以下は、一般には研磨物品、詳細にはボンド材料内部に含まれた砥粒を用いるボンド研磨物品に向けられている。このような研磨物品は、材料除去の利用分野、例えば工作物に仕上げ加工および/または研削を施すためのさまざまな業界における材料除去の利用分野において有用である。研磨物品は、さまざまな仕上げ加工用工具例えば、ホイール、コーン、コップ形状の物品、ホーンおよび/または砥石を製造するように成形し、所定の大きさにすることができる。
図1は、一実施形態に係る研磨物品の形成方法を示す流れ図である。示されている通り、このプロセスは、ステップ101で砥粒をボンド材料粉末と混合することによって開始される。一実施形態によると、砥粒は酸化物などの無機材料を含むことができる。より詳細には、砥粒は微結晶アルミナ(MCA)粒を含むことができる。
MCAまたはゾルゲルアルミナ粒は、好ましくは、種添加または種無添加ゾルゲルプロセスのいずれかにより生産される。本明細書で使用される「ゾルゲルアルミナグリット」という用語は、酸化アルミニウム一水和物のゾルを解膠してゲルを形成するステップと、ゲルを乾燥させ焼成してそれを焼結させるステップと、次に焼結ゲルを破砕し、篩にかけ、分粒してアルファアルミナ微結晶から成る多結晶粒(例えば少なくとも約95%のアルミナ)を形成するステップとを含むプロセスによって作られたアルミナグリットのことである。アルファアルミナ微結晶に加えて、初期ゾルはさらに、最高15重量%のスピネル、ムライト、二酸化マンガン、チタニア、マグネシア、希土類金属酸化物、ジルコニア粉末またはジルコニア前駆体(これはより大量、例えば40重量%以上で添加可能である)または他の相容性ある添加剤またはその前駆体を含んでいてもよい。これらの添加剤は多くの場合、破壊靱性、硬度、脆性、破壊機構または乾燥挙動などの特性を修正するために含み入れられる。焼結ゾルゲルアルファアルミナ粒の調製は、他の箇所で詳述される。このような調製の詳細は、例えば、その内容が参照により本明細書に援用されている米国特許第4,623,364号明細書、同第4,314,827号明細書および同第5,863,308号明細書中に見いだすことができる。
MCA粒という用語は、少なくとも95%の理論密度および500グラムで少なくとも18GPaのビッカース硬度(500グラム)を有する少なくとも60%のアルファアルミナ微結晶を含むあらゆる結晶粒を含むように定義される。焼結ゾルゲルアルファアルミナ粒は、アルファアルミナ微結晶中に分散されたアルファアルミナ以外の材料の板状体を含んでいてもよい。一般に、アルファアルミナ粒子および板状体は、この形態で作られた場合、サイズがサブミクロンである。本発明において有用であるMCA砥粒調製物およびMCA砥粒タイプのさらなる詳細は、米国特許第4,623,364号明細書および同第4,314,827号明細書中に開示されている基本的技術を引用する数多くの他の特許文献および刊行物のいずれか1つに見いだすことができる。
砥粒内で用いられる微結晶アルミナは、1ミクロン未満の平均結晶子サイズを有し得る。実際に、一部の場合において、微結晶アルミナは約0.5ミクロン未満、そして詳細には約0.1〜約0.2ミクロンの間の範囲内の平均結晶子サイズを有し得る。
さらに、本明細書の実施形態のボンド研磨物品は、一定含有量の二次砥粒を利用してもよいということがわかる。二次砥粒が使用される場合、このような砥粒は、工具の合計砥粒の約0.1〜約97体積%、より好ましくは約30〜約70体積%を提供することができる。使用してもよい二次砥粒としては、酸化アルミナ、炭化ケイ素、立方晶窒化ホウ素、ダイヤモンド、フリントおよびガーネット粒そしてそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
ボンド材料粉末に関しては、無機材料、詳細にはガラス質ボンドを有する最終形成済み研磨物品の形成を容易にする無機材料を使用してもよい。すなわち、最終形成済み研磨物品は、一定含有量の非晶相を有するガラス質ボンドを有することができる。詳細には、本明細書中の実施形態の最終形成済みボンド研磨物品は、本質的に非晶相で構成されたボンド材料を含み得る。
特定の場合において、ボンド材料粉末は、酸化物などの無機材料を含むことができる。とりわけボンド材料粉末は、ビトリファイド結合した最終形成済みボンド材料を形成するために適しているフリット材料を含むことができる。フリット材料は、最初に高温(例えば1000℃以上)まで焼成し、冷却し、圧砕しかつ分粒して、粉末化材料(「フリット」)を形成することにより形成される、ガラスから形成された粉末材料を含み得る。フリットはこのとき、シリカおよび粘土などの原料からガラスを作るために使用される初期焼成温度よりもはるかに低い温度で溶融させることができる。
以下の段落では、ボンド材料粉末中に使用されてもよい特定の含有量および特定の組成物を示す。本明細書中において、混合物を形成する上での一部の組成物の特定の量に対して言及されている場合であっても、それが必ずしも指摘された種の各々を全く同じ含有量で有する最終形成済み研磨物品中の最終ボンド組成物を形成しないことがあるということがわかるだろう。すなわち、形成プロセス中、一部の種の含有量は変化する可能性があり、したがって、最終形成済みボンド研磨材は必ずしも、初期混合物のボンド材料粉末内に最初に含まれていたものと同じ量で一部の種を含まないことがある。
本明細書中の実施形態は、フリット材料を有するボンド材料粉末を利用することができる。フリット材料は、シリカ、酸化アルカリ化合物、酸化アルカリ土類化合物などの酸化物およびそれらの組合せから形成されてもよい。フリット材料は、最終形成済みボンド研磨材中のビトリファイドボンド材料の適切な形成を容易にする。一実施形態によると、ボンド材料粉末は、一定含有量のシリカ(SiO2)を含むことができる。例えば本明細書中の実施形態は、少なくとも約50モル%のシリカから形成されたボンド材料粉末を利用してもよい。他の実施形態において、シリカの量はより大きいもの、例えば少なくとも約55モル%、例えば少なくとも約56モル%、そして詳細には約55〜約70モル%の範囲内のシリカであり得る。
さらに、ボンド材料粉末は、一定含有量の酸化アルカリ化合物、詳細には低温ボンド組成物中でより一般的であることができる低含有量のこのような酸化アルカリを含み得る。酸化アルカリ化合物は、酸化リチウム(Li2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化ナトリウム(Na2O)およびその組合せなどの、周期表中に第1A族元素として示されているアルカリ種を用いた酸化化合物および錯体である。
一実施形態によると、ボンド材料粉末は、約14モル%以下の合計酸化アルカリ化合物で形成され得る。他の場合において、ボンド材料粉末は、より少ない酸化アルカリ化合物、例えばおおよそ約13モル%以下、約12.8モル%以下、約12.6モル%以下、約12.4モル%以下、約12モル%以下、さらには約11モル%以下の酸化アルカリ化合物から形成されている。本明細書中の詳細な実施形態は、約5モル%〜約14モル%、例えば約8モル%〜約13モル%、約9モル%〜約12.8モル%、さらには約9モル%〜約12モル%の範囲内の合計含有量の酸化アルカリ化合物を有するボンド材料粉末を形成することができる。
特に酸化リチウムに関しては、ボンド材料粉末は、一部の低温ボンド組成物中でより一般的であることができる極めて低含有量の酸化リチウムを含み得る。例えば、本明細書中の実施形態においては、2.0モル%未満の酸化リチウムからボンド材料粉末を形成することができる。他の場合において、酸化リチウムの含有量は、おおよそ約1.5モル%未満、例えば1.0モル%未満、例えば0.5モル%未満などの比較的低いものであってもよい。1つの特定の場合において、ボンド材料粉末は、本質的に酸化リチウムを含まないように形成される。
ボンド材料粉末は、特定の含有量の酸化ナトリウムから形成され得る。例えば、本明細書中の実施形態は、約2.0モル%〜約8.0モル%、例えば約3.0モル%〜約7.0モル%の酸化ナトリウムを使用してもよい。
さらに、本明細書中の実施形態は、特定の含有量の酸化カリウム、例えば、約2.0モル%〜約8.0モル%、例えば約3.0モル%〜約8.0モル%の範囲内の酸化カリウムを使用してもよい。
ボンド材料粉末は、一定含有量の酸化アルカリ土類化合物から形成され得る。酸化アルカリ土類化合物は、元素周期表の第2A族中に存在するアルカリ土類元素由来の2価の種を取込んだ酸化化合物および錯体である。すなわち例えば、一部の適切な酸化アルカリ土類化合物としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)およびそれらの組合せが含まれ得る。一実施形態によると、使用されるボンド材料粉末は、約10モル%以下の合計酸化アルカリ土類化合物から形成され得る。他の場合において、酸化アルカリ土類化合物の含有量は、より少ないものであり、例えばおおよそ約9.0モル%以下、約8.0モル%以下さらには約7.0モル%以下である。本明細書中の特定の実施形態は、約2.0モル%〜約10モル%、例えば約4.0モル%〜約9.0モル%の範囲内の合計含有量の酸化アルカリ土類化合物を使用してもよい。
酸化アルカリ土類化合物のうち、酸化マグネシウムは、ボンド材料粉末中の他の酸化アルカリ土類化合物に比べて最大の含有量で存在してもよい。例えば、ボンド材料粉末は、少なくとも約2.0モル%、例えば少なくとも3.0モル%の酸化マグネシウムから形成され得る。一部の混合物において、ボンド材料粉末は、約3.0モル%〜7.0モル%、より詳細には約3.0モル%〜6.0モル%の範囲内の酸化マグネシウムを含み得る。
ボンド材料粉末は、一定含有量の酸化カルシウムを含むことができる。例えば、本明細書中の実施形態は、少なくとも約0.5モル%の酸化カルシウム、例えば約0.5モル%〜3.0モル%の範囲内の酸化カルシウムから形成されたボンド材料粉末を使用してもよい。
ボンド材料粉末は、一定含有量の酸化バリウムを含んでいてもよい。しかしながら、酸化バリウムの量は、酸化マグネシウムおよび/または酸化カルシウムの量より少ないものであり得る。一般に、ボンド材料粉末は約2モル%未満、例えば約1モル%未満の酸化バリウムを含む。
本明細書中の実施形態によると、ボンド材料粉末は特定の含有量のアルミナ(Al2O3)を有するように形成され得る。例えば、本明細書中の実施形態は、約13モル%未満のアルミナ例えば約12モル%未満のアルミナ、さらには約11モル%未満のアルミナから形成されたボンド材料粉末を使用してもよい。それでもなお、一部の混合物は、約8.0モル%〜約13モル%、例えば約8.0モル%〜約12モル%の範囲内の含有量のアルミナから形成されたボンド材料粉末を使用し得る。
以上の酸化物種に加えて、ボンド材料粉末は、一部の低温ボンド組成物に比較して特に少量であってもよい特定含有量の酸化リン(P2O5)を有するように形成され得る。例えば、ボンド材料粉末は、1.0モル%未満の酸化リンから形成され得る。他の実施形態では、ボンド材料粉末は、約0.5モル%未満の酸化リンから形成され得る。特定の場合において、ボンド材料粉末は、本質的に酸化リンを含まないように形成され得る。
さらに、ボンド材料粉末は、一部の低温ボンド組成物より低いものであってもよい特定含有量の酸化ホウ素(B2O3)から形成され得る。例えばボンド材料粉末は、10モル%未満の酸化ホウ素を含んでいてもよい。他の場合において、ボンド材料粉末は、約9.0モル%未満さらには8.0モル%未満の酸化ホウ素から形成され得る。特定の実施形態は、約5.0モル%〜約10モル%、例えば約5.0モル%〜9.0モル%の酸化ホウ素から形成されたボンド材料粉末を使用してもよい。
ボンド材料粉末は他の材料、例えば一部の他の酸化金属化合物または錯体を含み得る。適切な追加の酸化金属化合物または錯体には、遷移金属酸化物などの一部の金属元素の酸化物が含まれていてもよい。このような酸化金属化合物または錯体としては、酸化鉄、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化クロム、酸化バナジウム、酸化ビスマスおよびそれらの組合せが含まれ得る。このような追加の金属酸化物種の存在は、微量であり得、したがってボンド材料粉末は、上記の個々の酸化化合物のいずれか1つを約2.0モル%未満そしてより詳細には約1.0モル%未満含む。
ボンド材料粉末中で砥粒の混合物を形成した後、他の材料をこの混合物に添加してもよいことがわかる。例えば、物品の形成を容易にするために、結合剤などの一部の有機化合物を混合物に添加してもよい。1つの特定の実施形態によると、混合物は、一定含有量のポリエチレングリコール、動物性膠、デキストリン、マレイン酸、ラテックス、ワックスエマルジョン、PVA、CMCおよび他の有機および/または無機結合剤を含むことができる。
さらに、最終形成済みボンド研磨物品の形成を容易にするために混合物中に他の添加剤を提供してもよい。例えば、適切な添加剤には、中空ガラスビーズ、粉砕したクルミの殻、プラスチック材料または有機化合物のビーズ、発泡ガラス粒子および発泡アルミナ、細長い粒子、繊維およびそれらの組合せを含む(ただしこれらに限定されない)細孔形成剤が含まれ得る。
ステップ101で混合物を形成した後、プロセスは、ステップ103で混合物を形成して未加工物品を形成することによって続行可能である。未加工物品とは、高密度化を補完するために完全に熱処理されていなくてもよい(すなわち完全に焼成されていなくてもよい)仕上げ加工されていない物品を意味する。一実施形態によると、混合物を形成するプロセスには、混合物を意図された最終形成済みボンド研磨物品の形状に類似する特定の形状にプレス加工するプレス加工作業が含まれ得る。プレス加工作業は、冷間プレス加工作業として行なわれてもよい。適切な圧力は、約10トン〜約300トンの範囲内であり得る。
ステップ103で適切に混合物を形成した後、プロセスは、ステップ105で少なくとも1100℃の焼成温度まで未加工物品を加熱して研磨物品を形成することにより続行可能である。焼成は、一般に、ビトリファイドボンド材料を形成するために適した温度で実施される。本明細書中の実施形態の形成プロセスは、少なくとも約1100℃などの著しく高い焼成温度を使用する。他の場合において、焼成温度はこれより高いもの、例えば少なくとも約1150℃、少なくとも1200℃、少なくとも約1250℃、さらには少なくとも約1300℃であり得る。本明細書中の実施形態のボンド研磨物品を形成するために用いられる焼成温度は、約1100℃〜約1400℃、例えば1100℃〜約1300℃の範囲内であり得る。
一般に、焼成は、空気を含むように、環境大気中で実施可能である。一般に、焼成のためのピーク温度の持続時間は、少なくとも約1時間、詳細には約1〜10時間の範囲内であり得る。ガラス質ボンド材料内に含まれた砥粒を有するボンド研磨物品を形成するに充分な程に物品を加熱した後、物品を冷却することができる。本明細書中の実施形態は、炉の電力をオフに切換えて物品を焼成温度から室温まで自然に冷却させる自然冷却プロセスを使用してもよい。
上記の通り、本明細書の実施形態のボンド研磨物品は、ボンド材料内に含まれた砥粒を含むことができ、ここで、ボンド材料は非晶相を有するガラス質材料である。その上、上述のように、一部の組成物(例えば酸化アルカリ化合物、シリカ、アルミナ、酸化ホウ素など)の特定の含有量を高温形成プロセス中に変更でき、こうして最終形成済みボンド研磨物品が初期混合物中のこのような組成物の含有量に比べて異なる含有量でこのような組成物を有するようになっていることが指摘された。したがって、本明細書中の実施形態のボンド研磨物品は、それが微結晶アルミナ砥粒の重大な劣化および溶解なく高温で形成され得るような形で一部の構成成分の一定含有量そしてより詳細には一部の構成成分の比を研磨物品の最終ボンド材料が有するように形成される。
詳細には、研磨物品の最終ボンド組成物は、特定含有量の酸化アルカリ化合物を有し得る。例えば、酸化ナトリウムに関して、ボンド材料は約8.0モル%以下の酸化ナトリウムを含むことができる。他の実施形態では、酸化ナトリウムの量はそれより少ないもの、例えば約7.0モル%以下、さらには約6.0モル%以下であり得る。特定の場合において、ボンド材料は、約2.0モル%〜約8.0モル%、より特定的には約3.0モル%〜約6.0モル%の酸化ナトリウムを含み得る。
酸化カリウムに関しては、ボンド材料は、少なくとも約4.0モル%の酸化カリウムを含み得る。他の場合において、ボンド材料は、少なくとも約5.0モル%の酸化カリウムを含み得る。一部の実施形態では、研磨物品の最終ボンド材料は、約4.0モル%〜約10モル%そして詳細には約4.0モル%〜約8.0モル%の酸化カリウムを有し得る。
その上、研磨物品の最終ボンド材料は、それが、酸化カリウムの含有量と酸化ナトリウムの含有量の間に特定の比を有するように形成され得る。例えば、[K2O/Na2O]で表わされたモル%単位の酸化カリウム対酸化ナトリウムの比は、約0.5超である値を有することができる。他の実施形態において、この比は約0.75超、例えば約0.9超、さらには1.0超であり得る。とりわけ、最終ボンド材料の組成物は、約0.5〜約2.2、例えば約0.75〜約2.0、約0.8〜1.9、さらには約1.0〜約1.4の範囲内である酸化カリウムと酸化ナトリウムの間の比[K2O/Na2O]を用いることができる。
上述の通り、ボンド材料の初期混合物は、一部の酸化アルカリ化合物、例えば酸化リチウムをきわめて少量含むことができる。こうして、研磨物品の最終形成済みボンド材料は一般に約2.0モル%未満の酸化リチウム、例えば1.5モル%未満、例えば1.0モル%未満さらには0.5モル%未満の酸化リチウムを有することができる。とりわけ、特定の実施形態において、研磨物品の最終形成済みボンド材料は本質的に酸化リチウムを含まない可能性がある。
本明細書中の実施形態の研磨物品は、他の従来のボンド材料よりも著しく低い酸化アルカリ化合物の合計含有量を有することができ、これにより、高い無欠性のMCA粒を用いたボンド研磨物品の高温での形成が容易になる。すなわち、最終ボンド材料内の酸化アルカリ化合物の合計量は、約13モル%未満であり得る。詳細には、酸化アルカリ化合物の合計含有量は、ボンド材料内の材料の合計モル数に対して、約12.8モル%未満、約12.6モル%未満、約12.4モル%未満さらには約11.5モル%未満であり得る。一部の場合において、本明細書中の研磨物品は、最終ボンド材料が、13モル%未満で約8.0モル%超、例えば約12.8モル%未満で約9.0モル%超、または約12モル%未満で約8モル%超、あるいは約11.5モル%未満で約9.0モル%超、そしてより詳細には約11.5モル%未満で約9.5モル%超である酸化アルカリ化合物合計含有量を有するように形成されている。
本明細書中の実施形態の研磨物品は、特定含有量の酸化リンを有することができる。例えば、最終形成済みボンド材料は、約1.0モル%未満の酸化リン、例えば約0.5モル%未満の酸化リンを有することができる。詳細には、研磨物品の最終形成済みボンド材料は、本質的に酸化リンを含まない可能性がある。
本明細書中の実施形態の研磨物品の最終形成済みボンドは、特定含有量の酸化ホウ素を有することができる。例えば、最終形成済みボンド材料は、10モル%未満の酸化ホウ素を有することができる。他の場合において、最終形成済みボンド材料は、約9.0モル%未満、例えば8.0モル%未満の酸化ホウ素を含み得る。一部の実施形態では、最終形成済みボンド材料は、約1.0モル%〜約10モル%、例えば約2.0モル%〜約9.0モル%さらには約2.0モル%〜約8.0モル%の範囲内の酸化ホウ素含有量を有する。
最終形成済みボンド材料内に含まれる酸化ホウ素の合計含有量に加えて、本明細書中の実施形態は、酸化ホウ素の含有量と他の酸化アルカリ組成物の間、さらには酸化ホウ素の合計含有量と酸化アルカリ化合物の合計含有量の間の特定の比を用いてもよい。
以下でわかるように、ボンド材料は、有意な量のシリカを含むことができる。すなわち、最終形成済みボンド材料は、それが、シリカを大半量(すなわちシリカ50モル%超)含むように形成され得る。他の実施形態において、最終形成済みボンド材料は、約55モル%超のシリカ、詳細には、約55モル%〜約70モル%、そしてより詳細には約55モル%〜約65モル%のシリカを含み得る。
さらに、最終形成済みボンド材料は、[Caoc/SiO2]として表わされ約0.17超の値を有する、モル%単位で測定されたシリカ含有量と酸化アルカリ化合物の合計含有量(Caoc)の間の特定の比を示し得る。他の実施形態では、[Caoc/SiO2]比は、約0.18超、例えば約0.17〜0.6、そして詳細には約0.18〜約0.5の範囲内であり得る。
最終形成済みボンド材料は、高温ボンド研磨物品を形成するのに適した一定のアルミナ(Al2O3)含有量を示し得る。例えば最終形成済みボンド材料は、少なくとも約12モル%のアルミナ、例えば少なくとも約13モル%のアルミナ、さらには少なくとも約14モル%のアルミナを含み得る。それでもなお、最終ボンド内のアルミナ合計含有量は、例えば約18モル%以下、約17モル%以下さらには約16モル%以下に制限されてもよい。以下でわかるように、アルミナ量は、シリカ、酸化アルカリ、アルカリ土類酸化物、ホウ化物およびそれらの混合物を含む(ただしこれらに限定されない)ボンド材料内の他の種(すなわち酸化化合物)の合計含有量と比較して制御されてもよい。
さらに、最終形成済みボンド材料は、一定含有量の酸化アルカリ土類化合物(Caeoc)を含んでいてもよい。適切な酸化アルカリ土類化合物は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、および酸化バリウムを含み得る。特定の場合において、研磨物品は、最終ボンド材料が約6.0モル%以下、例えば約5.0モル%以下、さらには約4.0モル%以下の酸化マグネシウムを含み得るように形成され得る。一部の実施形態において、最終形成済みボンド材料は、約1.0モル%〜約6.0モル%、例えば約1.0モル%〜約4.0モル%の酸化マグネシウムを含む。
さらに、最終形成済みボンド材料は、特定含有量の酸化カルシウム、詳細には酸化マグネシウムの含有量より少ない量の酸化カルシウムを含むことができる。例えば、最終形成済みボンド材料は、約6.0モル%未満の酸化カルシウム、例えば約4.0モル%未満の酸化カルシウム、さらには約3.0モル%未満の酸化カルシウムを含み得る。一部の実施形態において、最終形成済みボンド材料は、約1.0モル%〜約5.0モル%、例えば約1.0モル%〜約3.0モル%の酸化カルシウムを含むことができる。
その上、最終形成済みボンド材料は、約2.0モル%未満、例えば約1.0モル%未満そして詳細には約0.1〜約1.0モル%の範囲内の量の酸化バリウムを含み得る。
酸化アルカリ土類化合物の合計含有量(Caeoc)は少なくとも約1.0モル%、例えば少なくとも約2.0モル%、さらには少なくとも約3.0モル%であり得る。それでもなお、本明細書中の実施形態は、約9.0モル%未満、例えば約8.0モル%未満さらには約7.0モル%未満であるアルカリ土類酸化物合計含有量を有する最終形成済みボンド材料を使用してもよい。すなわち、本明細書中の実施形態に係る研磨物品の最終形成済みボンド材料は、約2.0モル%〜約9.0モル%、例えば約3.0モル%〜約7.0モル%の範囲内のアルカリ土類酸化物合計含有量を有する可能性がある。
酸化アルカリ土類化合物の合計含有量に加えて、ボンド材料は、酸化アルカリ化合物合計含有量と酸化アルカリ土類化合物間の特定の比を使用してもよい。2価アルカリ土類化合物の合計含有量(モル%単位)に対する酸化アルカリ化合物の合計含有量(モル%単位)の比は、少なくとも約1.2という値を有する[Caoc/Caeoc]として表わされた比である。他の実施形態では、この比は少なくとも約1.5、例えば少なくとも約1.75、少なくとも2.0であり得る。それでもなお、この比は、一般に約3.5未満、例えば3.25未満、そして3.0未満であり得る。一部の実施形態は、約1.2〜約3.5、例えば約1.5〜約3.25、例えば約1.75〜約3.0の範囲内そして詳細には約2.0〜約2.75の範囲内である、酸化アルカリ化合物と2価アルカリ土類化合物の間の[Caoc/Caeoc]比を有するボンド材料を使用している。
本発明の研磨工具の組成物は好ましくは、約34体積%〜約56体積%、例えば約40体積%〜約54体積%そして詳細には約44体積%〜約52体積%の合計砥粒含有量を含む。MCA研磨材は、研磨物品の合計砥粒の約1〜約100体積%、例えば研磨物品中の砥粒の合計体積の約10体積%〜約80体積%または30体積%〜約70体積%を占めることができる。
本明細書中の実施形態の研磨物品は、約3.0〜約30体積%のボンド材料を含み得る。より特定の場合において、研磨物品は、約3体積%〜約25体積%のボンド、約4体積%〜約20体積%のボンド、さらには約5体積%〜約18.5体積%のボンドを含み得る。その上、一部の研磨物品は、0.1体積%〜60体積%の1つ以上の二次砥粒、充填材および/または添加剤を含むことができる。
研磨工具の大部分はさまざまな程度の気孔率を有することができるが、本明細書中に含まれる実施形態にしたがって形成された研磨体の一部は、一定割合の細孔含有率を示してもよい。例えば、研磨体は、研磨体の合計体積の約50体積%未満である気孔率を有し得る。他の場合では、気孔率は、約49体積%未満、例えば約40体積%未満であり得る。特定の場合において、一部の研磨体は、少なくとも約20体積%で約40体積%未満、例えば少なくとも30体積%で約50体積%未満、そしてより詳細には約30体積%〜約49体積%である気孔率を有するように形成され得る。
本明細書中に記載されている研磨物品は、微結晶アルミナを含む砥粒の特定の溶解または劣化無く高温形成プロセスを通して形成可能である。詳細には、本明細書中のプロセスによって形成された研磨体は、以下の条件下でのサンドブラスト侵入試験において測定される通りの特定の硬度を示すことができる。サンドブラスト試験は、まず測定ロッド下のテーブル上でガラス板材料などの標準を較正することによって実施され、この標準をブラストシールの表面と接触させた。容積48ccのチャンバ内の15psiの空気圧が、10秒の単一サイクル時間だけ標準(または試料)の表面で、標準等級の砂材料を吹きつけるために用いられた。単一サイクル後に標準内に形成された穴の深度を測定し記録した。標準内に形成された穴の深度が適切な範囲内にあることを確認した上で、実施形態にしたがって形成された試料を試験した。以下でわかるように、深度の値が低くなればなるほど、研磨物品の硬度は高くなる。
本明細書中の実施形態の一部の研磨物品は、約2.2mm以下のサンドブラスト侵入を示している。実際、一部の砥粒は、約2.1mm以下、例えば約2.0mm以下、約1.9mm以下、約1.8mm以下、さらには約1.6mm以下のサンドブラスト侵入を示す。
2つの試料、すなわち本明細書中の実施形態にしたがって形成された試料S1と従来のボンド材料を有する第2の従来の試料CS1とを調製した。試料S1およびCS1を特定の研削条件下で試験して、その性能特性を比較した。
最初に80〜90重量%の砥粒と下表1に提示された組成を有する初期ボンド材料の9〜15重量%とを組合せることによってS1試料を形成させた。この混合物はさらに、結合剤材料を含めた他の添加剤を残量(重量%)だけ含んでいた。試料1を最初に冷間プレス加工して未加工物品を形成し、その後、約1200℃の焼成温度で焼結して、おおよそ46〜50体積%の砥粒、7〜11体積%のボンド材料、および残量の細孔を有する最終ボンド研磨物品を形成した。ボンド材料の最終組成は、表1に提示されている。
試料CS1は、本明細書に記述されている初期および最終ボンド組成を有する試料S1のプロセスにしたがって形成される。約900℃〜950℃の焼成温度で、CS1試料を焼成した。試料S1と同様、試料CS1も、おおよそ46〜50体積%の砥粒、7〜11体積%のボンド材料、および残量の細孔を含むように形成した。
CS1試料のための最終形成済みガラス質ボンドの合計酸化アルカリ化合物含有量は、有意な含有量の酸化リチウムを含めておおよそ16〜18モル%であり、酸化アルカリ土類化合物の合計含有量はおおよそ1.5モル%未満であり、合計酸化ホウ素含有量は10モル%超であり、約14〜18モル%であるものとして計算され、酸化カリウムと酸化カルシウムの間の比[K2O/Na2O]は0.01〜0.05であった。
試料S1およびCS1を、外径(OD)プランジ研削試験に付して、ボンド研磨物品の電力消費量と同様に研削手順後の試験工作物の最終表面粗度も判定した。ODプランジ研削条件は、冷却剤を用いて送り速度が制御された研削条件下で実施され、その条件は下表2に要約されている。
下表3は、所与の回数のドレッシングサイクルについての研削プロセス中の平均電力消費量および試験後の工作物真円度偏差を要約している。データが示す通り、試料S1は、より多数回のドレッシングサイクルについて、従来の試料CS1に比べて改善された(すなわちより低い)平均電力消費量を実証した。その上、S1試料により研削された工作物の真円度偏差は、CS1ボンド研磨材を用いて研削した試料の真円度偏差の半分であった。
試料S1およびCS1を用いて第2の研削試験セットを実施した。下表4に要約した条件下で、冷却剤を用いて、試料S1およびCS1を用いてトラバース表面研削試験を行なった。
試験結果は、図2および3のプロットで提示されている。図2は、試料S1およびCS1についての平均電力と材料除去速度(MMR)の関係を示すプロットを含む。指摘した通り、試料S1は、試料CS1に比べ、工作物の被験材料除去速度範囲全体にわたりより低い電力消費量を示した。特に、10mm3/s/mmを超えるより高い材料除去速度では、試料CS1とS1の平均電力消費量の差は有意なものであった。
図3は、ミクロン単位で測定した工作物の平均表面粗度(Ra)と試料S1およびCS1についての材料除去速度の関係を表わすプロットである。図3に示す通り、一般に、研削試験後の工作物の表面粗度は両方の試料についてほぼ同じであった。とりわけ、試料S1は高い材料除去速度ならびに低い材料除去速度でほぼ同じ表面粗度を提供することができた。
とりわけ、図2および3の情報を組合せると、本明細書中の実施形態にしたがって形成されたボンド研磨物品(試料S1)は、従来の試料に比べて高い材料除去速度を使用した場合でさえ、使用電力量が少なくなる可能性がある。そしてさらに、より高い材料除去速度においてでさえ、工作物の仕上げが劣化することはない。実際、試験中、試料CS1を用いて研削した工作物には焼けが発生したが、一方試料S1を用いて研削した工作物に焼けは観察されなかった。
本明細書中の実施形態は、高温ボンド研磨物品中に微結晶アルミナ粒を取込んだ研磨物品において、微結晶アルミナ粒が改善された集結性と最小限の溶解および劣化を示す研磨物品に向けられている。MCA粒を用いた最先端のボンド研磨物品は、1000℃未満の温度で形成された低温ビトリファイドボンドの形成と使用に向けられてきた。しかしながら、本明細書中の実施形態は、高温で形成されたボンド研磨物品および、MCA粒の溶解および劣化を最低限におさえながら高温形成プロセスを容易にするボンド材料の使用に向けられている。本明細書中の実施形態はなかでも、酸化アルカリ化合物、酸化アルカリ土類化合物、酸化ホウ素、シリカ、アルミナ、酸化リンおよび酸化リチウムの合計含有量、酸化アルカリ化合物、酸化アルカリ土類化合物、酸化ホウ素、シリカ、アルミナ、酸化リンおよび酸化リチウムの相互間で比較した特定の比ならびに、硬度および研削性能などの改善された特徴を有するボンド研磨物品の形成を容易にする砥粒、ボンドおよび細孔の特定の含有率を含めた特徴の1つ以上の組合せを利用している。上記には、実施形態のボンド研磨物品を記述し定義するためにさまざまな要領で組合せることのできる構成要件の組合せが記載されている。この記述は、構成要件の序列を説明するように意図されたものではなく、本発明を定義するために1つ以上の要領で組合せることのできる異なる構成要件を説明するように意図されたものである。
上記において、具体的な実施形態およびいくつかの構成成分の関連性に対する言及は、例示的なものである。連動または関連しているものとしての構成成分に対する言及は、前記構成成分間の直接的関連性または本明細書中で論述されている方法を実施するものとして今後認識されるような1つ以上の介入する構成成分を通した間接的な関連性のいずれかを開示するように意図されたものであることがわかるだろう。したがって、以上で開示した内容は、限定的なものではなく例示的なものとしてみなされるべきであり、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲内に入る全ての修正、改善および他の実施形態を網羅するように意図されている。こうして、法律により許容される最大限度で、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその均等の許容可能な最も広義の解釈により決定されるべきであり、以上の詳細な説明により制約または限定されるものではない。
要約書は、特許法に準拠するように提供されたものであり、クレームの範囲または意味を解釈または限定するために使用されないという了解の下に提出されたものである。さらに上述の「詳細な説明」では、開示を簡素化する目的で、さまざまな特徴を一緒にまとめるかまたは単一の実施形態に記述していることがある。この開示は、請求対象の実施形態が各請求項内で明示的に列挙されているよりも多くの構成要件を必要としているという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映しているように、発明力ある内容は開示されている実施形態のいずれかのものの全てよりも少ない構成要件に向けられていてもよい。したがって、以下の請求項は、各請求項が別個に請求される内容を定義するものとして独立している状態で、「詳細な説明」の中に組込まれるものである。