菌1株(受託番号FERM P−18508)の変異株。
  2. ace1遺伝子を高発現する、請求項1に記載の変異株。
  3. clbR遺伝子を高発現する、請求項1に記載の変異株。
  4. xlnR遺伝子を高発現する、請求項1に記載の変異株。
  5. xlnR遺伝子及びclbR遺伝子を高発現する、請求項1に記載の変異株。
  6. clr2遺伝子が欠失している、請求項1に記載の変異株。
  7. セルロース含有原料を含む培地中にて、請求項1〜6のいずれか1項に記載の変異株を培養することを含む、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの製造方法。
  8. 培地がさらに糖類を含む、請求項7に記載の方法。
  9. セルロース含有原料を含む培地中にて請求項1〜6のいずれか1項に記載の変異株を培養する工程を含む、バイオマス資源の分解は糖化方法。
  10. 培地がさらに糖類を含む、請求項9に記載の方法。
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