JP2015009379A - ガスバリアーフィルム及びガスバリアーフィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、ガスバリアーフィルムのガスバリアー性を均一化し、収率を高めることである。【解決手段】本発明のガスバリアーフィルム1aは、樹脂製のフィルム基材10と、フィルム基材10における少なくとも一方の面に形成されたガスバリアー層12と、紫外線硬化樹脂を含んで形成され、フィルム基材10とガスバリアー層12との間に介在するアンカー層11と、を備え、ナノサーマル分析装置で探針温度を150度としたときにアンカー層11で測定される探針の変位信号の絶対値tvは、PET製の基材で測定される探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすことを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、ガスバリアーフィルム及びガスバリアーフィルムの製造方法に関する。より詳しくは、液晶や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、太陽電池、電子ペーパー等の電子デバイスのガス遮断に用いられる、可撓性に優れた透明なガスバリアーフィルム及び当該ガスバリアーフィルムの製造方法に関する。
近年、電子デバイス分野では、軽量化及び大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基材に代わって、透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。
ただし、透明プラスチック等のフィルム基材は、ガラス基材よりもガスバリアー性が劣るという問題がある。ガスバリアー性が劣る基材を用いると、水蒸気や酸素が浸透してしまい、例えば、電子デバイス内の機能を劣化させてしまうという問題があることがわかっている。
そこで、ガスバリアー性を有する層(以下、ガスバリアー層とする)をフィルム基材に形成し、これらの積層物をガスバリアーフィルムとして使用することが一般的に知られている。例えば、ガスバリアー性を必要とする物の包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリアーフィルムとしては、フィルム基材上に酸化ケイ素を蒸着したものや、酸化アルミニウムを蒸着したものが知られている。
ところで、高いガスバリアー性と、高い生産性とを両立できるガスバリアー層の成膜方法として、ロール トゥ ロール(roll to roll)型のCVD成膜方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この成膜方法では、フィルム基材を一対のローラー(成膜ローラー)のそれぞれに接触させながら搬送しつつ、当該ローラー間に成膜ガスを供給しながらプラズマ放電を行ってフィルム基材上にガスバリアー層を気相成長させて成膜するようになっている。
しかしながら、特許文献1記載の技術では、成膜時にローラーが高温となるため、耐熱性の低いフィルム基材では熱変形が起きる結果、ローラーからの浮きが生じてしまう。そして、浮きの生じたフィルム基材にガスバリアー層が成膜されると、放電のムラが発生してガスバリアー層の層厚が不均一となり、ガスバリアー性にムラが生じてしまう。また、フィルム基材の熱変形に起因して、ローラー間でフィルム基材に張力のムラが生じて皺が発生するため、この状態のままガスバリアー層が成膜されて固定されることにより、使用不能な領域が発生して収率が低くなってしまう。
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ガスバリアー性を均一化し、収率を高めることのできるガスバリアーフィルムと、当該ガスバリアーフィルムの製造方法とを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、樹脂製のフィルム基材とガスバリアー層との間にアンカー層が介在し、ナノサーマル分析装置で探針の温度を150度としたときにアンカー層で測定される探針の変位信号の絶対値tvが、PET製の基材で測定される探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たす場合に本発明の課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.樹脂製のフィルム基材と、
前記フィルム基材における少なくとも一方の面に形成されたガスバリアー層と、
紫外線硬化樹脂を含んで形成され、前記フィルム基材と前記ガスバリアー層との間に介在するアンカー層と、
を備え、
ナノサーマル分析装置で探針の温度を150度としたときに前記アンカー層で測定される前記探針の変位信号の絶対値tvは、PET製の基材で測定される前記探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすことを特徴とするガスバリアーフィルム。
2.前記アンカー層は、
シリカ粒子を含有するフィラーを含むことを特徴とする第1項に記載のガスバリアーフィルム。
3.前記フィルム基材の厚さは、
100μm以下であることを特徴とする第1項又は第2項記載のガスバリアーフィルム。
4.前記アンカー層は、
紫外線硬化樹脂を含む材料を前記フィルム基材に塗布し、窒素雰囲気下で紫外線照射により硬化させることで形成されていることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
5.前記アンカー層の層厚Taは、
4μm以上であり、かつ、
前記ガスバリアー層の層厚Tbに対し10×Tb≦Taを満たすことを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
6.前記ガスバリアー層の表面に第2のガスバリアー層を備え、
前記第2のガスバリアー層は、
ポリシラザンを含む材料を前記ガスバリアー層の表面に塗布し、真空紫外線の照射により改質処理することで形成されていることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
7.樹脂製のフィルム基材における少なくとも一方の面にガスバリアー層が形成されたガスバリアーフィルムの製造方法において、
前記フィルム基材の前記少なくとも一方の面に対し、紫外線硬化樹脂を含む樹脂材料でアンカー層を形成するアンカー層形成工程と、
前記アンカー層形成工程の後に前記少なくとも一方の面に対し前記ガスバリアー層を形成することで、前記フィルム基材と前記ガスバリアー層との間に前記アンカー層を介在させるガスバリアー層形成工程と、
を含み、
前記アンカー層形成工程では、前記アンカー層として、
ナノサーマル分析装置で探針の温度を150度としたときに当該アンカー層で測定される前記探針の変位信号の絶対値tvが、PET製の基材で測定される前記探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすもの
を形成することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
8.前記樹脂材料として、
シリカ粒子を含有するフィラーを含むものを用いることを特徴とする第7項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
9.前記フィルム基材として、
厚さが100μm以下のものを用いることを特徴とする第7項又は第8項記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
10.前記アンカー層形成工程では、
前記樹脂材料を前記フィルム基材に塗布し、窒素雰囲気下で紫外線照射により硬化させることで、前記アンカー層を形成することを特徴とする第7項から第9項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
11.前記アンカー層として、
層厚Taが4μm以上であり、かつ、前記ガスバリアー層の層厚Tbに対し10×Tb≦Taを満たすものを形成することを特徴とする第7項から第10項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
12.前記ガスバリアー層形成工程の後に、ポリシラザンを含む材料を前記ガスバリアー層の表面に塗布し、真空紫外線の照射により改質処理して、前記ガスバリアー層の表面に第2のガスバリアー層を形成する第2ガスバリアー層形成工程を含むことを特徴とする第7項から第11項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
前記フィルム基材における少なくとも一方の面に形成されたガスバリアー層と、
紫外線硬化樹脂を含んで形成され、前記フィルム基材と前記ガスバリアー層との間に介在するアンカー層と、
を備え、
ナノサーマル分析装置で探針の温度を150度としたときに前記アンカー層で測定される前記探針の変位信号の絶対値tvは、PET製の基材で測定される前記探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすことを特徴とするガスバリアーフィルム。
2.前記アンカー層は、
シリカ粒子を含有するフィラーを含むことを特徴とする第1項に記載のガスバリアーフィルム。
3.前記フィルム基材の厚さは、
100μm以下であることを特徴とする第1項又は第2項記載のガスバリアーフィルム。
4.前記アンカー層は、
紫外線硬化樹脂を含む材料を前記フィルム基材に塗布し、窒素雰囲気下で紫外線照射により硬化させることで形成されていることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
5.前記アンカー層の層厚Taは、
4μm以上であり、かつ、
前記ガスバリアー層の層厚Tbに対し10×Tb≦Taを満たすことを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
6.前記ガスバリアー層の表面に第2のガスバリアー層を備え、
前記第2のガスバリアー層は、
ポリシラザンを含む材料を前記ガスバリアー層の表面に塗布し、真空紫外線の照射により改質処理することで形成されていることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
7.樹脂製のフィルム基材における少なくとも一方の面にガスバリアー層が形成されたガスバリアーフィルムの製造方法において、
前記フィルム基材の前記少なくとも一方の面に対し、紫外線硬化樹脂を含む樹脂材料でアンカー層を形成するアンカー層形成工程と、
前記アンカー層形成工程の後に前記少なくとも一方の面に対し前記ガスバリアー層を形成することで、前記フィルム基材と前記ガスバリアー層との間に前記アンカー層を介在させるガスバリアー層形成工程と、
を含み、
前記アンカー層形成工程では、前記アンカー層として、
ナノサーマル分析装置で探針の温度を150度としたときに当該アンカー層で測定される前記探針の変位信号の絶対値tvが、PET製の基材で測定される前記探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすもの
を形成することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
8.前記樹脂材料として、
シリカ粒子を含有するフィラーを含むものを用いることを特徴とする第7項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
9.前記フィルム基材として、
厚さが100μm以下のものを用いることを特徴とする第7項又は第8項記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
10.前記アンカー層形成工程では、
前記樹脂材料を前記フィルム基材に塗布し、窒素雰囲気下で紫外線照射により硬化させることで、前記アンカー層を形成することを特徴とする第7項から第9項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
11.前記アンカー層として、
層厚Taが4μm以上であり、かつ、前記ガスバリアー層の層厚Tbに対し10×Tb≦Taを満たすものを形成することを特徴とする第7項から第10項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
12.前記ガスバリアー層形成工程の後に、ポリシラザンを含む材料を前記ガスバリアー層の表面に塗布し、真空紫外線の照射により改質処理して、前記ガスバリアー層の表面に第2のガスバリアー層を形成する第2ガスバリアー層形成工程を含むことを特徴とする第7項から第11項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
本発明の上記手段により、ガスバリアーフィルムのガスバリアー性を均一化し、収率を高めることができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
即ち、樹脂製のフィルム基材とガスバリアー層との間に、紫外線硬化樹脂を含んで形成されたアンカー層が介在し、ナノサーマル分析装置で探針温度を150度としたときにアンカー層で測定される探針の変位信号(絶対値)tvは、PET製の基材で測定される探針の変位信号(絶対値)tkに対してtv<tk、かつ|tv−tk|<0.5[V]を満たすので、アンカー層の変位信号tvが0.5≦|tv−tk|[V]である場合と異なり、フィルム基材上にガスバリアー層を形成するとき等、フィルム基材が150度程度に加熱されるときに、アンカー層が硬すぎてクラックを生じてしまい、ガスバリアー層を破壊してしまうのが防止されると考えられる。したがって、部分的にガスバリアー層が破壊されてガスバリアー性にムラが生じてしまうのが防止され、ガスバリアー性能が均一なガスバリアーフィルムを作製することが可能になると考えられる。
また、変位信号tvは0.15<|tv−tk|[V]を満たすので、|tv−tk|≦0.15[V]である場合と比較して、アンカー層の熱膨張が小さく抑えられる。したがって、例えばフィルム基材に対しロール トゥ ロール型のCVD成膜方法でガスバリアー層を成膜するとき等、フィルム基材が150度程度に加熱されるときに、高温の成膜ローラーにフィルム基材が接触することで当該フィルム基材が熱変形を起こして伸びてしまうのが防止され、その結果、ロールからフィルム基材が浮いてしまうのが抑制されると考えられる。また、この成膜方法で成膜を長時間継続して行うことで成膜ローラーが蓄熱し、より高温になっていく場合であっても、熱膨張の小さいアンカー層がフィルム基材とガスバリアー層との間に介在することで、フィルム基材が補強されるため、ロールからのフィルム基材の浮きが抑制されると考えられる。よって、フィルム基材の浮きに起因してCVD成膜時に放電のムラが生じてしまうのが防止されるため、フィルム基材の大きさに関わらず層厚の均一なガスバリアー層を成膜することが可能となり、その結果、ガスバリアー性能が均一なガスバリアーフィルムを作製することが可能になると考えられる。
また、フィルム基材の浮きや熱変形が防止されるため、ローラー間でのフィルム基材の張力が均一化され、皺の発生が抑制されると考えられる。よって、皺に起因してガスバリアーフィルムに使用不能な領域が発生してしまうのが防止されるため、収率を高めることが可能になると考えられる。
以上から、ガスバリアー性を均一化し、収率を高めることができると考えられる。
また、変位信号tvは0.15<|tv−tk|[V]を満たすので、|tv−tk|≦0.15[V]である場合と比較して、アンカー層の熱膨張が小さく抑えられる。したがって、例えばフィルム基材に対しロール トゥ ロール型のCVD成膜方法でガスバリアー層を成膜するとき等、フィルム基材が150度程度に加熱されるときに、高温の成膜ローラーにフィルム基材が接触することで当該フィルム基材が熱変形を起こして伸びてしまうのが防止され、その結果、ロールからフィルム基材が浮いてしまうのが抑制されると考えられる。また、この成膜方法で成膜を長時間継続して行うことで成膜ローラーが蓄熱し、より高温になっていく場合であっても、熱膨張の小さいアンカー層がフィルム基材とガスバリアー層との間に介在することで、フィルム基材が補強されるため、ロールからのフィルム基材の浮きが抑制されると考えられる。よって、フィルム基材の浮きに起因してCVD成膜時に放電のムラが生じてしまうのが防止されるため、フィルム基材の大きさに関わらず層厚の均一なガスバリアー層を成膜することが可能となり、その結果、ガスバリアー性能が均一なガスバリアーフィルムを作製することが可能になると考えられる。
また、フィルム基材の浮きや熱変形が防止されるため、ローラー間でのフィルム基材の張力が均一化され、皺の発生が抑制されると考えられる。よって、皺に起因してガスバリアーフィルムに使用不能な領域が発生してしまうのが防止されるため、収率を高めることが可能になると考えられる。
以上から、ガスバリアー性を均一化し、収率を高めることができると考えられる。
本発明のガスバリアーフィルムは、樹脂製のフィルム基材と、前記フィルム基材における少なくとも一方の面に形成されたガスバリアー層と、紫外線硬化樹脂を含んで形成され、前記フィルム基材と前記ガスバリアー層との間に介在するアンカー層と、を備え、ナノサーマル分析装置で探針温度を150度としたときに前記アンカー層で測定される探針の変位信号の絶対値tvは、PET製の基材で測定される探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項12までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、シリカ粒子を含有するフィラーを含むことが、いっそうガスバリアーフィルムのガスバリアー性を均一化するとともに、収率を高めることができ、好ましい。また、前記フィルム基材の厚さは、100μm以下であることが、ガスバリアーフィルムの全体を薄くすることができ、好ましい。
さらに、本発明においては、前記アンカー層は、紫外線硬化樹脂を含む材料を前記フィルム基材に塗布し、窒素雰囲気下で紫外線照射により硬化させることで形成されていることが、ガスバリアーフィルムのガスバリアー性をいっそう均一化するとともに、収率を高めることができ、好ましい。また、前記アンカー層の層厚Taは、4μm以上であり、かつ、前記ガスバリアー層の層厚Tbに対し10×Tb≦Taを満たすことが、いっそうガスバリアーフィルムのガスバリアー性を均一化するとともに、収率を高めることができ、好ましい。また、前記ガスバリアー層の表面に第2のガスバリアー層を備え、前記第2のガスバリアー層は、ポリシラザンを含む材料を前記ガスバリアー層の表面に塗布し、真空紫外線の照射により改質処理することで形成されていることが、ガスバリアー性を向上させることができ、好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<1.本発明のガスバリアーフィルムの概要>
本発明のガスバリアーフィルムは、樹脂製のフィルム基材と、前記フィルム基材における少なくとも一方の面に形成されたガスバリアー層と、紫外線硬化樹脂を含んで形成され、前記フィルム基材と前記ガスバリアー層との間に介在するアンカー層と、を備え、ナノサーマル分析装置で探針温度を150度としたときに前記アンカー層で測定される探針の変位信号の絶対値tvは、PET製の基材で測定される探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすことを特徴とする。
本発明のガスバリアーフィルムは、樹脂製のフィルム基材と、前記フィルム基材における少なくとも一方の面に形成されたガスバリアー層と、紫外線硬化樹脂を含んで形成され、前記フィルム基材と前記ガスバリアー層との間に介在するアンカー層と、を備え、ナノサーマル分析装置で探針温度を150度としたときに前記アンカー層で測定される探針の変位信号の絶対値tvは、PET製の基材で測定される探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすことを特徴とする。
<1−1.ガスバリアーフィルムの構成>
本発明のガスバリアーフィルム1aは、例えば、図1(a)に示すように、樹脂製のフィルム基材10の両面にアンカー層11を備え、その一方のアンカー層11上にガスバリアー層12が積層されてなる4層構成のバリアーフィルムである。
本発明のガスバリアーフィルム1aは、例えば、図1(a)に示すように、樹脂製のフィルム基材10の両面にアンカー層11を備え、その一方のアンカー層11上にガスバリアー層12が積層されてなる4層構成のバリアーフィルムである。
また、別の態様である本発明のガスバリアーフィルム1bは、例えば、図1(b)に示すように、フィルム基材10の両面にアンカー層11を備え、その一方のアンカー層11上にガスバリアー層12が積層され、更に当該ガスバリアー層12にポリシラザンを含む第2ガスバリアー層13が積層されている。第2ガスバリアー層13上にはオーバーコート層14が積層されていることも好ましい態様である。
なお、これらのガスバリアーフィルム1a,1bにおいて、アンカー層11はフィルム基材10の一方の面のみに形成されていても良い。
なお、これらのガスバリアーフィルム1a,1bにおいて、アンカー層11はフィルム基材10の一方の面のみに形成されていても良い。
<1−2.フィルム基材>
本発明のガスバリアーフィルムのフィルム基材10としては、後述のバリアー性を有するガスバリアー層を保持することができる樹脂材料で形成されたものであれば、特に限定されるものではない。
本発明のガスバリアーフィルムのフィルム基材10としては、後述のバリアー性を有するガスバリアー層を保持することができる樹脂材料で形成されたものであれば、特に限定されるものではない。
例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、及びポリエーテルイミド、シクロオレフィンポリマー(COP)等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
フィルム基材10の厚さは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmの範囲である。また、フィルム基材10の厚さを100μm以下としても良い。
また、本発明におけるフィルム基材10は透明であることが好ましい。フィルム基材10が透明であり、フィルム基材10上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリアーフィルムとすることが可能となるため、有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
また、上記に挙げた樹脂等を用いたフィルム基材10は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。また延伸により位相差等を調整することもできる。
本発明に用いられるフィルム基材10は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸のフィルム基材10を製造することができる。また、材料となる樹脂を溶媒に溶解し、無端の金属支持体上に流延(キャスト)して乾燥、剥離することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸のフィルム基材10を製造することもができる。
未延伸のフィルム基材10を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、フィルム基材10の流れ(縦軸)方向、又はフィルム基材10の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸フィルム基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、フィルム基材10の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍の範囲が好ましい。
また本発明に用いられるフィルム基材10は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は上述の成膜方法における延伸成膜工程中の熱固定をした後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃の範囲である。オフライン熱処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、複数のローラー群によるローラー搬送方法、空気をフィルムに吹き付けて浮揚させるエアー搬送などにより搬送させる方法(複数のスリットから加熱空気をフィルム面の片面あるいは両面に吹き付ける方法)、赤外線ヒーターなどによる輻射熱を利用する方法、フィルムを自重で垂れ下がらせ、下方で巻き等搬送方法等を挙げることができる。熱処理の搬送張力をできるだけ低くして熱収縮を促進することで、良好な寸法安定性のフィルム基材10となる。処理温度としては(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度範囲が好ましい。Tgとは樹脂のガラス転移温度(℃)をいう。
本発明におけるフィルム基材10は、成膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することができる。本発明において、成膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等を挙げることができ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
<1−3.アンカー層>
本発明におけるアンカー層11は、硬化性樹脂を含む材料で形成されており、好ましくは紫外線硬化樹脂を含む材料で形成されている。
本発明におけるアンカー層11は、硬化性樹脂を含む材料で形成されており、好ましくは紫外線硬化樹脂を含む材料で形成されている。
〈硬化性樹脂〉
アンカー層11に用いられる硬化性樹脂としては、例えばエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、及びエチレンビニルアセテート(EVA)樹脂等が挙げられる。紫外線硬化樹脂としては、硬化によって透明な樹脂組成物を形成する物であれば特に制限なく使用でき、特に好ましくは、硬度、平滑性、透明性の観点からアクリル、ウレタン、及びポリエステル系樹脂等を用いることができる。
アンカー層11に用いられる硬化性樹脂としては、例えばエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、及びエチレンビニルアセテート(EVA)樹脂等が挙げられる。紫外線硬化樹脂としては、硬化によって透明な樹脂組成物を形成する物であれば特に制限なく使用でき、特に好ましくは、硬度、平滑性、透明性の観点からアクリル、ウレタン、及びポリエステル系樹脂等を用いることができる。
アクリル系樹脂組成物としては、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させたもの等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
硬化性樹脂を溶媒に溶解又は分散させた樹脂組成物を用いてアンカー層11を形成する際に使用する溶媒としては、公知のアルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等を使用することができる。
アンカー層11の材料には、必要に応じて、酸化防止剤、可塑剤、マット剤、熱可塑性樹脂等の添加剤(フィラー)を加えることができ、特にマット剤を加えることが好ましい。用いられるマット剤としては、無機微粒子又は有機微粒子を含有させることが好ましい。無機微粒子又は有機微粒子は塗膜の硬化収縮を抑制し、アンカー層11の基材への密着性を向上させることができる。
アンカー層11の透明性を低下させないために、無機微粒子の一次粒子径が100nm未満であることが好ましく、特に50nm未満であることが好ましい。粒子径が100nmを越えると光の散乱が発生し、透過率の低下による透明性の低下が発生するため好ましくない。
無機微粒子としては、乾式シリカ、湿式シリカなどのシリカ粒子、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化セリウム、酸化アンチモン、インジウムスズ混合酸化物及びアンチモンスズ混合酸化物などの金属酸化物微粒子、アクリル、スチレンなどの有機微粒子などが挙げられ、とりわけ、透明性、硬度の観点から10〜50nmの範囲のシリカ粒子を有機溶媒に分散させたナノ分散シリカ粒子であることが好ましい。
また、無機微粒子は、アンカー層11を構成する硬化性樹脂100質量部に対し、5〜50質量部の範囲配合されることが好ましく、特に10〜40質量部の範囲配合されることが好ましい。添加量はまた後述する算術平均粗さによって適宜決定される。
〈アンカー層の物性〉
このアンカー層11は、所定の程度だけ硬く、熱膨張し難くなっている。
即ち、ナノサーマル分析装置において探針(プローブ)の温度を150度としたときにアンカー層11で測定される探針の変位信号tv(ただしtvは絶対値)が、PET製の基材(以下、基準基材とする)で測定される探針の変位信号tk(ただしtkは絶対値)に対してtv<tkであり、かつ、以下の式を満たすようになっている。
このアンカー層11は、所定の程度だけ硬く、熱膨張し難くなっている。
即ち、ナノサーマル分析装置において探針(プローブ)の温度を150度としたときにアンカー層11で測定される探針の変位信号tv(ただしtvは絶対値)が、PET製の基材(以下、基準基材とする)で測定される探針の変位信号tk(ただしtkは絶対値)に対してtv<tkであり、かつ、以下の式を満たすようになっている。
0.15<|tv−tk|<0.5[V]
このように基準基材での変位信号tkに対する変位信号tvの差分を用いることにより、アンカー層11の物性が、ナノサーマル分析装置の個体差によらずに規定される。そのため、ナノサーマル分析装置としては、従来公知の任意の装置を用いることができる。
このように基準基材での変位信号tkに対する変位信号tvの差分を用いることにより、アンカー層11の物性が、ナノサーマル分析装置の個体差によらずに規定される。そのため、ナノサーマル分析装置としては、従来公知の任意の装置を用いることができる。
ここで、基準基材(PET製の基材)としては、例えば帝人株式会社製の「KEL86W」(厚さ125μm)などを用いることができる。
また、変位信号tv,tkは、それぞれ値が大きいほど電気的な押し込みが大きい、すなわち熱による変位が大きいということになり、測定対象(アンカー層11又は基準基材)が150度で熱膨張しやすい(柔らかい)ことを意味し、値が小さいほど電気的な押し込みが小さい、すなわち熱による変位が小さいということになり測定対象が150度で熱膨張し難い(硬い)ことを意味する。そして、基準基材(PET製の基材)での変位信号tkは一般にアンカー層11での変位信号tvよりも大きく(つまりtv<tk)、「|tv−tk|」は、値が大きいほどアンカー層11が150度で熱膨張し難く(硬く)、値が小さいほどアンカー層11が150度で熱膨張しやすい(柔らかい)ことを意味する。
また、変位信号tv,tkは、それぞれ値が大きいほど電気的な押し込みが大きい、すなわち熱による変位が大きいということになり、測定対象(アンカー層11又は基準基材)が150度で熱膨張しやすい(柔らかい)ことを意味し、値が小さいほど電気的な押し込みが小さい、すなわち熱による変位が小さいということになり測定対象が150度で熱膨張し難い(硬い)ことを意味する。そして、基準基材(PET製の基材)での変位信号tkは一般にアンカー層11での変位信号tvよりも大きく(つまりtv<tk)、「|tv−tk|」は、値が大きいほどアンカー層11が150度で熱膨張し難く(硬く)、値が小さいほどアンカー層11が150度で熱膨張しやすい(柔らかい)ことを意味する。
上述のようにアンカー層11の変位信号tvが0.15<|tv−tk|<0.5[V]の式を満たすことにより、フィルム基材10上にガスバリアー層12を形成するとき等、フィルム基材10が150度程度に加熱されるときに、フィルム基材10の熱変形や伸びを抑制するとともに、アンカー層11にクラックが生じてしまうのを防止することができる。
一方、|tv−tk|≦0.15[V]のときには、アンカー層11の熱膨張が大き過ぎるため、フィルム基材10上にガスバリアー層12を形成するとき等に、フィルム基材10の熱変形や伸びを十分に抑制することができない。また、0.5≦|tv−tk|[V]のときには、アンカー層11が硬過ぎるため、フィルム基材10上にガスバリアー層12を形成するとき等に、アンカー層11自体にクラックが発生してしまい、その結果、部分的にガスバリアー層12が破壊されて水蒸気透過度の低下の原因となる。
一方、|tv−tk|≦0.15[V]のときには、アンカー層11の熱膨張が大き過ぎるため、フィルム基材10上にガスバリアー層12を形成するとき等に、フィルム基材10の熱変形や伸びを十分に抑制することができない。また、0.5≦|tv−tk|[V]のときには、アンカー層11が硬過ぎるため、フィルム基材10上にガスバリアー層12を形成するとき等に、アンカー層11自体にクラックが発生してしまい、その結果、部分的にガスバリアー層12が破壊されて水蒸気透過度の低下の原因となる。
本発明のアンカー層11の厚さは、特に限定されないが、0.1〜10μmの範囲が好ましく、特に0.5〜5μmの範囲が好ましい。また、アンカー層11の厚さTaを4μm以上、好ましくは4≦Ta≦8[μm]とし、後述のガスバリアー層12の厚さTbに対して10×Tb≦Taを満たすようにしても良い。アンカー層11は2層以上の構成になっていても良い。また、フィルム基材10の両面のアンカー層11の厚さは、同一でも異なっていてもよく、前記両面の押し込み硬さの設計によって、適宜厚さを変えることが好ましい。
本発明におけるアンカー層11は、算術平均粗さRa値が0.3〜5nmの範囲内であることが好ましい。好ましくは0.5〜3nmの範囲である。0.3nmより大きいと、表面が平滑すぎず成膜ローラー搬送の劣化がみられないため、CVD法でのガスバリアー層12の形成が良好に行える。一方、5nmより小さいと、成膜ローラーとの密着性がよく、放電に影響を与えないのでガスバリアー層12内の炭素原子成分の濃度勾配が均一になり、ガスバリアー性や屈曲性等が改善され好ましい。
本発明のアンカー層11の算術平均粗さ(Ra)は以下の方法で測定することができる。
算術平均粗さ測定の方法;AFM測定:
算術平均粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)、例えば、Digital Instruments社製DI3100で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
算術平均粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)、例えば、Digital Instruments社製DI3100で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
<1−4.ガスバリアー層>
ガスバリアー層12は、水蒸気透過度が1×10−2g/m2/24h以下の層である。
このガスバリアー層12は、厚さが5〜3000nmの範囲内であることが好ましく、10〜2000nmの範囲内であることより好ましく、100〜1000nmの範囲内であることが特に好ましい。ガスバリアー層12の厚さが前記範囲内であれば、酸素ガスバリアー性、水蒸気バリアー性等のガスバリアー性に優れ、屈曲によるガスバリアー性の低下がみられない。
ガスバリアー層12は、水蒸気透過度が1×10−2g/m2/24h以下の層である。
このガスバリアー層12は、厚さが5〜3000nmの範囲内であることが好ましく、10〜2000nmの範囲内であることより好ましく、100〜1000nmの範囲内であることが特に好ましい。ガスバリアー層12の厚さが前記範囲内であれば、酸素ガスバリアー性、水蒸気バリアー性等のガスバリアー性に優れ、屈曲によるガスバリアー性の低下がみられない。
また、本発明のガスバリアーフィルムが複数のガスバリアー層12を備える場合には、それらのガスバリアー層12の厚さのトータルの値は、通常10〜10000nmの範囲であり、10〜5000nmの範囲であることが好ましく、100〜3000nmの範囲であることより好ましく、200〜2000nmの範囲であることが特に好ましい。ガスバリアー層12の厚さの合計値が前記範囲内であると、酸素ガスバリアー性、水蒸気バリアー性等のガスバリアー性が十分であり、屈曲によりガスバリアー性も低下しにくい傾向にある。
ガスバリアー層12を形成する材料としては、ケイ素化合物やチタン化合物、アルミニウム化合物が有用である。特に、二酸化ケイ素等のケイ素酸化物若しくはケイ素酸窒化物の薄膜をフィルム基材上に形成することにより優れたガスバリアー性をフィルム基材10に付与することができる。
<1−5.第2のガスバリアー層>
本発明においてはガスバリアー層12の上に、第2のガスバリアー層13を設けることが好ましい。この第2のガスバリアー層13は、ポリシラザンを含む材料をガスバリアー層12の表面に塗布し、波長200nm以下の真空紫外光(VUV光)等を照射して改質処理することにより形成される。CVD法で設けたガスバリアー層12の上にこのような第2のガスバリアー層13を設けることにより、ガスバリアー層12に残存する微小な欠陥を、上部からポリシラザンのガスバリアー成分で埋めることができ、更なるガスバリアー性と屈曲性を向上できるので、好ましい。
本発明においてはガスバリアー層12の上に、第2のガスバリアー層13を設けることが好ましい。この第2のガスバリアー層13は、ポリシラザンを含む材料をガスバリアー層12の表面に塗布し、波長200nm以下の真空紫外光(VUV光)等を照射して改質処理することにより形成される。CVD法で設けたガスバリアー層12の上にこのような第2のガスバリアー層13を設けることにより、ガスバリアー層12に残存する微小な欠陥を、上部からポリシラザンのガスバリアー成分で埋めることができ、更なるガスバリアー性と屈曲性を向上できるので、好ましい。
第2のガスバリアー層13の厚さは、1〜500nmの範囲が好ましい、より好ましくは10〜300nmの範囲である。上記厚さの範囲内であれば、ガスバリアー性能が発揮でき、緻密な酸窒化ケイ素膜にクラックが入りにくい。
〈ポリシラザン〉
本発明における「ポリシラザン」とは、構造内にケイ素−窒素結合を持つポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、下記の構造を有するものが好ましく用いられる。
本発明における「ポリシラザン」とは、構造内にケイ素−窒素結合を持つポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、下記の構造を有するものが好ましく用いられる。
本発明では、得られるガスバリアー層13の膜としての緻密性の観点からは、R1、R2及びR3の全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6員環及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されており、その分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質である。
ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120−20、NAX120−20、NL120−20などが挙げられる。
<1−6.オーバーコート層>
本発明における第2のガスバリアー層13の上には屈曲性を更に改善するのに、オーバーコート層14を形成しても良い。オーバーコート層14に用いられる有機物としては、有機モノマー、オリゴマー、ポリマー等の有機樹脂、有機基を有するシロキサンやシルセスキオキサンのモノマー、オリゴマー、ポリマー等を用いた有機無機複合樹脂層を好ましく用いることができる。これらの有機樹脂若しくは有機無機複合樹脂は重合性基や架橋性基を有することが好ましく、これらの有機樹脂若しくは有機無機複合樹脂を含有し、必要に応じて重合開始剤や架橋剤等を含有する有機樹脂組成物塗布液から塗布形成した層に、光照射処理や熱処理を加えて硬化させることが好ましい。
本発明における第2のガスバリアー層13の上には屈曲性を更に改善するのに、オーバーコート層14を形成しても良い。オーバーコート層14に用いられる有機物としては、有機モノマー、オリゴマー、ポリマー等の有機樹脂、有機基を有するシロキサンやシルセスキオキサンのモノマー、オリゴマー、ポリマー等を用いた有機無機複合樹脂層を好ましく用いることができる。これらの有機樹脂若しくは有機無機複合樹脂は重合性基や架橋性基を有することが好ましく、これらの有機樹脂若しくは有機無機複合樹脂を含有し、必要に応じて重合開始剤や架橋剤等を含有する有機樹脂組成物塗布液から塗布形成した層に、光照射処理や熱処理を加えて硬化させることが好ましい。
<2.本発明のガスバリアーフィルムの製造方法の概要>
本発明のガスバリアーフィルムの製造方法は、樹脂製のフィルム基材10における少なくとも一方の面にガスバリアー層12が形成されたガスバリアーフィルムの製造方法であって、フィルム基材10の前記少なくとも一方の面に対し、紫外線硬化樹脂を含む樹脂材料でアンカー層11を形成するアンカー層形成工程と、アンカー層形成工程の後に前記少なくとも一方の面に対しガスバリアー層12を形成することで、フィルム基材10とガスバリアー層12との間にアンカー層11を介在させるガスバリアー層形成工程と、を含み、アンカー層形成工程では、アンカー層11として、ナノサーマル分析装置で探針温度を150度としたときに当該アンカー層で測定される探針の変位信号の絶対値tvが、PET製の基材で測定される探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすものを形成することを特徴とする。
本発明のガスバリアーフィルムの製造方法は、樹脂製のフィルム基材10における少なくとも一方の面にガスバリアー層12が形成されたガスバリアーフィルムの製造方法であって、フィルム基材10の前記少なくとも一方の面に対し、紫外線硬化樹脂を含む樹脂材料でアンカー層11を形成するアンカー層形成工程と、アンカー層形成工程の後に前記少なくとも一方の面に対しガスバリアー層12を形成することで、フィルム基材10とガスバリアー層12との間にアンカー層11を介在させるガスバリアー層形成工程と、を含み、アンカー層形成工程では、アンカー層11として、ナノサーマル分析装置で探針温度を150度としたときに当該アンカー層で測定される探針の変位信号の絶対値tvが、PET製の基材で測定される探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすものを形成することを特徴とする。
以下、この方法における各工程について説明する。
<2−1.アンカー層形成工程>
本発明のアンカー層11は、上述したアンカー層11の材料(樹脂材料)を、例えばドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等によりフィルム基材10に塗布し(必要に応じて硬化剤を加え)、加熱や紫外線照射により硬化させることで形成することができる。
<2−1.アンカー層形成工程>
本発明のアンカー層11は、上述したアンカー層11の材料(樹脂材料)を、例えばドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等によりフィルム基材10に塗布し(必要に応じて硬化剤を加え)、加熱や紫外線照射により硬化させることで形成することができる。
紫外線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nmの範囲、好ましくは200〜400nmの範囲の波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
なお、上述のようにアンカー層11の変位信号tv(ナノサーマル分析装置において探針温度を150度としたときにアンカー層11で測定される探針の変位信号の絶対値)を、基準基材の変位信号tk(PET製の基材で測定される探針の変位信号の絶対値)に対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]の範囲内にするには、アンカー層11の塗膜を窒素雰囲気下で硬化させる手法や、アンカー層11の材料に無機微粒子を添加する手法、材料の架橋密度を上げる手法などを用いることができる。
アンカー層11の塗膜を窒素雰囲気下で硬化させる場合には、「|tv−tk|」の値を大きくし、アンカー層11を熱膨張し難くすることができる。
なお、窒素雰囲気とは、具体的には窒素を95%以上の濃度で含む雰囲気である。
なお、窒素雰囲気とは、具体的には窒素を95%以上の濃度で含む雰囲気である。
<2−2.ガスバリアー層形成工程>
本発明のガスバリアー層12は、気相法による無機成膜方法を利用した方法で形成することができる。当該気相法による無機成膜方法としては、フィルム等の基材上に、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)によって金属(テトラエトキシシラン(TEOS)に代表される有機ケイ素化合物等)を酸素プラズマで酸化しながら蒸着して無機膜(ガスバリアー層)を形成する方法や、半導体レーザー等を用いて金属を蒸発させて、酸素の存在下で基材上に堆積する真空蒸着法、スパッタ法により無機膜(ガスバリアー層)を形成する方法等が挙げられる。
本発明のガスバリアー層12は、気相法による無機成膜方法を利用した方法で形成することができる。当該気相法による無機成膜方法としては、フィルム等の基材上に、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)によって金属(テトラエトキシシラン(TEOS)に代表される有機ケイ素化合物等)を酸素プラズマで酸化しながら蒸着して無機膜(ガスバリアー層)を形成する方法や、半導体レーザー等を用いて金属を蒸発させて、酸素の存在下で基材上に堆積する真空蒸着法、スパッタ法により無機膜(ガスバリアー層)を形成する方法等が挙げられる。
好ましくは、本発明におけるガスバリアー層12は、アンカー層11を両面に有するフィルム基材10を一対の成膜ローラーの各々に接触させながら搬送を行い、当該一対の成膜ローラー間に成膜ガスを供給しながらプラズマ放電を行うプラズマ化学気相成長法によって形成される。より詳しくは、アンカー層11の形成されたフィルム基材10を一対の成膜ローラーの各々に接触させながら搬送を行い、前記一対の成膜ローラー間に成膜ガスを供給しながらプラズマ放電して、プラズマ化学気相成長法を行うことにより、ガスバリアー層12を形成することができる。これにより、フィルム基材10とガスバリアー層12との間にアンカー層11が介在することとなる。
このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上にフィルム基材10を接触させながら搬送して一対の成膜ローラー間にプラズマ放電することにより、一方の成膜ローラー上に存在するフィルム基材10の表面に成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在するフィルム基材10の表面にも同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できるばかりか、成膜レートを倍にできる。
なお、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。また、このようなプラズマ化学気相成長法に用いる前記成膜ガスとしては有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましい。また、本発明のガスバリアーフィルムにおいては、前記ガスバリアー層12が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。なお、前記プラズマ化学気相成長法はペニング放電プラズマ方式のプラズマ化学気相成長法であっても良い。
このようなプラズマ化学気相成長法によりガスバリアー層12の形成に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備えかつ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図2に示す装置(以下、ガスバリアー層形成装置20とする)を用いた場合には、プラズマ化学気相成長法を利用しながらロール トゥ ロール方式で製造することも可能となる。
以下、図2を参照しながら、ガスバリアー層12を形成する方法についてより詳細に説明する。なお、図2は、ガスバリアー層を形成するのに好適に利用することが可能なガスバリアー層形成装置20の一例を示す模式図である。以下の説明におけるフィルム基材10とは、本発明におけるアンカー層11を両面に有するフィルム基材10をいう。
図2に示すガスバリアー層形成装置20は、所定幅を有する長尺な帯状のフィルム基材10を複数のローラーで搬送しながら当該フィルム基材10にCVD法でガスバリアー層12を形成するものである。このガスバリアー層形成装置20では、フィルム基材10の搬送方向Xの上流側に、フィルム基材10が巻回された送り出しローラー(元巻きローラー)25が回転自在に配設され、搬送方向Xの下流側に、フィルム基材10を巻き取るための巻取りローラー26が回転自在に配設されている。なお、本実施の形態における巻取りローラー26には、当該巻取りローラー26を回転させるためのモーター等の駆動源(図示せず)が接続されている。この巻取りローラー26としては、ガスバリアー層12を形成したフィルム基材10を巻き取ることが可能である限りにおいて、適宜公知のローラーを用いることができる。送り出しローラー25としては、適宜公知のローラーを用いることができる。
これらの送り出しローラー25及び巻取りローラー26の間には、搬送方向Xの上流側から下流側に向って、搬送ローラー21、成膜ローラー31、搬送ローラー22,23、成膜ローラー32、搬送ローラー24が、この順に配設されている。これらの搬送ローラー21〜24及び成膜ローラー31、32は、それぞれ回動自在に配設されており、フィルム基材10に所定の張力を掛けつつ、当該フィルム基材10を搬送方向Xに搬送するようになっている。
このうち、一対の成膜ローラー31、32は、互いに周面を対向させた状態で近接して配設されている。そして、これら一対の成膜ローラー31、32は、それぞれプラズマ発生用電源33に接続されており、一対の対向電極として機能するようになっている。このプラズマ発生用電源33は、電力の供給によって成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の空間に放電を行わせ、プラズマを発生させることができるようになっている。このようなプラズマ発生用電源33としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができるものの、より効率よくプラズマCVD法を実施する観点からは、成膜ローラー31、32の極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源33としては、より効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWの範囲とすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲とすることが可能なものであることがより好ましい。
なお、このように成膜ローラー31、32を電極としても利用する場合には、その材質や設計を適宜変更すればよい。電極として利用可能な成膜ローラー31、32としては、適宜公知のローラーを用いることができる。ただし、成膜ローラー31、32としては、より効率よく薄膜を形成するという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、成膜ローラー31、32の直径としては、放電条件、後述の真空チャンバーのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲、特に300〜700mmφの範囲が好ましい。300mmφより大きいと、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量がフィルムにかかることを回避できることから、基材へのダメージを軽減でき好ましい。一方、1000mmφより小さいと、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
以上のような一対の成膜ローラー31、32は、中心軸同士がほぼ平行となるようにして配置されることが好ましい。
以上のような一対の成膜ローラー31、32は、中心軸同士がほぼ平行となるようにして配置されることが好ましい。
成膜ローラー31及び成膜ローラー32の内部には、磁場発生装置34及び35がそれぞれ設けられている。これらの磁場発生装置34、35は、成膜ローラー31、32の回転に追従して自身が回転しないように固定されており、プラズマの移動方向を揃えるようになっている。なお、このような磁場発生装置34、35としては、例えば永久磁石など、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
また、成膜ローラー31、32の近傍には、原料ガス等を所定の速度で供給又は排出するガス供給口36が配設されている。
なお、以上のようなガスバリアー層形成装置20の各構成のうち、少なくとも成膜ローラー31、32と、ガス供給口36と、プラズマ発生用電源33と、磁場発生装置34、35とは、真空チャンバー(図示せず)内に配置されている。この真空チャンバーは、真空ポンプ(図示せず)に接続されており、内圧が適宜調整されるようになっている。真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5〜100Paの範囲とすることが好ましい。
そして、以上のようなガスバリアー層形成装置20おいては、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、一対の成膜ローラー31、32間にプラズマ放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、プラズマCVD法によって成膜ローラー31上のフィルム基材10の表面と、成膜ローラー32上のフィルム基材10の表面とにガスバリアー層12が形成される。また、このとき、送り出しローラー25や巻取りローラー26、成膜ローラー31がフィルム基材10を搬送方向Xに搬送することにより、ガスバリアー層12の形成されたフィルム基材10の領域は巻取りローラー26に巻き取られ、いまだガスバリアー層12の形成されていない新たなフィルム基材10の領域が送り出しローラー25から繰り出されて成膜ローラー31、32上に搬送される。なお、原料ガスの種類や、プラズマ発生用電源33の電力、真空チャンバー内の圧力、成膜ローラー31、32の直径、フィルム基材10の搬送速度などは適宜調整することができる。
〈原料ガス〉
本発明におけるガスバリアー層12の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリアー層12の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えばケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、成膜での取扱い及び得られるガスバリアー層12のガスバリアー性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明におけるガスバリアー層12の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリアー層12の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えばケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、成膜での取扱い及び得られるガスバリアー層12のガスバリアー性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや、水素を用いることができる。
〈その他の成膜条件〉
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー31及び32間に放電するために、プラズマ発生用電源33に接続された電極ドラム(本実施形態においては成膜ローラー31及び32に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような範囲の印加電力であれば、パーティクルの発生もみられず、成膜時に発生する熱量も制御内であるため、成膜時の基材表面の温度上昇による、フィルム基材10の熱負けや皺の発生もない。また、熱でフィルム基材10が溶けて、裸の成膜ローラー間に大電流の放電が発生して成膜ローラー自体を傷めてしまう可能性も小さい。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー31及び32間に放電するために、プラズマ発生用電源33に接続された電極ドラム(本実施形態においては成膜ローラー31及び32に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような範囲の印加電力であれば、パーティクルの発生もみられず、成膜時に発生する熱量も制御内であるため、成膜時の基材表面の温度上昇による、フィルム基材10の熱負けや皺の発生もない。また、熱でフィルム基材10が溶けて、裸の成膜ローラー間に大電流の放電が発生して成膜ローラー自体を傷めてしまう可能性も小さい。
フィルム基材10の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲とすることがより好ましい。ライン速度が前記範囲内であれば、フィルム基材10の熱に起因する皺の発生もし難く、形成されるガスバリアー層12の厚さも十分に制御可能である。
<2−3.第2ガスバリアー層形成工程>
第2のガスバリアー層13は、ガスバリアー層12上にポリシラザンを含む塗布液を塗布し乾燥した後、真空紫外線を照射して改質処理を行うことにより形成することができる。
第2のガスバリアー層13は、ガスバリアー層12上にポリシラザンを含む塗布液を塗布し乾燥した後、真空紫外線を照射して改質処理を行うことにより形成することができる。
塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは避けることが好ましい。例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用でき、具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの有機溶媒は、ポリシラザンの溶解度や溶媒の蒸発速度等の目的に合わせて選択し、複数の有機溶媒を混合しても良い。
ポリシラザンを含有する塗布液中のポリシラザンの濃度は、第2のガスバリアー層13の層厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは0.2〜35質量%程度である。
酸窒化ケイ素への変性を促進するために、該塗布液にアミン触媒や、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒を添加することもできる。本発明においては、アミン触媒を用いることが特に好ましい。具体的なアミン触媒としては、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等が挙げられる。
ポリシラザンに対するこれら触媒の添加量は、塗布液全体に対して0.1〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.2〜5質量%の範囲であることがより好ましく、0.5〜2質量%の範囲であることがさらに好ましい。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大のなどを避けることができる。
ポリシラザンを含有する塗布液を塗布する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、例えば、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗膜の厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗膜の厚さは、乾燥後の厚さとして50nm〜2μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは70nm〜1.5μmの範囲にあり、100nm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましい。
〈エキシマ処理〉
本発明における第2のガスバリアー層13は、ポリシラザンを含む層に真空紫外線を照射する工程で、ポリシラザンの少なくとも一部が酸窒化ケイ素へと改質される。
本発明における第2のガスバリアー層13は、ポリシラザンを含む層に真空紫外線を照射する工程で、ポリシラザンの少なくとも一部が酸窒化ケイ素へと改質される。
ここで、真空紫外線照射工程でポリシラザンを含む塗膜が改質され、SiOxNyの特定組成となる推定メカニズムを、パーヒドロポリシラザンを例にとって説明する。
パーヒドロポリシラザンは「−(SiH2−NH)n−」の組成で示すことができる。SiOxNyで示す場合、x=0、y=1である。x>0となるためには外部の酸素源が必要であるが、これは、(i)ポリシラザン塗布液に含まれる酸素や水分、(ii)塗布乾燥過程の雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、(iii)真空紫外線照射工程での
雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、オゾン、一重項酸素、(iv)真空紫外線照射工程で印加される熱等により基材側からアウトガスとして塗膜中に移動してくる酸素や水分、(v)真空紫外線照射工程が非酸化性雰囲気で行われる場合には、その非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気へと移動した際に、その雰囲気から塗膜に取り込まれる酸素や水分、などが酸素源となる。
雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、オゾン、一重項酸素、(iv)真空紫外線照射工程で印加される熱等により基材側からアウトガスとして塗膜中に移動してくる酸素や水分、(v)真空紫外線照射工程が非酸化性雰囲気で行われる場合には、その非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気へと移動した際に、その雰囲気から塗膜に取り込まれる酸素や水分、などが酸素源となる。
一方、yについては、Siの酸化よりも窒化が進行する条件は非常に特殊であると考えられるため、基本的には1が上限である。
また、Si、O、Nの結合手の関係から、基本的にはx、yは2x+3y≦4の範囲にある。酸化が完全に進んだy=0の状態においては、塗膜中にシラノール基を含有するようになり、2<x<2.5の範囲となる場合もある。
真空紫外線照射工程でパーヒドロポリシラザンから酸窒化ケイ素、さらには酸化ケイ素が生じると推定される反応機構について、以下に説明する。
(1)脱水素、それに伴うSi−N結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−H結合やN−H結合は真空紫外線照射による励起等で比較的容易に切断され、不活性雰囲気下ではSi−Nとして再結合すると考えられる(Siの未結合手が形成される場合もある)。すなわち、酸化することなくSiNy組成として硬化する。この場合はポリマー主鎖の切断は生じない。Si−H結合やN−H結合の切断は触媒の存在や、加熱によって促進される。切断されたHはH2として膜外に放出される。
パーヒドロポリシラザン中のSi−H結合やN−H結合は真空紫外線照射による励起等で比較的容易に切断され、不活性雰囲気下ではSi−Nとして再結合すると考えられる(Siの未結合手が形成される場合もある)。すなわち、酸化することなくSiNy組成として硬化する。この場合はポリマー主鎖の切断は生じない。Si−H結合やN−H結合の切断は触媒の存在や、加熱によって促進される。切断されたHはH2として膜外に放出される。
(2)加水分解・脱水縮合によるSi−O−Si結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−N結合は水により加水分解され、ポリマー主鎖が切断されてSi−OHを形成する。二つのSi−OHが脱水縮合してSi−O−Si結合を形成して硬化する。これは大気中でも生じる反応であるが、不活性雰囲気下での真空紫外線照射中では、照射の熱によって基材からアウトガスとして生じる水蒸気が主な水分源となると考えられる。水分が過剰となると脱水縮合しきれないSi−OHが残存し、SiO2.1〜2.3の組成で示されるガスバリアー性の低い硬化膜となる。
パーヒドロポリシラザン中のSi−N結合は水により加水分解され、ポリマー主鎖が切断されてSi−OHを形成する。二つのSi−OHが脱水縮合してSi−O−Si結合を形成して硬化する。これは大気中でも生じる反応であるが、不活性雰囲気下での真空紫外線照射中では、照射の熱によって基材からアウトガスとして生じる水蒸気が主な水分源となると考えられる。水分が過剰となると脱水縮合しきれないSi−OHが残存し、SiO2.1〜2.3の組成で示されるガスバリアー性の低い硬化膜となる。
(3)一重項酸素による直接酸化、Si−O−Si結合の形成
真空紫外線照射中、雰囲気下に適当量の酸素が存在すると、酸化力の非常に強い一重項酸素が形成される。パーヒドロポリシラザン中のHやNはOと置き換わってSi−O−Si結合を形成して硬化する。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
真空紫外線照射中、雰囲気下に適当量の酸素が存在すると、酸化力の非常に強い一重項酸素が形成される。パーヒドロポリシラザン中のHやNはOと置き換わってSi−O−Si結合を形成して硬化する。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
(4)真空紫外線照射・励起によるSi−N結合切断を伴う酸化
真空紫外線のエネルギーはパーヒドロポリシラザン中のSi−Nの結合エネルギーよりも高いため、Si−N結合は切断され、周囲に酸素、オゾン、水等の酸素源が存在すると酸化されてSi−O−Si結合やSi−O−N結合が生じると考えられる。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
真空紫外線のエネルギーはパーヒドロポリシラザン中のSi−Nの結合エネルギーよりも高いため、Si−N結合は切断され、周囲に酸素、オゾン、水等の酸素源が存在すると酸化されてSi−O−Si結合やSi−O−N結合が生じると考えられる。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
ポリシラザンを含有する層に真空紫外線照射を施した層の酸窒化ケイ素の組成の調整は、上述の(1)〜(4)の酸化機構を適宜組み合わせて酸化状態を制御することで行うことができる。
本発明における真空紫外線照射工程において、ポリシラザン層塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外線の照度は30〜200mW/cm2の範囲であることが好ましく、50〜160mW/cm2の範囲であることがより好ましい。30mW/cm2以上では、改質効率が低下する懸念がなく、200mW/cm2以下では、塗膜にアブレーションを生じず、フィルム基材10にダメージを与えないため好ましい。
ポリシラザン層塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量は、200〜10000mJ/cm2の範囲であることが好ましく、500〜5000mJ/cm2の範囲であることがより好ましい。200mJ/cm2以上では、改質が十分行え、10000mJ/cm2以下では過剰改質にならずクラック発生や、フィルム基材10の熱変形がない。
真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスの原子は、化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。
しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの励起原子は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→Xe*
Xe*+2Xe→Xe2 *+Xe
Xe2 *→Xe+Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe2 *が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。
e+Xe→Xe*
Xe*+2Xe→Xe2 *+Xe
Xe2 *→Xe+Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe2 *が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動及び再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには、誘電体バリアー放電を用いる方法が知られている。誘電体バリアー放電とは、両電極間に透明石英などの誘電体を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じ、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電であり、micro dischargeのストリーマが管壁(誘導体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。
このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため、肉眼でも確認できる光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリアー放電以外に、無電極電界放電でも可能である。容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は基本的には誘電体バリアー放電と同じで良いが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキが無い長寿命のランプが得られる。
誘電体バリアー放電の場合は、micro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。
このため、細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は、光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾンなどにより損傷しやすい。これを防ぐためには、ランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素などの不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって、仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば、酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には、外部電極を網状にする必要は無い。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリアー放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は、構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。
細管ランプの管の外径は6nm〜12mm程度で、余り太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は、誘電体バリアー放電及び無電極電界放電のいずれも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン層の改質を実現できる。
したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10〜10000ppmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは50〜5000ppmの範囲、更に好ましく1000〜4500ppmの範囲である。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
<3.電子デバイス>
本発明のガスバリアーフィルムは、有機素子デバイス用フィルムとして使用することを特徴の一つとする。本発明の有機素子デバイスとしては、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略記する)、有機光電変換素子、液晶素子等が挙げられる。
本発明のガスバリアーフィルムは、有機素子デバイス用フィルムとして使用することを特徴の一つとする。本発明の有機素子デバイスとしては、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略記する)、有機光電変換素子、液晶素子等が挙げられる。
〈電子デバイスとしての有機ELパネル〉
本発明のガスバリアーフィルム1a(1b)は、太陽電池、液晶表示素子、有機EL素子等を封止する封止フィルムとして用いることができる。
本発明のガスバリアーフィルム1a(1b)は、太陽電池、液晶表示素子、有機EL素子等を封止する封止フィルムとして用いることができる。
このガスバリアーフィルム1aを封止フィルムとして用いた電子デバイスである有機ELパネルPの一例を図3に示す。
有機ELパネルPは、図3に示すように、ガスバリアーフィルム1aと、ガスバリアーフィルム1a上に形成されたITOなどの透明電極6と、透明電極6を介してガスバリアーフィルム1a上に形成された電子デバイス本体である有機EL素子7と、その有機EL素子7を覆うように接着剤層8を介して配設された対向フィルム9等を備えている。なお、透明電極6は、有機EL素子7の一部を成すこともある。
このガスバリアーフィルム1aにおけるガスバリアー層12側の表面に、透明電極6と有機EL素子7が形成されるようになっている。
そして、有機ELパネルPにおいて、有機EL素子7は水蒸気に晒されないように好適に封止されており、有機EL素子7は劣化し難くなっているので、有機ELパネルPを長く使用することが可能になり、有機ELパネルPの寿命が延びる。
なお、対向フィルム9は、アルミ箔などの金属フィルムのほか、本発明に係るガスバリアーフィルムを用いてもよい。対向フィルム9としてガスバリアーフィルムを用いる場合、ガスバリアー層12が形成された面を有機EL素子7に向けて、接着剤層8によって貼付するようにすればよい。
以上、本実施の形態によれば、樹脂製のフィルム基材10とガスバリアー層12との間に、紫外線硬化樹脂を含んで形成されたアンカー層11が介在し、ナノサーマル分析装置で探針温度を150度としたときにアンカー層11での探針の変位信号(絶対値)tvはPET製の基材での探針の変位信号(絶対値)tkに対してtv<tk、かつ|tv−tk|<0.5[V]を満たすので、アンカー層11の変位信号tvが0.5≦|tv−tk|[V]である場合と異なり、フィルム基材上にガスバリアー層を形成するとき等、フィルム基材が150度程度に加熱されるときに、アンカー層11が硬すぎてクラックを生じ、ガスバリアー層12を破壊してしまうのを防止することができる。したがって、部分的にガスバリアー層12が破壊されてガスバリアー性にムラが生じてしまうのを防止し、ガスバリアー性能が均一なガスバリアーフィルム1a(1b)を作製することができる。
また、変位信号tvは0.15<|tv−tk|[V]を満たすので、|tv−tk|≦0.15[V]である場合と比較して、アンカー層11の熱膨張が小さく抑えられる。したがって、例えばフィルム基材10に対しロール トゥ ロール型のCVD成膜方法でガスバリアー層12を成膜するとき(より具体的には、帯状のフィルム基材10を一対の成膜ローラー31、32のそれぞれに接触させながら搬送しつつ、当該成膜ローラー31、32間に成膜ガスを供給しながらプラズマ放電を行ってフィルム基材10上にガスバリアー層12を気相成長させるとき)等、フィルム基材が150度程度に加熱されるときに、高温の成膜ローラー31、32にフィルム基材10が接触することで当該フィルム基材10が熱変形を起こして伸びてしまうのを防止し、その結果、ロールからフィルム基材10が浮いてしまうのを抑制することができる。また、この成膜方法で成膜を長時間継続して行うことで成膜ローラー31、32が蓄熱し、より高温になっていく場合であっても、熱膨張の小さいアンカー層11がフィルム基材10とガスバリアー層12との間に介在することで、フィルム基材10が補強されるため、ロールからのフィルム基材10の浮きを抑制することができる。よって、フィルム基材10の浮きに起因してCVD成膜時に放電のムラが生じてしまうのを防止することができるため、フィルム基材10の大きさに関わらず層厚の均一なガスバリアー層12を成膜することができ、その結果、ガスバリアー性能が均一なガスバリアーフィルム1a(1b)を作製することができる。
また、フィルム基材10の熱変形や浮きを防止することができるため、ローラー(成膜ローラー31、32、搬送ローラー21〜24など)間でのフィルム基材10の張力を均一化し、皺の発生を抑制することができる。よって、皺に起因してガスバリアーフィルムに使用不能な領域が発生してしまうのを防止することができるため、収率を高めることができる。
以上から、ガスバリアー性を均一化し、収率を高めることができる。
また、変位信号tvは0.15<|tv−tk|[V]を満たすので、|tv−tk|≦0.15[V]である場合と比較して、アンカー層11の熱膨張が小さく抑えられる。したがって、例えばフィルム基材10に対しロール トゥ ロール型のCVD成膜方法でガスバリアー層12を成膜するとき(より具体的には、帯状のフィルム基材10を一対の成膜ローラー31、32のそれぞれに接触させながら搬送しつつ、当該成膜ローラー31、32間に成膜ガスを供給しながらプラズマ放電を行ってフィルム基材10上にガスバリアー層12を気相成長させるとき)等、フィルム基材が150度程度に加熱されるときに、高温の成膜ローラー31、32にフィルム基材10が接触することで当該フィルム基材10が熱変形を起こして伸びてしまうのを防止し、その結果、ロールからフィルム基材10が浮いてしまうのを抑制することができる。また、この成膜方法で成膜を長時間継続して行うことで成膜ローラー31、32が蓄熱し、より高温になっていく場合であっても、熱膨張の小さいアンカー層11がフィルム基材10とガスバリアー層12との間に介在することで、フィルム基材10が補強されるため、ロールからのフィルム基材10の浮きを抑制することができる。よって、フィルム基材10の浮きに起因してCVD成膜時に放電のムラが生じてしまうのを防止することができるため、フィルム基材10の大きさに関わらず層厚の均一なガスバリアー層12を成膜することができ、その結果、ガスバリアー性能が均一なガスバリアーフィルム1a(1b)を作製することができる。
また、フィルム基材10の熱変形や浮きを防止することができるため、ローラー(成膜ローラー31、32、搬送ローラー21〜24など)間でのフィルム基材10の張力を均一化し、皺の発生を抑制することができる。よって、皺に起因してガスバリアーフィルムに使用不能な領域が発生してしまうのを防止することができるため、収率を高めることができる。
以上から、ガスバリアー性を均一化し、収率を高めることができる。
また、アンカー層11がシリカ粒子を含有するフィラーを含む場合には、アンカー層11を硬くして熱変形し難くすることができる。したがって、フィルム基材10の浮きや熱変形を防止することができるため、いっそうガスバリアーフィルム1a(1b)のガスバリアー性を均一化するとともに、収率を高めることができる。
また、フィルム基材10の厚さが100μm以下である場合には、ガスバリアーフィルムの全体を薄くすることができる。また、この場合には、フィルム基材10単体ではガスバリアー層12の成膜時に熱変形して浮きを生じさせやすく、皺を発生させやすいものの、本発明においては、このようなフィルム基材10を用いる場合であっても、上述のように皺の発生を抑制することができるため、フィルム基材10の厚さを小さくすることによるデメリットを低減することができる。
また、紫外線硬化樹脂を含む材料をフィルム基材10に塗布し、窒素雰囲気下で紫外線照射により硬化させることでアンカー層11が形成される場合には、「|tv−tk|」の値が大きくなり、アンカー層11が熱膨張し難くなる。したがって、ガスバリアーフィルム1a(1b)のガスバリアー性をいっそう均一化するとともに、収率を高めることができる。
また、アンカー層11の層厚Taが4μm以上である場合には、フィルム基材10の表面に微細な凹凸がある場合であっても、この凹凸をアンカー層11によって吸収し、ガスバリアー層12が成膜される面を平滑にすることができる。また、層厚Taが4μm未満の場合と比較して、フィルム基材10に対する補強の度合いを高めることができるため、フィルム基材10の熱変形や浮きを確実に防止する結果、いっそうガスバリアーフィルム1a(1b)のガスバリアー性を均一化するとともに、収率を高めることができる。また、アンカー層11の層厚Taが8μm以下である場合には、アンカー層11の収縮によってガスバリアーフィルム1a(1b)がカールしたり、アンカー層11が割れたりするのが防止されるため、ガスバリアーフィルム1a(1b)の収率を高めることができる。また、アンカー層11の層厚Taがガスバリアー層12の層厚Tbに対し10×Tb≦Taを満たす場合には、10×Tb>Taの場合と比較して、熱によるアンカー層11の厚さ方向、面方向への移動が防止されることとなる。したがって、ガスバリアー層12が薄く形成される場合であっても、アンカー層11の移動によって当該ガスバリアー層12にクラックが入ってしまうのを防止することができる。
また、ガスバリアー層12の表面に、ポリシラザンを含む材料を塗布し、真空紫外線の照射により改質処理することで第2のガスバリアー層13が形成されている場合には、ガスバリアーフィルム1bのガスバリアー性を向上させることができる。
なお、上記の実施の形態におけるガスバリアーフィルム1a(1b)の各構成要素の細部構成や、その製造方法に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
例えば、第1のガスバリアー層12がフィルム基材10の一方の面のアンカー層11上に形成されることとして説明したが、両方の面のアンカー層11上に形成されることとしても良い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、下記操作において、特記しない限り、操作及び物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で行う。
[ガスバリアー特性の評価法]
ガスバリアーフィルムのガスバリアー特性の評価値として、以下の方法により測定した水蒸気透過度を用いた。
(1)水蒸気透過度の測定
温度40℃、低湿度側の湿度0%RH、高湿度側の湿度90%RHの条件において、水蒸気透過度測定機(GTRテック株式会社製、機種名「GTRテック−30XASC」)を用いて、ガスバリアーフィルムの水蒸気透過度を測定した。
ガスバリアーフィルムのガスバリアー特性の評価値として、以下の方法により測定した水蒸気透過度を用いた。
(1)水蒸気透過度の測定
温度40℃、低湿度側の湿度0%RH、高湿度側の湿度90%RHの条件において、水蒸気透過度測定機(GTRテック株式会社製、機種名「GTRテック−30XASC」)を用いて、ガスバリアーフィルムの水蒸気透過度を測定した。
[層厚ムラの評価法]
ガスバリアーフィルムの層厚ムラの評価値として、以下の方法により測定・算出した値を用いた。
ガスバリアーフィルムの層厚ムラの評価値として、以下の方法により測定・算出した値を用いた。
まず、ガスバリアーフィルムを1m×1mの大きさに切り、さらに正方形に9分割した。
次に、反射分光膜厚計(大塚電子株式会社製、FE-3000)を用い、9分割した正方形のガスバリアーフィルムの中心の厚さを測定した。
そして、9点の測定値の標準偏差を求め、層厚ムラの評価値とした。
次に、反射分光膜厚計(大塚電子株式会社製、FE-3000)を用い、9分割した正方形のガスバリアーフィルムの中心の厚さを測定した。
そして、9点の測定値の標準偏差を求め、層厚ムラの評価値とした。
[収率の評価法]
ガスバリアーフィルムの収率の評価値として、以下の方法により測定・算出した値を用いた。
ガスバリアーフィルムの収率の評価値として、以下の方法により測定・算出した値を用いた。
まず、ガスバリアーフィルムを1m×1mの大きさに切り、さらに10cm×10cmに細かく裁断して、100枚のサンプルを得た。
得られた100枚のサンプル中で、平らな机に置いた際に0.5mm以上の浮きの無い平坦なサンプルのみを数え、その割合(枚数)を収率とした。
この収率は、ガスバリアー層の形成時に熱皺によって使用不能となった領域を除外した場合でのガスバリアーフィルムの収率を意味する。
得られた100枚のサンプル中で、平らな机に置いた際に0.5mm以上の浮きの無い平坦なサンプルのみを数え、その割合(枚数)を収率とした。
この収率は、ガスバリアー層の形成時に熱皺によって使用不能となった領域を除外した場合でのガスバリアーフィルムの収率を意味する。
[ガスバリアーフィルム(1)の作製]
(フィルム基材の準備)
フィルム基材として、帝人株式会社製のKEL86W(PET製、厚さ125μm)を用いた。
(フィルム基材の準備)
フィルム基材として、帝人株式会社製のKEL86W(PET製、厚さ125μm)を用いた。
(アンカー層の形成)
フィルム基材の表面に、紫外線硬化性樹脂であるアイカアイトロン Z842−1(アイカ工業株式会社製)を乾燥層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃で3分間乾燥し、大気下で高圧水銀ランプを使用して0.5J/cm2の照射量で硬化を行い、アンカー層を形成した。
なお、アンカー層形成後に、以下のナノサーマル分析装置において探針温度を150度としたときにアンカー層で測定される探針の変位信号tvと、上述のフィルム基材(帝人株式会社製のKEL86W(厚さ125μm))で測定される探針の変位信号tkとの差分「|tv−tk|」を算出したところ、0.26[V]であった。また、tv<tkであった。
フィルム基材の表面に、紫外線硬化性樹脂であるアイカアイトロン Z842−1(アイカ工業株式会社製)を乾燥層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃で3分間乾燥し、大気下で高圧水銀ランプを使用して0.5J/cm2の照射量で硬化を行い、アンカー層を形成した。
なお、アンカー層形成後に、以下のナノサーマル分析装置において探針温度を150度としたときにアンカー層で測定される探針の変位信号tvと、上述のフィルム基材(帝人株式会社製のKEL86W(厚さ125μm))で測定される探針の変位信号tkとの差分「|tv−tk|」を算出したところ、0.26[V]であった。また、tv<tkであった。
〈ナノサーマル分析装置〉
装置:アナシスインスツルメンツ社製 Nano−TA2 ナノサーマルアナリシス
プローブ(探針)形状:サーマルプローブ300μm
昇温速度:300℃/min
装置:アナシスインスツルメンツ社製 Nano−TA2 ナノサーマルアナリシス
プローブ(探針)形状:サーマルプローブ300μm
昇温速度:300℃/min
(ガスバリアー層の形成)
アンカー層を形成したフィルム基材を、アンカー層とは反対側の面がロールと接触する面になるように図2に示すような成膜装置に装着して、下記成膜条件にてアンカー層上にガスバリアー層を層厚300nmで形成した。
アンカー層を形成したフィルム基材を、アンカー層とは反対側の面がロールと接触する面になるように図2に示すような成膜装置に装着して、下記成膜条件にてアンカー層上にガスバリアー層を層厚300nmで形成した。
〈成膜条件〉
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O2)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.8m/min
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O2)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.8m/min
[ガスバリアーフィルム(2)の作製]
紫外線硬化性樹脂としてDIC株式会社製のV4025を用いてアンカー層を形成したこと以外は、ガスバリアーフィルム(1)と同様にして、ガスバリアーフィルム(2)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.22[V]であった。また、tv<tkであった。
紫外線硬化性樹脂としてDIC株式会社製のV4025を用いてアンカー層を形成したこと以外は、ガスバリアーフィルム(1)と同様にして、ガスバリアーフィルム(2)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.22[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(3)の作製]
Z842−1(アイカ工業株式会社製)と、LCH1559(トーヨーケム製:シリカ配合ハイブリッドハードコート剤)とを樹脂量が1:1になるように混合した材料を用いてアンカー層を形成したこと以外は、ガスバリアーフィルム(1)と同様にして、ガスバリアーフィルム(3)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.29[V]であった。また、tv<tkであった。
Z842−1(アイカ工業株式会社製)と、LCH1559(トーヨーケム製:シリカ配合ハイブリッドハードコート剤)とを樹脂量が1:1になるように混合した材料を用いてアンカー層を形成したこと以外は、ガスバリアーフィルム(1)と同様にして、ガスバリアーフィルム(3)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.29[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(4)の作製]
LCH1559(トーヨーケム製:シリカ配合ハイブリッドハードコート剤)を用いてアンカー層を形成したこと以外は、ガスバリアーフィルム(1)と同様にして、ガスバリアーフィルム(4)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.34[V]であった。また、tv<tkであった。
LCH1559(トーヨーケム製:シリカ配合ハイブリッドハードコート剤)を用いてアンカー層を形成したこと以外は、ガスバリアーフィルム(1)と同様にして、ガスバリアーフィルム(4)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.34[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(5)の作製]
フィルム基材として日本ゼオン株式会社製のゼオノアZF−14(COP製、厚さ100μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(4)と同様にして、ガスバリアーフィルム(5)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.34[V]であった。また、tv<tkであった。
フィルム基材として日本ゼオン株式会社製のゼオノアZF−14(COP製、厚さ100μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(4)と同様にして、ガスバリアーフィルム(5)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.34[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(6)の作製]
フィルム基材として帝人化成株式会社製のピュアエース WR−S5(PC製、厚さ100μm)と用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(4)と同様にして、ガスバリアーフィルム(6)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.34[V]であった。また、tv<tkであった。
フィルム基材として帝人化成株式会社製のピュアエース WR−S5(PC製、厚さ100μm)と用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(4)と同様にして、ガスバリアーフィルム(6)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.34[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(7)の作製]
フィルム基材として帝人株式会社製のKEL86W(厚さ50μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(4)と同様にして、ガスバリアーフィルム(7)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.34[V]であった。また、tv<tkであった。
フィルム基材として帝人株式会社製のKEL86W(厚さ50μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(4)と同様にして、ガスバリアーフィルム(7)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.34[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(8)の作製]
紫外線硬化性樹脂として荒川化学株式会社製のビームセット907Dを用い、酸素濃度を0.5%に調整した窒素雰囲気(窒素濃度およそ99.5%)下でアンカー層を硬化させたこと以外は、ガスバリアーフィルム(7)と同様にして、ガスバリアーフィルム(8)を作製した。
なお、この907Dには、シリカが含有されている。
また、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.32[V]であった。また、tv<tkであった。
紫外線硬化性樹脂として荒川化学株式会社製のビームセット907Dを用い、酸素濃度を0.5%に調整した窒素雰囲気(窒素濃度およそ99.5%)下でアンカー層を硬化させたこと以外は、ガスバリアーフィルム(7)と同様にして、ガスバリアーフィルム(8)を作製した。
なお、この907Dには、シリカが含有されている。
また、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.32[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(9)の作製]
フィルム基材として帝人株式会社製のKEL86W(厚さ50μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(3)と同様にして、ガスバリアーフィルム(9)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.29[V]であった。また、tv<tkであった。
フィルム基材として帝人株式会社製のKEL86W(厚さ50μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(3)と同様にして、ガスバリアーフィルム(9)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.29[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(10)の作製]
酸素濃度を0.5%に調整した窒素雰囲気(窒素濃度およそ99.5%)下でアンカー層を硬化させたこと以外は、ガスバリアーフィルム(9)と同様にして、ガスバリアーフィルム(10)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.35[V]であった。また、tv<tkであった。
酸素濃度を0.5%に調整した窒素雰囲気(窒素濃度およそ99.5%)下でアンカー層を硬化させたこと以外は、ガスバリアーフィルム(9)と同様にして、ガスバリアーフィルム(10)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.35[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(11)の作製]
アンカー層の厚さを2μmにし、酸素濃度を0.5%に調整した窒素雰囲気(窒素濃度およそ99.5%)下でアンカー層を硬化させ、ガスバリアー層の厚さを500μmにしたこと以外は、ガスバリアーフィルム(10)と同様にして、ガスバリアーフィルム(11)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.35[V]であった。また、tv<tkであった。
アンカー層の厚さを2μmにし、酸素濃度を0.5%に調整した窒素雰囲気(窒素濃度およそ99.5%)下でアンカー層を硬化させ、ガスバリアー層の厚さを500μmにしたこと以外は、ガスバリアーフィルム(10)と同様にして、ガスバリアーフィルム(11)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.35[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(12)の作製]
ガスバリアー層上に以下のようにして第2のガスバリアー層を形成した以外には、ガスバリアーフィルム(10)と同様にして、ガスバリアーフィルム(12)を作製した。
(第2のガスバリアー層の形成方法)
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ(登録商標)NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)の10質量%ジブチルエーテル溶液を、塗布液とした。
先に形成したガスバリアー層の表面に、上記塗布液をワイヤレスバーにて乾燥後の(平均)層厚が100nmとなるように塗布し、温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分間処理して乾燥させ、さらに温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行って、ポリシラザン層を形成した。
次いで、上記で形成したポリシラザン層に対し、下記の紫外線照射装置をチャンバー内に設置し、装置内の酸素濃度を0.1%以下になるまで窒素置換を行い、改質処理を実施した。
ガスバリアー層上に以下のようにして第2のガスバリアー層を形成した以外には、ガスバリアーフィルム(10)と同様にして、ガスバリアーフィルム(12)を作製した。
(第2のガスバリアー層の形成方法)
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ(登録商標)NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)の10質量%ジブチルエーテル溶液を、塗布液とした。
先に形成したガスバリアー層の表面に、上記塗布液をワイヤレスバーにて乾燥後の(平均)層厚が100nmとなるように塗布し、温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分間処理して乾燥させ、さらに温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行って、ポリシラザン層を形成した。
次いで、上記で形成したポリシラザン層に対し、下記の紫外線照射装置をチャンバー内に設置し、装置内の酸素濃度を0.1%以下になるまで窒素置換を行い、改質処理を実施した。
〈紫外線照射装置〉
装置:株式会社エム・ディ・コム製 エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
装置:株式会社エム・ディ・コム製 エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
〈改質処理条件〉
稼動ステージ上に固定したポリシラザン層を形成した基材に対し、以下の条件で改質処理を行って、第2のガスバリアー層を形成し、ガスバリアーフィルム(12)を完成させた。
エキシマランプ光強度:130mW/cm2(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:1.0%
エキシマランプ照射時間:5秒
稼動ステージ上に固定したポリシラザン層を形成した基材に対し、以下の条件で改質処理を行って、第2のガスバリアー層を形成し、ガスバリアーフィルム(12)を完成させた。
エキシマランプ光強度:130mW/cm2(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:1.0%
エキシマランプ照射時間:5秒
[ガスバリアーフィルム(13)の作製]
紫外線硬化性樹脂として東亞合成株式会社製のM−315を用いてアンカー層を形成したこと以外は、ガスバリアーフィルム(1)と同様にして、ガスバリアーフィルム(13)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.13[V]であった。また、tv<tkであった。
紫外線硬化性樹脂として東亞合成株式会社製のM−315を用いてアンカー層を形成したこと以外は、ガスバリアーフィルム(1)と同様にして、ガスバリアーフィルム(13)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.13[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(14)の作製]
フィルム基材として帝人株式会社製のKEL86W(厚さ50μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(13)と同様にして、ガスバリアーフィルム(14)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.13[V]であった。また、tv<tkであった。
フィルム基材として帝人株式会社製のKEL86W(厚さ50μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(13)と同様にして、ガスバリアーフィルム(14)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.13[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(15)の作製]
フィルム基材として日本ゼオン株式会社製のゼオノアZF−14(厚さ50μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(13)と同様にして、ガスバリアーフィルム(15)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.13[V]であった。また、tv<tkであった。
フィルム基材として日本ゼオン株式会社製のゼオノアZF−14(厚さ50μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(13)と同様にして、ガスバリアーフィルム(15)を作製した。
なお、アンカー層形成後に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.13[V]であった。また、tv<tkであった。
[ガスバリアーフィルム(16)の作製]
フィルム基材として帝人化成株式会社製のピュアエース WR−S5(厚さ50μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(13)と同様にして、ガスバリアーフィルム(16)を作製した。
フィルム基材として帝人化成株式会社製のピュアエース WR−S5(厚さ50μm)を用いたこと以外は、ガスバリアーフィルム(13)と同様にして、ガスバリアーフィルム(16)を作製した。
[ガスバリアーフィルム(17)の作製]
アンカー層を形成しなかったこと以外は、ガスバリアーフィルム(7)と同様にして、ガスバリアーフィルム(17)を作製した。
なお、ガスバリアー層の形成前に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.03[V]であった。また、tv>tkであった。ただし、変位信号tvとしては、ナノサーマル分析装置において探針温度を150度としたときに、ガスバリアー層の形成前のガスバリアーフィルムで測定される探針の変位信号を用いた。
アンカー層を形成しなかったこと以外は、ガスバリアーフィルム(7)と同様にして、ガスバリアーフィルム(17)を作製した。
なお、ガスバリアー層の形成前に、ガスバリアーフィルム(1)と同様にしてナノサーマル分析装置を用いて「|tv−tk|」を算出したところ、0.03[V]であった。また、tv>tkであった。ただし、変位信号tvとしては、ナノサーマル分析装置において探針温度を150度としたときに、ガスバリアー層の形成前のガスバリアーフィルムで測定される探針の変位信号を用いた。
[ガスバリアーフィルム(1)〜(17)の評価]
各ガスバリアーフィルムの評価結果を、下記表1に示す。
各ガスバリアーフィルムの評価結果を、下記表1に示す。
上記表1から明らかなように、本発明の実施例としてのガスバリアーフィルム、つまりフィルム基材とガスバリアー層との間にアンカー層11が介在し、ナノサーマル分析装置で探針温度を150度としたときのアンカー層11での探針の変位信号tvがPET製の基材での探針の変位信号tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V](「ナノTA150℃での変位の相対値」の欄参照)を満たすガスバリアーフィルム(1)〜(12)では、比較例のガスバリアーフィルム(13)〜(17)と比較して、層厚ムラが小さくなってガスバリアー性が均一化されるとともに、収率が向上することが分かる。
また、ガスバリアーフィルム(1)〜(4)に着目すると、「|tv−tk|」の値が大きくなる程、アンカー層が熱膨張し難くなる結果、層厚ムラが小さくなってガスバリアー性が均一化されるとともに、収率が向上することが分かる。また、ガスバリアー性自体も向上することが分かる。
また、ガスバリアーフィルム(1)、(3)に着目すると、アンカー層がシリカ粒子を含有するフィラーを含むガスバリアーフィルム(3)では、このようなフィラーを含まないガスバリアーフィルム(1)と比較して、アンカー層が熱変形し難くなってフィルム基材の浮きや熱変形が防止される結果、いっそうガスバリアーフィルムのガスバリアー性が均一化されるとともに、収率が向上することが分かる。
また、実施例としてのガスバリアーフィルム(4)、(7)と、比較例としてのガスバリアーフィルム(13)〜(17)とに着目すると、フィルム基材の厚さが100μm以下のガスバリアーフィルム(7)では、厚さが100μmより大きいガスバリアーフィルム(4)と比較してガスバリアー層の成膜時の浮きが生じやすいことから収率が低下してしまうものの、比較例のガスバリアーフィルム(13)〜(17)と比較して収率が向上していることが分かる。
また、実施例としてのガスバリアーフィルム(9)、(10)に着目すると、窒素雰囲気下でアンカー層を硬化させたガスバリアーフィルム(10)では、窒素雰囲気下ではない雰囲気下でアンカー層を硬化させたガスバリアーフィルム(9)と比較して、「|tv−tk|」の値が大きくなり、アンカー層が熱膨張し難くなる結果、層厚ムラが小さくなってガスバリアー性がいっそう均一化されるとともに、収率が向上することが分かる。このことから、厚さ50μm程度の薄いフィルム基材を用いる場合であっても、ガスバリアー層の成膜時の浮きや熱変形が防止される結果、ガスバリアーフィルムのガスバリアー性が均一化されるとともに、収率が向上することが分かる。
また、実施例としてのガスバリアーフィルム(10)、(11)に着目すると、アンカー層の層厚が4μm以上であるガスバリアーフィルム(10)では、層厚が4μm未満であるガスバリアーフィルム(11)と比較して、フィルム基材に対する補強の度合いが高められ、フィルム基材の熱変形や浮きが確実に防止される結果、いっそうガスバリアーフィルムのガスバリアー性が均一化されるとともに、収率が向上することが分かる。
また、実施例としてのガスバリアーフィルム(10)、(12)に着目すると、ポリシラザンにより第2のガスバリアー層が形成されているガスバリアーフィルム(12)では、第2のガスバリアー層が形成されていないガスバリアーフィルム(10)と比較して、ガスバリアー性が向上することが分かる。
1a,1b ガスバリアーフィルム
10 フィルム基材
11 アンカー層
12 ガスバリアー層
13 第2のガスバリアー層
10 フィルム基材
11 アンカー層
12 ガスバリアー層
13 第2のガスバリアー層
Claims (12)
- 樹脂製のフィルム基材と、
前記フィルム基材における少なくとも一方の面に形成されたガスバリアー層と、
紫外線硬化樹脂を含んで形成され、前記フィルム基材と前記ガスバリアー層との間に介在するアンカー層と、
を備え、
ナノサーマル分析装置で探針の温度を150度としたときに前記アンカー層で測定される前記探針の変位信号の絶対値tvは、PET製の基材で測定される前記探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]
を満たすことを特徴とするガスバリアーフィルム。 - 前記アンカー層は、
シリカ粒子を含有するフィラーを含むことを特徴とする請求項1に記載のガスバリアーフィルム。 - 前記フィルム基材の厚さは、
100μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のガスバリアーフィルム。 - 前記アンカー層は、
紫外線硬化樹脂を含む材料を前記フィルム基材に塗布し、窒素雰囲気下で紫外線照射により硬化させることで形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。 - 前記アンカー層の層厚Taは、
4μm以上であり、かつ、
前記ガスバリアー層の層厚Tbに対し10×Tb≦Taを満たすことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。 - 前記ガスバリアー層の表面に第2のガスバリアー層を備え、
前記第2のガスバリアー層は、
ポリシラザンを含む材料を前記ガスバリアー層の表面に塗布し、真空紫外線の照射により改質処理することで形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。 - 樹脂製のフィルム基材における少なくとも一方の面にガスバリアー層が形成されたガスバリアーフィルムの製造方法において、
前記フィルム基材の前記少なくとも一方の面に対し、紫外線硬化樹脂を含む樹脂材料でアンカー層を形成するアンカー層形成工程と、
前記アンカー層形成工程の後に前記少なくとも一方の面に対し前記ガスバリアー層を形成することで、前記フィルム基材と前記ガスバリアー層との間に前記アンカー層を介在させるガスバリアー層形成工程と、
を含み、
前記アンカー層形成工程では、前記アンカー層として、
ナノサーマル分析装置で探針の温度を150度としたときに当該アンカー層で測定される前記探針の変位信号の絶対値tvが、PET製の基材で測定される前記探針の変位信号の絶対値tkに対してtv<tk、かつ0.15<|tv−tk|<0.5[V]を満たすもの
を形成することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。 - 前記樹脂材料として、
シリカ粒子を含有するフィラーを含むものを用いることを特徴とする請求項7に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。 - 前記フィルム基材として、
厚さが100μm以下のものを用いることを特徴とする請求項7又は請求項8記載のガスバリアーフィルムの製造方法。 - 前記アンカー層形成工程では、
前記樹脂材料を前記フィルム基材に塗布し、窒素雰囲気下で紫外線照射により硬化させることで、前記アンカー層を形成することを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。 - 前記アンカー層として、
層厚Taが4μm以上であり、かつ、前記ガスバリアー層の層厚Tbに対し10×Tb≦Taを満たすものを形成することを特徴とする請求項7から請求項10までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。 - 前記ガスバリアー層形成工程の後に、ポリシラザンを含む材料を前記ガスバリアー層の表面に塗布し、真空紫外線の照射により改質処理して、前記ガスバリアー層の表面に第2のガスバリアー層を形成する第2ガスバリアー層形成工程を含むことを特徴とする請求項7から請求項11までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
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JP2013134413A JP2015009379A (ja) | 2013-06-27 | 2013-06-27 | ガスバリアーフィルム及びガスバリアーフィルムの製造方法 |
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JP2013134413A Pending JP2015009379A (ja) | 2013-06-27 | 2013-06-27 | ガスバリアーフィルム及びガスバリアーフィルムの製造方法 |
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