JP2015007114A - 安定化させたインターロイキン2 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヒトインターロイキン−2又はその変種の安定な薬剤学製剤の提供。【解決手段】ヒスチジンで安定化させたヒトインターロイキン−2を含む水溶液である、安定な凍結乾燥薬剤学的組成物であって、グリシン及びスクロースを含み、該IL−2が単一アミノ酸置換、N88R、を有するムテインであり、そして該ムテインが突然変異の結果として生じるタンパク質である組成物。【選択図】なし

Description

発明の背景
分野: 本発明は一般的に薬剤学的調剤(pharmaceutical formulation)の分野に関する。より具体的には、本発明はT細胞(PHA−芽細胞)を選択的に活性化可能でありそして、非常に好ましくは、ナチュラルキラー(「NK」)細胞の減じられた活性化を示すIL−2ムテインを含む安定化させた治療上活性なインターロイキン−2調剤に関する。好ましい性質を有する安定化させた組成物は以下に記載されているIL−2の変種を含む。
背景: 1999年11月25日に公告された関連出願PCT/US 99/1064
3で論じられたように、インターロイキン2(IL−2)はT細胞、B細胞、および単球を包含する免疫系の多様な細胞を活性化する有効な免疫刺激剤である。IL−2はまた、T細胞の有効で且つ決定的な成長因子でもある。これらの活性に基づき、IL−2を癌を処置するその能力に関して試験した。ヒトIL−2は転移性腎臓癌および転移性黒色腫の処置のためのFDAが認可した薬品である。適格な患者におけるIL−2の使用はIL−2療法に伴う重い毒性のために制限され、適格な患者の最良でも20%だけが実際に療法を受けることが推定される。IL−2療法に伴う毒性は重い発熱、悪心、嘔吐、脈管漏出およびひどい低血圧を包含する。しかしながら、これらの毒性にもかかわらず、IL−2はその認可された適応症に関して有効である。減じられた毒性を有するIL−2の変種は特許文献1の主題である。
IL−2および他の治療用蛋白質調剤の安定化に関する重要な情報が入手可能である。最近認可されたヒトIL−2調剤(プロロイキン(Proluekin)RIL−2、チロン・コーポレーション(Chiron Corporation))はマンニトール、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および燐酸塩緩衝液を含む凍結乾燥調剤である。IL−2を含む他の調合された治療用蛋白質は下記の参考文献に記載されている。
Fernandes et al., 1986, Pharmaceutical compositions of microbially produced interleukin-2 (特許文献2)は、安定剤(マンニトール)および溶解剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムまたはデオキシコレート硫酸ナトリウム、を1mgのIL−2当たり約100〜約250μgで含有する凍結乾燥調剤を記載している。最近入手可能なプロロイキンRIL−2製品用の調剤はこの参考文献に記載されていると信じられる。
Patel, 1994 Stabilization of protein formulations (特許文献3)は、メチオニン、ヒスチジンまたはそれらの混合物を組み入れることによる延長した貯蔵寿命を有するインターフェロン、顆粒球−大食細胞コロニー−刺激因子またはインターロイキンの水性調剤を記載している。インターロイキン−2を包含する数種のインターロイキン類に言及しているが、IL−2調剤を用いて行われた研究では特許権者は使用した安定剤試験の条件下ではヒスチジンがメチオニンより安定剤として有効性が少ないことを見いだした。
Shaked, et al., 1991, Pharmaceutical compositions of recombinant interleukin-2and formulation process (特許文献4)は、凍結乾燥または液体形態のいずれかであ
る調剤を記載している。調剤の賦形剤は非イオン性重合体状洗剤、例えばトライトン(Triton)X405、トライトンX305、PEG(4000)モノステアレート、ツィーン(Tween)80およびツィーン20を約0.001%〜約5%の濃度で、増量/安定剤、例えばスクロース、フルクトース、デキストロース、マルトース、グルコース、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、キシリトール、ラクトー
ス、トレハロース、ヒト血清アルブミンおよび牛血清アルブミン、並びに緩衝剤、例えばグリシン、クエン酸塩または燐酸塩を約10mM〜50mMの濃度範囲で、約3〜約7の範囲のpHで含む。ポリオール糖増量剤の濃度(重量/容量)は約0.025%〜約10
%の範囲である。
Roskam et al., 1995, Drugs containing a glycosylataed interleukin-2 (特許文献5)は加水分解されたゼラチン(またはヒト血清アルブミン)およびアラニンを含有するpH6.5を有する凍結乾燥調剤を記載している。
Hora et al., 1992, Pharmaceutical composition for interleukin-2 containing physiologically compatible stabilizers (特許文献6)は、液体であるかまたは凍結乾燥調剤を記載している。調剤は例えばアルギニン、カルニチン、ベタイン、ピリドキシンポリビニルピロリドン、カプリン酸の塩類、糖類、糖アルコール類、血清アルブミン、およびクエン酸塩の如き安定剤の1種または組み合わせを緩衝液のpH5.0−8.5で含有することができる。安定剤の濃度は、アルギニンに関しては0.2〜3.0%(重量/容量)の間であり、カルニチンに関しては0.2〜3.0%(重量/容量)の間であり、スクロースに関しては2〜6%(重量/容量)の間であり、そしてクエン酸塩に関しては0.01
〜0.3Mの間である。
Yasushi et al., 1987 Stable composition of interleukin-2 and albumin (特許文
献7)は、ヒト血清アルブミン(0.1−50mg/ml)を還元性賦形剤、例えばグル
タチオン、チオクト酸、N−アセチルシステイン、またはアスコルビン酸(0.05−2
0mg/mlの濃度)と共にまたはそれらなしに3〜5.5の間のpHで含有する安定な
水性調剤を記載している。アルブミン調剤はモノアミノ脂肪族アミノ酸、環式アミノ酸、単糖、糖アルコールまたはモノアミノ脂肪族アミノ酸を含有できる(5〜50mg/mlの濃度)。
Lee et al., 1989 Pharmaceutical plasma protein formulations in low ionic strength media; sodium chloride and/or potassium chloride, lysine hydrochloride, and histidine (特許文献8)は、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたはそれらの混合物、リシン塩酸塩、および緩衝剤としてのヒスチジンを含んでなる低イオン強度媒体中の安定な因子VIIIおよび他の血漿蛋白質調剤を記載している。
Nayar, 1998 stabilized albumin-free recombinant Factor VIII preparation havinga low sugar content (特許文献9および特許文献10)は、グリシン、ヒスチジン、
スクロースおよびNaClを含むアルブミンを含まない安定化させたFVIII調剤を記載している。
(特に特許文献1の好ましいIL−2ムテイン(N88R)のための)安定なIL−2調剤を見いだす試みにおいて、我々は非常に安定であり且つ生物学的活性および有用なヒトIL−2のための製薬学的に許容可能な調剤を今回見いだした。我々の発見は、我々が信じることが以下に記載されているように安定性の原因となる基本的機構であることの提唱に基づいている。
WO 99/60128 米国特許第4,604,377号 米国特許第5,358,708号 米国特許第5,037,644号 米国特許第5,417,970号 米国特許第5,078,997号 米国特許第4,645,830号 米国特許第4,877,608号 米国特許第5,763,401号 米国特許第5,874,408号
図1はIL−2水溶液に関する最適なpH範囲を示すグラフである。 図2は蛋白質溶液を1℃/分で25℃から95℃に加熱することにより誘発されるIL−2凝集に関するヒスチジン対酢酸塩およびクエン酸塩の安定化効果を比較する。
発明の要旨
本発明は、ヒスチジンで安定化させたIL−2またはその変種(ムテイン類)の薬剤学的組成物または調剤である。好ましくは、組成物は低いイオン強度(例えば<0.1)の
溶液を生ずる混合物を含んでなりそして他の安定剤、例えば糖類およびアミノ酸類、好ましくはスクロースおよびグリシン、を含む。調剤は0〜0.9重量%のNaClを含むこ
とができる。組成物はアルブミンを含まずそして凍結乾燥形態での調剤は水を用いて急速(<1分間)に再形成することができる。組成物は生理学的に許容可能なpH条件下で、好ましくは約5.0〜約6.5の範囲のpHにおいて、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムを使用せずに溶解する。再形成された溶液はほぼ等張性であり且つ皮下および静脈内の両方で投与することができる。非常に好ましい態様では、組成物のIL−2は単一アミノ酸置換を有するムテイン、好ましくはWO 99/60128に記載された変種、
である。
非常に好ましい組成物は1−5mg/mlの蛋白質濃度を有しそして以下のもの:
IL−2 0.1−0.5重量%
ヒスチジン 0.08−1.6重量%
NaCl 0−0.9重量%
スクロース 1−10重量%および
グリシン 0−3重量%
を水性形態で(重量/重量基準で)5〜6.5のpHにおいて含んでなる。
我々の調剤の詳細およびそれをどのようにして発見したかを以下に記載する。
具体的態様
ここで使用される用語IL−2は、活性な野生型IL−2およびその生物学的に活性な変種またはムテイン類、例えばWO 99/60128に記載されているもの、の両方を
包含する。以下の実施例では、我々はアミノ酸蛋白質88の位置でアルギニン(R)に突然変異したアスパラギン(N)を有するヒトIL−2の組み換えムテインであるIL−2(N88R)として知られるIL−2を使用した。このムテインはチャイニーズ・ハムスターの卵巣(CHO)細胞から発現されそしてグリコシル化されたおよびグリコシル化されていない両方の形態の混合物を含んでなっていた。それは以上で関連出願として引用されたWO 99/60128に記載されている。
本発明が達成した目的は、許容可能な安定性を有するアルブミンを含まない好ましいIL−2ムテイン用の凍結乾燥薬用量形態を同定する必要性であった。IL−2に関する生
物学的検定法は安定性の非感受性(insensitive)測定値であったため、我々は安定性指示
検定法として逆相HPLCによる可溶性IL−2の定量化を使用した。ここで使用される用語「安定な」または「安定化させた」は、40℃における4カ月間にわたる貯蔵後に逆相HPLCによる可溶性IL−2量が元の可溶性量の90%より少ない量に減少しないことを意味する(以下の表3および4参照)。使用された追加の安定性指示検定法は凝集指数、UV/VIS分光光度法による凝集体の測定およびサイズ排除HPLCによる可溶性凝集体の測定を包含した。安定な生成物の他に、凍結乾燥物質の急速な(1分間以内の)再形成(reconstitute)が非常に好ましい。最後に、製造用凍結乾燥機中で容易に凍結乾燥させうる許容可能な安定性を有する凍結乾燥薬用量形態の調剤が所望されていた。
予備調合試験中に行われた水性安定性試験は、IL−2(N88R)が液体状態で容易に凝集しそして凝集がpH−依存性であったことを示した。2種の予備調剤安定性試験、すなわちIL−2(N88R)のpHグラフおよび種々の緩衝賦形剤の存在下における安定性試験、を行った。これらの試験の目的は、IL−2(N88R)に関する適当なpH範囲および水性安定性(減じられた凝集能力)のための適当な緩衝賦形剤を同定することであった。pHグラフを作成する際には、IL−2溶液を種々のpH条件を用いて製造しそして加速温度条件(40℃)において貯蔵した。試料を種々の時間間隔で分析しそして凝集速度を計算した。図1に示されているように、低い凝集速度に関する最適なpH範囲はpH5.0〜6.5の間であると同定された。ヒスチジン、酢酸塩、およびクエン酸塩がこのpH範囲におけるIL−2(N88R)用の薬剤学的緩衝剤として同定されそして1mg/mlのIL−2(N88R)および150mM(0.9重量%)のNaClを含有
するIL−2(N88R)溶液中20mMの濃度で評価された。これらの試料を25℃から95℃に毎分1℃で加熱しそして沈澱をUV分光光度法により350nmで監視した。図2に示されているように、我々にとっては驚異的であるが、沈澱の開始温度における増加により示されるようにヒスチジンはpH5.5においてIL−2(N88R)を他の緩
衝賦形剤よりIL−2を有意に安定化させた。クエン酸塩、酢酸塩、およびヒスチジンの存在下における開始温度はそれぞれ62℃、64℃、および70℃であった。例えばこれらのような試験は、ヒスチジンを緩衝剤としてだけでなく水性条件下でIL−2用の安定剤としても使用できることを示した。
凍結乾燥薬用量形態の開発のために、当業者により使用されている他の賦形剤を試験した。これらは増量剤並びに凍結防止剤、例えばグリシン、スクロース、およびマンニトール、を含む。凝集は水性安定性試験中に分子に関する不安定性機構の1つであるため、2種の界面活性剤もIL−2(N88R)用の安定剤として評価した。これらの試験の結果は以下の実施例でまとめられている。それらは、我々にとって驚異的であるが、ヒスチジンが他の賦形剤、例えばクエン酸塩、と比べてIL−2に対する選択的な安定化効果を有することを示した。
種々のpHにおける液体IL−2(N88R)の安定性を40℃において試験した。結果は、IL−2(N88R)の沈澱速度がpH5.0〜6.5の間で最低であったことを示した(図1)。従って、pH5.5が液体状態における最適な調剤pHとしてそして凍結
乾燥調剤の製造用に選択された。
我々はIL−2(N88R)の安定性に対する種々の緩衝剤の可能な影響を試験した。我々が試験した緩衝剤はクエン酸塩、酢酸塩、およびヒスチジンを含んでなっていた。これらの緩衝剤は1mg/mlのIL−2(N88R)および150mM(0.9重量%)
のNaClを含有するIL−2(N88R)溶液中20mMで使用された。これらの安定性試料を、UV/VIS分光光度法により監視しながら、25℃から95℃に毎分1℃で
加熱した。ヒスチジンは酢酸塩およびクエン酸塩と比べて、沈澱温度を高めることによりそして沈澱速度を減ずることによりIL−2(N88R)を有意に安定化させた(図2)。表1は、これらの3種の緩衝剤の存在下におけるIL−2(N88R)の開始沈澱温度を示す。開始沈澱温度は350nmにおける光学密度(OD350)がある水準(OD350の場合には0.2および1.0)に達する温度として任意に設定された。ヒスチジンの存在下におけるIL−2(N88R)の沈澱温度は他の2種の緩衝剤の存在下におけるものより数度ほど高かった。この実施例は、ヒスチジンが液体状態のIL−2(N88R)用の緩衝剤として使用されることに加えて特異的な安定剤でありえることを示した。
Figure 2015007114
ヒスチジンの安定化効果をさらに評価する試みでは、凍結乾燥されたIL−2(N88R)を種々の水性調剤から製造した(表2参照)。調剤のほとんどは2重量%のグリシンを増量剤としてそして1重量%のスクロースを安定剤として含有した。5重量%のマンニトールを調剤中でIL−2の商業製品であるプロロイキンRに対する比較剤として使用し
た。両方とも0.1重量%の2種の界面活性剤であるツィーン80およびプルロニック(Pluronic)F68を蛋白質表面吸着及び凝集の防止に関して評価した。全ての調剤はヒスチ
ジンまたはクエン酸塩を緩衝剤として5.5に調節されたpHで含有していた。pH5.5におけるヒスチジンの安定化効果をクエン酸塩のものと区別するためにクエン酸塩が含まれた。これらの凍結乾燥調剤を40℃において貯蔵しそしてUV/VIS分光光度法、SEC−HPLC、およびRP−HPLCを包含する多くの分析方法により分析した。
表3は、凝集に関するUV/VIS分光光度法により評価した多くの調剤中のIL−2(N88R)の安定性、サイズ排除HPLC(SEC−HPLC)による可溶性凝集体の量、および逆相HPLC(RP−HPLC)による蛋白質の回収率を示す。試料を凍結乾燥後に分析しそして40℃の加速貯蔵温度において4カ月間にわたり貯蔵した。凍結乾燥工程はIL−2(N88R)の正味凝集指数を凍結乾燥前状態から変化させず、IL−2(N88R)が蛋白質凝集/沈澱に関して凍結乾燥工程に耐えたことを示唆している。40℃における4カ月間にわたる貯蔵後に、クエン酸塩(B)、プルロニックF−68(D)またはマンニトール(E)を含有する調剤に関して正味凝集指数における有意な増加が観察された。これらの結果は、クエン酸塩もしくはマンニトール、ツィーン−80またはプルロニックF−68の含有が貯蔵中に固体状態のIL−2(N88R)凝集を防止しなかったことを示した。調剤AおよびFは凝集指数における有意な変化を示さず、1または5mg/mlのIL−2(N88R)と一緒のヒスチジン、グリシン、およびスクロース
の含有が安定な生成物を生じたことを示唆している。
しかしながら、有意な量の可溶性凝集体がツィーン−80を含有する調剤中では凍結乾燥前でも見いだされ(表3)、ツィーン−80は可溶性IL−2(N88R)凝集体の生成を促進するが、不溶性凝集体の生成は抑制されうることを示している。プルロニックF−68(調剤D)も可溶性凝集体の有意な生成をもたらしたが、界面活性剤はIL−2(N88R)と相容性でないかもしれない。2%のグリシン、1%のスクロース、および20mM(0.31重量%)のヒスチジン(A、F)を含有した調剤だけは40℃における
4カ月間にわたる凍結乾燥調剤の貯蔵後に可溶性凝集体の検出可能な生成を示さず、ここでもIL−2(N88R)がヒスチジンにより安定化されたことを示唆している。
凍結乾燥および貯蔵後の可溶性IL−2(N88R)の合計回収率はRP−HPCにより測定された(表3)。凍結乾燥後のIL−2(N88R)の回収率はマンニトールを含有する調剤以外の全ての調剤に関して約96%より高かった。40℃における4カ月間にわたるこれらの調剤の貯蔵後に、2%のグリシン、1%のスクロース並びに1および5mg/mlのIL−2(N88R)を含有する20mM(0.31重量%)のヒスチジンを
含有する調剤AおよびF中では約92%のIL−2(N88R)が回収された。これらのデータ(調剤AおよびFに関する90%より高いIL−2(N88R)の回収率)も、界面活性剤が蛋白質を不安定化させるがヒスチジンがIL−2(N88R)を安定化させることを示唆している。
Figure 2015007114
Figure 2015007114
野生型IL−2も調剤Aと同じ組成の水性調剤から凍結乾燥した。野生型IL−2に関する40℃における安定性データはIL−2(N88R)のものに匹敵した(表4)。
Figure 2015007114
論評
ヒトIL−2は6の螺旋構造(A−F)を形成する133個のアミノ酸類を有する。これらの螺旋の4個は四螺旋束モチーフ(tetra-helix bundle motif)と称するものを形成する。cys58およびcys105の間の分子内ジスルフィド結合は螺旋間の伸びたループ上
に位置する。遊離cys125はアミノ酸類117−133を組み入れる螺旋F上に位置す
る。
ヒスチジンがIL−2の特異的な安定剤であるとい驚異的な発見は、ヒスチジンがIL
−2と水性および凍結乾燥状態の両方で分子を安定化させるような特異的な方法で相互作用しうることを示唆している。IL−2の不安定性の主要機構の1つは、チオール−ジスルフィド交換反応によるオリゴマー類の生成から生ずる凝集である。従って、そのヒスチジンが実際にIL−2中のチオール−ジスルフィド交換反応を抑制または減少させうると仮説をたてることができる。野生型IL−2、IL−2(N88R)並びにことによると他のIL−2変種分子は1個のジスルフィド結合および遊離スステイン(Cys125)を
有するため、Cys125上の遊離−SH基はチオール/ジスルフィド交換経路を介してジ
スルフィド結合と容易に反応することができ、それにより凝集/沈澱事象を生ずる。
チオール/ジスルフィド交換の機構は最近では Bulaj et al. により記載されている(Ionization-reactivity relationships for cysteine thiolsin polypeptides. Biochemistry 1998 Jun 23;37(25):8965-72)。モデルペプチド類および蛋白質の研究では、反応
速度は静電力並びに蛋白質の二次構造に感受性であることが示された。チオール中の硫黄原子周辺の電子分布はチオールのpKaを変更しうる近くの電荷および結合内誘導効果(through-bond inductive effect)の存在により影響を受けうる。例えば、チオール/ジスルフィド交換中のチオールの増加した反応性は近くの正電荷の存在または近くのアルファ−螺旋構造からのペプチド双極の貢献のいずれかによるそのpKaの低下に起因しうる。対
照的に、チオール基近くの負電荷はチオールのpKaを上昇させ且つより低いチオール/
ジスルフィド反応速度を生じうる。この提唱された機構は他の研究によっても支持され、そこでは付近の正に荷電された基による高反応性チオレートイオンの安定化が蛋白質チロシンホスファターゼ(Zhang and Dixon, 1993 Active site labeling of the Yersiniaprotein tyrosine phosphatase: the determination of the pKa of the active site cysteineand the function of the conserved histidine 402, Biochemistry 1993 Sep 14;32(36):9340-5)および蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(Kortemmeet al., Electrostaticinteractions in the active site of the N-terminal thioredoxin-like domain of protein disulfide isomerase. Biochemistry 1996 Nov 19;35(46):14503-11)に関して示
された。
チオール/ジスルフィド交換反応のこれらの性質に基づき、ヒスチジンがIL−2(N88R)の安定化における速度論的または熱力学的役割のいずれかを演ずるような安定化機構を想像することができる。ジスルフィド架橋Cys58−Cys105近くには5個のグ
ルタミン酸基(57、60、61、62、および106)がある。これらの負に荷電された基に対するヒスチジンの特異的な結合がチオール/ジスルフィド交換反応に関する速度論的妨害を生ずることができ、またはジスルフィド架橋近くのヒスチジンの結合がIL−2分子を熱力学的に安定化させて凝集反応傾向が少ない立体配座にすることができた。さらに、His−Guイオン性相互作用は3個の関係する硫黄原子間の中間的な遷移状態の生成であるチオール/ジスルフィド交換における速度決定段階をさらに減ずるであろう立体障害を生成しうる。ジスルフィド結合は蛋白質表面上の伸びたループ上に置かれているため、グルタミン酸基に対するヒスチジンの接近可能性は非常にあつらえむきである。
上記の実施例を前提にして、ここに開示された発明の変更が当業者により行われるであろうことが予期される。従って、上記の実施例は単なる説明としてみなすべきでありそしてここに開示された発明は請求項によってのみ限定されるべきであることが意図される。
以下に本発明の主な特徴と態様を列挙する。
1. ヒスチジンで安定化させたヒトインターロイキン−2またはその変種を含んでなる安定な薬剤学的組成物。
2. 水中で急速に再形成されうる凍結乾燥形態の1.の調剤。
3. 約5.0〜約6.5の範囲のpHを有する水性形態の1.の調剤。
4. グリシンを含む1.の調剤。
5. スクロースを含む1.の調剤。
6. グリシンおよびスクロースを含む1.の調剤。
7. IL−2がムテインである1.の調剤。
8. IL−2が単一アミノ酸置換を有するムテイン、すなわちN88Rである7.の調剤。
9. 水による再形成が以下のもの:
IL−2 0.1−5mg/ml
ヒスチジン 0.08−1.6重量%
NaCl 0−0.9重量%
スクロース 1−10重量%および
グリシン 0−3重量%
を5〜6.5のpHにおいて含んでなる安定な凍結乾燥組成物。
10. IL−2が単一アミノ酸置換を有するムテイン、すなわちN88Rである9.の調剤。

Claims (2)

  1. ヒスチジンで安定化させたヒトインターロイキン−2を含んでなる、水溶液である、安定な凍結乾燥薬剤学的組成物であって、グリシンおよびスクロースを含み、該IL−2が単一アミノ酸置換、N88R、を有するムテインであり、そして該ムテインが突然変異の結果として生じるタンパク質である、上記組成物。
  2. 水による再形成が以下のもの:
    IL−2 0.1−5mg/ml
    ヒスチジン 0.08−1.6重量%
    NaCl 0−0.9重量%
    スクロース 1−10重量%および
    グリシン 0−3重量%
    を5〜6.5のpHにおいて含んでなる安定な凍結乾燥組成物であって、
    該IL−2が単一アミノ酸置換、N88R、を有するムテインである上記組成物。
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