JP2016055594A - ガスバリアー性フィルム、ガスバリアー性フィルムの製造方法及び電子デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、ガスバリアー性及び密着性に優れ、かつ高温高湿環境下で保存した際の耐久性に優れたガスバリアー性フィルムと、その製造方法、及び耐久性に優れた電子デバイスを提供することである。
【解決手段】本発明のガスバリアー性フィルムは、樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成される有機層と、ガスバリアー層とがこの順で積層されたガスバリアー性フィルムであって、有機層における下式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上であることを特徴とする。
式(1)
−NH−C(=O)−結合基の濃度比率=−NH−C(=O)−結合基数A/−NH−C(=O)−結合基数B
【選択図】図2
【解決手段】本発明のガスバリアー性フィルムは、樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成される有機層と、ガスバリアー層とがこの順で積層されたガスバリアー性フィルムであって、有機層における下式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上であることを特徴とする。
式(1)
−NH−C(=O)−結合基の濃度比率=−NH−C(=O)−結合基数A/−NH−C(=O)−結合基数B
【選択図】図2
Description
本発明は、ガスバリアー性フィルム及びその製造方法とそれを具備した電子デバイスに関する。より詳しくは、高温高湿環境下で長期間にわたり保存された後でも、優れたガスバリアー性、密着性及び屈曲耐性を維持することができるガスバリアー性フィルム及びその製造方法と、耐久性に優れた電子デバイスに関する。
従来、食品、包装材料、医薬品などの分野で、水蒸気や酸素等のガスの透過を防ぐため、樹脂基材の表面に金属や金属酸化物の蒸着膜等の無機膜を設けた比較的簡易な構造を有するガスバリアー性フィルムが用いられてきた。
近年、包装用途以外にも、水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリアー性フィルムについて、フレキシブル性を有する太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス(electroluminescence:EL)素子、液晶表示(Liquid Crystal Display:LCD)素子等のフレキシブル電子デバイスへの展開が要望され、多くの検討がなされている。これらの電子デバイスにおいては、高いガスバリアー性、例えば、ガラス基材に匹敵するガスバリアー性が要求される。
一般に、樹脂基材上にガスバリアー層等の無機膜を直接成膜すると、有機膜−無機膜間での化学的組成の違いから親和力が小さく、また、物理的性質(硬度、弾性率、密度等)の違いから生じる界面応力によって、密着性不良を引き起こす可能性が高いことから、樹脂基材とガスバリアー層との間に、応力緩和機能、親和力(密着性)向上機能を有する有機層(例えば、クリアハードコート層、平滑層、下引層、応力緩和層等)を設けることが知られている。
一般に、有機層、例えば、クリアハードコート層には、アクリル樹脂等の有機ポリマーが用いられているが、それだけでは無機膜との界面密着力が不十分であることが多い。仮に、初期密着力が得られたとしても、高温高湿試験(85℃、相対湿度85%RH)では、密着性不良により界面に水分が入り込み、ガスバリアー性(水蒸気透過度)を劣化させてしまうという問題があった。
有機層として、紫外線硬化型組成物として、アクリレートモノマーやウレタンアクリレートモノマーを使用する方法が広く知られている。このウレタンアクリレートは、その高い極性により、ガスバリアー層等の無機膜との密着性に対しては優れた特性を発揮するが、水との高い結合性を有しているがゆえに、高温高湿等の過酷な環境下で保存された際の有機層自体の耐久性が不十分であるという問題を抱えている。
一方、ガスバリアー層等の無機膜との密着性を向上させるための他の有機膜を適用した方法が開示されている。例えば、有機層として、炭素原子、酸素原子及び水素原子のみからなる4官能(メタ)アクリレートと、リン酸(メタ)アクリレートから構成される有機層を具備したバリアー積層体が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の方法によれば、ロールtoロールで製造した場合においても、バリアー性に優れたガスバリアー性フィルムが得られるとされている。また、基材上にアンカーコート層と、その上に真空蒸着法で形成した無機層等を形成し、当該アンカーコート層がシランカップリング剤を含有している構成のガスバリアー性フィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載の方法によれば、生産性が良好で、高いガスバリアー性と密着性を有しているガスバリアー性フィルムが得られるとされている。
しかしながら、上記特許文献で開示されている方法では、上記と同様に、高温高湿等の過酷な環境下で保存された際の有機層やアンカーコート層自体の耐久性が不十分であり、安定して所望のガスバリアー性を維持することが困難である。
したがって、密着性と、過酷な環境下における耐久性の両立を果たすことができるガスバリアー性フィルムの実現が求められている。
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ガスバリアー性及び密着性に優れ、かつ高温高湿環境下で保存した際の耐久性に優れたガスバリアー性フィルムと、その製造方法、及び耐久性に優れた電子デバイスを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について鋭意検討を進めた結果、樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成される有機層と、ガスバリアー層とをこの順で積層し、有機層における−NH−C(=O)−結合基の配向を、樹脂基材が接する領域に対し、表面側でガスバリアー層と接する領域側が特定の倍率以上で配向した構成とすることを特徴とするガスバリアー性フィルムにより、ガスバリアー性及び各構成層間の密着性に優れ、かつ高温高湿環境下で保存した際の耐久性に優れたガスバリアー性フィルムを提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成される有機層と、ガスバリアー層とがこの順で積層されたガスバリアー性フィルムであって、
有機層における下式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上であることを特徴とするガスバリアー性フィルム。
有機層における下式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上であることを特徴とするガスバリアー性フィルム。
式(1)
−NH−C(=O)−結合基の濃度比率=−NH−C(=O)−結合基数A/−NH−C(=O)−結合基数B
〔式中、−NH−C(=O)−結合基数Aは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記ガスバリアー層との界面から深さ0.1Taまでの領域における総−NH−C(=O)−基数を表し、−NH−C(=O)−基数Bは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記樹脂基材との界面から深さ0.1Tbまでの領域における総−NH−C(=O)−基を表す。〕
2.前記−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0〜10000の範囲内であることを特徴とする第1項に記載のガスバリアー性フィルム。
−NH−C(=O)−結合基の濃度比率=−NH−C(=O)−結合基数A/−NH−C(=O)−結合基数B
〔式中、−NH−C(=O)−結合基数Aは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記ガスバリアー層との界面から深さ0.1Taまでの領域における総−NH−C(=O)−基数を表し、−NH−C(=O)−基数Bは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記樹脂基材との界面から深さ0.1Tbまでの領域における総−NH−C(=O)−基を表す。〕
2.前記−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0〜10000の範囲内であることを特徴とする第1項に記載のガスバリアー性フィルム。
3.前記有機層において、樹脂基材側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、前記樹脂基材界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の領域内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のガスバリアー性フィルム。
4.前記有機層の全層厚Tが、0.3〜5.0μmの範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
5.前記有機層が、少なくともフッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物より形成されたことを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
6.前記有機層における前記フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aの含有率が、全固形分量の0.06〜13.0質量%の範囲内であることを特徴とする第5項に記載のガスバリアー性フィルム。
7.前記有機層が含有する前記フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aが、イソシアヌレート構造を有する化合物であることを特徴とする第5項又は第6項に記載のガスバリアー性フィルム。
8.樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成される有機層と、ガスバリアー層とをこの順で積層して製造するガスバリアー性フィルムの製造方法であって、
有機層における下式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上となる条件で、有機層を形成することを特徴とするガスバリアー性フィルムの製造方法。
有機層における下式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上となる条件で、有機層を形成することを特徴とするガスバリアー性フィルムの製造方法。
式(1)
−NH−C(=O)−結合基の濃度比率=−NH−C(=O)−結合基数A/−NH−C(=O)−結合基数B
〔式中、−NH−C(=O)−結合基数Aは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記ガスバリアー層との界面から深さ0.1Taまでの領域における総−NH−C(=O)−基数を表し、−NH−C(=O)−基数Bは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記樹脂基材との界面から深さ0.1Tbまでの領域における総−NH−C(=O)−基を表す。〕
9.前記−NH−C(=O)−結合基の濃度比率を、10.0〜10000の範囲内となるように有機層を形成することを特徴とする第8項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
−NH−C(=O)−結合基の濃度比率=−NH−C(=O)−結合基数A/−NH−C(=O)−結合基数B
〔式中、−NH−C(=O)−結合基数Aは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記ガスバリアー層との界面から深さ0.1Taまでの領域における総−NH−C(=O)−基数を表し、−NH−C(=O)−基数Bは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記樹脂基材との界面から深さ0.1Tbまでの領域における総−NH−C(=O)−基を表す。〕
9.前記−NH−C(=O)−結合基の濃度比率を、10.0〜10000の範囲内となるように有機層を形成することを特徴とする第8項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
10.前記樹脂基材側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、前記樹脂基材界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の位置となるように有機層を形成することを特徴とする第8項又は第9項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
11.前記有機層を、少なくともフッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物より形成することを特徴とする第8項から第10項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
12.前記有機層における前記フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aの含有率を、全固形分量の0.06〜13.0質量%の範囲内として製造することを特徴とする第11項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
13.前記有機層が含有する前記フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aとして、イソシアヌレート構造を有する化合物を用いて製造することを特徴とする第11項又は第12項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
14.前記ガスバリアー層を、ロールtoロール方式の放電プラズマ化学気相成長法により形成することを特徴とする第8項から第13項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
15.前記放電プラズマ化学気相成長法が、ガスバリアー層形成成分を含む原料ガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法であることを特徴とする第14項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
16.前記ガスバリアー層が、前記有機層上にロールtoロール方式でポリシラザンを含有するガスバリアー層形成用塗布液を塗布、乾燥して前駆体層を形成した後、当該前駆体層に真空紫外光による改質処理を施してガスバリアー層を形成する方法であることを特徴とする第8項から第13項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
17.第1項から第7項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムを具備したことを特徴とする電子デバイス。
本発明の上記手段により、ガスバリアー性及び密着性に優れ、かつ高温高湿環境下で保存した際の耐久性に優れたガスバリアー性フィルムと、その製造方法、及び耐久性に優れた電子デバイスを提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
前述のように、ガスバリアー性フィルムにおいて、樹脂基材と、ガスバリアー層の間に有機層を形成する際、有機層の構成材料としてアクリレートモノマーやウレタンアクリレートモノマーを適用することが知られており、その中でも、−NH−C(=O)−結合を含むウレタンアクリレートを採用することにより、その高い極性により、無機材料、例えば、酸化ケイ素等で構成されているガスバリアー層との密着性に優れた効果を発揮するが、水分との結合性も強いため、高温高湿環境下で長期間にわたり保存された際に、有機層自身の耐久性が低下するという問題を抱えていた。
本発明は、上記問題を踏まえ、有機層の構成及び形成方法について詳細な検討を行った結果、単一の有機層内で、−NH−C(=O)−結合を含むウレタンアクリレート化合物の特性を十分に発揮させるため、ガスバリアー層との界面近傍にのみ、−NH−C(=O)−結合を含むウレタンアクリレート化合物を高濃度で配向さることにより、−NH−C(=O)−結合が有するガスバリアー層との優れた密着性を発現させ、逆に、樹脂基材界面には、−NH−C(=O)−結合を有していないアクリレート化合物を主成分として構成することにより、樹脂基材側からの水分の侵入を防止し、高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際にも、優れた耐久性を得ることができ、密着性と耐久性の両立を図ることができることを見出したものである。
すなわち、本発明においては、単一層より構成される有機層において、樹脂基材との界面領域においては、−NH−C(=O)−結合基の含有率を低く、逆に、密着性が必要とされ、無機膜であるガスバリアー層との界面領域では、−NH−C(=O)−結合の効果を十分に発現させるため、−NH−C(=O)−結合基の含有率を高くなる傾斜構造とすること、具体的には、両界面間の−NH−C(=O)−結合基の濃度比率(ガスバリアー層との界面領域の−NH−C(=O)−結合基数A/樹脂基材との界面領域の−NH−C(=O)−結合基数B)を10倍以上とすることにより、密着性と耐久性の両立を実現させることができたものである。
具体的には、有機層の形成材料として、フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとを含有する紫外線硬化性樹脂組成物を用い、湿式塗布方式により塗布、乾燥して製膜させることにより、表面配向性が強いフッ素原子を有する−NH−C(=O)−結合を含有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物Aが、より表面側(ガスバリアー層との界面領域)に配向し、逆に、フッ素原子を有していない−NH−C(=O)−結合を有していない(メタ)アクリレート系化合物Bは、より樹脂基材側に存在することになると推測している。
また、フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物Aをガスバリアー層との界面領域に配向させることが好ましく、具体的には、樹脂基材側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、当該樹脂基材界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の領域内、すなわち、ガスバリアー層との界面から、深さ方向で0.05〜10%という極めて表面近傍にその大部分を配向させることが、過酷な高温高湿環境下で長期間にわたり保存させたのちでも、優れた密着性により層間剥離を防止し、安定したガスバリアー性を保持することができると推測している。
また、−NH−C(=O)−結合基の含有量の異なる複数層を順次積層して、樹脂基材側からガスバリアー層側にかけて、−NH−C(=O)−結合基濃度が順次増加する傾斜濃度を有する有機層ユニットを形成する方法によっても、ある程度は本願発明で規定する条件を満たすことができるが、この方法では、複数の有機層を形成することになるため、塗布回数の増加により、生産効率が極めて悪い方法である。上記課題に対し、本発明では、単層の有機層の塗布により、有機層内に−NH−C(=O)−結合基の傾斜濃度を形成することができ、生産効率が極めて高い方法である。
本発明のガスバリアー性フィルムは、樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成される有機層と、ガスバリアー層とがこの順で積層され、有機層における前記(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項17までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、更に、−NH−C(=O)−結合基の濃度比率を10.0〜10000の範囲内とすることが、ガスバリアー性、密着性及び高温高湿環境下での耐久性をより高める観点から好ましい。
また、有機層において、樹脂基材側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、当該樹脂基材界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の領域内であること、言い換えると、ガスバリアー層界面から深さ方向で、全層厚の0.05〜10.0%の層厚範囲内で、総−NH−C(=O)−結合基数の90%以上となる領域が存在する構成とすることが、高い密着性を実現することができる観点から好ましい。90%に到達する位置が、全総厚の90%より樹脂基材側にあると、−NH−C(C=O)−結合によりガスバリアー層との密着性向上効果が十分に発揮することができず、また、99.95%を超えた領域に90%に到達する位置が存在すると、有機層の極めて表面近傍に高濃度で−NH−C(=O)−結合基が存在することになり、有機層表面における組成変化が急激となり、密着性や耐久性の劣化を招くことになる。
また、有機層の全層厚Tが、0.3〜5.0μmの範囲内であることが、応力緩和機能を発揮させることができ、有機層や、有機層上に形成する無機材料から構成されるガスバリアー層のクラックとの発生を防止することができる。
また、前記有機層が、少なくともフッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有さない(メタ)アクリレート系化合物Bとを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物より形成されたこと、前記有機層における前記フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aの含有率が、全固形分量の0.06〜13.0質量%の範囲内であること、あるいは前記有機層が含有する前記フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aが、イソシアヌレート構造を有する化合物であることが、有機層内における−NH−C(=O)−結合基の含有率プロファイルを本発明で規定する条件とすることができ、更には極性の高いイソシアヌレート構造を含有することにより、より無機材料から構成されるガスバリアー層との密着性を向上させることができる観点から好ましい。
本発明のガスバリアー性フィルムの製造方法は、樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成される有機層と、ガスバリアー層とをこの順で積層して製造する方法で、前記有機層における前記式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上となる条件で、有機層を形成することを特徴とし、ガスバリアー性及び密着性に優れ、かつ高温高湿環境下で保存した際の耐久性に優れたガスバリアー性フィルムを製造することができる。
また、本発明のガスバリアー性フィルムの製造方法においては、ガスバリアー層を、1)ロールtoロール方式の放電プラズマ化学気相成長法により形成すること、2)放電プラズマ化学気相成長法が、ガスバリアー層形成成分を含む原料ガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法であること、あるいは、3)有機層上にロールtoロール方式でポリシラザンを含有するガスバリアー層形成用塗布液を塗布、乾燥して前駆体層を形成した後、当該前駆体層に真空紫外光による改質処理を施してガスバリアー層を形成する方法であることが、精緻な構造を有するガスバリアー層を形成することができる観点から好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
なお、本発明でいう「ガスバリアー性」とは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(略称:WVTR、温度:60±0.5℃、相対湿度(RH):90±2%)が1×10−1g/(m2・24h)以下であり、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−1ml/(m2・24h・atm)以下であることを意味する。
《ガスバリアー性フィルムの基本構造》
図1は、本発明のガスバリアー性フィルムの基本構成の一例を示す概略断面図である。
図1は、本発明のガスバリアー性フィルムの基本構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示すとおり、本発明のガスバリアー性フィルム1は、樹脂基材2上に、少なくとも、本発明で規定する−NH−C(=O)−結合基の濃度比率を有する単一層により構成されている有機層3と、その上に、無機材料から構成される無機膜より構成されるガスバリー層4が、この順で積層されて構成されている。
本発明のガスバリアー性フィルムにおいては、本発明に係る有機層が、下式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上であることを特徴とする。
式(1)
−NH−C(=O)−結合基の濃度比率=−NH−C(=O)−結合基数A/−NH−C(=O)−結合基数B
上記式(1)において、−NH−C(=O)−結合基数Aは、有機層の全層厚をTとしたとき、ガスバリアー層界面から深さ0.1Taまでの領域における総−NH−C(=O)−結合基数を表し、−NH−C(=O)−結合基数Bは、有機層の全層厚をTとしたとき、樹脂基材界面から深さ0.1Tbまでの領域における総−NH−C(=O)−結合基数を表す。
−NH−C(=O)−結合基の濃度比率=−NH−C(=O)−結合基数A/−NH−C(=O)−結合基数B
上記式(1)において、−NH−C(=O)−結合基数Aは、有機層の全層厚をTとしたとき、ガスバリアー層界面から深さ0.1Taまでの領域における総−NH−C(=O)−結合基数を表し、−NH−C(=O)−結合基数Bは、有機層の全層厚をTとしたとき、樹脂基材界面から深さ0.1Tbまでの領域における総−NH−C(=O)−結合基数を表す。
《有機層における−NH−C(=O)−結合基の濃度比率》
図2は、本発明に係る有機層における−NH−C(=O)−結合基の濃度比率を説明するための概略断面図である。
図2は、本発明に係る有機層における−NH−C(=O)−結合基の濃度比率を説明するための概略断面図である。
図2に示すガスバリアー性フィルム1は、図1で説明した構成と同様で、有機層3の構成を拡大表示した概略図である。
図2において、有機層3の総層厚をTとした時、有機層全体が含有する総−NH−C(=O)−結合基数に対し、樹脂基材2と接する面側の総層厚Tの1/10(10%)の領域0.1Tbにおける総−NH−C(=O)−結合基数を−NH−C(=O)−結合基数Bとし、ガスバリアー層4と接する面側の総層厚Tの1/10(10%)の領域0.1Taにおける総−NH−C(=O)−結合基数を−NH−C(=O)−結合基数Aとしたとき、式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が10.0以上であることを特徴とする。すなわち、−NH−C(=O)−結合基の含有率が、樹脂基材に接する領域に対し、ガスバリアー層4に接する領域で、10.0倍以上の濃度であることを示し、好ましくは10.0〜10000倍の範囲内である。
このような濃度勾配とすることにより、ガスバリアー層近傍では、多く存在する−NH−C(=O)−結合基により密着性が向上し、逆に、水分等が浸透しやすい樹脂基材側では、耐水性にやや問題を抱えている−NH−C(=O)−結合基の濃度を低下させ、非−NH−C(C=O)−結合アクリレート化合物により構成することで、高温高湿環境下での耐久性を向上させることができた。
《有機層内における−NH−C(=O)−結合基の分布プロファイル》
本発明においては、有機層3として、樹脂基材2側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、当該樹脂基材2界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の領域内であること、すなわち、ガスバリアー層4界面から深さ方向で、全層厚Tの0.05〜10.0%の層厚範囲内で、総−NH−C(=O)−結合基数の90%以上となる領域が存在する構成とすることが好ましい態様であり、図を交えて更に詳細に説明する。
本発明においては、有機層3として、樹脂基材2側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、当該樹脂基材2界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の領域内であること、すなわち、ガスバリアー層4界面から深さ方向で、全層厚Tの0.05〜10.0%の層厚範囲内で、総−NH−C(=O)−結合基数の90%以上となる領域が存在する構成とすることが好ましい態様であり、図を交えて更に詳細に説明する。
図3〜図7は、本発明及び比較例の有機層内における−NH−C(=O)−結合基含有量のプロファイルの一例を示すグラフである。
図3に示すパターンAは、本発明の有機層内における−NH−C(=O)−結合基含有量のプロファイルの一例を示すグラフであり、縦軸は、全−NH−C(=O)−結合基数を100%としたときの各層厚における−NH−C(=O)−結合基の含有比率(%)を積算値として表示したものである。横軸は、有機層の層厚方向(層厚T)を表示しており、左側の端部の0%の位置が、樹脂基材2に接している有機層界面を表し、右側の端部の100%の位置が、ガスバリアー層に接している有機層界面を表す。
図3のパターンAにおいては、樹脂基材2側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有比率(積算値)が90%に到達する有機層の層厚が、90%の位置、言い換えると、ガスバリアー層の界面から深さ10%の位置で90%に到達するプロファイルである。
図4に示すパターンB1は、樹脂基材2側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有比率(積算値)が90%に到達する有機層の層厚が、パターンAよりさらに表面側になり、95%の位置、言い換えると、ガスバリアー層の界面から深さ5%の位置で90%に到達するプロファイルである。
積算値で表示した図4のパターンB1のプロファイルに対し、図5に示すパターンB2は、有機層の層厚方向における−NH−C(=O)−結合基の含有比率(微分値)を表示したグラフで、層厚が90%を超えた層厚領域から−NH−C(=O)−結合基の含有数が急激に増加し、含有率が90%を超える層厚比率が95%の位置でピークとなり、それ以降は減少するプロファイルである。
これに対し、図6に示すパターンC1は、−NH−C(=O)−結合基の積算値による含有比率のプロファイルであり、−NH−C(=O)−結合基の積算値が90%に到達する層厚位置が72%と、パターンAやパターンBに比較すると、ガスバリアー層の界面からより内部側にシフトしている。
図7に示すパターンC2は、図6で示したパターンC1の積分プロファイルに対し、有機層の層厚方向における−NH−C(=O)−結合基の含有比率(微分値)を表示したグラフで、層厚で40%近傍から−NH−C(=O)−結合基濃度が増加し、64%近傍でピーク値となり、それ以降は暫時減少するパターンであり、このようなプロファイルでは、樹脂基材2に接する面側の層厚0.1Tbにおける−NH−C(=O)−結合基数Bに対する、ガスバリアー層に接する面側の層厚0.1Taにおける−NH−C(=O)−結合基数Aの比率は、10.0未満となっている。
《本発明で規定する−NH−C(=O)−結合基の分布プロファイルの達成手段》
本発明に係る有機層において、本発明で規定する式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率を10.0以上とすること、更に好ましくは、樹脂基材側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、当該樹脂基材界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の領域内であることであり、これらの−NH−C(=O)−結合基の分布プロファイルは、有機層の形成材料として、少なくとも、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を適用することにより達成することができる。
本発明に係る有機層において、本発明で規定する式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率を10.0以上とすること、更に好ましくは、樹脂基材側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、当該樹脂基材界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の領域内であることであり、これらの−NH−C(=O)−結合基の分布プロファイルは、有機層の形成材料として、少なくとも、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を適用することにより達成することができる。
前述のとおり、有機層を構成する樹脂成分の一つとして、分子構造内にフッ素及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物Aを適用することにより、有機層形成時に、フッ素原子の強い表面配向性により、−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aが、ガスバリアー層との界面により分布する。
すなわち、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aを適用し、更に、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bの構成比率を適宜調整することにより、本発明で規定する−NH−C(=O)−結合基の分布プロファイルを実現することができ、より好ましくは、有機層におけるフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aの含有率を、全固形分量の0.06〜13.0質量%の範囲内とすることにより、請求項3で規定する、樹脂基材側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、当該樹脂基材界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の領域内とすることができる。
《有機層の層厚方向における−NH−C(=O)−結合基の定量方法》
本発明に係る有機層において、有機層の層厚方向で、−NH−C(=O)−結合基の含有数を定量して、その分布プロファイルを求める。
本発明に係る有機層において、有機層の層厚方向で、−NH−C(=O)−結合基の含有数を定量して、その分布プロファイルを求める。
−NH−C(=O)−結合基を定量方法としては、公知の方法を含め多くの方法が知られており、その方法については、特に制限はないが、本発明においては、下記に記載の方法を適用することができる。
一つの方法としては、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、有機層表面から、順次内部を露出させつつ表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定WP適用することができる。
XPSは、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも呼ばれ、測定した結合(束縛)エネルギーの化学シフトから化学状態より、例えば、−NH−C(=O)−結合基に起因する炭素原子の1s軌道のエネルギーピーク位置より、−NH−C(=O)−結合基数を求める方法である。
XPSの測定条件の一例を、下記に示す。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+)
エッチング速度:0.05nm/sec
エッチング間隔:10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線としては、例えば、前記図3のパターンB2で示すように、縦軸を−NH−C(=O)−結合基量とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする−NH−C(=O)−結合基の分布曲線において、エッチング時間は層厚方向における有機層の層厚方向における有機層の表面からの距離に概ね相関することから、「有機層の層厚方向における有機層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される有機層の表面からの距離を採用することができる。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+)
エッチング速度:0.05nm/sec
エッチング間隔:10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線としては、例えば、前記図3のパターンB2で示すように、縦軸を−NH−C(=O)−結合基量とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする−NH−C(=O)−結合基の分布曲線において、エッチング時間は層厚方向における有機層の層厚方向における有機層の表面からの距離に概ね相関することから、「有機層の層厚方向における有機層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される有機層の表面からの距離を採用することができる。
XPSで用いられる測定装置としては、例えば、上記のThermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」、あるいは日本電子社製のJPS−9000MC/SpecXPS光電子分光装置を挙げることができる。
また、XPSを用いたその他の測定方法としては、前記アルゴン等の希ガスイオンスパッタにより、有機層表面から順次内部を露出させつつ表面組成分析を行う方法に代えて、有機層を形成したガスバリアー性フィルムの断面を切り出した後、その断面に対し斜め方向にトリミングし、その形成した幅広の有機層面をXPSにより−NH−C(=O)−結合基を測定する方法も用いることができる。
その他には、例えば、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR)を用いて−NH−C(C=O)−結合に起因するN−H、NCO、C=O、NH−C=Oのピーク強度を測定する方法があり、
例えば、日本ゴム協会誌の第84巻 第4号(2011)に記載されているような赤外吸収(IR)スペクトルによる分析法を挙げることができる。また、DIC Technical Review No.12/2006に記載されている固体NMR(高分解能NMRとパルスNMR)による分析方法を適用して求めることもできる。
例えば、日本ゴム協会誌の第84巻 第4号(2011)に記載されているような赤外吸収(IR)スペクトルによる分析法を挙げることができる。また、DIC Technical Review No.12/2006に記載されている固体NMR(高分解能NMRとパルスNMR)による分析方法を適用して求めることもできる。
《ガスバリアー性フィルムの構成材料及び製造方法》
本発明のガスバリアー性フィルムは、樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成され、−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が表面側で高くなる構成の有機層と、ガスバリアー層とをこの順で積層された構成である。
本発明のガスバリアー性フィルムは、樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成され、−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が表面側で高くなる構成の有機層と、ガスバリアー層とをこの順で積層された構成である。
以下、本発明のガスバリアー性フィルムの各構成要素の詳細について説明する。
〔樹脂基材〕
本発明のガスバリアー性フィルムの樹脂基材としては、樹脂フィルムを用いる。用いられる樹脂フィルムは、ガスバリアー層を保持できるフィルムであれば材質、厚さ等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。
本発明のガスバリアー性フィルムの樹脂基材としては、樹脂フィルムを用いる。用いられる樹脂フィルムは、ガスバリアー層を保持できるフィルムであれば材質、厚さ等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
ガスバリアー性フィルムを有機EL素子等の電子デバイスの基板として使用する場合は、樹脂基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15〜100ppm/Kの範囲内で、かつガラス転移温度Tgが100〜300℃の範囲内の樹脂基材が使用される。該樹脂基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。
すなわち、これらの用途にガスバリアー性フィルムを用いる場合、ガスバリアー性フィルムは、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリアー性フィルムにおける基材の線膨張係数が15〜100ppm/Kの範囲内であることで、熱耐性に強く、またフレキシビリティがよいものとなる。基材の線膨張係数やTgは、添加剤などによって調整することができる。
樹脂基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば、日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば、三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(なお、括弧内の数値は、Tgを示す。)。特に、透明性を求める場合には、脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
ガスバリアー性フィルムは、有機EL素子等の電子デバイスに利用されることから、樹脂基材は透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。
光線透過率は、JIS K 7105:1981に記載された方法、すなわち、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、ガスバリアー性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、樹脂基材として不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
ガスバリアー性フィルムに用いられる樹脂基材の厚さは、用途によって適宜選択されるため特に制限はないが、典型的には1〜800μmの範囲内であり、好ましくは10〜200μmの範囲内である。これらの樹脂フィルムは、従来のガスバリアー性フィルムに用いられている公知の透明導電層や平滑層等の機能層を有していてもよい。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落0036〜0038に記載されているものを好ましく採用できる。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
樹脂基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の樹脂基材を製造することができる。また、未延伸の樹脂基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、樹脂基材の流れ(縦軸)方向、又は樹脂基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍の範囲内が好ましい。
樹脂基材の両面、少なくともガスバリアー層を設ける側には、接着性向上のための公知の種々の処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、平滑層の積層等を、必要に応じて組み合わせて行うことができる。
〔有機層〕
本発明に係る有機層においては、少なくともフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物より形成し、有機層における前記式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上であることを特徴とする。
本発明に係る有機層においては、少なくともフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物より形成し、有機層における前記式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上であることを特徴とする。
本発明に係るアクリレート系化合物A及びアクリレート系化合物Bは、いずれも紫外線硬化型樹脂である。
(フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物A)
本発明に係る有機層に適用可能なフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物Aとしては、分子中にフッ素原子を有するウレタン(メタ)アクリレートであれば、特に限定されない。
本発明に係る有機層に適用可能なフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物Aとしては、分子中にフッ素原子を有するウレタン(メタ)アクリレートであれば、特に限定されない。
以下に、本発明に適用可能なフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物の代表的な化合物例を示すが、本発明においては、これら例示する化合物に限定されるものではない。
〈フッ素原子を含有するポリオールと、ジイソシアネートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートより構成される(メタ)アクリレート系化合物TypeA〉
本発明においては、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物の一例として、特開2009−132800号公報に記載されているようなフッ素原子を含有するポリオールと、ジイソシアネートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリレート系化合物TypeAを挙げることができる。
本発明においては、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物の一例として、特開2009−132800号公報に記載されているようなフッ素原子を含有するポリオールと、ジイソシアネートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリレート系化合物TypeAを挙げることができる。
フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、基本的には、フッ素原子を含有するポリオール、ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより製造することができる。すなわち、ジイソシアネートのイソシアネート基を、フッ素原子を含有するポリオールのヒドロキシ基及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシ基と、それぞれ反応させることにより製造することができる。
このフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物TypeAの合成反応としては、例えば、
1)フッ素原子を含有するポリオール、ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを一括に仕込んで反応させる方法、
2)フッ素原子を含有するポリオール及びジイソシアネートを反応させ、次いでヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法、
3)ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでフッ素原子を含有するポリオールを反応させる方法、
4)ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでフッ素原子を含有するポリオールを反応させ、最後にまたヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法、
などが挙げられる。
1)フッ素原子を含有するポリオール、ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを一括に仕込んで反応させる方法、
2)フッ素原子を含有するポリオール及びジイソシアネートを反応させ、次いでヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法、
3)ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでフッ素原子を含有するポリオールを反応させる方法、
4)ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでフッ素原子を含有するポリオールを反応させ、最後にまたヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法、
などが挙げられる。
上記で適用可能なフッ素原子を含有するポリオールとしては、下記一般式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルが挙げられる。
一般式(I)
Z−CF2−〔(OCF2CF2)p−(OCF2)q〕−O−CF2−Z
上記一般式(I)において、Zは同一又は異なって、−CH2(OCH2CH2)nOH(nは0〜10、好ましくは1〜7である。)を表し、pは1〜40の整数を表し、qは1〜70の整数を表す。
Z−CF2−〔(OCF2CF2)p−(OCF2)q〕−O−CF2−Z
上記一般式(I)において、Zは同一又は異なって、−CH2(OCH2CH2)nOH(nは0〜10、好ましくは1〜7である。)を表し、pは1〜40の整数を表し、qは1〜70の整数を表す。
また、ジイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3´−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。
また、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、下記一般式(II)又は一般式(III)で表される(メタ)アクリレート等が挙げられる。
一般式(II)
CH2=C(R2)−COOCH2CH2−(OCOCH2CH2CH2CH2CH2)m−OH
一般式(III)
CH2=C(R2)−COOCH2CH(OH)CH2−O−(C6H5)
上記一般式(II)及び一般式(III)において、R2は水素原子又はメチル基を表し、mは1〜15の整数を表す。
CH2=C(R2)−COOCH2CH2−(OCOCH2CH2CH2CH2CH2)m−OH
一般式(III)
CH2=C(R2)−COOCH2CH(OH)CH2−O−(C6H5)
上記一般式(II)及び一般式(III)において、R2は水素原子又はメチル基を表し、mは1〜15の整数を表す。
上記で示したフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物TypeAの合成方法としては、例えば、特開2009−132800号公報の実施例に記載の方法に従って得ることができる。
〈パーフルオロポリエーテル単位、−NH−C(C=O)−結合及び活性エネルギー線反応性基を有するフッ素含有ポリエーテル化合物TypeB〉
本発明に係るフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物の他の一例としては、特許第4779293号公報に開示されているパーフルオロポリエーテル単位、−NH−C(C=O)−結合及び活性エネルギー線反応性基を有するフッ素含有ポリエーテル化合物TypeBを挙げることができる。このフッ素含有ポリエーテル化合物は、パーフルオロポリエーテル単位を有し、かつ分子の両末端にそれぞれヒドロキシル基を有するフッ素含有ポリエーテル化合物の前記両ヒドロキシル基それぞれに、イソホロンジイソシアネートに由来する2つの−NH−C(C=O)−結合を介して(メタ)アクリロイル基が導入されたものである。
本発明に係るフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物の他の一例としては、特許第4779293号公報に開示されているパーフルオロポリエーテル単位、−NH−C(C=O)−結合及び活性エネルギー線反応性基を有するフッ素含有ポリエーテル化合物TypeBを挙げることができる。このフッ素含有ポリエーテル化合物は、パーフルオロポリエーテル単位を有し、かつ分子の両末端にそれぞれヒドロキシル基を有するフッ素含有ポリエーテル化合物の前記両ヒドロキシル基それぞれに、イソホロンジイソシアネートに由来する2つの−NH−C(C=O)−結合を介して(メタ)アクリロイル基が導入されたものである。
フッ素含有ポリエーテル化合物としては、例えば、下記に示す例示化合物1及び例示化合物2を挙げることができる。
上記で例示される化合物等は、特許第4779293号公報に記載されている合成法に準じて得ることができる。
〈ポリイソシアネート系化合物、フッ素原子含有のアルコール系化合物及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系化合物より形成されるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物TypeC〉
本発明に適用可能なフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物の一例としては、特許第4886152号公報に記載されているようなポリイソシアネート系化合物、フッ素原子含有のアルコール系化合物及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系化合物より形成されるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物TypeCを挙げることができる。
本発明に適用可能なフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物の一例としては、特許第4886152号公報に記載されているようなポリイソシアネート系化合物、フッ素原子含有のアルコール系化合物及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系化合物より形成されるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物TypeCを挙げることができる。
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、ポリイソシアネート系化合物のイソシアネート基とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシ基を反応させた後、ポリイソシアネート系化合物の残りのイソシアネート基とフッ素含有アルコール系化合物のヒドロキシ基を反応させることにより合成することができる。
ポリイソシアネート系化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、又はイソホロンジイソシアネートの3量体が用いられる。
また、フッ素含有アルコール系化合物としては、特許第4886152号公報の段落〔0018〕及び〔0019〕に記載の各化合物を挙げることができ、フッ素含有多価アルコールとしては、同特許の段落〔0020〕〜同〔0024〕の記載の各化合物を挙げることができる。
以下に、代表的なフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基含有のウレタン(メタ)アクリレート系化合物の他の事例であるイソシアヌレート構造を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物の合成例を示す。本発明においては、下記例示化合物3及び4で示すようなフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有するイソシアヌレート構造を有する(メタ)アクリレート系化合物が、本発明の目的とする効果をより発現させることができる観点から好ましい化合物の一つである。
〈例示化合物3の合成〉
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー及び窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(イソシアネート基含有量21.3%)を149.7g(0.25モル)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(重量平均分子量465.64、ヒドロキシ基価120.5mgKOH/g、大阪有機化学工業社製「ビスコート#300」)を235.6g(0.51モル)、ハイドロキノンメチルエーテルを0.02g、ジブチルスズジラウレートを0.02g、メチルエチルケトンを500g添加し、60℃で6時間反応させ、残存イソシアネート基が1.3%となった時点で、40℃に冷却し、更に1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノナノール(ヒドロキシ基価129.9mgKOH/g、ダイキンファインケミカル研究所社製「A−5810」)の114.8g(0.27モル)を1時間かけて滴下し、60℃で3時間反応させて、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、フッ素原子含有のウレタン(メタ)アクリレート系化合物である例示化合物3を得た(樹脂分濃度50%)。
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー及び窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(イソシアネート基含有量21.3%)を149.7g(0.25モル)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(重量平均分子量465.64、ヒドロキシ基価120.5mgKOH/g、大阪有機化学工業社製「ビスコート#300」)を235.6g(0.51モル)、ハイドロキノンメチルエーテルを0.02g、ジブチルスズジラウレートを0.02g、メチルエチルケトンを500g添加し、60℃で6時間反応させ、残存イソシアネート基が1.3%となった時点で、40℃に冷却し、更に1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノナノール(ヒドロキシ基価129.9mgKOH/g、ダイキンファインケミカル研究所社製「A−5810」)の114.8g(0.27モル)を1時間かけて滴下し、60℃で3時間反応させて、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、フッ素原子含有のウレタン(メタ)アクリレート系化合物である例示化合物3を得た(樹脂分濃度50%)。
フッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有するイソシアヌレート構造の(メタ)アクリレート系化合物である例示化合物3の構造は以下の通りである。
上記例示化合物3において、Xは、下記に示す基を表す。
X:−CH2(CF2)8H
また、例示化合物3において、Yは、下記に示す基を表す。
また、例示化合物3において、Yは、下記に示す基を表す。
〈例示化合物4の合成〉
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー及び窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネートの3量体(イソシアネート基含有量17.3%)を150.0g(0.21モル)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(重量平均分子量465.64、ヒドロキシ基価120.5mgKOH/g、大阪有機化学工業社製「ビスコート#300」)を191.2g(0.41モル)、ハイドロキノンメチルエーテルを0.02g、ジブチルスズジラウレートを0.02g、メチルエチルケトンを500g添加し、60℃で6時間反応させ、残存イソシアネート基が2.3%となった時点で、40℃に冷却し、更にパーフルオロアルキル基含有エチレンオキサイド付加物(F(CF2)m(CH2CH2O)nH;m=6、8、10、n=4〜5)(ヒドロキシ基価79.8mgKOH/g、大日本インキ工業社製「メガファックF−1405」)の161.7g(0.23モル)を1時間かけて滴下し、60℃で5時間反応させて、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、フッ素原子含有のウレタン(メタ)アクリレート系化合物である例示化合物4を得た(樹脂分濃度50%)。
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー及び窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネートの3量体(イソシアネート基含有量17.3%)を150.0g(0.21モル)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(重量平均分子量465.64、ヒドロキシ基価120.5mgKOH/g、大阪有機化学工業社製「ビスコート#300」)を191.2g(0.41モル)、ハイドロキノンメチルエーテルを0.02g、ジブチルスズジラウレートを0.02g、メチルエチルケトンを500g添加し、60℃で6時間反応させ、残存イソシアネート基が2.3%となった時点で、40℃に冷却し、更にパーフルオロアルキル基含有エチレンオキサイド付加物(F(CF2)m(CH2CH2O)nH;m=6、8、10、n=4〜5)(ヒドロキシ基価79.8mgKOH/g、大日本インキ工業社製「メガファックF−1405」)の161.7g(0.23モル)を1時間かけて滴下し、60℃で5時間反応させて、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、フッ素原子含有のウレタン(メタ)アクリレート系化合物である例示化合物4を得た(樹脂分濃度50%)。
上記合成したフッ素原子を含有の−NH−C(=O)−結合基を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物である例示化合物4の構造は以下の通りである。
上記例示化合物4において、Xは、下記に示す基を表す。
X:−CH2CH2(OCH2CH2)nOCH2CH2(CF2)mH
また、例示化合物4において、Yは、下記に示す基を表す。
また、例示化合物4において、Yは、下記に示す基を表す。
〈フッ素含有ジオール化合物と、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートとの反応により得られるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート化合物TypeD〉
本発明に適用可能なフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物の一例としては、特開2002−3550号公報、特開2002−128816号公報等に記載されているフッ素含有ジオール化合物と、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートとの反応により得られるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート化合物TypeDも用いることができる。
本発明に適用可能なフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物の一例としては、特開2002−3550号公報、特開2002−128816号公報等に記載されているフッ素含有ジオール化合物と、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートとの反応により得られるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート化合物TypeDも用いることができる。
上記フッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート化合物TypeDは、フッ素含有ジオール化合物と2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートとを反応させることによって得ることができる。
フッ素含有ジオール化合物としては、例えば、特開2002−3550号公報の段落〔0012〕に開示されている化合物を挙げることができる。
上記フッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート化合物TypeDの合成方法としては、例えば、特開2002−3550号公報の段落〔0029〕及び〔0030〕に記載されている方法を挙げることができる。
(フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物B)
本発明に適用可能なフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとしては、特に、上記要件を満たすものであれば特に制限はなく、従来公知の(メタ)アクリレート系化合物、特には、紫外線硬化型の(メタ)アクリレート系化合物より選択することができる。
本発明に適用可能なフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとしては、特に、上記要件を満たすものであれば特に制限はなく、従来公知の(メタ)アクリレート系化合物、特には、紫外線硬化型の(メタ)アクリレート系化合物より選択することができる。
本発明に適用可能なフッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとしては、紫外線硬化型(メタ)アクリレート系樹脂であることが好ましく、更には、紫外線硬化型の多官能アクリレート系樹脂が好ましい。
多官能アクリレート系樹脂としては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれる樹脂であることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。多官能アクリレートのモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、イソボロニルアクリレート等が好ましく挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独又は二種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
また、紫外線硬化型(メタ)アクリレート系樹脂は市販品としての入手することができ、アデカオプトマー(登録商標)KR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、ADEKA株式会社製)、コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学株式会社製)、セイカビーム(登録商標)PHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業株式会社製)、KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー株式会社製)、RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、DIC株式会社製)、オーレックスNo.340クリヤ(以上、中国塗料株式会社製)、サンラッド(登録商標)H−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業株式会社製)、SP−1509、SP−1507(以上、昭和高分子株式会社製)、RCC−15C(以上、グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックス(登録商標)M−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製)、NKハードB−420、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E(以上、新中村化学工業株式会社製)等を適宜選択して利用できる。
その他の紫外線硬化型の(メタ)アクリレート系化合物としては、下記の化合物を挙げることができる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステル末端のヒドロキシル基(ヒドロキシ基)やカルボキシル基に2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸のようなモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば、特開昭59−151112号)。
また、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂は、エポキシ樹脂の末端のヒドロキシル基(ヒドロキシ基)にアクリル酸、アクリル酸クロライド、グリシジルアクリレートのようなモノマーを反応させて得られる。
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
(有機層のその他の添加剤)
〈重合開始剤〉
本発明で使用できる重合開始剤としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルアゾビスバレロニリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル及び過酸化ラウロイルなどの過酸化物等の熱重合開始剤が挙げられる。
〈重合開始剤〉
本発明で使用できる重合開始剤としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルアゾビスバレロニリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル及び過酸化ラウロイルなどの過酸化物等の熱重合開始剤が挙げられる。
また、光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(イルガキュア369:BASFジャパン社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン及び1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン及び1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン及び2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。
その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819:BASFジャパン社製)、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物及びイミダゾール系化合物が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独又は上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル及び4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
〈溶媒〉
本発明に係る(メタ)アクリレート系樹脂A及び(メタ)アクリレート系樹脂Bを溶解させる溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−又はβ−テルピネオール等のテルペン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル等のエステル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に係る(メタ)アクリレート系樹脂A及び(メタ)アクリレート系樹脂Bを溶解させる溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−又はβ−テルピネオール等のテルペン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル等のエステル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。
〈その他の添加剤〉
本発明に係る有機層には、上記説明した以外に、増感剤、界面活性剤、紫外吸収剤、無機微粒子、安定剤等の各種添加剤を加えることもできる。
本発明に係る有機層には、上記説明した以外に、増感剤、界面活性剤、紫外吸収剤、無機微粒子、安定剤等の各種添加剤を加えることもできる。
(有機層の形成)
本発明に係る有機層は、(メタ)アクリレート系樹脂A及び(メタ)アクリレート系樹脂B、重合開始剤等、所望の構成材料を、上記溶媒に溶解して有機層形成用塗布液を調製した後、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター、スプレーコート、インクジェット法等の公知の湿式塗布方法を用いて、樹脂基材上に有機層を形成する。
本発明に係る有機層は、(メタ)アクリレート系樹脂A及び(メタ)アクリレート系樹脂B、重合開始剤等、所望の構成材料を、上記溶媒に溶解して有機層形成用塗布液を調製した後、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター、スプレーコート、インクジェット法等の公知の湿式塗布方法を用いて、樹脂基材上に有機層を形成する。
形成する有機層の層厚としては、0.3〜5μmの範囲内であることが好ましい。層厚が0.3μm以上であれば、応力緩和層としての機能を発揮させることができ、外圧を受けた時に、上部に形成する無機材料から構成されるガスバリアー層におけるひび割れ等の膜破壊を防止することができる。また、5μm以下であれば、ガスバリアー層近傍の層厚が0.05〜10%の層厚範囲に、効率よく高濃度の−NH−C(=O)−結合基含有領域を形成することができ、有機層とガスバリアー層との密着性を更に向上させることができる観点から好ましい。
(有機層の硬化)
上記のようにして形成した有機層に対し、紫外線を照射して、有機層を硬化する。
上記のようにして形成した有機層に対し、紫外線を照射して、有機層を硬化する。
本発明において、有機層の硬化に使用する活性エネルギー線として、取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で、紫外線を適用する。
本発明において適用可能な紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2以上が好ましく、更に好ましくは、50〜10000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。
〔ガスバリアー層〕
本発明に係るガスバリアー層は、無機材料から構成され、上記説明した有機層上に、ロールtoロール方式の放電プラズマ化学気相成長法(PE−CVD法)による第1の形成方法、ロールtoロール方式でポリシラザンを含有するガスバリアー層形成用塗布液を塗布、乾燥して前駆体層を形成した後、当該前駆体層に真空紫外光による改質処理を施してガスバリアー層を形成する第2の形成方法により形成することでき、更には、第1の形成方法で形成した第1のガスバリアー層上に、第2の形成方法で形成した第2のガスバリアー層を積層する構成も好ましい態様である。
本発明に係るガスバリアー層は、無機材料から構成され、上記説明した有機層上に、ロールtoロール方式の放電プラズマ化学気相成長法(PE−CVD法)による第1の形成方法、ロールtoロール方式でポリシラザンを含有するガスバリアー層形成用塗布液を塗布、乾燥して前駆体層を形成した後、当該前駆体層に真空紫外光による改質処理を施してガスバリアー層を形成する第2の形成方法により形成することでき、更には、第1の形成方法で形成した第1のガスバリアー層上に、第2の形成方法で形成した第2のガスバリアー層を積層する構成も好ましい態様である。
(第1の形成方法:放電プラズマ化学気相成長法(PE−CVD法)による形成)
本発明に係るガスバリアー層を有機層上に形成させる方法としては、ガスバリアー性の観点から、放電プラズマ化学気相成長法を採用することが好ましく、さらには、ガスバリアー層形成成分を含む原料ガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法(以下、プラズマCVD法又はPE−CVD法と称す。)であることが好ましい。
本発明に係るガスバリアー層を有機層上に形成させる方法としては、ガスバリアー性の観点から、放電プラズマ化学気相成長法を採用することが好ましく、さらには、ガスバリアー層形成成分を含む原料ガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法(以下、プラズマCVD法又はPE−CVD法と称す。)であることが好ましい。
プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに基材を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できるばかりか、単一のローラーを使用する方法やローラーを使用しない平板電極方式のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。
また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。また、本発明のガスバリアー性フィルムにおいては、前記ガスバリアー層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
また、本発明のガスバリアー性フィルムでは、生産性の観点から、ロールtoロール方式で樹脂基材上に形成した有機層表面上に、ガスバリアー層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマCVD法によりガスバリアー層を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図8に示す磁場を印加したローラー間に放電空間を有するCVD成膜装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロールtoロール方式で製造することも可能となる。
以下、図8を参照しながら、有機層を有する樹脂基材を一対の成膜ローラー上に配置し、前記一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させるプラズマCVD法によるガスバリアー層の形成方法1について、より詳細に説明する。なお、図8は、形成方法1で有機層上にガスバリアー層を形成するために好適に利用することが可能な磁場を印加したローラー間に放電空間を有する製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図8に示すCVD成膜装置31は、送り出しローラー32と、搬送ローラー33、34、35及び36と、成膜ローラー39及び40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、成膜ローラー39及び40の内部に設置された磁場発生装置43及び44と、巻取りローラー45とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、磁場発生装置43、44とが図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。さらに、このような製造装置31において前記真空チャンバーは図示を省略した真空ポンプに接続されており、当該真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このようなCVD成膜装置31においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源42に接続されている。そのため、このようなCVD成膜装置31においては、プラズマ発生用電源42により電力を供給することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー39と成膜ローラー40とを電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。また、このようなCVD成膜装置31においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39及び40)は、その中心軸が同一平面上においてほぼ平行となるように配置することが好ましい。このように平行に一対の成膜ローラー(成膜ローラー39及び40)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、かつ、同じ構造の膜を成膜できるので高い生産効率を得ることができる。
このようなCVD成膜装置においては、CVD法により有機層3を有する樹脂基材2(2+3)の有機層3上にガスバリアー層4を形成することが可能であり、成膜ローラー39上において、樹脂基材2の有機層3表面上にガスバリアー層4成分を堆積させつつ、さらに成膜ローラー40上においても樹脂基材2+有機層3+ガスバリアー層4上に、再びガスバリアー層4成分を堆積させることもできるため、有機層3の表面上に、各構成元素が連続的に変化する構成のガスバリアー層4を効率よく、倍の成膜速度で形成することができる。
成膜ローラー39及び40の内部には、成膜ローラー39及び40が回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置43及び44がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー39及び40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43及び44は、一方の成膜ローラー39に設けられた磁場発生装置43と他方の成膜ローラー40に設けられた磁場発生装置44との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置43及び44がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43及び44を設けることにより、各成膜ローラー39及び40の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束されやすくなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー39及び40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43及び44は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置43と他方の磁場発生装置44とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43及び44を設けることにより、それぞれの磁場発生装置43及び44について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の有機層3を有する樹脂基材2を用いて効率的に蒸着膜であるガスバリアー層4を形成することができる点で優れている。
成膜ローラー39及び40としては、適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー39及び40としては、より効率よく薄膜のガスバリアー層3を形成するという観点から、各ローラーとして、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー39及び40の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲内、特に300〜700mmφの範囲内が好ましい。成膜ローラーの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が有機層3や樹脂基材2にかかることを回避できることから、有機層3や樹脂基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
このようなCVD成膜装置31においては、有機層3を有する樹脂基材2(2+3)の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)上に、有機層3を有する樹脂基材2(2+3)が配置されている。このようにして有機層3を有する樹脂基材2(2+3)を配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー間に存在する有機層3を有する樹脂基材2(2+3)のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このようなCVD成膜装置によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー39上にて有機層3を有する樹脂基材2の表面上に第1のガスバリアー層成分を堆積させ、さらに成膜ローラー40上にてガスバリアー層成分堆積させることができるため、有機層3を有する樹脂基材2の表面上にガスバリアー層4を効率よく形成することが可能となる。
このようなCVD成膜装置に用いる送り出しローラー32及び搬送ローラー33、34、35及び36としては適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー45も、有機層3を有する樹脂基材2上にガスバリアー層4を形成したガスバリアー性フィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
また、ガス供給管41及び真空ポンプ(不図示)としては、原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管41は、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間に形成される対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管41と、真空排気手段である真空ポンプ(不図示)を配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間に形成する対向空間に効率良く成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で好ましい態様である。
さらに、プラズマ発生用電源42としては、従来公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源42は、これに接続された成膜ローラー39と成膜ローラー40とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源42としては、効率よくプラズマCVD処理を実施することが可能となることから、一対の成膜ローラー39及び40の極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源42としては、効率よくプラズマCVD処理を施すことが可能となることから、印加電力を100W〜10kWの範囲内とすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲内とすることが可能なものがより好ましい。また、磁場発生装置43及び44としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。さらに、樹脂基材2としては、本発明で用いられる有機層3を有する樹脂基材2の他に、ガスバリアー層4をあらかじめ形成させたものを用いることができる。このように、樹脂基材2としてガスバリアー層4をあらかじめ形成させたものを用いることにより、ガスバリアー層4の層厚を厚くすることも可能である。
このような図8に示すCVD成膜装置31を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバー内の圧力、成膜ローラーの直径、並びにフィルム(基材)の搬送速度を適宜調整することにより、本発明に係るガスバリアー層を形成することができる。すなわち、図8に示すCVD成膜装置31を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39及び40)間に放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー39上の樹脂基材2が保持する有機層3表面上及び成膜ローラー40上の樹脂基材2が保持する有機層3の表面上に、ガスバリアー層4がプラズマCVD法により形成される。この際、成膜ローラー39及び40のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成して、磁場にプラズマを収束させる。このため、樹脂基材2が、図8中の成膜ローラー39のA地点及び成膜ローラー40のB地点を通過する際に、ガスバリアー層で炭素分布曲線の極大値が形成される。これに対して、基材1aが、図8中の成膜ローラー39のC1及びC2地点、並びに成膜ローラー40のC3及びC4地点を通過する際に、ガスバリアー層で炭素分布曲線の極小値が形成される。このため、二つの成膜ローラーに対して、通常、五つの極値が生成する。また、ガスバリアー層の極値間の距離(炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における第1のガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離(L)の差の絶対値)は、成膜ローラー39及び40の回転速度(基材の搬送速度)によって調節できる。なお、このような成膜に際しては、樹脂基材2が送り出しローラー32や成膜ローラー39等により、それぞれ搬送されることにより、ロールtoロール方式の連続的な成膜プロセスにより樹脂基材2が保持する有機層3の表面上にガスバリアー層4が形成される。
上記説明したCVD成膜装置31を用いてガスバリアー層4を形成するが、形成するガスバリアー層内における各元素プロファイルとしては、下記の条件を満たす構成であることが好ましい態様である。
すなわち、上記方法で形成されるガスバリアー層は、構成元素として炭素、ケイ素、及び酸素を含み、以下の(i)〜(iii)の要件を満たす層であることが好ましい態様である。
(i)ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比率)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比率)との関係を示す酸素分布曲線、並びに前記Lとケイ素原子、酸素原子、及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比率)との関係を示す炭素分布曲線において、前記ガスバリアー層の層厚の90%以上(上限:100%)の領域で、(酸素の原子比率)、(ケイ素の原子比率)、(炭素の原子比率)の順で多い(原子比率がO>Si>C)
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも二つの極値を有する
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が3at%以上である。
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも二つの極値を有する
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が3at%以上である。
上記ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線、及び酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比率(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は層厚方向における前記ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離(L)におおむね相関することから、「ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリアー層の表面からの距離を採用することができる。なお、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線は、下記測定条件にて作成することができる。
〈測定条件〉
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+)
エッチング速度(SiO2熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO2換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名=VG Theta Probe
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+)
エッチング速度(SiO2熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO2換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名=VG Theta Probe
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形。
本発明に係るガスバリアー層の形成に用い、ガス供給管41から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスが単独又は2種以上を混合して用いることができる。ガスバリアー層1bの形成に用いる成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリアー層1bの材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られるガスバリアー層4のガスバリアー性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、11,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。これら有機ケイ素化合物ガスや有機化合物ガスは、形成するガスバリアー層4の種類に応じて適切な原料ガスが選択される。
また、成膜ガスとしては、上記原料ガスと共に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
成膜ガスとしては、原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや水素ガスを用いることができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことで、形成されるガスバリアー層4として、優れたバリアー性や耐屈曲性を得ることができる点で優れている。
また、成膜ガスが有機ケイ素化合物と酸素とを含有する構成である場合には、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
以下、成膜ガスとして、原料ガスであるヘキサメチルジシロキサン(有機ケイ素化合物、HMDSO、(CH3)6Si2O)と、反応ガスである酸素(O2)を含有するものとを用い、ケイ素−酸素系のガスバリアー層を形成する場合を例に、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスとの好適な比率等について、より詳細に説明する。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CH3)6Si2O)と、反応ガスとしての酸素(O2)と、を含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させてケイ素−酸素系のガスバリアー層を形成する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1)で表されるような反応が起こり、二酸化ケイ素より構成されるガスバリアー層が形成する。
反応式(1)
(CH3)6Si2O+12O2→6CO2+9H2O+2SiO2
このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまう(炭素分布曲線が存在しない)ため、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリアー層を形成することができなくなってしまう。そのため、本発明において、ガスバリアー層を形成する際には、上記反応式(1)の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくすることが好ましい。なお、実際のプラズマCVDチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素とは、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる。例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がガスバリアー層中に取り込まれ、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリアー層を形成することが可能となって、得られるガスバリアー性フィルムにおいて、優れたガスバリアー性及び耐屈曲性を発揮させることが可能となる。なお、有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
(CH3)6Si2O+12O2→6CO2+9H2O+2SiO2
このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまう(炭素分布曲線が存在しない)ため、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリアー層を形成することができなくなってしまう。そのため、本発明において、ガスバリアー層を形成する際には、上記反応式(1)の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくすることが好ましい。なお、実際のプラズマCVDチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素とは、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる。例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がガスバリアー層中に取り込まれ、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリアー層を形成することが可能となって、得られるガスバリアー性フィルムにおいて、優れたガスバリアー性及び耐屈曲性を発揮させることが可能となる。なお、有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
また、真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5〜50Paの範囲内とすることが好ましい。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間で放電するため、プラズマ発生用電源42に接続された電極ドラム(本実施形態においては、成膜ローラー39及び40に設置されている)に印加する印加電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えないが、100W〜10kWの範囲内とすることが好ましい。このような印加電力が100W以上であれば、パーティクルの発生を十分に抑制することができ、他方、10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑えることができ、成膜時の樹脂基材2及び有機層3表面の温度が上昇するのを抑制できる。そのため樹脂基材や有機層が熱負けすることなく、成膜時に皺が発生するのを防止できる点で優れている。
有機層3を有する樹脂基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲内とすることがより好ましい。ライン速度が0.25m/min以上であれば、樹脂基材に熱に起因する皺の発生を効果的に抑制することができる。他方、100m/min以下であれば、十分な生産性を維持しながら、ガスバリアー層として十分な層厚を確保することができる点で優れている。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、本発明に係るガスバリアー層を、図8に示す対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールtoロール方式)を用いたプラズマCVD法によって成膜することが好ましい態様である。これは、対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールtoロール方式)を用いて量産する場合に、可撓性(屈曲性)に優れ、機械的強度、特に、ロールtoロール方式での搬送時の耐久性と、ガスバリアー性能とが両立するガスバリアー層を効率よく形成することができるためである。このようなCVD成膜装置は、太陽電池や電子部品などに使用される温度変化に対する耐久性が求められるガスバリアー性フィルムを、安価でかつ容易に量産することができる点でも優れている。
(第2の形成方法:湿式塗布方式によるガスバリアー層の形成)
本発明のガスバリアー性フィルムにおいて、ガスバリアー層の第2の形成方法として、湿式塗布方式により形成する方法、具体的には、ポリシラザンを含有したガスバリアー層形成用塗布液を、前記樹脂基材の有機層上に塗布及び乾燥して、酸窒化ケイ素を主成分とするガスバリアー層を形成する方法が好ましく、更に好ましくは、ポリシラザン含有するガスバリアー層形成用塗布液を湿式塗布方式により塗布及び乾燥し、形成された塗膜に波長200nm以下の真空紫外光(VUV光、エキシマ光)を照射して、形成した塗膜に改質処理を施して、ガスバリアー層を形成する方法を適用することが、上記説明したプラズマCVD法によるガスバリアー層形成方法に対し、真空装置等の大掛かりの設備を用いないで、簡便にガスバリアー層を形成することができる観点から好ましい方法の一つである。
本発明のガスバリアー性フィルムにおいて、ガスバリアー層の第2の形成方法として、湿式塗布方式により形成する方法、具体的には、ポリシラザンを含有したガスバリアー層形成用塗布液を、前記樹脂基材の有機層上に塗布及び乾燥して、酸窒化ケイ素を主成分とするガスバリアー層を形成する方法が好ましく、更に好ましくは、ポリシラザン含有するガスバリアー層形成用塗布液を湿式塗布方式により塗布及び乾燥し、形成された塗膜に波長200nm以下の真空紫外光(VUV光、エキシマ光)を照射して、形成した塗膜に改質処理を施して、ガスバリアー層を形成する方法を適用することが、上記説明したプラズマCVD法によるガスバリアー層形成方法に対し、真空装置等の大掛かりの設備を用いないで、簡便にガスバリアー層を形成することができる観点から好ましい方法の一つである。
湿式塗布方式で形成されるガスバリアー層の厚さとしては、1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜300nmの範囲内である。ガスバリアー層の厚さが1nm以上であれば、所望のガスバリアー性能を発揮することができ、500nm以下であれば、緻密な酸窒化ケイ素膜でのクラックの発生等の膜質劣化を防止することができる。
〈ポリシラザン〉
本発明に係るガスバリアー層の形成に用いるポリシラザンとは、分子構造内にケイ素−窒素結合を有するポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、適用するポリシラザンとしては、特に制限はないが、下記一般式(I)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
本発明に係るガスバリアー層の形成に用いるポリシラザンとは、分子構造内にケイ素−窒素結合を有するポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、適用するポリシラザンとしては、特に制限はないが、下記一般式(I)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
上記一般式(I)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1、R2及びR3は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。また、アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。より具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基が挙げられる。(トリアルコキシシリル)アルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換されたシリル基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基が挙げられる。より具体的には、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基などが挙げられる。上記R1〜R3に場合によって存在する置換基は、特に制限はないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(−OH)、メルカプト基(−SH)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SO3H)、カルボキシ基(−COOH)、ニトロ基(−NO2)などがある。なお、場合によって存在する置換基は、置換するR1〜R3と同じとなることはない。例えば、R1〜R3がアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。これらのうち、好ましくは、R1、R2及びR3は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ビニル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基又は3−(トリメトキシシリルプロピル)基である。
また、上記一般式(I)において、nは、整数であり、一般式(I)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R1、R2及びR3の全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6員環及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されており、その分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質である。
ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のアクアミカ(登録商標)NN120−10、NN120−20、NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120−20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
また、第2の形成方法により形成するガスバリアー層は、上述の磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD法を用いた第1の形成方法で形成したガスバリアー層上に、ポリシラザンを含む塗布液を塗布及び乾燥した後、真空紫外線を照射することにより形成するハイブリッド構成であってもよい。
ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは避けることが好ましい。適用可能な有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用でき、具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの有機溶媒は、ポリシラザンの溶解度や有機溶媒の蒸発速度等の目的にあわせて選択し、複数の有機溶媒を混合しても良い。
ポリシラザンを含有するガスバリアー層形成用塗布液中のポリシラザンの濃度は、形成するガスバリアー層の層厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは0.2〜35質量%の範囲内である。
ポリシラザンの酸窒化ケイ素への変性を促進するため、ガスバリアー層形成用塗布液にアミン触媒や、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒を添加することもできる。本発明においては、アミン触媒を用いることが特に好ましい。具体的なアミン触媒としては、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等が挙げられる。
これら触媒の添加量は、ガスバリアー層形成用塗布液が含有するポリシラザンに対して0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.2〜5質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5〜2質量%の範囲内であることが更に好ましい。触媒添加量を上記で規定する範囲内とすることにより、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大のなどを避けることができる。
また、ポリシラザンの酸化ケイ素への変性を促進するため、ガスバリアー層形成用塗布液には、金属アルコキシド化合物を添加することもできる。
金属アルコキシド化合物は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。市販品の具体的な例としては、例えば、AMD(アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート)、ASBD(アルミニウムセカンダリーブチレート)、ALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、ALCH−TR(アルミニウムトリスエチルアセトアセテート)、アルミキレートM(アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、アルミキレートD(アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート)、アルミキレートA(W)(アルミニウムトリスアセチルアセトネート)(以上、川研ファインケミカル株式会社製)、プレンアクト(登録商標)AL−M(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインケミカル株式会社製)、オルガチックスシリーズ(マツモトファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
なお、金属アルコキシド化合物を用いる場合は、ポリシラザンを含む溶液と不活性ガス雰囲気下で混合することが好ましい。金属アルコキシド化合物が大気中の水分や酸素と反応し、激しく酸化が進むことを抑制するためである。塗布液中の金属アルコキシド化合物の濃度は、ポリシラザンに対して30〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%である。
ポリシラザンを含有するガスバリアー層形成用塗布液を塗布する方法としては、任意の適切な湿式塗布方法を適宜選択して採用することができる。具体例としては、例えば、ローラーコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗膜の厚さは、目的に応じて適切に設定することができる。例えば、塗膜の厚さは、乾燥後の厚さとして50nm〜2μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは70nm〜1.5μmの範囲内にあり、100nm〜1μmの範囲内にあることが更に好ましい。
〈エキシマ光処理〉
本発明に係る湿式塗布方式で形成されるガスバリアー層は、ポリシラザンを含む層に真空紫外線(VUV)を照射することにより、ポリシラザンの少なくとも一部を酸窒化ケイ素へと改質する。
本発明に係る湿式塗布方式で形成されるガスバリアー層は、ポリシラザンを含む層に真空紫外線(VUV)を照射することにより、ポリシラザンの少なくとも一部を酸窒化ケイ素へと改質する。
ここで、真空紫外線照射工程でポリシラザンを含む塗膜が改質され、SiOxNyの特定組成となるメカニズムについて、パーヒドロポリシラザンを一例として説明する。
パーヒドロポリシラザンは「−(SiH2−NH)n−」の組成で示すことができる。SiOxNyで示す場合、x=0、y=1である。x>0となるためには外部の酸素源が必要であるが、これは、
(i)ポリシラザン塗布液に含まれる酸素や水分、
(ii)塗布乾燥過程の雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、
(iii)真空紫外線照射工程での雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、オゾン、一重項酸素、
(iv)真空紫外線照射工程で印加される熱等により樹脂基材側からアウトガスとして塗膜中に移動してくる酸素や水分、
(v)真空紫外線照射工程が非酸化性雰囲気で行われる場合には、その非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気へと移動した際に、その雰囲気から塗膜に取り込まれる酸素や水分、
などが酸素源となる。
(i)ポリシラザン塗布液に含まれる酸素や水分、
(ii)塗布乾燥過程の雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、
(iii)真空紫外線照射工程での雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、オゾン、一重項酸素、
(iv)真空紫外線照射工程で印加される熱等により樹脂基材側からアウトガスとして塗膜中に移動してくる酸素や水分、
(v)真空紫外線照射工程が非酸化性雰囲気で行われる場合には、その非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気へと移動した際に、その雰囲気から塗膜に取り込まれる酸素や水分、
などが酸素源となる。
一方、yについては、Siの酸化よりも窒化が進行する条件は非常に特殊であると考えられるため、基本的には1が上限である。
また、Si、O、Nの結合手の関係から、基本的には、x、yは2x+3y≦4の範囲にある。酸化が完全に進んだy=0の状態においては、塗膜中にシラノール基を含有するようになり、2<x<2.5の範囲となる場合もある。
真空紫外線照射工程でパーヒドロポリシラザンから酸窒化ケイ素、さらには酸化ケイ素が生じると推定される反応機構について、以下に説明する。
(1)脱水素、それに伴うSi−N結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−H結合やN−H結合は真空紫外線照射による励起等で比較的容易に切断され、不活性雰囲気下ではSi−Nとして再結合すると考えられる(Siの未結合手が形成される場合もある)。すなわち、酸化することなくSiNy組成として硬化する。この場合はポリマー主鎖の切断は生じない。Si−H結合やN−H結合の切断は触媒の存在や、加熱によって促進される。切断されたHはH2として膜外に放出される。
パーヒドロポリシラザン中のSi−H結合やN−H結合は真空紫外線照射による励起等で比較的容易に切断され、不活性雰囲気下ではSi−Nとして再結合すると考えられる(Siの未結合手が形成される場合もある)。すなわち、酸化することなくSiNy組成として硬化する。この場合はポリマー主鎖の切断は生じない。Si−H結合やN−H結合の切断は触媒の存在や、加熱によって促進される。切断されたHはH2として膜外に放出される。
(2)加水分解及び脱水縮合によるSi−O−Si結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−N結合は水により加水分解され、ポリマー主鎖が切断されてSi−OHを形成する。二つのSi−OHが脱水縮合してSi−O−Si結合を形成して硬化する。これは大気中でも生じる反応であるが、不活性雰囲気下での真空紫外線照射中では、照射の熱によって樹脂基材からアウトガスとして生じる水蒸気が主な水分源となると考えられる。水分が過剰になると、脱水縮合しきれないSi−OHが残存し、SiO2.1〜SiO2.3の組成で示されるガスバリアー性の低い硬化膜となる。
パーヒドロポリシラザン中のSi−N結合は水により加水分解され、ポリマー主鎖が切断されてSi−OHを形成する。二つのSi−OHが脱水縮合してSi−O−Si結合を形成して硬化する。これは大気中でも生じる反応であるが、不活性雰囲気下での真空紫外線照射中では、照射の熱によって樹脂基材からアウトガスとして生じる水蒸気が主な水分源となると考えられる。水分が過剰になると、脱水縮合しきれないSi−OHが残存し、SiO2.1〜SiO2.3の組成で示されるガスバリアー性の低い硬化膜となる。
(3)一重項酸素による直接酸化、Si−O−Si結合の形成
真空紫外線照射中、雰囲気下に適当量の酸素が存在すると、酸化力の非常に強い一重項酸素が形成される。パーヒドロポリシラザン中のHやNは、Oと置き換わってSi−O−Si結合を形成して硬化する。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えが生じる場合もあると考えられる。
真空紫外線照射中、雰囲気下に適当量の酸素が存在すると、酸化力の非常に強い一重項酸素が形成される。パーヒドロポリシラザン中のHやNは、Oと置き換わってSi−O−Si結合を形成して硬化する。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えが生じる場合もあると考えられる。
(4)真空紫外線照射及び励起によるSi−N結合切断を伴う酸化
真空紫外線のエネルギーは、パーヒドロポリシラザン中のSi−Nの結合エネルギーより高いため、Si−N結合は切断され、周囲に酸素、オゾン、水等の酸素源が存在すると、酸化されてSi−O−Si結合やSi−O−N結合が生じると考えられる。ポリマー主鎖の切断により、結合の組み換えが生じる場合もあると考えられる。
真空紫外線のエネルギーは、パーヒドロポリシラザン中のSi−Nの結合エネルギーより高いため、Si−N結合は切断され、周囲に酸素、オゾン、水等の酸素源が存在すると、酸化されてSi−O−Si結合やSi−O−N結合が生じると考えられる。ポリマー主鎖の切断により、結合の組み換えが生じる場合もあると考えられる。
ポリシラザンを含有する層に真空紫外線照射を施した層の酸窒化ケイ素の組成の調整は、上述の(1)〜(4)の酸化機構を適宜組み合わせて酸化状態を制御することで行うことができる。
本発明における真空紫外線照射工程において、ポリシラザン層塗膜が受ける塗膜面での真空紫外線の照度は30〜200mW/cm2の範囲内であることが好ましく、50〜160mW/cm2の範囲内であることがより好ましい。30mW/cm2以上であれば、改質効率の低下の懸念がなく、200mW/cm2以下であれば、塗膜にアブレーションを生じることがなく、樹脂基材や形成済みに有機層にダメージを与えないため好ましい。
ポリシラザン層塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量は、200〜10000mJ/cm2の範囲内であることが好ましく、500〜5000mJ/cm2の範囲内であることがより好ましい。200mJ/cm2以上であれば、改質を十分に行うことができ、10000mJ/cm2以下であれば過剰改質にならず、クラック発生や、樹脂基材の熱変形を防止することができる。
真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスの原子は、化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。
しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの励起原子は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→Xe*
Xe*+2Xe→Xe2 *+Xe
Xe2 *→Xe+Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe2 *が基底状態に遷移するときに、波長172nmのエキシマ光を発光する。
e+Xe→Xe*
Xe*+2Xe→Xe2 *+Xe
Xe2 *→Xe+Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe2 *が基底状態に遷移するときに、波長172nmのエキシマ光を発光する。
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動及び再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯及び消灯等の点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには、誘電体バリアー放電を用いる方法が知られている。誘電体バリアー放電とは、両電極間に透明石英などの誘電体を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じ、雷に似た非常に細いマイクロ・ディスチャージ(micro discharge)と呼ばれる放電であり、マイクロ・ディスチャージのストリーマが管壁(誘導体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、マイクロ・ディスチャージは消滅する。
このマイクロ・ディスチャージが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため、肉眼でも確認できる光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリアー放電以外に、無電極電界放電でも可能である。容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は基本的には誘電体バリアー放電と同じで良いが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキが無い長寿命のランプが得られる。
誘電体バリアー放電の場合は、マイクロ・ディスチャージが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。
このため、細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は、光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾンなどにより損傷しやすい。これを防ぐためには、ランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素などの不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって、仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば、酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には、外部電極を網状にする必要は無い。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリアー放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は、構造がシンプルなことにある。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。
細管ランプの管の外径は6nm〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は、誘電体バリアー放電及び無電極電界放電のいずれも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン層の改質を実現できる。
したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10〜10000ppmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは50〜5000ppmの範囲内であり、更に好ましく1000〜4500ppmの範囲内である。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
次いで、本発明に適用可能な真空紫外線照射工程の一例を、図を用いて説明する。
図9は、バッチ方式(枚葉方式)の真空紫外線照射工程の一例を示す工程図である。
図9において、201は装置チャンバーであり、図示しないガス供給口から内部に窒素と酸素とを適量供給し、図示しないガス排出口から排気することで、チャンバー内部から実質的に水蒸気を除去し、酸素濃度を所定の濃度に維持することができる。202は172nmの真空紫外線を照射する二重管構造を有するXeエキシマランプ、203は外部電極を兼ねるエキシマランプのホルダーである。204は試料ステージである。試料ステージ204は、図示しない移動手段により装置チャンバー201内を水平に所定の速度で往復移動することができる。また、試料ステージ204は図示しない加熱手段により、所定の温度に維持することができる。205はポリシラザン塗膜が形成された試料である。試料ステージが水平移動する際、試料の塗布層表面と、エキシマランプ管面との最短距離が3mmとなるように試料ステージの高さが調整されている。206は遮光板であり、Xeエキシマランプ202のエージング中に試料の塗布層に真空紫外光が照射されないようにしている。
真空紫外線照射工程で塗膜表面に照射されるエネルギーは、浜松ホトニクス株式会社製の紫外線積算光量計:C8026/H8025 UV POWER METERを用い、172nmのセンサーヘッドを用いて測定することができる。
この測定で得られた照射エネルギーを元に、試料ステージの移動速度を調整することで6000mJ/cm2の照射エネルギーとなるように調整した。なお、真空紫外線照射に際しては、照射エネルギー測定時と同様に、10分間のエージング後に行った。
本発明においては、図9では枚葉方式の真空紫外線照射工程を例示したが、更にはポリシラザンを含むガスバリアー層形成用塗布液を塗布、乾燥する工程と、真空紫外線照射工程とをオンラインで構成し、ロールtoロール方式で、ガスバリアー層を形成する方法も好ましい実施態様である。
図10は、本発明に係るガスバリアー層の形成に適用可能なロールtoロール方式の真空紫外線照射装置の一例を示す模式図である。
図10に記載の真空紫外線照射装置は、ロールtoロールの連続生産方式によりガスバリアー性フィルムを製造する装置である。
図10において、左側が有機層を有する樹脂基材314上に、ガスバリアー層形成用塗布液を塗布して、改質前のポリシラザン含有層を形成する塗布・乾燥工程332であり、右側が、形成したポリシラザン含有層を改質してガスバリアー層とする改質工程333である。
送り出しローラー322から繰り出された樹脂基材314上に、ダイコーター329によってポリシラザン化合物を含むガスバリアー層形成用塗布液が塗布され、ポリシラザン含有層を有する樹脂基材315が形成される。ダイコーター329は、押出し方式の塗布方法により塗膜を形成する装置であり、供給された塗布液が押し出されてスリット状の吐出口から吐出し、樹脂基材上に均一な厚さのポリシラザン含有層315を形成する。
次いで、ポリシラザン含有層を有する樹脂基材315は、搬送ローラー323及び324により搬送され、乾燥ゾーン330内で塗布したポリシラザン含有層を乾燥する。
次いで、改質工程333において、真空紫外光ランプ(エキシマランプ)L1〜L30により、ポリシラザン含有層を有する樹脂基材315を連続搬送しながら、真空紫外光を照射する。その際、エキシマランプL1〜L30のうち、点灯されたエキシマランプにより真空紫外光が照射される領域が真空紫外光照射ゾーンとなり、エキシマランプの一部を点灯せずにおくことにより、その点灯していない領域が照射休止ゾーンとなる(不図示)。改質工程333の筐体331に窒素を導入するほか、それぞれのエキシマランプホルダー部には窒素または空気が供給される(不図示)。連続搬送されているポリシラザン含有層を有する樹脂基材315のエキシマランプL1〜L30とは反対側には、温度制御装置を内蔵したサポートローラーT1〜T32が設置されている。真空紫外光照射ゾーンまたは照射休止ゾーンの塗膜面温度は、サポートローラーT1〜T32に内蔵されている温度制御装置によって調節される。図10の装置では、エキシマランプは30本設置されているが、塗膜の厚さや種類等に応じて、適宜必要な本数を選択することが好ましい。
以上のようにして、ロールtoロール方式により、有機層を有する樹脂基材314上にガスバリアー層を形成したガスバリアーフィルムは、搬送ローラー326及び327により保持・搬送しながら、巻取りローラー328によりロール状に巻き取られる。
〔その他の構成層〕
本発明のガスバリアー性フィルムにおいては、本発明の目的効果を損なわない範囲で、従来公知の平滑層(下地層、プライマー層)、アンカーコート層、ブリードアウト防止層の形成を排除するものではない。
本発明のガスバリアー性フィルムにおいては、本発明の目的効果を損なわない範囲で、従来公知の平滑層(下地層、プライマー層)、アンカーコート層、ブリードアウト防止層の形成を排除するものではない。
《ガスバリアー性フィルムの適用分野》
本発明のガスバリアー性フィルムは、電子デバイスに適用することを特徴とする。
本発明のガスバリアー性フィルムは、電子デバイスに適用することを特徴とする。
具体的には、本発明の高度の水蒸気及び酸素遮断性を備えたガスバリアー性フィルムは、種々の電子デバイス用の封止用材料、封止フィルムとして用いることができる。
本発明のガスバリアー性フィルムは、電子デバイスとして、表示素子、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機ELと略記する。)に用いることができる。有機EL素子に用いる際に、本発明のガスバリアー性フィルムは透明であるため、このガスバリアー性フィルムを基材として用いてこの側から光取り出しを行うように構成できる。 すなわち、本発明のガスバリアー性フィルム上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設け、有機EL素子用樹脂基材を構成することができる。そして、当該有機EL素子用樹脂基材上に設けられたITO透明導電膜を陽極として、この上に発光層を含む有機機能層を設け、更に金属膜からなる陰極を形成して有機EL素子を形成し、この上に別の封止材料(同じでもよいが)を重ねて、ガスバリアー性フィルムの周囲を接着して、有機EL素子を封じ込めることで封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる有機EL素子への影響を防止することができる。
また、有機ELデバイスは、光取り出し効率が低いことが課題となっている。従ってフィルム基板としてこれらのガスバリアー性フィルムを用いるとき、併せて光取り出し向上のための構造を有していることが好ましい。従って、本発明のガスバリアー性フィルムは、これを有機EL素子用樹脂基材として用いるとき、表面に、有機EL素子からの光取りだし効率を向上させるために、光を回折もしくは拡散させる凹凸形状を有することが好ましい。
本発明のガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイスの一つである有機ELパネルは、表示デバイス、ディスプレイに加えて、各種発光光源、照明装置として、家庭用照明、車内照明、また、露光光源のような1種のランプとして、液晶表示装置のバックライト等、表示装置にも有用に用いられる。
その他の電子デバイスとしては、有機光電変換素子の封止用フィルムに用いることができる。有機光電変換素子に本発明のガスバリアー性フィルムを用いる際、本発明のガスバリアー性フィルムは透明であるため、このガスバリアー性フィルムを基材として用いて、ガスバリアー性フィルムの配置側から太陽光の受光を行うように構成できる。即ち、ガスバリアー性フィルム上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設け、有機光電変換素子用樹脂基材を構成することができる。そして、基材上に設けられたITO透明導電膜を陽極としてこの上に多孔質半導体層を設け、さらに金属膜からなる陰極を形成して有機光電変換素子を形成し、この上に別の封止材料を重ねてガスバリアー性フィルム基材と周囲部とを接着して、素子を封じ込めることで有機光電変換素子を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる有機光電変換素子への影響を封じることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
《ガスバリアー性フィルム用基材の作製》
〔ガスバリアー性フィルム用基材1の作製〕
下記樹脂基材上に、下記組成の有機層形成用塗布液1を塗布及び乾燥させた後、紫外線照射による硬化処理を行って有機層を形成し、ガスバリアー性フィルム用基材1を作製した。なお、乾燥条件、乾燥層厚及び硬化条件は以下に示す。
〔ガスバリアー性フィルム用基材1の作製〕
下記樹脂基材上に、下記組成の有機層形成用塗布液1を塗布及び乾燥させた後、紫外線照射による硬化処理を行って有機層を形成し、ガスバリアー性フィルム用基材1を作製した。なお、乾燥条件、乾燥層厚及び硬化条件は以下に示す。
樹脂基材:ロール状で長尺の厚さ23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン製:KFL12W)
(有機層形成用塗布液1の調製)
下記の各添加剤を混合、溶解して有機層形成用塗布液1を調製した。
(有機層形成用塗布液1の調製)
下記の各添加剤を混合、溶解して有機層形成用塗布液1を調製した。
(メタ)アクリレート系化合物B(PETA):ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学製 A−TTM−3、トリエステル比率:37%、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物B) 94質量部
(メタ)アクリレート系化合物A(例示化合物3):特許第4886152号公報に記載の化合物、ポリイソシアネート系化合物、フッ素原子含有のアルコール系化合物及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系化合物より形成されるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物TypeC)
固形分として6質量部
光重合開始剤:BASFジャパン製 イルガキュア819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド) 4質量部
有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 固形分が5質量%となる所定量
(塗布、乾燥及び硬化条件)
コーター:押し出しコーター
乾燥条件:90℃、90秒間
乾燥層厚:2μm、
硬化条件:高圧水銀ランプ、500mJ/cm2
〔ガスバリアー性フィルム用基材2〜13の作製〕
ガスバリアー性フィルム用基材1の作製において、有機層塗布液を構成する(メタ)アクリレート系化合物A及び(メタ)アクリレート系化合物Bの種類と、構成質量比及び層厚を、表1に記載の組み合わせ及び条件に変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム用基材2〜13を作製した。なお、各ガスバリアー性フィルム用基材の作製に用いた各材料の詳細は後述する。
(メタ)アクリレート系化合物A(例示化合物3):特許第4886152号公報に記載の化合物、ポリイソシアネート系化合物、フッ素原子含有のアルコール系化合物及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系化合物より形成されるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物TypeC)
固形分として6質量部
光重合開始剤:BASFジャパン製 イルガキュア819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド) 4質量部
有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 固形分が5質量%となる所定量
(塗布、乾燥及び硬化条件)
コーター:押し出しコーター
乾燥条件:90℃、90秒間
乾燥層厚:2μm、
硬化条件:高圧水銀ランプ、500mJ/cm2
〔ガスバリアー性フィルム用基材2〜13の作製〕
ガスバリアー性フィルム用基材1の作製において、有機層塗布液を構成する(メタ)アクリレート系化合物A及び(メタ)アクリレート系化合物Bの種類と、構成質量比及び層厚を、表1に記載の組み合わせ及び条件に変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム用基材2〜13を作製した。なお、各ガスバリアー性フィルム用基材の作製に用いた各材料の詳細は後述する。
〔ガスバリアー性フィルム用基材14の作製〕
ガスバリアー性フィルム用基材1の作製において、有機層形成用塗布液1を構成する(メタ)アクリレート系化合物BであるPETAの94質量部と、(メタ)アクリレート系化合物Aである例示化合物3の6質量部に代えて、比較化合物1の100質量部に変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム用基材14を作製した。
ガスバリアー性フィルム用基材1の作製において、有機層形成用塗布液1を構成する(メタ)アクリレート系化合物BであるPETAの94質量部と、(メタ)アクリレート系化合物Aである例示化合物3の6質量部に代えて、比較化合物1の100質量部に変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム用基材14を作製した。
比較化合物1:ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とヘキサメチレンジイソシアネートの反応物(フッ素原子を含有しないウレタン(メタ)アクリレート化合物、共栄社化学製 UA−306H)
〔ガスバリアー性フィルム用基材15〜18の作製〕
ガスバリアー性フィルム用基材1の作製において、有機層塗布液を構成する(メタ)アクリレート系化合物A、(メタ)アクリレート系化合物Bを、表1に記載の比較化合物の組み合わせに変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム用基材15〜18を作製した。
〔ガスバリアー性フィルム用基材15〜18の作製〕
ガスバリアー性フィルム用基材1の作製において、有機層塗布液を構成する(メタ)アクリレート系化合物A、(メタ)アクリレート系化合物Bを、表1に記載の比較化合物の組み合わせに変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム用基材15〜18を作製した。
上記各ガスバリアー性フィルム用基材の作製に用いた各化合物の詳細を以下に示す。
(フッ素原子を含有しない化合物)
〈フッ素原子を含有しない(メタ)アクリレート系化合物〉
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学製 A−TTM−3、トリエステル:37%)
比較化合物1:ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とヘキサメチレンジイソシアネートの反応物(共栄社化学製 UA−306H)
比較化合物2:リン酸メタクリレート(共栄社化学製、ライトエステルP−2M(2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート))
〈比較化合物3〉
シランカップリング剤:信越シリコーン製 KBM−573(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)
〈フッ素原子を含有しない(メタ)アクリレート系化合物〉
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学製 A−TTM−3、トリエステル:37%)
比較化合物1:ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とヘキサメチレンジイソシアネートの反応物(共栄社化学製 UA−306H)
比較化合物2:リン酸メタクリレート(共栄社化学製、ライトエステルP−2M(2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート))
〈比較化合物3〉
シランカップリング剤:信越シリコーン製 KBM−573(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)
(フッ素原子を含有する化合物)
〈フッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物〉
例示化合物1:特許第4779293号公報に開示されているパーフルオロポリエーテル単位、−NH−C(C=O)−結合及び活性エネルギー線反応性基を有するフッ素含有ポリエーテル化合物
例示化合物3:特許第4886152号公報に記載の化合物、ポリイソシアネート系化合物、フッ素原子含有のアルコール系化合物及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系化合物より形成されるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物
例示化合物4:特許第4886152号公報に記載の化合物、ポリイソシアネート系化合物、フッ素原子含有のアルコール系化合物及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系化合物より形成されるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物
〈フッ素原子含有の非ウレタン化合物〉
比較化合物4:特許第3742861号公報に記載の方法で合成した下記化合物
〈フッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物〉
例示化合物1:特許第4779293号公報に開示されているパーフルオロポリエーテル単位、−NH−C(C=O)−結合及び活性エネルギー線反応性基を有するフッ素含有ポリエーテル化合物
例示化合物3:特許第4886152号公報に記載の化合物、ポリイソシアネート系化合物、フッ素原子含有のアルコール系化合物及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系化合物より形成されるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物
例示化合物4:特許第4886152号公報に記載の化合物、ポリイソシアネート系化合物、フッ素原子含有のアルコール系化合物及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系化合物より形成されるフッ素原子含有の−NH−C(=O)−結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物
〈フッ素原子含有の非ウレタン化合物〉
比較化合物4:特許第3742861号公報に記載の方法で合成した下記化合物
〔有機層における−NH−C(=O)−結合基の測定〕
上記作製した各ガスバリアー性フィルム用基材の有機層内における−NH−C(=O)−結合基の含有量の測定を下記の方法に従って測定した。
上記作製した各ガスバリアー性フィルム用基材の有機層内における−NH−C(=O)−結合基の含有量の測定を下記の方法に従って測定した。
X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用して、有機層表面から、順次内部を露出させつつ表面組成分析を行うXPSデプスプロファイル測定法により、有機層内における−NH−C(=O)−結合基の含有量の測定を行った。
XPSの測定条件を、下記に示す。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+)
エッチング速度:0.05nm/sec
エッチング間隔:10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
(1)ウレタン基数の積算量が90%以上になる層厚位置の測定
上記測定法により、図3及び図4に例示するような−NH−C(=O)−結合基のXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線を求め、このグラフより、ウレタン基数の積算量が90%以上となる層厚位置を求めた。表1には、樹脂基材界面から厚さ方向で、ウレタン基数の積算量が90%以上となる層厚位置を、層厚比率で表示した。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+)
エッチング速度:0.05nm/sec
エッチング間隔:10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
(1)ウレタン基数の積算量が90%以上になる層厚位置の測定
上記測定法により、図3及び図4に例示するような−NH−C(=O)−結合基のXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線を求め、このグラフより、ウレタン基数の積算量が90%以上となる層厚位置を求めた。表1には、樹脂基材界面から厚さ方向で、ウレタン基数の積算量が90%以上となる層厚位置を、層厚比率で表示した。
(2)有機層の底部領域に対する表面領域のウレタン基数の比率測定
上記方法で、有機層総層厚(T)に対し、樹脂基材(2)側の層厚10%の領域(0.1Tb)における総ウレタン基数Bと、表面から深さ方向で10%の領域(0.1Ta)における総ウレタン基数Aを測定し、その比の値(ウレタン基数A/ウレタン基数B)を測定した。
上記方法で、有機層総層厚(T)に対し、樹脂基材(2)側の層厚10%の領域(0.1Tb)における総ウレタン基数Bと、表面から深さ方向で10%の領域(0.1Ta)における総ウレタン基数Aを測定し、その比の値(ウレタン基数A/ウレタン基数B)を測定した。
《ガスバリアー性フィルムの作製》
〔ガスバリアー性フィルム1の作製〕
上記有機層を形成したガスバリアー性フィルム用基材1(図5で示す2+3)を、図5に示すプラズマCVD成膜装置(31)にセットし、ロールtoロールで連続搬送させた。次いで、成膜ローラー(39)と成膜ローラー(40)との間に磁場を印加するとともに、成膜ローラー(39)と成膜ローラー(40)にそれぞれ電力を供給して、成膜ローラー(39)と成膜ローラー(40)との間に放電してプラズマを発生させ、放電領域を形成した。次いで、形成した放電領域に、成膜ガスとして、原料ガスであるヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と反応ガスである酸素ガス(放電ガスとしても機能する)の混合ガスを、ガス供給管(41)より供給し、有機層(3)を形成した面上に、下記条件にてプラズマCVD法(表2には、PE−CVD法と略記。)により、層厚120nmのガスバリアー層(4)を成膜し、ガスバリアー性フィルム1を作製した。
〔ガスバリアー性フィルム1の作製〕
上記有機層を形成したガスバリアー性フィルム用基材1(図5で示す2+3)を、図5に示すプラズマCVD成膜装置(31)にセットし、ロールtoロールで連続搬送させた。次いで、成膜ローラー(39)と成膜ローラー(40)との間に磁場を印加するとともに、成膜ローラー(39)と成膜ローラー(40)にそれぞれ電力を供給して、成膜ローラー(39)と成膜ローラー(40)との間に放電してプラズマを発生させ、放電領域を形成した。次いで、形成した放電領域に、成膜ガスとして、原料ガスであるヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と反応ガスである酸素ガス(放電ガスとしても機能する)の混合ガスを、ガス供給管(41)より供給し、有機層(3)を形成した面上に、下記条件にてプラズマCVD法(表2には、PE−CVD法と略記。)により、層厚120nmのガスバリアー層(4)を成膜し、ガスバリアー性フィルム1を作製した。
(成膜条件)
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
反応ガス(O2)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.8m/min
〔ガスバリアー性フィルム2〜18の作製〕
上記ガスバリアー性フィルム1の作製において、ガスバリアー性フィルム用基材1に代えて、それぞれガスバリアー性フィルム用基材2〜18を用いた以外は同様にして、PE−CVD法によりガスバリアー層(4)を成膜したガスバリアー性フィルム2〜18を作製した。
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
反応ガス(O2)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.8m/min
〔ガスバリアー性フィルム2〜18の作製〕
上記ガスバリアー性フィルム1の作製において、ガスバリアー性フィルム用基材1に代えて、それぞれガスバリアー性フィルム用基材2〜18を用いた以外は同様にして、PE−CVD法によりガスバリアー層(4)を成膜したガスバリアー性フィルム2〜18を作製した。
〔ガスバリアー性フィルム19の作製〕
上記作製したガスバリアー性フィルム1を用い、すでに形成したガスバリアー層(第1のガスバリアー層)の上に、更に、パーヒドロポリシラザン(PHPS)を用いた塗布法により第2のガスバリアー層を成膜したハイブリッドガスバリアー層(PHPS−ALCH層)を有するガスバリアー性フィルム19を作製した。このガスバリアー層の成膜方法を、ハイブリッド法と称す。
上記作製したガスバリアー性フィルム1を用い、すでに形成したガスバリアー層(第1のガスバリアー層)の上に、更に、パーヒドロポリシラザン(PHPS)を用いた塗布法により第2のガスバリアー層を成膜したハイブリッドガスバリアー層(PHPS−ALCH層)を有するガスバリアー性フィルム19を作製した。このガスバリアー層の成膜方法を、ハイブリッド法と称す。
(第2のガスバリアー層の形成)
下記調製したPHPS−ALCH層形成用塗布液を、スピンコート法により、第1のガスバリアー層上に塗布することにより、ガスバリアー層塗膜を形成した後、真空紫外線照射処理を行うことで、プラズマCVD法による第1のガスバリアー層の上に、厚さ90nmのからなる第2のガスバリアー層を形成した。
下記調製したPHPS−ALCH層形成用塗布液を、スピンコート法により、第1のガスバリアー層上に塗布することにより、ガスバリアー層塗膜を形成した後、真空紫外線照射処理を行うことで、プラズマCVD法による第1のガスバリアー層の上に、厚さ90nmのからなる第2のガスバリアー層を形成した。
〈PHPS−ALCH層形成用塗布液の調製〉
パーヒドロポリシラザン(PHPS)溶液は、無触媒のパーヒドロポリシラザン20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製、アクアミカ(登録商標) NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)をパーヒドロポリシラザンに対して5質量%含有するパーヒドロポリシラザン20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製、アクアミカ NAX120−20)とを4:1の質量比で混合することにより、アミン触媒をパーヒドロポリシラザンに対して1質量%含むパーヒドロポリシラザン20質量%ジブチルエーテル溶液(以下、PHPS液と称す。)を調製した。
パーヒドロポリシラザン(PHPS)溶液は、無触媒のパーヒドロポリシラザン20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製、アクアミカ(登録商標) NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)をパーヒドロポリシラザンに対して5質量%含有するパーヒドロポリシラザン20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製、アクアミカ NAX120−20)とを4:1の質量比で混合することにより、アミン触媒をパーヒドロポリシラザンに対して1質量%含むパーヒドロポリシラザン20質量%ジブチルエーテル溶液(以下、PHPS液と称す。)を調製した。
このように調製したPHPS液に、さらにALCH(川研ファインケミカル株式会社製、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)を、PHPSに対して67質量%(元素組成比AL/Si(%):10%)になるように添加し、ジブチルエーテルで希釈することで、全固形分濃度が3質量%のPHPS−ALCH層形成用塗布液を調製した。
〈真空紫外線(VUV光)照射処理条件〉
塗布形成した第2のガスバリアー層塗膜に対する真空紫外線(VUV光)の照射は、下記条件及び下記の装置を用い、ランプと塗膜との間隔を6mmとなるように試料を設置し、照射した。照射時間は、可動ステージの可動速度を調整して行った。
塗布形成した第2のガスバリアー層塗膜に対する真空紫外線(VUV光)の照射は、下記条件及び下記の装置を用い、ランプと塗膜との間隔を6mmとなるように試料を設置し、照射した。照射時間は、可動ステージの可動速度を調整して行った。
また、真空紫外線照射時の酸素濃度の調整は、照射庫内に導入する窒素ガス、及び酸素ガスの流量をフローメーターにより測定し、庫内に導入するガスの窒素ガス/酸素ガス流量比により調整した。
真空紫外線照射装置:ステージ可動型キセノンエキシマ照射装置
(MDエキシマ社製、MECL−M−1−200)
照度:140mW/cm2(172nm)
ステージ温度:80℃
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
導入ガス加熱温度:100℃
加熱ガス導入時間:1分
処理環境の酸素濃度:0.1体積%
ステージ可動速度と搬送回数:10mm/秒で4回搬送
エキシマ光露光積算量:1500mJ/cm2
《ガスバリアー性フィルムの評価》
〔作製直後のガスバリアー性フィルムの評価〕
(水蒸気バリアー性の評価:水蒸気透過度、WVTRの測定)
作製直後の各ガスバリアー性フィルムについて、水蒸気バリアー性を評価した。水蒸気バリアー性の評価は、MOCON社製AQUATRANを用い、38℃、90%RH条件において数値が安定するのを待って水蒸気透過度(WVTR)(g/m2・day)を測定し、これを水蒸気バリアー性の尺度とした。
(MDエキシマ社製、MECL−M−1−200)
照度:140mW/cm2(172nm)
ステージ温度:80℃
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
導入ガス加熱温度:100℃
加熱ガス導入時間:1分
処理環境の酸素濃度:0.1体積%
ステージ可動速度と搬送回数:10mm/秒で4回搬送
エキシマ光露光積算量:1500mJ/cm2
《ガスバリアー性フィルムの評価》
〔作製直後のガスバリアー性フィルムの評価〕
(水蒸気バリアー性の評価:水蒸気透過度、WVTRの測定)
作製直後の各ガスバリアー性フィルムについて、水蒸気バリアー性を評価した。水蒸気バリアー性の評価は、MOCON社製AQUATRANを用い、38℃、90%RH条件において数値が安定するのを待って水蒸気透過度(WVTR)(g/m2・day)を測定し、これを水蒸気バリアー性の尺度とした。
(密着性の評価)
作製直後の各ガスバリアー性フィルムについて、JIS K 5600−5−6に記載された試験方法に準じて、密着性を評価した。具体的には、100個のマス目状の切り傷を、隙間間隔1mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を升目上の切り傷面に貼り付け、2.0kgのローラーを20往復して完全に付着させた後、180度の剥離角度で急速に剥がした後の剥離面を観察し、以下の評価基準に従って、剥離面積(剥離マス目比率)でランク付を行い、密着性を評価した。剥離箇所は、TEM観察により、いずれも有機層とガスバリアー層との間で発生していることが確認できた。
作製直後の各ガスバリアー性フィルムについて、JIS K 5600−5−6に記載された試験方法に準じて、密着性を評価した。具体的には、100個のマス目状の切り傷を、隙間間隔1mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を升目上の切り傷面に貼り付け、2.0kgのローラーを20往復して完全に付着させた後、180度の剥離角度で急速に剥がした後の剥離面を観察し、以下の評価基準に従って、剥離面積(剥離マス目比率)でランク付を行い、密着性を評価した。剥離箇所は、TEM観察により、いずれも有機層とガスバリアー層との間で発生していることが確認できた。
◎:剥離しているマス目比率が、3%未満である
○:剥離しているマス目比率が、3%以上、10%未満である
△:剥離しているマス目比率が、10%以上、50%未満である
×:剥離しているマス目比率が、50%以上である
(屈曲耐性の評価:屈曲処理後の水蒸気バリアー性維持率の測定)
作製直後の各ガスバリアー性フィルムについて、直径50mmの曲率になるように、180度の角度で、表面(バリア面)500回および裏面(基材面)500回の、計1000回の屈曲を繰り返して屈曲処理を施した。次いで、屈曲処理後のガスバリアー性フィルムについて、上記水蒸気バリアー性の評価に記載の方法と同様にして、水蒸気透過度(WVTR)(g/m2・day)を測定した。屈曲処理前に対する屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率を下式より求め、下記の評価ランクに従って屈曲耐性を評価した。
○:剥離しているマス目比率が、3%以上、10%未満である
△:剥離しているマス目比率が、10%以上、50%未満である
×:剥離しているマス目比率が、50%以上である
(屈曲耐性の評価:屈曲処理後の水蒸気バリアー性維持率の測定)
作製直後の各ガスバリアー性フィルムについて、直径50mmの曲率になるように、180度の角度で、表面(バリア面)500回および裏面(基材面)500回の、計1000回の屈曲を繰り返して屈曲処理を施した。次いで、屈曲処理後のガスバリアー性フィルムについて、上記水蒸気バリアー性の評価に記載の方法と同様にして、水蒸気透過度(WVTR)(g/m2・day)を測定した。屈曲処理前に対する屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率を下式より求め、下記の評価ランクに従って屈曲耐性を評価した。
屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率(%)=(屈曲処理後の水蒸気透過度/屈曲処理前の水蒸気透過度)×100
◎:屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率が、90%以上である
○:屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率が、80%以上、90%未満である
△:屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率が、70%以上、80%未満である
×:屈:屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率が、70%未満である
〔耐久性の評価:高温高湿処理後の各特性〕
上記作製した各ガスバリアー性フィルムを、85℃、85%RHの高温高湿環境下で100時間保存した後、上記の方法と同様にして、水蒸気バリアー性(WVTR測定)、密着性及び屈曲耐性の評価を行った。
◎:屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率が、90%以上である
○:屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率が、80%以上、90%未満である
△:屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率が、70%以上、80%未満である
×:屈:屈曲処理後の水蒸気透過度の維持率が、70%未満である
〔耐久性の評価:高温高湿処理後の各特性〕
上記作製した各ガスバリアー性フィルムを、85℃、85%RHの高温高湿環境下で100時間保存した後、上記の方法と同様にして、水蒸気バリアー性(WVTR測定)、密着性及び屈曲耐性の評価を行った。
以上により得られた結果を、表2に示す。
表2に記載の結果より明らかなように、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(C=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物より形成し、前記式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上である有機層を備えた本発明のガスバリアー性フィルムは、比較例に対し、特に、85℃、85%RHという極めて高温及び高湿の環境下で長時間保存された後の水蒸気バリアー性(WVTR測定)、密着性及び屈曲耐性に優れた効果を発揮していることが分かる。
更に、上記構成に加え、樹脂基材側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、当該樹脂基材界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の領域内にある有機層を備えたガスバリアー性フィルムが、より優れた特性を有していることがわかる。
1 ガスバリアー性フィルム
2、314 樹脂基材
3 有機層
4 ガスバリアー層
2+3 樹脂基材/有機層
2+3+4 樹脂基材/有機層/ガスバリアー層
31 CVD成膜装置
32、322 送出しローラー
33、34、35、36、323、324、326、327 搬送ローラー
39、40 成膜ローラー
41 ガス供給管
42 プラズマ発生用電源
43、44 磁場発生装置
45、328 巻取りローラー
201 装置チャンバー、
202 Xeエキシマランプ、
203 ホルダー、
204 試料ステージ、
205 試料
206 遮光版
315 ポリシラザン含有層を有する樹脂基材
329 ダイコーター
330 乾燥ゾーン
331 筐体
332 塗布・乾燥工程
333 改質工程
L1〜L30 真空紫外光ランプ(エキシマランプ)
T1〜T32 温度制御装置を内蔵したサポートローラー
T 有機層の層厚
2、314 樹脂基材
3 有機層
4 ガスバリアー層
2+3 樹脂基材/有機層
2+3+4 樹脂基材/有機層/ガスバリアー層
31 CVD成膜装置
32、322 送出しローラー
33、34、35、36、323、324、326、327 搬送ローラー
39、40 成膜ローラー
41 ガス供給管
42 プラズマ発生用電源
43、44 磁場発生装置
45、328 巻取りローラー
201 装置チャンバー、
202 Xeエキシマランプ、
203 ホルダー、
204 試料ステージ、
205 試料
206 遮光版
315 ポリシラザン含有層を有する樹脂基材
329 ダイコーター
330 乾燥ゾーン
331 筐体
332 塗布・乾燥工程
333 改質工程
L1〜L30 真空紫外光ランプ(エキシマランプ)
T1〜T32 温度制御装置を内蔵したサポートローラー
T 有機層の層厚
Claims (17)
- 樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成される有機層と、ガスバリアー層とがこの順で積層されたガスバリアー性フィルムであって、
有機層における下式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上であることを特徴とするガスバリアー性フィルム。
式(1)
−NH−C(=O)−結合基の濃度比率=−NH−C(=O)−結合基数A/−NH−C(=O)−結合基数B
〔式中、−NH−C(=O)−結合基数Aは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記ガスバリアー層との界面から深さ0.1Taまでの領域における総−NH−C(=O)−基数を表し、−NH−C(=O)−基数Bは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記樹脂基材との界面から深さ0.1Tbまでの領域における総−NH−C(=O)−基を表す。〕 - 前記−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0〜10000の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアー性フィルム。
- 前記有機層において、樹脂基材側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、前記樹脂基材界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の領域内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスバリアー性フィルム。
- 前記有機層の全層厚Tが、0.3〜5.0μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
- 前記有機層が、少なくともフッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物より形成されたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
- 前記有機層における前記フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aの含有率が、全固形分量の0.06〜13.0質量%の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載のガスバリアー性フィルム。
- 前記有機層が含有する前記フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aが、イソシアヌレート構造を有する化合物であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のガスバリアー性フィルム。
- 樹脂基材の少なくとも一方の面に、少なくとも、単一層で構成される有機層と、ガスバリアー層とをこの順で積層して製造するガスバリアー性フィルムの製造方法であって、
有機層における下式(1)で表される−NH−C(=O)−結合基の濃度比率が、10.0以上となる条件で、有機層を形成することを特徴とするガスバリアー性フィルムの製造方法。
式(1)
−NH−C(=O)−結合基の濃度比率=−NH−C(=O)−結合基数A/−NH−C(=O)−結合基数B
〔式中、−NH−C(=O)−結合基数Aは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記ガスバリアー層との界面から深さ0.1Taまでの領域における総−NH−C(=O)−基数を表し、−NH−C(=O)−基数Bは、有機層の全層厚をTとしたとき、前記樹脂基材との界面から深さ0.1Tbまでの領域における総−NH−C(=O)−基を表す。〕 - 前記−NH−C(=O)−結合基の濃度比率を、10.0〜10000の範囲内となるように有機層を形成することを特徴とする請求項8に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
- 前記樹脂基材側から計測した−NH−C(=O)−結合基の累積含有率が90%以上に到達する位置が、前記樹脂基材界面側から厚さ方向で全層厚の90〜99.95%の位置となるように有機層を形成することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
- 前記有機層を、少なくともフッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aと、フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有しない(メタ)アクリレート系化合物Bとを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物より形成することを特徴とする請求項8から請求項10までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
- 前記有機層における前記フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aの含有率を、全固形分量の0.06〜13.0質量%の範囲内として製造することを特徴とする請求項11に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
- 前記有機層が含有する前記フッ素原子及び−NH−C(=O)−結合を有する(メタ)アクリレート系化合物Aとして、イソシアヌレート構造を有する化合物を用いて製造することを特徴とする請求項11又は請求項12までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
- 前記ガスバリアー層を、ロールtoロール方式の放電プラズマ化学気相成長法により形成することを特徴とする請求項8から請求項13までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
- 前記放電プラズマ化学気相成長法が、ガスバリアー層形成成分を含む原料ガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法であることを特徴とする請求項14に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
- 前記ガスバリアー層が、前記有機層上にロールtoロール方式でポリシラザンを含有するガスバリアー層形成用塗布液を塗布、乾燥して前駆体層を形成した後、当該前駆体層に真空紫外光による改質処理を施してガスバリアー層を形成する方法であることを特徴とする請求項8から請求項13までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムの製造方法。
- 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムを具備したことを特徴とする電子デバイス。
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JP2014186054A JP2016055594A (ja) | 2014-09-12 | 2014-09-12 | ガスバリアー性フィルム、ガスバリアー性フィルムの製造方法及び電子デバイス |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20210083558A (ko) * | 2019-12-27 | 2021-07-07 | 한국화학연구원 | 기체 차단 필름 및 이의 제조방법 |
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JP2009256598A (ja) * | 2008-03-26 | 2009-11-05 | Jsr Corp | 硬化性組成物、硬化膜及び積層体 |
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JP2014083690A (ja) * | 2012-10-19 | 2014-05-12 | Konica Minolta Inc | ガスバリアーフィルムの製造方法及びガスバリアーフィルム |
-
2014
- 2014-09-12 JP JP2014186054A patent/JP2016055594A/ja active Pending
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JP2014083690A (ja) * | 2012-10-19 | 2014-05-12 | Konica Minolta Inc | ガスバリアーフィルムの製造方法及びガスバリアーフィルム |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR20210083558A (ko) * | 2019-12-27 | 2021-07-07 | 한국화학연구원 | 기체 차단 필름 및 이의 제조방법 |
KR102328878B1 (ko) | 2019-12-27 | 2021-11-19 | 한국화학연구원 | 기체 차단 필름 및 이의 제조방법 |
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